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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006312
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107020
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 純
(72)【発明者】
【氏名】白川 宰
(72)【発明者】
【氏名】津崎 修
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】加幡 寿人
(72)【発明者】
【氏名】川内 雄雅
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 淳
(72)【発明者】
【氏名】福田 直生
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD03
4C180EA16X
4C180EA54X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH17
4C180HH19
4C180LL04
4C180LL11
(57)【要約】
【課題】処理空間において紫外線を用いて効率よく除菌が行われる空気処理装置を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、空気処理装置は、筐体、ファン及び紫外光源を備える。筐体には、導入口から排出口までの空気の経路に処理空間が形成され、処理空間では、空気の流れ方向に直交する断面積が、均一になる。ファンは、処理空間において1m/min以上の流量で導入口から排出口へ向かう空気の流れを形成する。紫外光源は、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、処理空間に紫外線を放射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気を導入する導入口、及び、前記空気を外部に排出する排出口が形成されるとともに、前記導入口から前記排出口までの前記空気の経路に処理空間が形成され、前記処理空間において前記空気の流れ方向に直交する断面積が均一になる筐体と;
作動されることにより、前記処理空間において1m/min以上の流量で前記導入口から前記排出口へ向かう前記空気の流れを形成するファンと;
作動されることにより、前記空気の前記流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、前記処理空間に紫外線を放射する紫外光源と;
を具備する、空気処理装置。
【請求項2】
前記紫外光源は、作動されることにより、1m当たりの放射束が20000mW/m以下になる状態で、前記処理空間に紫外線を放射する、請求項1の空気処理装置。
【請求項3】
前記紫外光源は、作動されることにより、280nmのピーク波長で、前記処理空間に前記紫外線を放射する、請求項1又は2の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を用いて空気を除菌等する空気処理装置が知られている。このような空気処理装置では、筐体の内部に、処理空間が形成され、導入口から筐体の内部に、外部の空気が導入される。そして、導入された空気に対して、紫外光源からの紫外線を処理空間において照射する等して、導入された空気の除菌等を行う。そして、紫外線によって除菌等された空気は、排出口から筐体の外部へ排出される。
【0003】
前述のような空気処理装置では、除菌性能が維持される範囲で紫外光源からの紫外線の放射量または発熱量を可能な限り少なくする等して、効率よく空気処理が行われることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-51268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、処理空間において紫外線を用いて効率よく除菌が行われる空気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、空気処理装置は、筐体、ファン及び紫外光源を備える。筐体には、内部に空気を導入する導入口、及び、空気を外部に排出する排出口が形成されるとともに、導入口から排出口までの空気の経路に処理空間が形成される。処理空間では、空気の流れ方向に直交する断面積が、均一になる。ファンは、作動されることにより、処理空間において1m/min以上の流量で導入口から排出口へ向かう空気の流れを形成する。紫外光源は、作動されることにより、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、処理空間に紫外線を放射する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処理空間において紫外線を用いて効率よく除菌が行われる空気処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る空気処理装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、第1の検証の5つの試験条件のそれぞれについて、空気の流量、及び、99%除菌されるまでの到達時間の計測結果を、テーブルで示す概略図である。
