(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006268
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/813 20230101AFI20250109BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20250109BHJP
H10K 50/856 20230101ALI20250109BHJP
H10K 50/816 20230101ALI20250109BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20250109BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20250109BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20250109BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20250109BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250109BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H10K50/813
H10K59/80
H10K50/856
H10K50/816
H10K50/818
H10K59/122
H10K71/20
H10K71/60
G09F9/30 365
G09F9/30 349D
G09F9/00 342
G09F9/30 349Z
G09F9/30 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106953
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC35
3K107CC36
3K107CC45
3K107DD24
3K107DD44X
3K107DD45X
3K107DD46X
3K107DD89
3K107EE33
3K107FF15
3K107GG12
3K107GG13
3K107GG28
5C094AA05
5C094AA07
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
5C094EA05
5C094EA06
5C094ED11
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB04
5C094FB05
5C094FB12
5C094HA05
5C094HA08
5C094HA10
5C094JA08
5G435AA03
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435FF03
5G435HH02
5G435HH12
5G435HH14
5G435KK05
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】 改善された電極構造を有する表示装置および表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る表示装置は、第1反射層を含む下地電極と、第2反射層を含み、前記下地電極の上に配置された下電極と、前記下地電極の縁部を覆い、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、を備えている。さらに、前記下地電極の幅は、前記下電極の幅よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反射層を含む下地電極と、
第2反射層を含み、前記下地電極の上に配置された下電極と、
前記下地電極の縁部を覆い、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、
を備え、
前記下地電極の幅は、前記下電極の幅よりも大きい、
表示装置。
【請求項2】
前記第1反射層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記下地電極は、前記第1反射層の上面を覆う第1金属層、および、前記第1反射層の下面を覆う第2金属層の少なくとも一方をさらに含む、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1金属層は、窒化チタンにより形成され、
前記第2金属層は、チタンにより形成されている、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2反射層は、銀により形成されている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記下電極は、前記第2反射層の上面を覆う第1透明酸化物層、および、前記第2反射層の下面を覆う第2透明酸化物層の少なくとも一方をさらに含む、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1透明酸化物層および前記第2透明酸化物層は、ITOまたはIZOにより形成されている、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記画素開口を囲う隔壁をさらに備え、
前記隔壁は、
前記リブの上に配置された導電性の下部と、
前記下部の側面から突出する端部を有する上部と、
を含む、
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記下地電極の縁部は、平面視において前記下部と重なっている、
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記下電極の縁部は、平面視において前記下部と重なっていない、
請求項8に記載の表示装置。
【請求項11】
前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、
前記有機層を覆い、前記下部に接触した上電極と、
をさらに備える、
請求項8に記載の表示装置。
【請求項12】
第1反射層を含む第1層を形成し、
第2反射層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、
前記第2層に第1エッチングを施すことで下電極を形成し、
前記第1層に第2エッチングを施すことで前記下電極よりも幅が大きい下地電極を形成し、
前記下地電極の縁部を覆い、前記下電極と重なる画素開口を有するリブを形成する、
ことを含む表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2層の上に第1レジストを配置することをさらに含み、
前記第1エッチングにおいては、前記第2層のうち前記第1レジストから露出した部分を除去することにより、前記第1レジストの下方に前記下電極が形成される、
請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2エッチングにおいては、前記第1層のうち前記第1レジストから露出した部分を除去することにより、前記第1レジストの下方に前記下地電極が形成される、
請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1エッチングの後に前記第1レジストを除去し、
前記第1レジストを除去した後、前記下電極と、前記下電極の周囲の前記第1層とを覆う第2レジストを配置する、
ことをさらに含み、
前記第2エッチングにおいては、前記第1層のうち前記第2レジストから露出した部分を除去することにより、前記第2レジストの下方に前記下地電極が形成される、
