(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006316
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20250109BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20250109BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
B60C11/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107028
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】平間 充
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC18
3D131CB06
3D131EA10V
3D131EA10W
3D131EA10X
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB22X
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EB46X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EC01V
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にしたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1は子午線断面において陸部21~25のエッジ位置及びトレッド部1の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインTLを有し、子午線断面において陸部21~25の踏面がそれぞれプロファイルラインTLよりもタイヤ径方向外側に突出しており、各陸部21~25の踏面のプロファイルラインTLからの突出量が0.05mm~1.00mmであり、陸部21~25のうち少なくとも1列の陸部に該陸部内で終端する周方向細溝15が配置され、周方向細溝15が配置された陸部の突出量が最も大きい位置から周方向細溝15の溝幅中心までのタイヤ幅方向の距離Aと周方向細溝15が配置された陸部の幅W
1とは0≦A≦W
1/4の関係を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部とを有するタイヤにおいて、
前記トレッド部は子午線断面において前記陸部のエッジ位置及び前記トレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有し、子午線断面において前記陸部の踏面がそれぞれ前記プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出しており、各陸部の踏面の前記プロファイルラインからの突出量が0.05mm~1.00mmであり、前記陸部のうち少なくとも1列の陸部に該陸部内で終端する周方向細溝が配置され、該周方向細溝が配置された陸部の突出量が最も大きい位置から該周方向細溝の溝幅中心までのタイヤ幅方向の距離Aと該周方向細溝が配置された陸部の幅W1とが0≦A≦W1/4の関係を満たすことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記周方向細溝の溝幅が0.4mm~2.0mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記周方向細溝の溝長さが5mm~60mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記周方向細溝の溝深さDsと前記周方向細溝に隣接する主溝の有効溝深さDとが0.5≦Ds/D≦0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する前記陸部のうち少なくとも1列の陸部に前記周方向細溝が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、前記トレッド部に4本の主溝と5列の陸部とを有しており、
前記4本の主溝は、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する内側センター主溝と、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両外側に位置する外側センター主溝と、車両装着時に前記内側センター主溝よりも車両内側に位置する内側ショルダー主溝と、車両装着時に前記外側センター主溝よりも車両外側に位置する外側ショルダー主溝とを含み、
前記5列の陸部は、前記内側センター主溝と前記外側センター主溝との間に区画されたセンター陸部と、前記内側センター主溝と前記内側ショルダー主溝との間に区画された内側ミドル陸部と、前記外側センター主溝と前記外側ショルダー主溝との間に区画された外側ミドル陸部と、前記内側ショルダー主溝よりも車両内側に区画された内側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー主溝よりも車両外側に区画された外側ショルダー陸部とを含み、