図3図3は、第1の検証での空気の流量と99%除菌されるまでの到達時間の計測結果との関係を、グラフで示す概略図である。
図4図4は、第2の検証の6つの試験条件のそれぞれについて、単位面積当たりの紫外線の放射束、及び、99%除菌されるまでの到達時間の計測結果を、テーブルで示す概略図である。
図5図5は、第2の検証での単位面積当たりの紫外線の放射束と99%除菌されるまでの到達時間の計測結果との関係を、グラフで示す概略図である。
図6図6は、紫外線のピーク波長と不活化感度との関係の一例を、テーブルで示す概略図である。
図7図7は、図6の一例の紫外線のピーク波長と不活化感度との関係を、グラフで示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の空気処理装置(1)は、筐体(2)、ファン(6)及び紫外光源(13)を備える。筐体(2)には、内部に空気を導入する導入口(3)、及び、空気を外部に排出する排出口(5)が形成されるとともに、導入口(3)から排出口(5)までの空気の経路に処理空間(15)が形成される。処理空間(15)では、空気の流れ方向に直交する断面積が、均一になる。ファン(6)は、作動されることにより、処理空間(15)において1m/min以上の流量で導入口(3)から排出口(5)へ向かう空気の流れを形成する。紫外光源(13)は、作動されることにより、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、処理空間(15)に紫外線を放射する。これにより、処理空間(15)において紫外線を用いて適切に除菌が行われるとともに、紫外光源(13)での発熱を、有効に抑制可能となり、効率のよい空気処理が可能となる。
【0010】
実施形態の空気処理装置(1)では、紫外光源(13)は、作動されることにより、1m当たりの放射束が20000mW/m以下になる状態で、処理空間(15)に紫外線を放射する。空気処理の性能の向上に寄与しない範囲で、紫外光源(13)での発熱量が余分に増加すること等、有効に防止され、効率のよい空気処理が可能となる。
【0011】
実施形態の空気処理装置(1)では、紫外光源(13)は、作動されることにより、280nmのピーク波長で、処理空間(15)に紫外線を放射する。これにより、空気の流量を1m/min以上にし、かつ、流れ方向に直交する断面での単位面積当たりの紫外線の放射束を6000mW/m以上にすることにより、高い性能で空気の除菌を含む空気処理が、適切に行われる。
【0012】
以下、実施形態等について、図面を参照にして説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る空気処理装置1の一例を示す。図1の一例の空気処理装置1では、高さ方向(矢印Xで示す方向)、高さ方向に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向(矢印Yで示す方向)、及び、高さ方向及び幅方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)奥行方向(図1の紙面に対して直交又は略直交する方向)が、規定される。図1は、奥行方向に対して直交又は略直交する断面が、示される。
【0014】
図1に示すように、空気処理装置1は、筐体2を備え、筐体2の内部に、内部空洞が形成される。このため、空気処理装置1では、筐体2によって、外装が形成される。筐体2には、導入口3及び排出口5が形成される。筐体2の内部空洞は、導入口3及び排出口5のそれぞれにおいて、筐体2の外部に開口する。図1の一例では、筐体2において、高さ方向の一方側の端面に、導入口3が形成される。そして、筐体2では、高さ方向について導入口3とは反対側の端面に、排出口5が形成される。
【0015】
筐体2の内部空洞には、ファン6が配置される。図1の一例では、ファン6は、排出口5に内側から対向する状態で、配置され、ファン6として、排気ファンが用いられる。空気処理装置1の使用時には、ファン6が作動される。ファン6が作動されることにより、筐体2の内部の内部空洞に、導入口3から外部の空気が導入される。そして、筐体2の内部において、導入口3から排出口5へ向かう空気の流れが、形成される。そして、内部空洞から排出口5を通して、筐体2の外部へ空気が排出される。
【0016】
前述のように空気の流れが形成された状態では、筐体2の内部空洞において導入口3から排出口5に向かう方向が、空気の流れ方向(矢印Fで示す方向)となる。図1の一例では、内部空洞での空気の流れ方向は、空気処理装置1の高さ方向に沿う。また、筐体2の内部空洞では、空気の流れ方向、すなわち、排出口5に向かう側が、下流側として規定される。そして、筐体2の内部空洞では、空気の流れ方向とは反対方向、すなわち、導入口3に向かう側が、上流側として規定される。以下、上流(側)、下流(側)、という表現は、空気の流れに対する上流(側)、下流(側)を示すこととする。
【0017】
図1の一例では、筐体2の内部空洞において、上流側から、遮光グリル11、プレフィルタ12、紫外光源13及びファン6の順に、配置される。なお、ある一例では、内部空洞において、ファン6は、遮光グリル11に対して上流側に配置される。この場合、ファン6は、導入口3に内側から対向する状態で、配置され、ファン6として、吸気ファンが用いられる。ファン6として吸気ファンが用いられる構成でも、筐体2の内部空洞では、ファン6が作動されることにより、導入口3から排出口5へ向かう空気の流れが、形成される。なお、図1に示す空気の流れ方向Fは一例であり、空気の流れ方向はFとは反対方向であってもよい。この場合、図1における導入口3の開口が排出口として機能し、図1における排出口5の開口が導入口として機能する。
