(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006257
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】表面硬化処理装置及び表面硬化処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 8/26 20060101AFI20250109BHJP
C23C 8/24 20060101ALI20250109BHJP
C21D 1/06 20060101ALI20250109BHJP
C21D 1/76 20060101ALI20250109BHJP
C21D 11/00 20060101ALI20250109BHJP
C21D 9/32 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C23C8/26
C23C8/24
C21D1/06 A
C21D1/76 M
C21D1/76 R
C21D11/00
C21D9/32 B
C21D9/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106933
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000111845
【氏名又は名称】パーカー熱処理工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】平岡 泰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 燎
【テーマコード(参考)】
4K028
4K038
4K042
【Fターム(参考)】
4K028AA02
4K028AB01
4K028AC07
4K028AC08
4K038BA02
4K038DA05
4K038EA05
4K038FA02
4K042AA18
4K042BA03
4K042CA15
4K042DA01
4K042DA06
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC05
4K042DD03
4K042DE02
4K042DE05
4K042DE07
4K042EA01
4K042EA02
(57)【要約】
【課題】 アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行うこと。
【解決手段】 炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つアンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び窒素ガスの導入量を変化させることによって、処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づける。3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、窒素ガスの導入量は40%以上であり、アンモニア分解ガスの導入量は12%以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、
前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、
前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、
前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、
を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置。
【請求項2】
前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%である
ことを特徴とする請求項1に記載の表面硬化処理装置。
【請求項3】
アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、
前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、
前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、
前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、
を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置。
【請求項4】
前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%である
ことを特徴とする請求項3に記載の表面硬化処理装置。
【請求項5】
前記目標窒化ポテンシャルは、0.01~0.20の範囲内である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面硬化処理装置。
【請求項6】
前記処理炉内の温度は、800℃以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の表面硬化処理装置。
【請求項7】
アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、
前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、
前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、
前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、
を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法。
【請求項8】
前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%である
ことを特徴とする請求項7に記載の表面硬化処理方法。
【請求項9】
アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、
前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、
前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、
前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、
を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法。
【請求項10】
前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%である
ことを特徴とする請求項9に記載の表面硬化処理方法。
【請求項11】
前記目標窒化ポテンシャルは、0.01~0.20の範囲内である
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の表面硬化処理方法。
【請求項12】
前記処理炉内の温度は、800℃以上である
ことを特徴とする請求項11に記載の表面硬化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、窒化、軟窒化、浸窒焼入れ等、金属製の被処理品に対する表面硬化処理を行う表面硬化処理装置及び表面硬化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼等の金属製の被処理品の表面硬化処理の中で、低ひずみ処理である窒化処理のニーズは多い。窒化処理の方法として、ガス法、塩浴法、プラズマ法等がある。
【0003】
これらの方法の中で、ガス法が、品質、環境性、量産性等を考慮した場合に、総合的に優れている。機械部品に対する焼入れを伴う浸炭や浸炭窒化処理または高周波焼入れによるひずみは、ガス法による窒化処理(ガス窒化処理)を用いることで改善される。浸炭を伴うガス法による軟窒化処理(ガス軟窒化処理)も、ガス窒化処理と同種の処理として知られている。
【0004】
ガス窒化処理は、被処理品に対して窒素のみを浸透拡散させて、表面を硬化させるプロセスである。ガス窒化処理では、アンモニアガス単独、アンモニアガスと窒素ガスとの混合ガス、アンモニアガスとアンモニア分解ガス(75%の水素と25%の窒素からなり、AXガスとも呼ばれる)、または、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとの混合ガス、を処理炉内へ導入して、表面硬化処理を行う。
【0005】
一方、ガス軟窒化処理は、被処理品に対して窒素とともに炭素を副次的に浸透拡散させて、表面を硬化させるプロセスである。例えば、ガス軟窒化処理では、アンモニアガスと窒素ガスと炭酸ガス(CO2)との混合ガス、あるいは、アンモニアガスと窒素ガスと炭酸ガスと一酸化炭素ガス(CO)との混合ガス等、複数種類の炉内導入ガスを処理炉内へ導入して、表面硬化処理を行う。
【0006】
ガス窒化処理及びガス軟窒化処理における雰囲気制御の基本は、炉内の窒化ポテンシャル(KN)を制御することにある。窒化ポテンシャル(KN)を制御することによって、鋼材表面に生成される化合物層中のγ’相(Fe4N)とε相(Fe2-3N)との体積分率を制御したり、当該化合物層が生成されない処理を実現したり等、幅広い窒化品質を得ることが可能である。例えば、特開2016―211069(特許文献1)によれば、γ’相の選択とその厚膜化によって、曲げ疲労強度や耐摩耗性が改善され、機械部品のさらなる高機能化が実現される。
【0007】
以上のようなガス窒化処理及びガス軟窒化処理では、被処理品が内部に配置された処理炉内の雰囲気を管理するために、炉内水素濃度あるいは炉内アンモニア濃度を測定する炉内雰囲気ガス濃度測定センサが設置される。そして、当該炉内雰囲気ガス濃度測定センサの測定値から炉内窒化ポテンシャルが演算され、目標(設定)窒化ポテンシャルと比較されて、各導入ガスの流量制御が行われる(非特許文献1)。各導入ガスの制御方法については、炉内導入ガスの流量比率を一定に保ちながら合計導入量を制御する方法が周知である(非特許文献2)。
【0008】
特許文献2は、炉内導入ガスの流量比率を一定に保ちながら合計導入量を制御する制御態様を第一の制御とし、炉内導入ガスの流量比率が変化するように炉内導入ガスの導入量を個別に制御する制御態様を第二の制御として、両方を実行可能にした(同時には一方のみが選択的に行われる)装置を開示している(特許文献2)。しかしながら、特許文献2は、第一の制御が有効な窒化処理の具体例を1つ開示するのみで(特許文献2の段落0096及び0099の記載:「NH3(アンモニアガス):N2(窒素ガス)=80:20を保持した状態で、アンモニアガス及び窒素ガスの処理炉内への合計導入量を制御することにより」窒化ポテンシャル3,3を精度良く制御)、どういう窒化処理ないし軟窒化処理の場合に第二の制御を採用することが有効であるのか何ら開示がなく、また、有効な第二の制御の具体例についても何ら開示がない。
