(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006317
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/17 20060101AFI20250109BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20250109BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B63H21/17
F02D29/02 A
F02D29/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107029
(22)【出願日】2023-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鐵 浩和
(72)【発明者】
【氏名】三木 満夫
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA16
3G093AA19
3G093BA19
3G093DB28
3G093DB29
(57)【要約】
【課題】 蓄電手段を搭載した電気推進船において、推進力の一定量維持とエネルギー効率向上、電力系統や電動機出力変動の抑制を実現したエネルギーマネジメントシステムを提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、エネルギーマネジメントシステムは、蓄電手段と、蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、充放電用電力変換器の交流出力を電源として、船舶の推進のための回転機を駆動する回転機駆動用電力変換器と、測位システムから取得した船舶の位置情報および船速情報と蓄電手段の充電情報とを入力として、回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、
前記充放電用電力変換器の交流出力を電源として、船舶の推進のための回転機を駆動する回転機駆動用電力変換器と、
測位システムから取得した前記船舶の位置情報および船速情報と前記蓄電手段の充電情報とを入力として、前記回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器と
を備えた、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、
前記蓄電手段の出力を電源として、直流を交流に電力変換する回転機駆動用電力変換器と、
測位システムから取得した船舶の位置情報および船速情報と前記蓄電手段の充電情報とを入力として、前記回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器と
を備えた、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記回転機が原動機で駆動される、請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
前記蓄電手段が、慣性を持つ機器で構成された、請求項1または2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
前記船舶の位置情報および船速情報および前記蓄電手段の充電情報の組合せに応じて、前記回転機駆動用電力変換器の出力制限値を切り換える、請求項1または2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
前記回転機が所定負荷よりも軽負荷の場合、前記制御器は、前記回転機駆動用電力変換器の出力制限値をマイナスに設定する、請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
前記制御器は、前記出力制限値の切換を、レート変化させて行う、請求項5に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項8】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりにトルク制限値を適用する、請求項5に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項9】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりに速度指示値を適用する、請求項5に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項10】
前記制御器は、前記出力制限値の切換を、レート変化させて行う、請求項6に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項11】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりにトルク制限値を適用する、請求項6に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項12】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりに速度指示値を適用する、請求項6に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池などの蓄電手段を含む電気推進システムにおけるエネルギーマネジメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池推進船の運航に係る船速に応じた出力算出や外乱に応じたダイヤ情報の設定、計画船速の算出および補正などの運転支援に関し、特許文献1に示されるような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1で開示されている技術によれば、あらかじめ設定された計画船速および発着港における充電計画情報に対し、運航情報、外乱情報、障害物検知情報、充電情報を元に、計画船速の算出や補正、ダイヤ情報の変更等や航行区間に応じた推奨出力算出による運転支援を行うことで、船舶におけるエネルギー効率の向上と安全航行を両立できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術では、船速に対応した出力算出や水上交通におけるダイヤ調整、充電箇所や他船と連携するための計画船速の変更など、システム全体を効率的に動かすことはできるが、出力や船速の変更は推進電動機や電源に対して変化をもたらし、機関や機器の振動や電力系統の過渡変化を招く恐れがあり、必ずしも最適であるとは言えない。