【0018】
また、図1の一例では、筐体2の内部空洞において、高さ方向について紫外光源13とプレフィルタ12との間に、処理空間15が形成される。処理空間15は、導入口3から排出口5までの空気の経路上に、形成される。空気処理装置1の使用時には、筐体2の内部に導入された空気に対して、処理空間15において、紫外線を用いて空気処理が行われる。図1の一例では、紫外光源13が、処理空間15に対して下流側から隣接し、プレフィルタ12が、処理空間15に上流側から隣接する。
【0019】
ある一例では、高さ方向に沿った処理空間15の寸法、すなわち、高さ方向について紫外光源13とプレフィルタ12との間の距離は、50mm以上かつ1000mm以下となる。空気処理装置1では、高さ方向についての筐体2の中央位置となる仮想上の中央面は、処理空間15に位置し、紫外光源13とプレフィルタ12との間に位置する。つまり、処理空間15は、空気処理装置1の高さ方向の中央と重なるように配置される。また、処理空間15では、空気の流れ方向に直交する断面積が、均一になる。すなわち、処理空間15では、空気処理装置1の高さ方向に直交する断面積は、上流端から下流端まで、一定又は略一定になる。処理空間15は、例えば、直方体上の筒であったり、円柱状の筒であったりする。
【0020】
紫外光源13は、基板16と、発光素子17と、を備え、基板16に1つ以上の発光素子17が設置される。図1の一例では、複数の発光素子17が、基板16に設置される。基板16は、発光素子17が設置される面の面積が、処理空間15の空気処理装置1の高さ方向に直交する断面積よりも小さい板状の部材であり、表面にパターン配線が設けられている。発光素子17は、例えば、紫外光LEDである。また、紫外光源13としては、発光素子17の代わりに、水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光形紫外光ランプ及びエキシマランプ等のLED以外のランプ等が、用いられてもよい。この場合、紫外光源13は、基板16を備えていなくてもよい。なお、紫外光源13と、筐体2の内表面との間には、隙間が形成されてもよい。この場合、筐体2の内部空洞では、紫外光源13の筐体2の内表面との間の隙間を通して、紫外光源13を超えて下流側へ、空気が流れる。
【0021】
紫外光源13は、作動されることにより、発光素子17で発光した紫外線を、処理空間15に放射する。図1の一例では、上流側に向かって、紫外光源13から紫外線が出射される。処理空間15では、導入口3から導入された空気に対して、紫外光源13からの紫外線を照射する等して、導入された空気の除菌等を行う。したがって、処理空間15では、紫外光源13からの紫外線を用いて、導入された空気の除菌等を含む空気処理が行われる。紫外光源13は、例えば、230nm以上かつ315nm以下のいずれかの波長をピーク波長とする紫外線を放射する。ただし、紫外光源13は、主に深紫外線を放射し、250nm以上かつ290nm以下のいずれかの波長をピーク波長とする紫外線を放射することが、好ましい。ある一例では、紫外光源13は、作動されることにより、280nmのピーク波長で、処理空間15に紫外線を放射する。
【0022】
ここで、“除菌”とは、空気中に存在するウイルス及び菌(細菌)等を不活化すること等を意味し、“除菌”の代わりに“殺菌”、“滅菌”及び“減菌”等といった用語を用いることも可能である。このため、実施形態では、“除菌”という用語を用いるが、“除菌”という用語を、“殺菌”、“滅菌”及び“減菌”等に置換え可能である。
【0023】
また、筐体2では、少なくとも内表面が、紫外線の反射率が高い材料から形成されることが、好ましい。この場合、筐体2の内表面を形成する材料として、例えば、アルミニウム合金及びステンレス合金等が、挙げられる。紫外線の反射率が高い材料から筐体2の内表面が形成されることにより、筐体2の外部へ紫外線が出射されることが、有効に防止される。
【0024】
空気処理装置1では、プレフィルタ12によって、粉塵等が導入された空気と一緒に処理空間15へ流れることが、防止される。すなわち、粉塵等がプレフィルタ12を超えて下流側へ流れることが、防止される。遮光グリル11は、紫外線を遮光可能である。空気処理装置1では、遮光グリル11によって、紫外光源13からの出射された紫外線、及び、紫外光源13から出射された後に筐体2の内表面で反射した紫外線等が、遮光される。遮光グリル11によって紫外線が遮光されることにより、導入口3等を通して筐体2の外部へ紫外線が出射されることが、有効に防止される。
【0025】
なお、ある一例では、遮光グリル11に加えて、紫外光源13に対して下流側に、遮光グリルが配置される。この場合、筐体2の内部空洞において紫外光源13と排出口5との間に、遮光グリルが配置される。紫外光源13に対して下流側に遮光グリルが配置されることにより、筐体2の内表面で反射した紫外線が排出口5等を通して筐体2の外部へ紫外線が出射されることが、有効に防止される。
【0026】
