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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062844
(43)【公開日】2025-04-15
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/20 20060101AFI20250408BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20250408BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20250408BHJP
   H01P 3/10 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H01Q13/20
H04B1/38
H01P3/12
H01P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172150
(22)【出願日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】西澤 崇哉
【テーマコード(参考)】
5J014
5J045
5K011
【Fターム(参考)】
5J014DA01
5J045AA05
5J045AB06
5J045DA11
5J045HA01
5J045NA03
5K011AA06
5K011BA04
(57)【要約】
【課題】伝送損失の少ない無線通信装置を低コストで実現できるようにする。
【解決手段】無線通信装置は、管軸方向に沿った一面が開放された導波管型線路100と、前記導波管型線路の一端部の電磁波を吸収する第1の終端器130と、第1のアンテナ110と、前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であり、前記第1のアンテナとの間で電磁波の通信を行う第2のアンテナ120とを有し、前記導波管型線路は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で電磁波を無線伝送し、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に沿った一面が開放された導波管型線路と、
前記導波管型線路の一端部の電磁波を吸収する第1の終端器と、
第1のアンテナと、
前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であり、前記第1のアンテナとの間で電磁波の通信を行う第2のアンテナとを有し、
前記導波管型線路は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で電磁波を無線伝送し、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さであることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナは、前記導波管型線路の他端部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記導波管型線路の他端部の電磁波を吸収する第2の終端器をさらに有し、
前記第1のアンテナは、前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2のアンテナは、前記導波管型線路の内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、前記導波管型線路の内側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第1のアンテナは送信アンテナであり、前記第2のアンテナは受信アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナは受信アンテナであり、前記第2のアンテナは送信アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま0度~180度の範囲で屈曲していることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま90度屈曲していることを特徴とする請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記導波管型線路は、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さであり、前記開放された一面に対して水平な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の波長以下の長さであることを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま180度屈曲していることを特徴とする請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記導波管型線路は、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の4波長以上の長さであり、前記開放された一面に対して水平な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の半波長以下の長さであることを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記導波管型線路は、2箇所以上で屈曲していることを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記導波管型線路は、方形の断面構造を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記搬送波は、ミリ波である特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術を利用して、機器内の通信線の無線化への需要が高まっている。機器内通信の無線化により、通信部分の省スペース化、配線のメンテナンスフリー化等の効果が期待されている。大型機器においては、機器内での長距離伝送や、スライド移動しながらの通信が想定される。
