(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006253
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20250109BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20250109BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G05B23/02 302V
G06F11/07 151
G06F11/34 147
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106925
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇作
(72)【発明者】
【氏名】魚森 良保
【テーマコード(参考)】
3C223
5B042
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA04
3C223AA05
3C223AA06
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF26
3C223FF35
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
5B042KK20
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC08
(57)【要約】
【解決手段】 対象の状態を示す測定データを取得する取得部と、前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得部により取得された測定データを供給する供給部と、前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定部と、を備える装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の状態を示す測定データを取得する取得部と、
前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得部により取得された測定データを供給する供給部と、
前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定部と、
を備える装置。
【請求項2】
前記対象の状態が正常である期間ごとに、前記取得部により取得された当該期間の測定データを含む学習データを用いた学習処理によって、前記複数の分類モデルに含まれる新たな分類モデルを生成する学習処理部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである2つ以上の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する2つ以上の分類モデルから、前記複数の分類モデルを選択する選択部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記選択部は、最も新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである少なくとも1つの分類モデルを前記複数の分類モデルの少なくとも1つとして選択する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記2つ以上の分類モデルのうち、オペレータによって指定された少なくとも1つの分類モデルを前記複数の分類モデルの少なくとも1つとして選択する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記複数の分類結果の論理積をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記複数の分類結果の多数決をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記複数の分類モデルのうち、より新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである分類モデルの分類結果に対して、より大きい重みを加え、前記複数の分類結果の重み付き多数決をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記対象の状態が異常であると連続して判定された回数に基づいて、前記対象の異常状態の深刻度を決定する決定部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記取得部により取得されて前記供給部から前記複数の分類モデルに供給された各期間の測定データのうち、前記決定部により決定された深刻度が基準深刻度よりも低い期間の測定データと、前記取得部により取得されて前記供給部から前記複数の分類モデルに供給された測定データのうち、前記決定部により決定された深刻度が基準深刻度となるまで連続した異常判定を引き起こした各測定データ、および、当該測定データに続いて連続した異常判定を引き起こした各測定データを除いた測定データとの何れか一方を、新たな学習データに含める測定データとして設定する設定部をさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
対象の状態を示す測定データを取得する取得段階と、
前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得段階により取得された測定データを供給する供給段階と、
前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定段階と、
を備える方法。
【請求項12】
コンピュータを、
対象の状態を示す測定データを取得する取得部と、
前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得部により取得された測定データを供給する供給部と、
前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定部
