(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006252
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/112 20210101AFI20250109BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M50/112
H01M50/121
H01M50/103
H01M50/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106924
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】大林 叔朗
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】千原 真志
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和紀
(72)【発明者】
【氏名】米川 紘輔
(72)【発明者】
【氏名】平尾 康裕
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD01
(57)【要約】
【課題】ケースの収容空間を大きくしつつ、電極体の保持力の低下を抑制する。
【解決手段】本開示に基づく蓄電モジュール1において、ケース200は、ケース本体210と、少なくとも1つの隔壁部220とを有している。ケース本体210は、電気的絶縁性を有し、複数の電極体100を取り囲んでいる。隔壁部220は、電気的絶縁性を有し、互いに隣り合う複数の電極体100同士の間に位置してケース本体210の収容空間Sを区画している。隔壁部220は、基部221と、第1突出部222とを有している。基部221は板状であり、第1方向D1に直交する平面方向に沿って延びている。第1突出部222は、基部221から、第1方向D1における一方側に突出して複数の電極体100のうちの1つと接している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数の電極体と、
前記複数の電極体を収容する、ケースとを備え、
前記ケースは、
電気的絶縁性を有し、前記複数の電極体を取り囲むケース本体と、
電気的絶縁性を有し、互いに隣り合う前記複数の電極体同士の間に位置して前記ケース本体の収容空間を区画する、少なくとも1つの隔壁部とを有し、
前記隔壁部は、前記第1方向に直交する平面方向に沿って延びる板状の基部と、該基部から、前記第1方向における一方側に突出して前記複数の電極体のうちの1つと接する、第1突出部とを有している、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1突出部は、前記第1突出部と接する電極体に向かって凸状に湾曲している、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記ケース本体は、
樹脂組成物で構成され、前記第1方向に直交する第2方向における一方側に位置する底壁部と、
樹脂組成物で構成されるとともに前記底壁部と一体的に成形され、該底壁部の周端から前記第2方向に起立して底壁部側とは反対側に向く開口を形成する周側壁部と、
前記開口を閉塞する蓋とを有し、
前記隔壁部は、前記底壁部および前記周側壁部と一体的に成形されており、
前記第1突出部の前記第1方向における寸法は、前記底壁部に向かうに従って大きくなる、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記ケース本体は、
樹脂組成物で構成され、前記第1方向に直交する第2方向における一方側に位置する底壁部と、
樹脂組成物で構成されるとともに前記底壁部と一体的に成形され、該底壁部の周端から前記第2方向に起立して底壁部側とは反対側に向く開口を形成する周側壁部と、
前記開口を閉塞する蓋とを有し、
前記隔壁部は、前記底壁部および前記周側壁部と一体的に成形されており、
前記第1突出部の前記第1方向における寸法は、前記底壁部に向かうに従って小さくなる、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-106372号公報)に開示された電池ケースの収容部は、下部壁と複数(たとえば3つ、4つ、またはそれ以上)の側壁が一体化して内部に空間を形成し、下部壁に対向する開放面を有し、空間内に1つ以上(たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)の隔壁が提供される。これにより、収容部は、空間内に配置される1つ以上の隔壁によって分離される複数の電池区画部を含む。それぞれの電池区画部には、電極組立体をそれぞれ収容できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールのエネルギー密度向上のため、電池ケース内の収容空間は大きいことが好ましい。特許文献1に開示された電池ケースにおいて、ケース内の収容空間を大きくする場合には、隔壁を薄くすることが考えられる。しかしながら、隔壁が薄くなると、電極体からの押圧により、隔壁が変形しやすくなる。