また、ある一例では、プレフィルタ12に対して下流側に隣接する位置に、光触媒モジュールが配置される。この場合、紫外光源13は、深紫外線を放射するとともに、光触媒モジュールに担持された光触媒を励起する光(例えば、近紫外線)も放射する。本一例でも、処理空間15において、導入口3から導入された空気に対して、紫外光源13からの深紫外線等を照射することにより、導入された空気の除菌等を行う。また、本一例では、光触媒モジュールに紫外光源13からの近紫外線が入射することにより、光触媒モジュールにおいて活性酸素及びOHラジカルが生成される。そして、生成された活性酸素及びOHラジカルによって、導入された空気に含まれるウイルス、菌(細菌)及び臭い物質等が、分解される。これにより、空気の除菌及び脱臭等が行われる。
【0027】
また、ある一例では、紫外光源13が、処理空間15に対して上流側に隣接してもよい。この場合、紫外光源13は、プレフィルタ12の下流側に隣接して配置され、下流側へ向かって紫外線を放射する。本一例でも、紫外光源13は、処理空間15に紫外線を照射する。本一例では、遮光グリルが、処理空間15の下流側に隣接して配置され、高さ方向について紫外光源13と遮光フィルタとの間に、処理空間15が形成される。また、本一例では、遮光グリルによって、紫外線が排出口5等を通して筐体2の外部へ紫外線が出射されることが、有効に防止される。
【0028】
本実施形態では、ファン6が作動されることにより、処理空間15において、1m/min以上の流量で導入口3から排出口5へ向かう空気の流れが、形成される。すなわち、ファン6の作動によって、1m/min以上の流量で、処理空間15において空気が流れる。
【0029】
また、空気処理装置1では、紫外光源13の特性として、紫外光源13からの紫外線の放射束が規定される。放射束は、例えば、mW等の単位で示される。ある一例では、紫外光源13の放射束は、紫外光源13に設けられる発光素子の数や、紫外光源13に設けられる発光素子の出力に対応して変化する。また、紫外光源13の特性として、空気の流れ方向(空気処理装置1の高さ方向)に直交する断面での単位面積当たり紫外線の放射束が、規定される。単位面積当たりの紫外線の放射束としては、例えば、流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が示され、1m当たりの放射束は、mW/m等の単位で示される。単位面積当たり紫外線の放射束は、紫外光源13からの紫外線の放射強度に対応するパラメータである。
【0030】
実施形態では、紫外光源13は、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になるように、処理空間15に紫外線を放射する。また、好ましい一例では、1m当たりの放射束が20000mW/m以下になるように、処理空間15に紫外光源13から紫外線が放射される。したがって、実施形態では、紫外光源13からの紫外線に関して、流れ方向に直交する断面での単位面積当たりの放射束の適切な範囲として、6000mW/m以上かつ20000mW/m以下の範囲が、規定される。なお、6000mW/m以上かつ20000mW/m以下の範囲は、280nmのピーク波長で紫外光源13から紫外線が放射される場合の、単位面積当たりの放射束についての適切な範囲である。
【0031】
ここで、実施形態に関連する検証として、第1の検証を行った。第1の検証では、空気処理装置1と同様にして、空気の除菌を空気処理として行った。すなわち、筐体2の内部の処理空間15に導入した空気に対して紫外光源13からの紫外線を照射することにより、導入した空気の除菌を行い、除菌した空気を筐体2の外部に排出した。空気処理装置1としては、処理空間15において、空気の流れ方向に直交する断面積が0.0416mで均一になる空気処理装置を用いた。
【0032】
また、空気処理を行う際には、280nmのピーク波長で、紫外光源13から紫外線を処理空間15に放射した。そして、約1150mWの放射束で、紫外光源13から紫外線を処理空間15に放射した。このため、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たり(単位面積当たり)の放射束が約27700mW/mになるように、処理空間15に紫外線を放射した。
【0033】
第1の検証では、1m当たりの紫外線の放射束を約27700mW/mに保ったまま、処理空間15における空気の流量を変化させて、空気処理を行った。実際に、5つ試験条件A1~A5のそれぞれの間で、処理空間15における空気の流量を変化させた。そして、5つの試験条件A1~A5のそれぞれで空気処理を行った場合について、空気処理装置1が使用される環境(環境空間)が99%除菌されるまでの到達時間を、計測した。試験条件A1~A5のそれぞれでの空気処理では、空気処理装置1が使用される環境において黄色ブドウ球菌の量が空気処理の開始時に対して1%になるまでの到達時間を、99%除菌されるまでの到達時間として計測した。空気処理装置1が使用される環境での黄色ブドウ球菌の量は、菌の量を計測する計測器を用いて計測した。
【0034】
図2は、第1の検証の5つの試験条件A1~A5のそれぞれについて、空気の流量、及び、99%除菌されるまでの到達時間の計測結果を、テーブルで示す。また、図3は、第1の検証での空気の流量と99%除菌されるまでの到達時間の計測結果との関係を、グラフで示す。図2及び図3では、99%除菌されるまでの到達時間は、空気の流量が1m/minの時を基準として、つまり空気の流量が1m/minとなる試験条件A3の場合の到達時間に対する比率で、示される。すなわち、図2及び図3では、試験条件A3の場合の値を1として、試験条件A1~A5のそれぞれについて、99%除菌されるまでの到達時間の比率が、示される。また、図3のグラフでは、横軸が、空気の流量を示し、縦軸が、99%除菌されるまでの到達時間の比率を示す。
