IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特開2025-6298弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ
<>
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図1
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図2
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図3
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図4
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図5
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図6
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図7
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図8
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図9
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図10
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図11
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図12
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図13
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図14
  • 特開-弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006298
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H03H9/25 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107005
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】五ノ井 崇
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 凌平
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA21
5J097BB15
5J097CC05
5J097EE08
5J097GG03
5J097GG04
5J097KK01
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】共振周波数および反共振周波数の両方の周波数温度特性を向上させることが可能な弾性波デバイスを提供する。
【解決手段】弾性波デバイス100は、基板10と、基板10上に設けられ、ニオブ酸リチウム層21と、基板10とニオブ酸リチウム層21との間に設けられたタンタル酸リチウム層22と、を有する圧電層20と、ニオブ酸リチウム層21上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指33を各々備え、一方の櫛型電極32の複数の電極指33の平均ピッチPがニオブ酸リチウム層21の上面からタンタル酸リチウム層22の下面までの距離T3以上である一対の櫛型電極32とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、ニオブ酸リチウム層と、前記基板と前記ニオブ酸リチウム層との間に設けられたタンタル酸リチウム層と、を有する圧電層と、
前記ニオブ酸リチウム層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記ニオブ酸リチウム層の上面から前記タンタル酸リチウム層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、
前記タンタル酸リチウム層は回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、
前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が0°以上55°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は0%より大きく36%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が55°以上70°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は5%より大きく54%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が70°以上80°以下の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく85%以下である、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、
前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、
前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が0°以上30°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は5%より大きく24%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が30°以上50°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく27%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が50°以上60°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく30%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が60°以上70°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は15%より大きく34%以下であり、かつ、
前記ニオブ酸リチウム層のカット角が70°以上80°以下の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は15%より大きく50%以下である、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に設けられ、タンタル酸リチウム層と、前記基板と前記タンタル酸リチウム層との間に設けられたニオブ酸リチウム層と、を有し、前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記タンタル酸リチウム層および前記ニオブ酸リチウム層それぞれの厚さの割合は共に10%以上である圧電層と、
前記タンタル酸リチウム層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記タンタル酸リチウム層の上面から前記ニオブ酸リチウム層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイス。
【請求項5】
前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、
前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、
前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が0°以上22.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は10%以上40%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が22.5°以上37.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は10%以上51%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が37.5°以上50°以下では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は13%以上85%以下である、請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、