すなわち、隔壁を薄くすると電極体の保持力が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ケースの収容空間を大きくしつつ、電極体の保持力の低下を抑制できる、蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく蓄電モジュールは、複数の電極体と、ケースとを備えている。複数の電極体は、第1方向に並んでいる。ケースは、複数の電極体を収容している。ケースは、ケース本体と、少なくとも1つの隔壁部とを有している。ケース本体は、電気的絶縁性を有し、複数の電極体を取り囲んでいる。隔壁部は、電気的絶縁性を有し、互いに隣り合う複数の電極体同士の間に位置してケース本体の収容空間を区画している。隔壁部は、基部と、第1突出部とを有している。基部は板状であり、第1方向に直交する平面方向に沿って延びている。第1突出部は、基部から、第1方向における一方側に突出して複数の電極体のうちの1つと接している。
【0007】
上記の構成によれば、基部を比較的薄くすることでケースの収容空間を大きくできる。一方で、第1突出部と基部とで構成された部分においては、隔壁部の厚さが比較的厚い。このため、この第1突出部と電極体とが接するように構成することで、ケースの収容空間における電極体の保持力の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ケースの収容空間を大きくしつつ、電極体の保持力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る蓄電モジュールを示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
【
図3】
図1の蓄電モジュールをIII-III線矢印方向に見た断面図である。
【
図4】
図1の蓄電モジュールをIV-IV線矢印方向に見た断面図である。
【
図5】
図1の蓄電モジュールに収容された電極体をV-V線矢印方向に見た断面図である。
【
図6】
図2の蓄電モジュールの一部をVI-VI線矢印方向に見た部分的な断面図である。
【
図7】実施形態1の各変形例に係る蓄電モジュールの部分断面図である。
【
図8】実施形態2に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
【
図9】実施形態3に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る蓄電モジュールを示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
図3は、
図1の蓄電モジュールをIII-III線矢印方向に見た断面図である。
図4は、
図1の蓄電モジュールをIV-IV線矢印方向に見た断面図である。
【0012】
図1から
図4に示すように、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1は、複数の電極体100と、ケース200と、少なくとも1つの接続導電部材310と、外部導電部材320とを備えている。複数の電極体100は、第1方向D1に並んでいる。ケース200は、複数の電極体100を収容している。接続導電部材310は、第3方向D3において複数の電極体100と並び、互いに隣り合う複数の電極体100同士を電気的に接続する。第3方向D3は、第1方向D1に直交している。なお、後述する第2方向D2は、第1方向D1および第3方向D3の両方に直交する方向である。
【0013】
本実施形態において、複数の電極体100は、第1電極体100A、第2電極体100B、および、第3電極体100Cを含んでいる。第3電極体100Cは、第1電極体100Aから見て、第2電極体100Bの反対に位置している。本実施形態において、第2電極体100Bは、複数の電極体100のうち第1方向D1において最も端に位置している。第3電極体100Cは、複数の電極体100のうち、第1方向D1において第2電極体100Bとは反対側で最も端に位置している。複数の電極体100は、4つ以上の電極体を含んでもよい。
【0014】
図5は、
図1の蓄電モジュールに収容された電極体をV-V線矢印方向に見た断面図である。
図5に示すように、複数の電極体100の各々は、複数の電極110,120と、セパレータ130とを備えている。本実施形態において、電極体100はたとえばリチウムイオン二次電池などの二次電池のための電極体である。
【0015】
図5に示すように、複数の電極110,120は、第1方向D1に並ぶように配置されている。複数の電極110,120は、複数の正極電極110と、複数の負極電極120と、を有している。
【0016】
各正極電極110は、第3方向D3(
図5においては紙面に直交する方向)に長い長方形形状に形成されている。各正極電極110は、正極集電箔112と、正極集電箔112の両面に設けられた正極活物質層114と、を有している。正極集電箔112は、正極活物質層114が設けられていない正極タブ112p(
図3および
図4参照)を有している。正極タブ112pは、第3方向D3における一方側に向かって突出している。
【0017】
各負極電極120は、第3方向D3に長い長方形形状に形成されている。各負極電極120は、負極集電箔122と、負極集電箔122の両面に設けられた負極活物質層124と、を有している。負極集電箔122は、負極活物質層124が設けられていない負極タブ122n(
図3および