【0006】
そこで、本発明は、蓄電手段を搭載した電気推進船において、推進力の一定量維持とエネルギー効率向上、電力系統や電動機出力変動の抑制を実現したエネルギーマネジメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエネルギーマネジメントシステムは、蓄電手段と、蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、充放電用電力変換器の交流出力を電源として、船舶の推進のための回転機を駆動する回転機駆動用電力変換器と、測位システムから取得した船舶の位置情報および船速情報と蓄電手段の充電情報とを入力として、回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2a】
図2aは、回転機の回転速度と出力およびトルクの関係を示した図である。
【
図2b】
図2bは、回転機の実際の運転特性を示す図である。
【
図3a】
図3aは、
図2bの運転特性に対して、制限値を下げた場合の出力およびトルクの変化を示した図である。
【
図3b】
図3bは、出力を代表として、
図3aに対して、制限値をさらに段階的に下げた場合の出力の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、回転速度を制限することで、出力とトルクを低減できることを示す図である。
【
図5】
図5は、船舶が発着する港と海上区間とを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの動作例を示すフロー例である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの、原動機を含んだ場合における駆動特性を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明の第6の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明の第7の実施形態で適用される切換制御器を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明や、重複した説明は適宜省略する。
【0010】
<第1の実施形態>
(構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0011】
図1において、1はエネルギーマネジメントシステム、10は蓄電手段、21は充放電用電力変換器、21aはフィルタ、22は回転機駆動用電力変換器、30は制御器、40は衛星測位システム、60は交流負荷、80は回転機、90はプロペラである。
【0012】
エネルギーマネジメントシステム1は、例えば、船舶のエコ運転のために適用されるものであり、衛星測位システム40などから得られる船舶の位置情報および船速情報および蓄電手段10の充電情報の組合せに応じて、推進用電動機出力を制限することで、速力低下を抑えるとともに、機関や機器の負荷変動を抑制しつつ、蓄電手段10が保有するエネルギーを最大限に活用したエコ運転を可能とするものである。
【0013】
蓄電手段10は、二次電池などで構成されており、充電情報の計算部を含んでいる。なお、計算部が他の機器によって代替され、この機器に接続されている場合には、計算部を含んでいなくてもよい。
【0014】
充放電用電力変換器21は、蓄電手段10の出力を双方向に電力変換可能である。充放電用電力変換器21の後段には、フィルタ21aが設けられている。フィルタ21aは、充放電用電力変換器21の交流出力に含まれる高調波成分を抑制する。
【0015】
衛星測位システム40は、例えば、GPSや、ドップラーログを利用した流速測定などの船舶の位置や船速を計測できる装置またはその組合せとできる。
【0016】
制御器30は、衛星測位システム40からの船舶の位置情報および船速情報と、蓄電手段10の充電情報とを入力として、回転機駆動用電力変換器22の出力を制限するための制限信号を生成し、生成した制限信号を、回転機駆動用電力変換器22に出力する。
【0017】
回転機駆動用電力変換器22は、フィルタ21aを介して供給された充放電用電力変換器21からの交流出力を電源として、制御器30からの制限信号にしたがって、回転機80を駆動する。回転機80は、船舶の推進のためのプロペラ90の軸に接続されている。
【0018】
回転機80とプロペラ90の接続は同軸に限らず、変速機を介した連動する軸構成であってもよい。また、回転機80は、永久磁石型、巻線界磁型などの励磁方式によらず、ブラシレス、ブラシ付きの何れの構成であってもよい。さらに、同期機、誘導機の何れであってもよい。
【0019】
交流負荷60には、例えば、ディーゼル機関などで駆動されて発電する発電機が、交流ラインによって接続されている。これによって、交流負荷60には、充放電用電力変換器21の交流出力により電力が供給される。また、交流ラインには、高圧、低圧などの電圧レベルによらず、レベル変換のための変圧器を含んでいてもよい。
【0020】
(動作)
次に、本発明の第1の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの動作例を説明する。
【0021】