前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、
前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が0°以上10°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上20.5%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が10°以上22.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上26%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が22.5°以上27.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上34%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が27.5°以上35°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上41%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が35°以上45°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は21%以上46%以下であり、かつ、
前記タンタル酸リチウム層のカット角が45°以上50°以下の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は25.5%以上50%以下である、請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層は直接接合されている、請求項1または4に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に設けられ、圧電体からなる第1層と、前記基板と前記第1層との間に設けられた圧電体からなる第2層と、を有し、前記第1層および前記第2層各々の層上に一対の櫛型電極が設けられたとした場合において前記第1層および前記第2層のうちの一方の層での共振周波数の周波数温度係数が他方の層での共振周波数の周波数温度係数より大きく、かつ、前記一方の層での反共振周波数の周波数温度係数が前記他方の層での反共振周波数の周波数温度係数より小さく、前記第1層と前記第2層の合計の厚さを100%とした場合に、前記第1層および前記第2層それぞれの厚さの割合は共に10%以上である圧電層と、
前記第1層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記第1層の上面から前記第2層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイス。
【請求項9】
請求項1、4、または8に記載の弾性波デバイスを備えるフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルタを備えるマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波デバイスとして弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器を形成する圧電層を基板に張り付ける構成が知られている。スプリアスを抑制するために、基板上に設けられた圧電層の厚さを弾性波の波長以下にすることが知られている(例えば特許文献1)。周波数温度特性の向上と損失の抑制のため、基板と圧電層との間に酸化シリコン膜からなる温度補償層を設け、温度補償層と圧電層の合計厚さを弾性波の波長の2倍以下とすることが知られている(例えば特許文献2)。また、周波数温度特性の向上と損失の抑制のために、圧電層の下面に圧電層より横波の音速が速い中間層を設け、中間層の下面に温度補償層を設ける構成が知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-34363号公報
【特許文献2】特開2019-201345号公報
【特許文献3】特開2020-123855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2および特許文献3では、基板と圧電層の間に温度補償層を設けることで周波数温度特性の向上を図っている。しかしながら、弾性表面波共振器において、共振周波数の周波数温度係数と反共振周波数の周波数温度係数とは異なる。このため、共振周波数の周波数温度係数と反共振周波数の周波数温度係数とに差が生じることになり、特許文献2および特許文献3に記載の発明では、共振周波数または反共振周波数のどちらか一方の周波数温度係数を改善できても、共振周波数および反共振周波数の両方の周波数温度係数を改善することは難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振周波数の周波数温度係数と反共振周波数の周波数温度係数との差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、ニオブ酸リチウム層と、前記基板と前記ニオブ酸リチウム層との間に設けられたタンタル酸リチウム層と、を有する圧電層と、前記ニオブ酸リチウム層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記ニオブ酸リチウム層の上面から前記タンタル酸リチウム層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、前記タンタル酸リチウム層は回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が0°以上55°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は0%より大きく36%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が55°以上70°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は5%より大きく54%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が70°以上80°以下の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく85%以下である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が0°以上30°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は5%より大きく24%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が30°以上50°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく27%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が50°以上60°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は10%より大きく30%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が60°以上70°未満の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は15%より大きく34%以下であり、かつ、前記ニオブ酸リチウム層のカット角が70°以上80°以下の場合では前記ニオブ酸リチウム層の厚さの割合は15%より大きく50%以下である構成とすることができる。