図4参照)を有している。負極タブ122nは、第3方向D3における他方側に向かって突出している。
【0018】
セパレータ130は、正極電極110および負極電極120間を絶縁している。セパレータ130は、絶縁材料からなり、イオンの透過を許容する微小な空隙を有している。
図5に示すように、セパレータ130は、つづら折り状に形成されている。
【0019】
セパレータ130は、つづら折り状に形成される前の状態では長方形形状を呈している。セパレータ130は、各電極110,120間につづら折り状に形成されながら配置される。セパレータ130は、複数の介在部132aと、複数の上折返し部132bと、複数の下折返し部132cと、最外被覆部132dと、を有している。
【0020】
各介在部132aは、一方向に互いに隣接する一対の電極110,120間に介在している。つまり、各介在部132aは、正極電極110および負極電極120間を絶縁する機能を有している。各介在部132aは、矩形状の領域で構成されている。
【0021】
各上折返し部132bは、複数の介在部132aのうちの一の介在部132aの上端部と、複数の介在部132aのうち一方向における一方側に上記一の介在部132aに隣接する介在部132aの上端部と、を互いに連結している。本実施形態では、上折返し部132bは、正極電極110の上方に配置されている。
【0022】
各下折返し部132cは、複数の介在部132aのうちの上記一の介在部の下端部と、複数の介在部132aのうち一方向における他方側に上記一の介在部に隣接する介在部132aの下端部と、を互いに連結している。本実施形態では、下折返し部132cは、負極電極120の下方に配置されている。換言すれば、負極電極120は、下折返し部132c上に配置されている。
【0023】
最外被覆部132dは、各上折返し部132bおよび各下折返し部132cをまとめて被覆している。より詳細には、最外被覆部132dは、全ての電極110,120、全ての介在部132a、全ての上折返し部132bおよび全ての下折返し部132cを、第3方向D3と平行な中心軸まわりに巻回しながらまとめて被覆している。最外被覆部132dの終端132eは、一方向に正極活物質層114および負極活物質層124と重ならない範囲に設定されている。本実施形態では、最外被覆部132dの終端132eは、各電極110,120の下方に設けられている。なお、複数の電極110,120およびセパレータ130の周面と底面には、絶縁フィルムが被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。複数の電極110,120およびセパレータ130の周面と底面は、ケース200と直接に接していてもよい。
【0024】
図6は、
図2の蓄電モジュールの一部をVI-VI線矢印方向に見た部分的な断面図である。
図1から
図4、および
図6に示すように、ケース200は、ケース本体210と、少なくとも1つの隔壁部220とを有している。
【0025】
ケース本体210は、少なくとも電極体100を向く面において、電気的絶縁性を有している。ケース本体210は、複数の電極体100を取り囲んでいる。
【0026】
ケース本体210は、底壁部211と、周側壁部212と、孔部215と、蓋216と、溶着部217とを有している。
【0027】
底壁部211は、樹脂組成物で構成されている。ケース本体210において、底壁部211は、第2方向D2における一方側に位置している。第2方向D2は、第1方向D1および第3方向D3の両方に直交している。底壁部211は、第1方向D1および第3方向D3に沿って延びている。第2方向D2から見て、底壁部211は矩形状の外形を有している。
【0028】
周側壁部212は、樹脂組成物で構成されるとともに底壁部211と一体的に成形されている。周側壁部212は、底壁部211の外周端から第2方向D2に起立して、底壁部211側とは反対側に向く開口OPを形成している。
【0029】
周側壁部212は、一対の第1壁部213と、一対の第2壁部214とを有している。一対の第1壁部213は、第1方向D1に並んでいる。一対の第1壁部213は、第3方向D3に沿って延びている。一対の第2壁部214は、第3方向D3に並んでいる。一対の第2壁部214は、第1方向D1に沿って延びている。
【0030】
孔部215は、接続導電部材310の一部をケース本体210の外部に露出させるために設けられている。孔部215は、接続導電部材310によって閉塞されている。具体的には、孔部215は、周側壁部212に設けられており、より具体的には、第2壁部214に設けられている。
【0031】
本実施形態において、ケース本体210は、上述のような孔部215として、複数の孔部215を有している。複数の孔部215のうち、上記で説明された孔部215とは異なる他の一つの孔部215からは、外部導電部材320が露出している。
【0032】
蓋216は、開口OPを閉塞している。本実施形態において、蓋216は、少なくとも周側壁部212に対向する部分が樹脂組成物で構成されている。蓋216は平板状またはフィルム状の外形を有している。
【0033】
蓋216は、当該樹脂組成物からなる樹脂層と、バリア層とを含む積層体であってもよい。具体的には、蓋216は、樹脂層に対して、アルミニウムなどからなるバリア層がラミネートされたラミネートフィルムであってもよい。蓋216は、樹脂層に、アルミニウムなどの金属板が積層された板状部材であってもよい。バリア層または金属板は、樹脂層の内部に配置されてもよい。
