(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006313
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】食品添加用被覆製剤
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20250109BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20250109BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20250109BHJP
A23B 2/758 20250101ALI20250109BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20250109BHJP
A21D 8/00 20060101ALI20250109BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23L29/00
A23D9/00 510
A23L3/3517
A23L7/157
A21D8/00
A21D2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107022
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】川浦 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紘平
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
【テーマコード(参考)】
4B021
4B025
4B026
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B021LA41
4B021LW08
4B021LW09
4B021MC01
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4B035LG01
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4B035LG06
4B035LG12
4B035LG14
4B035LK14
4B035LK19
4B035LP26
(57)【要約】
【課題】 加熱工程を経て提供される加工食品に用いられる食品添加用被覆製剤、該食品添加用被覆製剤を含有する日持ち向上剤並びに食品材料を提供する。
【解決手段】 硬化油を主成分とする被覆材で芯材を被覆した被覆製剤であって、
芯材が有機酸塩、有機酸塩と有機酸の混合物、および無機酸塩からなる群より選ばれ、常温常圧下で固体である1種以上の酸類粒子であり、
被覆製剤に含まれる芯材の割合が20~75重量%であり、且つ
被覆製剤を25℃の水中で10分間攪拌した場合の芯材の溶出率が25%以下である、
食品添加用被覆製剤、該食品添加用被覆製剤を含有する日持ち向上剤並びに食品材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化油を主成分とする被覆材で芯材を被覆した被覆製剤であって、
芯材が有機酸塩、有機酸塩と有機酸の混合物、および無機酸塩からなる群より選ばれ、常温常圧下で固体である1種以上の酸類粒子であり、
被覆製剤に含まれる芯材の割合が20~75重量%であり、且つ
被覆製剤を25℃の水中で10分間攪拌した場合の芯材の溶出率が25%以下である、
食品添加用被覆製剤。
【請求項2】
下記計算式で表される圧縮度が15%以下である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm3)-ゆるめかさ密度(g/cm3)]/固めかさ密度(g/cm3)×100
【請求項3】
安息角が30~50°である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項4】
分散度が1~20%である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項5】
硬化油が融点50~70℃のパーム硬化油、菜種硬化油および牛脂硬化油からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項6】
平均粒子径が200~1500μmである、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項7】
有機酸塩が、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸およびグルコン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項8】
有機酸塩と有機酸の混合物が、酢酸塩と酢酸の混合物である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項9】