前記周方向細溝が前記内側ミドル陸部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、更に詳しくは、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにおいて、ドライ路面での操縦安定性を向上させるため、トレッド部において陸部の踏面をタイヤ径方向外側に向かって膨出させることにより、陸部の接地圧を均一化することが行われている(例えば、特許文献1参照)。このような陸部は、平坦な陸部の場合と比べて陸部の端部における接地圧が低下するため、スノー性能(例えばスノー路面での操縦安定性)が低下する懸念がある。一方、スノー路面での操縦安定性を向上させるため、陸部に周方向細溝を設けることが一般的である。しかしながら、例えば、平坦な陸部のタイヤ幅方向中央部に周方向細溝を設けても、接地圧が低い領域に設けることになるため、所望の改善効果を得ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部とを有するタイヤにおいて、前記トレッド部は子午線断面において前記陸部のエッジ位置及び前記トレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有し、子午線断面において前記陸部の踏面がそれぞれ前記プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出しており、各陸部の踏面の前記プロファイルラインからの突出量が0.05mm~1.00mmであり、前記陸部のうち少なくとも1列の陸部に該陸部内で終端する周方向細溝が配置され、該周方向細溝が配置された陸部の突出量が最も大きい位置から該周方向細溝の溝幅中心までのタイヤ幅方向の距離Aと該周方向細溝が配置された陸部の幅W1とが0≦A≦W1/4の関係を満たすことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、陸部の踏面をプロファイルラインからタイヤ径方向外側に突出させているので、接地形状を改善して、各陸部の接地長を拡大することができ、これによりドライ路面での操縦安定性を改善することができる。更に、プロファイルラインから突出した陸部において突出量が最も大きいタイヤ幅方向の位置(以下、最大突出位置という)の近傍に周方向細溝を配置しているので、陸部の接地圧が高く接地長が長い領域に周方向細溝が配置されることになり、エッジ成分を増大させることができるため、スノー路面での操縦安定性を改善することができる。また、周方向細溝を陸部内で終端させているので、陸部が分断されないため、陸部の剛性を確保することができ、ドライ路面での操縦安定性の悪化を防止している。これにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、周方向細溝の溝幅は0.4mm~2.0mmの範囲にあることが好ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0008】
周方向細溝の溝長さは5mm~60mmの範囲にあることが好ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0009】
周方向細溝の溝深さDsと周方向細溝に隣接する主溝の有効溝深さDとは0.5≦Ds/D≦0.8の関係を満たすことが好ましい。トレッド部の摩耗時に雪柱せん断力が低下してスノー路面での操縦安定性が低下することがあるが、上記の関係を満たすことによりエッジ成分を向上させることができるため、トレッド部の摩耗時においてスノー路面での操縦安定性の低下を防止することができる。
【0010】
車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する陸部のうち少なくとも1列の陸部に周方向細溝が配置されていることが好ましい。特に、ネガティブキャンバーが設定された車両に装着した際には車両内側の接地長が長くなる傾向があるため、車両内側の陸部に周方向細溝を設けることでスノー路面での操縦安定性を改善することができる。また、ドライ路面での操縦安定性を改善するためには車両外側の陸部の剛性を高めることが有効であるが、周方向細溝を車両内側の陸部に設けることでドライ路面での操縦安定性の悪化を防止することができる。
【0011】
車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、トレッド部に4本の主溝と5列の陸部とを有しており、4本の主溝は、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する内側センター主溝と、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両外側に位置する外側センター主溝と、車両装着時に内側センター主溝よりも車両内側に位置する内側ショルダー主溝と、車両装着時に外側センター主溝よりも車両外側に位置する外側ショルダー主溝とを含み、5列の陸部は、内側センター主溝と外側センター主溝との間に区画されたセンター陸部と、内側センター主溝と内側ショルダー主溝との間に区画された内側ミドル陸部と、外側センター主溝と外側ショルダー主溝との間に区画された外側ミドル陸部と、内側ショルダー主溝よりも車両内側に区画された内側ショルダー陸部と、外側ショルダー主溝よりも車両外側に区画された外側ショルダー陸部とを含み、周方向細溝は内側ミドル陸部に配置されていることが好ましい。ショルダー陸部の剛性を高めることでドライ路面での操縦安定性を改善することができるため、ショルダー陸部を避けて周方向細溝を配置することで、ドライ路面での操縦安定性の悪化を抑制することができるが、特に車両内側のミドル陸部に周方向細溝を配置することが好適である。
【0012】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであっても良い。空気入りタイヤの場合、その内部には空気、窒素等の不活性ガス又はその他の気体を充填することができる。
【0013】
本発明において、接地端とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧(空気入りタイヤの場合)を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときのタイヤ軸方向の端部である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【