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には「…閾値を用いて、設備10の異常の有無を検出してよい」(段落0055)等と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2020-95425号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、対象の状態を示す測定データを取得する取得部と、前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得部により取得された測定データを供給する供給部と、前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定部と、を備える装置が提供される。
【0004】
上記の装置においては、前記対象の状態が正常である期間ごとに、前記取得部により取得された当該期間の測定データを含む学習データを用いた学習処理によって、前記複数の分類モデルに含まれる新たな分類モデルを生成する学習処理部をさらに備えてよい。
【0005】
上記の何れかの装置においては、前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである2つ以上の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する2つ以上の分類モデルから、前記複数の分類モデルを選択する選択部をさらに備えてよい。
【0006】
選択部を備える上記の装置においては、前記選択部は、最も新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである少なくとも1つの分類モデルを前記複数の分類モデルの少なくとも1つとして選択してよい。
【0007】
選択部を備える上記何れかの装置においては、前記選択部は、前記2つ以上の分類モデルのうち、オペレータによって指定された少なくとも1つの分類モデルを前記複数の分類モデルの少なくとも1つとして選択してよい。
【0008】
上記何れかの装置においては、前記判定部は、前記複数の分類結果の論理積をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。
【0009】
上記何れかの装置においては、前記判定部は、前記複数の分類結果の多数決をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。
【0010】
上記の装置においては、前記判定部は、前記複数の分類モデルのうち、より新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである分類モデルの分類結果に対して、より大きい重みを加え、前記複数の分類結果の重み付き多数決をとって前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。
【0011】
上記何れかの装置においては、前記対象の状態が異常であると連続して判定された回数に基づいて、前記対象の異常状態の深刻度を決定する決定部をさらに備えてよい。
【0012】
上記の装置においては、前記取得部により取得されて前記供給部から前記複数の分類モデルに供給された各期間の測定データのうち、前記決定部により決定された深刻度が基準深刻度よりも低い期間の測定データと、前記取得部により取得されて前記供給部から前記複数の分類モデルに供給された測定データのうち、前記決定部により決定された深刻度が基準深刻度となるまで連続した異常判定を引き起こした各測定データ、および、当該測定データに続いて連続した異常判定を引き起こした各測定データを除いた測定データとの何れか一方を、新たな学習データに含める測定データとして設定する設定部をさらに備えてよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、対象の状態を示す測定データを取得する取得段階と、前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得段階により取得された測定データを供給する供給段階と、前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定段階と、を備える方法が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様においては、コンピュータを、対象の状態を示す測定データを取得する取得部と、前記対象の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みである複数の分類モデルであって、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する複数の分類モデルに対し、前記取得部により取得された測定データを供給する供給部と、前記複数の分類モデルから出力される複数の分類結果に基づいて前記対象の状態を正常または異常の何れかとして判定する判定部として機能させるプログラムが提供される。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】判定結果と、異常判定回数xと、深刻度との関係を示す。
【
図4】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
<1.システム1>
図1は、本実施形態に係るシステム1を示す。システム1は、設備2と、装置3とを備える。
【0019】
<1.1.設備2>
設備2は、対象の一例であってよく、装置3によって状態を監視されてよい。設備2は、1または複数の機器(図示せず)が備え付けられた施設や装置等であってよい。例えば、設備2は、プラントであってもよいし、複数の機器を複合させた複合装置であってもよい。プラントとしては、化学やバイオ等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等が挙げられる。設備2に備え付けられる機器は器具、機械または装置等であり、いわゆるフィールド機器であってよい。例えば、機器は、圧力計、流量計、温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、またはファンやモータ等のアクチュエータ機器であってよい。
【0020】