【0003】
特許文献1には、長距離伝送においても伝送損失を軽減する線路構成として、線路を構成する基板と基準電位をなす金属筐体とを組み合わせた線路構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-230606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機器内通信の無線化においては、機器内部の構造に合わせて伝送線路を配置するために、フレキシブルな線路設計が求められる。しかし、特許文献1のような伝送線路の場合、線路を延伸方向に垂直な方向に急激に屈曲させた場合、伝送損失が大きくなるという課題がある。これにより、正しくデータ伝送されず、再送の手間がかかる等、通信の高速化が困難といった課題が生じる。さらに、金属筐体と組み合わせるために屈曲させた線路を基板で製造する場合、製造性が悪く、コストがかかることも課題となる。
【0006】
本開示の目的は、伝送損失の少ない無線通信装置を低コストで実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
無線通信装置は、管軸方向に沿った一面が開放された導波管型線路と、前記導波管型線路の一端部の電磁波を吸収する第1の終端器と、第1のアンテナと、前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であり、前記第1のアンテナとの間で電磁波の通信を行う第2のアンテナとを有し、前記導波管型線路は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で電磁波を無線伝送し、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、伝送損失の少ない無線通信装置を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】無線通信装置の構成例を示す図である。
図2】シミュレーション結果を示す図である。
図3】シミュレーション結果を示す図である。
図4】無線通信装置の構成例を示す図である。
図5】シミュレーション結果を示す図である。
図6】シミュレーション結果を示す図である。
図7】無線通信装置の構成例を示す図である。
図8】シミュレーション結果を示す図である。
図9】無線通信装置の構成例を示す図である。
図10】シミュレーション結果を示す図である。
図11】シミュレーション結果を示す図である。
図12】無線通信装置の構成例を示す図である。
図13】無線通信装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る無線通信装置10の構成例を示す図を示す。無線通信装置10は、導波管型線路100と、送信アンテナ110と、受信アンテナ120と、終端器130を有する。
【0012】
導波管型線路100は、管軸方向に沿った一面101が開放されている。導波管型線路100は、金属により形成されており、その製造方法は特に限定されるものではない。なお、本実施形態では、導波管型線路100は、方形の断面構造を有する方形導波管型線路であるが、必ずしも方形である必要はない。
【0013】
終端器130は、導波管型線路100の送信アンテナ110が配置されていない一端103に近接した一端部に配置され、導波管型線路100の一端部の電磁波を吸収する。終端器130は、アブソーバのような電磁波を吸収するものである。なお、導波管型線路100の端102及び103は、インピーダンス整合のためにテーパー型になっていてもよい。
【0014】
送信アンテナ110は、導波管型線路100の他端102に近接した他端部に配置される。受信アンテナ120は、導波管型線路100に対して、導波管型線路100の開放面101より内側、又は、外側の近傍に配置され、導波管型線路100の管軸方向に沿って移動可能であり、送信アンテナ110との間で電磁波の通信を行う。
【0015】
導波管型線路100は、送信アンテナ110と受信アンテナ120との間で電磁波を無線伝送する。導波管型線路100の高さHは、開放面101に対して垂直な辺の長さである。導波管型線路100の横幅Wは、開放面101に対して水平な辺の長さである。
【0016】
次に、無線通信装置10の動作について説明する。送信アンテナ110から送信された電磁波は、導波管型線路100を通って伝送され、終端器130で吸収される。導波管型線路100に入力された電磁波は、導波管型線路100の断面構造を適切に選択することによって、導波管型線路100の端102から端103まで小さい損失で伝送することが可能である。
【0017】
このとき、導波管型線路100に入力された電磁波は、導波管型線路100内で伝送モードを形成し、導波管型線路100内に一定の強度で電磁波が存在している。そのため、受信アンテナ120を導波管型線路100の近傍に配置することで、受信アンテナ120が導波管型線路100の管軸方向のどの位置に存在していても、一定の強度で電磁波を受信することができる。これにより、送信アンテナ110と受信アンテナ120の間で安定して通信することが可能となる。
【0018】
なお、導波管型線路100内に伝送モードが存在しない断面構造の導波管型線路100を使用した場合、導波管型線路100の端102から端103まで電磁波が伝送される間に、開放面101から電磁波が漏れ出ていく。すると、導波管型線路100内の電磁波の強度が一定とならないため、安定した通信を行うことが困難となる。
【0019】
