(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062823
(43)【公開日】2025-04-15
(54)【発明の名称】避雷用接続体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/92 20060101AFI20250408BHJP
H01R 4/66 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
E04B1/92
H01R4/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172113
(22)【出願日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】法身 祐治
(72)【発明者】
【氏名】村 年益
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直生
(72)【発明者】
【氏名】大橋 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 貴也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH07
2E001EA03
2E001GA65
2E001HB02
2E001LA10
(57)【要約】
【課題】単純な構造で、棒鋼間での電気的な接続を確実になす。
【解決手段】プレキャストコンクリートブロックBに埋め込まれた棒鋼Rの延長方向に沿って、棒鋼Rの周囲に配置される迂回導通部2と、迂回導通部2におけるプレキャストコンクリートブロックBの内側寄りの端部に対して導通するように接触する内端設置部材3と、棒鋼Rが有する螺旋状の突起R1に係合することで棒鋼Rに延長方向の固定がされると共に、棒鋼Rと内端設置部材3とを導通させる固定部材4と、迂回導通部2における、プレキャストコンクリートブロックBの外側寄りの端部、及び、隣り合う他のプレキャストコンクリートブロックBに属する棒鋼Rに対して導通するように接触する外端設置部材5と、を備え、固定部材4は、棒鋼Rが貫通できる貫通穴であって、棒鋼Rの横断面形状に対応した形状の貫通穴を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷に伴う電流を通すことのできる棒鋼を内蔵したプレキャストコンクリートブロックに、前記棒鋼と共に埋め込まれ、前記棒鋼の延長方向で隣り合う複数の前記プレキャストコンクリートブロックに属する前記棒鋼の各々を電気的に接続するために用いられる避雷用接続体であって、
前記棒鋼は、外周に螺旋状の突起が形成されていて、周方向の少なくとも一つの部分に、前記棒鋼の延長方向に延びる面が形成されており、
前記避雷用接続体は、
少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記延長方向に沿って、前記棒鋼の周囲に配置される迂回導通部と、
少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記迂回導通部における前記プレキャストコンクリートブロックの内側寄りの端部に対して導通するように接触する内端設置部材と、
少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記棒鋼における前記螺旋状の突起に係合することで前記棒鋼に前記延長方向の固定がされると共に、前記内端設置部材の導電性材料で形成された部分に接触することによって、前記棒鋼と前記内端設置部材とを導通させる固定部材と、
少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記迂回導通部における、前記プレキャストコンクリートブロックの外側寄りの端部、及び、前記隣り合う他の前記プレキャストコンクリートブロックに属する前記棒鋼に対して導通するように接触する外端設置部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記棒鋼が貫通できる貫通穴であって、前記棒鋼の横断面形状に対応した形状の貫通穴を有する避雷用接続体。
【請求項2】
前記迂回導通部が、前記延長方向の端部に端面を有し、
前記内端設置部材は板状であり、本体部と、前記本体部から厚み方向に突出し、前記迂回導通部における前記端面に対して導通するように接触する突起と、を有する、請求項1に記載の避雷用接続体。
【請求項3】
前記棒鋼における前記面は平面であり、径方向で対向する位置に二面設けられており、