無機酸塩が、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品添加用被覆製剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の食品添加用被覆製剤を含有する、食品用日持ち向上剤製剤。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の食品添加用被覆製剤および穀物粉またはパン粉を含有する、プレミックス粉。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の食品添加用被覆製剤、穀物粉および油脂を含み、冷凍されているプレミックス生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱工程を経て提供される加工食品に用いられる食品添加用被覆製剤に関する。また、本発明は前記食品添加用被覆製剤を含有する食品用日持ち向上剤並びに食品材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工食品の製造においては、食品の保存性を向上させる目的で、有機酸塩、無機酸塩等の粉末が用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば、具材に小麦粉、澱粉、卵等を水などで溶いた所謂バッター液を付けた後、油調することにより得られるフライ、から揚げ、天ぷら等の揚げ物製品の場合、バッター液に酢酸ナトリウム等の有機酸塩を直接添加するとバッター液の粘度が低下し、作業性が悪くなるうえ、衣のボリュームが低下することにより、製品価値が損なわれるという課題があった。
【0004】
また、パンなどの発酵生地を用いる食品においては、酢酸ナトリウム等の有機酸塩を生地に直接添加すると、発酵が阻害されるため、発酵後のボリュームが低下したり、焼成後の弾力性が劣るといった、製品価値が損なわれるという課題があった。
【0005】
このような課題を解決する手段の1つとして、有機酸塩に油脂などを吸着または被覆することによって、バッター液や発酵生地と酸類の直接接触を抑制した製剤が提案されている。
【0006】
特許文献1には、有機酸または有機酸塩の粉状体に、融点40℃以上の脂質粉状体を接触・衝突させることによる被覆製剤の製造方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この製造方法は所謂乾式コーティング法と呼ばれる方法であり、得られる製剤は、粒子表面の被覆状態が不均一であるため、粉体の圧縮度が大きく、また被覆層が脆いことから溶出率も高いものであった。従って、かかる被覆製剤を用いてもバッター液の粘度低下やパン生地の発酵阻害は抑制されなかった。
【0008】
特許文献2には、食品添加剤の粉体と固形被覆剤の粉体とを固形被覆剤の融点未満の温度で混合後、固形被覆剤の融点以上、かつ食品添加剤の融点未満の温度に加熱し、その後固形被覆剤の融点未満の温度に冷却することにより得られる食品添加用被覆製剤が提案されている。
【0009】
しかしながら、この製剤は、緻密な温度管理の下、長時間にわたって製造を行う必要があり、工程が煩雑で、製造コストも増大する問題があった。また、この製剤も前述の乾式コーティング法と同様に、被覆状態が不均一であり、また粉体の圧縮度が大きく、被覆層が脆いことから、輸送時や食品添加後の工程中の衝撃により容易に芯材が露出するため、溶出率が高く、バッター液やパン生地の物性に影響を与える課題を解決し得るものではなかった。
【0010】
食品の物性に影響を及ぼさず、複雑な製造工程を必要としない被覆製剤および該製剤を用いた食品用日持ち向上剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-164863号公報
【特許文献2】特開2011-72308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、食品の物性に与える影響が少ない、食品添加用被覆製剤、および該被覆製剤を含有する食品用日持ち向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、被覆製剤の芯材として有機酸塩、有機酸塩と有機酸の混合物、および無機酸塩からなる群より選ばれる常温常圧下で固形の1種以上の酸類粒子を硬化油を主成分とする被覆材に対する特定の割合とすることにより、加熱前の製剤からの酸類の溶出率が抑制され、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、硬化油を主成分とする被覆材で芯材を被覆した被覆製剤であって、
芯材が有機酸塩、有機酸塩と有機酸の混合物、および無機酸塩からなる群より選ばれ、常温常圧下で固体である1種以上の酸類粒子であり、
被覆製剤に含まれる芯材の割合が20~75重量%であり、且つ
被覆製剤を25℃の水中で10分間攪拌した場合の芯材の溶出率が25%以下である、
食品添加用被覆製剤を提供する。
【0015】
