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特開2025-6271不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料、および、成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006271
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20250109BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08F283/01
C08J5/24 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106961
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 卓爾
(72)【発明者】
【氏名】三浦 彬
(72)【発明者】
【氏名】箱谷 昌宏
【テーマコード(参考)】
4F072
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AD02
4F072AD04
4F072AD05
4F072AD08
4F072AD38
4F072AD52
4F072AE02
4F072AE07
4F072AE11
4F072AE12
4F072AF01
4F072AF03
4F072AF04
4F072AF19
4F072AF24
4F072AF27
4F072AG03
4F072AH02
4F072AH13
4F072AH24
4F072AJ22
4F072AL01
4J127AA03
4J127AA07
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB251
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD131
4J127BE391
4J127BE39Y
4J127BF151
4J127BF15Y
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127CB061
4J127DA02
4J127DA06
4J127DA25
4J127DA27
4J127DA42
4J127DA43
4J127DA45
4J127DA49
4J127DA62
4J127DA65
4J127FA02
(57)【要約】
【課題】難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる不飽和ポリエステル樹脂組成物、その不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、および、その成形材料の硬化物を含む成形品を提供すること
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂原料は、不飽和ポリエステル、重合性単量体および低収縮化剤を含む樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを含む。低収縮化剤は、スチレン-共役ジエン共重合体および/またはその水素添加体からなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上18質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル、重合性単量体および低収縮化剤を含む樹脂成分と、
粉状難燃剤と、
水酸化アルミニウムとを含み、
前記低収縮化剤は、スチレン-共役ジエン共重合体および/またはその水素添加体からなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、前記樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上18質量部以下である、不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記粉状難燃剤は、リン系難燃剤および/または窒素系難燃剤を含む、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-共役ジエンブロック共重合体の水素添加体を含む、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含む成形材料。
【請求項5】
請求項4に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料、および、成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料(とりわけ、シートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シックモールディングコンパウンド(TMC))からなる成形品は、とりわけ、機械的特性、耐水性、および、耐食性に優れるため、幅広い分野で用いられている。
【0003】
このような不飽和ポリエステル樹脂組成物として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂と、低収縮化剤(ポリスチレンおよびポリエチレン)と、難燃剤(リン系難燃剤および窒素系難燃剤)とを含む樹脂組成物が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2022/264661号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、難燃剤が粉状である場合には、不飽和ポリエステル樹脂および低収縮化剤と難燃剤とが分離して、難燃剤が不均一となる場合がある。難燃剤が不均一になると、製造効率が低下するという不具合、および、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品において、難燃剤が不均一となり、難燃性にバラツキが生じるという不具合があることを見出した。
【0006】
本発明は、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる不飽和ポリエステル樹脂組成物、その不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む成形材料、および、その成形材料の硬化物を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、不飽和ポリエステル、重合性単量体および低収縮化剤を含む樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを含み、前記低収縮化剤は、スチレン-共役ジエン共重合体および/またはその水素添加体からなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、前記樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上18質量部以下である、不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0008】
本発明[2]は、前記粉状難燃剤は、リン系難燃剤および/または窒素系難燃剤を含む、上記[1]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-共役ジエンブロック共重合体の水素添加体を含む、上記[1]または[2]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物と、強化繊維とを含む成形材料を含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、上記[4]に記載の成形材料の硬化物を含むことを特徴とする、成形品を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【0013】
本発明の成形材料は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、このような成形材料によれば、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【0014】
本発明の成形品は、本発明の成形材料の硬化物を含む。そのため、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂原料(後述)を調製した後に、水酸化アルミニウムを配合することによって調製されるか(第1実施形態)、不飽和ポリエステル、重合性単量体および低収縮化剤を含む樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを一括で配合することによって調製される(第2実施形態)。
【0016】
1.第1実施形態
第1実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製した後に、水酸化アルミニウムを配合することによって調製される。このような場合には、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂原料および水酸化アルミニウムを含む。
