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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006285
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20250109BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106980
(22)【出願日】2023-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正幸
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA15
5E316AA43
5E316AA55
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD22
5E316EE09
5E316EE33
5E316FF03
5E316HH11
5E338AA03
5E338AA16
5E338CD05
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】3段以上のスタックされたビアのビア底部の破断を抑えた多層プリント配線板の提供。
【解決手段】フィルドビアを有するコア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルドビアを有するコア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
前記コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアの形状が、円筒形状又はつづみ形状であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビア底部の断面積が、ビア中間部の断面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載の多層プリント配線板。
【請求項4】
前記コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビア底部の断面積が、ビア中間部の断面積より大きく、かつビアトップの断面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載の多層プリント配線板。
【請求項5】
前記コア基板のフィルドビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層化・高密度化された多層プリント配線板であって、コア基板にフィルドビア、ビルドアップ層に3段以上のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器用途のプリント配線板に搭載される半導体パッケージ部品について、高速通信システムを搭載する必要性がある。それらプリント配線板に搭載される半導体パッケージ部品はBGAまたはLGA、PGAタイプのプロセッサであり、パッケージ部品サイズの大型化が進み、同時に実装端子のピン数増加と狭ピッチも進んでいるため、車載向けの多層プリント配線板においても、さらなる高多層構造、高密度配線の要求が求められている。
【0003】
また、半導体パッケージ部品に合わせて、プリント配線板の回路設計仕様や構造が決められる。すなわち、部品端子が狭ピッチ化され、端子数も多ピン化となり、サイズも大型化された高機能な半導体パッケージ部品を複数個搭載するには、実装側のプリント配線版のランド端子間の回路引き回しのために、ビルドアップ層の多段化とともに、層間接続には複数層間がスタックされたビアや、ビアランドの小径化、回路配線の微細化技術が必要不可欠となる。
特に、ビアの多段スタック構造については、ビアランドの小径化に伴い、ビア径を小径化しつつ、接続信頼性を確保しなければならない。
【0004】
従前より、民生機器のモバイル機器等の高機能製品に用いられる多層プリント配線板については、狭ピッチかつ多ピン化の半導体パッケージ部品が複数個搭載されている。当該多層プリント配線板では、薄い絶縁層(厚み40μm以下)かつ薄い導体層(厚み25μm以下)を用いることで、微細な回路配線と小径ビアの多段化構造による高密度化が実現されている。当該薄い絶縁層を構成するガラスクロスにおいては、小径フィラメントを使用した材料(ガラスクロス厚み21μm以下:IPC規格では♯1027以下)が使用される。
【0005】
一方、車載や産業機器向けの多層プリント配線板では、アクチェータやモータ類の制御向けに、パワー半導体の搭載も必要となる。そのため、高電流かつ高電圧の仕様に合わせて、ビルドアップ層の絶縁層厚は60μm以上となることで、ガラスクロス厚は25μm以上、導体厚は35μm以上の設計が必要である。
以下、図11を用いて、斯かる設計の多層プリント配線板において、3段以上のスタックされたビアを形成した例を説明する。
【0006】