本発明はまた、上記食品添加用被覆製剤を含有する、食品用日持ち向上剤、並びに食品材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】食パン生地の発酵阻害抑制試験(実施例9および比較例13)の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「硬化油を主成分とする被覆材」とは、被覆材全重量に対して硬化油を80重量%以上含有するものをいい、他の成分を含有せず硬化油のみからなる被覆材も「硬化油を主成分とする被覆材」に含まれる。本発明においては、被覆材全重量に対して硬化油を85重量%以上含有する被覆材を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の食品添加用被覆製剤(以下、単に被覆製剤と称することがある)は、芯材として有機酸塩、有機酸塩と有機酸の混合物、および無機酸塩からなる群より選ばれ、常温常圧下で固体である1種以上の酸類粒子を用いる。
【0019】
常温常圧下で固体とは、15~25℃、1気圧下で固体であるものをいう。
【0020】
本発明の被覆製剤に用いる有機酸塩としては、食品に使用可能なものであれば、特に限定されないが、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸、グルコン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が好ましく、静菌効果の点で、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムがより好ましく、酢酸ナトリウムがさらに好ましい。酢酸ナトリウムは、酢酸ナトリウム無水物、酢酸ナトリウム水和物二酢酸ナトリウム、二酢酸ナトリウムと酢酸ナトリウムの混合物であってもよい。これら有機酸塩は2種以上を併用してもよい。
【0021】
有機酸塩と有機酸の混合物としては、上記有機酸塩と該有機酸塩を構成する有機酸の混合物が例示され、酢酸ナトリウムと酢酸の混合物が好適に用いられる。酢酸ナトリウムと酢酸の混合物に用いる酢酸は、氷酢酸および/または醸造酢であってもよい。常温常圧では液体である酢酸に対する酢酸ナトリウムのモル比が1以上となるように両者を混合すると結晶性の粉末となることが知られており、本発明の酸類粒子としてはかかる粉末が好適に用いられる。
【0022】
本発明の被覆製剤に用いる無機酸塩としては、食品に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムが好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。これら無機酸塩は2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の被覆製剤に用いる芯材の割合は、その種類および組み合わせによって適宜設定すればよいが、例えば被覆製剤全量に対して20~75重量%であり、25~73重量%であるのが好ましく、30~70重量%であるのがより好ましい。被覆製剤全量における芯材の割合が20重量%未満の場合、日持ち向上効果が不十分となり易い他、比重の軽い硬化油の比率が大きくなるため、バッター液等の食品へ添加した際に浮き易く、食品製造の作業性が悪化する傾向がある。また、被覆製剤全量における芯材の割合が75重量%を超える場合、溶出率が上昇し、食品の物性を悪化させる傾向がある。
【0024】
本発明の被覆製剤において、芯材に用いる酸類粒子の平均粒子径は特に限定されないが、入手のし易さや取り扱い易さの点で、75~1350μmのものが好ましく、100~1000μmのものがより好ましく、120~500μmのものがさらに好ましい。
【0025】
本発明の被覆製剤に用いる硬化油を主成分とする被覆材は、融点50~70℃のものが好ましく、融点55~65℃のものがより好ましく、融点57~63℃のものがさらに好ましい。被覆材の融点が70℃を超える場合、被覆製剤が食品の製造工程で溶け出す温度も高くなり、酸類が食品中に十分に分散せず、安定した日持ち効果が得られ難い傾向がある。被覆材の融点が50℃未満である場合、被覆製剤が保管時や流通時に固結し易い傾向がある。
【0026】
本発明の被覆製剤に用いる硬化油としては、菜種硬化油、ハイエルシン菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、牛脂硬化油、豚脂硬化油、やし油硬化油、ニシン油硬化油等が挙げられる。その中でも入手が容易で、融解し易く、かつ流通安定性に優れるパーム硬化油、菜種硬化油、牛脂硬化油が好ましい。これら硬化油は2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の被覆製剤に用いる被覆材には、目的に応じて、さらにレシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の補助的成分を含有させてもよい。これらの補助的成分を含有させる場合、被覆材全重量に対して0.1~15重量%程度含有させるのが好ましい。
【0028】
本発明における被覆製剤の調製には、芯材を流動化しつつ、溶融した被覆材を噴霧する方法が用いられ、望まれる物性が得られる方法であれば特に限定はされないが、流動層コーティング法が好ましい。この流動層コーティング法としては次のような方法が挙げられる。
