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  • 特開-車両用シート 図1
  • 特開-車両用シート 図2
  • 特開-車両用シート 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006330
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20250109BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107053
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 英之
(72)【発明者】
【氏名】興梠 有人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BD06
3B087CD02
(57)【要約】
【課題】着席した乗員の頭部の車両幅方向の移動を抑制する。
【解決手段】シートバック2の右側に、シートバック2の右側の前面を膨らませることができる右側膨張機構4を備え、シートバック2の左側に、シートバック2の左側の前面を膨らませることができる左側膨張機構5を備え、車両走行中、着席した乗員へ右方向の加速度がかかる際には右側膨張機構4がシートバック2の右側の前面を膨らませ、着席した乗員へ左方向の加速度がかかる際には左側膨張機構5がシートバック2の左側の前面を膨らませる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの右側に、前記シートバックの右側の前面を膨らませることができる右側膨張機構を備え、
前記シートバックの左側に、前記シートバックの左側の前面を膨らませることができる左側膨張機構を備え、
車両走行中、着席した乗員へ右方向の加速度がかかる際には前記右側膨張機構が前記シートバックの右側の前面を膨らませ、着席した乗員へ左方向の加速度がかかる際には前記左側膨張機構が前記シートバックの左側の前面を膨らませることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両幅方向にかかる加速度に応じてシートバックの前面を膨らませる機構を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックの背もたれ面の向きを左右に変えることができるアクチュエータを備え、車両が旋回する際にアクチュエータがシートバックの背もたれ面を旋回方向へ向ける車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-065459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が走行中に旋回する際や、凹凸のある路面を走行する際には、車両用シートに着席した乗員の身体へ車両幅方向の加速度がかかる。このように乗員の身体へ車両幅方向の加速度がかかると、乗員の身体が傾いて頭部が車両幅方向に移動するため、運転者は視線が安定しないことによる影響で運転し辛くなり、運転しない同乗者は車酔いを生じさせることがある。
【0005】
そこで、本発明は、着席した乗員の頭部の車両幅方向の移動を抑制することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用シートは、シートバックの右側に、前記シートバックの右側の前面を膨らませることができる右側膨張機構を備え、前記シートバックの左側に、前記シートバックの左側の前面を膨らませることができる左側膨張機構を備え、車両走行中、着席した乗員へ右方向の加速度がかかる際には前記右側膨張機構が前記シートバックの右側の前面を膨らませ、着席した乗員へ左方向の加速度がかかる際には前記左側膨張機構が前記シートバックの左側の前面を膨らませることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、着席した乗員の頭部の車両幅方向の移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態の車両用シートの斜視図である。
図2図1におけるA-A線断面図である。
図3図1におけるB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~3を参照しながら、本開示の実施形態の車両用シート10について説明する。以下の図面に示す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、それぞれ車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0010】
図1は、車両用シート10の斜視図である。図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション1、シートバック2及びヘッドレスト3を備える。そして、シートバック2は、上部右側膨張機構4、上部左側膨張機構5、下部右側膨張機構6、下部左側膨張機構7及び中央部膨張機構8を備える。上部右側膨張機構4は、シートバック2の右側の上下方向中央部に内蔵されている。上部左側膨張機構5は、シートバック2の左側の上下方向中央部に内蔵されている。下部右側膨張機構6は、シートバック2の右側下部に内蔵されている。下部左側膨張機構7は、シートバック2の左側下部に内蔵されている。中央部膨張機構8は、シートバック2の上下方向中央部の車両幅方向中央に内蔵されている。
