(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006263
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】棒材加工システム
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B23B13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106947
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】中里 幸司
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC04
3C045FC14
(57)【要約】
【課題】 棒材の加工途中等において主軸台の移動方向が逆転する際においても、棒材に過大な負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じることを有意に抑制できるような棒材加工システムを提供すること。
【解決手段】 本発明は、主軸台が移動する棒材加工機と、棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、前記棒材の前進及び後進方向について、前記棒材加工機の前記主軸台の移動と前記棒材供給機の前記送り部材の移動とを同期させることが可能な同期装置と、を備え、前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、前記駆動モータは、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、前記主軸台の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御されることを特徴とする棒材加工システムである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸台が移動する棒材加工機と、
棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、
前記棒材の前進及び後進方向について、前記棒材加工機の前記主軸台の移動と前記棒材供給機の前記送り部材の移動とを同期させることが可能な同期装置と、
を備え、
前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、
前記駆動モータは、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御される
ことを特徴とする棒材加工システム。
【請求項2】
主軸台が移動する棒材加工機と、
棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、
を備え、
前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、
前記駆動モータは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御される
ことを特徴とする棒材加工システム。
【請求項3】
棒材の先端部を位置決めするためのストッパ部を有する棒材加工機と、
前記棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、
を備え、
前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、
前記駆動モータは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御される
ことを特徴とする棒材加工システム。
【請求項4】
前記駆動モータの駆動力は、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、小さい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項5】
前記駆動モータの駆動力は、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、小さい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項6】
前記駆動モータの駆動力は、
前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、小さく、
前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、更に小さい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項7】
前記駆動モータの駆動力は、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項8】
前記駆動モータの駆動力は、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項9】
前記駆動モータの駆動力は、
再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きく、
再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、更に大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項10】
前記駆動モータの駆動力は、
前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きく、
前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、小さい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項11】
前記駆動モータは、駆動電流指令に基づいて駆動制御されるようになっており、
前記駆動電流指令の値は、複数の状態の各々に応じて切り替わるようになっており、
前記複数の状態の各々に対応する前記駆動電流指令の値は、任意に設定可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【請求項12】
前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態は、エンコーダ機構の回転によって検知されるようになっており、
前記エンコーダ機構の回転に基づく回転方向の変化の判別のための閾値は、任意に設定可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材加工機と、棒材(一般にはφ12以下程度の鋼材ないし樹脂材)の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、を備えた棒材加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主軸台が移動する棒材加工機(「主軸移動型棒材加工機」とも呼ばれる)と、棒材の後端部を送り部材(「送り矢」とも呼ばれる)によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、棒材の前進及び後進方向について棒材加工機の主軸台の移動と棒材供給機の送り部材の移動とを同期させることが可能な同期装置と、を備えた棒材加工システムが知られている。
【0003】