【0035】
図2及び図3に示すように、第1の検証では、試験条件A1,A2,A3,A4,A5において、それぞれ、1.9m/min,1.9m/min,1m/min,0.9m/min,0.3m/minの流量で、処理空間15に空気の流れを形成した。また、99%除菌されるまでの到達時間は、試験条件A1,A2,A3,A4,A5において、それぞれ、42min,44min,69min,91min,254minとなった。このため、試験条件A3の場合の到達時間に対する到達時間の比率は、試験条件A1,A2,A3,A4,A5において、それぞれ、0.61,0.64,1,1.32,3.68となった。なお、図3では、試験条件A1,A2,A3,A4,A5に対応するデータ点として、それぞれ、データ点D1,D2,D3,D4,D5が示される。また、図3では、データ点D1~D5の近似曲線αが示される。
【0036】
第1の検証での検証結果として示されるデータ点D1~D5及び近似曲線α等から、1m当たりの紫外線の放射束が約27700mW/mの場合、空気の流量が1m/minより小さい範囲では、空気の流量の増加に伴って、空気の除菌性能(空気処理の性能)が大きく向上する傾向にあることが、確認された。一方、1m当たりの紫外線の放射束が約27700mW/mの場合、空気の流量が1m/min以上の範囲では、空気の流量を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であることが、確認された。
【0037】
また、図3に示す近似曲線αでは、傾きが規定される。空気の流量が0.3m/min以上かつ1.9m/min以下の範囲では、近似曲線αの傾きは、負の値になり、空気の流量の増加に伴って、近似曲線αの傾きの絶対値は、減少する。第1の検証では、近似曲線αにおいて、傾きの絶対値が基準値となる点を、境界点として規定した。そして、規定した境界点に基づいて、空気の流量の増加に伴って、空気の処理性能が大きく向上するか否かを判定した。例えば、境界点を境に空気の流量が小さい側の領域では、空気の流量の増加に伴って、空気の除菌性能(空気処理の性能)が大きく向上すると、判断した。一方、境界点を境に空気の流量が大きい側の領域では、空気の流量を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さいと、判断した。
【0038】
ある一例では、近似曲線αの傾きの絶対値について、基準値を1に設定した。別のある一例では、データ点D5,D4の間の傾きの絶対値、データ点D4,D3の間の傾きの絶対値、データ点D3,D2の間の傾きの絶対値、及び、データ点D3,D1の間の傾きの絶対値を算出した。そして、算出した4つの絶対値の中で最も大きいデータ点D5,D4の間の傾きの絶対値である3.93を用いて、近似曲線αの傾きの絶対値について、前述の基準値を設定した。この場合、例えば、データ点D5,D4の間の傾きの絶対値の20%に相当する0.787に、基準値が設定され、より好ましくは、データ点D5,D4の間の傾きの絶対値の10%に相当する0.393に、基準値が設定される。
【0039】
第1の検証では、設定された基準値に基づいて、近似曲線αにおいて境界点を前述のように規定し、規定した境界点に基づいて、空気の流量の増加に伴う空気の除菌性能の向上度合いについて、前述のように判断した。そして、1m当たりの紫外線の放射束が約27700mW/mの場合、空気の流量が1m/min以上の範囲では、空気の流量を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であると、判断した。
【0040】
なお、第1の検証では、1m当たりの紫外線の放射束が約27700mW/mの場合について説明した。ただし、1m当たりの紫外線の放射束が27700mW/mとは異なる値で一定に維持する場合も、維持される放射束の値が所定のレベルより大きい値であれば、空気の流量を変化させると、空気の流量の増加に伴う空気の除菌性能の向上度合いに関して、1m当たりの紫外線の放射束が27700mW/mの場合と、同様の傾向を示した。したがって、1m当たりの紫外線の放射束が一定に維持される場合、空気の流量が1m/min以上の範囲では、空気の流量を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であることが、確認された。
【0041】
また、実施形態に関連する検証として、第1の検証とは別の第2の検証を行った。第2の検証でも、筐体2の内部の処理空間15に導入した空気に対して紫外光源13からの紫外線を照射することにより、導入した空気の除菌を行い、除菌した空気を筐体2の外部に排出した。そして、第1の検証と同様に、処理空間15において、空気の流れ方向に直交する断面積が0.0416mで均一になる空気処理装置を用いた。また、空気処理を行う際には、280nmのピーク波長で、紫外光源13から紫外線を処理空間15に放射した。
【0042】
ただし、第2の検証では、処理空間15における空気の流量を変化させず、約2.3m/minで空気の流量を一定に維持した。そして、空気の流量を約2.3m/minに保ったまま、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たり(単位面積当たり)の紫外線の放射束を変化させて、空気処理を行った。実際に、6つ試験条件B1~B6のそれぞれの間で、紫外光源13から処理空間15へ放射する紫外線の放射束を変化させ、1m当たりの紫外線の放射束を変化させた。そして、6つの試験条件B1~B6のそれぞれで空気処理を行った場合について、空気処理装置1が使用される環境(環境空間)が99%除菌されるまでの到達時間を、計測した。99%除菌されるまでの到達時間は、第1の検証と同様に、規定及び計測した。