図2は、導波管型線路100の断面構造における横幅Wと高さHを変化させた際の導波管型線路100の端102から端103まで伝達する電磁波の通過特性のシミュレーション結果を示す図である。このとき、電磁波の搬送波周波数は60GHzであり、その搬送波はミリ波である。図2は、高さHが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の場合、導波管型線路100の端102から端103まで低損失で伝送することを示す。
【0020】
図2では、高さHが15mm以上である場合、伝送の損失が低くなる。電磁波の搬送波周波数fが60GHzである場合、15mmは、下式のように、電磁波の搬送波周波数fの3波長(3×λ)に相当する。したがって、高さHは、電磁波の搬送波周波数fの3波長以上の長さであることが好ましい。
【0021】
3×λ=3×(3×108/f)
=3×{3×108/(60×109)}
=0.015[m]
=15[mm]
【0022】
図3は、導波管型線路100の送信アンテナ110側の端102から受信アンテナ120までの通過特性のシミュレーション結果を示す図である。図3は、横幅Wが2mm、高さHが25mmの場合と、横幅Wが3mm、高さが5mmの場合について、受信アンテナ120の位置が導波管型線路100の端102からそれぞれ20mm、50mm、80mmの場合についての通過特性を示す。
【0023】
横幅Wが2mm、高さが25mmの導波管型線路100は、図2に示すように、導波管型線路100の端102から端103まで、電磁波が低損失で伝送する。このとき、端102から受信アンテナ120までの距離に関係なく、一定の通過特性となることを図3は示している。
【0024】
一方、横幅Wが3mm、高さHが5mmの導波管型線路100は、図2に示すように、電磁波が伝達する間に、導波管型線路100の開放面101から漏れ出ていく。そのため、導波管型線路100の端102から端103まで電磁波が到達しにくく、受信アンテナ120への通過特性も、端102から受信アンテナ120までの距離に応じて、小さくなっていくことを図3は示している。
【0025】
上記で示したように、導波管型線路100の断面構造を開放面101から電磁波が漏れにくい構造にすることで、導波管型線路100内に一定の強度で電磁波が存在する。受信アンテナ120は、導波管型線路100の管軸に沿ったいかなる位置でも、同じ強度で電磁波を受信することが可能である。これにより、安定した無線通信が実現でき、高速通信が可能となる。
【0026】
導波管型線路100は、板金を折り曲げる、又は、溝を掘るといった簡単な方法で、製造することができる。これにより、伝送損失の少ない無線通信装置10を低コストで実現することができる。
【0027】
なお、上記では、アンテナ110が送信アンテナであり、アンテナ120が受信アンテナである例を説明したが、アンテナ110が受信アンテナであり、アンテナ120が送信アンテナであってもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る無線通信装置20の構成例を示す図である。なお、以下に説明する図4の無線通信装置20において、図1で示した無線通信装置10ですでに説明した構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
図4に示す無線通信装置20は、導波管型線路200と、送信アンテナ110と、1個の受信アンテナ120と、終端器130を有する。図2に示す受信アンテナ120aと120bは、導波管型線路200内で移動可能な1個の受信アンテナ120の異なる位置を示す。
【0030】
導波管型線路200は、図1で示す導波管型線路100に対して、屈曲点204を設け、開放面101と水平に90度屈曲させている。なお、屈曲点204では、導波管型線路200の断面構造を保持したまま90度屈曲している。また、導波管型線路200は、管軸方向に沿った開放面101が開放されている。
【0031】
次に、無線通信装置20の動作について説明する。第1の実施形態では、導波管型線路100内に伝送モードが存在するような断面構造によって、安定した通信が可能となることを述べた。導波管型線路200を途中で屈曲させる場合、屈曲点204でも伝送モードが崩れないような断面構造とすることで、導波管型線路200に沿って電磁波を屈曲させることが可能となる。
【0032】
これにより、受信アンテナ120を導波管型線路200の近傍に配置することで、受信アンテナ120が導波管型線路200の管軸方向のどの位置に存在していても、一定の強度で電磁波を受信することができる。その結果、送信アンテナ110と受信アンテナ120の間で安定して通信することが可能となる。
【0033】
図5は、導波管型線路200の断面構造における横幅Wと高さHを変化させたときの、導波管型線路200の端102から端103まで伝送する電磁波の通過特性のシミュレーション結果を示す図である。このとき、電磁波の搬送波周波数は60GHzである。図5は、高さHが電磁波の搬送波周波数の3波長以上、横幅Wが電磁波の搬送波周波数の波長以下の場合、導波管型線路200の端102から端103まで低損失で伝送することを示す。
【0034】
図5では、高さHが15mm以上であり、横幅Wが5mm以下である場合、伝送の損失が低くなる。電磁波の搬送波周波数fが60GHzである場合、高さHの15mmは、上記のように、電磁波の搬送波周波数fの3波長(3×λ)に相当する。また、横幅Wの5mmは、下式のように、電磁波の搬送波周波数fの波長(λ)に相当する。したがって、導波管型線路200は、高さHが電磁波の搬送波周波数fの3波長以上の長さであり、横幅Wが電磁波の搬送波周波数fの波長以下の長さであることが好ましい。
【0035】
λ=3×108/f
=3×108/(60×109
=0.005[m]
=5[mm]
【0036】
