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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006250
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】照明制御システムおよび照明制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/125 20200101AFI20250109BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
H05B47/125
H05B47/165
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106921
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA04
3K273PA06
3K273QA36
3K273RA13
3K273SA21
3K273SA39
3K273SA60
3K273TA04
3K273TA21
(57)【要約】
【課題】外構通路を歩行する歩行者の安全な歩行をサポートすることができる照明制御システムおよび照明制御方法を提供する。
【解決手段】照明制御システム100は、施設1の外構通路2に設置された照明器具10を制御する。照明制御システム100は、カメラ40と、風速計50と、推定手段30と、制御手段20とを備える。カメラ40は、外構通路2を歩行する歩行者を撮影する。風速計50は、外構通路2における風速を計測する。推定手段30は、カメラ40の撮影画像および風速計50の計測値の少なくとも一方に基づいて、歩行者の視界の広さを推定する。制御手段20は、推定手段30により推定された歩行者の視界の広さに応じて、歩行者の視界が狭くなるに従って照度が高くなるように、照明器具10の照度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の外構通路に設置された照明器具を制御する照明制御システムであって、
前記外構通路を歩行する歩行者を撮影するカメラと、
前記外構通路における風速を計測する風速計と、
前記カメラの撮影画像および前記風速計の計測値の少なくとも一方に基づいて、前記歩行者の視界の広さを推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された前記歩行者の視界の広さに応じて、前記歩行者の視界が狭くなるに従って照度が高くなるように、前記照明器具の照度を制御する制御手段とを備える、照明制御システム。
【請求項2】
前記推定手段は、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の傘利用の有無を推定し、
前記歩行者の傘利用が有る場合には、傘利用が無い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定する、請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記外構通路を複数の歩行者が歩行している場合には、前記推定手段は、
前記複数の歩行者のうちの少なくとも一人の歩行者の傘利用が有るときに、前記歩行者の視野が狭いと推定する、請求項2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記推定手段は、
前記風速計の計測値に基づいて、前記外構通路の風速が高い場合には、風速が低い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定する、請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記推定手段は、さらに、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の年齢を推定し、
前記制御手段は、
推定された前記歩行者の年齢が高くなるに従って高くなるように、前記照明器具の基準照度を設定し、
前記推定手段により推定された前記歩行者の視野の広さに応じて、前記歩行者の視野が狭くなるに従って前記基準照度よりも高くなるように、前記照明器具の照度を制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記外構通路を複数の歩行者が歩行している場合には、前記制御手段は、
前記複数の歩行者のうちの最高齢の歩行者の年齢に基づいて、前記基準照度を設定する、請求項5に記載の照明制御システム。
【請求項7】
施設の外構通路に設置された照明器具を制御する照明制御方法であって、