【0043】
図4は、第2の検証の6つの試験条件B1~B6のそれぞれについて、単位面積当たりの紫外線の放射束、及び、99%除菌されるまでの到達時間の計測結果を、テーブルで示す。また、図5は、第2の検証での単位面積当たりの紫外線の放射束と99%除菌されるまでの到達時間の計測結果との関係を、グラフで示す。図4及び図5では、99%除菌されるまでの到達時間は、試験条件B1の場合の到達時間に対する比率で、示される。すなわち、図4及び図5では、試験条件B1の場合の値を1として、試験条件B1~B6のそれぞれについて、99%除菌されるまでの到達時間の比率が、示される。また、図5のグラフでは、横軸が、単位面積当たりの紫外線の照射束を示し、縦軸が、99%除菌されるまでの到達時間の比率を示す。
【0044】
図4及び図5に示すように、第2の検証では、試験条件B1,B2,B3,B4,B5,B6において、それぞれ、約1020mW,約770mW,約640mW,約510mW,約260mW,約130mWの放射束で、紫外光源13から処理空間15に紫外線を照射した。このため、単位面積当たりの紫外線の照射束は、試験条件B1,B2,B3,B4,B5,B6において、それぞれ、約24600mW/m,約18500mW/m,約15400mW/m,約12300mW/m,約6150mW/m,約3080mW/mとなった。
【0045】
また、99%除菌されるまでの到達時間は、試験条件B1,B2,B3,B4,B5,B6において、それぞれ、37min,37min,35min,41min,43min,56minとなった。このため、試験条件B1の場合の到達時間に対する到達時間の比率は、試験条件B1,B2,B3,B4,B5,B6において、それぞれ、1,1,0.95,1.11,1.16,1.54となった。なお、図5では、試験条件B1,B2,B3,B4,B5,B6に対応するデータ点として、それぞれ、データ点E1,E2,E3,E4,E5,E6が示される。また、図5では、データ点E1~E5の近似曲線βが示される。
【0046】
第2の検証での検証結果として示されるデータ点E1~E6及び近似曲線β等から、紫外線のピーク波長が約280nmで、かつ、処理空間15での空気の流量が約2.3m/minの場合、1m当たりの紫外線の放射束が6000mW/mより小さい範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束の増加に伴って、空気の除菌性能(空気処理の性能)が大きく向上する傾向にあることが、確認された。一方、処理空間15での空気の流量が約2.3m/minの場合、1m当たりの紫外線の放射束が6000mW/m以上の範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であることが、確認された。また、処理空間15での空気の流量が約2.3m/minの場合、1m当たりの紫外線の放射束が20000mW/mより大きい範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を変化させても、空気の除菌性能は変化しない、又は、ほとんど変化しない傾向であることが、確認された。
【0047】
また、図5に示す近似曲線βでは、傾きが規定される。単位面積当たりの紫外線の放射束が、それぞれ、3080mW/m以上かつ24600mW/m以下の範囲では、近似曲線βの傾きは、負の値になり、単位面積当たりの紫外線の放射束の増加に伴って、近似曲線βの傾きの絶対値は、減少する。第2の検証では、近似曲線βにおいて、傾きの絶対値が基準値となる点を、境界点として規定した。そして、規定した境界点に基づいて、単位面積当たりの紫外線の放射束の増加に伴って、空気の処理性能が大きく向上するか否かを判定した。例えば、境界点を境に単位面積当たりの放射束が小さい側の領域では、単位面積当たりの紫外線の放射束の増加に伴って、空気の除菌性能(空気処理の性能)が大きく向上すると、判断した。一方、境界点を境に単位面積当たりの放射束が大きい側の領域では、単位面積当たりの紫外線の放射束を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さいと、判断した。
【0048】
ある一例では、データ点E6,E5の間の傾きの絶対値、データ点E5,E4の間の傾きの絶対値、データ点E4,E3の間の傾きの絶対値、データ点E3,E2の間の傾きの絶対値、及び、データ点E2,E1の間の傾きの絶対値を算出した。そして、算出した5つの絶対値の中で最も大きいデータ点E6,E5の間の傾きの絶対値である1.14×10-4を用いて、近似曲線βの傾きの絶対値について、前述の基準値を設定した。この場合、例えば、データ点E6,E5の間の傾きの絶対値の25%に相当する2.86×0-5に、基準値が設定される。また、本一例では、データ点E6,E5の間の傾きの絶対値の20%に相当する2.29×0-5に基準値が設定されることが好ましく、データ点E6,E5の間の傾きの絶対値の10%に相当する1.14×0-5に基準値が設定されることが、より好ましい。
【0049】