送り部材は、一般的に、モータによって回転駆動されるスプロケットに巻き掛けられた無端チェーンに連結されている。送り部材の前端に、棒材の後端部を把持するためのフィンガーチャックが設けられ、当該フィンガーチャックの中に棒材の後端部が挿入されるようになっている。
【0004】
送り部材が無端チェーンの走行に伴って前方に移動することで、棒材が棒材加工機に向かって給送される。棒材の先端部が、棒材加工機の所定の位置(例えばストッパ部によって規定される位置)まで移動すると、棒材は棒材加工機のコレットチャックによって把持される。その後、主軸台が前後移動しながら棒材が加工される。
【0005】
棒材加工機の主軸台が移動する棒材加工中において、棒材の後端部がフィンガーチャックから抜けないように、また、棒材に過大な負荷がかからないように、送り部材が主軸台の移動に同期して移動することが好ましい。そのために、同期装置が設けられている。
【0006】
例えば、本件出願人による特許文献1には、送り部材112を支持する送り部材用無端チェーン122と、当該送り部材用無端チェーン122の移動に連動して回転移動する送り部材連動回転体120と、主軸台106に接続された主軸台用無端チェーン150と、当該主軸台用無端チェーン150の移動に連動して回転移動する主軸台連動回転体148と、を有する構成において、クラッチ手段130(同期装置の一例)によって送り部材連動回転体120と主軸台連動回転体148とが着脱可能に連結されるようになっている(
図11参照:特許文献1の
図1に相当する図である)。クラッチ手段130の解除時においては、駆動モータ149によって、主軸台106の移動とは独立して、送り部材112を移動させることが可能である(主軸台106の移動力とは独立に、送り部材112の移動力を提供することが可能である)。
【0007】
また、本件出願人による特許文献2は、
図11のような構成を前提とした上で、棒材の直径がコレットチャックに対応した適切なものであることを安価かつ正確に確認する構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-246502
【特許文献2】特許第6784392
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に示されているような構成では、クラッチ手段130の締結時においては、棒材の給送方向について、主軸台106の移動と送り部材112の移動とが同期される。
【0010】
本件出願人は、このような同期駆動状態において、駆動モータ149を駆動させることによって、棒材の給送方向について主軸台106と送り部材112との間で棒材に所定の負荷(軸方向の圧縮荷重)が維持(残存)された状態であることが、棒材加工時の棒材を安定させる上で効果的であることを知見し、実際の製品群において採用している。
【0011】
具体的には、駆動モータ149において、送り部材112の移動を駆動する際の自身のトルク負荷が概ね所望の値(例えば、1.7Nm程度)となるように、駆動モータ49の駆動電流値が設定されている。
【0012】
ここで、本件発明者は、駆動モータ149の駆動電流値が一律に設定された状態であると、棒材の加工途中等において主軸台106の移動方向及び/または送り部材112の移動方向が逆転する際に、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまう場合があることを知見した(
図4参照)。
【0013】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、棒材の加工途中等において主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が逆転する際においても、棒材に過大な負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じることを有意に抑制できるような棒材加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、主軸台が移動する棒材加工機と、棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、前記棒材の前進及び後進方向について、前記棒材加工機の前記主軸台の移動と前記棒材供給機の前記送り部材の移動とを同期させることが可能な同期装置と、を備え、前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、前記駆動モータは、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御されることを特徴とする棒材加工システムである。
【0015】
本発明の当該態様によれば、駆動モータが、同期装置によって主軸台の移動と送り部材の移動とが同期されている状態下で、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向の変化状態に応じて駆動制御されることにより、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の概念は、同期装置を有しない棒材加工システムにおいても有効である。同期装置を有しない棒材加工システムでは、棒材自身が仲介役となって、主軸台の移動が送り部材側に伝達されて送り部材が連動(移動)されるが、このような場合においても、本発明の概念は有効である。
【0017】
すなわち、本発明の一態様は、主軸台が移動する棒材加工機と、棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、を備え、前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、前記駆動モータは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御されることを特徴とする棒材加工システムである。
【0018】
本発明の当該態様によれば、駆動モータが、主軸台の移動が棒材自身によって送り部材の移動として伝達されている状態下で、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向の変化状態に応じて駆動制御されることにより、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0019】
更に、本発明の概念は、主軸台が移動しない棒材加工システムにおいて、棒材の先端部をストッパ部に当接させて位置決めする際の制御に利用することも有効である。
【0020】
すなわち、本発明の一態様は、棒材の先端部を位置決めするためのストッパ部を有する棒材加工機と、前記棒材の後端部を送り部材によって押し込むことで当該棒材を前進させる棒材供給機と、を備え、前記棒材供給機は、当該棒材供給機の前記送り部材に移動力を提供することが可能な駆動モータを有しており、前記駆動モータは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、前記送り部材の移動方向の変化状態に応じて、駆動制御されることを特徴とする棒材加工システムである。
【0021】
本発明の当該態様によれば、駆動モータが、ストッパ部から受ける抵抗力が棒材によって送り部材に伝達されている状態下で、送り部材の移動方向の変化状態に応じて駆動制御されることにより、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0022】
具体的には、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台及び/または前記送り部材の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台が移動している時よりも、小さいことが好ましい。