図6は、導波管型線路200の送信アンテナ110側の端102から受信アンテナ120までの通過特性のシミュレーション結果を示す図である。図6は、横幅Wが2mm、高さHが25mmの場合と、横幅Wが3mm、高さHが5mmの場合について、受信アンテナ120が、受信アンテナ120aで示す位置に配置される場合と、受信アンテナ120bで示す位置に配置される場合について示す。受信アンテナ120aは、受信アンテナ120が屈曲点204より送信アンテナ110側に配置される位置を示す。受信アンテナ120bは、受信アンテナ120が屈曲点204より終端器130側に配置される位置を示す。
【0037】
横幅Wが2mm、高さHが25mmの導波管型線路200は、図5に示すように、導波管型線路200の端102から端103まで電磁波が低損失で伝送される。このとき、屈曲点204の通過前後の受信アンテナ120a及び120bの位置で良好な通過特性となることを図6は示している。
【0038】
一方、横幅Wが3mm、高さHが5mmの導波管型線路200は、図5に示すように、電磁波が屈曲点204で曲がり切れず、導波管型線路200の開放面101から漏れ出ていくため、導波管型線路200の端102から端103まで電磁波が到達しにくい。そのため、受信アンテナ120への通過特性も、屈曲点204の通過後の受信アンテナ120bの位置で大きく劣化してしまうことを図6は示している。
【0039】
上記で示したように、導波管型線路200の断面構造を開放面101から電磁波が漏れにくく、導波管型線路200に沿って屈曲しやすい構造にすることで、導波管型線路200内に一定の強度で電磁波が存在するようになる。受信アンテナ120は、導波管型線路200の管軸に沿ったいかなる位置でも、同じ強度で電磁波を受信することが可能である。これにより、安定した無線通信が実現でき、高速通信が可能となる。
【0040】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る無線通信装置30の構成例を示す図を示す。なお、以下に説明する図7の無線通信装置30において、図4で示した無線通信装置20ですでに説明した構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図7に示す無線通信装置30は、図4の無線通信装置20と同じ構成である。図7に示す受信アンテナ120a、120b、120c及び120dは、移動可能な受信アンテナ120の位置を示す。
【0042】
受信アンテナ120aは、受信アンテナ120が開放面101の内側(下側)の位置であり、屈曲点204より送信アンテナ110側の位置を示す。受信アンテナ120bは、受信アンテナ120が開放面101の内側の位置であり、屈曲点204より終端器130側の位置を示す。受信アンテナ120cは、受信アンテナ120が開放面101の外側(上側)の位置であり、屈曲点204より送信アンテナ110側の位置を示す。受信アンテナ120dは、受信アンテナ120が開放面101の外側の位置であり、屈曲点204より終端器130側の位置を示す。
【0043】
次に、無線通信装置30の動作について説明する。上述の通り、導波管型線路200内に伝送モードが存在するような断面構造によって、屈曲する導波管型線路200を用いても安定した通信が可能となる。このとき、電磁波は、開放面101から漏れていかず、開放面101の内側に強く存在する。そのため、受信アンテナ120を開放面101より内側に配置することで、より大きなゲインを得ることが可能となる。
【0044】
図8は、導波管型線路200の送信アンテナ110側の端102から受信アンテナ120までの通過特性のシミュレーション結果を示す図である。図8の通過特性は、受信アンテナ120aの位置と、受信アンテナ120bの位置と、受信アンテナ120cの位置と、受信アンテナ120dの位置での通過特性を示す。
【0045】
図8は、導波管型線路200の開放面101の内側に配置される受信アンテナ120a及び120bの位置の方が、外側に配置される受信アンテナ120c及び120dの位置よりも、大きなゲインが得られることを示す。受信アンテナ120は、導波管型線路200の内側に配置されることが好ましい。
【0046】
上記のように、受信アンテナ120は、導波管型線路200の開放面101より内側に配置されることで、ゲインが大きくなり、より安定した通信が可能となる。
【0047】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る無線通信装置40の構成例を示す図である。なお、以下に説明する図9の無線通信装置40において、上記で示した無線通信装置20ですでに説明した構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
図9に示す無線通信装置40は、導波管型線路400と、送信アンテナ110と、受信アンテナ120と、終端器130を有する。導波管型線路400は、屈曲点204で、断面構造を保持したまま180度屈曲している。また、導波管型線路400は、管軸方向に沿った開放面101が開放されている。受信アンテナ120aと120bは、導波管型線路400内で移動可能な受信アンテナ120の異なる位置を示す。
【0049】
次に、無線通信装置40の動作について説明する。上述の通り、導波管型線路400内に伝送モードが存在するような断面構造によって、屈曲する導波管型線路400を用いても安定した通信が可能となる。
【0050】
図10は、導波管型線路400の断面構造における横幅Wと高さHを変化させたときの、導波管型線路400の端102から端103まで伝送する電磁波の通過特性のシミュレーション結果を示す図である。このとき、電磁波の搬送波周波数は60GHzである。
【0051】
図10は、高さHが電磁波の搬送波周波数の4波長以上、横幅Wが電磁波の搬送波周波数の半波長以下の場合、導波管型線路400の端102から端103まで低損失で伝送することを示す。
【0052】
図10では、高さHが20mm以上であり、横幅Wが2.5mm以下である場合、伝送の損失が低くなる。電磁波の搬送波周波数fが60GHzである場合、高さHの20mmは、下式のように、電磁波の搬送波周波数fの4波長(4×λ)に相当する。