第2の検証では、設定された基準値に基づいて、近似曲線βにおいて境界点を前述のように規定し、規定した境界点に基づいて、単位面積当たりの紫外線の放射束の増加に伴う空気の除菌性能の向上度合いについて、前述のように判断した。そして、空気の流量が2.3m/minの場合、1m当たりの紫外線の放射束が6000mW/m以上の範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であると、判断した。また、第2の検証では、データ点E2,E1の間の傾きがゼロとなること等に基づいて、1m当たりの紫外線の放射束が20000mW/mより大きい範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を変化させても、空気の除菌性能は変化しない、又は、ほとんど変化しない傾向であると、判断した。
【0050】
なお、第2の検証では、処理空間15での空気の流量が2.3m/minの場合について説明した。ただし、処理空間15での空気の流量が2.3m/minとは異なる値で一定に維持する場合も、維持される流量の値が所定のレベルより大きい値であれば、1m当たりの紫外線の放射束を変化させると、単位面積当たりの放射束の増加に伴う空気の除菌性能の向上度合いに関して、空気の流量が2.3m/minの場合と、同様の傾向を示した。したがって、処理空間15における空気の流量が一定に維持される場合、流れ方向に直交する断面での1m当たりの紫外線の放射束が6000mW/m以上の範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向であることが、確認された。そして、処理空間15における空気の流量が一定に維持される場合、1m当たりの紫外線の放射束が20000mW/mより大きい範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を変化させても、空気の除菌性能は変化しない、又は、ほとんど変化しない傾向であることが、確認された。
【0051】
本実施形態では、ファン6が作動されることにより、処理空間15において1m/min以上の流量で導入口3から排出口5へ向かう空気の流れが、形成される。そして、紫外光源13が作動されることにより、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、処理空間15に紫外線が放射される。空気処理装置1を用いて空気処理を行う場合、第1の検証等から、処理空間15での空気の流量を1m/min以上の範囲では、空気の流量を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向になる。また、第2の検証等から、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上の範囲では、単位面積当たりの紫外線の放射束を増加させても、空気の除菌性能の向上度合いが小さい傾向になる。
【0052】
このため、処理空間15での空気の流量を1m/min以上にし、かつ、単位面積当たりの紫外線の放射束を6000mW/m以上にすることにより、実現可能な範囲の中のある程度高い性能で、空気の除菌を含む空気処理が行われる。したがって、空気の流量を1m/min以上にし、かつ、単位面積当たりの紫外線の放射束を6000mW/m以上にすることにより、処理空間15において紫外線を用いて適切に除菌が行われる。
【0053】
また、空気の流量を1m/min以上にし、かつ、単位面積当たりの紫外線の放射束を6000mW/m以上にすることにより、単位面積当たりの紫外線の放射束を過度に大きくすることなく、紫外線を用いて適切に除菌が行われる。例えば、単位面積当たりの紫外線の放射束を20000mW/m以下に抑えつつ、紫外線を用いて適切に除菌が行われる。単位面積当たりの紫外線の放射束を過度に大きくならないことにより、紫外光源13での発熱が、有効に抑制される。これにより、空気処理装置1において、紫外光源13の近傍での温度上昇等が、有効に抑制される。
【0054】
また、単位面積当たりの紫外線の放射束を過度に大きくする必要がないため、例えば、紫外光源13に設ける発光素子の数を減少させることが、可能になる。これにより、紫外光源13の製造における手間及びコスト等を、低減可能となる。
【0055】
また、実施形態のある一例では、1m当たりの放射束が20000mW/m以下になる状態で、処理空間15に紫外光源13から紫外線が放射される。第2の検証等から、1m当たりの紫外線の放射束が20000mW/mより大きい範囲では、空気の流れ方向に直交する断面における単位面積当たりの紫外線の放射束を変化させても、空気の除菌性能は変化しない、又は、ほとんど変化しない傾向となる。このため、空気処理の性能の向上に寄与しない範囲で、紫外線の放射束を増加させることが、有効に防止される。これより、空気処理の性能の向上に寄与しない範囲で、紫外光源13での発熱量が余分に増加すること等、有効に防止される。
【0056】
また、実施形態のある一例では、紫外光源13は、280nmのピーク波長で、処理空間15に紫外線を放射する。ピーク波長280nmで紫外線が放射される場合、空気の流量を1m/min以上にし、かつ、単位面積当たりの紫外線の放射束を6000mW/m以上にすることにより、前述したように高い性能で空気の除菌を含む空気処理が、適切に行われる。
【0057】
また、実施形態のある一例では、筐体2において、少なくとも内表面が、紫外線の反射率が高い材料から形成される。これにより、紫外線が筐体2の外部に出射されることが、有効に防止されるとともに、処理空間15において紫外線を用いてさらに効率的に除菌が行われる。
