IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電線ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車載用バスバーおよびその製造方法 図1
  • 特開-車載用バスバーおよびその製造方法 図2
  • 特開-車載用バスバーおよびその製造方法 図3
  • 特開-車載用バスバーおよびその製造方法 図4
  • 特開-車載用バスバーおよびその製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006266
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車載用バスバーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20250109BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20250109BHJP
   H01B 13/08 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
B60R16/04 Z
H01B7/295
H01B13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106951
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 利明
(72)【発明者】
【氏名】光地 伸明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 恒也
【テーマコード(参考)】
5G315
5G325
【Fターム(参考)】
5G315CA01
5G315CB01
5G315CC01
5G315CD01
5G315CD10
5G315CD11
5G325DA02
(57)【要約】
【課題】金属バーとその周辺の金属構造物との接触に伴う短絡を確実に防止する。
【解決手段】金属バー10、耐火テープおよび絶縁体層30を有する車載用バスバー1が開示されている。金属バー10には1枚または2枚以上の耐火テープが重ね巻きされ、そのうち少なくとも1枚の耐火テープが縦添え巻きされ、金属バー10および耐火テープが絶縁体層30で被覆されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属バー、耐火テープおよび絶縁体層を有する車載用バスバーであって、
前記金属バーには1枚または2枚以上の前記耐火テープが重ね巻きされ、そのうち少なくとも1枚の前記耐火テープが縦添え巻きされ、
前記金属バーおよび前記耐火テープが前記絶縁体層で被覆されていることを特徴とする車載用バスバー。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用バスバーにおいて、
前記金属バーには1枚または2枚以上の前記耐火テープが縦添え巻きされているか、または縦添え巻きと横巻きとが組み合わされていることを特徴とする車載用バスバー。
【請求項3】
金属バー、耐火テープおよび絶縁体層を有する車載用バスバーの製造方法であって、
前記金属バーに対し1枚または2枚以上の前記耐火テープを重ね巻きする工程であって、そのうち少なくとも1枚の前記耐火テープを縦添え巻きする工程と、
前記金属バーおよび前記耐火テープに対し一定の樹脂を押し出し、これらを前記絶縁体層で被覆する工程と、
を備えることを特徴とする車載用バスバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用途に適したバスバーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)といった電気自動車において、バッテリユニットとインバータとの間の電力供給用途には「バスバー」が使用されうる。
近年の電気自動車はモータ駆動だけでなく、ブレーキ、ハンドル、ドアや窓の開閉までも電動化されている。そのため、事故や整備不良に伴う火災などで緊急避難が必要な場合、バッテリユニットおよびバスバーを含む電力供給系統には、避難および周知を確保するため、電力供給を一定時間保持し、電装品を動かし続ける能力が求められる。
バッテリとしてはリチウムイオンバッテリが多用される。このバッテリは外部からの加熱や自己発熱により変形し発火に至る可能性があるため、ユニットとして堅牢で耐火性能を有する容器で保護されている。
【0003】
他方、バッテリユニットとは別に、バスバーにも耐火構造を保持させる必要がある。