【0009】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、タンタル酸リチウム層と、前記基板と前記タンタル酸リチウム層との間に設けられたニオブ酸リチウム層と、を有し、前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記タンタル酸リチウム層および前記ニオブ酸リチウム層それぞれの厚さの割合は共に10%以上である圧電層と、前記タンタル酸リチウム層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記タンタル酸リチウム層の上面から前記ニオブ酸リチウム層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイスである。
【0010】
上記構成において、前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記タンタル酸リチウム層のカット角が0°以上22.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は10%以上40%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が22.5°以上37.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は10%以上51%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が37.5°以上50°以下では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は13%以上85%以下である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記タンタル酸リチウム層はカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、前記ニオブ酸リチウム層は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層であり、前記タンタル酸リチウム層と前記ニオブ酸リチウム層の合計の厚さを100%とした場合に、前記タンタル酸リチウム層のカット角が0°以上10°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上20.5%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が10°以上22.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上26%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が22.5°以上27.5°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上34%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が27.5°以上35°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は12%以上41%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が35°以上45°未満の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は21%以上46%以下であり、かつ、前記タンタル酸リチウム層のカット角が45°以上50°以下の場合では前記タンタル酸リチウム層の厚さの割合は25.5%以上50%以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記ニオブ酸リチウム層と前記タンタル酸リチウム層は直接接合されている構成とすることができる。
【0013】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、圧電体からなる第1層と、前記基板と前記第1層との間に設けられた圧電体からなる第2層と、を有し、前記第1層および前記第2層各々の層上に一対の櫛型電極が設けられたとした場合において前記第1層および前記第2層のうちの一方の層での共振周波数の周波数温度係数が他方の層での共振周波数の周波数温度係数より大きく、かつ、前記一方の層での反共振周波数の周波数温度係数が前記他方の層での反共振周波数の周波数温度係数より小さく、前記第1層と前記第2層の合計の厚さを100%とした場合に、前記第1層および前記第2層それぞれの厚さの割合は共に10%以上である圧電層と、前記第1層上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を各々備え、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチが前記第1層の上面から前記第2層の下面までの距離以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイスである。
【0014】
本発明は、上記に記載の弾性波デバイスを備えるフィルタである。
【0015】
本発明は、上記に記載のフィルタを備えるマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、共振周波数の周波数温度係数と反共振周波数の周波数温度係数との差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図3図3は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、比較例における周波数温度係数のシミュレーション結果を示す図である。
図5図5(a)および図5(b)は、LN層とLT層を備える圧電層を用いた場合における周波数温度係数のシミュレーション結果を示す図である。
図6図6は、LN層とLT層の厚さを固定したときのLT層のカット角に対するΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。
図7図7(a)および図7(b)は、LT層を20°または80°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層とした場合のΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。
図8図8(a)および図8(b)は、LN層のカット角および厚さの割合の適切な範囲を示す図である。
図9図9(a)から図9(d)は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図10図10(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図、図10(b)は、図10(a)のA-A断面図である。
図11図11は、LT層とLN層の厚さを固定したときのLN層のカット角に対するΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。
図12図12(a)および図12(b)は、LN層を20°または80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層とした場合のΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。
図13図13(a)および図13(b)は、LT層のカット角および厚さの割合の適切な範囲を示す図である。
図14図14は、実施例3に係るフィルタの回路図である。
図15図15は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0019】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。図1(a)では、図の明瞭化のために、IDT(Interdigital Transducer)31および反射器35にハッチングを付している。電極指33の配列方向をX方向、電極指33の延伸方向をY方向、基板10の厚さ方向をZ方向とする。
【0020】
図1(a)および図1(b)に示すように、実施例1に係る弾性波デバイス100は、基板10上に圧電層20が設けられている。圧電層20は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)層21と、基板10とニオブ酸リチウム層21との間に設けられたタンタル酸リチウム(LiTaO)層22と、を備える。以下、ニオブ酸リチウム層21をLN層21と称し、タンタル酸リチウム層22をLT層22と称す。LN層21とLT層22は例えば直接接合されている。この場合、LN層21とLT層22との間に数nm程度のアモルファス層が形成されていてもよい。LN層21の厚さをT1、LT層22の厚さをT2とする。LN層21の上面からLT層22の下面までの距離をT3とする。実施例1では、LN層21とLT層22が直接接合されているため、T3は、T1+T2とほぼ同じであり、圧電層20の厚さにほぼ相当する。