【0017】
<不飽和ポリエステル樹脂原料>
不飽和ポリエステル樹脂原料は、樹脂成分と、粉状難燃剤とを含む。不飽和ポリエステル樹脂原料は、好ましくは、樹脂成分と、粉状難燃剤とからなる。樹脂成分は、不飽和ポリエステルと、重合性単量体と、低収縮化剤と、必要により、他の熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂を除く)を含む。
【0018】
<不飽和ポリエステル>
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる。
【0019】
[多塩基酸]
多塩基酸は、必須成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有する多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸とする。)と、任意成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有しない多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸とする。)とを含む。
【0020】
(エチレン性不飽和結合含有多塩基酸)
エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸およびその無水物、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のハロゲン化物、および、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0021】
エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および、ジヒドロムコン酸が挙げられる。また、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸には、例えば、上記のエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸およびフマル酸が挙げられる。
【0022】
(エチレン性不飽和結合不含多塩基酸)
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族多塩基酸、飽和脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸、これらの酸の無水物、これらの酸のハロゲン化物、および、これらの酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0023】
飽和脂肪族多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸が挙げられる。
【0024】
飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、および、セバシン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、および、無水コハク酸が挙げられる。
【0025】
飽和脂環族多塩基酸としては、例えば、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。
【0026】
飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、および、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cis-またはtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその混合物)が挙げられる。飽和脂環族多塩基酸としては、上記の飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水ヘット酸が挙げられる。
【0027】
芳香族多塩基酸としては、例えば、芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0028】
芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸、および、ピロメリット酸が挙げられる。また、芳香族多塩基酸には、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられる。芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水フタル酸が挙げられる。
【0029】
多塩基酸は、単独使用または2種以上併用できる。
【0030】
多塩基酸が、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸およびエチレン性不飽和結合不含多塩基酸を含む場合には、全多塩基酸100モルに対して、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸の含有割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、また、例えば、100モル%以下、好ましくは、90モル%以下である。また、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸の含有割合は、例えば、0モル以上、好ましくは、10モル以上、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。
【0031】
多塩基酸は、好ましくは、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸を含まず、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸からなる。
【0032】
[多価アルコール]
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0033】
2価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、および、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール、および、エーテルジオールが挙げられる。アルカンジオールとしては、炭素数2以上10以下のアルカンジオールが挙げられる。炭素数2以上10以下のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、および、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。エーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジメタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジエタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジエタノールもしくはその混合物)、および、水素化ビスフェノールAが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0034】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0035】
多価アルコールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。多価アルコールとして、より好ましくは、脂肪族ジオールが挙げられる。多価アルコールとして、さらに好ましくは、炭素数2以上10以下のアルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、とりわけ好ましくは、アルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、最も好ましくは、プロピレングリコールが挙げられる。
【0036】
多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0037】
[多塩基酸と多価アルコールとの反応]
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを反応させることにより調製される。
【0038】
多塩基酸に対する多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。
【0039】
反応温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0040】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤、公知の反応触媒および公知の添加剤を配合することもできる。
【0041】
これにより、不飽和ポリエステルを調製できる。また、不飽和ポリエステルは、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性することもできる。