【0023】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が逆転したタイミングで、駆動モータの駆動力が低減されることになるため、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。また、駆動力の低減は、消費電力の低減を意味するため、省エネルギーとなって環境配慮に貢献できる。
【0024】
あるいは、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、小さいことが好ましい。
【0025】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングで、駆動モータの駆動力が低減されることになるため、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、駆動モータの駆動制御の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。また、駆動力の低減は、消費電力の低減を意味するため、省エネルギーとなって環境配慮に貢献できる。
【0026】
あるいは、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、小さく、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、更に小さいことが好ましい。
【0027】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、駆動モータの駆動力が2段階で低減されることになるため、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。また、駆動力の低減は、消費電力の低減を意味するため、省エネルギーとなって環境配慮に貢献できる。
【0028】
また、以上の各発明は、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向が再び元の方向に復帰する場合にも同様に適用可能である。
【0029】
すなわち、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きいことが好ましい。
【0030】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰したタイミングで、駆動モータの駆動力が増大される(例えば元に戻される)ことになるため、主軸台の前進またはストッパ部の前進に対して円滑に追従し、棒材を棒材加工機に安定的に給送することができる。
【0031】
あるいは、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きいことが好ましい。
【0032】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングで、駆動モータの駆動力が増大される(例えば元に戻される)ことになるため、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、駆動モータの駆動制御の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0033】
あるいは、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記同期装置によって前記主軸台の移動と前記送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、前記主軸台の移動が前記棒材によって前記送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、前記棒材の先端部が前記ストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が前記棒材によって前記送り部材に伝達されている状態下で、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きく、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、更に大きいことが好ましい。
【0034】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、駆動モータの駆動力が2段階で増大されることになるため、駆動力を一段階増大している間に再度逆転方向に復帰した際に、トルク低減までの追従性を良くすることができる。
【0035】
あるいは、例えば、前記駆動モータの駆動力は、前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めた時、前記棒材の前進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動している時よりも、大きく、前記棒材の後進方向に前記主軸台が移動し始めてから所定時間が経過した時、前記棒材の後進方向に前記主軸台及び/または前記送り部材が移動し始めた時よりも、小さいことが好ましい。
【0036】
これによれば、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台の移動方向及び/または送り部材が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、駆動モータの駆動力が2段階に設定され、例えば前者のタイミングでの駆動力変化によって主軸台の前進またはストッパ部の前進に対してより迅速に(好適には瞬時に)追従し、後者のタイミングでの駆動力変化によって元の駆動力に戻すことができる。
【0037】
なお、前記駆動モータは、駆動電流指令に基づいて駆動制御されるようになっており、前記駆動電流指令の値は、複数の状態の各々(例えば前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化の前後)に応じて切り替わるようになっており、前記複数の状態の各々に対応する前記駆動電流指令の値は、任意に設定可能であることが好ましい。これにより、実際のシステム設置現場での微調整等が容易である。
【0038】
また、前記主軸台の移動方向及び/または前記送り部材の移動方向の変化状態は、エンコーダ機構の回転によって検知されるようになっており、前記エンコーダ機構の回転に基づく回転方向の変化の判別のための閾値は、任意に設定可能であることが好ましい。例えば、逆回転の検知において、「0rpm」を閾値とする代わりに「-50rpm」を閾値とする等、若干量のマージンを設定することで、逆回転の誤検知を効果的に防止することができる。同様に、その後の逆回転の検知においても、「0rpm」を閾値とする代わりに「+50rpm」を閾値とする等、若干量のマージンを設定することで、誤検知を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、同期装置によって主軸台の移動と送り部材の移動とが同期されている状態下で、あるいは、主軸台の移動が棒材によって送り部材の移動として伝達されている状態下で、あるいは、棒材の先端部がストッパ部に到達した後に当該ストッパ部から受ける抵抗力が棒材によって送り部材に伝達されている状態下で、駆動モータが、主軸台の移動方向及び/または送り部材の移動方向の変化状態に応じて駆動制御されることにより、棒材に所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態の棒材加工システムの側面図である。
