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特開2025-6319X線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置
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  • 特開-X線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006319
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B6/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107031
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 初男
(72)【発明者】
【氏名】村越 雄一
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA41
4C093GA06
(57)【要約】
【課題】品質の向上を図れるX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置を提供する。
【解決手段】筐体と、筐体内で回転する架台13と、架台13に搭載されたX線管15と、を備えるX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置30である。架台13、X線管15の少なくともいずれかに、架台13が回転する状態で振動を検出する検出器33を配置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内で回転する架台と、前記架台に搭載されたX線管と、を備えるX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置であって、
前記架台、前記X線管の少なくともいずれかに配置され、前記架台が回転する状態で振動を検出する検出器を備える
ことを特徴とするX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項2】
前記X線コンピュータ断層診断装置は、前記架台に搭載され、前記X線管を冷却する冷却装置を備え、
前記検出器は、前記架台、前記X線管、前記冷却装置の少なくともいずれかに配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項3】
前記検出器は、少なくとも前記架台の前記X線管が配置される位置でかつ前記架台の回転軸方向の前後2箇所に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記架台が回転し、前記X線管および前記冷却装置が動作を停止している状態と、前記架台が回転し、前記X線管および前記冷却装置が動作する状態と、のそれぞれで振動を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項5】
前記架台に搭載され、前記検出器で検出された検出データを無線通信によって外部に送信する通信部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項6】
前記架台の回転に同期して前記検出器によって検出される検出データを取得する取得部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【請求項7】
前記取得部で取得された検出データの時系列の推移をグラフィック化して表示する表示処理部を備える
ことを特徴とする請求項6に記載のX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、構造体は固有の共振周波数を有しており、この共振周波数域では共振現象を発生させ、大きな振動、騒音が出現し、場合によっては構造体の自体が破損することもある。
【0003】
コンピュータ断層診断装置(以下、X線CT(Computed Tomography)装置と称する)では、質量のあるX線管と冷却装置をガントリと呼ばれる架台に搭載し、筐体内で架台を回転運動させながら、X線を曝射し、被検体の断面撮影を行っている。
【0004】
X線管には陽極の回転機構部があり、冷却装置には冷却液循環用の循環ポンプがあり、また架台自体も回転運動するため、X線CT装置では振動が発生する。
【0005】
従来、X線CT装置は、要求されるX線管の出力が小さかったため、X線管は小形で、剛性が小さく済んで、質量も少なかった。そのため、X線管の動作による振動値の変化がX線CT装置全体に及ぼす影響は小さかった。近年、X線CT装置の高性能化に伴い、X線管の高出力化が要求されており、この要求に応じて、X線管は大形化し、剛性が大きくなって質量も増大している。さらに、架台の回転速度も速くなり、X線管の動作による振動値の変化が大きくなってきている。
【0006】
振動源の振動周波数は、振動源を構成している材料の変形、剛性変化がなければ、振動数は、通常、変化することはない。
【0007】
しかしながら、X線管はX線を発生させる際に供給される電気エネルギーの99%が熱に変換され、この熱により、X線管の陽極部の材料の変形、剛性の変化により、共振周波数が変化してしまう。
【0008】
この共振周波数の変化により、振動源が発生させる振動数が変化し、変化した際に他の構造体の共振周波数と干渉してしまった場合、共振現象が発生し、異音の発生、X線管のフィラメントの揺れによる管電流の変動、経時的には破損などが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-13715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、品質の向上を図れるX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態は、筐体と、筐体内で回転する架台と、架台に搭載されたX線管と、を備えるX線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置である。架台、X線管の少なくともいずれかに配置され、架台が回転する状態で振動を検出する検出器を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態を示すX線コンピュータ断層診断装置の斜視図である。