【0042】
不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、また、例えば、40mgKOH/g未満、好ましくは、30mgKOH/g以下、より好ましくは、25mgKOH/g以下である。
【0043】
不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、2000以上、好ましくは、4000以上、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0044】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0045】
不飽和ポリエステルは、単独使用または2種以上併用できる。
【0046】
不飽和ポリエステルの含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、また、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0047】
<重合性単量体>
重合性単量体としては、例えば、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0048】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、および、クロロスチレンが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル、および、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、および、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。環構造含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、および、これらのクロライド塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、および、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシルが挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
重合性単量体としては、好ましくは、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。重合性単量体としては、より好ましくは、スチレンおよびメタクリル酸メチルが挙げられる。重合性単量体としては、さらに好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0051】
重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0052】
重合性単量体の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0053】
<低収縮化剤>
低収縮化剤は、この不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて成形品を得る場合に、成形品の硬化収縮および熱収縮を抑制し、外観を向上させるために配合される。
【0054】
[スチレン系熱可塑性エラストマー]
低収縮化剤は、スチレン-共役ジエン共重合体および/またはその水素添加体からなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。
【0055】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、上記した熱収縮を抑制するとともに、不飽和ポリエステル樹脂原料における粉状難燃剤の分散性を向上させる。
【0056】
スチレン-共役ジエン共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合エラストマー、スチレン-イソプレン共重合エラストマー、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体エラストマー、および、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体エラストマーが挙げられる。スチレン-共役ジエン共重合体として、好ましくは、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体エラストマー、および、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体エラストマーが挙げられる。
【0057】
スチレン-共役ジエン共重合体の水素添加体としては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン共重合エラストマー、スチレン-エチレン-プロピレン共重合エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体エラストマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合エラストマーが挙げられる。スチレン-共役ジエン共重合体の水素添加体として、好ましくは、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体エラストマー、スチレン-エチレン-プロピレン共重合エラストマーが挙げられる。
【0058】
なお、上記共重合体には、ブロック共重合体またはランダム共重合体が含まれる。上記共重合体として、好ましくは、ブロック共重合体が挙げられる。
【0059】
スチレン-共役ジエン共重合体およびその水素添加体は、市販品を用いることもできる。このような市販品として、例えば、D1101、D1102、D1155、DKX405、DX410、DX415、D1192、D1161、D1171、G1651、G1652、G1654、G1701、G1730、8004(以上、クレイトンエラストマー社製)、アサプレンT411、アサプレンT432、タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S、タフテックH1041、タフテックH1043、タフテックH1052(以上、旭化成社製)、セプトンシリーズ(例えば、セプトン 2002、4033、8004 クラレ社製)、ハイブラーシリーズ(例えば、ハイブラー 5125 クラレ社製)が挙げられる。
【0060】
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる成形品の外観を向上させる(光沢ムラを抑制させる)観点から、好ましくは、スチレン-共役ジエンブロック共重合体の水素添加体が挙げられる。
【0061】
スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレン含量は、例えば、5%以上であり、また、例えば、50%以下である。
【0062】
スチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、低収縮性および分散性の観点から、例えば、10000以上、好ましくは、30000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、200000以下である。
【0063】
なお、数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0064】
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、8質量部以上、また、18質量部以下、好ましくは、16質量部以下、より好ましくは、12質量部以下である。
【0065】
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、上記下限以上であれば、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【0066】
一方、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、上記下限未満であれば、粉状難燃剤を均一に分散させることができない。
【0067】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、上記上限以下であれば、不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなること抑制でき、作業性が向上する。
【0068】
一方、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、上記上限を超過すると、不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する。
【0069】
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、分散性の観点から、粉状難燃剤100質量部に対して、例えば、6質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、40質量部以上、また、120質量部以下、好ましくは、90質量部以下、75質量部以下である。