設備2には、1または複数のセンサ20が設けられていてよい。各センサ20は、設備2の状態を示す物理量を測定してよい。測定される物理量は、例えば圧力や温度、pH、速度、流量などであってもよいし、設備2による生産物の収量や、生産物に混入する不純物の割合などであってもよい。各センサ20は互いに異種でもよいし、少なくとも一部の2以上のセンサ20が同種でもよい。各センサ20は、物理量の測定値などを装置3に供給してよい。センサ20と、装置3との間の通信は、例えばISA(International Society of Automation:国際計測制御学会)の無線通信プロトコルで行われてよく、一例としてISA100、HART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等で行われてよい。
【0021】
<1.2.装置3>
装置3は、取得部31と、記憶部32と、供給部33と、判定部34と、決定部35と、出力部36と、設定部37と、学習処理部38と、選択部39とを有する。
【0022】
<1.2.1.取得部31>
取得部31は、設備2の状態を示す測定データを取得する。取得部31は、単一のセンサ20により測定された1種類の測定値を含む測定データを取得してもよいし、複数のセンサ20により互いに同一(または概ね同一)のタイミングで測定された複数種類の測定値を含む測定データを取得してもよい。測定データには、センサ20による測定タイミング、または、取得部31による取得タイミングを示すタイムスタンプが付加されていてよい。取得部31は、取得した測定データを記憶部32に供給して後述の測定データファイル321に格納させてよい。取得部31は、取得した測定データを供給部33に供給してよい。
【0023】
<1.2.2.記憶部32>
記憶部32は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部32は、測定データファイル321と、複数の分類モデル322とを記憶してよい。
【0024】
<1.2.2(1).測定データファイル321>
測定データファイル321は、取得部31から供給される測定データを格納する。なお、測定データファイル321内の各測定データは、当該測定データのタイムスタンプによって、基準時間幅(本実施形態においては一例として1週間)ごとに異なる複数の期間のうち、何れの期間に属するかが示されてよい。例えば、2023年1月1日のタイムスタンプによれば測定データが2023年の第1週の期間に属することが示されてよく、2023年1月8日のタイムスタンプによれば測定データが2023年の第2週の期間に属することが示されてよい。
【0025】
<1.2.2(2).分類モデル322>
各分類モデル322は、測定データが入力されることに応じて、当該測定データを正常または異常の何れかとして分類する。各分類モデル322は、正常を示す値と、異常を示す値とで2値化された分類結果を出力してよい。各分類モデル322は、分類結果を判定部34に出力してよい。
【0026】
各分類モデル322は、設備2の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データによりそれぞれ学習済みであってよい。設備2の状態が正常である期間の測定データとは、設備2の状態が正常である期間に測定された測定値を含む測定データであってよい。設備2の状態が正常である期間は、設備2の状態が正常であると、オペレータまたは後述の判定部34の少なくとも一方によって判定された期間であってよい。期間ごとの学習データは、それぞれ2以上のタイミングで測定された測定データ(一例として時系列順の測定データ)を含んでよい。期間ごとの学習データは、本実施形態においては一例として、互いに同じ時間幅(基準時間幅とも称する)の期間内の測定データを含んでよい。基準時間幅は一例として1週間であってよい。互いに異なる期間とは、始期または終期の少なくとも一方が異なる期間であってよく、本実施形態においては一例として、共通の時点を含まない期間であってよい。
【0027】
各分類モデル322は、学習データに含まれる測定データの特徴から導出される条件を分類対象の測定データが満たすことに応じて当該測定データを正常と分類し、満たさないことに応じて当該測定データを異常と分類してよい。学習データに含まれる測定データの特徴は、各種類の測定値の分布を示す値であってよく、一例として最大値、最小値、平均値、中央値、最頻値、標準偏差、または、分散の少なくとも1つであってよいが、計時的な測定値の波形を示す値であってもよい。測定データの特徴から導出される条件は、一例として分類対象の測定データの測定値が最小値~最大値の範囲内に収まることであってもよいし、(平均値―3σ)~(平均値+3σ)の範囲に収まること(但しσは標準偏差を示す)であってもよい。
【0028】
各分類モデル322は、正常な測定データとして予め分類された測定データを含む学習データのみを用いた教師なし学習によって学習されてよく、互いに同じ学習アルゴリズムによって生成されてよい。本実施形態においては一例として各分類モデル322は、ワンクラスSVM(Support Vector Machine)の学習アルゴリズムにより生成されてよい。各分類モデル322は、別々の学習データを用いて学習されてよい。
【0029】
記憶部32に記憶される各分類モデル322の少なくとも1つは、後述の学習処理部38による学習処理によって生成されてよい。記憶部32に記憶される各分類モデル322の少なくとも1つは、判定部34での判定に用いられる分類モデル322(使用対象の分類モデル322とも称する)であってよい。詳細は後述するものの、使用対象の分類モデル322は、選択部39により選択されてよい。
【0030】
<1.2.3.供給部33>
供給部33は、1または複数の分類モデル322に対し、取得部31により取得された測定データを供給する。供給部33は、使用対象の各分類モデル322に対して測定データを供給してよい。これにより、測定データが供給された使用対象の各分類モデル322から判定部34に分類結果が出力されてよい。
【0031】
<1.2.4.判定部34>
判定部34は、複数の分類モデル322から出力される複数の分類結果に基づいて、設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定する。判定部34は、使用対象の各分類モデル322から分類結果を取得して判定を行ってよい。
【0032】