前記施設には、前記外構通路を歩行する歩行者を撮影するカメラと、前記外構通路における風速を計測する風速計とが設置され、
前記カメラの撮影画像および前記風速計の計測値の少なくとも一方に基づいて、前記歩行者の視界の広さをコンピュータにより推定するステップと、
推定された前記歩行者の視界の広さに応じて、前記コンピュータにより前記照明器具の照度を制御するステップとを備える、照明制御方法。
【請求項8】
前記歩行者の視界の広さを推定するステップは、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の傘利用の有無を推定するステップと、
前記歩行者の傘利用が有る場合には、傘利用が無い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定するステップとを含む、請求項7に記載の照明制御方法。
【請求項9】
前記歩行者の視界の広さを推定するステップは、
前記風速計の計測値に基づいて、前記外構通路の風速が高い場合には、風速が低い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定するステップを含む、請求項7に記載の照明制御方法。
【請求項10】
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の年齢を推定するステップをさらに備え、
前記照明器具の照度を制御するステップは、
推定された前記歩行者の年齢が高くなるに従って高くなるように、前記照明器具の基準照度を設定するステップと、
推定された前記歩行者の視野の広さに応じて、前記歩行者の視野が狭くなるに従って前記基準照度よりも高くなるように、前記照明器具の照度を制御するステップとを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の照明制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明制御システムおよび照明制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/235289号(特許文献1)には、オフィスビルなどの施設に設けられたフロアにおいて区分された複数のゾーンの各々を管理するゾーン管理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のゾーン管理装置は、各ゾーンに設けられた照明機器の設定照度を、ゾーンを利用する利用者の年齢に応じて設定するように構成されている。例えば、設定対象の照明機器が設けられたゾーンにおいて、年齢が40代以上の利用者の数が30代以下の利用者の数よりも多い場合には、ゾーン管理装置は、ゾーンの照明機器に対して基準値よりも大きい値を設定照度に設定する。反対に、年齢が40代以上の利用者の数が30代以下の利用者の数よりも少ない場合には、ゾーン管理装置は、ゾーンの照明機器に対して基準値よりも小さい値を設定照度に設定する。このようにゾーン管理装置は、ゾーンの利用者の年齢に応じて照明環境を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/235289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施設の外構通路において歩行者の安全な歩行を妨げる要因には、加齢による歩行者の視力低下以外に、歩行者の視界の狭さがある。例えば、雨天のために歩行者が傘をさして歩行している場合には、傘によって歩行者の視界が遮られて狭くなる傾向がある。また、風が強い場合には、砂埃などが目に入るのを防ぐために歩行者が目を細めるため、歩行者の視界が狭くなる傾向がある。
【0006】
このように歩行者の視界が狭くなると、視界の明るさが減少するために、明視性の低下を招く。その結果、外構通路上に存在する段差などの障害物の発見が遅れてしまい、歩行者が躓いてしまう可能性が懸念される。
【0007】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、外構通路を歩行する歩行者の安全な歩行をサポートすることができる照明制御システムおよび照明制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に従う照明制御システムは、施設の外構通路に設置された照明器具を制御する照明制御システムであって、カメラと、風速計と、推定手段と、制御手段とを備える。カメラは、外構通路を歩行する歩行者を撮影する。風速計は、外構通路における風速を計測する。推定手段は、カメラの撮影画像および風速計の計測値の少なくとも一方に基づいて、歩行者の視界の広さを推定する。制御手段は、推定手段により推定された歩行者の視界の広さに応じて、歩行者の視界が狭くなるに従って照度が高くなるように、照明器具の照度を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、外構通路を歩行する歩行者の視界を考慮して照明を制御するため、歩行者の視界が狭くなることを抑制して、安全な歩行をサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に従う照明制御システムが適用される施設の全体構成図である。