特許文献1には、金属バー(10)にバンテージ部材(30A)を巻回しその外側を絶縁チューブ(20)で被覆した構造が開示されている。バンテージ部材は、電気絶縁性と耐火性とを備えたコーティング物質(31)でコーティング処理した金属ワイヤから構成されている。かかる構造では、火災時にバスバーの絶縁チューブが消失してもバンテージ部材が消失することなく金属バーに結束した状態で残り、金属バーと周辺の金属構造物(4)とが接触しないように金属バーを支持し、短絡を防止しうるようになっている(段落0030-0036、0047、図3図4図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-545548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、火災時において絶縁チューブを構成する高分子素材が炭化物となって残留する。炭化物は導電性を有するため、残留した当該炭化物が金属バーに付着したままその周辺の金属構造物に接触すれば短絡を防止することはできない。
この点、図5Aおよび図5Bに示すとおり、金属バー10に対し耐火テープ20を横巻きするか、または1枚目の耐火テープ20を間隔をあけてらせん状に巻回し2枚目の耐火テープ20をその間隔に沿ってらせん状に巻回することも考えられる。かかる場合、金属バー10を湾曲または屈曲させたときに、耐火テープ20の側縁部同士に隙間が生じ、そこから残留した当該炭化物が耐火テープ20の内側に混入し短絡が生じる可能性もある。
したがって本発明の主な目的は、金属バーとその周辺の金属構造物との接触に伴う短絡を確実に防止しうるバスバーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
金属バー、耐火テープおよび絶縁体層を有する車載用バスバーであって、
前記金属バーには1枚または2枚以上の前記耐火テープが重ね巻きされ、そのうち少なくとも1枚の前記耐火テープが縦添え巻きされ、
前記金属バーおよび前記耐火テープが前記絶縁体層で被覆されていることを特徴とする車載用バスバーが提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
金属バー、耐火テープおよび絶縁体層を有する車載用バスバーの製造方法であって、
前記金属バーに対し1枚または2枚以上の前記耐火テープを重ね巻きする工程であって、そのうち少なくとも1枚の前記耐火テープを縦添え巻きする工程と、
前記金属バーおよび前記耐火テープに対し一定の樹脂を押し出し、これらを前記絶縁体層で被覆する工程と、
を備えることを特徴とする車載用バスバーの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属バーとその周辺の金属構造物との接触に伴う短絡を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車載用バスバーの概略構成を示す斜視図である。
図2】車載用バスバーの概略構成を示す断面図である。
図3】車載用バスバーの概略構成を示す分解斜視図である。
図4図3の変形例を示す図である。
図5】従来の理想構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかるバスバーについて説明する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は下限値および上限値を当該数値範囲に含む意味を有している。
【0011】
図1および図2に示すとおり、車載用バスバー1は主に、金属バー10、耐火テープ20および絶縁体層30で構成されている。金属バー10には1枚または2枚以上の耐火テープ20が重ね巻きされ、これらが絶縁体層30で被覆されている。「重ね巻き」にはいわゆる縦添え巻きと横巻きとの両方が含まれ、金属バー10には少なくとも1枚の耐火テープ20が縦添え巻きされている(後述ご参照)。
【0012】
金属バー10は通常、1枚の金属板で構成され、通電電流の大きさによって厚さと幅が決定され、設置場所または設置条件によって長さが多様に製作される。
金属バー10は複数枚の金属薄板を積層したものであってもよい。たとえば、金属バー10は、約0.1~0.3mmの金属薄板を積層してその両端部を一体に溶接し、ツイストやベンディング可能で柔軟な構造を有してもよい。
金属バー10の金属板または金属薄板は好ましくは銅または銅合金で構成される。
【0013】
金属バー10の両端部のうち一端部は、いずれか1つのバッテリの(+)端子に接続され、他端部は他のバッテリの(-)端子に接続される。
たとえば、バッテリの端子がボルトタイプの場合、金属バー10の両端部のホール12をその端子に嵌合しナットで締結すれば、バッテリと車載用バスバー1(金属バー10)との接続部位を堅固に固定しうる。
【0014】
耐火テープ20はいわゆるマイカテープで構成されこれが高温での絶縁性能を発揮するようになっている。マイカは暗緑色を呈する天然鉱物で(日本語では雲母という。)、電気絶縁性、耐熱性に優れている。マイカそのものは鉱物であるがテープ状にすると、良好な可撓性を持つようになり、湾曲化または屈曲化に適した材料となりうる。