判定部34は、複数の分類結果の論理積をとって設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。本実施形態では一例として、判定部34は、測定データが異常であるという分類結果を真(True)、測定データが正常であるという分類結果を偽(False)として複数の分類結果の論理積をとってよく、別言すれば、全ての分類結果において測定データが異常とされることに応じて設備2の状態を異常とし、少なくとも1つの分類結果において測定データが正常とされることに応じて設備2の状態を正常としてよい。判定部34は、判定結果を決定部35に供給してよい。
【0033】
<1.2.5.決定部35>
決定部35は、設備2の状態が異常であると連続して判定された回数(連続した異常判定回数とも称する)に基づいて、設備2の異常状態の深刻度を決定する。異常であると連続して判定されるとは、正常であるとの判定結果を挟まずに異常であるとの判定結果が続くことであってよい。
【0034】
決定部35は、連続した異常判定回数が多いほど、深刻度を高く決定してよい。例えば、決定部35は、連続した異常判定回数を「x」、第1の基準回数を「a」(但しaは2以上の自然数)、第2の基準回数を「b」(但しbはa<bの自然数)とした場合に、x<aであることに応じて深刻度を低レベル、a≦x<bであることに応じて深刻度を中レベル(注意レベルとも称する)、b≦xであることに応じて深刻度を高レベル(警告レベルとも称する)と決定してよい。一例として、第1の基準回数aは5回、第2の基準回数bは10回であってよい。
【0035】
決定部35は、判定部34から判定結果が供給される毎に深刻度を決定してよい。決定部35は、決定した深刻度と、判定部34による判定結果とを合わせて出力部36および設定部37に供給してよい。
【0036】
<1.2.6.出力部36>
出力部36は、判定部34による判定の結果と、決定部35による決定の結果とを出力する。出力部36は、図示しない表示装置に判定および決定の結果を表示させてよい。
【0037】
<1.2.7.設定部37>
設定部37は、取得部31により取得されて供給部33から使用対象の分類モデル322に供給された各期間の測定データのうち、決定部35により決定された深刻度が基準深刻度よりも低い期間の測定データを、新たな学習データに含める測定データ(学習用の測定データとも称する)として設定する。使用対象の分類モデル322に供給された各期間の測定データのうち、決定部35により決定された深刻度が基準深刻度よりも低い期間の測定データとは、期間ごとの測定データのうち、決定部35により決定された深刻度が基準深刻度よりも低く維持された期間の測定データであってよい。深刻度が基準深刻度よりも低いとは、設備2が正常であることであってもよいし、設備2が異常ではあるものの異常の深刻度が基準深刻度未満であることであってもよい。基準深刻度は、本実施形態においては一例として高レベル、つまり警告レベルであってよい。
【0038】
なお、深刻度が基準深刻度よりも低い期間では、設備2の状態が異常と判定されているとしても、異常状態が一時的、単発的しか生じていないため、本来的には設備2が正常であるにも関わらず測定値のノイズやドリフト等によって測定データが異常と分類されていると考えられる。設定部37は、このように本来的には設備2が正常である期間の測定データを、学習用の測定データとして設定してよい。
【0039】
設定部37は、測定データファイル321における各期間の測定データのうち、深刻度が基準深刻度よりも低い各期間の測定データに対し、学習用の測定データであることを示すラベル(学習用ラベルとも称する)を付加してよい。本実施形態においては一例として設定部37は、決定部35から深刻度の決定結果が供給される毎に、決定された深刻度が高レベル未満であるか否かを判定し、深刻度が高レベル未満に維持された期間の測定データに対して学習用ラベルを付加してよい。設定部37は、学習用ラベルを測定データに付加したことに応じて、その旨の通知を学習処理部38に供給してよい。
【0040】
<1.2.8.学習処理部38>
学習処理部38は、設備2の状態が正常である期間ごとに、取得部31により取得された当該期間の測定データを含む学習データを用いた学習処理によって、記憶部32に記憶される複数の分類モデル322に含まれる新たな分類モデル322を生成する。設備2の状態が正常である期間ごとに新たな分類モデル322を生成するとは、設備2の状態が正常である期間それぞれについて、新たな分類モデル322を生成することであってよい。
【0041】
学習処理部38は、測定データに学習用ラベルを付加した旨の通知を設定部37から受けたことに応じて、測定データファイル321において学習用ラベルが付加された測定データのうち、直近の期間の測定データを含む学習データを用いて、新たな分類モデル322を生成してよい。従って、連続する複数の期間の測定データに対し学習用ラベルが付加される場合には、各期間が経過する毎に新たな分類モデル322が生成されてよい。
【0042】
学習処理部38は、学習用ラベルの付加によって予め分類された測定データを含む学習データのみを用いた教師なし学習によって分類モデル322を生成してよく、本実施形態においては一例としてワンクラスSVMの学習アルゴリズムにより分類モデル322を生成してよい。学習処理部38は、分類モデル322を生成したことに応じて、その旨を示す通知を選択部39に供給してよい。
【0043】
<1.2.9.選択部39>
選択部39は、記憶部32に記憶された各分類モデル322から使用対象の分類モデル322を選択する。記憶部32に2つ以上の分類モデル322が記憶されている場合には、選択部39は、使用対象の複数の分類モデル322を、当該2つ以上の分類モデル322から選択してよい。選択部39は、記憶部32に基準数(一例として4つ)以上の分類モデル322が記憶されている場合には、使用対象の分類モデル322として基準数の分類モデル322を選択してよい。
【0044】
選択部39は、最も新しい期間の測定データを含む学習データによって学習済みである少なくとも1つの分類モデル322を、使用対象の分類モデル322の少なくとも1つとして選択してよい。選択部39は、新たに分類モデル322を生成した旨の通知を学習処理部38から受けることに応じて、使用対象の分類モデル322をそれぞれ選択してよい。選択部39は、使用対象の分類モデル322の識別情報を供給部33に供給することで、使用対象の分類モデル322に対して供給部33から測定データを供給させてよい。
【0045】