【0034】
溶着部217は、蓋216と周側壁部212とが互いに熱溶着されることで形成されている。蓋216と周側壁部212とは、溶着部217の形成に代えて、接着剤など他の公知の接合方法により互いに接合されてもよい。
【0035】
隔壁部220は、電極体100を向く面において少なくとも電気的絶縁性を有している。隔壁部220は、互いに隣り合う複数の電極体100同士の間に位置してケース本体210の収容空間Sを区画している。
【0036】
隔壁部220は、基部221と、第1突出部222と、第2突出部223とを有している(
図4参照)。基部221は平らな板状である。基部221は、第1方向D1に直交する平面方向に沿って延びている。すなわち、基部221は、第2方向D2および第3方向D3の両方に沿って延びている。
【0037】
第1突出部222は、基部221から、第1方向D1における一方側に突出している。第1突出部222は、複数の電極体100のうちの1つである第1電極体100Aと接している。
【0038】
第2突出部223は、基部221から、第1方向D1における他方側に突出している。第2突出部223は、複数の電極体100のうちの他の1つである、第2電極体100Bと接している。
【0039】
第1突出部222は、第1突出部222と接する電極体100(すなわち第1電極体100A)に向かって凸状に湾曲している。第2突出部223は、第2突出部223と接する電極体100(すなわち第2電極体100B)である第2電極体100Bに向かって凸状に湾曲している。
【0040】
本実施形態において、第1突出部222の第1方向D1における寸法は、第2方向D2の一方側から他方側にかけて略一定である(
図6参照)。しかしながら、第1突出部222の第1方向D1における寸法は、上記のように略一定でなくてもよい。
【0041】
図7は、実施形態1の各変形例に係る蓄電モジュールの部分断面図である。
図7(A)~(C)においては、
図6の蓄電モジュール1の部分断面図と同様の断面視にて、各変形例に係る蓄電モジュールが図示されている。
【0042】
図7(A)に示すように、第1変形例において、第1突出部222aの第1方向D1における寸法は、底壁部211に向かうに従って大きくなっている。
図7(B)に示すように、第2変形例において、第1突出部222bの第1方向D1における寸法は、底壁部211に向かうに従って小さくなっている。
図7(C)に示すように、第3変形例において、第1突出部222cの第1方向D1における寸法は、収容空間Sの第2方向D2における略中央に向かうに従って大きくなっている。なお、第2突出部223の第1方向D1における寸法も、第1突出部222,222a,222b,222cと同様の構成を取り得る。
【0043】
本実施形態に係るケース200は、複数の隔壁部220を有している。複数の隔壁部220は、第1隔壁部220Aと第2隔壁部220Bとを含む。複数の隔壁部220は、3以上の隔壁部を含んでもよい。
【0044】
ケース本体210の収容空間Sには、隔壁部220(第1隔壁部220A)によって、第1区画S1および隔壁部220(第1隔壁部220A)を介して第1区画S1と隣り合う第2区画S2が形成されている。また、収容空間Sには、第2隔壁部220Bによって、第1区画S1および第2隔壁部220Bを介して第1区画S1と隣り合う第3区画S3が形成されている。第3区画S3は、第1区画S1から見て第2区画S2の反対に位置している。
【0045】
第2隔壁部220Bも、第1隔壁部220Aと同様に、基部221と、第1突出部222と、第2突出部223とを有している。ただし、第2隔壁部220Bの第2突出部223は、第3電極体100Cに接している。
【0046】
すなわち、複数の電極体100のうち、第1電極体100Aが第1区画S1に収容されている。第2電極体100Bが、第2区画S2に収容されている。第3電極体100Cが、第3区画に収容されている。収容空間S(第1区画S1、第2区画S2、第3区画S3)には、電解液が注入されている。なお、電解液は図示されていない。電解液を注入する方法は特に限定されない。電解液は、蓋216によって開口OPが閉塞される前に、開口OPから注入されてもよい。
【0047】
複数の隔壁部220は、樹脂組成物で構成されるとともに底壁部211および周側壁部212と一体的に成形されている。本実施形態において、複数の隔壁部220および蓋216は、互いに熱溶着により接合されてもよいし、されていなくてもよい。
【0048】
なお、本実施形態において、上述の「一体的に成形される」方法としては、射出成形などの公知の方法により1つのステップで各構成部品の成形と接合とが同時に行われる方法、または、複数の構成部品がそれぞれ別個に成形された後、互いに溶着、溶接もしくは接着などの公知の接合方法により互いに接合される方法などが挙げられる。
【0049】
ここで、本実施形態における底壁部211、周側壁部212、蓋216、および、複数の隔壁部220を構成し得る樹脂組成物について説明する。
【0050】
上記樹脂組成物は、ベースポリマーとして、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリサイクリックオレフィンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂、これらの混合物、これらのアロイ、又はこれらの共重合体を含むことができる。ベースポリマーは、これらに制限されない。