【0070】
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、分散性の観点から、粉状難燃剤および水酸化アルミニウムの総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0071】
[他の低収縮化剤]
低収縮化剤は、スチレン系熱可塑性エラストマー以外の低収縮化剤(以下、他の低収縮化剤と称する場合がある。)を含むこともできる。
【0072】
他の低収縮化剤として、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、および、飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。他の低収縮化剤として、好ましくは、ポリエチレン、ポリスチレン、および、ポリ酢酸ビニルが挙げられる。
【0073】
低収縮化剤が、他の低収縮化剤を含む場合には、他の低収縮化剤の含有割合は、低収縮化剤に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、低収縮化剤に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0074】
低収縮化剤は、好ましくは、他の低収縮化剤を含まず、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる。
【0075】
また、低収縮化剤を上記重合性単量体に溶解させることにより、低収縮化剤の重合性単量体溶液として調製することもできる。
【0076】
低収縮化剤の重合性単量体溶液において、低収縮化剤の固形分濃度は、例えば、20質量%以上、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0077】
低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0078】
低収縮化剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、8質量部以上、また、例えば、18質量部以下、好ましくは、16質量部以下、より好ましくは、12質量部以下である。
【0079】
低収縮化剤の含有割合は、粉状難燃剤100質量部に対して、例えば、6質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、40質量部以上、また、120質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、75質量部以下である。
【0080】
<他の熱硬化性樹脂>
他の熱硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂、および、アクリルシラップが挙げられる。
【0081】
他の熱硬化性樹脂の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0082】
樹脂成分は、好ましくは、他の熱硬化性樹脂を含まない。
【0083】
<粉状難燃剤>
粉状難燃剤は、不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる成形品に難燃性を付与する。また、粉状難燃剤は、後述する水酸化アルミニウムを含まない。
【0084】
また、粉状難燃剤は、難燃剤の粒または粉であって、具体的には、10μm以上200μm以下の平均粒子径を有する固形物である。なお、粉状難燃剤が、膨張黒鉛以外の難燃剤である場合には、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により粒子径分布曲線を作成し、50質量%相当粒子径を算出することにより求めることができる。または、粉状難燃剤が、膨張黒鉛である場合には、平均粒子径は、光学顕微鏡で観察し、任意の50個の粉状難燃剤について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径および短径の平均値を算出することにより求めることができる。
【0085】
粉状難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤および非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。
【0086】
ハロゲン系難燃剤として、例えば、臭素系難燃剤が挙げられる。臭素系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノール、ブロモジフェニル(例えば、テトラブロモジフェニル)、および、ブロモジフェニルエーテル(例えば、テトラブロモジフェニルエーテル)が挙げられる。
【0087】
非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、無機系難燃剤、窒素系難燃剤、および、膨張黒鉛が挙げられる。
【0088】
リン系難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸エステル(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート)、ポリリン酸塩(例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム)、ポリリン酸アンモニウムとペンタエリスリトールなどの助剤とメラミンなどの炭素供給剤とを配合したIFR(Intumescent)系膨張型難燃剤、および、ホスフィン酸金属塩が挙げられる。リン系難燃剤として、好ましくは、ポリリン酸塩およびホスフィン酸金属塩が挙げられる。
【0089】
無機系難燃剤として、例えば、酸化アンチモン(例えば、三酸化二アンチモン)、錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛およびその製剤が挙げられる。
【0090】
窒素系難燃剤として、例えば、アゾアルカン化合物、ヒンダードアミン化合物、および、メラミンシアヌレートが挙げられる。窒素系難燃剤として、好ましくは、メラミンシアヌレートが挙げられる。
【0091】
膨張黒鉛は、鱗片状の天然黒鉛の層間に硫酸等を挿入処理した黒鉛層間化合物である。このような膨張黒鉛は、150~300℃程度の温度で、層間が拡張して膨張する。
【0092】
粉状難燃剤として、好ましくは、非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。粉状難燃剤として、より好ましくは、リン系難燃剤、窒素系難燃剤が挙げられる。つまり、より好ましくは、粉状難燃剤は、リン系難燃剤および/または窒素系難燃剤を含む。
【0093】
粉状難燃剤が、リン系難燃剤を含めば、難燃性に優れる(詳しくは、後述する燃焼試験における燃焼後の強度を向上できる。)。
【0094】
粉状難燃剤が、窒素系難燃剤を含めば、難燃性に優れる(詳しくは、後述する耐火炎試験において、燃焼後の変色を抑制できる。)。
【0095】
さらに好ましくは、粉状難燃剤は、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を含む。粉状難燃剤が、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を含む場合には、リン系難燃剤の含有割合は、リン系難燃剤および窒素系難燃剤の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、45質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、55質量部以下である。また、窒素系難燃剤の含有割合は、リン系難燃剤および窒素系難燃剤の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、45質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、55質量部以下である。
【0096】
また、粉状難燃剤は、実質的に、膨張黒鉛を含まないことが好ましい。粉状難燃剤が、実質的に、膨張黒鉛を含まないとは、膨張黒鉛の含有割合が、粉状難燃剤に対して、例えば、5質量%以下、好ましくは、1質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以下であることを意味する。
【0097】
粉状難燃剤が、実質的に、膨張黒鉛を含まなければ、後述する燃焼試験における燃焼後の強度を向上できる。
【0098】
粉状難燃剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0099】
粉状難燃剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、18質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、25質量部以下である。
【0100】
<不飽和ポリエステル樹脂原料の調製>
