(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006314
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】エアコン室外機の保護システムの構築方法およびエアコン室外機の保護システム
(51)【国際特許分類】
F24F 1/58 20110101AFI20250109BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F24F1/58
F24F13/20 202
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107026
(22)【出願日】2023-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】514007966
【氏名又は名称】合資会社GS工事
(74)【代理人】
【識別番号】100181940
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】成田 明
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA01
3L054BB01
3L054BB02
3L054BB03
(57)【要約】
【課題】 エアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法を提供する。
【解決手段】 水平面に対して天板3の上面が、エアコン室外機2の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように架台4が天板3を支持し、正面視において、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面に間隙5を有するように架台4が天板3を支持し、側面視において、架台4に貫通穴4aを有し、平面視において、エアコン室外機2の筐体の上面が天板3によって隠れるようにエアコン室外機の保護システム1を構築する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
を満たすように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項2】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
前記天板は、両端に貫通する中空構造を有する第5の要件と、
を満たすように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアコン室外機の保護システムの構築方法によって前記エアコン室外機の筐体の上部に構築されたエアコン室外機の保護システム。
【請求項4】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムであって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角で前記エアコン室外機の上部に設置可能となるように前記架台が前記天板を支持し、
正面視において、前記架台が視認されるように前記架台が前記天板を支持し、
側面視において、前記架台に貫通穴を有し、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面よりも前記天板の方が面積が大きく、
前記天板が、両端に貫通する中空構造を有するエアコン室外機の保護システム。
【請求項5】
前記天板の上面が断熱塗料によって塗膜形成されたことを特徴とする請求項4に記載のエアコン室外機の保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法およびエアコン室外機の保護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、異常気象により大小さまざまな被害が発生している。建築物に係る設備レベルでは、エアコン室外機が雹(ひょう)などによって破壊される被害がでている。例えば、エアコン室外機に内蔵される熱交換器は、筐体によって守られているが、大粒の雹の直撃によって損傷することがある。
【0003】
雹などの飛来物からエアコン室外機を保護する方法としては、保護用の天板の設置が挙げられる。エアコン室外機の筐体の上部に、十分な大きさの天板が設置されることで、エアコン室外機を飛来物から保護することが可能になる。
【0004】
しかしながら、エアコン室外機を保護するための天板に関しては、エアコンそのものに比べ、市場が発達しておらず、技術の進展が遅いのが現状である。エアコン室外機の筐体が内部の熱交換器などを保護する役目を兼ねているため、そのようなエアコン室外機をあえて保護する必要はなかったことが理由として挙げられる。
【0005】
そのような中、エアコン室外機の上部に天板などが設けられる先行技術として、エアコン室外機を日除けする屋根の底面に室外機の幅に合わせて略左右対称に固定穴を設け、その固定穴にねじ等で支持固定するL形状の屋根固定具を前記室外機天面の両側部左右に配置し、その屋根固定具と室外機の天面の左右コーナー部に外接して固定させる支持具を介して前記屋根固定具との固定面上で、ある指定の範囲で角度を変更可能にさせることで日除け屋根の取付角度を可変できる構成としたエアコン室外機の日除け屋根が挙げられる(特許文献1)
【0006】
また、同様の技術として、エアコン室外機を直射日光から保護するエアコン室外機用日除けカバーにおいて、前記エアコン室外機の天面を覆うカバー本体と、前記天面に載置され前記カバー本体を前記天面から浮かして支持する支持部材と、前記エアコン室外機に巻き付けられ前記支持部材を前記天面に固定するバンド部材と、を有することを特徴とするエアコン室外機用日除けカバーが挙げられる(特許文献2)。