(1)流動層造粒コーティング装置を用いて浮遊運動させた芯材に上方より例えばスプレーガンなどで溶融した硬化油を連続噴霧し必要に応じて冷却する方法。
(2)撹拌造粒装置を用いてローターの回転による遠心力で遊星運動させた芯材に溶融した硬化油を液滴下もしくは噴霧し必要に応じて冷却する方法。
(3)転動流動層造粒コーティング装置を用いて浮遊運動、遠心転動させた芯材に上方または側方より例えばスプレーガンなどで溶融した硬化油を連続噴霧し必要に応じて冷却する方法。
これらの中では特に(3)の方法が好ましい。
【0029】
一つの好ましい態様において、本発明の被覆製剤は、以下の工程:
a)融点50~70℃の硬化油を融点以上の温度で加熱溶融し、被覆材を得る工程、
b)被覆材を流動化した芯材に噴霧しつつ、油脂の融点未満の温度に保持することにより被覆する工程、を含む方法により製造される。
【0030】
さらに、上記の製造方法をより具体的に説明する。まず、工程a)において、融点50~70℃の硬化油を融点以上の温度、例えば75~95℃で加熱溶融し、被覆材とする。
【0031】
次いで、工程b)において、工程a)で得られた被覆材を流動層内で流動化した酸類粒子に噴霧する。その際の流動層内の温度は、硬化油の融点未満且つ被覆材が酸類粒子に付着した後に固化する温度に調整する必要があり、例えば被覆材の融点より3~30℃低い温度に調整される。流動層内の温度は、被覆材の融点より5~25℃低い温度が好ましく、融点より10~20℃低い温度がより好ましい。流動層内の温度が被覆材の融点より30℃を超えて低い温度である場合、硬化油が酸類粒子に付着する前に固化し易く、被覆が不十分となる傾向があり、被覆材の融点より3℃未満の低い温度である場合、被覆製剤同士が結合して、粗大粒子が生成される傾向がある。
【0032】
工程b)において、噴霧するためのノズルには一流体ノズルや二流体ノズルなどが利用可能であり、その際のスプレー圧は、使用する被覆材の温度および流動層内の温度等によって異なるが、例えば二流体ノズルではスプレー圧は0.01~1MPaに調整するのが好ましく、0.05~0.5MPaがより好ましく、0.1~0.3MPaがさらに好ましい。スプレー圧が0.01MPa未満である場合、被覆製剤同士が結合して、粗大粒子が生成される傾向があり、1MPaを超える場合、硬化油が酸類粒子に付着し難く、被覆が不十分となる傾向がある。
【0033】
ローター回転数は10~1000rpmに調整され100~500rpmが好ましく、200~400rpmがより好ましい。ローター回転数が10rpm未満である場合、被覆製剤同士が結合して、粗大粒子が生成される傾向があり、1000rpmを超える場合、硬化油が酸類粒子に付着できなくなり、被覆が不十分となる傾向がある。
【0034】
本発明の被覆製剤は、25℃の水中に10分間攪拌した場合の芯材の溶出率が25%以下であり、1~12%であるのが好ましく、2~10%であるのがより好ましい。芯材の溶出率が25%を超える場合、食品の物性に与える影響が増大する傾向があり、バッター液に添加した際の粘度低下や、パン生地に添加した際の発酵阻害等が発生し易い傾向がある。
【0035】
本発明の被覆製剤の25℃の水中で10分間攪拌した場合の芯材の溶出率は、下記の方法により測定した値である。
【0036】
(溶出率の測定)
被覆製剤0.1gを脱イオン水30mlに加え、80℃で溶解させた後、25℃になるまで冷却する。冷却後、溶液をHPLCで分析し、芯材のエリア面積から含量を測定し、被覆製剤当たりの芯材全量とする。
次に、イオン交換水500mlにラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、三枚翼プロペラを用いて25℃、400rpmの条件で攪拌しながら、被覆製剤1gを加え、10分間撹拌する。撹拌後の懸濁液を濾紙で濾過した後、濾液をHPLCで分析し、芯材のエリア面積から含量を測定し、被覆製剤当たりの芯材溶出量とする。
芯材全量と芯材溶出量の値を用いて、下記計算式により溶出率を算出する。
溶出率(%)=(被覆製剤1g当たりの芯材溶出量)/(被覆製剤1g当たりの芯材全量)×100
【0037】
(HPLC条件)
HPLC:(Prominence、株式会社島津製作所製)
カラム:Shiseido CAPCELL PAK(5μm 4.6Φ×250mm)
カラム温度:40℃
検出:UV210nm
流速:1.0ml/min
注入量:20μl
溶離液:1mM 1-オクタンスルホン酸ナトリウム/pH2.1リン酸
ただし、ソルビン酸塩の場合は下記の条件で行う。
カラム:YMC PACK ODS-A
検出:UV230nm
溶離液:1%酢酸水溶液:メタノール:アセトニトリル=7:2:1(容量)
【0038】
本発明の被覆製剤の圧縮度は、15%以下であるのが好ましく、1~13%がより好ましく、2~10%がさらに好ましい。圧縮度が15%を超える場合、被覆製剤の被覆層の定着が悪く、飛散性が高くなる傾向がある。本発明における圧縮度は、下記計算式により、算出された値を意味する。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm3)-ゆるめかさ密度(g/cm3)]/固めかさ密度(g/cm3)×100