前記固定部材は、前記貫通穴に面して前記平面に対向する位置に、前記平面と平行な部分を有する平面対応部が設けられており、
径方向で一方側に位置する前記平面対応部は、前記固定部材における前記延長方向での一方側に寄せて設けられており、
径方向で他方側に位置する前記平面対応部は、前記固定部材における前記延長方向での他方側に寄せて設けられている、請求項1または2に記載の避雷用接続体。
【請求項4】
前記外端設置部材は、
前記迂回導通部に係合することで、前記外端設置部材を前記迂回導通部に固定すると共に、前記迂回導通部に対して導通する第1爪部と、
前記第1爪部とは別の位置に設けられ、前記棒鋼の外周部に接触することで、前記棒鋼に対して導通する第2爪部と、
を有する、請求項1または2に記載の避雷用接続体。
【請求項5】
前記棒鋼における前記面は平面であり、径方向で対向する位置に二面設けられており、
前記迂回導通部は円筒状であり、
前記第1爪部は、複数が、周方向で均等な位置に設けられており、
前記第2爪部は、複数が、周方向で不均等な位置に設けられており、
前記第2爪部のうち少なくとも1本が、径方向で一方側に位置する前記平面に接触し、
前記第2爪部のうち少なくとも1本が、径方向で他方側に位置する前記平面に接触し、
前記第2爪部のうち前記平面に接触しないものが、前記棒鋼の前記平面が形成されていない外周面に接触する、請求項4に記載の避雷用接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷のための棒鋼を内蔵したプレキャストコンクリートブロックに埋め込まれて用いられる避雷用接続体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記避雷用接続体として、例えば特許文献1に記載のもの(「避雷用コネクタ」)がある。これは、上下に重ねられる複数のプレキャストコンクリートブロックの間で、プレキャストコンクリートブロックに埋め込まれた鉄筋(棒鋼)を電気的に接続して、構造物への落雷に伴う電流を、構造物が設けられた地盤に流すことができるようにするために用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の避雷用コネクタは、継手に取り付けられるベースと、ベースに固定された支持部材と、支持部材に固定された接触部材とからなる。接触部材は互いに対向する一対の挟持部を備え、挟持部に引張部材が連結されている。引張部材を引っ張ることにより支持部材が塑性変形し、挟持部が鉄筋に電気的に接触するよう構成されている。
【0004】
しかし、鉄筋と継手との電気的な接続を確実に行うため、前記避雷用コネクタの構造が、ベース、支持部材、接触部材、引張部材の組み合わされた複雑な構造であったため、製造コストの観点で改良する余地があった。ただし、構造を単純化するだけでは、棒鋼間での電気的な接続ができにくくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、単純な構造でありながら、棒鋼間での電気的な接続を確実にできる避雷用接続体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、落雷に伴う電流を通すことのできる棒鋼を内蔵したプレキャストコンクリートブロックに、前記棒鋼と共に埋め込まれ、前記棒鋼の延長方向で隣り合う複数の前記プレキャストコンクリートブロックに属する前記棒鋼の各々を電気的に接続するために用いられる避雷用接続体であって、前記棒鋼は、外周に螺旋状の突起が形成されていて、周方向の少なくとも一つの部分に、前記棒鋼の延長方向に延びる面が形成されており、前記避雷用接続体は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記延長方向に沿って、前記棒鋼の周囲に配置される迂回導通部と、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記迂回導通部における前記プレキャストコンクリートブロックの内側寄りの端部に対して導通するように接触する内端設置部材と、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記棒鋼における前記螺旋状の突起に係合することで前記棒鋼に前記延長方向の固定がされると共に、前記内端設置部材の導電性材料で形成された部分に接触することによって、前記棒鋼と前記内端設置部材とを導通させる固定部材と、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、前記迂回導通部における、前記プレキャストコンクリートブロックの外側寄りの端部、及び、前記隣り合う他の前記プレキャストコンクリートブロックに属する前記棒鋼に対して導通するように接触する外端設置部材と、を備え、前記固定部材は、前記棒鋼が貫通できる貫通穴であって、前記棒鋼の横断面形状に対応した形状の貫通穴を有する避雷用接続体である。