以上の装置3によれば、分類モデル322に測定データを供給して出力される、当該測定データについての正常または異常の複数の分類結果に基づいて、設備2の状態が正常または異常として判定される。従って、測定データについて正常または異常の度合いを示す指標値を取得し、当該指標値を閾値と比較して判定を行う場合と異なり、オペレータが試行錯誤により閾値を設定する手間を解消し、閾値の大きさによって判定結果が異なってしまうのを防止することができる。
また、設備2の状態が正常である期間の測定データを含む、互いに異なる期間ごとの学習データにより学習された複数の分類モデル322を用いるので、設備2の状態が正常である複数期間の測定データそれぞれを含む学習データによって学習された単一の分類モデルを用いる場合と比較して、高精度な分類結果を取得することができる。すなわち、設備2の状態が正常であっても、例えば測定値がドリフトする場合や、設備2の状態が変化する場合、設備2の運転手法が変更される場合などには、測定値の傾向が変化し得る。また、設備2の状態が正常であっても、測定値には様々なノイズが含まれ得る。このように測定値の傾向が変化する場合や測定値に様々なノイズが含まれる場合に、複数の期間の測定データそれぞれを含めた学習データにより学習された単一の分類モデルを用いると、分類対象の測定データが個々の期間では正常の範囲から逸脱する場合であっても、複数の期間の全体としては正常の範囲に包含される場合には、分類対象の測定データが正常な測定データとして分類され得る。これに対し、互いに異なる期間ごとの学習データにより学習された複数の分類モデル322を用いると、分類対象の測定データが個々の期間で正常の範囲から逸脱する場合に、各分類モデル322によって当該測定データを異常な測定データとして正しく分類することができる。そして、このような分類結果を複数用いて判定を行うことにより、精度の高い判定結果を取得することができる。
【0046】
また、複数の分類モデル322による複数の分類結果の論理積をとって設備2の状態が正常または異常として判定されるので、論理和をとって判定される場合と比較して、精度の高い判定結果を取得することができる。
【0047】
また、設備2の状態が正常である期間ごとに、当該期間の測定データを含む学習データを用いた学習処理によって新たな分類モデル322が生成される。従って、測定データの傾向の変化に応じた分類モデル322を逐次、生成して判定に用いることができるため、精度の高い判定結果を取得することができる。
【0048】
また、記憶部32に記憶された2つ以上の分類モデル322から使用対象の複数の分類モデル322が選択される。従って、適切な分類モデル322を適宜、選択して判定に用いることができる。
【0049】
また、最も新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである1つの分類モデル322が使用対象の分類モデル322の少なくとも1つとして選択されるので、設備2の直近の状態に応じた分類モデル322を判定に用いることができる。
【0050】
また、設備2の状態が異常であると連続して判定された回数に基づいて、設備2の異常状態の深刻度が決定されるので、状態異常の深刻度を取得することができる。
【0051】
また、複数の分類モデル322に供給された各期間の測定データのうち、深刻度が基準深刻度よりも低い期間の測定データが、新たな学習データに含められる測定データとして設定される。従って、本来的には設備2が正常である期間の測定データを学習用として設定することができるため、このような測定データを含む新たな学習データを用いて分類モデル322を生成することにより、本来的に正常な測定データを正しく正常と分類し得る分類モデル322を取得することができる。
【0052】
<2.装置3の動作>
図2は、装置3の動作を示す。装置3は、ステップS1~S55の処理を行うことにより、設備2の監視を支援する。なお、本実施形態においては一例として、本動作の開始時点において記憶部32には分類モデル322が記憶されていないこととして説明する。
【0053】
ステップS1において取得部31は、設備2の状態が正常である期間(一例として基準時間幅の期間)の測定データを取得する。本ステップにおいて設備2の状態が正常である期間は、設備2の状態が正常であるとオペレータによって判定された期間であってよく、一例として、基準時間幅の期間に亘って設備2の状態が正常であるとオペレータによって判定された場合には当該期間であってよく、基準時間幅より長い期間に亘って設備2の状態が正常であるとオペレータによって判定された場合には、その期間に含まれる基準時間幅の期間であってよい。取得される測定データは、設備2の状態が正常であるとオペレータによって判定された期間の測定値を含んでよい。取得される測定データは分類モデル322の学習用であってよく、予め学習用ラベルが付加されてよい。取得部31は、1または複数のセンサ20から測定値を取得して測定データとしてよい。取得部31は、取得した測定データに対し、いわゆる前処理を行ってよい。一例として、取得部31は、取得済みの直近の複数の測定データから測定値の移動平均を算出して、取得される測定データの測定値としてもよいし、取得した測定データの測定値のうち、過去の測定データを用いた統計解析によって検出される外れ値を除去してもよい。
【0054】
ステップS3において学習処理部38は、ステップS1で取得された測定データを含む学習データを用いた学習処理によって、新たな分類モデル322を生成する。学習処理部38は、生成した新たな分類モデル322を記憶部32に記憶させてよい。
【0055】
ステップS5において選択部39は、ステップS3によって生成された分類モデル322を、使用対象の分類モデル322として選択する。これにより、選択された分類モデル322に対し、後述のステップS15において測定データが供給されてよい。
【0056】
ステップS11において供給部33は、基準時間幅の計時を開始する。これにより新たな期間が開始してよい。
【0057】
ステップS13において取得部31は、設備2の状態を示す測定データを取得する。取得部31は、1または複数のセンサ20から測定値を取得して測定データとしてよい。取得部31は、上述のステップS1と同様にして、取得した測定データに対し前処理を行ってよい。
【0058】
ステップS15において供給部33は、ステップS13で取得された測定データを少なくとも1つの分類モデル322に供給する。これにより、測定データが供給された各分類モデル322から、測定データを正常または異常に分類した分類結果が出力されてよい。