【0053】
4×λ=4×(3×108/f)
=4×{3×108/(60×109)}
=0.02[m]
=20[mm]
【0054】
また、横幅Wの2.5mmは、下式のように、電磁波の搬送波周波数fの半波長(λ/2)に相当する。したがって、導波管型線路400は、高さHが電磁波の搬送波周波数fの4波長以上の長さであり、横幅Wが電磁波の搬送波周波数fの半波長以下の長さであることが好ましい。
【0055】
λ/2=(3×108/f)/2
={3×108/(60×109)}/2
=0.0025[m]
=2.5[mm]
【0056】
図11は、導波管型線路400の送信アンテナ110側の端102から受信アンテナ120までの通過特性のシミュレーション結果を示す図である。図11は、横幅Wが2mm、高さが25mmの場合と、横幅Wが3mm、高さHが5mmの場合について、受信アンテナ120aの位置と受信アンテナ120bの位置での通過特性を示す。
【0057】
受信アンテナ120aは、受信アンテナ120が屈曲点204より送信アンテナ110側の位置を示す。受信アンテナ120bは、受信アンテナ120が屈曲点204より終端器130側の位置を示す。
【0058】
横幅Wが2mm、高さHが25mmの導波管型線路400は、図10に示すように、導波管型線路400の端102から端103まで電磁波が低損失で伝送する。このとき、屈曲点204の前後の受信アンテナ120a及び120bの位置で良好な通過特性となることを図11は示している。
【0059】
一方、横幅Wが3mm、高さHが5mmの導波管型線路400は、図10に示すように、電磁波が屈曲点204で曲がり切れず、導波管型線路400の開放面101から漏れ出ていくため、導波管型線路400の端102から端103まで電磁波が到達しにくい。そのため、受信アンテナ120への通過特性も、屈曲点204の後の受信アンテナ120bの位置で、大きく劣化してしまうことを図11は示している。
【0060】
上記で示したように、導波管型線路400の断面構造を開放面101から電磁波が漏れにくく、導波管型線路400に沿って屈曲しやすい構造にすることで、導波管型線路400内に一定の強度で電磁波が存在するようにすることができる。受信アンテナ120は、導波管型線路400の管軸に沿ったいかなる位置でも、同じ強度で電磁波を受信することが可能である。これにより、無線通信の高速化、信頼性の向上が可能となる。
【0061】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に係る無線通信装置50の構成例を示す図である。なお、以下に説明する図12の無線通信装置50において、上記で示した無線通信装置20ですでに説明した構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
図12に示す無線通信装置50は、導波管型線路200と、送信アンテナ501と、受信アンテナ120と、終端器503,504を有する。
【0063】
送信アンテナ501は、導波管型線路200に対して、導波管型線路200の開放面101より内側、又は、外側の近傍に配置され、導波管型線路200の管軸方向に沿って移動可能である。なお、受信アンテナ120と送信アンテナ501は、導波管型線路200の内側に配置されることが好ましい。
【0064】
例えば、送信アンテナ501は、屈曲点204と端102との間に配置される。受信アンテナ120は、屈曲点204と端103との間に配置される。
【0065】
終端器504は、導波管型線路200の一端103に近接した一端部に配置され、導波管型線路200の一端部の電磁波を吸収する。終端器503は、導波管型線路200の他端102に近接した他端部に配置され、導波管型線路200の他端部の電磁波を吸収する。
【0066】
なお、導波管型線路200は、屈曲点204で0度~180度の範囲で、断面構造を保持したまま屈曲している。
【0067】
次に、無線通信装置50の動作について説明する。送信アンテナ501から送信された電磁波は、導波管型線路200を通って伝送され、終端器503及び504で吸収される。
【0068】
導波管型線路200に入力された電磁波は、導波管型線路200の断面構造が伝送モードを形成するために適した構造であれば、導波管型線路200の端102及び103まで、小さい損失で伝送される。このとき、導波管型線路200に入力された電磁波は、導波管型線路200内に一定の強度で存在している。そのため、受信アンテナ120が導波管型線路200の管軸方向のどの位置に存在していても、一定の強度で電磁波を受信し、送信アンテナ501と受信アンテナ120の間で安定して通信することが可能となる。これにより、無線通信の高速化、信頼性の向上が可能となる。
【0069】
(第6の実施形態)
図13は、第6の実施形態に係る無線通信装置60の構成例を示す図である。なお、以下に説明する図13の無線通信装置60において、上記で示した無線通信装置20ですでに説明した構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図13に示す無線通信装置60は、導波管型線路600と、送信アンテナ110と、受信アンテナ120と、終端器130を有する。受信アンテナ120a,120b,120cは、導波管型線路600内で移動可能な受信アンテナ120の異なる位置を示す。
【0071】
導波管型線路600は、第1の屈曲点604と、第2の屈曲点605を有する。導波管型線路600は、2箇所の屈曲点604及び605において、それぞれ、0度~180度の範囲で、断面構造を保持したまま屈曲している。また、導波管型線路600は、管軸方向に沿った開放面101が開放されている。導波管型線路600は、2箇所以上の屈曲点で屈曲させることができる。
【0072】