図3】本発明の空気入りタイヤにおけるトレッド部の輪郭形状を示す子午線断面図である。
【
図4】周方向細溝が設けられた陸部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1に示すタイヤは、車両に対する装着方向が指定されており、INはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ赤道CLよりも内側の領域(以下、車両内側という)を示し、OUTはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ赤道CLよりも外側の領域(以下、車両外側という)を示している。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状を成すトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0017】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0018】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0019】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0020】
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる4本の主溝11~14が車両内側から車両外側に向かって順次形成されている。これら主溝11~14により、5列の陸部21~25が区画されている。なお、主溝11~14は、溝底を部分的に隆起させたウェアインジケータを備える溝である。このウェアインジケータの高さは通常1.6mmに設定されている。
【0021】
より具体的に、4本の主溝は、車両装着時にタイヤ赤道CLよりも車両内側に位置する内側センター主溝12と、車両装着時にタイヤ赤道CLよりも車両外側に位置する外側センター主溝13と、車両装着時に内側センター主溝12よりも車両内側に位置する内側ショルダー主溝11と、車両装着時に外側センター主溝13よりも車両外側に位置する外側ショルダー主溝14からなる(以下、単に主溝11~14とも記載する)。また、5列の陸部は、内側センター主溝12と外側センター主溝13との間に区画されたセンター陸部23と、内側センター主溝12と内側ショルダー主溝11との間に区画された内側ミドル陸部22と、外側センター主溝13と外側ショルダー主溝14との間に区画された外側ミドル陸部24と、内側ショルダー主溝11よりも車両内側に区画された内側ショルダー陸部21と、外側ショルダー主溝14よりも車両外側に区画された外側ショルダー陸部25からなる(以下、単に陸部21~25とも記載する)。
【0022】
内側ショルダー陸部21には、タイヤ周方向に連続して延びる1本の細溝16が形成されている。また、内側ショルダー陸部21には、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝31がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各ラグ溝31は、一端が車両内側の接地端Eよりもタイヤ幅方向外側まで延在し、他端が細溝16を貫通しながら内側ショルダー主溝11に対して非連通となるように形成されている。
【0023】
内側ミドル陸部22には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ41がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各サイプ41は一端が内側ショルダー主溝11に連通し、他端が内側ミドル陸部22内で閉止している。また、内側ミドル陸部22には、タイヤ周方向に延びる複数本の周方向細溝15が配置されている。各周方向細溝15は、両端部が内側ミドル陸部22内で終端しており、タイヤ周方向に間欠的に形成されている。このようなサイプ41と周方向細溝15がタイヤ周方向に交互に配置されている。
【0024】
センター陸部23には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ42がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各サイプ42は一端が内側センター主溝12に連通し、他端がセンター陸部23内で閉止している。なお、このセンター陸部23は、タイヤ赤道CL上に位置し、各サイプ42の他端はタイヤ赤道CLを超えずに、タイヤ赤道CLよりも車両内側で終端している。
【0025】
外側ミドル陸部24には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ43がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各サイプ43は一端が外側センター主溝13に連通し、他端が外側ミドル陸部24内で閉止している。また、外側ミドル陸部24には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ44がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各サイプ44は一端が外側ショルダー主溝14に連通し、他端が外側ミドル陸部24内で閉止している。このようなサイプ43とサイプ44がタイヤ周方向に交互に配置されている。
【0026】
外側ショルダー陸部25には、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝32がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各ラグ溝32は、一端が車両外側の接地端Eよりもタイヤ幅方向外側まで延在し、他端が外側ショルダー主溝14に対して非連通となるように形成されている。