図2】同上X線コンピュータ断層診断装置の回転部の正面図である。
図3】同上X線コンピュータ断層診断装置の回転部の断面図である。
図4】同上X線コンピュータ断層診断装置の振動測定装置のブロック図である。
図5】同上振動測定装置の測定結果をグラフィック化して表示する例を示し、(a)はX線管を曝射させていない第1状態で、架台の回転に同期した検出データの時系列の推移をグラフィック化して表示する説明図、(b)はX線管を曝射させた第2状態で、架台の回転に同期した検出データの時系列の推移をグラフィック化して表示する説明図である。
図6】同上振動測定装置の測定結果の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1にコンピュータ断層診断装置(以下、X線CT(Computed Tomography)装置と称する)10の斜視図を示す。
【0015】
X線CT装置10は、X線CT装置10の外郭を成す筐体11を備えている。筐体11の中央には、被検体を導入する導入口12が設けられている。また、図示しないが、X線CT装置10は、被検体を載せて導入口12に導入する寝台も備えている。
【0016】
また、図2にX線CT装置10の回転部の正面図を示し、図3にX線CT装置10の回転部の断面図を示す。
【0017】
筐体11内には、回転部であるガントリと呼ばれる架台(回転架台)13が、回転軸14を中心に回転可能に配置されている。回転軸14は、筐体11の導入口12の中心軸と一致する。架台13は、リング状に設けられ、図示しないが、駆動部としてモータを有する回転駆動機構により回転軸14を中心として回転する。架台13は、例えば0.5秒に1回転するように高速回転する。
【0018】
架台13には、この架台13の外周部のフレームの内壁に、X線管15、X線検出器16および冷却装置17などが搭載されている。架台13とともにX線管15、X線検出器16および冷却装置17などが一体に回転する。
【0019】
X線管15は、架台13の外周部のフレームの内壁で、架台13の軸方向における中央域に取り付けられている。X線管15は、回転陽極型X線管であり、電子を放出する陰極と、陰極から放出された電子が衝突することでX線を発生する陽極ターゲットと、陽極ターゲットを支持して回転する回転体と、回転体の内側に設けられた冷却液通路と、これらを収容する真空容器20と、真空容器20に設けられ、陽極ターゲットで発生したX線を外部に放射するX線透過窓21と、真空容器20の外部から回転体を回転させる磁界を発生するコイルと、などを備えている。陰極と陽極ターゲットとの間に高電圧を印可する高電圧発生電源を、架台13に搭載してもよい。
【0020】
X線管15は、回転体の回転軸の軸方向が架台13の回転軸14の軸方向に一致するように配置されるとともに、X線透過窓21が架台13の回転軸14に対向するように配置される。架台13の前面側から見て(図1のX線CT装置10の前面側から見て)、前側(手前側)に、X線管15の陰極、陽極ターゲットなどが配置され、後側(奥側)にX線管15の回転体やコイルなどが配置される。
【0021】
X線検出器16は、架台13の回転軸14を介して、X線管15のX線透過窓21と対向する架台13の位置に配置されている。X線検出器16は、X線管15から放射されて被検体を透過したX線を検出し、検出したX線を電気信号に変換して出力する。X線検出器16を動作させる電源部や、X線検出器16から出力する電気信号を増幅し、AD変換するデータ収集装置を、架台13に搭載していてもよい。
【0022】
冷却装置17は、架台13の外周部のフレームの内壁で、X線管15の側部に配置されている。冷却装置17は、X線管15の冷却液通路に接続管24によって接続され、X線管15との間で冷却液を循環させる循環経路を形成している。冷却装置17は、循環経路を循環される冷却液の熱を放熱させて冷却液を冷却する熱交換器と、循環経路内の冷却液を循環させる循環ポンプと、を備えている。熱交換器のファンや循環ポンプを駆動する電源部を、架台に搭載していてもよい。
【0023】
図示しないが、架台13側と、架台13を回転可能に支持する筐体11側との間にスリップリングが介在され、このスリップリングを介して、架台13に搭載された機器に外部から電力および制御信号を供給したり、架台13側の機器からの信号を外部に取り出せるように構成されている。
【0024】
また、図4にX線CT装置10の振動測定装置30のブロック図を示す。
【0025】
振動測定装置30は、架台13に配置される内部装置部31と、X線CT装置10の外部に配置される外部装置部32と、を備えている。
【0026】
内部装置部31は、複数の検出器33、データロガー34、通信部(内部通信部)35を備えている。内部装置部31は、スリップリングを介して架台13側に供給される電力を使用して動作してもよいし、また、架台13に配置するバッテリの電力で動作してもよい。
【0027】
検出器33には、X軸、Y軸、Z軸の軸方向の振動を検出可能な3次元加速度センサが用いられる。この検出器33は、X軸が架台13の回転方向、Y軸が架台13の軸方向、Z軸が架台13の中心方向にそれぞれ向くように、各位置に配置される。図2および図3に示すように、検出器33は、架台13のX線管15が配置される位置でかつ架台13の回転軸14の軸方向の前後2箇所の位置と、X線管15のX線透過窓21の付近の位置と、X線検出器16の位置と、冷却装置17の表面の位置と、の各測定ポイントに配置される。検出器33は、これら全ての測定ポイントに配置されることが好ましいが、少なくともいずれか1箇所に配置されていればよく、その場合にはX線管15の位置またはX線管15が配置される架台13の位置に配置されていることが好ましい。