詳しくは、第1工程において詳述するが、不飽和ポリエステル樹脂原料は、樹脂成分と、粉状難燃剤とを配合することにより調製される。
【0101】
そして、得られる不飽和ポリエステル樹脂原料は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、粉状難燃剤の分散性を向上でき、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間(後述)を短くできる。その結果、製造効率を向上できる。また、このような不飽和ポリエステル樹脂原料によれば、難燃性に優れ、さらには、難燃性のバラツキが抑制された成形品を製造することができる。
【0102】
また、不飽和ポリエステル樹脂原料は、樹脂成分と、粉状難燃剤とを含み、後述する水酸化アルミニウムを含まず、不飽和ポリエステル樹脂組成物の原料として、単独で商取引の対象となる。
【0103】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物>
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂原料と、水酸化アルミニウムとを含む。つまり、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを含む。
【0104】
<水酸化アルミニウム>
水酸化アルミニウムは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品に難燃性を付与し、また、透明性および深みを付与するために配合される。
【0105】
水酸化アルミニウムの含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、より好ましくは、110質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0106】
<添加剤>
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要により、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を配合することができる。
【0107】
添加剤としては、例えば、着色剤、増粘剤、硬化剤、重合禁止剤、離型剤、充填材、分離防止剤、湿潤分散剤、柄材、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、および、重合促進剤が挙げられる。添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0108】
[着色剤]
着色剤は、特に制限されない。着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルーなどの公知の顔料を混合したポリエステルトナーが挙げられる。
【0109】
着色剤として、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0110】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0111】
着色剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下である。
【0112】
[増粘剤]
増粘剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱圧縮成形に適した粘度まで増粘させるために配合される。増粘剤は、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を強化繊維(後述)に含浸させる前(好ましくは、直前)に配合される。
【0113】
増粘剤としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物、および、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
【0114】
増粘剤として、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。増粘剤として、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0115】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0116】
増粘剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0117】
[硬化剤]
硬化剤としては、例えば、パーオキサイドが挙げられる。パーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、および、t-ヘキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。
【0118】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0119】
硬化剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0120】
[重合禁止剤]
重合禁止剤は、可使時間、硬化反応を調整するために配合される。
【0121】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン化合物、ベンゾキノン化合物、カテコール化合物、フェノール化合物、および、N-オキシル化合物が挙げられる。
【0122】
重合禁止剤として、好ましくは、ベンゾキノン化合物、ハイドロキノン化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。
【0123】
ベンゾキノン化合物として、例えば、パラベンゾキノンが挙げられる。
【0124】
ハイドロキノン化合物として、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、および、t-ブチルハイドロキノンが挙げられる。
【0125】
重合禁止剤として、好ましくは、ベンゾキノン化合物が挙げられる。
【0126】
重合禁止剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.2質量部以下、より好ましくは、0.1質量部以下である。
【0127】
[離型剤]
離型剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、液体ワックス、フッ素ポリマー、および、シリコン系ポリマーが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、および、ラウリン酸が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、および、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0128】
離型剤としては、好ましくは、脂肪酸金属塩、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0129】
離型剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0130】
離型剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0131】
[充填材]
充填材(水酸化アルミニウムを除く)として、例えば、無機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン)、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム)、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ、乾式シリカ(アエロジル))、中空フィラー、ケイ酸塩(例えば、珪砂、珪藻土、ガラスパウダー、ガラスバルーン、マイカ、クレー、カオリン、タルク)、フッ化物(例えば、ホタル石)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、金属粉末、セラミック、ミルドファイバー、および、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)が挙げられる。
【0132】
充填材は、単独使用または2種以上併用できる。
【0133】
充填材の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、より好ましくは、150質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0134】
[分離防止剤]
分離防止剤としては、市販品を用いることができる、具体的には、BYK-W995、BYK-W996、BYK-W9010、BYK-W972、および、BYK-9076(以上、BYK-CHEMIE社製)、モディパーMS10B、S501、SV10A、および、SV10B(以上、日油社製)が挙げられる。
【0135】