請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1エッチングは、前記第2反射層に対するウェットエッチングを含み、
前記第2エッチングは、前記第1反射層に対するドライエッチングを含む、
請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1層は、前記第1反射層の上面を覆う第1金属層、および、前記第1反射層の下面を覆う第2金属層の少なくとも一方をさらに含む、
請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2層は、前記第2反射層の上面を覆う第1透明酸化物層、および、前記第2反射層の下面を覆う第2透明酸化物層の少なくとも一方をさらに含む、
請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記リブの上に配置された導電性の下部と、前記下部の側面から突出する端部を有する上部とを含み、前記画素開口を囲う隔壁を形成することをさらに含む、
請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層を形成し、
前記有機層を覆い、前記下部に接触した上電極を形成する、
ことをさらに含む、
請求項19に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)などの種々のタイプの表示素子を適用した表示装置が実用化されている。例えば、OLEDの表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。有機層は、下電極および上電極の間の電圧に応じて発光する。有機層が発した光は、上電極を透過して表示面から出射する。下電極には、有機層が発した光を反射する良好な反射率が求められる。
【0003】
表示素子の高開口率化、高精細化、反射率の向上、あるいは歩留まりの改善などの観点から、下電極の構造には検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された電極構造を有する表示装置および表示装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、第1反射層を含む下地電極と、第2反射層を含み、前記下地電極の上に配置された下電極と、前記下地電極の縁部を覆い、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、を備えている。さらに、前記下地電極の幅は、前記下電極の幅よりも大きい。
【0007】
また、一実施形態に係る表示装置の製造方法は、第1反射層を含む第1層を形成し、第2反射層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、前記第2層に第1エッチングを施すことで下電極を形成し、前記第1層に第2エッチングを施すことで前記下電極よりも幅が大きい下地電極を形成し、前記下地電極の縁部を覆い、前記下電極と重なる画素開口を有するリブを形成する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る下地電極、下電極および隔壁の軸層の概略的な平面図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるV-V線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る下地電極および下電極に適用し得る層構成の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、下地電極および下電極に適用し得る他の層構成の概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、下地電極および下電極に適用し得るさらに他の層構成の概略的な断面図である。
【
図9】
図9は、下地電極および下電極に適用し得るさらに他の層構成の概略的な断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、下地電極および下電極を形成する工程の一例を示す概略的な断面図である。
【
図12A】
図12Aは、表示素子を形成する工程の一例を示す概略的な断面図である。
【
図13】
図13は、アノードの反射率と波長の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、アルミニウム層の上に銀層を配置した積層体において、銀層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、アルミニウム層、ITO層および銀層を順に配置した積層体において、ITO層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、アルミニウム層、窒化チタン層、ITO層および銀層を順に配置した積層体において、窒化チタン層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、アルミニウム層、窒化チタン層、ITO層および銀層を順に配置した積層体において、銀層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図18A】
図18Aは、第2実施形態に係る第2エッチングの工程を示す概略的な断面図である。
【
図19】
図19は、変形例に係る表示装置の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向と称する。Z方向は、X方向とY方向を含む平面の法線方向である。また、Z方向と平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10を備えている。基板10は、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形状である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形状に限られず、正方形状、円形状あるいは楕円形状などの他の形状であってもよい。
【0014】
表示領域DAは、X方向およびY方向にマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、異なる色を表示する複数の副画素SPを含む。本実施形態においては、画素PXが青色の副画素SP1と、緑色の副画素SP2と、赤色の副画素SP3とを含む場合を想定する。ただし、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0015】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0016】
表示領域DAには、各副画素SPの画素回路1に走査信号を供給する複数の走査線Gと、各副画素SPの画素回路1に映像信号を供給する複数の信号線Sと、複数の電源線PLとが配置されている。
図1の例においては、走査線Gおよび電源線PLがX方向に延び、信号線SがY方向に延びている。
【0017】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線Gに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線Sに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0018】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限られない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0019】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1とX方向に並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3がY方向に並んでいる。