【0027】
図3は本発明の空気入りタイヤにおけるトレッド部1の輪郭形状を示すものである。但し、
図3はトレッド部1の特徴を理解し易くするために、その輪郭形状を誇張して描写したものであり、実際の輪郭形状とは必ずしも一致するものではない。
【0028】
図3において、トレッド部1のプロファイルラインTLは、曲率半径Rcからなるセンター側の円弧と曲率半径Rshからなる両ショルダー側の円弧から構成されている。このようなトレッド部1のプロファイルラインTLは、陸部21~25のエッジ位置及びトレッド部1の接地端位置に基づいて特定される。
【0029】
具体的に、内側ショルダー陸部21におけるプロファイルラインTLは、内側ショルダー陸部21の接地端位置P1と、内側ショルダー陸部21の主溝11に面するエッジ位置P2と、内側ミドル陸部22の内側ショルダー陸部21に近い側のエッジ位置P3を通り、タイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。内側ミドル陸部22におけるプロファイルラインTLは、内側ミドル陸部22の両側のエッジ位置P3,P4と、センター陸部23の内側ミドル陸部22に近い側のエッジ位置P5を通り、タイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。センター陸部23におけるプロファイルラインTLは、センター陸部23の両側のエッジ位置P5,P6と、内側ミドル陸部22又は外側ミドル陸部24のセンター陸部22に近い側のエッジ位置P4又はP7を通り、タイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。外側ミドル陸部24におけるプロファイルラインTLは、外側ミドル陸部24の両側のエッジ位置P7,P8と、センター陸部23の外側ミドル陸部24に近い側のエッジ位置P6を通り、タイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。外側ショルダー陸部25におけるプロファイルラインTLは、外側ショルダー陸部25の接地端位置P10と、外側ショルダー陸部25の主溝14に面するエッジ位置P9と、外側ミドル陸部24の外側ショルダー陸部25に近い側のエッジ位置P8を通り、タイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。
【0030】
なお、各陸部のエッジに面取りが施されている場合、面取りが施された部分のタイヤ径方向最外側に位置する端点をエッジ位置と見做して、このエッジ位置に基づいて上記のようにプロファイルラインを決定する。
【0031】
上記空気入りタイヤにおいて、陸部21~25の踏面は、トレッド部1のプロファイルラインTLよりもタイヤ径方向外側に突出している。具体的に、陸部21~25は、それぞれプロファイルラインTLからの突出量が最も大きくなる最大突出位置Pmaxを有しており、その最大突出位置Pmaxからタイヤ幅方向両側に向かって突出量が徐々に小さくなるような断面形状を有している。このとき、陸部21~25の各々の踏面のプロファイルラインTLからの突出量(最大突出位置Pmaxにおける突出量T1~T5)は、0.05mm~1.00mmの範囲に設定されている。また、ショルダー陸部21,25を除く陸部22~24における最大突出位置Pmaxは、各陸部22~24の幅の中心位置(陸部のタイヤ幅方向中央部)に配置されていると良い。なお、各陸部21~25の突出量T1~T5は、1つのタイヤにおいて同じに設定しても良く、陸部ごとに異なるように設定しても良い。
【0032】
また、周方向細溝15が配置された陸部22において、最大突出位置Pmaxから周方向細溝15の溝幅中心cまでのタイヤ幅方向の距離A(
図4参照)と陸部22の幅W
1とは、0≦A≦W
1/4の関係を満たす。この関係を満たすことにより、周方向細溝15は最大突出位置Pmaxの近傍に配置される。これは、周方向細溝15の溝幅中心cの位置が最大突出位置Pmaxと完全に一致する場合、及び、周方向細溝15の溝幅中心cの位置が陸部22の幅W
1の1/4以内の距離で最大突出位置Pmaxからタイヤ幅方向の一方側にズレて配置された場合を含む。本発明において、上記の関係は周方向細溝15が配置された全ての陸部において満たすものとする。
【0033】
上述した空気入りタイヤでは、陸部21~25の踏面をプロファイルラインTLからタイヤ径方向外側に突出させているので、接地形状を改善して、各陸部21~25の接地長を拡大することができ、これによりドライ路面での操縦安定性を改善することができる。更に、プロファイルラインTLから突出した陸部22において最大突出位置Pmaxの近傍に周方向細溝15を配置しているので、陸部22の接地圧が高く接地長が長い領域に周方向細溝15が配置されることになり、エッジ成分を増大させることができるため、スノー路面での操縦安定性を改善することができる。また、周方向細溝15を陸部22内で終端させているので、陸部22が分断されないため、陸部22の剛性を確保することができ、ドライ路面での操縦安定性の悪化を防止している。これにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0034】
ここで、周方向細溝15がA>W1/4の関係を満たすように配置されると、周方向細溝15が最大突出位置Pmaxから過度に離れるため、スノー路面での操縦安定性の改善効果を十分に得ることができない。また、周方向細溝15がいずれかの陸部にタイヤ全周にわたって連続的に形成されている場合、当該陸部が周方向細溝15により分断され、陸部の剛性が低下することになるため、好ましくない。
【0035】
特に、