【0059】
供給部33は、選択部39によって選択された使用対象の各分類モデル322に測定データを供給してよい。一例として、上述のステップS5により単一の分類モデル322のみが使用対象として選択されている場合には、供給部33は、当該単一の分類モデル322に測定データを供給してよい。後述のステップS55により複数の分類モデル322が使用対象として選択されている場合には、供給部33は、選択された各分類モデル322に測定データを供給してよい。ステップS15が2回目以降に行われる場合には、ステップS15の処理は基準インターバル(一例として30分)ごとに実行されてよい。
【0060】
ステップS17において判定部34は、使用対象の各分類モデル322から測定データの分類結果を取得する。
【0061】
ステップS19において判定部34は、ステップS17で取得した各分類結果に基づいて、設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定する。
【0062】
判定部34は、上述のステップS17において単一の分類モデル322から単一の分類結果のみが取得されている場合には、当該単一の分類結果に基づいて設備2の状態を正常または異常として判定してよい。一例として、判定部34は、測定データが正常であるという分類結果に基づいて設備2の状態を正常と判定し、測定データが異常であるという分類結果に基づいて設備2の状態を異常と判定してよい。
【0063】
判定部34は、上述のステップS17において複数の分類モデル322から複数の分類結果が取得されている場合には、当該複数の分類結果に基づいて、設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。判定部34は、複数の分類結果の論理積をとって設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定してよい。ステップS19において設備2が正常と判定された場合(ステップS19;正常)には、ステップS41に処理が移行してよい。ステップS19において設備2が異常と判定された場合(ステップS19;異常)には、ステップS21に処理が移行してよい。
【0064】
ステップS21において決定部35は、連続した異常判定回数xをインクリメントする。ステップS21が最初に行われる場合には、連続した異常判定回数は初期値の0から1にインクリメントされてよい。
【0065】
ステップS23において決定部35は、連続した異常判定回数xが第1の基準回数a未満であるか、つまりx<aであるか否かを判定する。x<aであると判定された場合(ステップS23;Yes)にはステップS25に処理が移行してよい。x<aではない、つまりa≦xであると判定された場合(ステップS23;No)にはステップS27に処理が移行してよい。
【0066】
ステップS25において決定部35は、設備2の異常状態の深刻度を低レベルに決定する。ステップS25の処理が完了したら、後述のステップS45に処理が移行してよい。
【0067】
ステップS27において決定部35は、連続した異常判定回数xが第1の基準回数a以上、第2の基準回数b未満であるか、つまりa≦x<bであるか否かを判定する。a≦x<bであると判定された場合(ステップS27;Yes)にはステップS29に処理が移行してよい。a≦x<bではない、つまりb≦xであると判定された場合(ステップS27;No)にはステップS31に処理が移行してよい。
【0068】
ステップS29において決定部35は、設備2の異常状態の深刻度を中レベル、つまり注意レベルに決定する。ステップS29の処理が完了したら、後述のステップS45に処理が移行してよい。
【0069】
ステップS31において決定部35は、設備2の異常状態の深刻度を高レベル、つまり警告レベルに決定する。ステップS31の処理が完了したら、後述のステップS45に処理が移行してよい。
【0070】
ステップS41において決定部35は、連続した異常判定回数xを0にリセットする。
ステップS43において決定部35は、設備2の異常状態の深刻度を0に決定する。
【0071】
ステップS45において出力部36は、ステップS19での判定部34による判定の結果と、ステップS25、S29、S31またはS43での決定部35による決定の結果とを出力する。出力部36は、図示しない表示装置に判定および決定の結果を表示させてよい。
【0072】
ステップS47において供給部33は、基準時間幅の計時が完了したか否か、つまり上述のステップS11から基準時間幅の期間(本実施形態においては一例として1週間)が経過したか否かを判定する。基準時間幅の期間が経過したと判定された場合(ステップS47;Yes)にはステップS49に処理が移行してよい。基準時間幅の期間が経過していないと判定された場合(ステップS47;No)にはステップS13に処理が移行してよい。
【0073】
ステップS49において設定部37は、直近の期間において当該期間において深刻度が基準深刻度(本実施形態においては一例として高レベル)未満に維持されたか否かを判定する。深刻度が高レベル未満に維持されていないと判定された場合(ステップS49;No)には、上述のステップS11に処理が移行してよい。深刻度が高レベル未満に維持されたと判定された場合(ステップS49;Yes)には、ステップS51に処理が移行してよい。
【0074】
ステップS51において設定部37は、直近の期間の測定データを、新たな学習データに含める測定データとして設定する。本実施形態では一例として、設定部37は、ステップS19において設備2の状態が正常であるとの判定が維持された期間の測定データを、新たな学習データに含める測定データとして設定してよい。これに加えて、設定部37は、ステップS25,S29,S43において深刻度が低レベル、中レベル、または、0に決定されることで深刻度が高レベル未満に維持された期間の測定データを、新たな学習データに含める測定データとして設定してよい。設定部37は、測定データファイル321に記憶された直近の期間の測定データに対して学習用ラベルを付加してよい。
【0075】
ステップS53において学習処理部38は、学習用ラベルが付加された直近の期間の測定データを含む学習データを用いた学習処理によって、新たな分類モデル322を生成する。学習処理部38は、生成した新たな分類モデル322を記憶部32に追加して記憶させてよい。