エネルギーマネジメントシステム1では、蓄電手段10からの直流電力は、充放電用電力変換器21により交流電力に変換され、フィルタ21aを介して交流負荷60に給電される。
【0022】
充放電用電力変換器21からの交流出力は、フィルタ21aを介して回転機駆動用電力変換器22にも送られる。
【0023】
制御器30には、衛星測位システム40から、船舶の位置情報および船速情報が、蓄電手段10から、充電情報が入力される。制御器30では、これら情報に基づいて、回転機駆動用電力変換器22の出力制限のための制限信号が生成される。制限信号には、出力制限値が指定されている。
【0024】
なお、出力制限の代わりに、トルク制限や、速度制限を適用することもできる。トルク制限の場合、制限信号には、トルク制限値が指定され、速度制限の場合、制限信号には、速度制限値が指定される。
【0025】
したがって、制御器30では、船舶の位置情報と船速情報と、蓄電手段10からの充電情報とのそれぞれの条件の組合せに応じて、回転機駆動用電力変換器22へ出力される制限信号が切り換えられる。そして、切り換えられた制限信号が、制御器30から回転機駆動用電力変換器22へ出力される
回転機駆動用電力変換器22では、充放電用電力変換器21からの交流出力を電源として、制御器30からの制限信号にしたがって、回転機80が駆動される。回転機80は、船舶の推進のためのプロペラ90の軸に接続されているので、回転機80の駆動を制限することによって、プロペラ90の出力を制限することができる。
【0026】
図2aは、回転機の回転速度と出力およびトルクの関係を示した図である。
【0027】
【0028】
回転機80の負荷に当たるプロペラ90は水負荷であり、低減トルク特性と呼ばれ、トルクは回転速度の二乗に比例し、出力は回転速度の三乗に比例する。一般に回転機80は定格回転速度で定格出力、定格トルクとなるように設計されるため、実際の運転特性は
図2bに示すように基底速度N
B以上の回転速度において出力が過度に加わらないように電力変換器などで制限されている。
【0029】
図3aは、
図2bの運転特性に対して、制限値を下げた場合の出力およびトルクの変化を示した図である。
【0030】
図3bは、出力を代表として、
図3aに対して、制限値をさらに段階的に下げた場合の出力の一例を示す図である。
【0031】
図4は、回転速度を制限することで、出力とトルクを低減できることを示す図である。
【0032】
例えば、
図3aに示すように出力P
MをP
L1に制限した場合、連動してトルクはT
MからT
L1に変化し、回転速度もN
BからN
L1に変化する。これらのことから、出力とトルクの低減量の差を利用することで、推進力の低下を抑制しつつ出力を低減することができる。また、
図4に示すように回転速度を制限することで、出力とトルクを低減することもできる。
【0033】
制御器30における制限値の切換方法について、
図5、
図6を用いて説明する。
【0034】
図5は、船舶が発着する港と海上区間とを示す図である。
【0035】
図5に例示するように、港Aから港Bの区間を船舶が航行するとして、その航路における区間をあらかじめ設定した範囲にて、例えば、前半部を区間K1、後半部を区間K2として分割する。
【0036】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの動作例を示すフロー例である。
【0037】
101は船位分岐条件、102、122は船速分岐条件、103、113、123、133は蓄電手段10の充電状態分岐条件である。制限A~制限Dは制御器30から回転機駆動用電力変換器22に出力する出力制限信号に該当する。制限Aは定格値相当の制限値、制限Bは制限Aより低い値(エコ運転1段)、制限Cは制限Bより低い値(エコ運転2段)、制限Dは制限値Cより低い値且つ最低船速が維持可能な制限値である。
【0038】
まず、船位分岐条件101により、発着する港からの海上区間が、
図5に例示されるように、区間K1および区間K2に分けられる。区間K1は出港時から設定した区間までの蓄電手段10の残存エネルギーが多い状態を、区間K2では入港に向けた区間とし、区間K1に比べ、蓄電手段10の残存エネルギーが少ない状態を想定している。尚、区間分割については2区間以上に区切られていてもよく、区切りの間隔は任意であってもよい。
【0039】
区間K1の場合、船速分岐条件102により設定した船速以上か未満かを分岐する。船速が設定値以上の場合、蓄電手段10の充電状態条件103により充電状態の割合に応じて、回転機駆動用電力変換器22に与える制限値を切り換える。
【0040】
図6に示す例では、充電状態50%以上の場合、制限Aが選択され、回転機80の定格出力が可能である。次に充電状態が20~50%の範囲の場合、制限Cが選択され、出力を低減したエコ運転が可能である。区間K1では航路の前半であり、蓄電手段10の残量低下を抑制するため、制限Bとせず、制限Cとする。また、充電状態が20%未満の場合、制限Dが選択され、蓄電手段10の使用量を最小限にとどめ、残量低下を抑制しつつ最低船速を維持する。
【0041】
一方、船速分岐条件102において、船速が設定値未満の場合、蓄電手段10の充電状態条件113により充電状態の割合に応じて、回転機駆動用電力変換器22に対して与える制限値を切り換える。尚、船速が設定値未満のため、制限を加えても出力電力低減効果が小さいことから、充電状態が20%以上の場合、制限Aが選択され、回転機80の定格出力が可能とし、充電状態が20%未満の場合、制限Dが選択され、蓄電手段10の使用量を最小限にとどめ、残量低下を抑制しつつ最低船速を維持するように動作する。
【0042】
上記した充電状態の割合は説明のために仮想的に設定した数値であり、任意の値であってもよい。また、蓄電手段10の充電状態条件の分岐数は
図6に示す以外の複数段階で構成されてもよく、エコ運転の段数はいくつあってもよい。さらに、蓄電手段10の充電状態条件113においてもエコ運転の分岐があってもよい。制限Aは定格より低い値(エコ運転相当)であってもよい。制限Dについてはあらかじめ実験や実測から得られるものとして、通常予見される外乱に対して尤度があってもよい。