【0007】
特許文献1に係る発明は、日除け屋根を傾斜させることで積雪や落葉の付着を解消できる可能性がある。しかしながら、エアコン室外機の正面や側面において通風路が確保されておらず、設置状態によっては、エアコン室外機と日除け屋根の間に熱だまりが生じる可能性がある。熱だまりは、エアコンの電力負荷を大きくし、省エネ効率を低下させる要因になる。
【0008】
特許文献2に係る発明は、エアコン室外機と日除けカバーに所定の空間を有するため、この部分が通風路として機能する可能性がある。しかしながら、支持部材の内部に熱だまりが生じる可能性がある。また、日除けカバーが水平なため、垂直に落下してくる飛来物の衝撃が大きく、さらに、雪などが堆積する可能性がある。
【0009】
このように、エアコン室外機の上部に保護用の天板を構築するにあたっては、エアコン室外機の保護と同時にエアコンへの稼働上の負荷を少なくすることやメンテナンスが極力かからないこと、すなわち、エアコンの安定した稼働が可能となるような構造や設置など、十分な配慮が求められる。しかしながら、そのような天板を構築するための指標がないため、エアコン室外機の保護と安定稼働を両立させることは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-159809号公報
【特許文献2】特開2013-249984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、簡易にエアコン室外機の保護とエアコンの安定稼働を両立するエアコン室外機の保護システムの構築方法を提供することである。
【0012】
第1の発明は、天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、を満たすように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法である。また、第2の発明は、天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、前記天板は、両端に貫通する中空構造を有する第5の要件と、を満たすように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法である。また、第3の発明は、第1または2の発明のエアコン室外機の保護システムの構築方法によって前記エアコン室外機の筐体の上部に構築されたエアコン室外機の保護システムである。また、第4の発明は、天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムであって、水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角で前記エアコン室外機の上部に設置可能となるように前記架台が前記天板を支持し、正面視において、前記架台が視認されるように前記架台が前記天板を支持し、側面視において、前記架台に貫通穴を有し、平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面よりも前記天板の方が面積が大きく、前記天板が、両端に貫通する中空構造を有するエアコン室外機の保護システムである。また、第5の発明は、前記天板の上面が断熱塗料によって塗膜形成されたことを特徴とする第4の発明のエアコン室外機の保護システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、エアコン室外機の保護システムの構築にあたり、天板の上面が所定の傾斜角であること、エアコン室外機の筐体の上面と天板の底面に通気路となる間隙があること、架台に貫通穴があること、天板がエアコン室外機を保護する大きさであることを要件とすることで、簡易にエアコン室外機の保護とエアコンの安定稼働を両立できるようになることが期待できる。また、天板内部が中空構造を有することで、太陽光などの外的要因がエアコン室外機に与える影響を軽減し、エアコン室外機の保護とエアコンの安定稼働を期待できる。また、本発明は、天板の上面が断熱塗装されることで太陽光などの外的要因がエアコン室外機に与える影響を軽減し、エアコン室外機の保護とエアコンの安定稼働を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】エアコン室外機の保護システムの設置状態の例である。
【
図2】エアコン室外機の保護システムの設置状態の側面図の例である。
【
図3】エアコン室外機の保護システムの設置工程の例である。
【
図4】エアコン室外機の保護システムの設置状態の正面図の例である。
【
図5】エアコン室外機の保護システム部分(左図の円で囲まれた部分)の拡大図(右図)であり、正面視上下中央線での片側断面と通風イメージ図である。
【
図6】エアコン室外機の前後方向と左右方向における通風イメージ図である。
【
図7】エアコン室外機の保護システムの有無と表面温度の確認結果である。
【
図8】断熱塗料によって形成された塗膜の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
以下、本発明の実施形態である。
本実施例は、ビルの屋上に設置されたエアコン室外機が対象である。
【0016】
図1は、エアコン室外機の保護システム1(以下、「保護システム」と言う。)がエアコン室外機2の上部に設置された状態を示すものである。保護システム1は、主に、天板3と当該天板3を支持する架台4からなる。また、
図2は、エアコン室外機2と保護システム1の側面図の例である。本発明において、保護システム1の正面、側面、平面の3面は、エアコン室外機2のそれと同じである。