分離防止剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0136】
分離防止剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.8質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0137】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法>
不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、樹脂成分と、粉状難燃剤とを配合して、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製する第1工程と、不飽和ポリエステル樹脂原料に、水酸化アルミニウムを配合して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する第2工程とを備える。
【0138】
[第1工程]
第1工程では、樹脂成分と、粉状難燃剤とを配合して、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製する。
【0139】
上記調製において、予め、不飽和ポリエステルを、重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、上記添加剤を配合することにより、不飽和ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステルおよび重合性単量体の混合物)を調製することもできる。
【0140】
不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の含有割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0141】
また、不飽和ポリエステル樹脂を調製した後、この不飽和ポリエステル樹脂を、重合性単量体と、低収縮化剤と、必要により配合される他の熱硬化性樹脂と、粉状難燃剤とを混合する際に、さらに、重合性単量体を配合することもできる。
【0142】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製する。
【0143】
[第2工程]
第2工程では、不飽和ポリエステル樹脂原料に、水酸化アルミニウムと、必要により、上記添加剤とを配合して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する。
【0144】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する。
【0145】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂原料を含む。つまり、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【0146】
また、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法において、好ましくは、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料を小分けする。そして、小分けされた不飽和ポリエステル樹脂原料のそれぞれに対して、第2工程を実施することによって、生産性を向上させることができる。
【0147】
また、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料(および小分けされた不飽和ポリエステル樹脂原料)は、通常、第2工程を実施するまで、例えば、1日以上14日以下の間、貯蔵される。詳しくは後述するが、不飽和ポリエステル樹脂原料が、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含むため、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料(および小分けされた不飽和ポリエステル樹脂原料)が貯蔵される場合であっても、粉状難燃剤の分散性を向上でき、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間を短くでき、製造効率を向上できる。
【0148】
2.第2実施形態
第2実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを一括で、上記配合割合で配合することによって調製される。
【0149】
また、上記調製において、必要により、本発明の効果を損なわない範囲で、上記添加剤を、上記配合割合で、配合することができる。つまり、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要により、上記添加剤を含む。
【0150】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。そのため、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品において、難燃剤が均一にすることができ、難燃性のバラツキを抑制できる。
【0151】
<成形材料>
上記不飽和ポリエステル樹脂組成物に、強化繊維を配合させることにより、成形材料を調製できる。そして、このような成形材料から、公知の方法により、成形品を得ることができる。
【0152】
成形材料は、不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを含む。
【0153】
<強化繊維>
強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維および天然繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および、セラミック繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、および、フェノール系繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、麻およびケナフが挙げられる。
【0154】
強化繊維として、好ましくは、無機繊維が挙げられる。強化繊維として、より好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
【0155】
強化繊維の形状は、例えば、クロス状(例えば、ロービングクロス)、マット状(例えば、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、および、サーフェーシングマット)、ストランド状、ロービング状、不織布状、および、ペーパー状が挙げられる。
【0156】
強化繊維の長さは、特に制限されず、例えば、1.5mm以上、強度を向上させる観点から、好ましくは、5mm以上、より好ましくは、20mm以上であり、また、例えば、80mm以下、好ましくは、40mm以下である。
【0157】
<成形材料の調製>
成形材料を調製するには、不飽和ポリエステル樹脂組成物に、強化繊維を配合する。具体的には、強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させる。
【0158】
不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する方法としては、公知の方法が挙げられる。具体的には、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)が挙げられる。好ましくは、SMC、TMCが挙げられ、より好ましくは、SMCが挙げられる。
【0159】
強化繊維の含有割合は、成形材料に対して、例えば、15質量%以上、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、35質量%以下である。
【0160】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物と強化繊維とを含む成形材料(好ましくは、シート状の成形材料)が得られる。
【0161】
そして、この成形材料は、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、このような成形材料によれば、難燃性に優れ、さらには、難燃性のバラツキが抑制された成形品を製造することができる。
【0162】
4.成形品
成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。
【0163】
成形材料を、硬化させるには、まず、成形材料を、加熱圧縮成形(後述)できるように、増粘させるため、熟成する。
【0164】
熟成において、熟成温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、50℃以下である。また、熟成時間は、例えば、8時間以上、また、例えば、120時間以下である。
【0165】
これにより、成形材料が、保形される。
【0166】
次いで、成形材料を、公知の方法により、加熱圧縮成形する。