【0043】
船位条件101が区間K2の場合は、区間K1と同様に船速と蓄電手段10の充電状態により制限値を選択する同様の仕組みであることから、個々の重複説明を避ける。
【0044】
区間K1と区間K2の違いは選択される制限値であり、区間K2では、蓄電手段10の充電状態が高い場合、制限Aより低い制限Bを選択する点である。選択される制限値については選択された区間に応じて、決定されてよく、航行中に区間が変化したとしても差し支えない。
【0045】
(効果)
以上説明したように、エネルギーマネジメントシステム1によれば、船舶の位置、船速、船舶に搭載される蓄電手段10の充電状態に応じてプロペラ90への出力を制限することで、負荷変動を抑制しながら船速低下を抑制するとともに、エコ運転が可能となる。
【0046】
<第2の実施形態>
(構成)
図7は、本発明の第2の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0047】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、エネルギーマネジメントシステム2は、
図1に示すエネルギーマネジメントシステム1に対して、回転機駆動用電力変換器22の代わりに、蓄電手段10の出力を電源として、直流を交流に電力変換し、プロペラ90の同軸に接続された回転機80を駆動制御する回転機駆動用電力変換器23が接続される。また、制御器30からの出力信号も回転機駆動用電力変換器23に接続される。回転機駆動用電力変換器23は双方向に電力変換が可能である。その他の構成要素は第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0048】
(作用)
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、衛星測位システム40の位置情報および船速情報と、蓄電手段10の充電情報とが、制御器30に入力され、回転機駆動用電力変換器23の出力制限が、制御器30の指示に応じて行われる。
【0049】
(効果)
以上説明したように、エネルギーマネジメントシステム2によれば、船舶の位置情報および船速情報と、蓄電手段10の充電情報との組合せに応じて、回転機駆動用電力変換器23の出力制限値を切り換えることができる。なお、制限値の選択については、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0050】
<第3の実施形態>
(構成)
図8は、本発明の第3の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0051】
図8に示すブロック図は、
図1に示すブロック図に対して、原動機70がプロペラ90および回転機80の同軸に接続された点が異なる。原動機70の接続は回転機80の同軸に限らず変速機を介した連動する軸構成であってもよい。
図8に示すエネルギーマネジメントシステム3の構成は、
図1に示すエネルギーマネジメントシステム1と同様であるので、同一の構成要素に同一符号を付して示すことにより、重複説明を避ける。
【0052】
(作用)
エネルギーマネジメントシステム3は、エネルギーマネジメントシステム1と同様に、衛星測位システム40からの位置情報および船速情報と、蓄電手段10からの充電情報とが制御器30に入力され、制御器30は、プロペラ90への出力が一定となるように、回転機駆動用電力変換器22の出力を制限する。制限値の選択方法は、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0053】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの、原動機を含んだ場合における駆動特性を示す図である。
【0054】
プロペラ90が所定負荷よりも軽負荷の場合、原動機70の負荷が減少し、効率の悪い運転点となる場合がある。そこで、エネルギーマネジメントシステム3は、制御器30において、原動機70の効率運転が可能な出力と運転点の出力を比較し、余剰電力を算出する。制御器30はさらに、この余剰電力に対応した電力量となるマイナスの出力制限値を回転機駆動用電力変換器22に与える。これによって、原動機70と同軸に接続された回転機80により電力を回収し、回転機駆動用電力変換器22および充放電用電力変換器21を介して、蓄電手段10に蓄電させることでエネルギーの有効利用を図ることができる。余剰電力の算出においては、電動機特性の代わりに発電機出力の最適運転点の値であってもよい。
【0055】
(効果)
以上説明したように、エネルギーマネジメントシステム3によれば、回転機80の動力に原動機70を含む船舶において、船舶の位置、船速、船舶に搭載される蓄電手段10の充電状態に応じてプロペラ90への出力が一定となるように制御することで、負荷変動を抑制しながら船速を維持するとともに、エコ運転が可能となる。また、原動機70の負荷の変動抑制にもつながる。さらに、原動機70を主体的に運転させる船舶においては原動機70を含むシステムの効率低下を抑制するとともに、エネルギーの有効利用を実現することができる。
【0056】
<第4の実施形態>
(構成)
図10は、本発明の第4の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0057】
本実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、エネルギーマネジメントシステム4は、
図8に示すエネルギーマネジメントシステム3に対して、回転機駆動用電力変換器22の代わりに、蓄電手段10の出力を電源としてプロペラ90の同軸に接続された回転機80を駆動制御する回転機駆動用電力変換器23が接続される。また、制御器30からの出力信号も回転機駆動用電力変換器23に接続される。その他は、第3の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0058】
(作用)