【0020】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3がY方向に交互に配置された列と、複数の副画素SP1がY方向に繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、X方向に交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られず、その他にも種々のレイアウトを適用できる。
【0021】
表示領域DAには、リブ5が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。
図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。すなわち、副画素SP1,SP2,SP3のうちで副画素SP1の開口率が最も高く、副画素SP3の開口率が最も低い。
【0022】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3を備えている。
【0023】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層や下地電極をさらに含んでもよい。リブ5は、表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0024】
リブ5の上には、導電性の隔壁6が配置されている。隔壁6は、全体的にリブ5と重なっており、リブ5と同様の平面形状を有している。すなわち、隔壁6は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口を有している。他の観点からいうと、リブ5および隔壁6は、平面視において格子状であり、画素開口AP1,AP2,AP3のそれぞれを囲っている。隔壁6は、上電極UE1,UE2,UE3に共通電圧を供給する配線としての役割を有している。
【0025】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線G、信号線Sおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0026】
本実施形態においては、有機絶縁層12の上に下地電極BE1,BE2,BE3が配置されている。下電極LE1は下地電極BE1の上に配置され、下電極LE2は下地電極BE2の上に配置され、下電極LE3は下地電極BE3の上に配置されている。
図3の例においては、下地電極BE1,BE2,BE3の縁部がそれぞれ下電極LE1,LE2,LE3からはみ出している。
【0027】
リブ5は、下電極LE1,LE2,LE3の縁部を覆っている。リブ5は、下電極LE1,LE2,LE3からはみ出した下地電極BE1,BE2,BE3の縁部も覆っている。さらに、リブ5は、下地電極BE1,BE2,BE3の間において有機絶縁層12を覆っている。
図3の断面には表れていないが、下電極LE1,LE2,LE3および下地電極BE1,BE2,BE3は、それぞれ有機絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて回路層11の画素回路1に接続されている。
【0028】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0029】
図3の例において、下部61は、リブ5の上に配置されたボトム層63と、ボトム層63の上に配置された軸層64とを有している。例えば、ボトム層63は、軸層64よりも薄く形成されている。また、
図3の例においては、ボトム層63の両端部が軸層64の側面から突出している。ただし、ボトム層63の両端部が軸層64の側面と揃っていてもよい。なお、下部61は、ボトム層63を有していなくてもよい。また、下部61は、3層以上の多層構造を有してもよい。
【0030】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。上電極UE1,UE2,UE3は、隔壁6の下部61に接触している。
【0031】
表示素子DE1は、上電極UE1の上に配置されたキャップ層CP1を含む。表示素子DE2は、上電極UE2の上に配置されたキャップ層CP2を含む。表示素子DE3は、上電極UE3の上に配置されたキャップ層CP3を含む。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0032】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む多層体を積層膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む多層体を積層膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む多層体を積層膜FL3と呼ぶ。
【0033】
積層膜FL1の一部は、上部62の上に位置している。当該一部は、積層膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、積層膜FL2の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、積層膜FL3の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0034】
副画素SP1,SP2,SP3には、それぞれ封止層SE1,SE2,SE3が配置されている。封止層SE1は、キャップ層CP1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、キャップ層CP2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、キャップ層CP3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0035】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0036】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0037】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0038】
有機絶縁層12は、ポリイミドなどの有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。一例では、リブ5がシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。
【0039】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3の積層体はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0040】
有機層OR1,OR2,OR3は、発光層を含む複数の薄膜によって構成されている。一例では、有機層OR1,OR2,OR3は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層をZ方向に順に積層した構造を有している。ただし、有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造などの他の構造を有してもよい。