【0039】
上記圧縮度を算出するためのゆるめかさ密度および固めかさ密度は、ゆるめかさ密度が0.50~0.85g/ cm3、固めかさ密度が0.55~0.90g/cm3であるのが好ましく、ゆるめかさ密度が0.60~0.83g/cm3、固めかさ密度が0.65~0.88g/cm3であるのがより好ましく、ゆるめかさ密度が0.65~0.80g/cm3、固めかさ密度が0.70~0.85g/cm3であるのがさらに好ましい。
【0040】
本発明の被覆製剤の安息角は、30~50°であるのが好ましく、32~48°がより好ましく、35~45°がさらに好ましい。安息角が30°未満の場合、被覆製剤の飛散性が高くなる傾向がある。50°を超える場合、流動性が低くなりハンドリング性が悪くなる。
【0041】
本発明の被覆製剤の分散度は、1~20%であるのが好ましく、2~15%であるのがより好ましく、3~12%であるのがさらに好ましい。分散度が1%未満の場合、被覆製剤の流動性が悪くなる傾向があり、20%を超える場合、被覆製剤の飛散性が高くなる傾向がある。
【0042】
上記、安息角、ゆるめかさ密度、固めかさ密度および分散度は、パウダテスタ(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定される値である。
【0043】
本発明の被覆製剤は、平均粒子径が200~1500μmとなるように調製されるのが好ましく、250~1200μmであるのがより好ましく、300~800μmであるのがさらに好ましい。被覆製剤の平均粒子径が200μm未満の場合、バッター液等の食品に添加した際にダマが生じ易く、1500μmを超える場合、食品に添加した際に製剤が沈殿または偏在し易くなるため、いずれにおいても食品製造後の物性や日持ち効果が不十分となる可能性がある。
【0044】
本発明における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)を用いて乾式法にて測定した累積50%(D50)となる値を指すものである。ただし、平均粒子径が1000μmを超えるものについては篩分け法にて測定した値を用いる。
【0045】
本発明の被覆製剤は、食品用日持ち向上剤として利用可能であり、食品の味質や風味に影響を与えない範囲で公知の粉末食品添加用成分を配合してもよい。
【0046】
配合可能な食品添加用成分としては、特に限定されないが、例えば、有機酸、無機酸、脂肪酸、脂肪酸エステル、塩基性蛋白・ペプチド、アミノ酸等が例示される。これらの食品添加用成分は、2種以上を配合してもよい。
【0047】
本発明の食品用日持ち向上剤に配合し得る有機酸としては、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等が好ましく、これらの有機酸粒子を、硬化油を主成分とする被覆材で被覆したもの(それぞれ被覆フマル酸、被覆コハク酸、被覆酒石酸、被覆アジピン酸、被覆リンゴ酸、被覆クエン酸、被覆ソルビン酸と称することがある)がより好ましい。その中でも、pH調整効果と食品の味質への影響の点から被覆フマル酸、被覆コハク酸、被覆クエン酸、被覆ソルビン酸が好ましく、被覆フマル酸、被覆ソルビン酸がさらに好ましい。これらの有機酸は2種以上を配合してもよい。
【0048】
本発明の食品用日持ち向上剤に配合し得る無機酸としては、リン酸が挙げられる。脂肪酸としてはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の炭素原子数6~18の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。塩基性蛋白・ペプチドとしてはプロタミン、リゾチーム、ε-ポリリジン、キトサン、ペクチン分解物、ナイシン等が挙げられる。アミノ酸としてはグリシン、アラニン等が挙げられる。これらの成分は2種以上を配合してもよい。
【0049】
本発明の食品用日持ち向上剤に配合し得る食品添加用成分の割合は、被覆製剤100重量部に対し、0.1~500重量部が好ましく、1~300重量部がより好ましく、5~100重量部がさらに好ましい。
【0050】
本発明の食品用日持ち向上剤に配合し得る食品添加用成分は、平均粒子径が100~1500μmであるものが好ましく、150~1000μmであるものがより好ましく、200~800μmであるものがさらに好ましい。平均粒子径が100μm未満、あるいは1500μmを超える場合、保管中や輸送中に偏析が生じやすい傾向がある。
【0051】
本発明の食品用日持ち向上剤は、目的に応じて、さらに他の粉末成分を配合してもよい。配合可能な粉末成分としては、例えば、澱粉、デキストリン等の賦形剤、第三リン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素、プルラン、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等の固結防止剤が例示される。
【0052】