【0076】
ステップS55において選択部39は、記憶部32に記憶された複数の分類モデル322から使用対象の分類モデル322を選択する。これにより、選択された使用対象の各分類モデル322に対し、上述のステップS15において測定データが供給されてよい。
【0077】
選択部39は、記憶部32に基準数以下の分類モデル322しか記憶されていない場合には、各分類モデル322を使用対象の分類モデル322として選択してよい。記憶部32に基準数よりも多い分類モデル322が記憶されている場合には、選択部39は、これらの分類モデル322から基準数の分類モデル322を使用対象の分類モデル322として選択してよい。例えば、選択部39は、記憶部32内の各分類モデル322のうち、ステップS53により生成された最も新しい少なくとも1つの分類モデル322を使用対象の分類モデル322として選択してよい。これにより、記憶部32における分類モデル322の個数が基準数に達するまでは全ての分類モデル322によって測定データの分類が行われ、記憶部32における分類モデル322の個数が基準数を超えた後には、選択される基準数の分類モデル322によって測定データの分類が行われてよい。選択部39は、記憶部32の容量に応じて、先に生成された分類モデル322を逐次、削除してよい。ステップS55の処理が完了したら、上述のステップS11に処理が移行してよい。
【0078】
<3.動作例>
図3は、判定結果と、連続した異常判定回数xと、異常の深刻度との関係を示す。なお、本図において横軸は時間を示し、上下方向の破線は期間の区切りを示す。
【0079】
本図に示されるように、連続した異常判定回数xは、設備2の状態が異常であるとの判定結果が連続することに応じてインクリメントされ、設備2の状態が正常であるとの判定結果に応じてリセットされる。また、連続した異常判定回数xが0の場合には深刻度は0となり、連続した異常判定回数xが1~4の場合には深刻度は低レベルとなり、連続した異常判定回数xが5~9の場合には深刻度は中レベル(つまり注意レベル)となり、連続した異常判定回数xが10異常の場合には深刻度は高レベル(つまり警告レベル)となる。
【0080】
<4.変形例>
なお、上記の実施形態においては、選択部39は最も新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである少なくとも1つの分類モデル322を使用対象の分類モデル322の少なくとも1つとして選択することとして説明したが、これに加えて、または、これに代えて、記憶部32に記憶された2つ以上の分類モデル322のうち、オペレータによって指定された少なくとも1つの分類モデル322を使用対象の分類モデル322の少なくとも1つとして選択してよい。これにより、オペレータによって任意の分類モデル322を選択して判定に用いることができる。従って、現状において設備2が正常である場合に、現状の測定データを正常と判定した分類モデル322を選択して判定に用いることができる。また、予め正常な測定データおよび異常な測定データを用いたテストにおいて高い分類精度を示した分類モデルを選択して判定に用いることができる。選択部39は、オペレータによって分類モデル322が指定されたことに応じて、当該分類モデル322を使用対象の分類モデル322として固定してよく、ステップS55の処理において当該分類モデル322を自動で選択してよい。
【0081】
また、判定部34は使用対象の複数の分類モデル322からの複数の分類結果の論理積をとって設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定することとして説明したが、複数の分類結果の多数決をとって設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定してもよい。これに加えて、判定部34は、使用対象の複数の分類モデル322のうち、より新しい期間の測定データを含む学習データにより学習済みである分類モデル322の分類結果に対して、より大きい重みを加え、複数の分類結果の重み付き多数決をとって設備2の状態を正常または異常の何れかとして判定してもよい。分類結果に対して重みを加えて重み付き多数決をとるとは、各分類結果の個数を重み分だけ増やして多数決をとることであってよい。一例として、最も新しい期間の学習データにより学習された分類モデル322による分類結果を第1の分類結果とし、2番目に新しい期間の学習データにより学習された分類モデル322による分類結果を第2の分類結果、3番目に新しい期間の学習データにより学習された分類モデル322による分類結果を第3の分類結果とする。また、第1~第3の分類結果に対する重みをそれぞれw1~w3(但しw1>w2>w3)とする。この場合に、判定部34は、第1の分類結果を1×w1の個数分の分類結果とし、第2の分類結果を1×w2の個数分の分類結果とし、第3の分類結果を1×w3の個数分の分類結果として多数決をとってよい。これにより、より新しい分類モデル322、つまり、より直近に近い設備2の状態に応じた分類モデル322ほど判定結果に及ぼす影響が大きくなるため、設備2の状態の推移に応じた判定結果を取得することができる。
【0082】
また、判定部34は共通の学習アルゴリズムによって生成された複数の分類モデル322から出力される複数の分類結果に基づいて判定を行うこととして説明したが、これら複数の分類モデル322から出力される複数の分類結果に加えて、他の公知の学習アルゴリズムによって生成された分類モデルから出力される分類結果に基づいて判定を行うこととしてもよい。
【0083】
また、学習処理部38は測定データに学習用ラベルを付加した旨の通知を設定部37から受けたことに応じて分類モデル322を生成することとして説明したが、予め定められたスケジュールで分類モデル322を生成してもよいし、オペレータの指示に応じて分類モデル322を生成してもよい。学習処理部38は、設備2の状態が正常であった期間ごとの学習データのうち、学習処理に未使用の学習データを用いて分類モデル322を生成してよい。
【0084】