図2】照明システムのハードウェア構成を示す図である。
図3】推定システムおよび照明システムの機能構成を示す図である。
図4図3に示したカメラテーブルの一例を示す図である。
図5図3に示した外構照度設定テーブルの一例を示す図である。
図6図3に示したエリア別照度設定テーブルの一例を示す図である。
図7】推定システムにより実行される推定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】照明システムにより実行される照度制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<照明制御システムの全体構成>
図1は、本開示の実施の形態に従う照明制御システムが適用される施設1の全体構成図である。図1には、施設1内の1フロアの部分平面図が示されている。施設1は、例えば、ビルやショッピングモールなど不特定多数の人が利用する施設である。施設1の外構は、施設1の利用者が歩行するための通路2を有している。通路2は「外構通路」の一実施例に対応する。本実施の形態に従う照明制御システム100は、通路2の照明を制御するためのシステムである。
【0013】
図1に示すように、照明制御システム100は、複数の照明器具10と、照明システム20と、推定システム30と、複数のカメラ40と、複数の風速計50とを備える。
【0014】
複数の照明器具10は、通路2を照明する。複数の照明器具10は、例えば、通路2の天井に適当な距離をおいて設置される。各照明器具10は、予め定められた照度範囲内で段階的または連続的に照度を変更することが可能に構成されている。
【0015】
照明システム20は、複数の照明器具10の運転を制御する。ある局面では、照明システム20は、施設1の営業時間内に、時間帯に応じて複数の照明器具10の運転および停止を切り替える。例えば、照明システム20は、日中などの日照量が多い時間帯には、複数の照明器具10の運転を停止させる。また、照明システム20は、夜間など日照量が少ない時間帯には、複数の照明器具10を起動させる。
【0016】
さらに、照明システム20は、複数の照明器具10の運転中、推定システム30から与えられる情報に基づいて、複数の照明器具10の照度を制御する。照明システム20による複数の照明器具10の照度の制御については、後ほど詳しく説明する。
【0017】
複数のカメラ40は、通路2を歩行する歩行者を撮影する。複数のカメラ40は、例えば、通路2の天井または壁面に適当な距離をおいて設置される。ある局面では、通路2は複数のエリアに分割されており、エリア毎に少なくとも1台のカメラ40が設置される。各カメラ40は、対応するエリア内の歩行者を撮影し、撮影画像を、カメラ40の識別情報(例えば、カメラ番号)およびエリアの識別情報(例えば、エリア番号)とともに、推定システム30に送信する。
【0018】
複数の風速計50は、通路2に設置され、通路2における風速を計測する。エリア毎に少なくとも1台の風速計50が設置される。各風速計50は、対応するエリアにおける風速の計測値を示す信号を、風速計50の識別情報(例えば、風速計番号)とともに推定システム30に送信する。1つのエリアに設置されるカメラ40および風速計50の台数はエリア間で異なってもよい。各エリアにおけるカメラ40および風速計50の設置台数は、そのエリアにおける通路2の構造(通路2の形状、長さおよび幅など)に応じて適宜設定することができる。
【0019】
推定システム30は、複数のカメラ40から送信される撮影画像、および複数の風速計50から送信される計測値に基づいて、エリア毎の歩行者の視界の広さを推定する。本明細書において「歩行者の視界」とは、通路2を歩行中に、歩行者が肉眼で確実に見ることができる範囲を意味する。
【0020】
推定システム30は、さらに、複数のカメラ40から送信される撮影画像に基づいて、エリア毎の歩行者の年齢を推定する。エリア内を複数の歩行者が歩行している場合には、推定システム30は、各歩行者の年齢を推定し、推定結果に基づいて、そのエリアにおける最高齢の歩行者の年代を求める。
【0021】