【0009】
また、炉内導入ガスの流量比率を一定に保ちながら合計導入量を制御する方法では、ガスの総使用量の抑制が期待できるという利点がある一方で、窒化ポテンシャルの制御範囲が狭いことも分かっている。この問題に対処する方策として、本件発明者は、低窒化ポテンシャル側において広い窒化ポテンシャル制御範囲(例えば、580℃で約0.05~1.3)を実現するための制御方法を開発し、特許第6345320号(特許文献3)を取得している。特許第6345320号(特許文献3)の制御方法では、複数種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら当該複数種類の炉内導入ガスの流量比率を変化させることによって、処理炉内の窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルに近づけるべく、当該複数種類の炉内導入ガスの導入量が個別に制御される。更に、本件発明者は、アンモニアガスとアンモニア分解ガスのみを炉内導入ガスとし、実用に足る窒化ポテンシャル制御を実現できる制御方法を開発し、特許第6503122号(特許文献4)を取得している。特許第6503122号(特許文献4)の制御方法では、アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量を変化させることによって、処理炉内の窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルに近づけるべく制御される。
【0010】
(ガス窒化処理の基本的事項)
ガス窒化処理の基本的事項について化学的に説明すれば、ガス窒化処理では、被処理品が配置される処理炉(ガス窒化炉)内において、以下の式(1)で表される窒化反応が発生する。
NH3→[N]+3/2H2 ・・・(1)
【0011】
このとき、窒化ポテンシャルKNは、以下の式(2)で定義される。
KN=PNH3/PH2
3/2 ・・・(2)
ここで、PNH3は炉内アンモニア分圧であり、PH2は炉内水素分圧である。窒化ポテンシャルKNは、ガス窒化炉内の雰囲気が有する窒化能力を表す指標として周知である。
【0012】
一方、ガス窒化処理中の炉内では、当該炉内へ導入されたアンモニアガスの一部が、式(3)の反応にしたがって水素ガスと窒素ガスとに熱分解する。
NH3→1/2N2+3/2H2 ・・・(3)
【0013】
炉内では、主に式(3)の反応が生じており、式(1)の窒化反応は量的にはほとんど無視できる。したがって、式(3)の反応で消費された炉内アンモニア濃度または式(3)の反応で発生された水素ガス濃度が分かれば、窒化ポテンシャルを演算することができる。すなわち、発生される水素及び窒素は、アンモニア1モルから、それぞれ1.5モルと0.5モルであるから、炉内アンモニア濃度を測定すれば、式(3)の反応によるアンモニア消費量が分かるため、炉内水素濃度も分かり、窒化ポテンシャルを演算することができる。あるいは、炉内水素濃度を測定すれば、式(3)の反応による水素生成量が分かって、式(3)の反応によるアンモニア消費量が分かるため、炉内アンモニア濃度が分かり、やはり窒化ポテンシャルを演算することができる。
【0014】
なお、ガス窒化炉内に流されたアンモニアガスは、炉内を循環した後、炉外へ排出される。すなわち、ガス窒化処理では、炉内の既存ガスに対して、フレッシュ(新た)なアンモニアガスを炉内へ絶えず流入させることにより、当該既存ガスが炉外へ排出され続ける(供給圧で押し出される)。
【0015】
ここで、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が少なければ、炉内でのガス滞留時間が長くなるため、分解されるアンモニアガスの量が増加して、当該分解反応によって発生される窒素ガス+水素ガスの量は増加する。一方、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が多ければ、分解されずに炉外へ排出されるアンモニアガスの量が増加して、炉内で発生される窒素ガス+水素ガスの量は減少する。
【0016】
(流量制御の基本的事項)
次に、流量制御の基本的事項について、まずは炉内導入ガスをアンモニアガスのみとする場合について説明する。炉内に導入されるアンモニアガスの分解度をs(0<s<1)とした場合(1モルのアンモニアガスが導入された場合、炉内には(1+s)モルのガスが存在していることになり),炉内におけるガス反応は、以下の式(4)で表される。
NH3→(1-s)/(1+s)NH3+0.5s/(1+s)N2+1.5s/(1+s)H2 ・・・(4)
ここで、左辺は炉内導入ガス(アンモニアガスのみ)、右辺は炉内ガス組成であり、未分解のアンモニアガスと、アンモニアガスの分解によって1:3の比率で発生した窒素及び水素と、が存在する。したがって、炉内水素濃度を水素センサで測定する場合、右辺の1.5s/(1+s) が水素センサによる測定値に対応し、当該測定値から炉内に導入されたアンモニアガスの分解度sが演算できる。これにより、右辺の (1-s)/(1+s) に相当する炉内アンモニア濃度も演算できる。つまり、水素センサの測定値のみから炉内水素濃度と炉内アンモニア濃度とを知ることができる。このため、窒化ポテンシャルを演算できる。
【0017】
複数の炉内導入ガスを用いる場合でも、窒化ポテンシャルKNの制御が可能である。例えば、アンモニアと窒素との2種類のガスを炉内導入ガスとし、その導入比率をx:y (x、yは既知でx+y=1とする。例えば、x=0.5、y=1-0.5=0.5(NH3:N2=1:1))とした場合の炉内におけるガス反応は、以下の式(5)で表される。
xNH3+(1-x)N2→x(1-s)/(1+sx)NH3+(0.5sx+1-x)/(1+sx)N2+1.5sx/(1+sx)H2 ・・・(5)
【0018】
ここで、右辺の炉内ガス組成は、未分解のアンモニアガスと、アンモニアガスの分解によって1:3の比率で発生した窒素及び水素と、導入したままの左辺の窒素ガス(炉内で分解しない)と、である。このとき、xは各ガスの各時刻でのマスフローコントローラの値を引用することで既知の値として認識でき(例えばある時間でx=0.5)、右辺の炉内水素濃度、つまり1.5sx/(1+sx) において、未知数はアンモニアの分解度sのみである。従って、式(4)の場合と同様に、水素センサの測定値から炉内へ導入されたアンモニアガスの分解度sが演算でき、これにより炉内アンモニア濃度も演算できる。このため、窒化ポテンシャルを演算できる。
【0019】
炉内導入ガスの流量比率を固定しない場合には、炉内水素濃度と炉内アンモニア濃度とは、炉内に導入されたアンモニアガスの分解度sとアンモニアガスの導入比率xの2つを変数として含む。一般的に、ガス流量を制御する機器としてはマスフローコントローラ(MFC)が用いられるため、その流量値に基づいて、アンモニアガスの導入比率xはデジタル信号として連続的に読み取ることができる。従って、式(5)に基づいて、当該導入比率xと水素センサの測定値とを組み合わせることで、窒化ポテンシャルを演算できる。
【0020】
(高温ガス窒化処理の特殊事情)
前掲の特許第6345320号(特許文献3)でも、前掲の特許第6503122号(特許文献4)でも、600℃程度以下の温度が対象とされている。
【0021】
これに対して、680℃以上の高温域では、炉内に導入されるアンモニアガスの分解度sが非常に高くなるため、アンモニア分解ガスを混合させる制御態様は採用されず、窒素ガスとアンモニアガスとが用いられている。
【0022】
具体的には、特開2007-46088号公報(特許文献5)に記載されているように、720℃に昇温された炉の場合、窒素ガスの導入量1m3/hに対してアンモニアガスの導入量4l/minが導入されたり(特許文献5の実施例1、実施例3、実施例7)、窒素ガスの導入量1m3/hに対してアンモニアガスの導入量8l/minが導入されたり(特許文献5の実施例2、実施例4~6)、窒素ガスの導入量1m3/hに対してアンモニアガスの導入量4l/minが導入されたり(実施例1)、窒素ガスの導入量1m3/hに対してアンモニアガスの導入量6l/minが導入されたり(実施例8)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2016―211069
【特許文献2】特許第5629436号
【特許文献3】特許第6345320号
【特許文献4】特許第6503122号
【特許文献5】特開2007-46088
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「熱処理」、55巻、1号、7~11頁(平岡泰、渡邊陽一)
【非特許文献2】「鉄の窒化と軟窒化」、第2版(2013)、158~163頁(ディータリートケほか、アグネ技術センター)
【非特許文献3】「Effect of Compound Layer Thickness Composed of γ’-Fe4N on Rotated-Bending Fatigue Strength in Gas-Nitrided JIS-SCM435 Steel」、 Materials Transactions、Vol.58、 No.7(2017)、993~999頁(Y.Hiraoka and A.Ishida)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本件発明者は、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、窒素ガスとアンモニアガスとのみを用いる制御態様(特許文献5)では、窒化ポテンシャルを高精度に制御できないことを知見した。
【0026】
更に、本件発明者は、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、アンモニアガスとアンモニア分解ガスとのみを用いる制御態様(特許文献4)でも、窒化ポテンシャルを高精度に制御できないことを確認した。
【0027】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、実用に足る窒化ポテンシャル制御を実現できる表面硬化処装置及び表面硬化処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第1の態様は、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置である。
【0029】