【0017】
<天板>
保護システム1に係る平板状の天板3は、その内部が両端に貫通する通風路(通気路)3aを備えた中空構造である。また、天板3は樹脂成形されたものであるが、素材はこれに限定されるものではなく、金属製や木製などでもよい。また、通気路3aは、形状が限定されるものではなく、三角形、四角形、六角形、円形その他どのような断面形状となるものでもよい。
【0018】
<架台>
保護システム1に係る架台4は、天板3の底面から天板3を支え、エアコン室外機2の筐体の上面に設置される。架台4の底面はエアコン室外機2の筐体の上面と密着し、架台4の上面は天板3の底面に密着して天板3が水平面(エアコン室外機2の筐体の水平な上面)に対して一定の傾斜角となるように傾斜する。
【0019】
また、本実施例において、架台4の側面には、貫通穴(孔)4aが設けられている。天板3の中空構造と同じく、孔4aは、保護システム1の左右に貫通する通気路を構成し、保護システム1の設置状態において横風を通過させ、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の間に熱だまりが発生するのを防ぐ役割を果たす。ここで、孔4aの形状は、天板3の通気路3aと同じく限定されるものではない。また、これらの開口面積の合算値は、通風の観点からは大きい方がよく、架台の側面の面積の3分の2以上あることが好ましい。
【0020】
また、架台4は、強風に対する耐久性において重要な部分である。本実施例における架台4は、前面と後面がそれぞれ湾曲し、凸状に対向している。また、架台4の前面は上に行くほど架台4の後面から遠ざかるように、後面は下に行くほど前面から遠ざかるように湾曲した形状になっている。これは、天板3の上面に対する風圧に耐久性を有する構造である。本実施例にいて、架台4は樹脂成形されたものであるが、素材は限定されるものではなく、金属製や木製などでもよい。
【0021】
<保護システムの施工>
以下、保護システム1の施工例である。
図3の写真の左から右にかけてあらわされる手順によって、ビルの屋上に設置されたエアコン室外機2の筐体の上部に、保護システム1が構築された。
【0022】
図3が示すように、エアコン室外機2の筐体面が洗浄された(左端の写真)。筐体面が汚れた状態だと、保護システム1の設置などに不具合が生じるからである。筐体の上面、側面、前面、後面などの汚れは、水洗いとブラシによって除去された。
【0023】
次に、エアコン室外機2の筐体の上面が塗装された(
図3の左から2番目の写真)。これは、エアコン室外機2の筐体の上面をクリーンな状態に維持するための措置である。塗装によってエアコン室外機2の筐体の上面は滑らかな状態となり、粉塵などの蓄積が低減される。また、当該塗装は、エアコン室外機2の筐体の上面と架台4との接着性向上のためでもある。ただし、当該措置は、必ずしも必須のものではない。
【0024】
塗装が乾燥した後、エアコン室外機2の筐体の上面と架台4の底面が両面テープ(アイカ工業製、セラール専用テープ、粘着力N6.5)によって接着された(
図3の左から3番目の写真)。ただし、必ずしも両面テープによってこれらが固定化される必要はなく、ネジやバンド、接着剤その他の代替手段によるものでもよい。
【0025】
架台4は、エアコン室外機2の筐体の上面において、所定の間隔をおいた左右2箇所に設置された。当該間隔については限定されるものではないが、例えば、エアコン室外機2の筐体の上面の横方向において、横幅比が1:4:1に区切られる2箇所の位置での架台4の設置が挙げられる。
【0026】
エアコン室外機2の筐体の上面に架台4が設置された後、架台4の上面と天板3の底面が合わされた状態で、等間隔に4カ所がビス止めされ、架台4に天板3が固定された(
図3の右端の写真)。ただし、この固定方法は限定されるものではなく、上記の両面テープや接着剤などによるものでもよい。
【0027】
本発明における天板3と架台4の構造、固定状態およびエアコン室外機の筐体上部への保護システム1の設置状態は、次の要件を満たすものである。
【0028】
水平面に対して天板3の上面が、エアコン室外機2の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように架台4が天板3を支持することである。このように天板3の上面が傾斜して設置されることで、雹など垂直に落下してくる飛来物の衝撃をやわらげるとともに、天板3の上面における雪などの堆積を防ぐことが可能になる。天板3の表面が滑らかな場合、天板3の上面の傾斜角は、少なくとも7度あることが好ましい。
【0029】
エアコン室外機2と保護システム1の正面視(
図4の状態)において、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面に間隙5を有すること(言い換えると、正面視において、架台4の少なくとも一部が視認されること)である。
図4は、保護システム1の設置状態の正面図の例である。本図に示されるエアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面の間隙5が通気路となる。
【0030】
具体的には、
図5の保護システム1の拡大断面図(エアコン室外機2を除く保護システム1の正面視上下中央線での片側断面図)(
図5の右図)の矢印が示すように、エアコン室外機2の前後方向の通風が可能となる。このようにして、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面の間の熱だまりを防ぐことができる。
【0031】
エアコン室外機2と保護システム1の側面視(
図2の状態)において、それぞれの架台4の側面両側の空間を連通し、通気路を形成するように架台4が孔4aを有することである。ここで、