推定システム30は、エリア毎の歩行者の視界の広さおよび歩行者の年齢の推定結果を示す情報を照明システム20へ送信する。推定システム30は「推定手段」の一実施例に対応する。
【0022】
照明システム20は、推定システム30から与えられる情報に基づいて、複数の照明器具10の照度を制御する。照明システム20は「制御手段」の一実施例に対応する。
【0023】
<照明システムおよび推定システムのハードウェア構成>
本実施の形態に従う照明制御システム100において、照明システム20および推定システム30の各々は、コンピュータを主体として構成される。図2は、照明システム20のハードウェア構成を示す図である。
【0024】
図2に示すように、照明システム20は、CPU(Central Processing Unit)202と、RAM(Random Access Memory)204と、ROM(Read Only Memory)206と、I/F(Interface)装置208と、記憶装置210とを含んで構成される。CPU202、RAM204、ROM206、I/F装置208、および記憶装置210は、通信バス212を通じて各種データを遣り取りする。
【0025】
CPU202は、ROM206に格納されているプログラムをRAM204に展開して実行する。ROM206に格納されているプログラムには、照明システム20によって実行される処理が記述されている。
【0026】
I/F装置208は、推定システム30および複数の照明器具10と信号やデータを遣り取りするための入出力装置である。I/F装置208は、外構通路2における歩行者の視界に関する情報、および歩行者の年齢に関する情報を推定システム30から受信する。
【0027】
記憶装置210は、各種情報を記憶するストレージであって、施設1の情報、外構通路2の情報、複数の照明器具10の位置情報などを記憶する。また、記憶装置210は、複数の照明器具10の照度を制御するための、更新可能な各種テーブルを記憶している。記憶装置に記憶されている各種テーブルについては、後ほど詳しく説明する。記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)などである。
【0028】
図示は省略するが、推定システム30は、照明システム20と同様のハードウェア構成を有する。なお、本実施の形態では、照明システム20および推定システム30を別体のコンピュータとする構成例を示したが、照明システム20および推定システム30を一体化して1つのコンピュータにより構成してもよい。
【0029】
<機能構成>
図3は、推定システム30および照明システム20の機能構成を示す図である。図3に示すように、推定システム30は、カメラテーブル32と、年齢推定器34と、傘利用推定器36とを含む。
【0030】
年齢推定器34は、複数のカメラ40から撮影画像を受信する。年齢推定器34は、カメラ40毎に、撮影画像を解析することにより、エリア毎の歩行者の年齢を推定する。ある局面では、年齢推定器34は、撮影画像から歩行者の顔画像を抽出し、抽出された顔画像と公知の画像認識技術(年齢推定技術)とを用いて、歩行者の年齢を推定する。年齢推定器34は、例えば、歩行者の顔画像における、歩行者の顔の輪郭ならびに目、鼻および口の位置関係などを判別することによって、歩行者の年齢を推定する。
【0031】
なお、1つのエリア内を複数の歩行者が歩行している場合には、年齢推定器34は、撮影画像から各歩行者の年齢を推定する。そして、年齢推定器34は、複数の歩行者のうちの最高齢の歩行者の年代を求める。1つのエリア内に歩行者が一人しかいない場合には、年齢推定器34は、その歩行者の年代を最高齢の歩行者の年代として求める。年齢推定器34は、推定結果をカメラテーブル32に記録する。
【0032】
傘利用推定器36は、複数のカメラ40から撮影画像を受信する。傘利用推定器36は、カメラ40毎に、撮影画像を解析することにより、エリア毎に歩行者の傘利用の有無を推定する。ある局面では、傘利用推定器36は、撮影画像から公知の画像認識技術を用いて歩行者の画像と傘の画像とを抽出することにより、歩行者が傘をさしているか否かを推定する。
【0033】
傘利用推定器36は、通路2を歩行している歩行者が傘をさしている場合、歩行者の傘利用が「有り」と判定する。なお、エリア内を複数の歩行者が歩行している場合には、少なくとも1人の歩行者が傘をさしていれば、傘利用推定器36は、歩行者の傘利用が「有り」と判定する。一方、傘をさしている歩行者が0人であれば、傘利用推定器36は、歩行者の傘利用が「無し」と判定する。傘利用推定器36は、推定結果をカメラテーブル32に記録する。
【0034】