本発明の第1の態様の原理について、本件発明者は以下のように分析している。アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量とを互いに変化させるだけでは実用に足る窒化ポテンシャル制御ができないことが、従来から知見されている。すなわち、アンモニアガスの導入比率を窒素ガスより大きくしても窒化ポテンシャルが上がるわけではなく、また、アンモニアガスの導入比率を窒素ガスより小さくしても窒化ポテンシャルが下がるわけではない。本件発明者は、水素源として、一定量のアンモニア分解ガスを追加的に導入することが効果的であることを知見して、本発明に至ったものである。
【0030】
もっとも、アンモニア分解ガスを過度に炉内へ導入することは、アンモニア分解ガスの使用量(コスト)の点で不利であるから、窒化ポテンシャル制御を可能にする範囲で最小限の導入量にとどめることが、工業的に求められる。本件発明者は、本発明の第1の態様において、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%であることが、窒化ポテンシャル制御の安定化と処理コストとの両面で好適であることを確認した。
【0031】
本発明の第2の態様は、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置である。
【0032】
本発明の第2の態様の原理について、本件発明者は以下のように分析している。窒素ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量を変化させるだけでは実用に足る窒化ポテンシャル制御ができないことが、従来から知見されている。本件発明者は、水素源として、一定量のアンモニア分解ガスを追加的に導入することが効果的であることを知見して、本発明に至ったものである。
【0033】
第2の態様においても、アンモニア分解ガスを過度に炉内へ導入することは、アンモニア分解ガスの使用量(コスト)の点で不利であるから、窒化ポテンシャル制御を可能にする範囲で最小限の導入量にとどめることが、工業的に求められる。本件発明者は、本発明の第2の態様においても、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は12%~24%であることが、窒化ポテンシャル制御の安定化と処理コストとの両面で好適であることを確認した。
【0034】
以上の各態様において、アンモニア分解ガス12%は、窒素ガス3%+水素ガス9%に相当する。従って、本発明の第1の態様及び第2の態様は、それぞれ、以下に記載する本発明の第3の態様及び第4の態様と技術的に等価である。
【0035】
本発明の第3の態様は、アンモニアガスと水素ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記水素ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置である。
【0036】
本件発明者は、本発明の第3の態様において、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は9%~18%であることが、窒化ポテンシャル制御の安定化と処理コストとの両面で好適であることを確認した。
【0037】
本発明の第4の態様は、アンモニアガスと水素ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出装置と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出装置によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算装置と、前記炉内窒化ポテンシャル演算装置によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記水素ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御装置と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理装置である。
【0038】
本件発明者は、本発明の第4の態様において、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対して、前記窒素ガスの導入量は40%以上であり、前記アンモニア分解ガスの導入量は9%~18%であることが、窒化ポテンシャル制御の安定化と処理コストとの両面で好適であることを確認した。
【0039】
以上の各態様において、前記目標窒化ポテンシャルは、例えば0.01~0.20の範囲内である。本発明によって、このように比較的広い範囲(特に、比較的低い範囲)の窒化ポテンシャル制御を実現できることが確認された。
【0040】
また、以上の各態様において、前記処理炉内の温度は、例えば800℃以上である。
【0041】
また、本発明は、表面硬化処理方法として認識することも可能である。すなわち、本発明方法の第1の態様は、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法である。
【0042】
あるいは、本発明方法の第2の態様は、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法である。
【0043】
あるいは、本発明方法の第3の態様は、アンモニアガスと水素ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながら且つ前記水素ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記窒素ガスの導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法である。
【0044】
あるいは、本発明方法の第4の態様は、アンモニアガスと水素ガスと窒素ガスとを680℃以上の温度の処理炉内へ導入して、前記処理炉内に配置される被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、前記処理炉内の水素濃度またはアンモニア濃度を検出する炉内雰囲気ガス濃度検出工程と、前記炉内雰囲気ガス濃度検出工程によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて前記処理炉内の窒化ポテンシャルを演算する炉内窒化ポテンシャル演算工程と、前記炉内窒化ポテンシャル演算工程によって演算される前記処理炉内の窒化ポテンシャルと目標窒化ポテンシャルとに応じて、前記窒素ガスの導入量を一定に保ちながら且つ前記水素ガスの導入量を一定に保ちながら前記アンモニアガスの導入量及び前記3種類の炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって前記処理炉内の窒化ポテンシャルを前記目標窒化ポテンシャルに近づけるガス導入量制御工程と、を備えたことを特徴とする表面硬化処理方法である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の第1の態様によれば、680℃以上の高温域で、炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び窒素ガスの導入量を変化させる(両者を互い違いに増減させる)フィードバック制御系を採用する一方で、一定量(12%以上、より好ましくは16%以上)のアンモニア分解ガスを付加的に導入することにより、窒化ポテンシャル制御を安定化させることができる。
【0046】
あるいは、本発明の第2の態様によれば、680℃以上の高温域で、窒素ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を変化させる(両者を共に増減させる)フィードバック制御系を採用する一方で、一定量(12%以上、より好ましくは16%以上)のアンモニア分解ガスを付加的に導入することにより、窒化ポテンシャル制御を安定化させることができる。
【0047】
あるいは、本発明の第3の態様によれば、680℃以上の高温域で、炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び窒素ガスの導入量を変化させる(両者を互い違いに増減させる)フィードバック制御系を採用する一方で、一定量(9%以上、より好ましくは12%以上)の水素ガスを付加的に導入することにより、窒化ポテンシャル制御を安定化させることができる。
【0048】
あるいは、本発明の第4の態様によれば、680℃以上の高温域で、窒素ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を変化させる(両者を共に増減させる)フィードバック制御系を採用する一方で、一定量(9%以上、より好ましくは12%以上)の水素ガスを付加的に導入することにより、窒化ポテンシャル制御を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の一実施形態による表面硬化処理装置(バッチ型の熱処理炉)を示す概略図である。
【
図2】
図1の表面硬化処理装置を用いた本発明の表面硬化処理方法の一実施形態の工程図である。
【
図3】
図1の表面硬化処理装置の主要部を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例について、窒化条件を示す表である。
【
図5】本発明の比較例について、窒化条件を示す表である。
【
図6】本発明の実施例について、窒化条件を示す表である。
【
図7】
図1の表面硬化処理装置の主要部の変形例を示す概略図である。
【
図8】本発明の実施例について、窒化条件を示す表である。
【
図9】本発明の比較例について、窒化条件を示す表である。
【
図10】本発明の比較例について、窒化条件を示す表である。
【
図11】本発明の実施例について、窒化条件を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
[被処理品(ワーク)の例]
被処理品(ワーク)は、鋼部材である。具体的には、自動変速機に用いられる歯車などの機械構造用炭素鋼鋼材または機械構造用合金鋼鋼材からなる鋼部材である。例えば、円筒状のリングギアや、有底円筒状のリングギアが、複数段のジグに搭載されて、ケース(後述する)内に平置きされた状態で窒化処理される。
【0052】
鋼部材には、窒化処理の前に、汚れや油を除去するための前洗浄が実施されることが好ましい。前洗浄は、例えば、炭化水素系の洗浄液で油などを溶解置換させて蒸発させることで脱脂乾燥させる真空洗浄、アルカリ系の洗浄液で脱脂処理するアルカリ洗浄、などが好ましい。
【0053】
[バッチ型の熱処理炉の構成例]
図1は、本発明の一実施形態による表面硬化処理装置(バッチ型の熱処理炉)1を示す概略図である。
【0054】
図1に示すように、表面硬化処理装置(バッチ型の熱処理炉)1は、搬入部10、加熱室11、搬送室12、及び、搬出コンベア13を備えている。搬入部10には、ケース20が置かれるようになっており、当該ケース20内に、被処理品(ワーク)としての鋼部材が収納されるようになっている。処理重量は、最大でグロス700kgである。
【0055】
加熱室11の入口側(
図1において左側)には、開閉自在な扉21を有する入口フード22が取り付けられている。加熱室11は、レトルト構造となっており、レトルト外周部がヒータ(不図示)で加熱されることで、炉内温度が所定の温度に制御されるようになっている。そして、加熱室11内に、窒化処理のための複数種のガスが、後述するように制御されながら導入されるようになっている(
図3及び
図7参照)。
【0056】
また、加熱室11の天井には、加熱室11内に導入されたガスを攪拌して鋼部材の加熱温度を均一化させるファン26が装着されている。そして、加熱室11の出口側(
図1において右側)には、開閉自在な中間扉27が取り付けられている。
【0057】
搬送室12には、鋼部材が収納されたケース20を昇降させるエレベータ30が設けられている。搬送室12の下部には、冷却用の油31を溜めた冷却室(油槽)32が設けられている。そして、搬送室12の出口側(
図1において右側)に、開閉自在な扉35を有する出口フード36が取り付けられている。
【0058】
なお、加熱室11と搬送室12とを同一空間の処理室とし、熱処理後の鋼部材を気体によって空冷する構成を採用しても良い。
【0059】
[バッチ型の熱処理炉の動作例]
以上のような構成の表面硬化処理装置(バッチ型の熱処理炉)1において、鋼部材が収納されたケース20が、プッシャー等により、搬入部10から加熱室11内に搬入される。そして、鋼部材(が収納されたケース20)が加熱室11内に搬入された後、加熱室11内に処理ガスが導入され、当該処理ガスがヒータで所定の温度に加熱され、更にファン26(例えば1500rpmで回転する)で攪拌されながら、加熱室11内に搬入された鋼部材の窒化処理が行われる。
【0060】
図2は、
図1の表面硬化処理装置(バッチ型の熱処理炉)1を用いた本発明の窒化処理方法の一実施形態の工程図である。
【0061】
図2の例では、鋼部材(ワーク)が装入される前に、加熱室11内が予め例えば850℃に加熱される。また、この加熱工程時に、N
2ガスが7.5(m
3/h)の一定流量で導入され、NH
3ガスが0.5(m
3/h)の一定流量で導入され、且つ、AXガスが2.0(m
3/h)の一定流量で導入される。総流量は7.5+0.5+2.0=10.0(m
3/h)である。
【0062】
次いで、鋼部材(ワーク)が加熱室11内に装入される。この時、扉21が開放されることにより、
図2に示すように、一時的に加熱室11内の温度が低下する。その後、扉21が閉じられ、加熱室11内の温度が再び850℃にまで加熱される。
【0063】
このような鋼部材装入中においても、
図2の例では、N
2ガスが7.5(m
3/h)の一定流量で導入され、NH
3ガスが0.5(m
3/h)の一定流量で導入され、且つ、AXガスが2.0(m
3/h)の一定流量で導入される。総流量は7.5+0.5+2.0=10.0(m
3/h)である。
【0064】
その後、窒化処理工程が実施される。具体的には、目標窒化ポテンシャルとして例えば0.02の値が採用され、850℃の温度下で窒化処理工程が実施される(後述の実施例1に相当)。
【0065】
窒化ポテンシャルKNは、NH3ガスの分圧P(NH3)とH2ガスの分圧P(H2)とにより、以下の式で表されることが知られている。
KN = P(NH3)/P(H2)3/2
【0066】
当該窒化処理工程において、加熱室11内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、処理ガスの導入量がフィードバック制御される。
【0067】
図2の例では、加熱室11内のNH
3ガスの分圧P(NH
3)がアンモニア濃度分析計(雰囲気ガス濃度検出装置103の一例:
図3及び
図7参照)によって測定され、当該測定値をオンラインで分析しながら(当該測定値から窒化ポテンシャルを演算しながら)、処理ガスの導入量がフィードバック制御される。
【0068】
具体的には、NH3ガスが、初期設定流量0.5[m3/h]で、0.47~0.53[m3/h]の範囲内で増減されながら導入され、N2ガスが、初期設定流量7.5[m3/h]で、7.47~7.53[m3/h]の範囲内で増減されながら導入され、両者の増減は互い違いになされる(両者の合計導入量は8.0[m3/h]に維持される)。
【0069】
更に、例えば、AXガス(アンモニア分解ガス)が、一定の設定流量2.0[m3/h]で付加的に導入される。
【0070】
当該窒化処理工程は、例えば90分間実施される。
【0071】
窒化処理工程が終了すると、冷却工程(急冷工程)が行われる。
図2の例では、冷却工程は20分間行われる(攪拌機付の油槽であり、20分油中(100℃)に保持される)。冷却工程が終了すると、鋼部材が収納されたケース20が搬出コンベア13に搬出される。
【0072】
[主要部の構成例]
図3は、
図1の表面硬化処理装置の主要部を示す概略図である。
【0073】
図3に示すように、本実施形態の表面硬化処理装置1の処理炉(加熱室)11には、攪拌ファン26と、攪拌ファン駆動モータ109と、炉内温度計測装置110と、炉体加熱装置111と、雰囲気ガス濃度検出装置103と、窒化ポテンシャル調節計104と、温度調節計105と、プログラマブルロジックコントローラ131と、記録計106と、炉内導入ガス供給部120と、が設けられている。
【0074】
攪拌ファン26は、処理炉(加熱室)11内に配置されており、処理炉(加熱室)11内で回転して、処理炉(加熱室)11内の雰囲気を攪拌するようになっている。攪拌ファン駆動モータ109が、攪拌ファン26に連結されており、攪拌ファン26を任意の回転速度で回転させるようになっている。
【0075】
炉内温度計測装置110は、熱電対を備えており、処理炉(加熱室)11内に存在している炉内ガスの温度を計測するように構成されている。また、炉内温度計測装置110は、炉内ガスの温度を計測した後、当該計測温度を含む情報信号(炉内温度信号)を温度調節計105及び記録計106へ出力するようになっている。
【0076】
雰囲気ガス濃度検出装置103は、処理炉(加熱室)11内の水素濃度またはアンモニア濃度を炉内雰囲気ガス濃度として検出可能なセンサにより構成されている。当該センサの検出本体部は、雰囲気ガス配管112を介して処理炉(加熱室)11の内部と連通している。雰囲気ガス配管112は、本実施形態においては、雰囲気ガス濃度検出装置103のセンサ本体部と処理炉(加熱室)11とを直接連通させる単線の経路で形成されている。雰囲気ガス配管112の途中には、開閉弁117が設けられており、当該開閉弁は開閉弁制御装置116によって制御されるようになっている。
【0077】
また、雰囲気ガス濃度検出装置103は、炉内雰囲気ガス濃度を検出した後、当該検出濃度を含む情報信号を、窒化ポテンシャル調節計104及び記録計106へ出力するようになっている。
【0078】
記録計106は、CPUやメモリ等の記憶媒体を含んでおり、炉内温度計測装置110や雰囲気ガス濃度検出装置103からの出力信号に基いて、処理炉(加熱室)11内の温度や炉内雰囲気ガス濃度を、例えば表面硬化処理を行った日時と対応させて、記憶するようになっている。
【0079】
窒化ポテンシャル調節計104は、炉内窒化ポテンシャル演算装置113と、ガス流量出力調整装置130と、を有している。また、プログラマブルロジックコントローラ131は、ガス導入量制御装置114と、パラメータ設定装置115と、を有している。
【0080】
炉内窒化ポテンシャル演算装置113は、炉内雰囲気ガス濃度検出装置103によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルを演算するようになっている。具体的には、実際の炉内導入ガスに応じて式(5)と同様の考え方に基づいてプログラムされた窒化ポテンシャルの演算式が組み込まれており、炉内雰囲気ガス濃度の値から窒化ポテンシャルを演算するようになっている。
【0081】
そして、パラメータ設定装置115は、例えばタッチパネルからなり、同一の被処理品に対して、目標窒化ポテンシャル、処理温度、処理時間、各導入ガスの初期設定導入量、などを設定入力できるようになっている。また、目標窒化ポテンシャルの異なる値毎にPID制御の設定パラメータ値を設定入力することもできるようになっている。具体的には、PID制御の「比例ゲイン」と「積分ゲインまたは積分時間」と「微分ゲインまたは微分時間」とを目標窒化ポテンシャルの異なる値毎に設定入力できるようになっている。設定入力された各設定パラメータ値は、ガス流量出力調整装置130へ伝送されるようになっている。
【0082】
そして、第1の態様では、ガス流量出力調整装置130が、炉内窒化ポテンシャル演算装置113によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、3種類の炉内導入ガスのうちアンモニアガス及び窒素ガスの各々の導入量を入力値としたPID制御を実施するようになっている。より具体的には、当該PID制御において、アンモニア分解ガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を一定に保ちながらアンモニアガス及び窒素ガスの導入量を変化させることによって、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルが目標窒化ポテンシャルに近づけられる。また、当該PID制御において、パラメータ設定装置15から伝送された各設定パラメータ値が用いられるようになっている。
【0083】
あるいは、第2の態様では、ガス流量出力調整装置130が、炉内窒化ポテンシャル演算装置113によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、3種類の炉内導入ガスのうちアンモニアガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を入力値としたPID制御を実施するようになっている。より具体的には、当該PID制御において、窒素ガスの導入量及びアンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を変化させることによって、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルが目標窒化ポテンシャルに近づけられる。また、当該PID制御において、パラメータ設定装置15から伝送された各設定パラメータ値が用いられるようになっている。
【0084】
パラメータ設定装置115に対する設定入力作業のためのPID制御の設定パラメータ値の候補は、パイロット処理を実施して予め入手しておくことが好ましい。本実施形態では、(1)処理炉の状態(炉壁や治具の状態)、(2)処理炉の温度条件及び(3)被処理品の状態(タイプ及び個数)が同一であっても、(4)目標窒化ポテンシャルの異なる値毎に、設定パラメータ値の候補を窒化ポテンシャル調節計104自体のオートチューニング機能によって取得しておくことができる。オートチューニング機能を有する窒化ポテンシャル調節計104を構成するためには、横河電気株式会社製のUT75A(高機能形デジタル指示調整計、http://www.yokogawa.co.jp/ns/cis/utup/utadvanced/ns-ut75a-01-ja.htm)等が利用可能である。
【0085】
候補として取得された設定パラメータ値(「比例ゲイン」と「積分ゲインまたは積分時間」と「微分ゲインまたは微分時間」の組)は、何らかの形態で記録されて、目的の処理内容に応じてパラメータ設定装置115に手入力され得る。もっとも、候補として取得された設定パラメータ値が目標窒化ポテンシャルと紐付けされた態様で何らかの記憶装置に記憶されて、設定入力された目標窒化ポテンシャルの値に基づいてパラメータ設定装置15によって自動的に読み出されるようになっていてもよい。
【0086】
ガス流量出力調整装置130は、PID制御に先立って、目標窒化ポテンシャルの値に基づいて、一定に維持されるガスの導入量と変動されるガスの導入量の初期値とを決定するようになっている。これらの値の候補は、パイロット処理を実施して予め入手しておくことが好ましく、パラメータ設定装置115によって記憶装置等から自動的に読み出されるか、あるいは、パラメータ設定装置115から手動で入力される。その後、PID制御に従って、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルが目標窒化ポテンシャルに近づくように、変動されるガスの導入量が決定される(変動される)ようになっている。ガス流量出力調整装置130の出力値は、ガス導入量制御装置114へ伝達されるようになっている。
【0087】
ガス導入量制御装置114は、アンモニアガス用の第1供給量制御装置122に制御信号を送るようになっている。
【0088】
本実施形態の炉内導入ガス供給部120は、アンモニアガス用の第1炉内導入ガス供給部121と、第1供給量制御装置122と、第1供給弁123と、第1流量計124と、を有している。また、本実施形態の炉内導入ガス供給部120は、アンモニア分解ガス(AXガス)用の第2炉内導入ガス供給部125と、第2供給量制御装置126と、第2供給弁127と、第2流量計128と、を有している。更に、本実施形態の炉内導入ガス供給部120は、窒素ガス用の第3炉内導入ガス供給部171と、第3供給量制御装置172と、第3供給弁173と、第3流量計174と、を有している。
【0089】
本実施形態では、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとは、処理炉(加熱室)11内に入る前の炉内導入ガス導入配管129内で混合されるようになっている。
【0090】
第1炉内導入ガス供給部121は、例えば、第1炉内導入ガス(本例ではアンモニアガス)を充填したタンクにより形成されている。
【0091】
第1供給量制御装置122は、マスフローコントローラ(短時間のうちに小刻みに流量を変更することができる)により形成されており、第1炉内導入ガス供給部121と第1供給弁123との間に介装されている。第1供給量制御装置122の開度が、ガス導入量制御装置114から出力される制御信号に応じて変化する。また、第1供給量制御装置122は、第1炉内導入ガス供給部121から第1供給弁123への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置114と記録計106へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置114による制御の補正等に用いられ得る。
【0092】
第1供給弁123は、ガス導入量制御装置114が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第1供給量制御装置122と第1流量計124との間に介装されている。
【0093】
第1流量計124は、例えば、フロー式流量計等の機械的な流量計で形成されており、第1供給弁123と炉内導入ガス導入配管129との間に介装されている。また、第1流量計124は、第1供給弁123から炉内導入ガス導入配管129への供給量を検出する。第1流量計124が検出する供給量は、作業員の目視による確認作業に用いられ得る。
【0094】
第2炉内導入ガス供給部125は、例えば、第2炉内導入ガス(本例ではアンモニア分解ガス)を充填したタンクにより形成されている。
【0095】
第2供給量制御装置126は、マスフローコントローラ(短時間のうちに小刻みに流量を変更することができる)により形成されており、第2炉内導入ガス供給部125と第2供給弁127との間に介装されている。第2供給量制御装置126の開度が、ガス導入量制御装置114から出力される制御信号に応じて変化する。また、第2供給量制御装置126は、第2炉内導入ガス供給部125から第2供給弁127への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置114と記録計106へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置114による制御の補正等に用いられ得る。
【0096】
第2供給弁127は、ガス導入量制御装置114が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第2供給量制御装置126と第2流量計128との間に介装されている。
【0097】
第2流量計128は、例えば、フロー式流量計等の機械的な流量計で形成されており、第2供給弁127と炉内導入ガス導入配管129との間に介装されている。また、第2流量計128は、第2供給弁127から炉内導入ガス導入配管129への供給量を検出する。第2流量計128が検出する供給量は、作業員の目視による確認作業に用いられ得る。
【0098】
もっとも、本発明においては、アンモニア分解ガスの導入量は小刻みに変動されないため、第2供給量制御装置126が省略されて、第2流量計128の流量(開度)が、ガス導入量制御装置114から出力される制御信号に対応するように、手動で調整されてもよい。
【0099】
第3炉内導入ガス供給部171は、例えば、第3炉内導入ガス(本例では窒素ガス)を充填したタンクにより形成されている。
【0100】
第3供給量制御装置172は、マスフローコントローラ(短時間のうちに小刻みに流量を変更することができる)により形成されており、第3炉内導入ガス供給部171と第3供給弁173との間に介装されている。第3供給量制御装置172の開度が、ガス導入量制御装置114から出力される制御信号に応じて変化する。また、第3供給量制御装置172は、第3炉内導入ガス供給部171から第3供給弁173への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置114と記録計106へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置114による制御の補正等に用いられ得る。
【0101】
第3供給弁173は、ガス導入量制御装置114が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第3供給量制御装置172と第3流量計174との間に介装されている。
【0102】
第3流量計174は、例えば、フロー式流量計等の機械的な流量計で形成されており、第3供給弁173と炉内導入ガス導入配管129との間に介装されている。また、第3流量計174は、第3供給弁173から炉内導入ガス導入配管129への供給量を検出する。第3流量計174が検出する供給量は、作業員の目視による確認作業に用いられ得る。
【0103】
(作用:実施例1-1~1-4(850℃での第1の態様)及び比較例1-2)
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態の表面硬化処理装置1の第1の態様の作用について説明する。
【0104】
処理炉(加熱室)11での窒化処理中、炉内導入ガス供給部120からアンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとが設定初期流量で処理炉(加熱室)11内へ導入される。
【0105】
(実施例1-1)
実施例1-1では、
図4の表1に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.02とされ、
図2に示すように、アンモニアガスの設定初期流量が0.5[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が7.5[m
3/h]とされた。これらの設定流量は、パラメータ設定装置15において設定入力可能である。また、攪拌ファン駆動モータ109が駆動されて攪拌ファン26が回転し、処理炉(加熱室)11内の雰囲気が攪拌される。
【0106】
初期状態では、開閉弁制御装置116は、開閉弁117を閉鎖状態としている。一般的に、ガス窒化処理の前処理として、鋼材表面を活性化して窒素を入りやすくする処理が行われることがある。この場合、炉内に塩化水素ガスやシアン化水素ガスなどが発生する。これらのガスは、炉内雰囲気ガス濃度検出装置(センサ)103を劣化させ得るため、開閉弁117を閉鎖状態としておくことが有効である。
【0107】
また、炉内温度計測装置110が炉内ガスの温度を計測し、この計測温度を含む情報信号を窒化ポテンシャル調節計104及び記録計106に出力する。窒化ポテンシャル調節計104は、処理炉(加熱室)11内の状態について、昇温途中であるのか、昇温が完了した状態(安定した状態)であるのか、判定する。
【0108】
また、窒化ポテンシャル調節計104の炉内窒化ポテンシャル演算装置113は、炉内の窒化ポテンシャルを演算し(事前に導入されているガス種が形成した雰囲気の影響により、設定窒化ポテンシャルを下回る雰囲気になっている)、目標窒化ポテンシャル(本例では0.02)と基準偏差値との和を下回ったか否かを判定する。この基準偏差値も、パラメータ設定装置115において設定入力可能であり、例えば0.01である。
【0109】
昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和(本例では0.03)を下回ったと判定されると、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始する。これに応じて、開閉弁制御装置116が開閉弁117を開放状態に切り換える。
【0110】
開閉弁117が開放状態に切り換えられると、処理炉(加熱室)111と雰囲気ガス濃度検出装置103とが連通し、炉内雰囲気ガス濃度検出装置103が炉内水素濃度あるいは炉内アンモニア濃度を検出する。検出された水素濃度信号あるいはアンモニア濃度信号が、窒化ポテンシャル調節計104及び記録計106へ出力される。
【0111】
窒化ポテンシャル調節計104の炉内窒化ポテンシャル演算装置113は、入力される水素濃度信号またはアンモニア濃度信号に基づいて炉内窒化ポテンシャルを演算する。そして、ガス流量出力調整装置130は、炉内窒化ポテンシャル演算装置113によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、3種類の炉内導入ガスのうちアンモニアガス及び窒素ガスの各々の導入量を入力値としたPID制御を実施する。具体的には、当該PID制御において、アンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガス及び窒素ガスの導入量を互い違いに増減させることによって、3種類の炉内導入ガスの合計導入量を一定(±5%程度の範囲内)に保ちながら、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルが目標窒化ポテンシャルに近づくような制御が実施される。当該PID制御においては、パラメータ設定装置115にて設定入力された各設定パラメータ値が用いられる。この設定パラメータ値は、目標窒化ポテンシャルの値に応じて異なっていてもよい。
【0112】
そして、ガス導入量制御装置114が、PID制御の結果として、アンモニアガスの導入量及び窒素ガスの導入量を制御する。ガス導入量制御装置114は、決定された各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置122、アンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置126(一定供給量)、及び、窒素ガス用の第3供給量制御装置172、に制御信号を送る。
【0113】
以上のような制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は0.47~0.53[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は7.47~7.53[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後数秒の間に窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.02)の近傍に制御できることが確認できた。
【0114】
(実施例1-2)
実施例1-2では、
図4の表1に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ、アンモニアガスの設定初期流量が1.2[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が6.8[m
3/h]とされた。
【0115】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0116】
その他については実施例1-1と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.15~1.25[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は6.75~6.85[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に制御できることが確認できた。
【0117】
(実施例1-3)
実施例1-3では、
図4の表1に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.1とされ、アンモニアガスの設定初期流量が1.9[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が6.1[m
3/h]とされた。
【0118】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.1)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.12)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0119】
その他については実施例1-1及び実施例1-2と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.8~1.20[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は6.0~6.2[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.1)の近傍に制御できることが確認できた。
【0120】
(実施例1-4)
実施例1-4では、
図4の表1に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.18とされ、アンモニアガスの設定初期流量が3.2[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が4.8[m
3/h]とされた。
【0121】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.18)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.20)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0122】
その他については実施例1-1乃至実施例1-3と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は3.1~3.3[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は4.7~4.9[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.18)の近傍に制御できることが確認できた。
【0123】
(比較例1-2)
比較例1-2では、
図5の表2に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ(実施例1-2と同様)、アンモニアガスの設定初期流量が1.2[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスが導入されず、窒素ガスの設定初期流量が6.8[m
3/h]とされた(特開2007-46088号公報(特許文献5)に準じた制御態様である)。
【0124】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0125】
その他については実施例1-1乃至実施例1-4と略同様の制御が試みられたが、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができなかった。その結果、鋼部材の表面硬化処理を高品質に行うことができなかった。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は0~1.5[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は6.8~8.0[m3/h]程度の変動幅内で増減されたが、窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に収束させることができなかった。
【0126】
(実施例2)
実施例2では、
図6の表3に示すように、窒化処理温度が800℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.08とされ、アンモニアガスの設定初期流量が1.3[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が6.7[m
3/h]とされた。
【0127】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.08)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.10)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0128】
その他については実施例1-1乃至実施例1-4と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.25~1.35[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は6.65~6.75[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.08)の近傍に制御できることが確認できた。
【0129】
(実施例3)
実施例3では、
図6の表3に示すように、窒化処理温度が900℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.05とされ、アンモニアガスの設定初期流量が2.4[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定初期流量が5.6[m
3/h]とされた。
【0130】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.05)と基準偏差値(本例では0.01)との和(本例では0.06)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0131】
その他については実施例1-1乃至実施例1-4と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は2.3~2.5[m3/h]程度の変動幅内で増減され、これと互い違いに(増減について逆の関係で)窒素ガスの導入量は5.5~5.7[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.05)の近傍に制御できることが確認できた。
【0132】
(実施例1-1~1-4、2、3の変形例:アンモニア分解ガスの導入比率について)
実施例1-1~1-4、2、3の全てにおいて、3種類の炉内導入ガスの合計導入量(10[m3/h])に対して、アンモニア分解ガスの導入量(2.0[m3/h])は、20%であった。
【0133】
本件発明者は、この割合が12%以上であれば、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、実用的な表面窒素濃度を維持できる窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャルの近傍に制御できることを確認した。
