(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062552
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】金属線材と樹脂成形材との接合体およびその金属線材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20250407BHJP
B23K 26/354 20140101ALI20250407BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20250407BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B29C45/14
B23K26/354
B29C65/02
B29C65/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023180620
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】睦月 邦年
(72)【発明者】
【氏名】睦月 伸季
【テーマコード(参考)】
4E168
4F206
4F211
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168AC01
4E168JA03
4E168JA04
4F206AA11
4F206AA13
4F206AA34
4F206AA39
4F206AB11
4F206AB16
4F206AB25
4F206AD03
4F206AD24
4F206AD28
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F211AA11
4F211AA13
4F211AA25
4F211AA34
4F211AD03
4F211AF01
4F211TA01
4F211TD01
4F211TH24
4F211TN82
(57)【要約】
【課題】長尺状の金属線材において樹脂成形材との接着力を高める金属線材と樹脂成形材との接合体を提供する。
【解決手段】長尺状の金属線材1の中間に形成された条溝2に微細な凹凸で樹脂成形材との接着力を高める表面処理が施されており、この条溝2に樹脂成形材3が密着接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の金属線材の中間に形成された条溝に樹脂成形材との接着力を高める表面処理が施されていることを特徴とする金属線材。
【請求項2】
前記表面処理はレーザー光照射により金属溶融された微細な凹凸であることを特徴とする請項1に記載の金属線材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属線材の条溝に樹脂成形材が密着接合されていることを特徴とする金属線材と樹脂成形材との接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材と樹脂成形材との接合体とその金属線材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属と樹脂との異種材料間の充分な密着性や気密性を有する樹脂複合成形体として、樹脂モールドされる金属部材の表面に複数の窪み若しくは溝を設けて、この複数の窪み若しくは溝および残余の金属部材の表面にレーザービームや電子ビームなどの高密度エネルギービームによって金属部材の溶融物で形成される廂状の隆起部あるいは先端に球状の瘤を備えた括れ部を有する隆起部からなる金属飛沫凝固部を設けることが記載されている。
【0003】
しかし、樹脂部材でモールドされる金属部材が複数の窪み若しくは溝および残余の金属部材の表面に接着力を高める金属飛沫凝固部が設けられ、その金属飛沫凝固部が設けられている残余は金属部材の外周面であって、特許文献1には、長尺状の金属線材の中間に条溝が形成されていることおよび外周面でなく条溝において接着力を高める表面処理が施されていることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長尺状の金属線材において樹脂成形材との接着力を高める金属線材と樹脂成形材との接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属線材に係る請求項1に記載の発明は、長尺状の金属線材の中間に形成された条溝に樹脂成形材との接着力を高める表面処理が施されていることを特徴とする。また、金属線材に係る請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属線材において、前記表面処理はレーザー光照射により金属溶融された微細な凹凸であることを特徴とする。また、請求項3に記載の金属線材と樹脂成形材との接合体は、請求項1または2に記載の金属線材の条溝に樹脂成形材が密着接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属線材は、長尺状の金属線材の中間に形成された条溝に樹脂成形材との接着力を高める表面処理が施されているので、金属線材と樹脂成形材との接合体において樹脂成形部材が金属線材から離脱し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(a)は金属線材と樹脂成形材との接合体の平面図であり、(b)は金属線材と樹脂成形材との接合体の側面図である。
【
図4】金属線材における条溝が形成された断面図である。
【
図5】金属線材に条溝を形成する装置の概略図である。
【
図6】金属線材の条溝にレーザー光を照射して表面処理をする作業状態を示す概略図である。
【
図7】金属線材と樹脂成形材との接合体が形成される射出成形装置の概略図である。
【
図8】金属線材と樹脂成形材との接合体の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および
図2(a)、(b)は、長尺状の金属線材1の中間に形成された条溝2に樹脂成形材3が密着接合された金属線材と樹脂成形材との接合体10を示し、
図1において、金属線材1の条溝2には微細な凹凸1Aを例示した表面処理が施されており、この金属線材と樹脂成形材との接合体10は、2本の金属線材1と樹脂成形材3とが接合されていることを示すが、この金属線材1は3本以上の多数本でもよい。このような金属線材と樹脂成形材との接合体10の金属線材1は電気接続端子として、樹脂成形材3はその電気接続端子の絶縁されたハウジングとして用いることができ、この樹脂成形材3の材料はPPS樹脂、PEEK樹脂、PP樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂であり、ガラス繊維などの無機質の繊維を含有してもよく、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂でもよい。
【0010】
(金属線材の条溝について)
本発明の長尺状の金属線材1は、断面が円形状もしくは角形状で、その材料は銅またはその合金、アルミニウムまたはその合金が例示できる。この長尺状の金属線材1には、その中間に条溝2が形成されており、その条溝2は、単なる凹所ではなく長さ方向に延びる線状に形成された溝であって、
図3、
図4に示すように金属線材1の上面と下面に形成されているが、上面のみまたは上下面から左右側面に至る全周に形成されてもよい。
【0011】
(金属線材の条溝の形成について)
本発明の条溝2は、研削加工で形成してもよいが、
図5に示すように、金属線材1を押し潰す冷間鍛造加工により形成されている。
図5において、冷間鍛造加工装置4はダイス41、41間の鍛造空間43に上下動するパンチ42、42からなり、パンチ42、42の先端には上下方向に突出し左右方向に延びる突条部42A、42Aを有する。この鍛造空間43に断面が角形状の金属線材1を配置し、パンチ42、42を上下方向(矢印P方向)に移動させ、上下方向から金属線材1に押圧を加えて、突条部42A、42Aにより金属線材1を塑性変形させて、
図4に示すように金属線材1の上面と下面に条溝2が形成されており、図示しないが、パンチ42、42を左右方向からも金属線材1に押圧を加えて塑性変形させることにより、上下面から左右側面に至る全周に条溝2を形成されてもよい。
【0012】
(金属線材の条溝における表面処理について)
本発明の長尺状の金属線材1の中間に形成された条溝2には、樹脂成形材3との接着力を高める表面処理が施されている。この接着力を高める表面処理における接着力とは、本発明においては、金属線材1と樹脂成形材3とが気密もしくは水密にシールされるように密着接合される作用であるとして記載しており、その表面処理法としては、メルカプト基、チオカルボニル基、シアノ基、イソシアナート基、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基、アジニル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾール基、トリアジンチオール基等の何れかまたはこれらを組み合わせた化学的処理剤からなる薄膜層の形成や微細な凹凸の形成が例示できる。好ましい表面処理として、
図3に示すように金属溶融された微細な凹凸1Aが条溝2の表面に形成されており、その形成方法は
図6に示すようにレーザー光照射により条溝2内に微細な凹凸1Aが形成されている。
図6において、本出願人が有する特許第6879615号公報に記載のレーザー光Lを条溝2の上方および下方から照射することにより、条溝2内に微細な凹凸1Aが形成された金属線材1が得られる。この微細な凹凸1Aは、金属線材1の外周面には存在せず条溝2内に存在している。
【0013】
(金属線材と樹脂成形材との接合体について)
本発明の金属線材と樹脂成形材との接合体10には、長尺状の金属線材1の中間に形成された条溝2の表面にレーザー光照射により金属溶融された微細な凹凸1Aを例とする表面処理が施されていて、その条溝2に樹脂成形材3が密着接合されているので、金属線材1が長さ方向(
図1においてX方向)に力を受けても樹脂成形材3が条溝2内で長手方向に動くのを阻止するとともに樹脂成形材3との接着力を高める表面処理により、樹脂成形材3が金属線材1から離脱し難くすることができる。また、微細な凹凸1Aが金属線材1の外周面に形成されていると、微細な凹凸1Aの先端が金属線材1の表面から突出することになり、この長尺状の金属線材1を長手方向に送る作業工程においてその作業装置に微細な凹凸1Aの先端が引っかからないように対処する必要があるが、本発明においては条溝2内に形成された微細な凹凸1Aは金属線材1の外周面に形成されていないので、このような対処をする必要がない。
【0014】
(金属線材と樹脂成形材との接合体10の製造方法の説明)
本発明の金属線材と樹脂成形材との接合体10には、金属線材1の条溝2に樹脂成形材3が密着接合されており、その製造する方法は、樹脂成形材3を予め熱可塑性樹脂などを成形して、その樹脂成形材3を金属線材1に加熱圧着により密着接合させてもよいが、好ましくは、
図7に示す熱可塑性樹脂などの樹脂を射出成形装置5により射出してインサート成形して樹脂成形材3を金属線材1と密着接合させる。この射出成形装置5による射出成形において、金属線材1は長尺状であるので、条溝2の周囲の外周面を支持して、この金属線材1に溶融された熱可塑性樹脂などの樹脂30を射出ノズル51から金型52内に充填することにより、熱可塑性樹脂などの樹脂30が金属線材1の条溝2に充填され、金型52を冷却して、条溝2に樹脂成形材3が密着接合された金属線材と樹脂成形材との接合体10が得られる。
【0015】
(金属線材と樹脂成形材との接合体の製造工程の説明)
図8は、条溝を形成する工程101と条溝に表面処理をする工程102と射出成形をする工程103とからなる金属線材と樹脂成形材との接合体の製造工程を示し、条溝を形成する工程101において、
図5に示す冷間鍛造加工装置4を用いて長尺状の金属線材1の中間に条溝2が形成される。次に、条溝に表面処理をする工程102において、
図6に示すレーザー光Lを金属線材1の条溝2に照射して微細な凹凸1Aが形成された金属線材1を得る。次に、射出成形をする工程103おいて、
図7に示す射出成形金型5に金属線材1を配置して射出ノズル51から熱可塑性樹脂などの樹脂30を射出して樹脂30が条溝2内で樹脂成形材3となってその樹脂成形材3が条溝2に密着接合された金属線材と樹脂成形材との接合体10を得る。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の金属線材と樹脂成形材との接合体は、長尺状の金属線材を多数本用意すれば、各金属線材の中間に条溝が形成されて各条溝において絶縁作用となる樹脂成形材が金属線材と密着接合されて気密もしくは水密にシールされた電気接続端子として用いることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 金属線材
1A 微細な凹凸
10 金属線材と樹脂成形材との接合体
2 条溝
3 樹脂成形材
30 熱可塑性樹脂などの樹脂
4 冷間鍛造加工装置
41 ダイス
42 パンチ
43 鍛造空間
5 射出成形装置
51 射出ノズル
52 金型
101 条溝を形成する工程
102 条溝に表面処理をする工程
103 射出成形をする工程