カメラテーブル32には、さらに、風速計50による風速の計測値が記録される。カメラテーブル32は、推定システム30の記憶装置に記憶される。図4は、図3に示したカメラテーブル32の一例を示す図である。図4に示すように、カメラテーブル32は、各カメラ40が設置されるエリアの位置(エリア番号)、ならびに、各カメラ40の撮影画像から推定されたエリア毎の最高齢の歩行者の年代、歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値のデータを含む。
【0035】
例えば、カメラテーブル32の一行目について説明すると、カメラ番号1のカメラ40が設置されたエリア番号21のエリアについて、最高齢の歩行者の年代が「30代」であり、歩行者の傘利用が「無し」であり、風速が「3m/s」であることが示されている。
【0036】
また、カメラテーブル32の二行目について説明すると、カメラ番号2のカメラ40が設置されたエリア番号21のエリアについて、最高齢の歩行者の年代が「40代」であり、歩行者の傘利用が「無し」であり、風速が「3m/s」であることが示されている。
【0037】
なお、エリア番号21のエリアには、カメラ番号1およびカメラ番号2の2台のカメラ40が設置されている。このように1つのエリアに複数台のカメラ40を設定することで、エリア毎の推定結果の精度を高めることができる。
【0038】
図3に戻って、推定システム30は、予め定められた周期毎に、年齢推定器34および傘利用推定器36による推定結果、ならびに風速計50の計測値のデータをカメラテーブル32に記録する。そして、推定システム30は、予め定められた周期毎に、カメラテーブル32に保存されている各種情報を照明システム20へ送信する。
【0039】
照明システム20は、外構照度設定テーブル22と、エリア別照度設定テーブル24とを含む。外構照度設定テーブル22およびエリア別照度設定テーブル24は、照明システム20の記憶装置210に記憶される。
【0040】
図5は、図3に示した外構照度設定テーブル22の一例を示す図である。外構照度設定テーブル22は、エリア毎の照明器具10の照度の目標値(以下、「目標照度」とも称する)を設定するために用いられる。目標照度は、エリアにおける最高齢の歩行者の年代、歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値に基づいて設定される。
【0041】
具体的には、図5に示すように、外構照度設定テーブル22は、エリアにおける最高齢の歩行者の年代毎に、目標照度が設定されている。各年代における目標照度は、基準照度と、歩行者の傘利用が「有り」の場合の目標照度と、「風が強い」場合の目標照度とを含んでいる。なお、本実施の形態では、風速が予め定められた閾値(例えば7m/s)以上である場合を「風が強い」と定義する。
【0042】
基準照度は、歩行者の傘利用が無しであり、かつ、風が弱い(風速が閾値未満)場合における目標照度である。基準照度は、年代毎に、その年代の平均的な視力に応じて設定されている。ある局面では、加齢による視力の低下を考慮して、年代が高くなるほど、基準照度は高い値に設定される。
【0043】
傘利用が有りの場合の目標照度は、歩行者の傘利用が有りであり、かつ、風が弱い場合における照度の目標値である。歩行者が傘をさしている場合には、傘によって視界が遮られるため、傘をさしていない場合に比べて、歩行者の視界が狭くなる傾向がある。視界が狭くなると、視界の明るさが減少するために、歩行者の明視性が低下する。その結果、歩行者による通路2に存在する障害物の発見が遅れてしまう可能性がある。そのため、各年代において、傘利用が有りの場合の目標照度は、基準照度よりも高い値に設定されている。これによると、歩行者の傘利用が有りのときには、傘利用が無しのときに比べて通路2の照度を上げることで、歩行者の明視性の低下を補償することができる。
【0044】
風が強い場合の目標照度は、歩行者の傘利用が無しであり、かつ、風が強い(風速が閾値(7m/s)以上)場合における照度の目標値である。風が強い場合には、歩行者は、空気中の砂埃などが目に入るのを防ぐために、目を細める傾向がある。したがって、上述した傘利用が有りの場合と同様に、歩行者の視界が狭くなるため、明視性が低下して障害物の発見が遅れてしまうことが懸念される。そのため、各年代において、風が強い場合の目標照度は、基準照度よりも高い値に設定されている。これによると、風が強いときには、風が弱いときに比べて通路2の照度を上げることで、歩行者の明視性の低下を補償することができる。
【0045】
なお、図5の例では、各年代において、傘利用が有りの場合の目標照度と、風が強い場合の目標照度とが同じ値に設定されているが、これら2つの目標照度を互いに異なる値に設定してもよい。そして、傘利用が有りであり、かつ、風が強い場合には、2つの目標照度のうちの高い方を採用する構成としてもよい。