【0041】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば複数の透明層が重ねられた積層構造を有している。これら透明層は、無機材料によって形成された層および有機材料によって形成された層を含み得る。また、これら透明層は、互いに異なる屈折率を有している。例えば、これら透明層の屈折率は、上電極UE1,UE2,UE3の屈折率および封止層SE1,SE2,SE3の屈折率と異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0042】
隔壁6のボトム層63および軸層64は、金属材料によって形成されている。ボトム層63の金属材料としては、例えば、モリブデン、チタン、窒化チタン(TiN)、モリブデン-タングステン合金(MoW)またはモリブデン-ニオブ合金(MoNb)を用いることができる。軸層64の金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)またはアルミニウム-シリコン合金(AlSi)を用いることができる。なお、軸層64が絶縁性の材料で形成されてもよい。
【0043】
例えば、隔壁6の上部62は、金属材料で形成された下層と、透明酸化物で形成された上層との積層構造を有している。下層を形成する金属材料としては、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金またはモリブデン-ニオブ合金を用いることができる。上層を形成する透明酸化物としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)を用いることができる。なお、上部62は、金属材料の単層構造を有してもよい。さらに、上部62は、絶縁材料で形成された層を含んでもよい。
【0044】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3および下地電極BE1,BE2,BE3には、それぞれ副画素SP1,SP2,SP3の画素回路1を通じて信号線Sの映像信号に応じた画素電圧が供給される。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0046】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0047】
図4は、下地電極BE1、下電極LE1および隔壁6の軸層64の概略的な平面図である。この図においては、軸層64に斜線模様を付すとともに、下地電極BE1の外形を破線で示している。
【0048】
図4の例においては、下地電極BE1が平面視において矩形状の縁部E1を有し、下電極LE1が平面視において矩形状の縁部E2を有している。ただし、縁部E1,E2の形状は矩形状に限られない。
【0049】
下地電極BE1は、X方向において幅Wx1を有し、Y方向において幅Wy1を有している。下電極LE1は、X方向において幅Wx2を有し、Y方向において幅Wy2を有している。本実施形態においては、幅Wx1が幅Wx2よりも大きい(Wx1>Wx2)。また、幅Wy1が幅Wy2よりも大きい(Wy1>Wy2)。これにより、下地電極BE1の縁部E1付近が下電極LE1からはみ出している。
【0050】
図4の例においては、下地電極BE1の縁部E1が全体的に軸層64と重なっている。一方で、下電極LE1の縁部E2は軸層64と重なっていない。他の例として、縁部E1の少なくとも一部が軸層64と重なっていなくてもよい。また、縁部E2の少なくとも一部が軸層64と重なっていてもよい。
【0051】
図5は、
図4におけるV-V線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。この図においては、基板10、回路層11、樹脂層13、封止層14および樹脂層15を省略している。
【0052】
図中の2つの隔壁6は、いずれもY方向に隣り合う副画素SP1の間に位置している。
図5の例においては、これら隔壁6の上部62が全体的に積層膜FL1および封止層SE1によって覆われている。他の例として、これら隔壁6の上部62の上で積層膜FL1および封止層SE1が分断されていてもよい。
【0053】
下地電極BE1の縁部E1および下電極LE1の縁部E2は、リブ5により覆われている。無機材料からなるリブ5は、有機絶縁層12などに比べて薄く形成されている。そのため、リブ5の表面には、縁部E1,E2に応じた段差が形成される。
図5の例においては、縁部E1が軸層64の下方に位置している。そのため、縁部E1に起因した段差は、ボトム層63および軸層64によって覆われる。
【0054】
隣り合う下地電極BE1は、距離D1を空けて離れている。隣り合う下電極LE1は、距離D2を空けて離れている。距離D1は、距離D2よりも小さい(D1<D2)。一例として、距離D2は5μm以上であり、距離D1は3μm以下である。
【0055】
なお、下地電極BE2および下電極LE2の構成や、下地電極BE3および下電極LE3の構成には、
図4および
図5に示した下地電極BE1および下電極LE1と同様の構成を適用することができる。例えば、下地電極BE1,BE2,BE3のうち隣り合う2つは、上記の距離D1を空けて離れている。また、下電極LE1,LE2,LE3のうち隣り合う2つは、上記の距離D2を空けて離れている。ただし、下地電極BE1,BE2,BE3のうち隣り合う2つの間の距離は、必ずしも全ての箇所で同一でなくてもよい。また、下電極LE1,LE2,LE3のうち隣り合う2つの間の距離は、必ずしも全ての箇所で同一でなくてもよい。
【0056】
図6乃至
図9は、下地電極BE1および下電極LE1に適用し得る層構成の概略的な断面図である。これらの図に示す層構成は、下地電極BE2,BE3および下電極LE2,LE3にも適用できる。
【0057】
図6乃至
図9のいずれにおいても、下地電極BE1は第1反射層RF1を含み、下電極LE1は第2反射層RF2を含む。これら反射層RF1,RF2は、可視光の反射率に優れた金属材料によって形成されている。有機層OR1が発する光の一部は、第2反射層RF2で反射される。さらに、第2反射層RF2を透過した光の少なくとも一部は、第1反射層RF1で反射される。
【0058】
本実施形態においては、第1反射層RF1がアルミニウム(Al)またはアルミニウム合金によって形成され、第2反射層RF2が銀(Ag)によって形成されている場合を想定する。ただし、反射層RF1,RF2に他の金属または金属合金が用いられてもよい。
【0059】
図6の例においては、下地電極BE1が第1反射層RF1の単層構造である。一方で、下電極LE1は、第2反射層RF2と、第2反射層RF2の上面を覆う第1透明酸化物層CL1とを含む。第2反射層RF2の下面は、第1反射層RF1の上面に接触している。
【0060】
第1透明酸化物層CL1は、例えばITOまたはIZOによって形成され、有機層OR1の正孔注入層への正孔注入電極として機能する。第1透明酸化物層CL1は、例えば第2反射層RF2よりも薄い。
【0061】
図7の例において、下電極LE1は、第2反射層RF2の下面を覆う第2透明酸化物層CL2をさらに含む。第2透明酸化物層CL2は、第1反射層RF1の上面に接触している。第2透明酸化物層CL2は、例えばITOまたはIZOによって形成されている。
【0062】
銀である第2反射層RF2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である第1反射層RF1に対して十分な密着性を発揮しない可能性がある。これに対し、反射層RF1,RF2の間に第2透明酸化物層CL2を配置することで、反射層RF1,RF2の密着性が改善する。
【0063】
詳しくは
図15の説明にて後述するが、第2透明酸化物層CL2が薄いほど、下地電極BE1と下電極LE1を積層したアノードの反射率が向上する。そこで、第2透明酸化物層CL2は、反射層RF1,RF2のそれぞれよりも薄く形成されることが好ましい。一例として、第2透明酸化物層CL2の厚さは5~10nmである。