【
図4】本実施形態の駆動モータの指令電流制御の第1実施例を示すグラフである。
【
図5】
図4の第1実施例によって軽減される棒材の負荷を説明するグラフである。
【
図6】本実施形態の駆動モータの指令電流制御の第2実施例を示すグラフである。
【
図7】本実施形態の駆動モータの指令電流制御の第3実施例を示すグラフである。
【
図8】本実施形態の駆動モータの指令電流制御の第4実施例を示すグラフである。
【
図9】同期装置を有しない棒材加工システムの側面図である。
【
図10】棒材加工機のストッパ部を示す概略図である。
【
図11】従来の棒材供給機の概略斜視図である(特許文献1の
図1に相当する図である)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0042】
(基本構成)
図1は、本発明の一実施形態の棒材加工システムの側面図であり、また、
図2は、
図1の棒材供給機の側面図であり、
図3は、
図1及び
図2の棒材供給機の平面図である。
【0043】
図1乃至
図3に示すように、棒材加工システム1は、主軸移動型の棒材加工機2と、棒材加工機2に棒材Wを給送するための棒材供給機4と、を備える。
【0044】
棒材加工機2は、棒材Wの給送軸線O-Oに沿って前後に移動する主軸台6と、主軸台6の中に給送軸線O-Oに沿って延びる主軸8と、主軸8の先端近傍に位置して棒材Wを把持するためのコレットチャック10と、主軸台6の前方に位置して給送軸線O-O上に配置されたガイドブッシュ12と、棒材Wを突っ切るための突っ切りバイト14と、を有している。
【0045】
一方、棒材供給機4は、給送軸線O-Oに沿って延びると共に蓋部(図示せず)を有するガイドレール16と、ガイドレール16に沿って棒材Wを棒材加工機2に給送するための送り部材18と、送り部材を前後に移動させるための送り部材駆動装置20と、ガイドレール16に新たな棒材Wを補給する棒材補給手段(図示せず)と、製品加工終了後に残された残材を廃棄するための残材ボックス部26と、棒材加工中等に棒材Wを真っ直ぐに支持するべくガイドレール16に油を注入して棒材Wを油で給送軸線O-O上に支持するための油注入装置(図示せず)と、棒材Wの後端部を送り部材18の受入れ部の中に挿入する間に当該棒材Wが動かないように押さえるためのクランプ装置(図示せず)と、を有している。
【0046】
送り部材18は、押し部材本体18aと、押し部材本体18aの先端に設けられた棒材保持部18bと、を有する。棒材保持部18bには、棒材Wの後端部が挿入され得る円筒状の受入れ部が形成されている。また、送り部材18は、無端チェーン20dと連結するための羽根18cを有している。
【0047】
送り部材駆動装置20は、ガイドレール16の前端近傍及び後端近傍に設けられたスプロケット20aと、スプロケット20aに巻き掛けられた無端チェーン20bと、無端チェーン20bを走行させるための駆動モータであるサーボモータ20cと、を有している。送り部材18の羽根18cが、無端チェーン20bに連結されている。
【0048】
また、主軸台6と送り部材18とを同期させるための同期装置22が設けられており、棒材供給機4及び棒材加工機2の動作を制御するための制御部24が設けられている。
【0049】
同期装置22は、主軸台6へ連結するための連結板22aと、前端が連結板22aを介して主軸台6に連結されると共にガイドレール16に対して並行に真っ直ぐに延びる連結棒22bと、ガイドレール16に沿うように一対のスプロケット22cに巻き掛けられて支持されると共に連結棒22bに連結された無端チェーン22dと、無端チェーン20bと無端チェーン22dとを解除可能に同期(連結)させる同期クラッチ22eと、を有している。
【0050】
(基本作用)
初期状態として、主軸台6が、後退位置P1と前進位置P3との間の待機位置P2にあるとし、送り部材18が、ガイドレール16の後部に退避しているとする。
【0051】
棒材加工システム1が起動されると、新たな棒材Wがガイドレール16内に投入される。そして、当該棒材Wの先端部が、棒材供給機4に設けられた棒材クランプ装置(図示せず)によって把持される。次いで、サーボモータ20cが駆動され、送り部材18が前進移動され、棒材Wの後端部が棒材保持部18bの受入れ部の中に挿入される。その後、棒材クランプ装置が解放され、サーボモータ20cによって送り部材18が更に前進移動され、棒材Wの先端部が主軸8の中に挿入され、ガイドブッシュ12の直ぐ手前まで給送される。
【0052】
次に、コレットチャック10が閉じて、棒材Wの先端部が把持される。また、同期装置22によって、前進及び後進方向において、主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期される。具体的には、同期クラッチ22eが連結されて無端チェーン20bと無端チェーン22dとの移動が同期されることで、主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期される。
【0053】
このような同期状態下で、棒材Wの先端部がガイドブッシュ12の中に挿入される。
【0054】
例えば、ショートカットすべき棒材Wの部分(先端部Ymmの部分)が、突っ切りバイト14の前方に突出する位置、すなわち、ショートカット位置まで、移動されて、突っ切りバイト14によって突っ切られる。
【0055】
次に、コレットチャック10が開き、同期装置22の同期が解除されて、主軸台6が製品加工長だけ後退される。そして、再びコレットチャック10が閉じて、棒材Wの新たな先端部が把持され、同期装置22によって、前進及び後進方向において、主軸台6の移動と送り部材18の移動とが再び同期される。
【0056】
このような同期状態下で、棒材Wの新たな先端部がガイドブッシュ12の中に挿入され、例えば突っ切りバイト14によって突っ切られる。
【0057】
前述の加工工程が繰り返され、棒材Wがこれ以上製品を加工することができない長さになると、当該棒材Wは、残材として、残材ボックス部26の中に廃棄される。
【0058】
(本実施形態の特徴的作用)
さて、本実施形態の棒材加工システム1は、棒材Wの加工途中等において主軸台6の移動方向が逆転する際においても、棒材Wに過大な負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じることを有意に抑制することができる。このような特徴的作用について説明する。
【0059】
本実施形態のサーボモータ20cは、制御部24内に設けられたPLC(不図示)及びサーボアンプ(不図示)によって駆動制御されるようになっている。より具体的には、当該PLC及び当該サーボアンプが、主軸台6の移動方向の変化状態に基づく条件に応じて(本実施形態では、主軸台6の移動方向の変化状態に同期する送り部材18の移動方向の変化状態に応じて)、予め設定された駆動電流指令(本実施形態では8段階の電流値から選択される)がサーボモータ20cに提供されるようになっている。駆動電流指令(例えば8段階の電流値の各々)は、任意に設定可能である。送り部材18の移動方向の変化は、サーボモータ20c自身の回転方向の変化として、サーボモータ20c自身に内蔵されたエンコーダ機構等によって検知され得る。エンコーダ機構等は、例えば逆回転の検知において、「0rpm」を閾値とする代わりに「-50rpm」を閾値とする等、若干量のマージンを設定することで、逆回転の誤検知を効果的に防止することができる。同様に、その後の正回転の検知においても、「0rpm」を閾値とする代わりに「+50rpm」を閾値とする等、若干量のマージンを設定することで、誤検知を効果的に防止することができる。