【0046】
例えば、外構照度設定テーブル22の一行目について説明すると、最高齢の歩行者が10代以下である場合には、基準照度は「3lx(ルクス)」であり、傘利用が有りの場合の目標照度は「5lx」であり、風が強い場合の目標照度は「5lx」であることを示している。
【0047】
一方、外構照度設定テーブル22の六行目について説明すると、最高齢の歩行者が60代以上である場合には、基準照度は「30lx」であり、傘利用が有りの場合の目標照度は「40lx」であり、風が強い場合の目標照度は「40lx」であることを示している。
【0048】
このように歩行者の年齢に応じて基準照度が設定されるとともに、その歩行者の視界の広さに応じて、歩行者の視界が狭くなるに従って基準照度よりも高くなるように、目標照度が設定される。これによると、歩行者の年齢による視力の低下に加えて、外構通路2の環境に起因した歩行者の視界の狭まりを考慮した適切な照度の照明を歩行者に提供することが可能となる。また、歩行者の年齢および歩行者の視界の広さに応じて照明器具10の照度を制御することによって、各年代の歩行者の安全な歩行を確保しながら、照明器具10の省エネルギー化を実現することができる。
【0049】
図3に戻って、照明システム20は、推定システム30から送られるカメラテーブル32(図4)の情報と、外構照度設定テーブル22(図5)とを用いて、エリア毎に照明器具10の目標照度を設定する。照明システム20は、エリア毎の照明器具10の目標照度をエリア別照度設定テーブル24に記録する。
【0050】
図6は、図3に示したエリア別照度設定テーブル24の一例を示す図である。図6に示すように、エリア別照度設定テーブル24は、エリア毎に、最高齢の歩行者の年代、歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値のデータと、これらのデータに基づいて設定される目標照度のデータとを含んでいる。最高齢の歩行者の年代、歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値のデータは、カメラテーブル32に記録されているデータが用いられる。
【0051】
例えば、エリア別照度設定テーブル24の一行目について説明すると、エリア番号21のエリアについて、カメラテーブル32に記録されているデータに基づいて、最高齢の歩行者の年代が「30代」であり、傘利用が「無し」であり、風速が「3m/s」であることが示されている。この一行目の例では、目標照度は、外構照度設定テーブル22の三行目を参照して、基準照度である「5m/s」に設定される。
【0052】
エリア別照度設定テーブル24の二行目の例では、エリア番号21のエリアについて、カメラテーブル32に記録されているデータに基づいて、最高齢の歩行者の年代が「40代」であり、傘利用が「無し」であり、風速が「3m/s」であることが示されている。この二行目の例では、目標照度は、外構照度設定テーブル22の四行目を参照して、基準照度である「10m/s」に設定される。
【0053】
また、エリア別照度設定テーブル24の三行目の例では、エリア番号22のエリアについて、カメラテーブル32に記録されているデータに基づいて、最高齢の歩行者の年代が「30代」であり、傘利用が「有り」であり、風速が「7m/s」であることが示されている。この三行目の例では、外構照度設定テーブル22の三行目を参照して、目標照度は、傘利用が有りの場合の目標照度「10m/s」と、風が強い場合の目標照度「10m/s」とのうちの高い方の値(すなわち「10m/s」)に設定される。
【0054】
<推定システムにおける推定処理の流れ>
図7は、推定システム30により実行される推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、複数の照明器具10の運転中において、所定周期毎に実行される。
【0055】
図7に示すように、推定システム30は、各エリア内に設置された少なくとも1台のカメラ40から撮影画像を取得するとともに、各エリア内に設置された風速計50から風速の計測値を取得する(ステップS10)。カメラ40から取得されるデータには、カメラ40の識別情報(カメラ番号)が含まれており、推定システム30は、カメラ40から取得されるデータに含まれる識別情報から送信元のカメラ40を特定する。同様に、推定システム30は、風速計50から取得されるデータに含まれる風速計50の識別情報(風速計番号)から送信元の風速計50を特定する。
【0056】