【0008】
この構成によれば、固定部材の貫通穴が棒鋼の横断面形状に対応した形状を有するため、固定部材を棒鋼に対し、内端設置部材に当たるまで差し込みつつ、周方向に回すだけで固定を完了できる。
【0009】
また、前記迂回導通部が、前記延長方向の端部に端面を有し、前記内端設置部材は板状であり、本体部と、前記本体部から厚み方向に突出し、前記迂回導通部における前記端面に対して導通するように接触する突起と、を有するものとできる。
【0010】
この構成によれば、突起で迂回導通部に対して物理的に接触することにより、確実な導通が可能である。
【0011】
また、前記棒鋼における前記面は平面であり、径方向で対向する位置に二面設けられており、前記固定部材は、前記貫通穴に面して前記平面に対向する位置に、前記平面と平行な部分を有する平面対応部が設けられており、径方向で一方側に位置する前記平面対応部は、前記固定部材における前記延長方向での一方側に寄せて設けられており、径方向で他方側に位置する前記平面対応部は、前記固定部材における前記延長方向での他方側に寄せて設けられているものとできる。
【0012】
この構成によれば、一方側と他方側の平面対応部が、棒鋼の延長方向で異なった位置に設けられているため、棒鋼の螺旋状の突起に沿わせつつ、内端設置部材に対して固定部材を、傾斜することを避けつつ固定できる。
【0013】
また、前記外端設置部材は、前記迂回導通部に係合することで、前記外端設置部材を前記迂回導通部に固定すると共に、前記迂回導通部に対して導通する第1爪部と、前記第1爪部とは別の位置に設けられ、前記棒鋼の外周部に接触することで、前記棒鋼に対して導通する第2爪部と、を有するものとできる。
【0014】
この構成によれば、第1爪部と第2爪部の組み合わせで、外端設置部材を介して迂回導通部と棒鋼とを導通させられる。
【0015】
また、前記棒鋼における前記面は平面であり、径方向で対向する位置に二面設けられており、前記迂回導通部は円筒状であり、前記第1爪部は、複数が、周方向で均等な位置に設けられており、前記第2爪部は、複数が、周方向で不均等な位置に設けられており、前記第2爪部のうち少なくとも1本が、径方向で一方側に位置する前記平面に接触し、前記第2爪部のうち少なくとも1本が、径方向で他方側に位置する前記平面に接触し、前記第2爪部のうち前記平面に接触しないものが、前記棒鋼の前記平面が形成されていない外周面に接触するものとできる。
【0016】
この構成によれば、複数の第2爪部による、棒鋼との確実な導通が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固定部材の貫通穴が棒鋼の横断面形状に対応した形状を有するため、固定部材を棒鋼に対し、内端設置部材に当たるまで差し込んだ上、周方向に回すだけで固定を完了できる。このため、単純な構成でありながら、棒鋼間での電気的な接続を確実にできる避雷用接続体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は本発明の一実施形態に係る避雷用接続体の構造を示す縦断面図であり、(B)は(A)に示した構造での導通の状況を示す説明図である。
【
図2】前記避雷用接続体を構成する内端設置部材の平面図である。
【
図3】前記避雷用接続体を構成する内端設置部材の拡大側面図(一部を断面視)である。
【
図4】前記避雷用接続体を構成する固定部材の平面図である(棒鋼との対応関係を二点鎖線で示す)。
【
図6】前記避雷用接続体を構成する外端設置部材の平面図である(棒鋼及び迂回導通部との対応関係を二点鎖線で示す)。
【
図9】前記外端設置部材に関し、第1爪部及び第2爪部を折り曲げ加工する前の平坦な状態での平面図である。
【
図10】前記避雷用接続体において、内端設置部材が取り付けられ、棒鋼が通された迂回導通部に対し、固定部材を取り付ける要領を示す、側面視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。本実施形態の避雷用接続体1は、複数(多数(数十本))の棒鋼Rを内蔵したプレキャストコンクリートブロックB(一部分を