【0060】
(第1実施例)
図4は、本実施形態のサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の第1実施例を示すグラフである。
【0061】
図4に示すように、第1実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0062】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0063】
具体的には、サーボモータ20cの電流指令値が一律である場合、
図5(a)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)が上がってしまっていた所、
図5(b)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)を効果的に低減することができる。
【0064】
更に、
図4に示すように、第1実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0065】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、主軸台6の前進またはストッパ部Sの前進に対して円滑に追従し、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができる。
【0066】
なお、以上の第1実施例において、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図4において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0067】
(第2実施例)
図6は、本実施形態のサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の第2実施例を示すグラフである。
【0068】
図6に示すように、第2実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0069】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0070】
更に、
図6に示すように、第2実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0071】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰し始めてから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0072】
なお、以上の第2実施例においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図6において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0073】
(第3実施例)
図7は、本実施形態のサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の第3実施例を示すグラフである。
【0074】
図7に示すように、第3実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0075】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0076】
更に、
図7に示すように、第3実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に大きい、というように制御される。
【0077】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつ、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができ、また、駆動力を一段階増大している間に再度逆転方向に復帰した際に、トルク低減までの追従性を良くすることができる。
【0078】
なお、以上の第3実施例においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図7において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0079】
(第4実施例)
図8は、本実施形態のサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の第4実施例を示すグラフである。
【0080】
図8に示すように、第4実施例でも、第3実施例と同様に、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0081】
第3実施例と同様に、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0082】
そして、
図8に示すように、第4実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、同期装置22によって主軸台6の移動と送り部材18の移動とが同期されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも小さい、というように制御される。
【0083】
このような第4実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階に設定され、前者のタイミングでの駆動力変化によって主軸台6の前進に対してより迅速に(好適には瞬時に)追従し、後者のタイミングでの駆動力変化によって元の駆動力に戻すことができる。
【0084】
なお、以上の第4実施例においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図8において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0085】
(主軸台6の移動方向及び/または送り部材18の移動方向の検知のバリエーション)
前述の実施形態(の各実施例)では、主軸台6の移動方向として、サーボモータ20c自身の回転方向を検知して利用している。これは、厳密に言えば、主軸台6の移動方向ではなく、送り部材18の移動方向を検知していると言うべきであるが、少なくとも本願出願の時点においては当該実施形態での両者を明確に区別する必要はなく、両者のいずれかの検知情報に基づいてサーボモータ20cの駆動力が制御されれば足りる。
【0086】
例えば、主軸台6に対応して磁気スケーラー等を設置しておいて、主軸台6の移動方向が直接的に検知(測定)されてもよい。あるいは、主軸台6の移動制御に適用されるプログラムに基づいて、主軸台6の移動方向を事前に把握する態様も採用され得る。
【0087】
一方、送り部材18の移動方向を検知(測定)する態様についても、少なくとも本願出願の時点においては前記実施形態の態様に限定されず、例えば送り部材18に対応して磁気スケーラー等を設置しておいて検知(測定)がなされてもよい。
【0088】
更には、主軸台6及び/または送り部材18の移動方向として、同期装置20の同期クラッチ22eの回転方向が検知(測定)されてもよい。
【0089】
(同期装置20を有しない変形例)
前述の各実施例における指令電流値変更制御は、同期装置を有しない棒材加工システムにおいても有効である。同期装置を有しない棒材加工システムでは、棒材自身が仲介役となって、主軸台の移動が送り部材側に伝達されて送り部材が連動(移動)されるが、このような場合においても、前述の各実施例における指令電流値変更制御は有効である。