【0134】
一方、この割合の上限値は、目標とする窒化ポテンシャルに依存する。炉内へ導入させたアンモニアガスの大部分が水素ガスと窒素ガスとに分解するため、アンモンニア分解ガスの導入は、前述の通り窒化ポテンシャル制御の点で必須であるものの、導入量が多量過ぎても目標窒化ポテンシャルを達成する妨げになり得るし、不必要なアンモニア分解ガスの導入は不経済でもある。目標窒化ポテンシャルが高くても0.2程度である場合、これを実現できる上限値は24%以下であることが確認された。
【0135】
具体的には、アンモニア分解ガスの導入量について、0.8[m3/h]、1.2[m3/h]、1.6[m3/h]、2.4[m3/h]、2.8[m3/h]、3.2[m3/h]とした各変形例について、実施例1-1~1-4、2、3と略同様の制御を行った。
【0136】
アンモニア分解ガスの導入量が、1.2[m3/h](導入比率は1.2/9.2=13%)、1.6[m3/h](導入比率は1.6/9.6=17%)、2.4[m3/h](導入比率は2.4/10.4=23%)の場合には、実施例1-1~1-4、2、3と同様、非常に高精度な窒化ポテンシャル制御ができた。
【0137】
また、アンモニア分解ガスの導入量が、2.8[m3/h](導入比率は2.8/10.8=26%)、3.2[m3/h](導入比率は3.2/11.2=28%)の場合にも、許容できる程度に高精度な窒化ポテンシャル制御ができた。
【0138】
一方、アンモニア分解ガスの導入量が、0.8[m3/h](導入比率は0.8/8.8=9%)の場合には、高精度な窒化ポテンシャル制御ができなかった。
【0139】
(アンモニア分解ガスと、水素ガス及び窒素ガスと、の置換について)
当業者においては明らかである通り、1.0[m3/h]のアンモニア分解ガスは、0.75[m3/h]の水素ガス及び0.25[m3/h]の窒素ガスに置換され得る。
【0140】
従って、
図7に示すように、アンモニア分解ガスを充填したタンク125の代わりに水素ガスを充填したタンク225を第2炉内導入ガス供給部とした装置を用いることも可能である。
【0141】
この場合、実施例1-1~1-4、2、3の全てにおいて、水素ガスの導入量は1.5[m3/h])となり、3種類の炉内導入ガスの合計導入量(10[m3/h])に対する導入比率は15%である。一方、窒素ガスの導入量は、各表内の数値に+0.5[m3/h]が足された値となる。
【0142】
また、前述したアンモニア分解ガスの好適な導入比率12%~24%は、水素ガスの導入比率に換算すると、9%~18%となる。
【0143】
(作用:実施例4-1~4-4(850℃での第2の態様)及び比較例4)
次に、再び
図2及び
図3を参照して、本実施形態の表面硬化処理装置1の第2の態様の作用について説明する。
【0144】
処理炉(加熱室)11での窒化処理中、炉内導入ガス供給部120からアンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとが設定初期流量で処理炉(加熱室)11内へ導入される。
【0145】
(実施例4-1)
実施例4-1では、
図8の表4に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.02とされ、
図2に示すように、アンモニアガスの設定初期流量が0.8[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。これらの設定流量は、パラメータ設定装置15において設定入力可能である。また、攪拌ファン駆動モータ109が駆動されて攪拌ファン26が回転し、処理炉(加熱室)11内の雰囲気が攪拌される。
【0146】
初期状態では、開閉弁制御装置116は、開閉弁117を閉鎖状態としている。一般的に、ガス窒化処理の前処理として、鋼材表面を活性化して窒素を入りやすくする処理が行われることがある。この場合、炉内に塩化水素ガスやシアン化水素ガスなどが発生する。これらのガスは、炉内雰囲気ガス濃度検出装置(センサ)103を劣化させ得るため、開閉弁117を閉鎖状態としておくことが有効である。
【0147】
また、炉内温度計測装置110が炉内ガスの温度を計測し、この計測温度を含む情報信号を窒化ポテンシャル調節計104及び記録計106に出力する。窒化ポテンシャル調節計104は、処理炉(加熱室)11内の状態について、昇温途中であるのか、昇温が完了した状態(安定した状態)であるのか、判定する。
【0148】
また、窒化ポテンシャル調節計104の炉内窒化ポテンシャル演算装置113は、炉内の窒化ポテンシャルを演算し事前に導入されているガス種が形成した雰囲気の影響により、設定窒化ポテンシャルを下回る雰囲気になっている)、目標窒化ポテンシャル(本例では0.02)と基準偏差値との和を下回ったか否かを判定する。この基準偏差値も、パラメータ設定装置115において設定入力可能であり、例えば0.01である
【0149】
昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和(本例では0.03)を下回ったと判定されると、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始する。これに応じて、開閉弁制御装置116が開閉弁117を開放状態に切り換える。
【0150】
開閉弁117が開放状態に切り換えられると、処理炉(加熱室)111と雰囲気ガス濃度検出装置103とが連通し、炉内雰囲気ガス濃度検出装置103が炉内水素濃度あるいは炉内アンモニア濃度を検出する。検出された水素濃度信号あるいはアンモニア濃度信号が、窒化ポテンシャル調節計104及び記録計106へ出力される。
【0151】
窒化ポテンシャル調節計104の炉内窒化ポテンシャル演算装置113は、入力される水素濃度信号またはアンモニア濃度信号に基づいて炉内窒化ポテンシャルを演算する。そして、ガス流量出力調整装置130は、炉内窒化ポテンシャル演算装置113によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、3種類の炉内導入ガスのうちアンモニアガスの導入量を入力値としたPID制御を実施する。具体的には、当該PID制御において、窒素ガスの導入量及びアンモニア分解ガスの導入量を一定に保ちながらアンモニアガスの導入量及び炉内導入ガスの合計導入量を共に増減させることによって、処理炉(加熱室)11内の窒化ポテンシャルが目標窒化ポテンシャルに近づくような制御が実施される。当該PID制御においては、パラメータ設定装置115にて設定入力された各設定パラメータ値が用いられる。この設定パラメータ値は、目標窒化ポテンシャルの値に応じて異なっていてもよい。
【0152】
そして、ガス導入量制御装置114が、PID制御の結果として、アンモニアガスの導入量を制御する。ガス導入量制御装置114は、決定された各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置122、アンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置126(一定供給量)、及び、窒素ガス用の第3供給量制御装置172、に制御信号を送る。
【0153】
以上のような制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は0.77~0.83[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.02)の近傍に制御できることが確認できた。
【0154】
(実施例4-2)
実施例4-2では、
図8の表に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ、アンモニアガスの設定初期流量が1.8[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。
【0155】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0156】
その他については実施例4-1と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.72~1.88[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に制御できることが確認できた。
【0157】
(実施例4-3)
実施例4-3では、
図8の表4に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.1とされ、アンモニアガスの設定初期流量が2.1[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。
【0158】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.1)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.12)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0159】
その他については実施例4-1及び実施例4-2と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は2.0~2.2[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.1)の近傍に制御できることが確認できた。
【0160】
(実施例4-4)
実施例4-4では、
図8の表4に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.18とされ、アンモニアガスの設定初期流量が2.1[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。
【0161】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.18)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.20)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0162】
その他については実施例4-1乃至実施例4-3と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は2.5~2.65[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.18)の近傍に制御できることが確認できた。
【0163】
(比較例4-2-1)
比較例4-2-1では、