【0064】
なお、例えば第1反射層RF1がアルミニウム(純アルミニウム)で形成され、第2透明酸化物層CL2がITOで形成されている場合、第1反射層RF1と第2透明酸化物層CL2の間に高い接続抵抗が生じ得る。この接続抵抗を低減する観点からは、第1反射層RF1がアルミニウム-ニッケル合金(AlNi)などのアルミニウム合金で形成されていることが好ましい。
【0065】
図8の例において、下地電極BE1は、第1反射層RF1の上面を覆う第1金属層ML1をさらに含む。第1金属層ML1は、第2透明酸化物層CL2に接触している。第1金属層ML1は、例えば窒化チタン(TiN)によって形成されている。このような第1金属層ML1を配置することで、第1反射層RF1がアルミニウムで形成されている場合でも、上述の接続抵抗が改善される。
【0066】
詳しくは
図16の説明にて後述するが、第1金属層ML1が薄いほど、下地電極BE1と下電極LE1を積層したアノードの反射率が向上する。そこで、第1金属層ML1は、反射層RF1,RF2のそれぞれよりも薄く形成されることが好ましい。一例として、第1金属層ML1の厚さは5~10nmである。
【0067】
図9の例において、下地電極BE1は、第1反射層RF1の下面を覆う第2金属層ML2をさらに含む。第2金属層ML2は、例えばチタン(Ti)によって形成され、
図5に示した有機絶縁層12と接触する。このような第2金属層ML2を設けることで、第1反射層RF1と有機絶縁層12の密着性が改善される。
【0068】
なお、第2金属層ML2は、下地電極BE1と下電極LE1を積層したアノードの光学特性や電気特性にはあまり影響を与えない。そのため、第2金属層ML2は、第1金属層ML1より厚く形成されてもよい。一例として、第2金属層ML2の厚さは10~100nmである。
【0069】
反射層RF1,RF2、金属層ML1,ML2および透明酸化物層CL1,CL2の厚さは、反射率や各層の総厚などを考慮して適宜に定め得る。一例を挙げると、反射層RF1,RF2はいずれも30nmであり、第1金属層ML1は5nmであり、第2金属層ML2は10nmであり、第1透明酸化物層CL1は25nmであり、第2透明酸化物層CL2は7nmである。
【0070】
図10は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。表示装置DSPの製造にあたっては、先ず基板10の上に回路層11および有機絶縁層12が形成される(工程PR1)。続いて、有機絶縁層12の上に下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR2)。
【0071】
図11A乃至
図11Gは、下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3を形成する工程の一例を示す概略的な断面図である。ここでは、下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3が
図9に示す構造を有する場合を想定する。
図11A乃至
図11Gにおいては、基板10および回路層11を省略している。
【0072】
工程PR2においては、先ず
図11Aに示すように、下地電極BE1,BE2,BE3に加工するための第1層L1と、下電極LE1,LE2,LE3に加工するための第2層L2とが有機絶縁層12の上に形成される。
【0073】
第1層L1は、第1反射層L10と、第1反射層L10の上面を覆う第1金属層L11と、第1反射層L10の下面を覆う第2金属層L12とを含む。これら第1反射層L10、第1金属層L11および第2金属層L12の材料は、第1反射層RF1、第1金属層ML1および第2金属層ML2の材料として上述したものと同様である。第1反射層L10、第1金属層L11および第2金属層L12の形成には、例えばスパッタリングが用いられる。
【0074】
第2層L2は、第2反射層L20と、第2反射層L20の上面を覆う第1透明酸化物層L21と、第2反射層L20の下面を覆う第2透明酸化物層L22とを含む。これら第2反射層L20、第1透明酸化物層L21および第2透明酸化物層L22の材料は、第2反射層RF2、第1透明酸化物層CL1および第2透明酸化物層CL2の材料として上述したものと同様である。第2反射層L20、第1透明酸化物層L21および第2透明酸化物層L22の形成には、例えばスパッタリングが用いられる。
【0075】
第1層L1および第2層L2の形成後、
図11Bに示すように、レジストR1が第2層L2の上に配置される。レジストR1は、例えば下地電極BE1,BE2,BE3の形状にパターニングされている。
【0076】
レジストR1の形成後、第2層L2のうちレジストR1から露出した部分を除去するための第1エッチングが実施される。第1エッチングは、第1透明酸化物層L21に対するウェットエッチング(
図11C)と、第2反射層L20に対するウェットエッチング(
図11D)と、第2透明酸化物層L22に対するウェットエッチング(
図11E)とを含む。
【0077】
第1透明酸化物層L21に対するウェットエッチングにおいては、
図11Cに示すように、第1透明酸化物層L21のうちレジストR1から露出した部分が除去される。これにより、下電極LE1,LE2,LE3の第1透明酸化物層CL1が形成される。
図11Cの例においては、第1透明酸化物層CL1の幅がレジストR1の幅よりも僅かに低減されている。
【0078】
第2反射層L20に対するウェットエッチングにおいては、
図11Dに示すように、第2反射層L20のうちレジストR1から露出した部分が除去される。これにより、下電極LE1,LE2,LE3の第2反射層RF2が形成される。
図11Dの例においては、第2反射層RF2の幅が第1透明酸化物層CL1の幅よりも僅かに低減されている。
【0079】
なお、第2反射層L20に対するウェットエッチングにおいては、下方の第1反射層L10の損傷を抑制するために、第1反射層L10が溶解しにくいエッチング液を用いることが好ましい。例えば、第1反射層L10がアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている場合、このエッチング液としては、硝酸濃度が20%以上の溶液を用い得る。これにより、仮に第2透明酸化物層L22および第1金属層L11がこれまでのウェットエッチングで損傷していたり、2透明酸化物層L22および第1金属層L11にピンホールが形成されていたりした場合でも、第1反射層L10の溶解を抑制することが可能である。
【0080】
第2透明酸化物層L22に対するウェットエッチングにおいては、
図11Eに示すように、第2透明酸化物層L22のうちレジストR1から露出した部分が除去される。これにより、下電極LE1,LE2,LE3の第2透明酸化物層CL2が形成される。
【0081】
図11Eの例においては、第2透明酸化物層CL2の幅が第2反射層RF2の幅よりも僅かに低減されている。また、当該ウェットエッチングにおいては、第1透明酸化物層CL1の端部も侵食され得る。これにより、
図11Eの例においては、第1透明酸化物層CL1の幅が第2反射層RF2の幅よりも僅かに低減されている。
【0082】
このように、
図11C乃至
図11Eに示した第1エッチングにより、第2層L2が下電極LE1,LE2,LE3の形状にパターニングされる。第1エッチングの後、第1層L1に対する第2エッチングが実施される。
【0083】
例えば、第2エッチングは、第1反射層L10、第1金属層L11および第2金属層L12を一括して加工するドライエッチングである。他の例として、第2エッチングは、第1反射層L10、第1金属層L11および第2金属層L12を個別に加工する複数回のドライエッチングを含んでもよい。