【0090】
図9は、同期装置を有しない棒材加工システムの側面図である。同期装置20を有していない点を除いて、その他の構成は、
図1に示した実施形態の棒材加工システムと同様である。
図9において、
図1に示した実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0091】
(第1実施例(2))
同期装置を有しない棒材加工システムにおいても、
図4に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第1実施例)。
【0092】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0093】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0094】
具体的には、サーボモータ20cの電流指令値が一律である場合、
図5(a)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)が上がってしまっていた所、
図5(b)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)を効果的に低減することができる。
【0095】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0096】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、主軸台6の前進に対して円滑に追従し、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができる。
【0097】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図4において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0098】
(第2実施例(2))
同期装置を有しない棒材加工システムにおいても、
図6に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第2実施例)。
【0099】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0100】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0101】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0102】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰し始めてから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0103】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図6において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0104】
(第3実施例(2))
同期装置を有しない棒材加工システムにおいても、
図7に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第3実施例)。
【0105】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0106】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0107】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に大きい、というように制御される。
【0108】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつ、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができ、また、駆動力を一段階増大している間に再度逆転方向に復帰した際に、トルク低減までの追従性を良くすることができる。
【0109】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図7において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0110】
(第4実施例(2))
同期装置を有しない棒材加工システムにおいても、
図8に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第4実施例)。
【0111】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0112】
このような第4実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0113】
更に、第4実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、主軸台6の移動が棒材Wによって送り部材18の移動として伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも小さい、というように制御される。
【0114】
このような第4実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階に設定され、前者のタイミングでの駆動力変化によって主軸台6の前進に対してより迅速に(好適には瞬時に)追従し、後者のタイミングでの駆動力変化によって元の駆動力に戻すことができる。
【0115】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図8において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0116】
(主軸台が移動しない変形例)
前述の各実施例における指令電流値変更制御は、主軸台が移動しない棒材加工システム(図示は省略する。前述の棒材加工システムを主軸台を移動させない態様で使用する場合も含む。)において、棒材Wの先端部をストッパ部S(
図10参照)に当接させて位置決めする際に利用することも有効である。(ストッパ部Sは、棒材Wの位置決めの際には棒材Wの移動軌道上に存在するが、一旦棒材Wの位置決めがなされた後は、当該移動軌道上から退避するようになっている。)
【0117】
(第1実施例(3))
主軸台が移動しない場合においても、
図4に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第1実施例)。
【0118】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0119】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0120】
具体的には、サーボモータ20cの電流指令値が一律である場合、
図5(a)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)が上がってしまっていた所、
図5(b)に示すように棒材Wの負荷(軸方向の圧縮荷重)を効果的に低減することができる。
【0121】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0122】