図11において、500は多層プリント配線板で、上部からレーザにて加工を行った有底穴に銅めっきにてフィリングを行ったフィルドビア4を有するコア基板1と、当該コア基板1の上下に積層された絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層5と、当該フィルドビア4の直上及び直下に形成された、当該ビルドアップ層5における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビア8とを備えている。当該スタックビア8は、レーザ加工条件や銅めっきの付き回り等を考慮して、ビアのボトム(B)径がビアのトップ(T)径に比べて小さいテーパ形状に形成され、ビア底部とビア8の下側となるランド(受けランド)との接触面積、及びビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積は、いずれもビアの上部と当該ビアの上部導体層との接触面積より小さくなっている。コア基板1に銅めっきにてフィリングを行ったフィルドビア4も同様にビアのボトム(Ba)径がビアのトップ(Ta)径に比べて小さいテーパ形状に形成され、ビア底部とコア基板1の下側の銅箔(受けランド)との接触面積、及びビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積は、いずれもビアの上部と当該ビアの上部導体層との接触面積より小さくなっている。
【0007】
しかし、ビアの形状がビアのボトム(B、Ba)径がビアのトップ(T、Ta)径に比べて小さいテーパ形状であると、過酷な環境にて使用されることを想定した加速試験(信頼性試験)、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃以上⇔低温-55℃以下、1000サイクル)を実施した際に、コア基板の銅めっきにてフィリングを行ったフィルドビアと接続するビア底部や、その一段上のビア底部からクラックが進展し、ビア底部が破断する問題があった。これは、ビルドアップ層の絶縁層厚みが厚くなる(60μm以上、特に70~80μm以上)ことによって、Z軸方向の線膨張が大きくなり、冷熱衝撃試験においては高温125℃以上⇔低温-55℃以下の温度差による材料の収縮の影響で、より小径のビア底部に応力が集中した際に耐え切れなくなることが原因と考えられる。尚、ビルドアップ層の絶縁樹脂層の厚みが40μm以下の場合、ビア径が小径化でビアの形状がテーパ形状でもZ軸方向の熱膨張係数が小さく、ビア底部の接続面積がトップ径に比べて小さくても破断する恐れはない。
【0008】
特許文献1には、コア基板にベリードホールと蓋めっきを備え、蓋めっき上下層に、4段スタックビアを配置した多層樹脂配線基板が開示されている。当該多層樹脂配線基板では、スタックビアのコア基板から数えて2段目ビアホールをシフトして配置することによりビア導体に対する応力集中を回避し、スタックビアへのクラックを抑制する。しかし、スタックビアの一部をシフトすることで、配線回路の迂回によりスタックビア本来の高密度化が妨げられるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-91737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、スタックビアへの応力の掛かり方について検討したところ、コア基板のビア底部、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビア底部及びスタック数の真ん中に位置するビア底部まで大きな応力が掛かることが分かった。例えば、3段スタックされたビアの場合、コア基板のフィルドビア底部、及びコア基板側から数えて1段目にスタックされたビア底部と2段目にスタックされたビア底部に応力が掛かることが確認された。同様に5段スタックされたビアの場合、コア基板のフィルドビア底部、及びコア基板側から数えて1段目にスタックされたビア底部及びスタックされた数の真ん中に位置する3段目のビア底部までに大きな応力が掛かることが確認された。
より具体的に説明すると、3段以上のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板では、コア基板のフィルドビア底部及びコア基板との接続部分である1段目にスタックされたビア底部に大きな応力が掛かることは言うまでもないが、スタックされたビア数の真ん中に位置する段数のビアまで1段目にスタックされたビア底部に近い応力が掛かる。
そのため、3段以上のスタックされたビアの出来栄えによっては、冷熱衝撃試験等の加速試験を実施した際に、例えば、3段スタックされたビアではコア基板のフィルドビアの底部、及びコア基板側から数えて1段目にスタックされたビア底部ではなく、真ん中に位置する2段目のビア底部に亀裂が発生することもあった。同様に5段スタックされたビアでは、真ん中の3段目のビア底部に亀裂が発生することもあった。コア基板のフィルドビアにスタックされた一段目のビア底部の亀裂の発生頻度は、コア基板のフィルドビアの上下にスタックされるビアのうち、上側にスタックされたビアの亀裂が顕著であるが、スタックされた真ん中に位置するビアにおいては、上下の差はないといった結果を得ている。
また、熱応力解析シミュレーションによる構造解析にても同様な結果が得られている。
【0011】
特に、当該ビア構造での接続は、接続部を含めた断面積が一番小さくなる部位、すなわちビア底部での破断が最も早く発生することが確認される。当該ビア底部は、受けランド側のめっき銅とビアめっき銅との金属結合にて強固に接続されているが、接合界面には無電解銅めっきや、無電解銅めっき加工時の製造プロセス上必要となるパラジウム触媒等のめっき銅とは異種金属の吸着物や析出物層が介在することも接続強度を低下させる要因の1つとなる。