図1(A)(B)に示す)に、前記棒鋼Rと共に埋め込まれる。各プレキャストコンクリートブロックBは、例えば直方体形状とされている。複数のプレキャストコンクリートブロックBは、上下方向に積み重ねるようにして、建物等の構造物へ配置される(以下、この配置状態を「配置例」とする)。よって、各棒鋼Rは、配置例において上下方向に沿うように配置される。棒鋼Rは鋼材製のため導電性を有している。複数の棒鋼Rのうち一部(図示したもの)は、構造物に設けられた避雷針から地盤に至る電気の導通路の一部を構成し、落雷に伴う電流を通して、地盤に逃がすことができるように構成されている。なお、導通路の一部を構成しない棒鋼Rは、もっぱら強度負担のために用いられる。この避雷用接続体1は、上下方向で隣り合うプレキャストコンクリートブロックBに属し、前記導通路の一部を構成する棒鋼Rの各々を電気的に接続するために用いられる。各プレキャストコンクリートブロックBにおいて、配置例における上端面B1からは複数の棒鋼Rが突出している。具体的寸法は特に限定されるものではないが、棒鋼Rは上端面B1から例えば300mm程度突出している。また、配置例における下端面B2には、後述する筒状の迂回導通部2における下部が露出している。なお、後述する外端設置部材5は、各プレキャストコンクリートブロックBの下端面よりも下方側に露出するように取り付けられる。
【0020】
本実施形態の避雷用接続体1に用いられる棒鋼Rは、一般的に「異形棒鋼」と呼ばれるものの一種であり、外周に、軸方向に対して傾斜している螺旋状の突起R1が形成されていて、周方向の少なくとも一つの部分に、棒鋼Rの延長方向に延びる面、詳しくは平面R2が形成されている。本実施形態における平面R2は、径方向で対向する位置に二面(一対)設けられていて、棒鋼Rの横断面形状が略小判型とされている。
【0021】
避雷用接続体1は、迂回導通部2、内端設置部材3、固定部材4、外端設置部材5の各々を備える。迂回導通部2、内端設置部材3、固定部材4の各々は、プレキャストコンクリートブロックBの製造工程において、棒鋼Rと共にプレキャストコンクリートブロックBに埋め込まれる。固定部材4の棒鋼Rに対する固定も、この際に行われる。外端設置部材5は、構造物の構築現場で迂回導通部2に取り付けることもできるし、プレキャストコンクリートブロックBの製造工程において迂回導通部2に取り付けることもできる。
【0022】
迂回導通部2は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成され、延長方向に沿って、棒鋼Rの周囲に配置される。この迂回導通部2は「継手」または「モルタル充填用継手」とも称され、全体が金属製、具体的には導電性材料である鋳鉄等の鉄製である円筒状体であって、
図1(A)(B)に示すように、プレキャストコンクリートブロックBに埋め込まれた部分の棒鋼R、及び、配置例において下側に設けられた別のプレキャストコンクリートブロックBの上端面B1から突出している棒鋼Rを、軸方向に沿い周方向で取り囲むようにして、全周にわたって設けられる。プレキャストコンクリートブロックB,Bが上下方向に積み重ねられた状態で、上側の棒鋼Rと下側の棒鋼Rとは当接しておらず、隙間を有している。なお、上側の棒鋼Rと下側の棒鋼Rとにおいて、平面R2はほぼ同じ方向を向くように配置される。迂回導通部2には汎用の前記継手を用いることができる。迂回導通部2は円筒状体であることから、延長方向の両端部に端面21を有する。この端面21は平坦面であって、導電性材料が露出していることにより導電性を有している。本実施形態の避雷用接続体1では、配置例にて、上端面211(内端設置部材3が接触)から、円筒状部分の内部を通り、下部の内周面22(外端設置部材5の第1爪部51が係合)まで、一連の導通路が形成される。この導通路に、
図1(B)に矢印Cで示したように落雷時の電流が流れる。迂回導通部2の内部には、棒鋼Rの端部に係合して位置決めを行うための突起が設けられている(図示しない)。また、円筒状体の部分と棒鋼Rとの間に、プレキャストコンクリートブロックBの製造時にコンクリートが入り込むことを防止する樹脂製(ゴム等)のパッキンを設けることができる。ちなみに、プレキャストコンクリートブロックB内部の迂回導通部2と棒鋼Rの間は、プレキャストコンクリートブロックBの工場における製造時には空間となっているが、構造物の構築現場にて、当該空間にグラウト(モルタル)が注入されることで空間が埋められる。
【0023】
内端設置部材3は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成されている。内端設置部材3は、迂回導通部2におけるプレキャストコンクリートブロックBの内側寄り(配置例では上側寄り)の端部に対して導通するように接触する。本実施形態の内端設置部材3は全体が金属製(具体的には鋼材製)であって、板状、より詳しくは、
図2に示すように平面視が平坦な中空円板(円環)状とされている。内部に形成されている円形貫通穴34の径寸法は、棒鋼Rの最大径寸法よりも大きく、棒鋼Rに対して干渉しないようにされている。