【0084】
第2エッチングにおいては、
図11Fに示すように、第1層L1のうちレジストR1から露出した部分が除去される。これにより、第1層L1が下地電極BE1,BE2,BE3の形状にパターニングされる。第2エッチングの後、
図11Gに示すようにレジストR1が除去される。
【0085】
なお、第2エッチングは、異方性の高いドライエッチングであることが好ましい。これにより、第1層L1のうちレジストR1の下方に位置する部分が侵食されにくい。したがって、下地電極BE1,BE2,BE3を精度良く形成することが可能となる。
【0086】
以上のように下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3が形成された後、リブ5および隔壁6が形成される(
図10の工程PR3)。この工程においては、先ずリブ5に加工するための無機絶縁層が形成され、その上に隔壁6が形成される。その後、無機絶縁層に画素開口AP1,AP2,AP3を設けることで、リブ5が形成される。他の例として、無機絶縁層に画素開口AP1,AP2,AP3を設けた後に隔壁6が形成されてもよい。
【0087】
リブ5および隔壁6の形成後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が実施される(
図10の工程PR4~PR9)。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0088】
図12A乃至
図12Eは、表示素子DE1,DE2,DE3を形成する工程の一例を示す概略的な断面図である。これらの図においては、基板10および回路層11を省略している。
【0089】
表示素子DE1の形成にあたっては、先ず
図12Aに示すように、積層膜FL1および封止層SE1が形成される(工程PR4)。積層膜FL1は、
図3に示したように、画素開口AP1を通じて下電極LE1に接触する有機層OR1、有機層OR1を覆う上電極UE1、および、上電極UE1を覆うキャップ層CP1を含む。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1は、蒸着によって形成される。また、封止層SE1は、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。積層膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE1は、積層膜FL1の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0090】
工程PR4の後、積層膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR5)。このパターニングにおいては、
図12Bに示すように、封止層SE1の上にレジストRsが配置される。レジストRsは、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0091】
その後、レジストRsをマスクとしたエッチングにより、
図12Cに示すように積層膜FL1および封止層SE1のうちレジストRsから露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL1および封止層SE1のうち、下電極LE1と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP1に表示素子DE1が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。これらのエッチングの後、レジストRsが除去される。
【0092】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE2の形成にあたっては、積層膜FL2および封止層SE2が表示領域DAの全体に形成される(工程PR6)。積層膜FL2は、
図3に示したように、画素開口AP2を通じて下電極LE2に接触する有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、および、上電極UE2を覆うキャップ層CP2を含む。
【0093】
有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2は、蒸着によって形成される。また、封止層SE2は、CVDによって形成される。積層膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE2は、積層膜FL2の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0094】
工程PR6の後、積層膜FL2および封止層SE2がパターニングされる(工程PR7)。これにより、
図12Dに示すように、副画素SP2に表示素子DE2が形成される。
【0095】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE3の形成にあたっては、積層膜FL3および封止層SE3が表示領域DAの全体に形成される(工程PR8)。積層膜FL3は、
図3に示したように、画素開口AP3を通じて下電極LE3に接触する有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、および、上電極UE3を覆うキャップ層CP3を含む。
【0096】
有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3は、蒸着によって形成される。また、封止層SE3は、CVDによって形成される。積層膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE3は、積層膜FL3の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0097】
工程PR8の後、積層膜FL3および封止層SE3がパターニングされる(工程PR9)。これにより、
図12Eに示すように、副画素SP3に表示素子DE3が形成される。
【0098】
表示素子DE1,DE2,DE3が形成された後、
図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR10)。このような工程を経て表示装置DSPが完成する。
【0099】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPおよびその製造方法が奏する効果について説明する。なお、ここで例示する効果は一例にすぎず、その他にも本実施形態に係る表示装置DSPおよびその製造方法は種々の効果を奏し得る。
【0100】
本実施形態においては、下電極LE1,LE2,LE3の下方に下地電極BE1,BE2,BE3が配置されている。仮に下地電極BE1,BE2,BE3が無い場合、有機層OR1,OR2,OR3が発する光を主に下電極LE1,LE2,LE3の第2反射層RF2によって反射しなければならない。この場合、十分な反射率を得るためには、例えば第2反射層RF2を100nm程度に厚くする必要がある。第2反射層RF2が例えば50nm程度であると、光の一部が第2反射層RF2を透過し、表示素子DE1,DE2,DE3の発光効率が低下し得る。
【0101】
一方で、第2反射層RF2を厚くすると、その端部を覆うリブ5の上面に大きな段差が生じる。この段差により上電極UE1,UE2,UE3が途切れ、隔壁6との導通不良を生じる可能性がある。また、厚い下電極LE1,LE2,LE3の縁部の近傍でリブ5にクラックが生じる可能性もある。
【0102】