【0021】
LN層21上に弾性波共振器30が設けられている。弾性波共振器30は、IDT31と反射器35とを備える。反射器35はIDT31のX方向の両側に設けられている。IDT31および反射器35は、LN層21上に金属膜36により形成される。
【0022】
IDT31は一対の櫛型電極32を備える。櫛型電極32は、複数の電極指33と、複数の電極指33が接続されたバスバー34と、を備える。一対の櫛型電極32は、電極指33がほぼ互い違いとなるように対向して設けられている。複数の電極指33は圧電層20に弾性表面波(主にSH波)を励振する。複数の電極指33が励振する弾性表面波は主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極32のうちの一方の櫛型電極32の電極指33の平均ピッチPがほぼ弾性表面波の波長λとなる。言い換えると、一対の櫛型電極32の電極指33の平均ピッチDの2倍がほぼ弾性表面波の波長λとなる。反射器35は電極指33が励振した弾性表面波を反射する。圧電層20の上面にIDT31および反射器35を覆う保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。櫛型電極32はダミー電極指を有していてもよい。
【0023】
基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、シリコン基板、水晶基板、石英基板、またはアルミナ基板である。サファイア基板は単結晶Al基板であり、スピネル基板は単結晶または多結晶MgAl基板であり、シリコン基板は単結晶Si基板である。水晶基板は単結晶SiO基板であり、石英基板は多結晶SiO基板であり、アルミナ基板は多結晶Al基板である。
【0024】
LN層21は、単結晶ニオブ酸リチウム層であり、例えば回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である。LT層22は、単結晶タンタル酸リチウム層であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である。
【0025】
金属膜36は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはモリブデン(Mo)を主成分とする膜である。金属膜36とLN層21との間にチタン(Ti)膜またはクロム(Cr)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は金属膜36より薄い。
【0026】
上記の特許文献2(特開2019-201345号公報)に記載されているように、電極指33が励振する弾性表面波は、圧電層20の上面から2.0λ以内を伝搬し、特に圧電層20の上面から1.0λ以内を集中して伝搬する。したがって、弾性表面波のエネルギーがLN層21とLT層22の両方に存在するよう、LN層21の上面とLT層22の下面との間の距離T3を1.0λ以下とする。言い換えると、LN層21の上面とLT層22の下面との間の距離T3を、一方の櫛型電極32の電極指33の平均ピッチPの1.0倍以下とする。平均ピッチPは、IDT31のX方向の長さを電極指33の対数(電極指33の本数の1/2)で除することで算出してもよい。実施例1では、LN層21とLT層22が直接接合されているため、圧電層20の厚さが1.0λ以下となる。圧電層20が薄すぎると、弾性波が励振されなくなるため、LN層21とLT層22の合計の厚さ(T1+T2)は、電極指33の平均ピッチPの0.1倍(0.1λ)以上が好ましく、0.2倍(0.2λ)以上がより好ましい。
【0027】
[製造方法]
図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、上面が平坦な基板10を準備する。基板10の上面の算術平均粗さRaは例えば1nm以下である。基板10の上面とLT層22の下面とを常温にて接合する。このときのLT層22は、図1(a)および図1(b)におけるLT層22より厚い層(基板)である。常温接合は例えば以下の方法により行う。まず、基板10の上面およびLT層22の下面に不活性ガスのイオンビーム、中性ビーム、またはプラズマを照射する。これにより、基板10の上面およびLT層22の下面が活性化する。基板10の上面とLT層22の下面を活性化させた後、基板10の上面とLT層22の下面とを常温にて接合する。これにより、基板10とLT層22とが直接接合する。基板10とLT層22の間には、基板10の材料のアモルファス層とLT層22の材料のアモルファス層とが一体化したアモルファス層が設けられていてもよい。その後、LT層22の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して薄層化し、所望の厚さのLT層22とする。
【0028】
図2(b)に示すように、LT層22の上面とLN層21の下面とを常温にて接合する。このときのLN層21は、図1(a)および図1(b)におけるLN層21より厚い層(基板)である。常温接合は図2(a)と同じ方法により行う。すなわち、LT層22の上面およびLN層21の下面に不活性ガスのイオンビーム、中性ビーム、またはプラズマを照射して活性化させた後、LT層22の上面とLN層21の下面とを常温にて接合する。これにより、LN層21とLT層22とが直接接合する。LN層21とLT層22の間には、LN層21の材料のアモルファス層とLT層22の材料のアモルファス層とが一体化したアモルファス層が設けられていてもよい。その後、LN層21の上面を例えばCMP法により研磨して薄層化し、所望の厚さのLN層21とする。LN層21とLT層22とから圧電層20が形成される。
【0029】
図2(c)に示すように、圧電層20上に、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、金属膜36からなる弾性波共振器30を形成する。これにより、実施例1に係る弾性波デバイス100が形成される。
【0030】
[比較例]
図3は、比較例に係る弾性波デバイス500の断面図である。図3に示すように、比較例に係る弾性波デバイス500は、圧電層120が単結晶ニオブ酸リチウム層または単結晶タンタル酸リチウム層の単層からなる。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0031】
[シミュレーション]
比較例において、圧電層120がニオブ酸リチウム層である場合とタンタル酸リチウム層である場合とにおける周波数温度特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
弾性波の波長λ:1.5μm
IDT31および反射器35:厚さが0.1λのアルミニウム膜
圧電層120:厚さT4が0.6λの回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層、または、厚さT4が0.6λの回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層
基板10:厚さが3λのサファイア基板
温度条件:25℃、85℃
【0032】
図4(a)および図4(b)は、比較例における周波数温度係数(TCF:Temperature Coefficients of Frequency)のシミュレーション結果を示す図である。図4(a)において、横軸は圧電層120のカット角であり、縦軸はTCFである。圧電層120がニオブ酸リチウム層である場合の共振周波数のTCFを黒丸で示し、反共振周波数のTCFを黒三角で示している。圧電層120がタンタル酸リチウム層である場合の共振周波数のTCFを白丸で示し、反共振周波数のTCFを白三角で示している。図4(b)において、横軸は圧電層120のカット角であり、縦軸は反共振周波数のTCFと共振周波数のTCFとの差ΔTCF(ΔTCF=反共振周波数TCF-共振周波数TCF)である。圧電層120がニオブ酸リチウム層である場合を黒丸で示し、タンタル酸リチウム層である場合を白丸で示している。共振周波数のTCFは、温度が25℃から85℃に変化したときの共振周波数の変化量を温度の変化量60℃で除することで算出した。同様に、反共振周波数のTCFは、温度が25℃から85℃に変化したときの反共振周波数の変化量を温度の変化量60℃で除することで算出した。
【0033】