【0012】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、3段以上のスタックされたビアのビア底部の破断を抑えた多層プリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、ビアに掛かる応力を分散させビア底部に応力を集中させない構造として、ビア底部の断面積を拡大した構造体にすることによって接続信頼性が向上することが分かった。そしてさらに検討した結果、ビルドアップ層の層間樹脂絶縁層として内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層を使用すると共に、3段以上のスタックされたビアのうち所定の位置のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上に形成すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、フィルドビアを有するコア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから真ん中に位置するビアまで又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多層プリント配線板によれば、ビルドアップ層の層間樹脂絶縁層として内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層が用いられているので、強い剛性と低膨張が確保され、絶縁樹脂層や導体層の剥離がない。また、3段以上のスタックされたビアのうち所定の位置のビアのビアボトム径とビアトップ径とが略同一径であるか、或いはビアボトム径の方が大きいため、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃以上⇔低温-55℃以下、1000サイクル)を実施した際にビアに掛かる応力、及びビア底部の金属結合部に掛かる応力の偏りを緩和することができ、ビア底部の破断を抑え、接続信頼性を向上させることができる。特に高温側の温度条件を130℃以上、特には150℃にて試験した場合は、顕著に信頼性の効果が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明多層プリント配線板の第1の実施の形態を示す概略断面説明図。
図2】本発明多層プリント配線板の第2の実施の形態を示す概略断面説明図。
図3図2の多層プリント配線板におけるスタックされたビアの形状を説明するための要部拡大断面図。
図4図2の多層プリント配線板におけるスタックされたビアの変形例を説明するための要部拡大断面図。
図5】本発明多層プリント配線板の第3の実施の形態を示す概略断面説明図。
図6】本発明多層プリント配線板の第4の実施の形態を示す概略断面説明図。
図7】ビアボトム径がビアトップ径と略同一径以上であるスタックされたビアの位置を説明するための説明図。
図8】つづみ状のビアを持つコア基板の絶縁層とビルドアップ層の絶縁樹脂層に、ANSIグレードFR-4の基材を用いた場合の概略断面説明図。
図9】つづみ状のビアを持つコア基板の絶縁層とビルドアップ層の絶縁樹脂層に、ガラスクロスと樹脂の比率を変更し、意図的に薄いガラスクロスを層間に用いた場合の絶縁層5a概略断面説明図。
図10】つづみ状のビアを持つコア基板の絶縁層とビルドアップ層の絶縁樹脂層に、低損失絶縁材料を絶縁樹脂で挟み込んだ場合の絶縁樹脂層の概略断面説明図。
図11】従来技術の多層プリント配線板の形態を示す概略断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0018】
まず、図1を用いて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1において、100は多層プリント配線板で、フィルドビア2を有するコア基板1と、当該コア基板1の上下に積層された絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層5と、当該ビルドアップ層5における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビア6とから構成されている。
図1に示したように、当該コア基板1は両面基板で、円筒形状のフィルドビア2は、例えば、コア基板1の上部からレーザにて加工を行った有底穴に銅めっきにてフィリングを行って形成される。フィルドビア2は、ビアボトム(Ba)径とビアトップ(Ta)径とが略同一径である。
この第1の実施の形態では、ビルドアップ層6の絶縁樹脂層として、内部にガラス繊維及び/又は無機フィラーを有する絶縁樹脂層が用いられている。
例えば、当該内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層を形成する絶縁材料のTg(TMA)は150℃未満、線膨張係数(TMA)のα1は、23から40ppm/℃であり、α2は、140から180ppm/℃の範囲である。また、ガラス繊維は、IPC規格#1080、厚さ0.055mm、質量47g/m2である。Tg(TMA)は、133℃から150℃未満のものが適宜使用される。
絶縁樹脂層の中には、適宜、無機フィラーが含まれていても構わない。無機フィラーが含まれることによって、絶縁樹脂層が低膨張化し、絶縁樹脂層の剥離が抑制される。
無機フィラーとしては、シリカ、マイカ、ホウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナなどが適宜使用される。
【0019】
また、当該3段以上のスタックされたビア6は、コア基板1のフィルドビア2の直上及び直下に形成され、いずれのビアも円筒形状を呈し、ビアのボトム(B)径とビアのトップ(T)径とが略同一径である。これによって、ビルドアップ層の絶縁層厚みが厚い(60μm以上、特に70~80μm以上)場合でも、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃以上⇔低温-55℃以下、1000サイクル)を実施した際にビアに掛かる応力、及びビア底部の金属結合部に掛かる応力の偏りが緩和されるので、ビア底部の破断を抑えることが可能となる。