【0058】
なお、6000mW/m以上かつ20000mW/m以下の範囲は、280nmのピーク波長で紫外光源13から紫外線が放射される場合の、単位面積当たりの放射束についての適切な範囲である。実施形態では、流れ方向に直交する断面での単位面積当たりの紫外線の放射束について、紫外線のピーク波長に対応させて、適切な範囲が調整及び補正される。この際、紫外線のピーク波長と菌(菌等のDNA)の不活化感度との関係に基づいて、単位面積当たりの紫外線の放射束についての適切な範囲が、補正される。
【0059】
図6及び図7は、紫外線のピーク波長と不活化感度との関係の一例を示す。図6では、紫外線のピーク波長と不活化感度との関係を、テーブルで示す。また、図7では、紫外線のピーク波長と不活化感度との関係を、横軸をピーク波長とし、かつ、縦軸を不活化感度とするグラフで示す。図6及び図7では、ピーク波長は、nmを単位として示され、不活化感度は、ピーク波長が263nmの場合の不活化感度に対する比率で示される。すなわち、不活化感度は、ピーク波長が263nmの場合の不活化感度の値を1として、示される。また、図6では、230nm以上かつ315nm以下の範囲で、5nmごとに、紫外線のピーク波長に対する不活化感度の値が示される。そして、図7では、図6で示されるピーク波長に対応するデータ点、及び、データ点の間を結んだ曲線γが示される。
【0060】
図6及び図7等の一例では、紫外線のピーク波長が263nmの場合において、不活化感度は、最も高くなり、ピーク値となる。また、ピーク波長を変数λとし、かつ、不活化感度を変数εとする。図2及び図3等の一例では、ピーク波長が230nm以上かつ263nm以下(230nm≦λ≦263nm)の範囲では、式(1)の関係が成立する。そして、ピーク波長が263nm以上かつ315nm以下(263nm≦λ≦315nm)の範囲では、式(2)の関係が成立する。このため、式(1)及び式(2)等の関係を用いて、ピーク波長λから不活化感度εを算出可能である。
【0061】
【数1】
【0062】
ここで、単位面積当たりの紫外線の放射束について、ピーク波長λが280nmになる場合の適切な範囲を、ピーク波長λが値λaになる場合の適切な範囲に補正するものとする。この場合、式(1)又は式(2)を用いて、ピーク波長λが値λaになる場合の不活化感度εの値εaを算出する。そして、ピーク波長λが280nmの場合の不活化感度εである0.7に対する値εaの比率である、不活化感度比ηaを算出する。すなわち、式(3)を用いて、不活化感度比ηaが算出される。
【0063】
また、空気の流れ方向に直交する断面での単位面積当たりの紫外線の放射束について、紫外線のピーク波長λが値λaの場合での適切な範囲の下限値Iamin及び上限値Iamaxを規定する。下限値Iaminは、ピーク波長λが280nmの場合の適切な範囲の下限値である6000mW/m、及び、算出した不活化感度比ηaを用いて、式(4)のようにして算出される。そして、上限値Iamaxは、ピーク波長λが280nmの場合の適切な範囲の上限値である20000mW/m、及び、算出した不活化感度比ηaを用いて、式(5)のようにして算出される。これにより、空気の流れ方向に直交する断面での単位面積当たりの紫外線の放射束について、ピーク波長λが値λaになる場合の適切な範囲が算出される。
【0064】
【数2】
【0065】
例えば、単位面積当たりの紫外線の放射束について、ピーク波長λが265nmになる場合の適切な範囲の算出では、不活化感度εとして0.99が算出され、式(3)によって、不活化感度比ηaの値1.41が算出される。そして、式(4)及び式(5)によって、単位面積当たりの紫外線の放射束について、適切な範囲の下限値Iaminとして4255mW/mが、適切な範囲の上限値Iamaxとして14184mW/mが、それぞれ算出される。これにより、単位面積当たりの放射束について、ピーク波長が280nmの場合の適切な範囲が、ピーク波長が265nmの場合の適切な範囲である4255mW/m以上かつ14184mW/m以下の範囲に、補正される。
【0066】
紫外光源13からの紫外線のピーク波長λが値λaになる場合は、処理空間15での空気の流量を1m/min以上にし、かつ、単位面積当たりの紫外線の放射束を前述の下限値Iamin以上にする。そして、紫外光源13からの紫外線のピーク波長λが値λaになる場合、好ましい一例では、単位面積当たりの紫外線の放射束を前述の上限値Iamax以下にする。このような条件で空気の除菌を含む空気処理が行われることにより、紫外光源13からの紫外線のピーク波長λが280nmになる前述の実施形態等と、同様の作用及び効果を奏する。
【0067】
これら少なくとも一つの実施形態によれば、ファンは、処理空間において1m/min以上の流量で導入口から排出口へ向かう空気の流れを形成する。紫外光源は、空気の流れ方向に直交する断面での1m当たりの放射束が6000mW/m以上になる状態で、処理空間に紫外線を放射する。これにより、紫外光源での発熱を抑制しつつ、処理空間において紫外線を用いて適切に除菌が行われる空気処理装置を提供することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…空気処理装置、2…筐体、3…導入口、5…排出口、6…ファン、13…紫外光源、15…処理空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7