図4(a)に示すように、圧電層120がニオブ酸リチウム層またはタンタル酸リチウム層のいずれの場合であっても、共振周波数および反共振周波数のTCFは負の値であった。共振周波数のTCFの絶対値は、圧電層120がニオブ酸リチウム層である場合(黒丸)は、タンタル酸リチウム層である場合(白丸)に比べて大きかった。一方、反共振周波数のTCFの絶対値は、圧電層120がニオブ酸リチウム層である場合(黒三角)は、タンタル酸リチウム層である場合(白三角)に比べて小さかった。図4(b)に示すように、ΔTCFは、圧電層120がニオブ酸リチウム層(黒丸)である場合は正の値であるのに対し、圧電層120がタンタル酸リチウム層である場合(白丸)は負の値となった。
【0034】
図4(a)および図4(b)から、圧電層120にニオブ酸リチウム層を用いた場合ではTCFは共振周波数の方が反共振周波数より小さく、反対に、タンタル酸リチウム層を用いた場合ではTCFは反共振周波数の方が共振周波数より小さいことが分かる。つまり、ニオブ酸リチウム層とタンタル酸リチウム層は、共振周波数と反共振周波数のTCFの大小関係が反対であることが分かる。したがって、実施例1のように、圧電層20をLN層21とLT層22の積層とすることで、ΔTCFの絶対値を小さくできると考えられる。
【0035】
そこで、実施例1のように、圧電層20をLN層21とLT層22との積層とした場合における周波数温度特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
弾性波の波長λ:1.5μm
IDT31および反射器35:厚さが0.1λのアルミニウム膜
LN層21:厚さT1が0.07λ~0.5λの20°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層
LT層22:厚さT2が0.1λ~0.53λの40°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層
圧電層20の厚さ(T1+T2):0.6λ
基板10:厚さが3λのサファイア基板
温度条件:25℃、85℃
【0036】
図5(a)および図5(b)は、LN層21とLT層22を備える圧電層20を用いた場合における周波数温度係数のシミュレーション結果を示す図である。表1は、LN層21とLT層22を備える圧電層20を用いた場合における周波数温度係数のシミュレーション結果を示す表である。図5(a)において、横軸はLN層21とLT層22の合計の厚さに対するLN層21の厚さの割合であり、縦軸はTCFである。共振周波数のTCFを黒丸で示し、反共振周波数のTCFを白丸で示している。図5(b)において、横軸はLN層21とLT層22の合計の厚さに対するLN層21の厚さの割合であり、縦軸はΔTCFの絶対値である。なお、図5(a)、図5(b)、および表1において、比較のために、LN層21の厚さの割合が0%または100%である場合についても記載している。
【表1】
【0037】
図5(a)、図5(b)、および表1に示すように、LN層21とLT層22とを備える圧電層20を用い、LN層21とLT層22の厚さの比率を適切にすることで、ΔTCFの絶対値を小さくできることが分かる。
【0038】
ニオブ酸リチウム層とタンタル酸リチウム層は異方性材料であるため、カット角によってTCFが変わることが考えられる。そこで、LN層21とLT層22の厚さの比率およびカット角を変えて周波数温度特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。なお、カット角を0°~80°の範囲としたのは、電極指33によって弾性表面波(主にSH波)が励振されるようにするためである。
弾性波の波長λ:1.5μm
IDT31および反射器35:厚さが0.1λのアルミニウム膜
LN層21:厚さT1が0.1λ~0.5λの0°~80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層
LT層22:厚さT2が0.1λ~0.5λの0°~80°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層
圧電層20の厚さ(T1+T2):0.6λ
基板10:厚さが3λのサファイア基板
温度条件:25℃、85℃
【0039】
図6は、LN層21とLT層22の厚さを固定したときのLT層22のカット角に対するΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。図6において、LN層21の厚さは、LN層21とLT層22の合計の厚さに対して16.7%に固定した。図6の横軸はLT層22のカット角であり、縦軸はΔTCFである。図6中の黒丸はLN層21のカット角が0°の場合、白丸は20°の場合、黒三角は60°の場合、白三角は80°の場合の結果である。
【0040】
図4(b)に示したように、ニオブ酸リチウム層ではΔTCFが正の値となり、タンタル酸リチウム層ではΔTCFが負の値となる。ニオブ酸リチウム層はカット角が小さいときにΔTCFが大きくなり、カット角が大きくなるに連れてΔTCFは0に近づく。タンタル酸リチウム層はカット角が小さいときにΔTCFが小さくなり、カット角が大きくなるに連れてΔTCFは0に近づく。したがって、図6に示すように、LN層21のカット角が0°、20°、60°、80°のいずれの場合でも、LT層22のカット角が20°のときにΔTCFは小さな値となり、LT層22のカット角が大きくなるにつれてΔTCFは大きくなった。
【0041】
図7(a)は、LT層22を20°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層とした場合のΔTCF、図7(b)は、LT層22を80°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層とした場合のΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。図7(a)および図7(b)において、横軸はLN層21のカット角であり、縦軸はLN層21とLT層22の合計の厚さに対するLN層21の厚さの割合である。
【0042】
図7(a)および図7(b)に示すように、LT層22が20°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である場合、および、80°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である場合のいずれにおいても、ΔTCFはLN層21のカット角および厚さの割合に対して同じように変化することが分かる。したがって、LT層22のカット角に関わらずに、ΔTCFはLN層21のカット角および厚さの割合に対して同じように変化すると考えられるため、LT層22が20°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である場合の結果を用いて、LN層21のカット角および厚さの割合の適切な範囲を決めることができると考えられる。
【0043】
図8(a)および図8(b)は、LN層21のカット角および厚さの割合の適切な範囲を示す図である。図8(a)は、ΔTCFの絶対値が概ね20ppm/℃以下になる場合の範囲を示している。図8(b)は、ΔTCFの絶対値が概ね10ppm/℃以下になる場合の範囲を示している。
【0044】
図8(a)に示すように、ΔTCFの絶対値が概ね20ppm/℃以下になるようにするには、LN層21のカット角および厚さの割合を以下の表2の範囲内にすることが望ましい。なお、シミュレーションでのLN層21の厚さの割合の最小値は16.7%であるが、等高線から16.7%より小さい場合においてΔTCFが改善すると見積もられる範囲を表2、表3では示している。
【表2】
【0045】
図8(a)および表2のように、
(1)LN層21のカット角が0°以上55°未満の場合、LN層21の厚さの割合は0%より大きく36%以下
(2)LN層21のカット角が55°以上70°未満の場合、LN層21の厚さの割合は5%より大きく54%以下
(3)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合、LN層21の厚さの割合は10%より大きく85%以下
【0046】
図8(b)に示すように、ΔTCFの絶対値を概ね10ppm/℃以下にするには、LN層21のカット角および厚さの割合を以下の表3の範囲内にすることが望ましい。
【表3】
【0047】
図8(b)および表3のように、
(1)LN層21のカット角が0°以上30°未満の場合、LN層21の厚さの割合は5%より大きく24%以下
(2)LN層21のカット角が30°以上50°未満の場合、LN層21の厚さの割合は10%より大きく27%以下
(3)LN層21のカット角が50°以上60°未満の場合、LN層21の厚さの割合は10%より大きく30%以下
(4)LN層21のカット角が60°以上70°未満の場合、LN層21の厚さの割合は15%より大きく34%以下