【0051】
上記樹脂組成物は、ベースポリマーとしてポリオレフィン、液晶ポリマー、または、フッ素系樹脂を含み得る。ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)を含み得る。高密度ポリエチレン、液晶高分子、または、フッ素系樹脂は、比較的低い水蒸気透過率を有する。このため、これらを含む樹脂組成物を含むケース200は、耐透湿性が向上する。
【0052】
液晶ポリマーは、ヒドロキシ安息香酸のオリゴマーに由来する構造単位を含み得る。液晶ポリマーは、ヒドロキシ安息香酸のオリゴマー以外に、HNA(2,6-hydroxynaphthoic acid)、TPA(terephthalic acid)、IPA(isophthalic acid)、HQ(hydroquinone)、BP(biphenol)、PET(polyethylene terephthalate)、およびPEN(polyethylene naphthalate)からなる群より選択される2種以上をさらに含み、ヒドロキシ安息香酸(HBA)のオリゴマーとともに共重合したものであってもよい。
【0053】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、又はこれらの混合物又は共重合体などが挙げられる。フッ素系樹脂は、疎水性を帯びている。したがって、樹脂組成物の総重量を基準にして、樹脂組成物には、たとえば、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約3重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%のフッ素系樹脂が含み得る。フッ素系樹脂の含有量が上記の範囲内であれば場合、当該樹脂組成物からなる成形品は、外気と接触する成形品の表面から水分を遮断する効果を有すると考えられる。
【0054】
本実施形態において、蓋216を構成する樹脂組成物のベースポリマーと、周側壁部212および複数の隔壁部220を構成する樹脂組成物のベースポリマーは、いずれも同じものであることが好ましい。これにより、これらの構成部品が互いに容易に溶着される。ひいては、溶着部217を容易に形成できる。熱溶着を実施する観点からは、当該ベースポリマーはポリエチレンまたはポリプロピレンであることも好ましい。
【0055】
上記樹脂組成物は、水蒸気透過率抑制の観点から、無機吸湿剤や、グラファイトをさらに含み得る。また、上記樹脂組成物は、グラファイト以外にも、既存の水分バリア性物質として知られた物質をさらに含むことができる。
【0056】
次に、接続導電部材310および外部導電部材320について説明する。本実施形態において、蓄電モジュール1は、複数の接続導電部材310を備えている。複数の接続導電部材310は、第1接続導電部材310Aおよび第2接続導電部材310Bを含む。複数の接続導電部材310は、3つ以上の接続導電部材を含んでもよい。また、本実施形態において、蓄電モジュール1は、外部導電部材320として、第1外部導電部材320Aと、第2外部導電部材320Bとを含む。
【0057】
接続導電部材310(第1接続導電部材310A、第2接続導電部材310B)は、第1端部311Aと、第2端部311Bと、第1内面部312Aと、第2内面部312Bと、第1外面部313Aと、第2外面部313Bを有している。
【0058】
第1接続導電部材310Aにおいて、第1端部311Aは、第1方向D1における第1接続導電部材310Aの一方側の端部であって、ケース本体210の周側壁部212(一方の第2壁部214)に埋没している。第2端部311Bは、第1方向D1における第1接続導電部材310Aの他方側の端部であって、ケース本体210の周側壁部212(一方の第2壁部214)に埋没している。
【0059】
第1接続導電部材310Aにおいて、第1内面部312Aは、第1区画S1に露出して、第1電極体100Aの電極タブ(負極タブ122n)と電気的に接続している。第2内面部312Bは、第2区画S2に露出して、第2電極体100Bの電極タブ(正極タブ112p)と電気的に接続している。
【0060】
第2接続導電部材310Bにおいて、第1端部311Aは、第1方向D1における第2接続導電部材310Bの一方側の端部であって、ケース本体210の周側壁部212(他方の第2壁部214)に埋没している。第2端部311Bは、第1方向D1における第2接続導電部材310Bの他方側の端部であって、ケース本体210の周側壁部212(他方の第2壁部214)に埋没している。
【0061】
第2接続導電部材310Bにおいて、第1内面部312Aは、第1区画S1に露出して、第1電極体100Aの電極タブ(正極タブ112p)と電気的に接続している。第2内面部312Bは、第3区画S3に露出して、第3電極体100Cの電極タブ(負極タブ122n)と電気的に接続している。
【0062】
各接続導電部材310において、第1外面部313Aは、第1内面部312Aの反対側に位置して、孔部215からケース本体210の外部に露出している。各接続導電部材310には、第1内面部312A側の圧力を第1外面部313A側に解放可能な圧力解放弁314が設けられている。