本実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、衛星測位システム40の位置情報および船速情報と、蓄電手段10の充電情報とが制御器30に入力され、制御器30は、プロペラ90への出力が一定となるように回転機駆動用電力変換器23の出力を制御することができる。なお、制限値の選択については、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0059】
(効果)
本実施形態に係るエネルギーマネジメントシステム4でも、第3の実施形態のエネルギーマネジメントシステム3と同様の効果を奏することができる。
【0060】
<第5の実施形態>
(構成)
図11は、本発明の第5の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0061】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、エネルギーマネジメントシステム5は、エネルギーマネジメントシステム1における蓄電手段10の代わりに、慣性エネルギーを蓄える蓄電手段11が適用され、さらに、蓄電手段11から出力される交流電力を直流に変換する交直電力変換器24を備えている。
【0062】
交直電力変換器24は双方向に電力変換が可能であり、交直電力変換器24の直流出力は、充放電用電力変換器21に接続される。
【0063】
蓄電手段11の充電情報はまた、制御器30に入力される。
【0064】
蓄電手段11の充電情報は、回転速度や回転位置情報などの慣性の程度を表す情報とすることができる。
【0065】
その他の構成要素は、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。尚、第3の実施形態と同様、エネルギーマネジメントシステム5もまた、回転機80に原動機70が組み合わされた構成にも適用可能である。
【0066】
(作用)
蓄電手段11は、例えば、回転機80と同様に、電力変換器で駆動される回転機11aを含んで実現できる。蓄電手段11の出力である交流電力は、交直電力変換器24により交直変換され、さらに、充放電用電力変換器21により交流負荷60に合わせた電圧、周波数の交流電力に変換されて給電される。
【0067】
充放電用電力変換器21の出力はまた、プロペラ90の同軸に接続された回転機80を駆動制御する回転機駆動用電力変換器22に、フィルタ21aを介して接続される。
【0068】
制御器30には、衛星測位システム40からの位置情報および船速情報と、蓄電手段11からの充電情報とが入力される。制御器30は、これら情報に応じて、回転機駆動用電力変換器22の出力制限を行うための出力制限信号を生成し、回転機駆動用電力変換器22に出力する。これによって、回転機駆動用電力変換器22の出力制限指示を行う。なお、制限値の選択については、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0069】
(効果)
本実施形態に係るエネルギーマネジメントシステム5でも、第1の実施形態のエネルギーマネジメントシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0070】
<第6の実施形態>
(構成)
図12は、本発明の第6の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの構成例を示すブロック図である。
【0071】
本実施形態は、第5の実施形態の変形例であり、エネルギーマネジメントシステム6は、エネルギーマネジメントシステム5における回転機駆動用電力変換器22の代わりに、回転機駆動用電力変換器23を備えている。回転機駆動用電力変換器23には、制御器30からの出力制限信号が入力される。その他の構成要素は、第5の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0072】
(作用)
本実施形態は、第5の実施形態の変形例であり、制御器30には、衛星測位システム40からの位置情報および船速情報と、蓄電手段11の充電情報とが入力される。また、回転機駆動用電力変換器23は、制御器30の指示に応じて出力制限される。なお、制限値の選択については、第1の実施形態と同様であるので、重複説明を避ける。
【0073】
(効果)
本実施形態に係るエネルギーマネジメントシステム6でも、第1の実施形態のエネルギーマネジメントシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0074】
<第7の実施形態>
(構成)
本発明の第7の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムについて説明する。
【0075】
第7の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムは、第1~第6のエネルギーマネジメントシステム1~6のいずれかに、
図13に示すような切換制御器を適用した構成をしている。
【0076】
すなわち、
図13は、本発明の第7の実施形態で適用される切換制御器を示す概念図である。
【0077】
図13において、301は現在の制限値(制限値1)、302は切換後の制限値(制限値2)、303は出力する制限値(制限値3)、400は切換制御器、401は切換パターンである。切換パターン401は、あらかじめ設定されている。切換パターン401は、切換制御器400に記憶されている。
【0078】
切換制御器400は、制御器30に接続して設けることができる。また、制御器30に接続して設ける代わりに、制御器30の一部として制御器30の内部に設けることもできる。
【0079】
制限値301および制限値302は、制御器30によって(切換制御器400が制御器30の内部に設けられる場合は、制御器30内の切換制御器400以外の部位によって)求められ、切換制御器400に入力される。
【0080】