(5)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合、LN層21の厚さの割合は15%より大きく50%以下
【0048】
[変形例]
図9(a)から図9(d)は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。図9(a)に示すように、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイス100aは、LN層21とLT層22との間に接合層40が設けられている。接合層40は、例えば多結晶または非晶質であり、酸化アルミニウム層、窒化シリコン層、窒化アルミニウム層、またはシリコン層である。接合層40はこれらの積層でもよい。接合層40の厚さT5は例えば1nm~50nmである。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。このように、LN層21とLT層22が接合層40により接合されていてもよい。
【0049】
図9(b)に示すように、実施例1の変形例2に係る弾性波デバイス100bは、基板10と圧電層20との間に温度補償層41が設けられている。温度補償層41は、例えば単結晶、多結晶、または非晶質であり、ノンドープまたはフッ素等がドープされた酸化シリコン層、ガラス層、水晶層である。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであるため説明を省略する。温度補償層41の厚さT6は、温度補償の観点から、電極指33の平均ピッチPの0.2倍(0.2λ)以上が好ましい。温度補償層41が厚すぎると、損失が大きくなる。よって、温度補償層41の厚さT6は、電極指33の平均ピッチPの1.0倍(λ)以下が好ましい。また、上述したように、電極指33が励振する弾性表面波は圧電層20の上面から2.0λ以内を伝搬する。したがって、温度補償層41が温度補償の機能を発揮するために、圧電層20の上面と温度補償層41の下面との間の距離(T1+T5+T2+T6)は、電極指33の平均ピッチPの2.0倍(2.0λ)以下が好ましい。
【0050】
図9(c)に示すように、実施例1の変形例3に係る弾性波デバイス100cは、温度補償層41と圧電層20との間に接合層42が設けられている。接合層42は、例えば多結晶または非晶質であり、酸化アルミニウム層、窒化シリコン層、窒化アルミニウム層、またはシリコン層である。接合層42はこれらの積層でもよい。接合層42の厚さT7は例えば1nm~50nmである。その他の構成は実施例1の変形例2と同じであるため説明を省略する。このように、温度補償層41と圧電層20が接合層42により接合されていてもよい。
【0051】
図9(d)に示すように、実施例1の変形例4に係る弾性波デバイス100dは、基板10の上面の表面粗さが大きく、基板10と温度補償層41との間に絶縁層からなる中間層43が設けられている。中間層43は、例えば非晶質であり、酸化アルミニウム層である。中間層43の厚さT8は、例えば電極指33の平均ピッチPの1.0倍(λ)以上である。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであるため説明を省略する。
【0052】
以上のように、実施例1およびその変形例によれば、基板10上に設けられた圧電層20は、LN層21と、基板10とLN層21との間に設けられたLT層22と、を備える。LN層21の上面からLT層22の下面までの距離T3は1.0λ以下であり、電極指33が励振する弾性表面波はLN層21とLT層22の両方を伝搬する構成となっている。図4(b)のように、ニオブ酸リチウム層ではΔTCFが正の値になるのに対し、タンタル酸リチウム層ではΔTCFが負の値となる。したがって、LN層21とLT層22とを備える圧電層20を用いることで、ΔTCFを0に近づけることができ、共振周波数と反共振周波数の両方のTCFを向上させることが可能となる。
【0053】
また、電気機械結合係数k2を大きくする観点から、回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層のカット角は50°以下の場合が好ましく、40°以下の場合がより好ましい。図4(b)のように、40°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層を用いた場合のΔTCFの絶対値は20ppm/℃より大きくなることから、実施例1においてΔTCFは概ね20ppm/℃以下となる場合が好ましい。したがって、図8(a)および表2のように、LN層21とLT層22の合計の厚さを100%とした場合に、
(1)LN層21のカット角が0°以上55°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を0%より大きく36%以下とすることが好ましい。
(2)LN層21のカット角が55°以上70°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を5%より大きく54%以下とすることが好ましい。
(3)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合ではLN層21の厚さの割合を10%より大きく85%以下とすることが好ましい。
【0054】
ΔTCFの絶対値を小さくする観点から、
(1)LN層21のカット角が0°以上55°未満の場合では、LN層21の厚さの割合は0%より大きく35%以下が好ましく、0%より大きく34%以下がより好ましく、0%より大きく33%以下が更に好ましい。
(2)LN層21のカット角が55°以上70°未満の場合では、LN層21の厚さ割合は7%より大きく52%以下が好ましく、9%より大きく50%以下がより好ましく、11.5%より大きく47.5%以下が更に好ましい。
(3)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合では、LN層21の厚さ割合は10%より大きく83%以下が好ましく、13%より大きく80%以下がより好ましく、16%より大きく77%以下が更に好ましい。
【0055】
また、図4(b)のように、50°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層を用いた場合のΔTCFの絶対値は10ppm/℃より大きい。この点から、実施例1においてΔTCFは概ね10ppm/℃以下となる場合がより好ましい。したがって、図8(b)および表3のように、LN層21とLT層22の合計の厚さを100%とした場合に、
(1)LN層21のカット角が0°以上30°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を5%より大きく24%以下とすることが好ましい。
(2)LN層21のカット角が30°以上50°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を10%より大きく27%以下とすることが好ましい。
(3)LN層21のカット角が50°以上60°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を10%より大きく30%以下とすることが好ましい。
(4)LN層21のカット角が60°以上70°未満の場合ではLN層21の厚さの割合を15%より大きく34%以下とすることが好ましい。
(5)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合ではLN層21の厚さの割合を15%より大きく50%以下とすることが好ましい。
【0056】
ΔTCFの絶対値を小さくする観点から、
(1)LN層21のカット角が0°以上30°未満の場合では、LN層21の厚さの割合は5%より大きく23%以下が好ましく、5%より大きく22.5%以下がより好ましく、5%より大きく22%以下が更に好ましい。
(2)LN層21のカット角が30°以上50°未満の場合では、LN層21の厚さの割合は10%より大きく26%以下が好ましく、10%より大きく25%以下がより好ましく、10%より大きく24%以下が更に好ましい。
(3)LN層21のカット角が50°以上60°未満の場合では、LN層21の厚さの割合は10%より大きく29%以下が好ましく、10%より大きく28%以下がより好ましく、10%より大きく27%以下が更に好ましい。
(4)LN層21のカット角が60°以上70°未満の場合では、LN層21の厚さの割合は15%より大きく31%以下が好ましく、18%より大きく29%以下がより好ましく、20%より大きく27.5%以下が更に好ましい。