【0011】
図2は、図1におけるA-A線断面図である。図2に示すように、シートバック2は、不図示のシートバックフレームにパッド材21と表皮材22を被せた構成となっている。上部右側膨張機構4は、シートバックフレームに回転軸41で回動可能に取り付けられたレバー42を備える。上部右側膨張機構4は、不図示のアクチュエータがレバー42を一点鎖線で示す位置まで回動させることによって、パッド材21及び表皮材22をレバー42が前方へ向かって押すため、シートバック2の前面の右側の上下方向中央部を二点鎖線で示す位置まで膨らませることができる。上部左側膨張機構5も、シートバックフレームに回転軸51で回動可能に取り付けられたレバー52を備える。上部左側膨張機構5は、不図示のアクチュエータがレバー52を一点鎖線で示す位置まで回動させることによって、パッド材21及び表皮材22をレバー52が前方へ向かって押すため、シートバック2の前面の左側の上下方向中央部を二点鎖線で示す位置まで膨らませることができる。
【0012】
下部右側膨張機構6も、上部右側膨張機構4と同様に、シートバックフレームに回動可能に取り付けられたレバーを備えるため、アクチュエータがレバーを回動させることによって、シートバック2の前面の右側下部を膨らませることができる。そして、下部左側膨張機構7も、上部左側膨張機構5と同様に、シートバックフレームに回動可能に取り付けられたレバーを備えるため、アクチュエータがレバーを回動させることによって、シートバック2の前面の左側下部を膨らませることができる。
【0013】
図3は、図1におけるB-B線断面図である。中央部膨張機構8も、シートバックフレームに回動可能に取り付けられた不図示のレバーを備えるため、図3に一点鎖線で示すように、シートバック2の前面の車両幅方向中央の上下方向中央部を膨らませることができる。なお、中央部膨張機構8は、図3に二点鎖線で示すように、シートバック2の前面の車両幅方向中央の上下方向中央部から下部まで膨らませることができてもよい。図3に二点鎖線で示すようにシートバック2の前面の車両幅方向中央の上下方向中央部から下部まで膨らませることにより、図3に一点鎖線で示すように膨らませた場合と比較して、中央部膨張機構8により形成される膨らみの傾斜が小さくなるため、着席した乗員への圧迫感を軽減することができる。
【0014】
車両が走行中に左側へ旋回する場合、車両用シート10に着席した乗員の身体には、右方向の加速度がかかる。そのため、車両が走行中に左側へ旋回する際には、上部右側膨張機構4がシートバック2の前面の右側の上下方向中央部を膨らませる。車両用シート10は、このように車両が走行中に左側へ旋回する際に上部右側膨張機構4がシートバック2の前面の右側の上下方向中央部を膨らませることによって、車両用シート10に着席した乗員の身体を右側へ傾かないように支えて、乗員の頭部が右側へ移動することを抑制することができる。
【0015】
また、車両が走行中に右側へ旋回する場合、車両用シート10に着席した乗員の身体には、左方向の加速度がかかる。そのため、車両が走行中に右側へ旋回する際には、上部左側膨張機構5がシートバック2の前面の左側の上下方向中央部を膨らませる。車両用シート10は、このように車両が走行中に右側へ旋回する際に上部左側膨張機構5がシートバック2の前面の左側の上下方向中央部を膨らませることによって、車両用シート10に着席した乗員の身体を左側へ傾かないように支えて、乗員の頭部が左側へ移動することを抑制することができる。
【0016】
車両の旋回は、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサや、車両幅方向の加速度を検出する加速度センサを車両に搭載することによって、検知することができる。車両用シート10は、操舵角センサの検出値等から車両の左側への旋回を検知した際に、上部右側膨張機構4を動作させて、シートバック2の前面の右側の上下方向中央部を膨らませる。そして、車両用シート10は、操舵角センサの検出値等から車両の右側への旋回を検知した際に、上部左側膨張機構5を動作させて、シートバック2の前面の左側の上下方向中央部を膨らませる。
【0017】
なお、車両用シート10を搭載した車両が、車両の挙動を事前に予測できる自動運転システムを備える場合は、車両の旋回が予測される際に、車両の旋回を開始する直前の時点から上部右側膨張機構4又は上部左側膨張機構5を動作させてもよい。この場合、自動運転システムが車両の左側への旋回を予測した際に、車両用シート10は、左側への旋回を開始する直前の時点から上部右側膨張機構4を動作させて、シートバック2の前面の右側の上下方向中央部を膨らませる。そして、自動運転システムが車両の右側への旋回を予測した際に、車両用シート10は、右側への旋回を開始する直前の時点から上部左側膨張機構5を動作させて、シートバック2の前面の左側の上下方向中央部を膨らませる。このように車両の旋回を開始する直前の時点から上部右側膨張機構4又は上部左側膨張機構5を動作させることによって、車両の旋回時に乗員の頭部が車両幅方向へ移動することを更に抑制することができる。
【0018】