切換制御器400は、制限値301および制限値302と、切換パターン401とを用いて制限値303を生成し、回転機駆動用電力変換器22(エネルギーマネジメントシステム1、3、5の場合)や、回転機駆動用電力変換器23(エネルギーマネジメントシステム2、4、6の場合)へ出力する。
【0081】
なお、切換制御器400に入力される制限値は、制限値301,302のような2種類に限定されず、3種類以上あってもよい。また、出力制限値の切換を、レート変化させて行ってもよい。
【0082】
(作用)
第1~6の実施形態で示したように、制限値は船舶の種々の条件によって切り換えられる。例えば、現在の制限値301と条件選択によって切り換えられた切換後の制限値302の間に差が生じた時点(変更された時点)で切換パターン401により設定した特性に従って切換制御器400により切換制御が開始され、現在の制限値301と切換後の制限値302が一致した時点で終了するようにすることもできる。
【0083】
また、切換パターン401の特性は、
図13に例示しているような直線に限らず、レート変化する関数などによる変化であってもよい。また、出力する制限値303を検出して、フィードバック制御などの自動制御により算出するようにしてもよい。
【0084】
さらに、切換制御器400の切換制御の開始、終了のタイミングは、制限値の差によらず、任意のタイミングでもよい。また、外部からの信号や演算結果によって得られてもよい。
【0085】
(効果)
以上説明したように、本実施形態で説明した切換制御器400を適用したエネルギーマネジメントシステムによれば、プロペラ90への出力制限値が切り換わる際、段階的にならず、緩やかに変化することで、制限時のショックを抑制するとともに、負荷変動をさらに抑え、船速低下を抑制するとともに、エコ運転が可能となる。
【0086】
(発明の効果)
このように、本発明のエネルギーマネジメントシステム1~6によれば、船舶の位置情報および船速と、蓄電手段10,11の蓄電情報とを組み合わせて、推進用電動機出力を制限することで、速力低下を抑えるとともに、回転機80の変動要素を抑制しながら、蓄電エネルギーを最大限に活用したエコ運転が可能となる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1~6 エネルギーマネジメントシステム、
10,11 蓄電手段、
11a 回転機
21 充放電用電力変換器、
21a フィルタ、
22,23 回転機駆動用電力変換器、
24 交直電力変換器、
30 制御器、
40 衛星測位システム、
60 負荷、
70 原動機、
80 回転機、
90 プロペラ、
301~303 制限値、
400 切換制御器、
401 切換パターン
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、
前記充放電用電力変換器の交流出力を電源として、船舶の推進のための回転機を駆動する回転機駆動用電力変換器と、
測位システムから取得した前記船舶の位置情報および船速情報と前記蓄電手段の充電情報とを入力として、前記回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器とを備え、
前記船舶の位置情報および船速情報および前記蓄電手段の充電情報の組合せに応じて、前記回転機駆動用電力変換器の出力制限値を切り換える、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、
前記蓄電手段の出力を電源として、直流を交流に電力変換する回転機駆動用電力変換器と、
測位システムから取得した船舶の位置情報および船速情報と前記蓄電手段の充電情報とを入力として、前記回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器とを備え、
前記船舶の位置情報および船速情報および前記蓄電手段の充電情報の組合せに応じて、前記回転機駆動用電力変換器の出力制限値を切り換える、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記回転機が原動機で駆動される、請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の出力を双方向に電力変換可能な充放電用電力変換器と、
前記充放電用電力変換器の交流出力を電源として、船舶の推進のための回転機を駆動する回転機駆動用電力変換器と、
測位システムから取得した前記船舶の位置情報および船速情報と前記蓄電手段の充電情報とを入力として、前記回転機駆動用電力変換器に制限信号を出力する制御器とを備え、
前記回転機が所定負荷よりも軽負荷の場合、前記制御器は、前記回転機駆動用電力変換器の出力制限値をマイナスに設定する、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
前記制御器は、前記出力制限値の切換を、レート変化させて行う、請求項1または2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりにトルク制限値を適用する、請求項1または2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりに速度指示値を適用する、請求項1または2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項8】
前記制御器は、前記出力制限値の切換を、レート変化させて行う、請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項9】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりにトルク制限値を適用する、請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項10】
前記制御器は、前記出力制限値の代わりに速度指示値を適用する、請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。