図6は、エアコン室外機2の前後方向と左右方向における通風イメージ図である。
【0032】
本図が示すように、それぞれの架台4の孔4aは、エアコン室外機2の筐体の上面の左右方向における通気路となるため、熱だまりを防ぐことが可能になる。孔4aの大きさや形は限定されるものではないが、十分な通気のためには通気路の断面積は所定以上の大きさがよい。例えば、孔4aは架台4の側面の上下および左右方向に通気の偏りが大きくならないように設けられ、孔全体で架台の側面の面積の3分の2以上の開口面積が確保されていることが好ましい。
【0033】
エアコン室外機2と保護システム1の平面視(図省略)において、エアコン室外機2の筐体の上面が天板3によって隠れることである。エアコン室外機2の筐体の上面をすべてカバーする大きさの天板3は、雹などの飛来物のエアコン室外機2への直撃を防ぐことが可能になる。
【0034】
天板3が、両端に貫通する中空構造を有することである。これにより、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面の間隙(第1の空気層)5と、天板内部の中空構造(第2の空気層)3aとの2層の空気層が確保される。それぞれの空気層は通気路にもなり、熱を拡散させるとともに、断熱層として日射による夏季の高温化などの影響がエアコン室外機に及ぶのを緩和することが可能になる。
【0035】
<結果および考察>
各種検討の結果、上記構成および施工によって構築された保護システム1は、耐久性と所定の機能を両立することが確認された。まず、耐久性に関しては、設置1年経過後においても、目立った外観の劣化や設置上の安定性の低下は確認されなかった。
【0036】
従来、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面の間に発生することがあった熱だまりは、保護システム1により解消することが確認された。
図7は、夏季における赤外線サーモグラフィーによる同一のエアコン室外機2(
図1のエアコン室外機とは別のエアコン室外機)の筐体の表面温度の確認結果である。左図が、保護システム1が設置されなかった場合、右図が、保護システム1が設置された場合の表面温度の確認結果である。
【0037】
図7から得られた表面温度のデータからは、保護システム1が設置された場合の方が、エアコン室外機2の筐体の表面温度が平均10℃以上低いこと確認された(詳細は省略)。ここで、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面は、数mmレベルの近接した間隔の場合や通気路が確保されていない場合だと熱だまりが発生しやすいことがわかっている。
【0038】
このような場合における熱だまりの要因の一つとしては、エアコン室外機2の内部の熱交換器から発生した熱が筐体の上面で拡散しにくいことが挙げられる。これに対して、保護システム1は、熱の拡散が促される構造になっている。
【0039】
すなわち、エアコン室外機2と保護システム1の正面視において、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面に間隙5を有するため、エアコン室外機2の前方から後方または後方から前方への通気が妨げられない。
図5の矢印が示すような通気が可能となり、熱が拡散される。
【0040】
また、エアコン室外機2と保護システム1の側面視において、それぞれの架台4の側面両側の空間を連通し、通気路を形成するように架台4が孔4aを有するため、エアコン室外機2の左右側面の一方から他方への通気が妨げられない。
図6のエアコン室外機2の左右方向の矢印が示すような通気が可能となる。
【0041】
また、上記に加え、天板3が所定の傾斜角を有するため、夏季においては暖気が傾斜に沿って天板3の後部や、架台4の孔4aの上部などから拡散しやすくなる。そして、エアコン室外機2の後方に行くほど、天板3の傾斜によって大きくなる間隙5に従って架台4の側面の孔4aの開口面積も次第に大きくなっており、熱の拡散が促される。
【0042】
熱だまりが発生する他の要因としては、天板3が外部環境から受けた影響をエアコン室外機2側へと伝えることが挙げられる。天板3は、夏季には太陽光などによって高温化しやすく、冬季には雪などによって低温化しやすい。これらの影響は、エアコン室外機2の内部の熱交換器にとって負荷となる。
【0043】
本実施例の天板3は、内部が両端に貫通する通気路3aを備えた中空構造であり、太陽光や雪などの外部環境をエアコン室外機2側へと伝え難くなっている。エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面との間と、天板3の内部とに、第1の空気層と第2の空気層の2層の空気層が形成され、断熱などの効果を高めているからである。
【0044】
本実施例では、天板3は、内部が左右両端に貫通する中空構造のものが用いられた。これは、天板3の内部が通気路となって熱が拡散することが狙いだからである。ただし、天板3の内部の空気層によって所望の断熱効果が得られるのであれば、天板3の内部は、必ずしも貫通している必要はない。
【0045】
このように2層の空気層と熱を拡散させる所定の構造によって、保護システム1が設置された場合、夏季においては、設置前に比べてエアコン室外機2の筐体の上面の温度は低くなる。筐体の上面の温度が下がることによる電力削減効果は、冷水が用いられた追加試験によって確認された。
【0046】
すなわち、エアコン室外機2の筐体表面が、冷水が流れる冷水管との接触によって所定温度に制御された場合の消費電力と温度制御前の消費電力との比較試験が実施された。詳細は省略するが、エアコン室外機2の筐体表面(上面)は冷却による温度制御前が36℃、温度制御後は29℃であった。消費電力は、冷却による温度制御前が平均2.55kW、温度制御後が平均2.10kWであり、エアコン室外機2の筐体の表面温度が低くなることによる電力削減率は17.6%であることが確認された。