次いで、推定システム30は、公知の画像認識技術を用いて、カメラ40毎に、撮影画像からエリア内の歩行者の年齢を推定する。エリア内を複数の歩行者が歩行している場合には、推定システム30は、撮影画像から各歩行者の年齢を推定する。そして、推定システム30は、1または複数の歩行者のうちの最高齢の歩行者の年代を、カメラ番号毎に、カメラテーブル32の「最高齢年代」の欄に記録する(ステップS20)。
【0057】
次に、推定システム30は、公知の画像認識技術を用いて、カメラ40毎に、撮影画像から歩行者の傘利用の有無を推定する。エリア内を複数の歩行者が歩行している場合には、推定システム30は、少なくとも一人の歩行者が傘をさしている場合に、傘利用が有りと推定する。そして、推定システム30は、傘利用の有無を、カメラ番号毎に、カメラテーブル32の「傘有無」の欄に記録する(ステップS30)。
【0058】
続いて、推定システム30は、エリア毎に、風速計50の計測値をカメラテーブル32の「風速」の欄に記録する(ステップS40)。
【0059】
そして、推定システム30は、各エリアについて、カメラテーブル32に記録されている「エリア番号」、「最高齢年代」、「傘有無」および「風速」に関する情報を照明システム20へ送信する(ステップS50)。
【0060】
<照明システムにおける照度制御処理の流れ>
図8は、照明システム20により実行される照度制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、複数の照明器具10の運転中において、所定周期毎に実行される。
【0061】
図8に示すように、照明システム20は、最初に、カメラテーブル32に記録されている「エリア番号」、「最高齢年代」、「傘有無」および「風速」に関する情報を推定システム30から受信する(ステップS110)。
【0062】
次に、照明システム20は、受信した情報をエリア別照度設定テーブル24(図6)に記録する。
【0063】
次に、照明システム20は、外構照度設定テーブル22(図5)を参照し、エリア毎に、最高齢の歩行者の年代、歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値の情報に基づいて目標照度を設定する(ステップS130)。
【0064】
照明システム20は、エリア毎に設定した目標照度をエリア別照度設定テーブル24(図6)の「目標照度」の欄に記録する(ステップS140)。
【0065】
次に、照明システム20は、エリア毎に、エリア別照度設定テーブル24(図6)の「目標照度」の欄に記録された照度になるように、照明器具10の照度を制御する(ステップS150)。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に従う照度制御システムによれば、外構通路2を歩行する歩行者の傘利用の有無、および風速の計測値から歩行者の視界の広さを推定し、推定された歩行者の視界の広さに応じて、外構通路2に設置された照明器具10の照度を制御する。これにより、外構通路2の環境に起因する歩行者の視界の狭まりを考慮した適切な照度の照明を歩行者に提供することができる。また、歩行者の視界の広さに応じて照明器具10の照度を制御することによって、歩行者の安全な歩行を確保しながら、照明器具10の省エネルギー化を実現することができる。
【0067】
さらに、歩行者の視界の広さに加えて、歩行者の年齢に応じて照明器具10の照度を制御することにより、外構通路2の環境に起因した歩行者の視界の狭まり、および歩行者の年齢による視力の低下を考慮した適切な照度の照明を歩行者に提供することができる。また、各年代の歩行者の安全な歩行を確保しながら、照明器具10の省エネルギー化を実現することができる。
【0068】
<変形例>
なお、上述した実施の形態では、エリア毎に、歩行者の傘利用の有無および風速の計測値から推定される歩行者の視界の広さに応じて、エリアに設置された照明器具10の照度を制御する構成について説明したが、照度を制御する手法はこの構成に限定されるものではない。例えば、エリア毎に複数の照明器具10を設置し、歩行者の視界の広さに応じて、照明器具10の運転台数を制御する構成としてもよい。この場合、歩行者の視界が狭くなるに従って、照明器具10の運転台数を増やすことで、エリアを照射する照明の照度を上げることができる。このとき、エリア内に存在する障害物を照射するように、複数の照明器具10の中から運転させる照明器具10を選択してもよい。これによると、歩行者の視界が狭くなっている場合においても、歩行者に障害物を気づかせやすくすることができる。
【0069】
[付記]
上述した実施形態は、以下の付記の具体例である。
【0070】
(付記1)
施設の外構通路に設置された照明器具を制御する照明制御システムであって、
前記外構通路を歩行する歩行者を撮影するカメラと、
前記外構通路における風速を計測する風速計と、