(5)LN層21のカット角が70°以上80°以下の場合では、LN層21の厚さの割合は15%より大きく45%以下が好ましく、17.5%より大きく42.5%以下がより好ましく、20%より大きく41.5%以下が更に好ましい。
【0057】
なお、電気機械結合係数k2を大きくする観点からは、回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層のカット角は50°以下の場合が好ましく、40°以下の場合がより好ましい。
【0058】
また、実施例1では、圧電層20のLN層21とLT層22は直接接合されている。これにより、電極指33が励振する弾性表面波がLN層21とLT層22の両方を伝搬し易くなるため、LN層21とLT層22を備える圧電層20を用いることでΔTCFを0に近づけ易くなる。
【実施例0059】
図10(a)は、実施例2に係る弾性波デバイス200の平面図、図10(b)は、図10(a)のA-A断面図である。図10(a)および図10(b)に示すように、実施例2に係る弾性波デバイス200は、基板10上に圧電層20aが設けられている。圧電層20aは、LT層22aと、基板10とLT層22aとの間に設けられたLN層21aと、を備える。LT層22aとLN層21aは例えば直接接合されている。この場合、LT層22aとLN層21aとの間に数nm程度のアモルファス層が形成されていてもよい。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0060】
実施例2に係る弾性波デバイス200は、実施例1に係る弾性波デバイス100と同様な方法により製造することができる。
【0061】
[シミュレーション]
LT層22aとLN層21aの厚さの比率およびカット角を変えて周波数温度特性のシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
弾性波の波長λ:1.5μm
IDT31および反射器35:厚さが0.1λのアルミニウム膜
LT層22a:厚さT1が0.1λ~0.5λの0°~80°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層
LN層21a:厚さT2が0.1λ~0.5λの0°~80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層
圧電層20aの厚さ(T1+T2):0.6λ
基板10:厚さが3λのサファイア基板
温度条件:25℃、85℃
【0062】
図11は、LT層22aとLN層21aの厚さを固定したときのLN層21aのカット角に対するΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。図11において、LT層22aの厚さは、LN層21aとLT層22aの合計の厚さに対して16.7%となるように固定した。図11の横軸はLN層21aのカット角であり、縦軸はΔTCFである。図11中の黒丸はLT層22aのカット角が0°の場合、白丸は20°の場合、白三角は80°の場合の結果である。
【0063】
図11に示すように、LT層22aのカット角が0°、20°、80°のいずれの場合でも、LN層21aのカット角が変わってもΔTCFはほとんど変化しなかった。これは、ニオブ酸リチウムはタンタル酸リチウムよりも僅かに音速が速いため、弾性表面波の変位がLT層22a側に集中し易いことによるものではないかと推察される。
【0064】
図12(a)は、LN層21aを20°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層とした場合のΔTCF、図12(b)は、LN層21aを80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層とした場合のΔTCFのシミュレーション結果を示す図である。図12(a)および図12(b)において、横軸はLT層22aのカット角であり、縦軸はLT層22aとLN層21aの合計の厚さに対するLT層22aの厚さの割合である。
【0065】
回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層では、電気機械結合係数k2を大きくするために、カット角は50°以下であることが好ましい。図12(a)および図12(b)に示すように、LT層22aのカット角が50°以下の場合、LN層21aが20°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である場合、および、80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である場合のいずれにおいても、ΔTCFはLT層22aのカット角および厚さの割合に対して概ね同じように変化することが分かる。また、LN層21aが20°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層の場合では、80°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層の場合に比べて、ΔTCFが0より大きくなる範囲が少し大きいことが分かる。したがって、LN層21aが20°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である場合の結果を用いて、LT層22aのカット角および厚さの割合の適切な範囲を決めることができると考えられる。
【0066】
図13(a)および図13(b)は、LT層22aのカット角および厚さの割合の適切な範囲を示す図である。図13(a)は、ΔTCFの絶対値が概ね20ppm/℃以下になる場合の範囲を示している。図13(b)は、ΔTCFの絶対値が概ね10ppm/℃以下になる場合の範囲を示している。
【0067】
電気機械結合係数k2が大きくなるようにLT層22aのカット角を50°以下にする場合では、図13(a)に示すように、ΔTCFの絶対値を概ね20ppm/℃以下にするには、LT層22aのカット角および厚さの割合を以下の表4の範囲内にすることが望ましい。
【表4】
図13(a)および表4のように、
(1)LT層22aのカット角が0°以上22.5°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は10%以上40%以下
(2)LT層22aのカット角が22.5°以上37.5°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は10%以上51%以下
(3)LT層22aのカット角が37.5°以上50°以下の場合、LT層22aの厚さの割合は13%以上85%以下
【0068】
図13(b)に示すように、ΔTCFの絶対値を概ね10ppm/℃以下にするには、LT層22aのカット角および厚さの割合を以下の表5の範囲内にすることが望ましい。
【表5】
図13(b)および表5のように、
(1)LT層22aのカット角が0°以上10°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は12%以上20.5%以下
(2)LT層22aのカット角が10°以上22.5°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は12%以上26%以下
(3)LT層22aのカット角が22.5°以上27.5°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は12%以上34%以下
(4)LT層22aのカット角が27.5°以上35°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は12%以上41%以下
(5)LT層22aのカット角が35°以上45°未満の場合、LT層22aの厚さの割合は21%以上46%以下
(6)LT層22aのカット角が45°以上50°以下の場合、LT層22aの厚さの割合は25.5%以上50%以下
【0069】
以上のように、実施例2によれば、基板10上に設けられた圧電層20aは、LT層22aと、基板10とLT層22aとの間に設けられたLN層21aと、を備える。LT層22aの上面からLN層21aの下面までの距離T3は1.0λ以下であり、電極指33が励振する弾性表面波はLT層22aとLN層21aの両方を伝搬する構成となっている。したがって、実施例1と同様に、ΔTCFを0に近づけることができ、共振周波数と反共振周波数の両方のTCFを向上させることが可能となる。
【0070】
また、電気機械結合係数k2を大きくする観点から、LT層22aはカット角が50°以下の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である場合が好ましい。この場合、図13(a)および表4のように、ΔTCFの絶対値を小さくするため、LN層21aとLT層22aの合計の厚さを100%とした場合に、