本発明の食品用日持ち向上剤は、加熱工程を含む加工を経て得られる食品へ、加熱工程前に添加し、加熱工程後の食品の日持ちを向上させるために用いられる。食品に対する添加量は、食品の種類や状態によって得られる保存効果や味質への影響が異なるため、所望する保存効果や味質が得られるように適宜調整すればよい。従来知られている日持ち向上剤を配合した際の、最終的な被覆材以外の各成分の添加量から添加量を決めても良い。
【0053】
食品への添加方法としては、例えば揚げ物に添加する場合、バッター液に添加する方法、パン粉等の衣材に添加する方法、打ち粉に添加する方法、具材に直接添加する方法等が挙げられ、2種以上の方法を組み合せてもよい。
【0054】
揚げ物に添加する場合の好ましい態様としては、本発明の食品用日持ち向上剤を、バッター液全量に対し0.2~2重量%、好ましくは0.3~1.5重量%を目安に添加する方法が挙げられる。他の好ましい態様としては、本発明の食品用日持ち向上剤を、パン粉等の衣材全量に対し0.3~2重量%、好ましくは0.5~1.5重量%を目安に添加する方法が挙げられる。また、他の好ましい態様としては、本発明の食品用日持ち向上剤を、打ち粉全量に対し10~30重量%、好ましくは15~25重量%を目安に添加する方法が挙げられる。さらに、他の好ましい様態としては、本発明の食品用日持ち向上剤を、具材全量に対し、0.2~2重量%、好ましくは0.3~1重量%を目安に添加する方法が挙げられる。
【0055】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、バッター液とは、揚げ物において具材の表面を被覆し衣を形成する衣液のことを言い、小麦粉、片栗粉、澱粉、コーンスターチ、大豆蛋白質、卵、乳製品等の材料を水に溶いたものである。
【0056】
本発明の食品用日持ち向上剤を他の食品へ添加する方法としては、例えばパンに添加する場合には、中種法で製造する場合、中種生地及び/または本捏生地に練り込んで製造することができる。通常の30~70%中種法や液種法では本捏生地に添加することが好ましいが、100%中種法や直捏法等の場合は、小麦粉等の粉末原料と共に生地に練り込むことが好ましい。その他、中麺法の場合は、小麦粉と水等で中麺をつくり、一定時間ねかせた後、残りの材料と共に添加して練り込む方法が挙げられるが、これらの方法に限定されない。菓子類の製造方法の例としてはシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法が挙げられ、これらにおいても生地の粉末原料と共に練り込む方法が好ましい。
【0057】
本発明の食品用日持ち向上剤は、加熱工程を含む加工食品であればいずれにも適用可能であり、例えば、コロッケ、メンチカツ、トンカツ、フライドチキン、唐揚げ、天ぷら、かき揚げ、魚フライ、エビフライ、さつま揚げ、チキンナゲット等の揚げ物、食パン、バターロール、ソフトロール、ハードロール、セミハードロール、フランスパン、イングリッシュマフィン、ハンバーガーバンズ、スイートロール、ペストリー、デニッシュ等のパン類、パイ、シュー、ドーナツ、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン、蒸しパン、どら焼き、カステラ等の和洋菓子類を含めた小麦粉加工品等に好適に用いられる。
【0058】
本発明はまた、本発明の食品用日持ち向上剤を含有する、食品材料を提供する。食品材料としては、食品添加用被覆製剤および穀物粉またはパン粉を含有するプレミックス粉が例示される。プレミックス粉としては、パン類、ケーキ類、ピザ類用のプレミックス粉のほか、調理用のプレミックス粉としてバッター用、衣用のプレミックスなどのが例示される。プレミックス粉には、穀物粉またはパン粉のほか、これらに限定されないが糖類、油脂、脱脂粉乳、卵粉、膨張剤、食塩、香料などを適宜配合することができる。本発明のプレミックス粉は本発明の食品添加用被覆製剤を従来知られているプレミックス粉に添加する、あるいは従来知られているプレミックス粉に添加されている日持ち向上剤に代えて本発明の食品添加用被覆製剤または本発明の日持ち向上剤を添加することによって製造することができる。
【0059】
本発明はさらに、本発明の食品添加用被覆製剤、穀物粉および油脂を含み、冷凍されているプレミックス生地を提供する。本発明の冷凍プレミックス生地としては、パン、ケーキ、ピザ、パイシートなどが例示される。本発明の冷凍プレミックス生地は、従来公知の冷凍生地の成分に本発明の食品添加用被覆製剤又は日持ち向上剤を添加する、あるいは従来知られている冷凍プレミックス生地に添加されている日持ち向上剤に代えて本発明の食品添加用被覆製剤または日持ち向上剤を添加することにより製造することができる。
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0061】
実施例1~4および比較例1~4
食品添加用被覆製剤の調製
表1および2に示す割合で被覆製剤A~Hを調製した。各被覆製剤の調製には、下記材料を用いた。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)3000、マルバーン社製)を用いて乾式法にて測定し、累積50%(D50)となる値を表1および2に示した。ただし、平均粒子径が1000μmを超えるものについては篩分け法にて測定した値を示した。