前記カメラの撮影画像および前記風速計の計測値の少なくとも一方に基づいて、前記歩行者の視界の広さを推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された前記歩行者の視界の広さに応じて、前記歩行者の視界が狭くなるに従って照度が高くなるように、前記照明器具の照度を制御する制御手段とを備える、照明制御システム。
【0071】
(付記2)
前記推定手段は、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の傘利用の有無を推定し、
前記歩行者の傘利用が有る場合には、傘利用が無い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定する、付記1に記載の照明制御システム。
【0072】
(付記3)
前記外構通路を複数の歩行者が歩行している場合には、前記推定手段は、
前記複数の歩行者のうちの少なくとも一人の歩行者の傘利用が有るときに、前記歩行者の視野が狭いと推定する、付記1または2に記載の照明制御システム。
【0073】
(付記4)
前記推定手段は、
前記風速計の計測値に基づいて、前記外構通路の風速が高い場合には、風速が低い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定する、付記1から付記3のいずれか1項に記載の照明制御システム。
【0074】
(付記5)
前記推定手段は、さらに、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の年齢を推定し、
前記制御手段は、
推定された前記歩行者の年齢が高くなるに従って高くなるように、前記照明器具の基準照度を設定し、
前記推定手段により推定された前記歩行者の視野の広さに応じて、前記歩行者の視野が狭くなるに従って前記基準照度よりも高くなるように、前記照明器具の照度を制御する、付記1から付記4のいずれか1項に記載の照明制御システム。
【0075】
(付記6)
前記外構通路を複数の歩行者が歩行している場合には、前記制御手段は、
前記複数の歩行者のうちの最高齢の歩行者の年齢に基づいて、前記基準照度を設定する、付記5に記載の照明制御システム。
【0076】
(付記7)
施設の外構通路に設置された照明器具を制御する照明制御方法であって、
前記施設には、前記外構通路を歩行する歩行者を撮影するカメラと、前記外構通路における風速を計測する風速計とが設置され、
前記カメラの撮影画像および前記風速計の計測値の少なくとも一方に基づいて、前記歩行者の視界の広さをコンピュータにより推定するステップと、
推定された前記歩行者の視界の広さに応じて、前記コンピュータにより前記照明器具の照度を制御するステップとを備える、照明制御方法。
【0077】
(付記8)
前記歩行者の視界の広さを推定するステップは、
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の傘利用の有無を推定するステップと、
前記歩行者の傘利用が有る場合には、傘利用が無い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定するステップとを含む、付記7に記載の照明制御方法。
【0078】
(付記9)
前記歩行者の視界の広さを推定するステップは、
前記風速計の計測値に基づいて、前記外構通路の風速が高い場合には、風速が低い場合に比べて、前記歩行者の視界が狭いと推定するステップを含む、付記7または付記8に記載の照明制御方法。
【0079】
(付記10)
前記カメラの撮影画像から前記歩行者の年齢を推定するステップをさらに備え、
前記照明器具の照度を制御するステップは、
推定された前記歩行者の年齢が高くなるに従って高くなるように、前記照明器具の基準照度を設定するステップと、
推定された前記歩行者の視野の広さに応じて、前記歩行者の視野が狭くなるに従って前記基準照度よりも高くなるように、前記照明器具の照度を制御するステップとを含む、付記7から付記9のいずれか1項に記載の照明制御方法。
【0080】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 施設、2 外構通路、10 照明器具、20 照明システム、22 外構照度設定テーブル、24 エリア別照度設定テーブル、30 推定システム、32 カメラテーブル、34 年齢推定器、36 傘利用推定器、40 カメラ、50 風速計、100 照明制御システム、202 CPU、204 RAM、206 ROM、208 IF装置、210 記憶装置、212 通信バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8