【0020】
続いて、図2及び図3を用いて本発明の第2の実施の形態を説明する。
図2において、200は多層プリント配線板で、コア基板のつづみ形状のフィルドビア3、3段以上のスタックされたビアとして、つづみ形状のビア7が形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。当該フィルドビア3及びビア7は、ビアボトム(Ba、B)径とビアトップ(Ta、T)径とが略同一径である。
図3に示したように、当該フィルドビア3及びビア7は、それぞれビア底部の断面積(ビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積)9は、ビア中間部の断面積10より大きくなっている。これによって、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビア底部の破断を抑制することが可能となる。同様に、コア基板のフィルドビア、及び1段目にスタックされたビアと近い応力が掛かるスタックされたビア数の真ん中に位置する段数のビア底部の破断を抑制することが可能となる。
【0021】
この第2の実施の形態では、ビア底部の断面積(ビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積)9と、ビアトップの断面積(ビアのトップと当該ビアの上部導体層との接触面積)11は同じ面積であるが、図4に示すように、ビアボトム径がビアトップ径より大きい径となるようにビアを形成し、ビア底部の断面積(ビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積)9を、ビアトップの断面積(ビアのトップと当該ビアの上部導体層との接触面積)11より大きくしてもよい。尚、この時の、ビア中間部の断面積10とビアトップの断面積11の大きさは、ビア中間部の断面積10よりビアトップの断面積11が大きい構成となる。
【0022】
続いて、図5を用いて本発明の第3の実施の形態を説明する。
図5において、300は多層プリント配線板で、3段以上のスタックされたビアとして、ビア径の違う2種類の円筒形状のビア6aと6が形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。
ここで、図5においてはビルドアップ層のスタック数は4段と図示している。
当該ビア6a、6は、それぞれビアボトム径とビアトップ径とが略同一径であるが、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから3段目のビアまで、すなわち1段目、2段目及び3段目のビア6のビアボトム径が、4段目に位置するビア6aのビアボトム径より大きくなっている。
【0023】
続いて、図6を用いて本発明の第4の実施の形態を説明する。
図6において、400は多層プリント配線板で、コア基板のつづみ形状のフィルドビア3、3段以上のスタックされたビアとして、つづみ形状のビア7と、円筒形状のビア6aの3種類のビアが形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。
ここでも、図6においてはビルドアップ層のスタック数は4段として図示している。
コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから3段目のビアまで、すなわち1段目、2段目及び3段目のビア7までのビアボトム径が、ビアトップ径より大きくなっている。
この第4の実施の形態では、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから3段目に位置するビア7までのビアボトム径は、4段目のビア6aのビアボトム径より大きくなっている。
【0024】
第3及び第4の実施の形態では、ビア径の違う2種類の「円筒形状」のビアを形成した例と、「つづみ形状」のビアと「円筒形状」のビアの2種類のビアを形成した例を用いて説明してきたが、ビアの組み合わせはこれに限らず、ビア径の違う3種類の「円筒形状」のビア、ビア径の違う2種類の「円筒形状」のビアと「つづみ形状」のビア等任意に選択することができる。
また、コア基板のフィルドビアと、3段以上のスタックされたビアとの形状は同一形状の例を用いて説明してきたが、異なった形状であってもよく、任意に選択することができる。
【0025】
続いて、図7を用いてスタックされたビアの数に応じたビアの形状について説明する。
図1、2、5及び6では、スタックされたビアの全てのビアについて、ビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上に形成した例を示しているが、本発明においては、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアからスタックされたビア数の真ん中に位置するビアまでのビアのビアボトム径が、又は、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアからn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上であればよい。
具体的には、図7に示したように、スタックされたビア数が奇数段の場合、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアからスタックされたビア数の真ん中に位置するビアまでのビアのビアボトム径がビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