【0063】
各接続導電部材310において、第2外面部313Bは、第2内面部312Bの反対側に位置して他の孔部215からケース本体210の外部に露出している。各接続導電部材310には、第2内面部312B側の圧力を第1外面部313A側に解放可能な他の圧力解放弁315が設けられている。
【0064】
第1外部導電部材320Aは、第3電極体100Cと第3方向D3において並び、第3電極体100Cと電気的に接続している。第2外部導電部材320Bは、第2電極体100Bと第3方向D3において並び、第2電極体100Bと電気的に接続している。
【0065】
各外部導電部材320は、第3内面部321と、外部接続面部322と、埋没端部323とを有している。
【0066】
第1外部導電部材320Aにおいて、第3内面部321は、収容空間S(第3区画S3)に露出して、第3電極体100Cの電極タブ(正極タブ112p)と電気的に接続している。第2外部導電部材320Bにおいて、第3内面部321は、収容空間S(第2区画S2)に露出して、第2電極体100Bの電極タブ(負極タブ122n)と電気的に接続している。
【0067】
各外部導電部材320において、外部接続面部322は、第1方向D1においてケース本体210の外部に露出している。埋没端部323は、第1方向D1における外部接続面部322側とは反対側の端部であって、ケース本体210に埋没している。
【0068】
各外部導電部材320は、第3外面部324をさらに有している。第3外面部324は、第3内面部321の反対側に位置している。第3外面部324は、複数の孔部215のうちの1つからケース本体210の外部に露出している。各外部導電部材320には、第3内面部321側の圧力を第3外面部324側に解放可能なさらに他の圧力解放弁325が設けられている。
【0069】
各接続導電部材310および各外部導電部材320は、たとえばステンレス鋼、アルミニウム、または銅などの金属からなる。
【0070】
本実施形態において、蓄電モジュール1は、複数の集電部材400をさらに備える。複数の集電部材400は、それぞれ、各電極体100の正極タブ112pと接続導電部材310または外部導電部材320との間、および、各電極体100の負極タブ122nと接続導電部材310または外部導電部材320との間に配置されている。各集電部材400は、それぞれ、各々の正極タブ112pまたは各々の負極タブ122nに溶接により接合されている。各集電部材400は、隣り合う第1内面部312A、第2内面部312B、または、第3内面部321に溶接により接合されている。
【0071】
複数の集電部材400はたとえばアルミニウムまたは銅などの金属材料を含み得る。なお、蓄電モジュール1は、集電部材400を含んでいなくてもよい。集電部材400を含んでいない場合、各々の正極タブ112pおよび各々の負極タブ122nは、隣り合う第1内面部312A、第2内面部312B、または、第3内面部321に溶接により直接接合されてもよい。
【0072】
上述のように、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1は、複数の電極体100と、ケース200とを備えている。複数の電極体100は、第1方向D1に並んでいる。ケース200は、複数の電極体100を収容している。ケース200は、ケース本体210と、少なくとも1つの隔壁部220とを有している。ケース本体210は、電気的絶縁性を有し、複数の電極体100を取り囲んでいる。隔壁部220は、電気的絶縁性を有し、互いに隣り合う複数の電極体100同士の間に位置してケース本体210の収容空間Sを区画している。隔壁部220は、基部221と、第1突出部222とを有している。基部221は板状であり、第1方向D1に直交する平面方向に沿って延びている。第1突出部222は、基部221から、第1方向D1における一方側に突出して複数の電極体100のうちの1つと接している。
【0073】
上記の構成によれば、基部221を比較的薄くすることでケース200の収容空間Sを大きくできる。一方で、第1突出部222と基部221とで構成された部分においては、隔壁部220の厚さが比較的厚い。このため、第1突出部222と電極体100とが接するように構成することで、ケース200の収容空間Sにおける電極体100の保持力の低下を抑制できる。
【0074】
さらに、本開示の実施形態1係る蓄電モジュール1において、第1突出部222は、第1突出部222と接する電極体100に向かって凸状に湾曲している。
【0075】
上記の構成によれば、第1突出部222が凸状に湾曲していることで、電極体100のうち第1突出部222と接する部分に応力が集中することを抑制できる。
【0076】
また、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1において、第1突出部222aの第1方向D1における寸法は、底壁部211に向かうに従って大きくなってもよい。
【0077】
上記の構成によれば、隔壁部220によって区画された収容空間S内に、開口OP側から電極体100を容易に挿入できる。また、第1突出部222aの内面が第2方向D2に対して傾き、いわゆる抜き勾配として機能し得る。よって、ケース本体210の成型が容易となり得る。
【0078】