このような第1実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、主軸台6の前進に対して円滑に追従し、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができる。
【0123】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図4において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0124】
(第2実施例(3))
主軸台が移動しない場合においても、
図6に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第2実施例)。
【0125】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0126】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0127】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きい、というように制御される。
【0128】
このような第2実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰し始めてから所定時間が経過したタイミングで、サーボモータ20cの駆動力が増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつも、第1実施例と比較して、サーボモータ20cの制御態様変更の頻度を抑制することができ、ひいては故障発生のリスクを低減することができる。
【0129】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図6において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0130】
(第3実施例(3))
主軸台が移動しない場合においても、
図7に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第3実施例)。
【0131】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0132】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0133】
更に、この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に大きい、というように制御される。
【0134】
このような第3実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で増大される(本実施例では元に戻される)ことになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことを効果的に抑制しつつ、棒材Wを棒材加工機2に安定的に給送することができ、また、駆動力を一段階増大している間に再度逆転方向に復帰した際に、トルク低減までの追従性を良くすることができる。
【0135】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図7において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【0136】
(第4実施例(3))
主軸台が移動しない場合においても、
図8に示されたサーボモータ20c(駆動モータ)の指令電流制御の適用が有効である(第4実施例)。
【0137】
この場合、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも小さく、且つ、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間(設定変更可能であることが好ましく、例えば20ミリ秒程度であることが好ましい)が経過した時、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも更に小さい、というように制御される。例えば、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めた時の指令電流値(例えば80mA)は、8段階中の下から3番目の電流値であり、棒材Wの後進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時の指令電流値(例えば20mA)は、8段階中の最も低い電流値であり、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時の指令電流値(例えば100mA)は、8段階中の上から4番目に高い電流値である。
【0138】
このような第4実施例によれば、主軸台6の移動方向が逆転したタイミングと、主軸台6の移動方向が逆転してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階で低減されることになるため、棒材Wに所望の範囲を超えるような負荷(軸方向の圧縮荷重)が生じてしまうことをより一層効果的に抑制することができ、また、駆動力を一段階低減している間に再度正転方向に復帰した際に、正転への回転の立ち上がりへの追従性を良くすることができる。
【0139】
更に、第4実施例では、サーボモータ20cの駆動力が、棒材Wの先端部がストッパ部Sに到達した後に当該ストッパ部Sから受ける抵抗力が棒材Wによって送り部材18に伝達されている状態下で、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時、棒材Wの前進方向に主軸台6が移動している時よりも大きく、且つ、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めてから所定時間が経過した時、再び棒材Wの前進方向に主軸台6が移動し始めた時よりも小さい、というように制御される。
【0140】
このような第4実施例によれば、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰したタイミングと、主軸台6の移動方向が元の方向に復帰してから所定時間が経過したタイミングとにおいて、サーボモータ20cの駆動力が2段階に設定され、前者のタイミングでの駆動力変化によって主軸台6の前進に対してより迅速に(好適には瞬時に)追従し、後者のタイミングでの駆動力変化によって元の駆動力に戻すことができる。
【0141】
なお、この場合においても、サーボモータ20cへの指令電流値を変更する際、例えば一次遅れフィルタ(不図示)を介在させることによって、
図8において破線で示すような滑らかな指令電流値変更制御を採用してもよい。当該一次遅れフィルタの時定数としては、例えば30ミリ秒程度が採用され得る。
【符号の説明】
【0142】
1 棒材加工システム
2 棒材加工機
4 棒材供給機
6 主軸台
8 主軸
10 コレットチャック
12 ガイドブッシュ
14 突っ切りバイト
16 ガイドレール
18 送り部材
18a 押し部材本体
18b 棒材保持部
18c 羽根
20 送り部材駆動装置
20a スプロケット
20b 無端チェーン
20c サーボモータ(駆動モータ)
22 同期装置
22a 連結板
22b 連結棒
22c スプロケット
22d 無端チェーン
22e 同期クラッチ
24 制御部
26 残材ボックス部
106 主軸台
112 送り部材
120 送り部材連動回転体
122 送り部材用無端チェーン
130 クラッチ手段
148 主軸台連動回転体
149 駆動モータ
150 主軸台用無端チェーン