【0047】
上記追加試験からは、夏季においてエアコン室外機2の筐体の表面が低く制御されることで、エアコン室外機2内の熱交換器の負荷が軽減され、消費電力が少なくなることが示唆される。そして、本実施例では、エアコン室外機2の筐体の表面温度が夏季において平均10℃以上低くなった。すなわち、保護システム1がエアコン室外機2の効率化、安定稼働化に有用であることが確認された。
【0048】
天板3の傾斜角は、小さくなるほど水平状態に近くなり、エアコン室外機2の筐体の上面と天板3の底面の間隙が小さい場合に熱だまりが発生しやすくなる。しかしながら、天板3の傾斜角が大きくなるほどエアコン室外機2の筐体の上面をカバーするために大きな面積が必要となり、突風などの影響を受けやすくなる。これらを鑑みると、ビルの屋上など、エアコン室外機2以外に特段の構造物がない環境での天板3の傾斜角としては、例えば7度~10度の範囲が好ましい。
【0049】
天板3の大きさは、少なくとも、エアコン室外機2と保護システム1の平面視において、エアコン室外機2の筐体の上面が天板3によって隠れるレベルが求められる。雹は、ほぼ垂直に落下するため、天板3の上面の面積が当該レベルであればエアコン室外機2の保護が可能である。
【0050】
また、天板3の上面などが断熱塗装などによって断熱加工されたものでもよい。天板3の上面に断熱塗料が塗布され、断熱性の塗膜が形成された場合、夏季における太陽光による高温化や冬季における雪などによる低温化などの影響を軽減することができる。
【0051】
次の断熱塗装によって所定の断熱効果が確認された。すなわち、それぞれの粒径が数10μmレベルの軟質なアクリル中空ビーズと、硬質なセラミック中空ビーズとを含む塗膜形成材がエアコン室外機2の筐体表面に塗られ、乾燥後に形成された200~400μmの厚さの断熱塗膜による効果が確認された。
図8は、塗膜の拡大写真の例である。
【0052】
図8が示すように、塗膜中には、軟質なアクリル中空ビーズと硬質なセラミック中空ビーズが密な状態になって、断熱層を形成している。また、
図8において視認はできないが、セラミック中空ビーズの破片(粒径1μm未満)が塗膜の表層に存在し、太陽光の反射率の向上に寄与している(例として、80%以上の反射率の実現に寄与)。当該破片は、塗膜形成材中に混入されることで、塗膜の乾燥とともに水分の蒸発とともに塗膜表層部分に押し出されたものである。
【0053】
このように、当該塗料の塗布前と比べ、塗布後のエアコンの使用電力は削減されることが確認された。すなわち、保護システム1の天板3の上面に断熱塗装により塗膜形成されることで、太陽光などの外的要因による熱的な負荷の軽減が可能になる。天板3への断熱塗装は、特に、熱伝導性の高い天板素材の場合に有用である。
【0054】
断熱加工された天板の具体例としては、上面に、軟質なアクリル中空ビーズと硬質なセラミック中空ビーズが乾燥時に密な状態となって所定の膜厚(例えば200μm以上の膜厚)が形成され、セラミックの微細粉によって所定の反射率(例えば反射率80%以上)の反射層となるように塗膜表層が形成された天板が挙げられる。
【0055】
このような軟質な中空ビーズと硬質な中空ビーズによって形成された密な層は、弾性を有し、断熱効果だけではなく、雹などの衝撃を緩衝する。また、反射層の形成材が中空ビーズと同素材であることから、中空ビーズの製造過程で生じた微細粉の利用が可能であり、工数がかからず、簡易にエアコンの安定稼働に資する天板の構築が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、エアコン室外機を雹などから保護しつつ、省エネ、節電などの効果を高めるためのシステム構築に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 保護システム
3 天板
3a 通風路(通気路)
4 架台
4a 貫通穴(孔)
5 間隙
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
前記天板は、中空構造を有する第5の要件と、
を満たし、前記第2の要件の間隙によって形成される第1の空気層と前記第5の要件の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されるように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項2】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
前記天板は、両端に貫通する中空構造を有する第5の要件と、
を満たし、前記第2の要件の間隙によって形成される第1の空気層と前記第5の要件の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されるように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアコン室外機の保護システムの構築方法によって前記エアコン室外機の筐体の上部に構築されたエアコン室外機の保護システム。
【請求項4】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムであって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角で前記エアコン室外機の上部に設置可能となるように前記架台が前記天板を支持し、
正面視において、前記架台が視認されるように前記架台が前記天板を支持し、