例えば、3段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから2段目に位置するビアまで、すなわち1段目及び2段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
5段スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから3段目に位置するビアまで、すなわち1段目、2段目及び3段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
7段スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから4段目に位置するビアまで、すなわち1段目、2段目、3段目及び4段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
さらに、5段スタックされたビアは、コア基板側から数えて4段目に位置するビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。
7段スタックされたビアは、コア基板側から数えて5段目に位置するビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。
これらの対策により熱衝撃試験が3000サイクル要求された場合や、冷熱衝撃試験の高温側の温度条件が130℃以上の要求になる場合に効果がある。
【0026】
他方、スタックされたビア数が偶数段の場合、少なくとも、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアからスタックされたビア数の真ん中に位置するビアまで、又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径がビアトップ径と略同一径かそれ以上である。スタックされたビア数が偶数段の場合、スタックされたビア数の真ん中に位置するビアは2段分が該当する。本発明においては、真ん中に位置する2つのビアのうち、どちらか一方のビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすればよい。より好ましくは、コア基板に近い方のビア、すなわちn-(n/2)(nは偶数の段数)段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にする。
例えば、4段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから2段目(4-(4/2)段目)に位置するビアまで、すなわち1段目及び2段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
6段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから3段目(6-(6/2)段目)に位置するビアまで、すなわち1段目、2段目及び3段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
8段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目にスタックされたビアから4段目(8-(8/2)段目)に位置するビアまで、すなわち1段目、2段目、3段目及び4段目にスタックされたビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
さらに、6段スタックされたビアは、コア基板側から数えて5段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。
8段スタックされたビアは、コア基板側から数えて6段目に位置するビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。
これらの対策により熱衝撃試験が3000サイクル要求された場合や、冷熱衝撃試験の高温側の温度が130℃以上の要求になる場合に効果がある。
本発明を説明するに当たって、8段スタックされたビアまでについて説明したが、ビアのスタック数はこれに限らず任意に選択することができる。
【0027】
ここで、本発明の3段以上スタックされたビアの形状とビルドアップ層5(絶縁樹脂層)との関係を図8から図10を用いて説明する。
【0028】
図8に示したように、本発明の3段以上スタックされたビアとしてつづみ形状のビア7が形成される場合、ビルドアップ層5の絶縁樹脂層としてANSIグレードFR-4の基材を用いることで当該形状のビアを好適に形成することができる。
【0029】
また、つづみ形状のビアを好適に形成するためには一般的な絶縁材料を用いて、レーザの加工条件(出力、加工周波数、マスク、エネルギー密度、ショット数等)やデスミアの加工条件(膨潤及び過マンガン酸工程の処理時間の調整等)を工夫することで成り立つが、その他にも材料特性や材料構成を工夫することでも形成することが可能となる。
例えば、図9に示したように、ビルドアップ層5に使用されるプリプレグのガラスクロスと樹脂の比率を変更し(樹脂比率78%以上)、意図的に薄いガラスクロスをビルドアップ層5aにすることで、つづみ形状のビアの形成性を向上させることが可能となる。また、通常のプリプレグより、伝送損失が改善され特性インピーダンスが安定するためより好ましい。
【0030】