図2のトレッドパターンを有するタイヤでは、車両に対する装着方向が指定され、車両内側の陸部(内側ミドル陸部22)に周方向細溝15が配置されているので、スノー路面での操縦安定性を改善することができる。また、周方向細溝15が車両内側の陸部のみに配置されていることで、車両外側の陸部の剛性を高めることに寄与し、ドライ路面での操縦安定性の悪化を防止することができる。
【0036】
更に、
図2のトレッドパターンを有するタイヤでは、車両に対する装着方向が指定され、周方向細溝15が内側ミドル陸部22のみに配置されていることで、ショルダー陸部の剛性を高めることに寄与し、ドライ路面での操縦安定性の悪化を抑制することができる。特に、周方向細溝15が内側ミドル陸部22のみに配置され、周方向細溝15がセンター陸部23及び外側ミドル陸部24には配置されていないので、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善する上で最も効果的である。
【0037】
上記空気入りタイヤにおいて、周方向細溝15がタイヤ周方向に対して傾斜するように配置しても良い。周方向細溝15のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ(
図5参照)は、0°~20°の範囲に設定されていることが好ましく、0°~10°の範囲に設定されていることがより好ましい。傾斜角度θが20°超であると、タイヤ幅方向のエッジ成分が低下するため、スノー路面での操縦安定性の改善効果を十分に得られない。また、周方向細溝15がタイヤ周方向に対して傾斜している場合、周方向細溝15は、その投影長さL(
図5参照)の60%以上が最大突出位置Pmaxから±W
1/4以内の距離に存在するように配置される。投影長さLは、トレッド部1の平面視で、周方向細溝15のタイヤ幅方向成分の長さである。なお、
図5に示す周方向細溝15は、投影長さLの100%が最大突出位置Pmaxから±W
1/4以内の距離に存在する場合を示している。
【0038】
また、上記空気入りタイヤにおいて、周方向細溝15の溝幅w(
図4参照)は、0.4mm~2.0mmの範囲にあることが好ましく、0.8mm~1.5mmの範囲にあることがより好ましい。このように周方向細溝15の溝幅wを適度に設定することにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。なお、周方向細溝15は、溝幅が1.0mm超2.0mm以下の細溝として形成しても良く、溝幅が0.4mm以上1.0mm以下のサイプとして形成しても良い。
【0039】
ここで、周方向細溝15の溝幅wが0.4mm未満であると、接地面で周方向細溝15が閉じることによりエッジ成分が作用せず、スノー路面での操縦安定性の更なる改善効果を得ることができない。逆に、周方向細溝15の溝幅wが2.0mm超であると、ブロック剛性が低下し易くなるため、ドライ路面での操縦安定性が悪化する傾向がある。
【0040】
周方向細溝15の溝長さt(
図2参照)は、5mm~60mmの範囲にあることが好ましく、10mm~30mmの範囲にあることがより好ましい。この周方向細溝15の溝長さtは、周方向細溝15の延在方向に沿って測定される長さである。また、周方向細溝15の溝長さtは、ピッチ長に対して15%~180%の範囲に相当することが好ましく、ピッチ長に対して30%~85%の範囲に相当することがより好ましい。このように周方向細溝15の溝長さtを適度に設定することにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0041】
ここで、周方向細溝15の溝長さtが5mm未満であると、エッジ成分が十分に作用せず、スノー路面での操縦安定性の更なる改善効果を得ることができない。逆に、周方向細溝15の溝長さtが60mm超であると、ブロック剛性が低下し易くなるため、ドライ路面での操縦安定性が悪化する傾向がある。
【0042】
周方向細溝15の溝深さDsと周方向細溝15に隣接する主溝11,12の有効溝深さDとは、0.5≦Ds/D≦0.8の関係を満たすことが好ましい。ここで、主溝11,12の有効溝深さD(
図1参照)は、主溝11,12の溝深さからウェアインジケータの高さを除いた深さを意味する。トレッド部1の摩耗時に雪柱せん断力が低下してスノー路面での操縦安定性が低下することがあるが、上記の関係を満たすことによりエッジ成分を向上させることができるため、トレッド部1の摩耗時においてスノー路面での操縦安定性の低下を防止することができる。
【0043】
上述した実施形態では、車両に対する装着方向が指定されたタイヤを例示したが、本発明は車両に対する装着方向が指定されていないタイヤにも適用することができる。
【実施例0044】
タイヤサイズ235/60R18で、トレッド部にタイヤ周方向に延びる4本の主溝と主溝により区画された5列の陸部とを有し、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、トレッド部は子午線断面において陸部のエッジ位置及びトレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有し、1列の陸部に該陸部内で終端する周方向細溝が配置され、主溝の有効溝深さD、陸部の膨出量T、周方向細溝の陸部内での終端の有無、陸部の幅W1、距離A、周方向細溝の溝幅w、周方向細溝の溝長さt、周方向細溝の溝深さDs、比Ds/D、周方向細溝を配置した陸部を表1のように設定した比較例1~3及び実施例1~6のタイヤを製作した。
【0045】
なお、比較例1,2において、周方向細溝は、タイヤ全周にわたって連続的に形成されている。また、比較例2,3及び実施例1~6において、周方向細溝が形成された陸部の最大突出位置は当該陸部のタイヤ幅方向中央部にある。
【0046】
表1の「距離A」について、比較例3の距離Aは周方向細溝が形成された陸部の幅W1の1/3の距離に相当し、比較例2及び実施例1~6の距離Aは周方向細溝が形成された陸部の幅W1の1/8の距離に相当する。