次に、無線通信装置60の動作について説明する。送信アンテナ110から送信された電磁波は、導波管型線路600を通って伝送され、終端器130で吸収される。導波管型線路600に入力された電磁波は、導波管型線路600の断面構造が伝送モードを形成するために適した構造であれば、導波管型線路600の端103まで小さい損失で伝送する。このとき、導波管型線路600に入力された電磁波は、導波管型線路600内に一定の強度で存在している。そのため、受信アンテナ120が図13に示す受信アンテナ120a、120b、120cのような導波管型線路600の管軸方向のどの位置に存在していても、一定の強度で電磁波を受信する。これにより、送信アンテナ110と受信アンテナ120の間で安定して通信することが可能となり、無線通信の高速化、信頼性の向上が可能となる。
【0073】
なお、上述の実施形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本開示はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0074】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
管軸方向に沿った一面が開放された導波管型線路と、
前記導波管型線路の一端部の電磁波を吸収する第1の終端器と、
第1のアンテナと、
前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であり、前記第1のアンテナとの間で電磁波の通信を行う第2のアンテナとを有し、
前記導波管型線路は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で電磁波を無線伝送し、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さであることを特徴とする無線通信装置。
(構成2)
前記第1のアンテナは、前記導波管型線路の他端部に配置されることを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
(構成3)
前記導波管型線路の他端部の電磁波を吸収する第2の終端器をさらに有し、
前記第1のアンテナは、前記導波管型線路の管軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
(構成4)
前記第2のアンテナは、前記導波管型線路の内側に配置されることを特徴とする構成1~3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(構成5)
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、前記導波管型線路の内側に配置されることを特徴とする構成3に記載の無線通信装置。
(構成6)
前記第1のアンテナは送信アンテナであり、前記第2のアンテナは受信アンテナであることを特徴とする構成1~5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(構成7)
前記第1のアンテナは受信アンテナであり、前記第2のアンテナは送信アンテナであることを特徴とする構成1~5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(構成8)
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま屈曲していることを特徴とする構成1~7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(構成9)
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま0度~180度の範囲で屈曲していることを特徴とする構成8に記載の無線通信装置。
(構成10)
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま90度屈曲していることを特徴とする構成9に記載の無線通信装置。
(構成11)
前記導波管型線路は、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の3波長以上の長さであり、前記開放された一面に対して水平な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の波長以下の長さであることを特徴とする構成10に記載の無線通信装置。
(構成12)
前記導波管型線路は、断面構造を保持したまま180度屈曲していることを特徴とする構成9に記載の無線通信装置。
(構成13)
前記導波管型線路は、前記開放された一面に対して垂直な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の4波長以上の長さであり、前記開放された一面に対して水平な辺の長さが電磁波の搬送波周波数の半波長以下の長さであることを特徴とする構成12に記載の無線通信装置。
(構成14)
前記導波管型線路は、2箇所以上で屈曲していることを特徴とする構成8に記載の無線通信装置。
(構成15)
前記導波管型線路は、方形の断面構造を有することを特徴とする構成1~14のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(構成16)
前記搬送波は、ミリ波である特徴とする構成1~15のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【符号の説明】
【0075】
10、20、30、40、50、60 無線通信装置;100、200、400、600 導波管型線路;101 導波管型線路の開放面;102、103 導波管型線路の端;110、501 送信アンテナ;120 受信アンテナ;130、503、504 終端器;204、604、605 導波管型線路の屈曲点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13