また、図10に示したように、ビルドアップ層5に使用される低損失絶縁材料5c(テフロン系)を絶縁樹脂5dで挟み込んだビルドアップ層5bにすることで、つづみ形状のビアの形成性を向上させることが可能となる。また、伝送損失が改善され特性インピーダンスが安定するためより好ましい。この場合、デスミアプロセスでの樹脂エッチングレートが低損失材料の1.3倍以上の絶縁樹脂を用いる必要があり、上記低損失絶縁材料5cはガラスクロスが含まれないものが電気特性上好ましい。絶縁樹脂5dには、無機フィラーが含まれている。無機フィラーとしては、シリカ、マイカ、ホウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナなどが含まれる。
図8から図10を用いて説明した通り、3段以上スタックされたビアの形状とビルドアップ層の関係について、説明を行ったが、コア基板のつづみ形状のフィルドビアとコア基板の関係についても、同様な効果が期待できる。
【0031】
続いて、3段以上のスタックされたビアの形成例について説明する。
以下のビア形状のビア加工条件を検討した。
・円筒形:円筒形の形状(トップ径とボトム径を近似)をしたビア加工。
・つづみ状:上記ビア径において、つづみ状のビア形状を得る加工。
・円筒形+ボトム径大:トップ径よりややボトム径を大きくしたビア加工。
・つづみ状+ボトム径大:上記ビア径において、つづみ状のビア形状を得る加工。
【0032】
レーザ加工条件としては、レーザ加工装置にて、出力、加工周波数、マスク、その他を調整して加工点エネルギー密度を調整することと、加工ショット数の条件を振り、最適となる条件を導き出した。一般形状(テーパ形状)の加工条件から、以下の各水準を振ってレーザ加工を実施した。
A・エネルギー密度アップ
B・ショット数アップ
C・1ショットあたりのエネルギーを下げた条件で、ショット数アップの組み合わせ
【0033】
レーザ加工結果としては、A・B・C各条件にて、以下X・Y・Zの加工水準で、目的とした形状を得ることができた。
X・エネルギー密度は10~30%アップするレーザ加工条件
Y・ショット数 1.2倍~2.0倍(構造毎の基準ショット数の最小から最大値)打つレーザ条件
Z・1ショット以降の、レーザショットにおいて、1ショットエネルギーを10~20%下げた条件でショット数を1.2~2.5(構造毎の基準ショット数の最小から最大値)倍多く打つレーザ条件
すなわち、通常条件より1ショットのエネルギーを10~20%ダウンしたレーザショットを通常加工の1.2~2.5倍のショット数で加工することにより上記形状のビアを形成することができた。
通常加工条件については、板厚、基材の種類、穴径によっても異なる為、通常加工条件とした。
【0034】
例1
ガラスクロス厚み55μmのプリプレグを積層した層間厚70μmの絶縁層に、レーザ加工によりトップとボトムのビア径125μmのつづみ形状のビア加工を実施した。
1ショット目の条件は銅箔貫通用のエネルギーとし、2ショット以降は、1ショット目の条件に対して、パルス幅を20%下げエネルギーを下げた条件を3ショット、計4ショットにて加工を行い、ビアボトム径とビアトップ径とが略同一径のつづみ形状のビアを得た。
更に、上記4ショットの条件に加えてパルス幅を更に10%下げたエネルギーにて追加ショットを行うことでも安定した形状が得られる。
【0035】
例2
例1と同様の条件で、ガラスクロス厚み55μmのプリプレグを積層した層間厚70μmの絶縁層に、レーザ加工によりトップとボトムのビア径125μmのつづみ形状のビア加工を実施した。その後、レジンスミア及びボトム銅箔上の炭化物を除去するために、水平搬送方式の装置又はバーチカル方式の装置を用いて、膨潤処理、過マンガン処理、還元処理の3工程でなる過マンガン酸デスミア工程にてデスミア処理を行った。水平搬送方式の装置では、通常の加工条件を2回処理した。バーチカル方式の装置では、一般製品の処理条件から膨潤処理と過マンガン酸処理時間を2.25倍に伸ばした処理を行った。具体的には、膨潤処理4分、過マンガン酸処理4分、還元処理5分といった一般条件から、膨潤処理9分、過マンガン酸処理9分、還元処理5分といった条件に変更した。
【0036】
例3
ガラスクロス厚み55μmのプリプレグを積層した層間厚70μmの絶縁層に、固体レーザ発振器を用いたUVレーザ加工装置を用いてトップとボトムのビア径125μmのつづみ形状のビア加工を実施した。その後、レジンスミア及びボトム銅箔上の炭化物を除去するために、水平搬送方式の装置又はバーチカル方式の装置を用いて、膨潤処理、過マンガン処理、還元処理の3工程でなる過マンガン酸デスミア工程にてデスミア処理を行った。
【符号の説明】
【0037】
1:コア基板
2:銅めっきにてフィリングされたコア基板の円筒形状のフィルドビア
3:銅めっきにてフィリングされたコア基板のつづみ形状のフィルドビア
4:銅めっきにてフィリングされたコア基板のテーパ形状のフィルドビア
5:ビルドアップ層
5a:ビルドアップ層(ガラスクロスが薄く樹脂比率が78%以上)
5b:ビルドアップ層(低損失絶縁材料を絶縁樹脂で挟み込んだ)
5c:低損失絶縁材料
5d:絶縁樹脂
6:3段以上のスタックされたビルドアップ層の円筒形状のビア
6a:3段以上のスタックされたビルドアップ層の円筒形状のビア(6よりも小径)
7:3段以上のスタックされたビルドアップ層のつづみ形状のビア
8:3段以上のスタックされたビルドアップ層のテーパ形状のビア
9:ビア底部の断面積
10:ビア中間部の断面積
11:ビアトップの断面積
12:受けランド(コア基板下側の銅箔)
B:ビアボトム
Ba:コア層のビアトップ
T:ビアトップ
Tb:コア層のビアボトム
100、200,300、400、500:多層プリント配線板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11