【0047】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、ドライ路面での操縦安定性、スノー路面での操縦安定性(新品)、スノー路面での操縦安定性(50%摩耗)を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0048】
ドライ路面での操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.0Jのホイールに組み付けて、排気量2000ccの車両に装着し、空気圧を230kPaの条件で、乾燥路面のテストコースにてテストドライバーによる官能評価を実施した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
【0049】
スノー路面での操縦安定性(新品):
新品状態の各試験タイヤをリムサイズ18×7.0Jのホイールに組み付けて、排気量2000ccの車両に装着し、空気圧を230kPaの条件で、スノー路面のテストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスノー路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
【0050】
スノー路面での操縦安定性(50%摩耗):
50%摩耗状態の各試験タイヤをリムサイズ18×7.0Jのホイールに組み付けて、排気量2000ccの車両に装着し、空気圧を230kPaの条件で、スノー路面のテストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスノー路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
【0051】
【0052】
この表1から判るように、実施例1~6は、比較例1に比して、ドライ路面での操縦安定性と新品時のスノー路面での操縦安定性がバランス良く改善されていた。更に、実施例4~6は、50%摩耗時のスノー路面での操縦安定性が改善されていた。
【0053】
比較例2は、周方向細溝が陸部内で終端しておらず、陸部の剛性が低下したため、ドライ路面での操縦安定性の改善効果を十分に得ることができなかった。比較例3は、周方向細溝が陸部の最大突出位置から本発明で規定する範囲よりも離れて配置されていたため、新品時のスノー路面での操縦安定性の改善効果を十分に得ることができなかった。
【0054】
本開示は、以下の発明[1]~[6]を包含する。
発明[1]は、トレッド部にタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部とを有するタイヤにおいて、前記トレッド部は子午線断面において前記陸部のエッジ位置及び前記トレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有し、子午線断面において前記陸部の踏面がそれぞれ前記プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出しており、各陸部の踏面の前記プロファイルラインからの突出量が0.05mm~1.00mmであり、前記陸部のうち少なくとも1列の陸部に該陸部内で終端する周方向細溝が配置され、該周方向細溝が配置された陸部の突出量が最も大きい位置から該周方向細溝の溝幅中心までのタイヤ幅方向の距離Aと該周方向細溝が配置された陸部の幅W1とが0≦A≦W1/4の関係を満たすことを特徴とするタイヤである。
発明[2]は、前記周方向細溝の溝幅が0.4mm~2.0mmの範囲にあることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤである。
発明[3]は、前記周方向細溝の溝長さが5mm~60mmの範囲にあることを特徴とする発明[1]又は[2]に記載のタイヤである。
発明[4]は、前記周方向細溝の溝深さDsと前記周方向細溝に隣接する主溝の有効溝深さDとが0.5≦Ds/D≦0.8の関係を満たすことを特徴とする発明[1]~[3]のいずれか一つに記載のタイヤである。
発明[5]は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する前記陸部のうち少なくとも1列の陸部に前記周方向細溝が配置されていることを特徴とする発明[1]~[4]のいずれか一つに記載のタイヤである。
発明[6]は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、前記トレッド部に4本の主溝と5列の陸部とを有しており、前記4本の主溝は、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置する内側センター主溝と、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両外側に位置する外側センター主溝と、車両装着時に前記内側センター主溝よりも車両内側に位置する内側ショルダー主溝と、車両装着時に前記外側センター主溝よりも車両外側に位置する外側ショルダー主溝とを含み、前記5列の陸部は、前記内側センター主溝と前記外側センター主溝との間に区画されたセンター陸部と、前記内側センター主溝と前記内側ショルダー主溝との間に区画された内側ミドル陸部と、前記外側センター主溝と前記外側ショルダー主溝との間に区画された外側ミドル陸部と、前記内側ショルダー主溝よりも車両内側に区画された内側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー主溝よりも車両外側に区画された外側ショルダー陸部とを含み、前記周方向細溝が前記内側ミドル陸部に配置されていることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれか一つに記載のタイヤである。