これに対し、本実施形態においては、下電極LE1,LE2,LE3の下にそれぞれ第1反射層RF1を含む下地電極BE1,BE2,BE3が配置されている。このような構成であれば、下電極LE1,LE2,LE3と下地電極BE1,BE2,BE3で有機層OR1,OR2,OR3の光を反射することになる。したがって、下電極LE1,LE2,LE3と下地電極BE1,BE2,BE3を薄く形成した場合であっても十分な反射率を得ることができる。
【0103】
さらに、
図4および
図5に示したように、下地電極BE1の幅が下電極LE1の幅よりも大きい。これにより、下地電極BE1の縁部E1と下電極LE1の縁部E2とがずれている。このような構成であれば、リブ5の上面に生じる段差も縁部E1の上方と縁部E2の上方に分散されるため、大きな段差が生じにくい。しかも、本実施形態においては、縁部E1が隔壁6の軸層64の下方に位置している。これにより、縁部E1に起因したリブ5の段差は軸層64により覆われる。以上のことから、本実施形態においては上電極UE1の途切れやリブ5のクラックの発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。なお、下電極LE2,LE3および下地電極BE2,BE3についても同様の効果を生じる。
【0104】
また、例えば第2反射層RF2が銀で形成されている場合、下電極LE1,LE2,LE3をドライエッチングで加工することが困難である。一方で、ウェットエッチングにて下電極LE1,LE2,LE3を加工すると、マスクとして使用するレジストよりも幅が小さくなるように下電極LE1,LE2,LE3の端面が侵食され得る。そのため、隣接する下電極LE1,LE2,LE3の間隔を十分に小さくすることが困難であり、5μm程度が現実的な最小間隔となる。これにより、表示装置DSPの高精細化が制約され得る。
【0105】
一方、本実施形態においては、下地電極BE1,BE2,BE3がドライエッチングにより加工される。この場合には、下地電極BE1,BE2,BE3の外形を精度良く形成することができる。一例では、下地電極BE1,BE2,BE3の間隔を3μm以下にすることが可能である。これにより、表示素子DE1,DE2,DE3のアノード(下地電極および下電極)を狭ピッチで配列し、高精細な表示装置DSPを実現することができる。
【0106】
リブ5の画素開口AP1,AP2,AP3において有機絶縁層12が下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3から露出していると、表示素子DE1,DE2,DE3の形成時のエッチング等で有機絶縁層12が侵食され得る。そのため、画素開口AP1,AP2,AP3は全体的に下地電極BE1,BE2,BE3または下電極LE1,LE2,LE3と重なることが好ましい。
【0107】
仮に下地電極BE1,BE2,BE3が無い場合、下電極LE1,LE2,LE3が画素開口AP1,AP2,AP3と確実に重なる必要がある。このとき、画素開口AP1,AP2,AP3と下電極LE1,LE2,LE3の位置ずれを考慮して、下電極LE1,LE2,LE3の縁部E2と画素開口AP1,AP2,AP3との間に十分なマージンを確保しなければならない。これにより、画素開口AP1,AP2,AP3の大きさが制約され、結果として開口率の向上が困難となる。
【0108】
これに対し、本実施形態においては、上述のとおり下地電極BE1,BE2,BE3を狭ピッチで配列することができる。また、上記マージンは、下地電極BE1,BE2,BE3の縁部E1を基準に定めればよい。そのため、下地電極BE1,BE2,BE3が無い場合に比べ、画素開口AP1,AP2,AP3を大きくし、開口率を高めることが可能である。
【0109】
なお、下電極LE1,LE2,LE3の縁部E2は、必ずしも
図5に示したようにリブ5で覆われている必要はない。他の例として、下電極LE1,LE2,LE3の縁部E2の少なくとも一部がリブ5で覆われていなくてもよい。
【0110】
ここで、下地電極および下電極を積層したアノードの反射率について検証した結果について説明する。
図13は、アノードの反射率と波長の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションにおいては、シリコン酸化物で形成されたリブ5の上に、サンプルA1~A5の5種類の積層体を配置した場合のそれぞれについて反射率を求めた。
【0111】
サンプルA1は、100nmの銀層(Ag)によって構成されている。サンプルA2は、50nmの銀層によって構成されている。サンプルA3は、30nmのアルミニウム層(Al)の上に50nmの銀層を配置した積層体である。サンプルA4は、30nmのアルミニウム層の上に7nmのITO層と50nmの銀層を順に配置した積層体である。サンプルA5は、30nmのアルミニウム層の上に5nmの窒化チタン層(TiN)、7nmのITO層および30nmの銀層を順に配置した積層体である。図中のR、G、Bは、それぞれ赤色、緑色および青色の波長域を示す。
【0112】
サンプルA1,A2を比較すると、銀層が厚いほど赤色、緑色および青色のいずれの波長域においても反射率が高いことが分かる。アルミニウム層を含むサンプルA3,A4,A5においては、銀層がサンプルA2と同等かそれ以下である。しかしながら、サンプルA3,A4,A5の反射率は、赤色、緑色および青色のいずれの波長域においてもサンプルA1と遜色ないレベルに向上している。すなわち、下地電極BE1,BE2,BE3がアルミニウムの第1反射層RF1を含み、下電極LE1,LE2,LE3が銀の第2反射層RF2を含む場合には、第2反射層RF2が薄くても良好な反射率を得ることができる。
【0113】
図14は、30nmのアルミニウム層の上に銀層を配置した積層体において、銀層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションは、赤色の波長(R:620nm)、緑色の波長(G:530nm)および青色の波長(B:460nm)のそれぞれについて行った。グラフ中には、50nmのアルミニウム層のみの場合の反射率、および、100nmの銀層のみの場合の反射率もプロットしている。
【0114】
赤色の波長の反射率は、銀層の厚さが50nm程度に達するまでは徐々に増加するが、この厚さをさらに増しても殆ど変化していない。また、緑色の波長の反射率は、銀層の厚さが40nm程度に達するまでは徐々に増加するが、この厚さをさらに増しても殆ど変化していない。青色の波長の反射率は、銀層の厚さが20nm程度に達するまでは徐々に増加し、この厚さをさらに増すと徐々に低下している。
【0115】
このシミュレーション結果に基づけば、銀で形成される第2反射層RF2の厚さは、例えば20~50nmの範囲であることが好ましい。このような範囲であれば、各色の波長において良好な反射率を実現することができる。
【0116】
図15は、30nmのアルミニウム層、ITO層および30nmの銀層を下から順に配置した積層体において、ITO層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションは、赤色の波長(R:620nm)、緑色の波長(G:530nm)および青色の波長(B:460nm)のそれぞれについて行った。
【0117】
赤色、緑色および青色のいずれの波長においても、ITO層の厚さを増すほど反射率が低下している。このことから、ITOで形成される第2透明酸化物層CL2は、できるだけ薄いことが好ましい。
【0118】
図16は、30nmのアルミニウム層、窒化チタン層、7nmのITO層および30nmの銀層を下から順に配置した積層体において、窒化チタン層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションは、赤色の波長(R:620nm)、緑色の波長(G:530nm)および青色の波長(B:460nm)のそれぞれについて行った。
【0119】