【0167】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。加熱圧縮成形において、成形温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下である。また、成形圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上、また、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0168】
これにより、成形材料が、賦形および硬化し、成形品が得られる。
【0169】
成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。そのため、難燃性に優れ、さらには、難燃性のバラツキを抑制できる。
【0170】
4.作用効果
第1実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製した後に、水酸化アルミニウムを配合することによって調製される。不飽和ポリエステル樹脂原料は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、粉状難燃剤の分散性を向上でき、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間(後述)を短くできる。その結果、製造効率を向上できる。また、このような不飽和ポリエステル樹脂原料によれば、難燃性に優れ、さらには、難燃性のバラツキが抑制された成形品を製造することができる。
【0171】
詳しくは、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法において、好ましくは、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料を小分けする。そして、小分けされた不飽和ポリエステル樹脂原料のそれぞれに対して、第2工程を実施することによって、生産性を向上させることができる。
【0172】
一方、小分けされた不飽和ポリエステル樹脂原料は、第2工程を実施するまでは、一旦、貯蔵される。そうすると、樹脂成分と粉状難燃剤とが分離して、粉状難燃剤が不飽和ポリエステル樹脂原料において、不均一となる場合がある。このような場合には、第2工程を実施する前に、不飽和ポリエステル樹脂原料を撹拌して、粉状難燃剤を均一に分散させる必要があるが、粉状難燃剤の分散性が低いと、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間が長くなり、製造効率が低下するという不具合があることを見出した。また、粉状難燃剤が、不飽和ポリエステル樹脂原料において不均一のまま、第2工程を実施して、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する場合には、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形品において、難燃剤が不均一となり、難燃性にバラツキが生じるという不具合があることを見出した。
【0173】
これに対して、この不飽和ポリエステル樹脂原料は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、一旦、貯蔵することにより、不飽和ポリエステル樹脂原料において、粉状難燃剤が不均一になった場合でも、粉状難燃剤の分散性を向上でき、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間を短くできる。これにより、上記不具合を解消できる。
【0174】
そして、この不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂原料を含む。そのため、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、難燃性に優れ、さらには、難燃性のバラツキが抑制された成形品を製造することができる。
【0175】
第2実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、樹脂成分と、粉状難燃剤と、水酸化アルミニウムとを一括で配合することによって調製される。不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粉状難燃剤とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。その結果、難燃性のバラツキが抑制された成形品を製造することができる。
【0176】
この成形材料は、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。そのため、このような成形材料によれば、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【0177】
この成形品は、上記成形材料の硬化物を含む。そのため、難燃性に優れ、さらには、粉状難燃剤を均一に分散させることができる。
【実施例0178】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明を一実施形態であり、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
【0179】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替できる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0180】
<成分の詳細>
2002:スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン含有量30%、商品名「セプトン 2002」、クラレ社製
H1041:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン含有量30%、商品名「タフテック H1041」、旭化成社製
G1701:スチレン-エチレン-プロピレンジブロック共重合エラストマー、スチレン含有量37%、商品名「KRATON G1701」、クレイトンエラストマー社製
DX410:スチレン-ブタジエン-スチレン分岐ブロック共重合体エラストマー、商品名「KRATON DX410」、スチレン含有量18%、クレイトンエラストマー社製
5125:スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン含有量20%、商品名「ハイブラー 5125」、クラレ社製
ポリ酢酸ビニル:数平均分子量30000
ポリスチレン:数平均分子量 約110000
ポリエチレン:平均粒子径が約30μmのポリエチレン粉末
リン系難燃剤:トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、平均粒子径30μm
窒素系難燃剤:メラミンシアヌレート、平均粒子径10μm
膨張黒鉛:平均粒子径75μm
水酸化アルミニウム:平均粒子径8μm
分離防止剤:W972、商品名「BYK―W972」、BYK-CHEMIE社製
分離防止剤:S501、商品名「モディパー S501」、日油社製
【0181】
<不飽和ポリエステル樹脂の調製>
調製例1
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、プロピレングリコール1500g、無水マレイン酸1860g、ハイドロキノン0.31gを仕込んだ。次に、上記の内容物を窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、210℃で反応させた。これにより、不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステルの酸価は23.6mgKOH/gであった。得られた不飽和ポリエステル100質量部に対して、重合禁止剤として、ハイドロキノン0.015質量部を添加した後、スチレン66.7質量部を添加して、不飽和ポリエステル樹脂(スチレン含有率40質量%)を得た。
【0182】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料および成形品の製造>
実施例1~実施例21および比較例1~比較例8
表1および表2の記載に基づいて、不飽和ポリエステル樹脂と、重合性単量体と、低収縮化剤と、粉状難燃剤、水酸化アルミニウムと、着色剤とを配合し、均一になるまで混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造した。
【0183】
[成形材料の製造]
上記不飽和ポリエステル樹脂組成物に、増粘剤として、酸化マグネシウム1.0部を添加した。そして、公知のシートモールディングコンパウンド(SMC)含浸機を用いて、成形材料(シートモールディングコンパウンド(SMC))を得た。詳しくは、ドクターブレードを用いて、樹脂組成物をキャリア―フィルム上に塗布した。その後、ガラスロービングを連続的に25mmに切断し、ガラス繊維含有率が30質量%となるように添加し、含浸工程を経て、SMCを得た。次いで、この成形材料を、40℃で48時間熟成させ、成形材料が加熱圧縮成形可能な状態になるまで増粘させた。これにより、成形材料を製造した。