また、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1において、第1突出部222bの第1方向D1における寸法は、底壁部211に向かうに従って小さくなってもよい。
【0079】
上記の構成によれば、第1突出部222bによって、隔壁部220によって区画された収容空間S内に収容された電極体100が、第2方向D2に変位することを抑制できる。
【0080】
(実施形態2)
以下、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールについて説明する。本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールにおいては、蓋の構造が主に、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュールと異なっている。よって、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールにおいて、実施形態1と同様の構成および効果については説明を繰り返さない。
【0081】
図8は、実施形態2に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
図8に示すように、本開示の実施形態2においては、蓋216aが、蓋本体部218と、ガスケット219とを有している。ガスケット219は、蓋本体部218および周側壁部212aの間に挟まれている。これにより、比較的簡易な方法で、ケース本体210の密閉性を高めることが可能となる。
【0082】
蓋本体部218は、実施形態1における蓋216と同様の構成を有し得る。剛性を高める観点から、蓋本体部218は樹脂組成物の内部に金属板を含む板状部材であることが好ましい。ガスケット219は、板状の部材であってもよいし、Oリングなどの線状の部材であってもよい。ガスケット219は、蓋本体部218と各隔壁部220との間にさらに配置されてもよい。周側壁部212aのうちガスケット219と接する部分は、ガスケット219の外形に沿う形状(たとえば溝状の外形)を有してもよい。
【0083】
蓋216aは、さらに複数の締結部材250を有してもよい。締結部材250はたとえばボルトである。複数の締結部材250により、蓋本体部218と、周側壁部212aとが互いに固定される。
【0084】
(実施形態3)
以下、本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールについて説明する。本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールにおいては、蓋本体部の構造が主に、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールと異なっている。よって、本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールにおいて、実施形態2と同様の構成および効果については説明を繰り返さない。
【0085】
図9は、実施形態3に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
図9に示すように、本実施形態において、蓋本体部218bは、周端に沿うように設けられた爪部260を有している。周側壁部212bは、周側壁部212bの外面に沿って設けられた凹条部270を有している。蓋本体部218bは、爪部260が凹条部270に嵌合することで固定される。また、本実施形態においては、蓋本体部218bの中央部上に、他の部材からなる錘が設けられてもよい。これにより、爪部260と凹条部270の嵌合部分を支点として蓋本体部218bの中央部が変形することを抑制できる。
【0086】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 蓄電モジュール、100 電極体、100A 第1電極体、100B 第2電極体、100C 第3電極体、110 正極電極、112 正極集電箔、112p 正極タブ、114 正極活物質層、120 負極電極、122 負極集電箔、122n 負極タブ、124 負極活物質層、130 セパレータ、132a 介在部、132b 上折返し部、132c 下折返し部、132d 最外被覆部、132e 終端、200 ケース、210 ケース本体、211 底壁部、212,212a,212b 周側壁部、213 第1壁部、214 第2壁部、215 孔部、216,216a 蓋、217 溶着部、218,218b 蓋本体部、219 ガスケット、220 隔壁部、220A 第1隔壁部、220B 第2隔壁部、221 基部、222,222a,222b,222c 第1突出部、223 第2突出部、250 締結部材、260 爪部、270 凹条部、310 接続導電部材、310A 第1接続導電部材、310B 第2接続導電部材、311A 第1端部、311B 第2端部、312A 第1内面部、312B 第2内面部、313A 第1外面部、313B 第2外面部、314,315,325 圧力解放弁、320 外部導電部材、320A 第1外部導電部材、320B 第2外部導電部材、321 第3内面部、322 外部接続面部、323 埋没端部、324 第3外面部、400 集電部材、OP 開口、S 収容空間、S1 第1区画、S2 第2区画、S3 第3区画。