【0028】
データロガー34は、架台13の回転に同期して、各検出器33で検出される検出データを時系列に記憶する。
【0029】
通信部35は、データロガー34に記憶された各検出器33の検出データを無線通信によって外部装置部32に送信する。なお、X線CT装置10が備える通信部を利用可能な場合には、通信部35は用いず、X線CT装置10の通信部を利用してもよい。
【0030】
外部装置部32は、通信部(外部通信部)36、取得部37、表示処理部38を備えている。外部装置部32は、コンピュータで構成され、プログラムに従って演算処理する制御部、プログラムやデータを記憶する記憶部、液晶表示器などのモニタを備える。取得部37および表示処理部38は制御部の機能として有する。
【0031】
通信部36は、無線通信によって通信部35と相互に通信可能とする。
【0032】
取得部37は、通信部36を通じて、データロガー34に記憶された検出データであって、架台13の回転に同期して検出器33によって検出された時系列の検出データを取得する。
【0033】
表示処理部38は、取得部37で取得された検出データの時系列の推移をグラフィック化(映像化)して表示する。表示には、X軸、Y軸、Z軸の各軸方向の振動値の変化を3次元グラフィックで表示すること(図5参照)、振動値の変化を時系列に2次元グラフィックで表示すること(図6参照)が含まれる。
【0034】
そして、振動測定装置30によって振動の測定を実施する場合には、架台13を回転させ、X線管15、X線検出器16および冷却装置17の動作を停止している第1状態(X線管15を曝射させていない第1状態)と、架台13を回転させ、X線管15、X線検出器16および冷却装置17を動作させた第2状態(X線管15を曝射させた第2状態)と、のそれぞれについて、リアルタイムで振動の測定を実施する。
【0035】
各検出器33がX軸、Y軸、Z軸の各軸方向の振動を検出し、データロガー34が架台13の回転に同期して各検出器33で検出される検出データを時系列に記憶し、通信部35がデータロガー34に記憶された検出データを外部装置部32に送信する。
【0036】
外部装置部32では、通信部36を通じて、データロガー34に記憶された検出データであって、架台13の回転に同期して検出器33によって検出された時系列の検出データを取得し、取得された検出データの時系列の推移をグラフィック化してモニタに表示する。
【0037】
図5に振動測定装置30の測定結果をグラフィック化して表示する例であって、X軸、Y軸、Z軸の各軸方向の振動値の変化を3次元グラフィックで表示する例を示す。図5(a)にはX線管15を曝射させていない第1状態で、架台13の回転に同期した検出データの時系列の推移をグラフィック化して表示し、図5(b)にはX線管15を曝射させた第2状態で、架台13の回転に同期した検出データの時系列の推移をグラフィック化して表示する。図5(a)および図5(b)には、架台13のX線管15が配置される位置でかつ架台13の回転軸14の軸方向の前側(手前側)と後側(奥側)の2箇所の位置に配置された2つの検出器33の検出データに基づいて、X軸、Y軸、Z軸の各軸方向の振動値の変化を架台13の回転に同期した時系列の推移を3次元プロットした3次元グラフィックで表示する。X軸、Y軸、Z軸の各軸方向には、加速度[G]を示す。
【0038】
図5からは、図5(a)に示すX線管15を曝射させていない第1状態に比べて、図5(b)に示すX線管15を曝射させた第2状態では、振動値が増加するように変化することがわかる。さらに、前側の振動値の変化が、後側の振動値の変化よりも大きいことがわかる。
【0039】
また、図6に振動測定装置30の測定結果の波形図である。図6には、架台13のX線管15が配置される位置でかつ架台13の回転軸14の軸方向の前側(手前側)と後側(奥側)の2箇所の位置に配置された2つの検出器33の検出データと、X線管15を曝射させたタイミングとを示す。
【0040】
図6からは、X線管15を曝射させたタイミングで、前側および後側とも振動値が増加するように変化することがわかり、さらに、前側の方が後側よりも振動値の変化が大きいことがわかる。
【0041】
なお、X線管15のX線透過窓21の付近の位置、X線検出器16の位置、冷却装置17の位置などの他の測定ポイントに配置された各検出器33の検出データについても、図5および図6のようにグラフィック化して表示することで、同様に振動値を確認できる。
【0042】
なお、図5および図6において、振動値が所定の閾値を超えた場合、その旨を警告表示してもよい。
【0043】
振動測定装置30によって振動を測定することにより、X線管15を曝射させていない第1状態とX線管15を曝射させた第2状態での各測定ポイントでの共振周波数、共振周波数の経時変化、X線CT装置10とX線管15や冷却装置17などのマッチング性など、を確認することができる。
【0044】
例えば、X線管15はX線を発生させる際に供給される電気エネルギーの99%が熱に変換され、この熱により、X線管15の陽極ターゲットおよび回転体などの材料の変形、剛性の変化により共振周波数が変化した際に、他の構造体の共振周波数と干渉してしまった場合、共振現象が発生し、異音の発生、X線管15の陰極のフィラメントの揺れによる管電流の変動、経時的には破損などが発生してしまうことになるが、振動測定装置30によって共振現象の発生を確認することができる。
【0045】
そのため、X線CT装置10や、X線管15および冷却装置17などの設計にフィードバックが可能となり、X線CT装置10の品質の向上が図れるとともに、X線CT装置10の品質の評価期間を短縮することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 コンピュータ断層診断装置
11 筐体
13 架台
14 回転軸
15 X線管
17 冷却装置
30 振動測定装置
33 検出器
35 通信部
37 取得部
38 表示処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6