【0024】
内端設置部材3は、前記平坦な中空円板状部分である本体部31(中心に円形貫通穴34を有する)、本体部31から厚み方向に突出し、迂回導通部2における端面21(配置例では上端面211)に対して導通するように接触する複数(本実施形態では6個)の内側突起32、固定部材4に対して導通するように接触する複数(本実施形態では3個)の外側突起33、の各々を有する。
図3に示すように、内側突起32と外側突起33とは、内端設置部材3の厚み方向で逆方向に突出している。複数の内側突起32の各々は、径方向で同一位置であり、周方向に均等間隔に設けられている。外側突起33も同様である。このように配置することで、周方向での導通状況を均一にできる。内側突起32で迂回導通部2(端面21)に接触させ、外側突起33で固定部材4に接触させることにより、面と点での接触となることから、面同士の接触(接触面積が不安定)に比べて確実な導通が可能である。各突起は、本実施形態では本体部31と一体(プレス加工等により形成)であるが、導電性材料で形成された別体部品(リベット等)を本体部31に取り付けることで形成してもよい。
【0025】
固定部材4は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成されている。本実施形態の固定部材4は全体が金属製(具体的には鋼材製)であって、板状の本体部41と、
図4及び
図5に示すように本体部41の一部が折り曲げられ、厚み方向で重なるように折り返された折曲部42で構成された板状体である。
図10に示すように、固定部材4は、棒鋼Rにおける螺旋状の突起R1に係合することで棒鋼Rに延長方向の固定がされる。これと共に固定部材4は、内端設置部材3に接触することによって、棒鋼Rと内端設置部材3とを導通させる。この固定部材4は、本体部41を貫通するように形成されていて棒鋼Rが貫通できる貫通穴43を有する。固定部材4は、棒鋼Rにおける外周に螺旋状に形成された突起R1を「ねじ山」として、貫通穴43を棒鋼Rに通した状態で、取り付け中の状態を示す
図10中の矢印Mのように、周方向に回すことにより、螺旋状の突起R1に誘導されてねじ込みがなされる「ナット」状の部材である。
【0026】
貫通穴43は、
図4に示すように棒鋼Rの横断面形状(二点鎖線で図示)に対応した形状とされている。貫通穴43は、棒鋼Rのうち突起R1の形成されている部分の横断面形状と相似形状であって、やや大きく形成されている。貫通穴43の、本体部41の厚み方向で延長した空間に面し、棒鋼Rに設けられた一対の平面R2,R2にそれぞれ対向する位置に、各平面R2と平行な部分を有する平面対応部44が設けられている。平面対応部44は、径方向で対向する一方側と他方側に設けられている。平面対応部44の内縁形状は、
図4に示すように一部が円形状とされている。これは、プレキャストコンクリートブロックBの製造工程中に固定部材4を内端設置部材3に接触させるため、棒鋼Rに対して固定部材4を周方向(
図10の矢印M)に回す際、棒鋼Rの軸方向に沿って並ぶ螺旋状の突起R1,R1同士の間の径内側に凹んだ溝状部分に平面対応部44を沿わせやすくするためである。
図5に示すように、径方向で一方側に位置する平面対応部441は、固定部材4における延長方向での一方側(例えば配置例で下側)に寄せて設けられている。そして、径方向で他方側に位置する平面対応部442は、固定部材4における延長方向での他方側(例えば配置例で上側)に寄せて設けられている。このように、一方側と他方側の平面対応部441,442が、棒鋼Rの延長方向で異なった位置(配置例では上下異なった位置)に設けられているため、順次上下方向にずれていくように形成された、棒鋼Rの螺旋状の突起R1(及び突起R1,R1間の溝状部分)に沿わせつつ、内端設置部材3に対して固定部材4を、傾斜することを避けつつ固定できる。
【0027】
外端設置部材5は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成されている。外端設置部材5は、迂回導通部2における、プレキャストコンクリートブロックBの外側寄り(配置例では、上側のプレキャストコンクリートブロックBにおける下側寄り)の端部、及び、隣り合う他のプレキャストコンクリートブロックBに属する棒鋼Rに対して導通するように接触する。前記各接触のため、外端設置部材5は、第1爪部51及び第2爪部52を有する。本実施形態の外端設置部材5は全体が金属製(具体的には鋼材製)であって、板状、より詳しくは、第1爪部51と第2爪部52を除いて、
図6に示すように平面視が平坦な中空円板(円環)状とされている。なお