【0062】
・酢酸ナトリウム(無水)(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製)
・酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸の混合物:粉末酢酸(三菱ケミカル株式会社製)
・ソルビン酸カリウム顆粒(Celanese Production Germany GmbH & Co. KG製)
・炭酸水素ナトリウム(AGC株式会社製)
・パーム硬化油(融点:58℃、横関油脂工業株式会社製)
【0063】
酸類粒子を流動層コーティング装置(FD-MP-01、株式会社パウレック製)に仕込み、スプレー圧0.2MPa、払い出し圧0.2MPa、払い出し時間/インターバル0.3s/4s、ローター回転数300~400rpm、90℃で加熱溶融したパーム硬化油からなる被覆材を25g/minの速度で供給し給気温度45~49℃で冷却し、被覆製剤A~Gを得た(実施例1~4、比較例1~2)。
【0064】
酸類粒子を5L竪型ニーダー(5NDM-Qr、株式会社品川工業所製)に仕込み、ピンミル(コロプレックス160Z、ホソカワミクロン株式会社製)で平均粒子径36.2μmに粉砕したパーム硬化油からなる被覆材をジャケット温度55℃で35分間加熱混合した。次に、0.5℃/分で降温させながら、40℃になるまで60分間撹拌冷却して、被覆製剤Hを得た(比較例3)。
【0065】
酸類粒子を5L竪型ニーダー(5NDM-Qr、株式会社品川工業所製)に仕込み、ピンミル(コロプレックス160Z、ホソカワミクロン株式会社製)で平均粒子径36.2μmに粉砕したパーム硬化油からなる被覆材を仕込み、これらの粉体のいずれもが溶解しない温度として25℃で予備混合した。この混合物を、40rpmで攪拌しながら25℃から75℃まで、昇温速度0.5℃/分にて100分間加熱した。次に、第1段階の冷却工程として、40rpmで攪拌しながら冷却速度10℃/時間で50℃まで2.5時間冷却した。第2段階の冷却工程として、40rpmで攪拌しながら冷却速度4℃/時間で30℃まで5時間冷却し、被覆製剤Iを得た(比較例4)。
【0066】
安息角、ゆるめかさ密度、固めかさ密度および分散度の測定
パウダテスタ(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定した。安息角は、目開き1000μmの篩を用い、振動時間180秒間の条件で測定した。ゆるめかさ密度は、目開き1000μmの篩を用い、静置した100mL容円筒形容器に、直上からサンプルを振幅1.5mm、動作時間30秒間の条件で供給し、過剰サンプルは摺り切り、内容量を精秤することにより求めた。固めかさ密度は、ストローク幅18mmで180回タッピングした後の比重である。分散度は、10gの粉体を規定の高さから落下させ、下部に設置したウオッチグラス上に残る粉体の量から評価した。結果を表1および2に示す。
【0067】
溶出率の測定
被覆製剤0.1gを脱イオン水30mlに加え、80℃で溶解させた後、25℃になるまで冷却した。冷却後、溶液をHPLCで分析し、芯材のエリア面積から含量を測定し、被覆製剤当たりの芯材全量とした。
次に、イオン交換水500mlにラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、三枚翼プロペラを用いて25℃、400rpmの条件で攪拌しながら、被覆製剤1gを加え、10分間撹拌した。撹拌後の懸濁液を濾紙で濾過した後、濾液をHPLCで分析し、芯材のエリア面積から含量を測定し、被覆製剤当たりの芯材溶出量とした。
芯材全量と溶出量の値を用いて、下記計算式により溶出率を算出した。結果を表1および2に示す。
溶出率(%)=(被覆製剤1g当たりの芯材溶出量)/(被覆製剤1g当たりの芯材全量)×100
【0068】
(HPLC条件)
HPLC:(Prominence、株式会社島津製作所製)
カラム:Shiseido CAPCELL PAK(5μm 4.6Φ×250mm)
カラム温度:40℃
検出:UV210nm
流速:1.0ml/min
注入量:20μl
溶離液:1mM 1-オクタンスルホン酸ナトリウム/pH2.1リン酸
ただし、ソルビン酸塩の場合は下記の条件で行う。
カラム:YMC PACK ODS-A
検出:UV230nm
溶離液:1%酢酸水溶液:メタノール:アセトニトリル=7:2:1(容量)
【0069】
本発明の食品添加用被覆製剤A~Dは、芯材の溶出が抑制されていることが確認された。
【0070】
【0071】
【0072】
実施例5~8および比較例5~12
バッター液の粘度低下抑制試験
500mlのステンレス製カップに薄力粉(株式会社日清製粉ウェルナ製)50gと冷却水150gと表1および2に示す芯材または被覆製剤A~Hを芯材が3重量%となるよう混合した。
次に、ハンドブレンダー(バーミックスM133、ESGE社製)を用いて回転数10000rpmで1分間撹拌し、バッター液を調製した。得られたバッター液を円筒形アルミ製容器(内径36mm、高さ67mm)に移し、RVA Super3(Newport Scientific Pty., Ltd製)を用いて、温度10℃、パドル回転数100rpmの条件で、10分間経過時の粘度を測定した。粘度低下の程度は、製剤無添加のバッター液粘度(cP)から、製剤添加したバッター液粘度(cP)を差し引いた差(cP)で評価した。粘度が低下しなかったものは粘度低下0(cP)とした。