更に、車両用シート10では、路面の凹凸によって車両が左右に傾くことにより、乗員の身体へ急激な加速度が右方向に加わる際は、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませ、下部右側膨張機構6がシートバック2の前面の右側下部を膨らませる。車両用シート10は、このように乗員の身体へ急激な加速度が右方向に加わる際に、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませることと、下部右側膨張機構6がシートバック2の前面の右側下部を膨らませることによって、着席した乗員の肩甲骨付近の面圧が下がって胸部が左右に動き易くなり、胸部がしなるため、頭部が右側へ移動することを抑制することができる。
【0019】
そして、車両用シート10では、路面の凹凸によって車両が左右に傾くことにより、乗員の身体へ急激な加速度が左方向に加わる際は、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませ、下部左側膨張機構7がシートバック2の前面の左側下部を膨らませる。車両用シート10は、このように乗員の身体へ急激な加速度が右方向に加わる際に、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませることと、下部左側膨張機構7がシートバック2の前面の左側下部を膨らませることによって、着席した乗員の肩甲骨付近の面圧が下がって胸部が左右に動き易くなり、胸部がしなるため、頭部が左側へ移動することを抑制することができる。
【0020】
路面の凹凸によって急激な加速度が車両幅方向に加わることは、車両幅方向の加速度を検出する加速度センサを車両に搭載することによって、検知することができる。車両用シート10は、加速度センサの検出値等から急激な右方向の加速度を検知した際に、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませ、下部右側膨張機構6がシートバック2の前面の右側下部を膨らませる。そして、車両用シート10は、加速度センサの検出値等から急激な左方向の加速度を検知した際に、中央部膨張機構8がシートバック2の前面の車両幅方向中央部を膨らませ、下部左側膨張機構7がシートバック2の前面の左側下部を膨らませる。
【0021】
なお、車両用シート10を搭載した車両が、車両の挙動を事前に予測できる自動運転システムを備える場合は、急激な車両幅方向の加速度がかかることが予測される際に、急激な車両幅方向の加速度がかかる直前の時点から中央部膨張機構8と下部右側膨張機構6又は下部左側膨張機構7を動作させてもよい。この場合、自動運転システムが急激な右方向の加速度がかかることを予測した際に、車両用シート10は、急激な右方向の加速度がかかる直前の時点から中央部膨張機構8と下部右側膨張機構6を動作させて、シートバック2の前面の車両幅方向中央部と右側下部を膨らませる。そして、自動運転システムが急激な左方向の加速度がかかることを予測した際に、車両用シート10は、急激な左方向の加速度がかかる直前の時点から中央部膨張機構8と下部左側膨張機構7を動作させて、シートバック2の前面の車両幅方向中央部と左側下部を膨らませる。このように急激な車両幅方向の加速度がかかる直前の時点から中央部膨張機構8と下部右側膨張機構6又は下部左側膨張機構7を動作させることによって、急激な車両幅方向の加速度がかかる際に乗員の頭部が車両幅方向へ移動することを更に抑制することができる。
【0022】
車両用シート10は、シートバック2の内部の複数箇所に圧電素子を設けることによって、着席した乗員の座高と胸囲を算出できる体格検知機能を有していてもよい。そして、車両用シート10は、上部右側膨張機構4、上部左側膨張機構5、下部右側膨張機構6及び下部左側膨張機構7をそれぞれ上下方向に移動できる上下方向移動機構を備えていてもよい。これらの体格検知機能と上下方向移動機構を有する場合、車両用シート10は、着席した乗員の座高に合わせて、上部右側膨張機構4、上部左側膨張機構5、下部右側膨張機構6及び下部左側膨張機構7の上下方向の位置を調整する。そして、車両用シート10は、着席した乗員の胸囲に合わせて、上部右側膨張機構4、上部左側膨張機構5、下部右側膨張機構6及び下部左側膨張機構7がシートバック2の前面を膨らませる量を調整する。このように体格検知機能と上下方向移動機構を有する場合、車両用シート10は、着席した乗員の体格に合わせて上部右側膨張機構4、上部左側膨張機構5、下部右側膨張機構6及び下部左側膨張機構7の上下方向の位置と膨らませ量を調整できるため、乗員の頭部が車両幅方向へ移動することを更に抑制することができる。なお、体格検知機能は、圧電素子を用いずに車内監視カメラで撮影した映像から乗員の座高と胸囲を算出してもよい。
【0023】
車両用シート10は、このように着席した乗員の頭部の車両幅方向の移動を抑制できるため、運転者の視線を安定させて、運転し易さを向上させることができる。そして、車両用シート10は、着席した乗員の頭部の車両幅方向の移動を抑制して三半規管への影響を軽減できるため、乗員の車酔いを抑えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 シートクッション、2 シートバック、3 ヘッドレスト、4 上部右側膨張機構、5 上部左側膨張機構、6 下部右側膨張機構、7 下部左側膨張機構、8 中央部膨張機構、10 車両用シート、21 パッド材、22 表皮材、41 回転軸、42 レバー、51 回転軸、52 レバー。
図1
図2
図3