図6は、配置例で上方から見た場合の平面図である。内部に形成されている円形貫通穴53の径寸法は、棒鋼Rの最大径寸法よりも大きく、棒鋼Rに対して干渉しないようにされている。また、円形貫通穴53の径寸法は、迂回導通部2の配置例における下部の内周面22の径寸法よりも小さいものとされている。
図6~
図8に示すように、第1爪部51及び第2爪部52は、円形貫通穴53の内部に設けられている。第1爪部51は円形貫通穴53の貫通方向に沿うように、円形貫通穴53の内縁部から延びている。また、第1爪部51には、径外方向に突出した導通突起511が形成されている。この導通突起511は、迂回導通部2の内周面22(そのうち図示していない段差部分)に当接して、迂回導通部2と外端設置部材5との間で導通する。
【0028】
第1爪部51は、迂回導通部2の内周面22に係合することで、外端設置部材5を迂回導通部2に固定すると共に、迂回導通部2に対して導通する。そして第2爪部52は、
図6及び
図9に示すように、第1爪部51とは周方向で別の位置に設けられ、棒鋼Rの外周部に接触することで、棒鋼Rに対して導通する。迂回導通部2側の導通をなす第1爪部51と、棒鋼R側の導通をなす第2爪部52の組み合わせで、外端設置部材5を介して迂回導通部2と棒鋼Rとを導通させられる。第1爪部51及び第2爪部52は、各爪部を厚み方向で見た場合、略長方形状とされていて、先端縁は直線形状となっている。
【0029】
第1爪部51は、複数(本実施形態では3個)が、周方向で均等な位置に設けられている。そして第2爪部52は、複数(本実施形態では3個)が、
図9に示すように、周方向で不均等な位置に設けられている。なお
図9は、各爪部51,52が折り曲げられる前の平坦な形状を示している。
図6に示すように、第2爪部52のうち少なくとも1本が、棒鋼Rにおいて径方向で一方側に位置する平面R2に接触し、第2爪部52のうち少なくとも1本が、径方向で他方側に位置する平面R2に接触する。第2爪部52の先端縁は前述のように直線形状であるため、棒鋼Rの平面R2に接触することで、安定的な電気接続が可能である。第2爪部52のうち平面R2に接触しないものが、棒鋼Rの平面R2が形成されていない外周面に接触する。このように複数の第2爪部52が、棒鋼Rに対して平面R2と他の外周面に分かれて接触するため、複数の第2爪部52による、棒鋼Rとの確実な導通が可能である。
【0030】
外端設置部材5の外周部には、略半円形状の第1位置合わせ凹部54と略三角形状の第2位置合わせ凹部55が設けられている。第1位置合わせ凹部54は120度おきに3箇所設けられていて、外端設置部材5を加工する際の位置合わせに用いられる。また、第2位置合わせ凹部55は180度おきに2箇所設けられていて、迂回導通部2に対する位置合わせに用いられる。
【0031】
以上のように構成された避雷用接続体1では、固定部材4の貫通穴が棒鋼Rの横断面形状に対応した形状を有するため、固定部材4を棒鋼Rに対し、内端設置部材3に当たるまで差し込みつつ、周方向に回すだけで固定を完了できる。このため、この避雷用接続体1は、単純な構成でありながら、隣り合うプレキャストコンクリートブロックB,Bに内蔵された棒鋼R,R間での電気的な接続(導通)を確実にできる。そして、本実施形態では、構造物の構築現場にて、複数のプレキャストコンクリートブロックBを上下方向に積み重ねるに伴い、導通させるべき棒鋼R同士の電気的な接続を行うことができる。このため、従来、棒鋼R同士を導線で接続していた場合に比べると、電工作業者による作業や、いわゆる相番作業(建築作業者の作業時における電工作業者の立ち合い)が不要となる点で有利である。
【0032】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、避雷用接続体1の構成部材は、少なくとも導通を行う部分が導電性材料で形成されていればよく、例えば樹脂と金属の組み合わせであってもよい。
【0034】
また固定部材4は、前記実施形態では板状体を折り曲げて形成していた。しかしこれに限定されず、例えば一般的なナットと同じように、厚み寸法が一定のブロック状で形成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 避雷用接続体
2 迂回導通部
21 端面
211 上端面
22 内周面
3 内端設置部材
31 本体部
32 内側突起
33 外側突起
4 固定部材
41 本体部
42 折曲部
43 貫通穴
44 平面対応部
441 一方側平面対応部
442 他方側平面対応部
5 外端設置部材
51 第1爪部
511 導通突起
52 第2爪部
53 円形貫通穴
B プレキャストコンクリートブロック
B1 上端面
B2 下端面
R 棒鋼
R1 突起
R2 平面
C 導通
M 固定部材の移動方向