また、粘度低下率を下記計算式にて算出した。結果を表3~5に示す。
バッター液の粘度低下率(%)=[バッター液Xの粘度(cP)-バッター液Yの粘度(cP)]/[バッター液Xの粘度(cP)]×100
バッター液X:薄力粉と冷却水のみで調製したバッター液(無添加)
バッター液Y:製剤または芯材を添加したバッター液
尚、バッター液の粘度低下率15%未満を粘度低下抑制効果ありと判断した。
【0073】
【表3】
粘度が低下しなかったものは粘度低下0(cP)とした。
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の食品添加用被覆製剤A~Dは、バッター液の粘度低下が抑制されていることが確認された。一方、本発明の方法と異なる芯材比率で製造した被覆製剤EおよびF、本発明の方法と異なる被覆方法で製造した被覆製剤GおよびHは、バッター液の粘度低下抑制効果が十分ではなかった。
なお、本発明の食品添加用被覆製剤を用いて製造した実施例のバッター液に添加された被覆製剤に含まれる芯材酸類粒子の量並びに硬化油の量は、得られるバッター液を用いて調理した揚げ物において、油調後に十分な日持ち向上効果が付与され、また加熱調理後の味質に影響が無いことを予め確認した量である。
【0077】
実施例9および比較例13
食パン生地の発酵阻害抑制試験
表6に示す原材料に対し、上記実施例で調製した被覆製剤Aを粉末材料に対し0.71重量%(酢酸ナトリウムとして0.5重量%)添加し、ホームベーカリー(SD-BMT2000、パナソニック株式会社製)を用いて混合し、食パン生地を製造した。
【0078】
また、被覆製剤Aを未被覆の酢酸ナトリウムAに変更した以外は同様にして食パン生地を製造した。尚、酢酸ナトリウムAを添加せずに製造した食パン生地を対照とした。
【0079】
得られた食パン生地70gを200mlのトールビーカー(直径60mm、高さ115mm)に詰め、温度27℃、湿度75%に設定した恒温恒湿器内で一次発酵させた。一次発酵は90分間行い、15分間経過毎に生地の高さを測定した。結果を表7に示す。また、90分間経過後の食パン生地の状態を
図1に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
本発明の被覆製剤Aを用いて製造した食パン生地は、酢酸ナトリウムA無添加品(対照)と同等の高さに生地が膨張しており、発酵阻害は確認されなかった。一方、未被覆の酢酸ナトリウムAを添加した食パン生地は、生地の膨張が小さく、発酵が阻害されていた。
【0083】
実施例10および比較例14
食パンの弾力性測定試験
上記の製造方法で得られたパン生地を一次発酵、ガス抜き、二次発酵(温度38℃、湿度85%、1時間)、焼成(ホームベーカリー設定)し、食パンを製造した。得られた食パンは、室温約20℃で1時間放冷した後、チャック袋に入れて、25℃の恒温器内に所定の時間静置した後、以下の試験に供した。
【0084】
また、被覆製剤Aを未被覆の酢酸ナトリウムAに変更した以外は同様にして食パンを製造した。尚、酢酸ナトリウムを添加せずに製造した食パンを対照とした。
【0085】
製造後1日目と3日目の食パンを厚さ2cmにスライスし、パンの耳を切り落とし、クラム部分をさらに半分にカットし6cm×4cm×厚さ2cmのサンプル片を得た。この1切片を供試サンプルとし、レオメーター(CR-500DX、株式会社サン科学製)を用いて、測定モード「20」、プランジャーが「直径2cmの円盤状」、試験台速度が0.5mm/minにてサンプルを厚さ方向に約1cmまで押した際の最大荷重値(g)を測定した。合計6サンプルを測定し、最大値と最小値を除いた4サンプルの平均値を算出した。結果を表8に示す。
【0086】
【0087】
本発明の被覆製剤Aを添加した食パンは、発酵阻害が抑制された結果、対照と同等の弾力性を有していた。一方、未被覆の酢酸ナトリウムAを添加した食パンは、発酵阻害の影響から弾力性に劣る結果となった。
なお、本発明の食品添加用被覆製剤を用いて製造した実施例の食パン生地に添加された被覆製剤に含まれる芯材酸粒子の量並びに硬化油の量は、焼成後の食パンにおいて十分な日持ち向上効果が付与され、また加熱調理後の味質に影響が無いことを予め確認した量である。
【0088】
実施例11~14
食品用日持ち向上剤の調製
上記実施例で製造した被覆製剤A、被覆製剤Bと市販の食品添加用成分を表9に示す割合で混合し、食品用日持ち向上剤を調製した。尚、各日持ち向上剤の調製には、下記材料を用いた。
【0089】
・被覆フマル酸(FL-60、株式会社ウエノフードテクノ製)
・被覆ソルビン酸(SR-K、株式会社ウエノフードテクノ製)
・グリシン(昭和電工株式会社製)
・ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルP-1670、三菱ケミカル株式会社製)
・デキストリン(パインデックス#100、松谷化学工業株式会社製)
【0090】