側面視において、前記架台に貫通穴を有し、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面よりも前記天板の方が面積が大きく、
前記天板が、両端に貫通する中空構造を有し、
前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面の間隙によって形成される第1の空気層と前記天板の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されたエアコン室外機の保護システム。
【請求項5】
前記天板の上面が断熱塗料によって塗膜形成されたことを特徴とする請求項4に記載のエアコン室外機の保護システム。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
前記架台は、底面と、湾曲して凸状に対向する前面および後面と、上面と、からなる外周面を形成し、前記前面は、上に行くほど前記後面から遠ざかるように湾曲し、前記後面は、下に行くほど前記前面から遠ざかるように湾曲し、前記上面は、前記底面に対して傾斜し、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
前記天板は、中空構造を有する第5の要件と、
を満たし、前記第2の要件の間隙によって形成される第1の空気層と前記第5の要件の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されるように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項2】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムの構築方法であって、
前記架台は、底面と、湾曲して凸状に対向する前面および後面と、上面と、からなる外周面を形成し、前記前面は、上に行くほど前記後面から遠ざかるように湾曲し、前記後面は、下に行くほど前記前面から遠ざかるように湾曲し、前記上面は、前記底面に対して傾斜し、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角となるように前記架台が前記天板を支持する第1の要件と、
正面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面に間隙を有するように前記架台が前記天板を支持する第2の要件と、
側面視において、前記架台に貫通穴を有する第3の要件と、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面が前記天板によって隠れる第4の要件と、
前記天板は、両端に貫通する中空構造を有する第5の要件と、
を満たし、前記第2の要件の間隙によって形成される第1の空気層と前記第5の要件の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されるように前記エアコン室外機の筐体の上部に前記エアコン室外機の保護システムを構築するエアコン室外機の保護システムの構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアコン室外機の保護システムの構築方法によって前記エアコン室外機の筐体の上部に構築されたエアコン室外機の保護システム。
【請求項4】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムであって、
前記架台は、底面と、湾曲して凸状に対向する前面および後面と、上面と、からなる外周面を形成し、前記前面は、上に行くほど前記後面から遠ざかるように湾曲し、前記後面は、下に行くほど前記前面から遠ざかるように湾曲し、前記上面は、前記底面に対して傾斜し、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角で前記エアコン室外機の上部に設置可能となるように前記架台が前記天板を支持し、
正面視において、前記架台が視認されるように前記架台が前記天板を支持し、
側面視において、前記架台に貫通穴を有し、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面よりも前記天板の方が面積が大きく、
前記天板が、両端に貫通する中空構造を有し、
前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面の間隙によって形成される第1の空気層と前記天板の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成されたエアコン室外機の保護システム。
【請求項5】
天板と、前記天板の底面の所定箇所から前記天板を支持する架台と、によりエアコン室外機を氷雨から保護するエアコン室外機の保護システムであって、
水平面に対して前記天板の上面が、前記エアコン室外機の正面から背面にかけて所定の傾斜角で前記エアコン室外機の上部に設置可能となるように前記架台が前記天板を支持し、
正面視において、前記架台が視認されるように前記架台が前記天板を支持し、
側面視において、前記架台に貫通穴を有し、
平面視において、前記エアコン室外機の筐体の上面よりも前記天板の方が面積が大きく、
前記天板が、両端に貫通する中空構造を有し、
前記エアコン室外機の筐体の上面と前記天板の底面の間隙によって形成される第1の空気層と前記天板の中空構造によって形成される第2の空気層が上下2層となり前記エアコン室外機の筐体上部全域に形成され、
前記天板の上面が軟質なアクリル中空ビーズと、硬質なセラミック中空ビーズと、前記セラミック中空ビーズが破砕してできた微細粉と、を含む断熱塗料によって塗膜形成されたことを特徴とする請求項4に記載のエアコン室外機の保護システム。