図9の表5に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ(実施例4-2と同様)、アンモニアガスの設定初期流量が1.0[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスが導入されず、窒素ガスの設定流量が10[m
3/h]とされた(特開2007-46088号公報(特許文献5)に準じた制御態様である)。
【0164】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0165】
その他については実施例4-1乃至実施例4-4と略同様の制御が試みられたが、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができなかった。その結果、鋼部材の表面硬化処理を高品質に行うことができなかった。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は0~1.0[m3/h]の変動幅内で増減されたが、窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に収束させることができなかった。
【0166】
(比較例4-2-2)
比較例4-2-2では、
図10の表6に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ(実施例4-2と同様)、アンモニアガスの設定初期流量が6.0[m
3/h]とされ、窒素ガスが導入されず、アンモニア分解ガスの設定流量が2.0[m
3/h]とされた(特許第6503122号(特許文献4)に準じた制御態様である)。
【0167】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0168】
その他については実施例4-1乃至実施例4-4と略同様の制御が試みられたが、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができなかった。その結果、鋼部材の表面硬化処理を高品質に行うことができなかった。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は0~6.0[m3/h]の変動幅内で増減されたが、窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に収束させることができなかった。
【0169】
(比較例4-2-3)
比較例4-2-3では、
図10の表6に示すように、窒化処理温度が850℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.06とされ(実施例4-2と同様)、アンモニアガスの設定初期流量が6.0[m
3/h]とされ、窒素ガスが導入されず、アンモニア分解ガスの設定流量が4.0[m
3/h]とされた(特許第6503122号(特許文献4)に準じた制御態様である)。
【0170】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.06)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0171】
その他については実施例4-1乃至実施例4-4と略同様の制御が試みられたが、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができなかった。その結果、鋼部材の表面硬化処理を高品質に行うことができなかった。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は6.0~8.0[m3/h]の変動幅内で増減されたが、窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャル(0.06)の近傍に収束させることができなかった。
【0172】
(実施例5)
実施例5では、
図11の表7に示すように、窒化処理温度が800℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.08とされ、アンモニアガスの設定初期流量が2.1[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。
【0173】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.08)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.10)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0174】
その他については実施例4-1乃至実施例4-4と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.9~2.05[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.08)の近傍に制御できることが確認できた。
【0175】
(実施例6)
実施例6では、
図11の表7に示すように、窒化処理温度が900℃、窒化処理時間が90分、目標窒化ポテンシャルが0.05とされ、アンモニアガスの設定初期流量が1.9[m
3/h]とされ、アンモニア分解ガスの設定流量(一定)が2.0[m
3/h]とされ、窒素ガスの設定流量(一定)が6[m
3/h]とされた。
【0176】
そして、昇温が完了した状態であると判定され、且つ、炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャル(本例では0.05)と基準偏差値(本例では0.02)との和(本例では0.08)を下回ったと判定された時、窒化ポテンシャル調節計104は、ガス導入量制御装置114を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始した。
【0177】
その他については実施例4-1乃至実施例4-4と略同様の制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができ、鋼部材の表面硬化処理を極めて高品質に行うことができた。より具体的には、サンプリング時間数百ミリ秒程度のフィードバック制御によって、アンモニアガスの導入量は1.85~1.98[m3/h]程度の変動幅内で増減され、処理開始後約15分の時点から窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャル(0.05)の近傍に制御できることが確認できた。
【0178】
(実施例4-1~4-4、5、6の変形例:アンモニア分解ガスの導入比率について)
実施例4-1~4-4、5、6において、3種類の炉内導入ガスの合計導入量(10[m3/h])に対して、アンモニア分解ガスの導入量(2.0[m3/h])は、19%~23%であった。
【0179】
本件発明者は、この割合が12%以上であれば、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャルの近傍に制御できることを確認した。
【0180】
一方、この割合の上限値については、下限値ほどクリティカルではないものの、24%以下であれば、680℃以上の高温域、特には800℃以上の高温域において、窒化ポテンシャルを極めて高精度に目標窒化ポテンシャルの近傍に制御できることを確認した。
【0181】
具体的には、アンモニア分解ガスの導入量について、0.8[m3/h]、1.2[m3/h]、1.6[m3/h]、2.4[m3/h]、2.8[m3/h]、3.2[m3/h]とした各変形例について、実施例4-1~4-4、5、6と略同様の制御を行った。
【0182】
アンモニア分解ガスの導入量が、1.2[m3/h](導入比率は1.2/8~1.2/9.8=12%~15%)、1.6[m3/h](導入比率は1.6/8.4~1.6/10.2=16%~19%)、2.4[m3/h](導入比率は2.4/9.2~2.4/11.0=22%~26%)の場合には、実施例1-1~1-4、2、3と同様、非常に高精度な窒化ポテンシャル制御ができた。
【0183】
また、アンモニア分解ガスの導入量が、2.8[m3/h](導入比率は2.8/9.6~2.8/11.4=25%~29%)、3.2[m3/h](導入比率は3.2/10.0~3.2/11.8=27%~32%)の場合にも、許容できる程度に高精度な窒化ポテンシャル制御ができた。
【0184】
一方、アンモニア分解ガスの導入量が、0.8[m3/h](導入比率は0.8/7.6~0.8/9.4=9%~11%)の場合には、高精度な窒化ポテンシャル制御ができなかった。
【0185】
(アンモニア分解ガスと、水素ガス及び窒素ガスと、の置換について)
当業者においては明らかである通り、1.0[m3/h]のアンモニア分解ガスは、0.75[m3/h]の水素ガス及び0.25[m3/h]の窒素ガスに置換され得る。
【0186】
従って、
図7に示すように、アンモニア分解ガスを充填したタンク125の代わりに水素ガスを充填したタンク225を第2炉内導入ガス供給部とした装置を用いることも可能である。
【0187】
この場合、実施例4-1~4-4、5、6の全てにおいて、水素ガスの導入量は1.5[m3/h])となり、3種類の炉内導入ガスの合計導入量に対する導入比率は14%~17%である。一方、窒素ガスの導入量は、各表内の数値に+0.5[m3/h]が足された値となる。
【0188】
また、前述したアンモニア分解ガスの好適な導入比率12%~24%は、水素ガスの導入比率に換算すると、9%~18%となる。
【符号の説明】
【0189】
1 表面硬化処理装置
10 搬入部
11 加熱室
12 搬送室
13 搬出コンベア
15 パラメータ設定装置
20 ケース
21 扉
22 入口フード
26 攪拌ファン
27 中間扉
30 エレベータ
31 冷却用の油
21 冷却室(油槽)
35 扉
36 出口フード
103 炉内雰囲気ガス濃度検出装置
104 窒化ポテンシャル調節計
105 温度調節計
106 記録計
109 攪拌ファン駆動モータ
110 炉内温度計測装置
111 炉体加熱装置
112 雰囲気ガス配管
113 炉内窒化ポテンシャル演算装置
114 ガス導入量制御装置
115 パラメータ設定装置
116 開閉弁制御装置
117 開閉弁
120 炉内導入ガス供給部
121 第1炉内導入ガス供給部
122 第1供給量制御装置
123 第1供給弁
124 第1流量計
125 第2炉内導入ガス供給部(アンモニア分解ガスのタンク)
126 第2供給量制御装置
127 第2供給弁
128 第2流量計
129 炉内導入ガス導入配管
130 ガス流量出力調整装置
131 プログラマブルロジックコントローラ
171 第3炉内導入ガス供給部
172 第3供給量制御装置
173 第3供給弁
174 第3流量計
225 第2炉内導入ガス供給部(水素ガスのタンク)