赤色、緑色および青色のいずれの波長においても、窒化チタン層の厚さを増すほど反射率が低下している。このことから、窒化チタンで形成される第1金属層ML1は、できるだけ薄いことが好ましい。
【0120】
図17は、30nmのアルミニウム層、5nmの窒化チタン層、7nmのITO層および銀層を下から順に配置した積層体において、銀層の厚さと反射率の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションは、赤色の波長(R:620nm)、緑色の波長(G:530nm)および青色の波長(B:460nm)のそれぞれについて行った。グラフ中には、50nmのアルミニウム層のみの場合の反射率、および、100nmの銀層のみの場合の反射率もプロットしている。
【0121】
赤色、緑色および青色のいずれの波長においても、銀層の厚さがを増すほど反射率が向上している。ただし、銀層の厚さが50nmを超えると反射率の変化は小さくなる。例えば、
図14を参照して上述した20~50nmの銀層の厚さであれば、各波長の反射率は100nmの銀層の単層に比べても同等とみなせる範囲である。
【0122】
以上の
図13乃至
図17に示したシミュレーションの結果に基づけば、
図6の例のようにアルミニウムの第1反射層RF1と銀の第2反射層RF2を重ねた構成、
図7のように反射層RF1,RF2の間にITOの第2透明酸化物層CL2を配置した構成、
図8および
図9のように反射層RF1,RF2の間にITOの第2透明酸化物層CL2と窒化チタンの第1金属層ML1を配置した構成のそれぞれにおいて、良好な反射率を実現し得ることが分かる。
【0123】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態においては、下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3を形成する工程(
図10の工程PR2)の他の例を開示する。表示装置DSPの構成や、工程PR2以外の製造工程は第1実施形態と同様である。
【0124】
図11A乃至
図11Gの例と同じく、本実施形態においても下地電極BE1,BE2,BE3および下電極LE1,LE2,LE3が
図9に示す構造を有する場合を想定する。本実施形態における工程PR2においては、先ず
図11Aと同様に第1層L1および第2層L2が有機絶縁層12の上に形成される。さらに、
図11Bと同様にレジストR1が第2層L2の上に配置される。その後、
図11C乃至
図11Eと同様の第1エッチングにより、第2層L2が下電極LE1,LE2,LE3の形状にパターニングされる。本実施形態においては、第1エッチングの後、第2エッチングの実施前にレジストR1が除去される。
【0125】
図18Aおよび
図18Bは、本実施形態に係る第2エッチングの工程を示す概略的な断面図である。レジストR1(第1レジスト)の除去後、
図18Aに示すように、レジストR2(第2レジスト)が配置される。レジストR2は、下地電極BE1,BE2,BE3の形状にパターニングされている。
【0126】
レジストR2は、第1エッチングにより形成された下電極LE1,LE2,LE3を全体的に覆っている。さらに、レジストR2は、下電極LE1,LE2,LE3の周囲の第1層L1も覆っている。
【0127】
第2エッチングは、このようなレジストR2をマスクとして実施される。すなわち、
図18Bに示すように、第1層L1のうちレジストR2から露出した部分が除去される。これにより、第1層L1が下地電極BE1,BE2,BE3の形状にパターニングされる。第2エッチングの後、レジストR2が除去される。
【0128】
第1実施形態のように、レジストR1を用いて第1層L1および第2層L2の双方を加工する場合、第1エッチングにおいてレジストR1が侵食され、第2エッチングにおいて下地電極BE1,BE2,BE3を設計通りの外形に形成できないことがあり得る。これに対し、本実施形態のように第1エッチングの後にレジストR1を除去し、別のレジストR2を形成すれば、下地電極BE1,BE2,BE3を精度よく形成することが可能となる。
【0129】
なお、本実施形態においては、第1エッチングと第2エッチングで異なるレジストを用いるために、下電極LE1,LE2,LE3と下地電極BE1,BE2,BE3の相対的な位置関係にずれが生じる可能性がある。また、第1実施形態に比べ、レジストR2を形成および除去するための工程が増える。これらを抑制する観点からは、第1実施形態の製造工程が有利である。
【0130】
なお、本実施形態に係る製造工程を用いれば、下地電極BE1,BE2,BE3と下電極LE1,LE2,LE3を意図的にずらすこともできる。この変形例につき、以下に説明する。
【0131】
図19は、当該変形例を説明するための図であり、
図5と同じくY方向に並ぶ複数の副画素SP1の概略的な断面を示している。ここで、下地電極BE1の図中右方の縁部を第1縁部E1aと呼び、図中左方の縁部を第2縁部E1bと呼ぶ。また、下電極LE1の図中右方の縁部を第1縁部E2aと呼び、図中左方の縁部を第2縁部E2bと呼ぶ。さらに、図中右方の隔壁6を第1隔壁6aと呼び、図中左方の隔壁6を第2隔壁6bと呼ぶ。
【0132】
図19の例においては、上電極UE1が第1隔壁6aのボトム層63に接触しているが、第2隔壁6bのボトム層63には接触していない。このような上電極UE1は、上電極UE1の材料を放出する蒸着源をZ方向に対して傾けることで形成可能である。このような構成であれば、上電極UE1を少なくとも第1隔壁6aと良好に導通させることができる。
【0133】
なお、上電極UE1は、第2隔壁6bの下部61と僅かに接触していてもよい。この場合において、上電極UE1と第1隔壁6aとの接触面積が、上電極UE1と第2隔壁6bの下部61との接触面積より大きくてもよい。
【0134】
図19の例においては、第1縁部E1a,E2aが揃っている。これら第1縁部E1a,E2aは、第1隔壁6aの下方に位置している。これにより、第1隔壁6aの近傍において、リブ5の上面に第1縁部E1a,E2aに起因した段差が生じにくい。すなわち、第1隔壁6aの近傍においてはリブ5の上面が平坦であり、上電極UE1が上記段差により途切れることを抑制できる。したがって、上電極UE1と第1隔壁6aの一層良好な導通を確保できる。
【0135】
一方、
図19の例においては、第2縁部E1b,E2bが
図5の例と同様にずれている。第2隔壁6bと上電極UE1は、必ずしも導通する必要はない。したがって、第2縁部E2bに起因した段差がリブ5の上面に生じても、上電極UE1への給電の観点からは特段の問題が生じない。
【0136】
図19に示した構成は、副画素SP2,SP3にも適用できる。また、
図19においてはY方向に下地電極BE1と下電極LE1がずれた構成を示したが、下地電極BE1と下電極LE1がX方向にずれてもよい。
【0137】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置およびその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置およびその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0138】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0139】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0140】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、BE1,BE2,BE3…下地電極、SE1,SE2,SE3…封止層、5…リブ、6…隔壁、61…下部、62…上部、63…ボトム層、64…軸層。