【0184】
[成形品の製造]
成形材料を、300mm×900mm平板金板を用いて、加熱圧縮成形して、成形品を製造した。
【0185】
具体的には、成形は、金型温度が製品面、裏面とも140℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間300秒の条件で実施した。その後、成形品を金型から脱型し、直ちに鉄板の間に挟んで冷却した。これにより、平板状の成形品を製造した。成形品として、厚み4mmの成形品と、厚み3mmとの成形品と、厚み2.5mmの成形品との3種類を製造した。
【0186】
<不飽和ポリエステル樹脂原料、不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料および成形品の製造>
実施例22~実施例36および比較例9~比較例16
[第1工程]
表3および表4の記載に基づいて、不飽和ポリエステル樹脂と、重合性単量体と、低収縮化剤と、粉状難燃剤とを配合して、ダマがなくなるまで混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂原料を調製した。
【0187】
[第2工程]
不飽和ポリエステル樹脂原料を、5日静置後、再度、ダマがなくなるまで攪拌した後、表3および表4の記載に基づいて、水酸化アルミニウムと、着色剤とを配合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造した。
【0188】
実施例1と同様の手順に基づいて、成形材料および成形品を製造した。
【0189】
<評価>
[含浸における作業性]
各実施例および各比較例の不飽和ポリエステル樹脂組成物について、含浸における作業性について、以下の基準に基づいて評価した。さらに、含浸状態についてSMC製造直後にカッターナイフでキャリヤフィルムを剥ぎ取り、不飽和ポリエステル樹脂組成物とガラス繊維の含浸の程度を目視で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:含浸において、良好に作業を実施することができた。含浸状態は、ガラス繊維が不飽和ポリエステル樹脂組成物で十分に濡らされ、不飽和ポリエステル樹脂組成物に含浸していないガラス繊維が観察されなかった。
〇-:含浸において、良好に作業を実施することができた。含浸時状態は、部分的に、不飽和ポリエステル樹脂組成物に含浸していないガラス繊維が観察された。
×:含浸において、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高く、作業ができなかった。
【0190】
[難燃性]
(耐火炎試験:燃焼後変色性)
各実施例および各比較例の成形品(厚さ4mm)から、試験片(150mm×150mm×4mm)を切削加工した。次いで、市販のクッキングバーナー(岩谷産業製カセットガス クッキングバーナー CJ2)を用いて、バーナーの内炎長さが約40mm、かつ、内炎先端温度が約1000℃となるように調整した。さらに、試験片の中心部を、バーナーの先端から40mmで垂直の位置となるように固定した。バーナーを点火し5分間成形板の燃焼状態を目視で観察した。燃焼後変色性について、上記手順で5回実施し、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:試験片の裏面が焦げて変色した回数が0~1回であった。
△:試験片の裏面が焦げて変色した回数が2回であった。
×:試験片の裏面が焦げて変色した回数が3~5回であった。
【0191】
(燃焼試験:燃焼後強度)
各実施例および各比較例の成形品(厚さ2.5mm)から、試験片(85mm×25mm×2.5mm)を切削加工した。次いで、この試験片を、るつぼに入れて電気炉を用いて。600℃設定で1時間処理した。その後、室温まで冷却して電気炉から取り出し、JIS K7074(1988年)に準拠して、曲げ強さを測定した。燃焼後強度について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:曲げ強さが10Nを超過した。
△:曲げ強さが5N以上10N以下であった。
×:曲げ強さが5N未満であった。
【0192】
(難燃性のバラツキ)
各実施例および各比較例の成形品(厚さ4mm)を9分割して、試験片を得た。各試験片について、JIS K7201―2:2021に準拠して酸素指数を測定した。難燃性のバラツキについて、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:各試験片同士の酸素指数の差が2%未満であった。
×:各試験片同士の酸素指数の差が2%以上であった。
【0193】
(V0-基準(厚み3mm)の適合性)
各実施例および各比較例の成形品(厚さ3mm)から、試験片(13mm×125mm×3mm)をそれぞれ、切削加工し、JIS C60695-11-10のB法に準拠して燃焼試験を実施した。難燃性について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:燃焼成分類V-0であった。
×:燃焼成分類が上記以外であった。
【0194】
[成形品の外観(光沢ムラ)]
各実施例および各比較例の成形品(300mm×900mm)について、目視で、光沢ムラを観察した。成形品の外観について、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
〇:成形品外周から周囲0~10mmに光沢ムラを観測した。
〇-:成形品外周から周囲10~50mmにも光沢ムラを観測した。
×:成形品外周から周囲50mm以上にも光沢ムラを観測した。
【0195】
[粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間の評価]
実施例22~実施例36および比較例9~比較例16の不飽和ポリエステル樹脂原料(具体的には、第1工程により得られた直後の不飽和ポリエステル樹脂原料)を、5日静置後、攪拌した。不飽和ポリエステル樹脂原料について、3分毎に、粉状難燃剤に由来するダマの有無を観測した。その結果を表1および表2に示す。また、下記の基準に基づいて、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間を評価した。その結果を表3および表4に示す。
{基準}
〇:粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間が10分以下であった。
△:粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間が10分超過30分以下であった。
×:粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間が30分超過であった。
【0196】
<考察>
実施例1~実施例21は、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。そのため、成形品において、難燃性のバラツキが小さいとわかる。
【0197】
一方、比較例1~比較例4は、粉状難燃性とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含まない。そのため、成形品において、難燃性のバラツキが大きいとわかる。
【0198】
また、比較例5および比較例6は、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含むものの、粉状難燃性を含まない。そのため、難燃性(燃焼後変色性および燃焼後強度)を向上させることができないとわかる。
【0199】
実施例22~実施例36は、粉状難燃性とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含む。これにより、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料を5日静置した後、攪拌する場合において、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間を短くできるとわかる。また、このような不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる成形品において、難燃性のバラツキが小さいとわかる。
【0200】
一方、比較例9~比較例12は、粉状難燃性とともに、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含まない。そのため、第1工程において得られる不飽和ポリエステル樹脂原料を5日静置した後、攪拌する場合において、粉状難燃剤を均一に分散させるまでに要する時間を短くできないとわかる。また、このような不飽和ポリエステル樹脂原料を用いて得られる成形品において、難燃性のバラツキが大きくなるとわかる。
【0201】
また、比較例13および比較例14は、低収縮化剤としてのスチレン系熱可塑性エラストマーを含むものの、粉状難燃性を含まない。そのため、難燃性(燃焼後変色性および燃焼後強度)を向上させることができないとわかる。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】