マイカテープはガラスクロスにマイカを接着したガラスマイカテープであってもよいし、ポリエチレンなどからなるプラスチックフィルムにマイカを接着したプラスチックマイカテープであってもよい。
【0015】
図3Aに示すとおり、耐火テープ20は金属バー10に縦添え巻きされ、ガラスヤーン22が耐火テープ20に巻き付けられている(ガラスヤーン22の粗巻きで押え巻が施されている。)。「縦添え巻き」とは、長尺なテープを被巻き体の長さ方向に沿って配置して両側縁部を内側に包み込むように円筒状に巻き付ける、という意である。
ガラスヤーン22に代えて、図3Bに示すとおり、ポリエチレンテレフタレート(PET;PolyEthyleneTerephthalate)テープ24を耐火テープ20に一定の隙間を開けた状態で巻回し固定してもよいし、図3Cに示すとおり、粘着テープ26aを耐火テープ20の側縁部の表面に沿って貼付し耐火テープ20を固定してもよいし、図3Dに示すとおり、耐火テープ20の側縁部の裏面に粘着剤26bを塗布するか、または粘着テープ26aを貼付し耐火テープ20を固定してもよい。
【0016】
絶縁体層30は一定の樹脂が押出機のダイスから押し出され形成されている。
当該樹脂は好ましくは難燃性の樹脂であれば適用可能であり、たとえばポリアミド(PA;PolyAmide)、ポリ塩化ビニル(PVC;PolyVinyl Chloride)、ポリエチレン(PE;PolyEthylene)、ポリプロピレン(PP;PolyPropylene)などから構成される。
【0017】
次に、車載用バスバー1の製造方法について説明する。
【0018】
はじめに、金属バー10上に耐火テープ20を1枚縦添え巻きし、これをガラスヤーン22で押え巻きし耐火テープ20を固定する。
その後、耐火テープ20の外側に一定の樹脂を押し出し被覆し絶縁体層30を形成し、車載用バスバー1の前駆体を形成する。
最後に、当該前駆体を設置場所または設置条件に応じて湾曲または屈曲させ、車載用バスバー1を製造することができる(完成させる)。
【0019】
以上の車載用バスバー1によれば、金属バー10に対し直に耐火テープ20が縦添え巻きされている。そのため、事故や整備不良に伴う火災が起こり絶縁体層30が炭化物となって残留しても、残留した当該炭化物が金属バー10に付着することがなく、その周辺の金属構造物に接触して短絡するのを防止することができる。
併せて車載用バスバー1によれば、耐火テープ20にはマイカが混入され一定の可撓性を有している。そのため、車載用バスバー1の前駆体を湾曲または屈曲させた場合に、耐火テープ20が金属バー10との間に隙間を生じさせることなくその湾曲または屈曲に追従する。かかる場合も、上記と同様に、事故や整備不良に伴う火災が起こり絶縁体層30が炭化物となって残留しても、残留した当該炭化物が金属バー10に付着することがなく、その周辺の金属構造物に接触して短絡するのを防止することができる。
【0020】
以上から車載用バスバー1によれば、金属バー10とその周辺の金属構造物との接触に伴う短絡を確実に防止することができる。
【0021】
なお、車載用バスバー1の耐火テープ20の重ね巻き態様は図3の構造に限らず、枚数や巻き方などを適宜変更しうる。
【0022】
たとえば、図4Aおよび図4Bに示すとおり、耐火テープ20を2枚準備しそれぞれ金属バー10に重ねて縦添え巻きしてもよい。かかる場合、1枚目の耐火テープ20の側縁部と2枚目の耐火テープ20の側縁部とが上下または左右で反転するように縦添え巻きするのがよい。
図4Aのように、1枚目の耐火テープ20にはポリプロピレンヤーン28を巻回し、2枚目の耐火テープ20にはガラスヤーン22を巻回し、耐火テープ20をそれぞれ固定してもよい。
図4Bのように、PETテープ24を2枚目の耐火テープ20に一定の隙間を開けた状態で巻回し固定してもよい。
図4Cに示すとおり、耐火テープ20を2枚準備し、1枚目の耐火テープ20を金属バー10に縦添え巻きしかつ2枚目の耐火テープ20を1枚目の耐火テープ20に横巻きしてもよい。「横巻き」とは、長尺なテープを被巻き体の長さ方向に沿ってらせん状に巻き付ける意であって、テープの側縁部を先に巻き付けたテープに重ねながら巻き付ける、という意である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明は車載用バスバーおよびその製造方法にかかり、特に金属バーとその周辺の金属構造物との接触に伴う短絡を確実に防止しうるバスバーを提供するのに有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 車載用バスバー
10 金属バー
12 ホール
20 耐火テープ
22 ガラスヤーン
24 PETテープ
26a 粘着テープ
26b 粘着剤
28 ポリプロピレンヤーン
30 絶縁体層
図1
図2
図3
図4
図5