(1)LT層22aのカット角が0°以上22.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を10%以上40%以下とすることが好ましい。
(2)LT層22aのカット角が22.5°以上37.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を10%以上51%以下とすることが好ましい。
(3)LT層22aのカット角が37.5°以上50°以下の場合ではLT層22aの厚さの割合を13%以上85%以下とすることが好ましい。
【0071】
ΔTCFの絶対値を小さくする観点から、
(1)LT層22aのカット角が0°以上22.5°未満の場合では、LT層22aの厚さの割合は10%以上38%以下とすることが好ましく、10%以上36%以下とすることがより好ましく、10%以上35%以下とすることが更に好ましい。
(2)LT層22aのカット角が22.5°以上37.5°未満の場合では、LT層22aの厚さの割合は10%以上48%以下とすることが好ましく、10%以上46%以下とすることがより好ましく、10%以上44%以下とすることが更に好ましい。
(3)LT層22aのカット角が37.5°以上50°以下の場合では、LT層22aの厚さの割合は14%以上85%以下とすることが好ましく、16%以上85%以下とすることがより好ましく、17.5%以上85%以下とすることが更に好ましい。
【0072】
また、図4(b)のように、50°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層を用いた場合のΔTCFの絶対値は10ppm/℃より大きいことから、ΔTCFの絶対値を概ね10ppm/℃以下にするため、図13(b)および表5のように、LN層21aとLT層22aの合計の厚さを100%とした場合に、
(1)LT層22aのカット角が0°以上10°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12%以上20.5%以下とすることが好ましい。
(2)LT層22aのカット角が10°以上22.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12%以上26%以下とすることが好ましい。
(3)LT層22aのカット角が22.5°以上27.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12%以上34%以下とすることが好ましい。
(4)LT層22aのカット角が27.5°以上35°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12%以上41%以下とすることが好ましい。
(5)LT層22aのカット角が35°以上45°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を21%以上46%以下とすることが好ましい。
(6)LT層22aのカット角が45°以上50°以下の場合ではLT層22aの厚さの割合を25.5%以上50%以下とすることが好ましい。
【0073】
ΔTCFの絶対値を小さくする観点から、
(1)LT層22aのカット角が0°以上10°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12.5%以上19.5%以下とすることが好ましく、12.5%以上18.5%以下とすることがより好ましく、12.5%以上17.5%以下とすることが更に好ましい。
(2)LT層22aのカット角が10°以上22.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12.5%以上24%以下とすることが好ましく、12.5%以上22%以下とすることがより好ましく、12.5%以上21%以下とすることが更に好ましい。
(3)LT層22aのカット角が22.5°以上27.5°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を12%以上32%以下とすることが好ましく、12%以上30%以下とすることがより好ましく、12.5%以上28%以下とすることが更に好ましい。
(4)LT層22aのカット角が27.5°以上35°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を13%以上39%以下とすることが好ましく、15%以上37.5%以下とすることがより好ましく、16%以上36%以下とすることが更に好ましい。
(5)LT層22aのカット角が35°以上45°未満の場合ではLT層22aの厚さの割合を22%以上44%以下とすることが好ましく、24%以上42.5%以下とすることがより好ましく、25.5%以上41.5%以下とすることが更に好ましい。
(6)LT層22aのカット角が045°以上50°以下の場合ではLT層22aの厚さの割合を26.5%以上49%以下とすることが好ましく、27.5%以上47%以下とすることがより好ましく、28.5%以上45%以下とすることが更に好ましい。
【0074】
なお、実施例2においても、実施例1の変形例1から変形例4の構成としてもよい。
【0075】
実施例1およびその変形例では、圧電層20は、LN層21と、基板10とLN層21との間に設けられたLT層22と、を備える場合を例に示した。実施例2では、圧電層20aは、LT層22aと、基板10とLT層22aとの間に設けられたLN層21aと、を備える場合を例に示した。しかしながら、これらの場合に限られる訳ではない。第1層と、基板と第1層の間に設けられた第2層と、を備える圧電層を用いる場合、第1層および第2層は、それぞれの層上に櫛型電極が設けられたとした場合において、第1層および第2層のうちの一方の層での共振周波数のTCFが他方の層での共振周波数のTCFより大きく、かつ、一方の層での反共振周波数のTCFが他方の層での反共振周波数のTCFより小さい場合であればよい。
【実施例0076】
図14は、実施例3に係るフィルタの回路図である。図14に示すように、実施例3に係るフィルタ300は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1~S4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1~P3が並列に接続されている。直列共振器S1~S4および並列共振器P1~P3の少なくとも1つに実施例1、実施例1の変形例、および実施例2に係る弾性波デバイスを用いることができる。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に示したが、多重モード型フィルタ等、その他の場合でもよい。
【実施例0077】
図15は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。図15に示すように、実施例4に係るデュプレクサ400は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ52が接続され、共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ54が接続されている。送信フィルタ52は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ54は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ52および受信フィルタ54の少なくとも一方を実施例3に係るフィルタ300とすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したが、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0078】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…基板、20、20a、120…圧電層、21、21a…ニオブ酸リチウム層、22、22a…タンタル酸リチウム層、30…弾性波共振器、31…IDT、32…櫛型電極、33…電極指、34…バスバー、35…反射器、36…金属膜、40…接合層、41…温度補償層、42…接合層、43…中間層、52…送信フィルタ、54…受信フィルタ、100、100a、100b、100c、100d、200、500…弾性波デバイス、300…フィルタ、400…デュプレクサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15