また、装置3は記憶部32と、決定部35と、出力部36と、設定部37と、学習処理部38と、選択部39とを有することとして説明したが、これらの何れかを有しなくてもよい。装置3が記憶部32を有しない場合には、測定データファイル321および分類モデル322は装置3に外部接続された記憶装置に記憶されてよい。装置3が決定部35を有しない場合には、出力部36は決定部35による決定結果を出力せずに判定部34による判定結果を出力してよく、設定部37は、判定部34により設備2が正常と判定された期間の測定データを、新たな学習データに含める測定データとして設定してよい。装置3が出力部36を有しない場合には、判定部34および決定部35は判定や決定の結果を測定データファイル321内の該当の測定データに対応付けて記憶させてよい。装置3が設定部37を有しない場合には、学習処理部38は、期間ごとの測定データのうち、オペレータにより選択された期間内の測定データを用いて分類モデル322を生成してよい。装置3が学習処理部38を有しない場合には、判定部34はデフォルトで記憶部32に記憶された分類モデル322のみを用いて判定を行ってよい。装置3が選択部39を有しない場合には、判定部34は、記憶部32内の各分類モデル322を用いて判定を行ってよい。
【0085】
また、各学習データを同一の基準時間幅の期間内の測定データを含むこととして説明したが、互いに異なる時間幅の期間内の測定データを含むこととしてもよい。この場合には、各期間の始期および終期をオペレータが任意に設定してよい。また、上述のステップS1の処理において取得部31は、設備2の状態が正常である任意の時間幅の期間の測定データを取得してよく、一例として、設備2の状態が正常であるとオペレータによって判定された任意の時間幅の期間の測定データを取得してよい。
【0086】
また、設定部37は決定部35により決定された深刻度が基準深刻度(一例として高レベル)よりも低く維持された期間の測定データを学習用の測定データとして設定する、つまり、深刻度が基準深刻度以上となった期間を除外し、残りの期間の測定データを学習用の測定データとして設定することとして説明したが、他の態様によって学習用の測定データを設定してよい。例えば、設定部37は、連続した異常判定回数が上述の第2の基準回数「b」(つまり深刻度を高レベルと決定するための基準回数)以上となる場合に、取得部31により取得されて供給部33から複数の分類モデル322に供給された測定データのうち、「b」回目以降の異常判定を引き起こした測定データを除外して、残りの測定データを学習用の測定データとして設定してもよいし、取得部31により取得されて供給部33から複数の分類モデル322に供給された測定データのうち、決定部35により決定された深刻度が高レベルとなるまで連続した異常判定を引き起こした各測定データ(つまり1回目の異常判定から「b」回目の異常判定までを引き起こした各測定データ)、および、当該測定データに続いて連続した異常判定を引き起こした各測定データ(つまり「b+1」回目以降に連続した異常判定を引き起こした各測定データ)を除いた測定データを学習用の測定データとして設定してもよい。これらの場合には、学習用の測定データは、互いに異なる時間幅の期間内の測定データを含んでよい。
【0087】
また、装置3による監視の対象を設備2として説明したが、設備2に設けられた機器(一例としてアクチュエータ機器)であってもよい。
【0088】
また、
図2の動作の開始時点において記憶部32には分類モデル322が記憶されていないこととして説明したが、1または複数の分類モデル322が予め記憶されていてもよい。この場合には、記憶部32内の各分類モデル322が使用対象の分類モデル322として選択部39に予め選択された状態で、ステップS11から動作が開始してよい。また、ステップS55において選択部39は、学習処理部38によって生成された分類モデル322を選択してもよいし、予め記憶部32に記憶された分類モデル322を選択してもよい。
【0089】
また、
図2の動作においては学習処理部38によって生成された新たな分類モデル322が記憶部32に記憶されることとして説明したが、外部装置において学習処理部38と同様の学習処理により生成された新たな分類モデル322が記憶部32に記憶されてもよい。この場合には、記憶部32に分類モデル322が記憶されることに応じて選択部39が何れかの分類モデル322を使用対象の分類モデル322として選択してよい。
【0090】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0091】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0092】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0093】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0094】
図4は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0095】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0096】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0097】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0098】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0099】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0100】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0101】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0102】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0103】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0106】
1 システム
2 設備
3 装置
20 センサ
31 取得部
32 記憶部
33 供給部
34 判定部
35 決定部
36 出力部
37 設定部
38 学習処理部
39 選択部
321 測定データファイル
322 分類モデル
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インタフェース
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード