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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006341
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】組織加熱装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20250109BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B18/04
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107069
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】八木 一平
(72)【発明者】
【氏名】砂川 弘憲
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK24
4C160KK37
4C160KK64
4C160MM43
4C267AA06
4C267BB03
4C267BB27
4C267BB42
4C267CC22
4C267CC23
4C267GG07
4C267GG09
4C267GG21
(57)【要約】
【課題】対象組織に対して局所的な加熱を行う。
【解決手段】組織加熱装置は、対象組織に対して加熱を行うことが可能に構成される組織加熱装置において、前記対象組織に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分及び第2部分を有し、前記第1部分及び前記第2部分は、熱伝導率及び/又は厚みが互いに異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象組織に対して加熱を行うことが可能に構成される組織加熱装置において、
前記対象組織に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分及び第2部分を有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、熱伝導率及び/又は厚みが互いに異なる、
組織加熱装置。
【請求項2】
前記組織加熱装置は、バルーンカテーテルであり、
前記接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーンを備え、
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が高い部分は、前記バルーンの外表面に配置される、
請求項1に記載の組織加熱装置。
【請求項3】
前記熱伝導率が高い部分は、金属で形成される、
請求項2に記載の組織加熱装置。
【請求項4】
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が低い部分は、樹脂で形成される、
請求項2又は3に記載の組織加熱装置。
【請求項5】
前記バルーンは、膨張した際に筒状となる筒部を有し、
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の周方向に等間隔をあけて複数配置される、
請求項2又は3に記載の組織加熱装置。
【請求項6】
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が高い部分と前記熱伝導率が低い部分の少なくとも一部とは、前記筒部の周方向において交互に配置される、
請求項5に記載の組織加熱装置。
【請求項7】
前記熱伝導率が高い部分は、前記熱伝導率が低い部分よりも前記筒部の周方向における長さが短い、
請求項6に記載の組織加熱装置。
【請求項8】
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の軸方向と平行な方向に沿って延びる延在部を有する、
請求項5に記載の組織加熱装置。
【請求項9】
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の周方向に沿って延びる環状部を有する、
請求項8に記載の組織加熱装置。
【請求項10】
前記環状部は、前記延在部の長手方向の端部に連結される、
請求項9に記載の組織加熱装置。
【請求項11】
請求項1から3の何れか一項に記載の組織加熱装置と、
流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える、
システム。
【請求項12】
前記複数の容器から前記接触部の内部に流れる前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備え、
前記流量制御部は、前記接触部の内部に前記熱媒体を流す時間と前記接触部の内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、前記流量調整弁に前記熱媒体の流量を調整させる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の容器から前記接触部の内部に前記熱媒体が流れるように前記複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサから供給される前記圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、
前記圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備え、
前記圧力制御部は、前記接触部の内部の目標圧力に基づいて、前記圧力調整器に前記圧縮空気の圧力を調整させる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、
前記熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備え、
前記熱源制御部は、前記温度測定部の測定温度に基づいて、前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように前記熱源部に前記熱エネルギーを付与させる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える、
請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記組織加熱装置は、
前記接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、
前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、
前記システムは、前記出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える、
請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織加熱装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管の治療後に、治療箇所の線維化が進むことで狭窄をきたす線維性狭窄が知られている。線維性狭窄は、外科手術によって切除することができる。例えば、線維性狭窄の非侵襲な治療方法としては、消化管の狭窄箇所にバルーンカテーテルを配し、バルーンを膨らませることで狭窄箇所を拡張するバルーン拡張術が知られている。例えば、バルーンカテーテルを用いた治療法としては、バルーンを病変部へ案内し、バルーンを加熱することで病変部を焼灼するバルーンアブレーション術も知られている。
例えば、特許文献1には、バルーン内バルーン構造のバルーン部を採用したバルーンカテーテルが開示されている。このバルーンカテーテルは、互いにスライド可能な外筒シャフト、中筒シャフト及び内筒シャフトにより構成されるカテーテルシャフトと、外筒シャフトの先端部と内筒シャフトの先端部との間に配置される外バルーンと、中筒シャフトの先端部と内筒シャフトの先端部との間に配置され外バルーンの内部に収容される内バルーンと、内バルーンの内部に配置される電極及び温度センサと、中筒シャフトと内筒シャフトとの間に形成され内バルーンの内部に通じる送液路と、外筒シャフトと中筒シャフトとの間に形成され外バルーンと内バルーンとの間に通じる送気路と、温度センサのリード線を介して内バルーンの内部温度を測定しながら電極に電力を供給する高周波発生器と、送液路を介して内バルーンの内部に充填液を送る液体注入器と、送液路を介して内バルーンの内部に振動波を伝える振動発生器と、送気路を介して外バルーンと内バルーンとの間にガスを送るガス注入器と、を備える。拡張した内バルーンが拡張した外バルーンと部分的に密着可能な密着部を、外バルーンと内バルーンからなるバルーン部に形成している。内バルーンの内部に満たされた充填液は、電極に電力が供給されることで、高周波加温される。外バルーンは、管腔臓器内での位置を保持すると共に内バルーンの熱伝導を遮断する。内バルーンの熱エネルギーは、外バルーンとの密着部を介して標的組織を焼灼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-132364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バルーン内バルーン構造のバルーン部に形成した密着部を介して標的組織を焼灼する構成では、密着部での熱伝導により標的組織(対象組織)の周囲にも熱が及ぶ可能性が高い。そのため、対象組織に対して局所的な加熱を行うことは困難である。
【0005】
そこで本発明は、対象組織に対して局所的な加熱を行うことができる組織加熱装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る組織加熱装置は、対象組織に対して加熱を行うことが可能に構成される組織加熱装置において、前記対象組織に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分及び第2部分を有し、前記第1部分及び前記第2部分は、熱伝導率及び/又は厚みが互いに異なる。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、対象組織に対して局所的な加熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るシステムの構成図。
図2】第1実施形態に係るバルーン内部循環構造の説明図。
図3】第1実施形態に係るバルーンカテーテルの一例を示す斜視図。
図4】実施形態に係る局所加熱・拡張による再狭窄抑制メカニズムの説明図。
図5図4に続く、再狭窄抑制メカニズムの説明図。
図6図5に続く、再狭窄抑制メカニズムの説明図。
図7】第2実施形態に係るバルーンカテーテルの一例を示す斜視図。
図8】実施例に係る食道狭窄部の加熱(全域)の1週間後を示す図。
図9】実施例に係る食道狭窄部の加熱(局所)の2週間後を示す図。
図10】実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所をMT染色した一例を示す図。
図11】実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所をHE染色した一例を示す図。
図12】実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所のコラーゲン繊維の指向性を通常組織の場合と併せて示す図。
図13】実施例に係るブタBの食道壁の各層の厚みを示す図。
図14】実施例に係るブタBの食道壁の粘膜下層のコラーゲン繊維の層の青色平均強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、消化管等の対象組織に対して加熱を行うことが可能に構成される組織加熱装置を備えるシステムの一例として、バルーンカテーテルを備えるシステムの例を挙げて説明する。
【0010】
<第1実施形態>
<システム>
図1は、実施形態に係るシステム1の構成図である。図2は、実施形態に係るバルーン内部循環構造の説明図である。
図1及び図2を併せて参照し、システム1は、バルーンカテーテル2(組織加熱装置の一例)と、複数の容器3A,3Bと、流量調整弁4と、コンプレッサ5と、圧力調整器6と、加圧排気弁7と、温度測定部8A,8Bと、熱源部9A,9Bと、導通弁10と、減圧機構11と、開閉弁12と、複数の配管30~36,40,44と、制御装置50と、を備える。
【0011】
<バルーンカテーテル>
バルーンカテーテル2は、消化管(対象組織の一例)に対する温度及び圧力を制御しかつ消化管を拡張及び固定可能に構成される。バルーンカテーテル2は、消化管に接触する接触部の内部に流体を流入させる入口流路22と、入口流路22から流入した流体を外部に流出させる出口流路23と、を有する。
【0012】
バルーンカテーテル2は、バルーン20と、流路部材21と、を備える。バルーン20は、消化管に接触する接触部(例えば、外表面)を有する。バルーン20は、流体(例えば、熱媒体等の液体)の供給によって膨張する。流路部材21は、バルーン20の内部に流体を流入させる入口流路22と、バルーン20の外部に流体を流出させる出口流路23と、を有する。
【0013】
流路部材21は、単一の部材で構成される。流路部材21は、一方向に長手を持つ軸部材である。例えば、入口流路22及び出口流路23は、円筒形状の流路部材21の内部に形成される。例えば、入口流路22及び出口流路23は、流路部材21の内部において仕切り壁(不図示)によって仕切られている。
【0014】
流路部材21は、バルーンカテーテル2の基端から先端近傍まで延びている。バルーン20は、流路部材21の先端を覆うように設けられる。バルーン20は、流路部材21の基端側から先端を超える部分にわたって流路部材21を覆うように設けられる。入口流路22は、流路部材21の基端から先端にわたって開口している。
【0015】
流路部材21は、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部25と、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分をバルーン20の内部に通じさせる開口部26と、を有する。
【0016】
例えば、閉塞部25は、出口流路23の先端開口に対して着脱可能に取り付けられてもよい。例えば、閉塞部25は、プラグ等であってもよい。例えば、閉塞部25は、上記に限らず、流路部材21と同一の部材で一体に設けられてもよい。例えば、閉塞部25の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0017】
例えば、開口部26は、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分に形成された貫通孔である。図の例では、開口部26は1箇所形成されているが、これに限らない。例えば、開口部26は複数形成されてもよい。例えば、開口部26の個数(態様)は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0018】
上記構成によれば、閉塞部25により、出口流路23において入口流路22の先端開口近傍の部分が閉塞されている。そのため、入口流路22の先端開口から流入した流体が出口流路23の先端開口に入り込むことはない。加えて、開口部26により、出口流路23においてバルーン20の基端近傍の部分がバルーン20の内部に通じている。そのため、バルーン20内部に流入した流体は、バルーン20の基端近傍へ流れた後に出口流路23に入るようになる。図2中において、流体の流れの一例を矢印で示す。したがって、バルーン20内部の広い範囲で流体を循環させることができる。
【0019】
<容器>
システム1は、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する2つ(複数の一例)の容器3A,3Bを備える。2つの容器3A,3Bは、バルーンカテーテル2に供給するための第1熱媒体(例えば、熱水)を貯留する第1タンク3Aと、第1熱媒体よりも低温の第2熱媒体(例えば、冷水)を貯留する第2タンク3Bと、である。
【0020】
例えば、熱水の温度は、40℃以上の温度(例えば95℃程度)に設定される。例えば、冷水の温度は、40℃未満の温度(例えば20℃程度)に設定される。例えば、第1熱媒体及び第2熱媒体は、希釈造影剤、蒸留水などであってもよい。例えば、第1タンク3A及び第2タンク3Bは、耐熱性及び耐圧性に優れる金属製の容器であることが好ましい。
【0021】
図の例では、システム1が2つの容器3A,3Bを備える例を示したが、これに限定されない。例えば、システム1は、3つ以上の容器3A,3Bを備えてもよい。例えば、容器3A,3Bは複数設けられていればよい。例えば、容器3A,3Bの設置数は、設計仕様に応じて変形することができる。
【0022】
<流量調整弁>
流量調整弁4は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に流れる熱媒体の流量を調整する。流量調整弁4は、制御装置50と電気的に接続される。例えば、流量調整弁4は、電動三方弁であってもよい。
【0023】
複数の容器3A,3Bと流量調整弁4との間には、第1熱媒体を供給するための第1熱媒管33(以下「熱水供給管33」ともいう。)と、第2熱媒体を供給するための第2熱媒管34(以下「冷水供給管34」ともいう。)と、が設けられる。熱水供給管33及び冷水供給管34は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。
【0024】
熱水供給管33の一端(上流端)は、第1タンク3Aの内部(具体的には、熱水の液面よりも下方)に配置される。熱水供給管33の他端(下流端)は、流量調整弁4に接続される。冷水供給管34の一端(上流端)は、第2タンク3Bの内部(具体的には、冷水の液面よりも下方)に配置される。冷水供給管34の他端(下流端)は、流量調整弁4に接続される。
【0025】
<コンプレッサ>
コンプレッサ5は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体が流れるように複数の容器3A,3Bに対して圧縮空気を供給する。例えば、コンプレッサ5の出力(圧縮空気を供給する圧力)は、2MPa以下(例えば0.4MPa程度)に設定されてもよい。コンプレッサ5は、制御装置50と電気的に接続される。
【0026】
コンプレッサ5と複数の容器3A,3Bとの間には、圧縮空気を供給するための空気供給管30が設けられる。空気供給管30は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。空気供給管30の一端(上流端)は、コンプレッサ5に接続される。
【0027】
空気供給管30は、第1タンク3A側に分岐する第1分岐管31と、第2タンク3B側に分岐する第2分岐管32と、を備える。第1分岐管31の一端(上流端)及び第2分岐管32の一端(上流端)は、空気供給管30において第1分岐管31及び第2分岐管32が分岐する分岐部に相当する。第1分岐管31の他端(下流端)は、第1タンク3Aの内部(具体的には、熱水の液面よりも上方)に配置される。第2分岐管32の他端(下流端)は、第2タンク3Bの内部(具体的には、冷水の液面よりも上方)に配置される。
【0028】
<圧力調整器>
圧力調整器6は、コンプレッサ5から供給される圧縮空気の圧力を調整する。圧力調整器6は、制御装置50と電気的に接続される。圧力調整器6は、空気供給管30の途中に設けられる。圧力調整器6は、コンプレッサ5の下流かつ分岐部の上流に配置される。
【0029】
<加圧排気弁>
加圧排気弁7は、コンプレッサ5から供給される圧縮空気を排出するためのバルブである。例えば、加圧排気弁7は、手動で操作可能に構成されてもよい。例えば、加圧排気弁7の操作により、空気供給管30の内部から圧縮空気の一部を排出することができる。例えば、加圧排気弁7の開度を調整することで、複数の容器3A,3Bに供給される圧縮空気の圧力を調整することができる。
【0030】
<温度測定部>
温度測定部8A,8Bは、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度を測定する。温度測定部8A,8Bは、制御装置50と電気的に接続される。図の例では、温度測定部8A,8Bは、容器3A,3Bの数に対応して2つ設けられる。2つの温度測定部8A,8Bは、第1タンク3Aに貯留される熱水の温度を測定する熱水温度測定部8Aと、第2タンク3Bに貯留される冷水の温度を測定する冷水温度測定部8Bと、である。例えば、温度測定部8A,8Bは、熱電対及び温度計により構成されてもよい。
【0031】
<熱源部>
熱源部9A,9Bは、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する。熱源部9A,9Bは、制御装置50と電気的に接続される。図の例では、熱源部9A,9Bは、容器3A,3Bの数に対応して2つ設けられる。2つの熱源部9A,9Bは、第1タンク3Aに貯留される熱水に熱エネルギーを付与する熱水側熱源9Aと、第2タンク3Bに貯留される冷水に熱エネルギーを付与する冷水側熱源9Bと、である。例えば、熱源部9A,9Bは、電熱線により構成されてもよい。
【0032】
<導通弁>
導通弁10は、流量調整弁4で調整された流体をバルーン20内部に導くためのバルブである。例えば、導通弁10は、流量調整弁4で調整された流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。導通弁10と流量調整弁4との間には、流体を導くための導通管35が設けられる。導通管35は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。導通管35の一端(上流端)は、流量調整弁4に接続される。導通管35の他端(下流端)は、導通弁10に接続される。
【0033】
導通弁10とバルーンカテーテル2との間には、流体を流すための2ラインチューブ40が設けられる。2ラインチューブ40は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。2ラインチューブ40の一端(流体供給時の上流端)は、導通弁10に接続される。2ラインチューブ40の他端(流体供給時の下流端)は、バルーンカテーテル2(例えば、流路部材21の基端)に接続される。
【0034】
例えば、導通弁10は、2ラインチューブ40における流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。2ラインチューブ40は、流路部材21の入口流路22に通じる入口管部41と、流路部材21の出口流路23に通じる出口管部42と、を備える。出口管部42において導通弁10近傍は、栓43等で塞がれている。
【0035】
<減圧機構>
減圧機構11は、バルーン20内部の圧力を減圧するための機構である。例えば、減圧機構11は、バルーン内減圧用ピストンである。減圧機構11は、手動で操作可能に構成される。例えば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の圧力を減圧することができる。例えば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の液体を出すことができる。
【0036】
導通弁10と減圧機構11との間には、バルーン20内部の圧力を減圧するための減圧管36が設けられる。減圧管36は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。減圧管36の一端(上流端)は、導通弁10に接続される。減圧管36の他端(下流端)は、減圧機構11(具体的には、ピストンを収容するシリンダの底部)に接続される。例えば、導通弁10は、減圧管36における流体の流れ方向に対して直角方向に流体を導くように構成されてもよい。
【0037】
<開閉弁>
開閉弁12は、出口流路23に通じる部分を開閉するためのバルブである。開閉弁12は、2ラインチューブ40の出口管部42から分岐する排水管44の途中に設けられる。排水管44は、システム1を構成する複数の配管に含まれる。排水管44の下端(下流端)は、排水ビン45内に開口している。
【0038】
例えば、開閉弁12は、手動で操作可能に構成されてもよい。例えば、開閉弁12の操作により、バルーン20内部から排水ビン45内に液体を排出することができる。例えば、開閉弁12の開度を調整することで、バルーン20内部の圧力を調整してもよい。
【0039】
<制御装置>
制御装置50は、流量制御部51と、圧力制御部52と、熱源制御部53と、記憶部54と、を備える。
流量制御部51は、流量調整弁4を制御する。流量制御部51は、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、流量調整弁4に熱媒体の流量を調整させる。例えば、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示すデータは、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0040】
圧力制御部52は、圧力調整器6を制御する。圧力制御部52は、バルーン20内部の目標圧力に基づいて、圧力調整器6に圧縮空気の圧力を調整させる。例えば、バルーン20内部の目標圧力は、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0041】
熱源制御部53は、熱源部9A,9Bを制御する。熱源制御部53は、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいて、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように熱源部9A,9Bに熱エネルギーを付与させる。例えば、予め設定した温度範囲に関するデータは、記憶部54に予め記憶されていてもよい。
【0042】
<バルーンカテーテルの一例>
図3は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル2の一例を示す斜視図である。図3においては、バルーン20を2点鎖線で示す。
図3を併せて参照し、バルーンカテーテル2は、消化管に対して加熱を行うことが可能に構成される。バルーンカテーテル2は、消化管に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分110A,110B及び第2部分120を有する。第1部分110A,110B及び第2部分120は、熱伝導率が互いに異なる。
【0043】
本実施形態では、第1部分110A,110Bの熱伝導率は、第2部分120の熱伝導率よりも高い。第1部分110A,110Bは、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分に相当する。第2部分120は、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が低い部分に相当する。
【0044】
バルーンカテーテル2は、接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーン20を備える。例えば、バルーン20の厚みは、0.01mm以上1.0mm以下の厚みに設定される。例えば、バルーン20の厚みは、バルーン20に要求される強度・剛性、熱伝導率等を満足し得る範囲で設定されることが好ましい。なお、バルーン20の厚みは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0045】
本実施形態では、第1部分110A,110Bは、バルーン20の外表面に配置される。例えば、第1部分110A,110Bの厚みは、0.05mm以上0.5mm以下の厚みに設定されることが好ましく、0.08mm以上0.12mm以下の厚みに設定されることがより好ましい。なお、第1部分110A,110Bの厚みは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0046】
例えば、第1部分110A,110Bは、金属で形成される。例えば、金属としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等を主成分とする金属、又は、これらのうちの少なくとも1つを含む合金等が挙げられる。本実施形態では、第1部分110A,110Bは、銅(例えば、熱伝導率386~402W/m・K)で形成される。なお、第1部分110A,110Bの形成材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0047】
例えば、第2部分120は、樹脂で形成される。例えば、樹脂としては、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を主成分とする樹脂、又は、これらのうちの少なくとも1つを含む合成樹脂等が挙げられる。本実施形態では、第2部分120は、ポリイミド(例えば、熱伝導率0.28~0.34W/m・K)で形成される。なお、第2部分120の形成材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0048】
バルーン20は、膨張した際に筒状となる筒部20Cを有する。図の例では、筒部20Cの一部は、円筒状をなしている。第1部分110A,110Bは、筒部20Cの周方向に等間隔をあけて複数配置される。図の例では、2個の第1部分110A,110Bが、筒部20Cの周方向に等間隔をあけて配置されている。なお、第1部分110A,110Bの数は、上記に限らず、3個以上でもよい。例えば、第1部分110A,110Bの数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0049】
第1部分110A,110Bと第2部分120の少なくとも一部とは、筒部20Cの周方向において交互に配置される。図の例では、2個の第1部分110A,110Bと第2部分120の一部とが、筒部20Cの周方向において交互に配置される。図の例では、第2部分120の一部は、2個の第1部分110A,110Bの間に介在する2つの部分(領域)を有する。なお、第2部分120の一部が複数の第1部分110A,110Bの間に介在する数は、上記に限らず、第1部分110A,110Bの数に応じて、設計仕様に応じて変更することができる。
【0050】
第1部分110A,110Bは、第2部分120よりも筒部20Cの周方向における長さが短い。例えば、筒部20Cの周方向における第1部分110A,110Bの長さW1(以下「第1部分110A,110Bの幅W1」ともいう。)は、1.0mm以上3.0mm以下の幅に設定されることが好ましく、1.5mm以上2.5mm以下の幅に設定されることがより好ましい。なお、第1部分110A,110Bの幅W1は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0051】
第1部分110A,110Bは、筒部20Cの軸方向と平行な方向に沿って延びる延在部111を有する。図の例では、延在部111(第1部分110A,110B)は、筒部20Cの径方向から見て、長方形をなしている。なお、第1部分110A,110Bの形状は、上記に限らず、長方形以外の矩形(例えば、正方形)でもよいし、真円や楕円、長円等の円形でもよいし、複数の形状を組み合わせた形状でもよい。例えば、第1部分110A,110Bの形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0052】
例えば、第1部分110A,110Bは、樹脂製のバルーン20の外表面の一部に、金属シートを貼り付けることで形成される。この場合、バルーン20において第1部分110A,110Bが貼り付けられた領域以外の部分は、第2部分120となる。なお、第1部分110A,110Bの形成方法は、上記に限らず、マスクを用いた塗布(例えば、スクリーン印刷)、エッチング、スパッタ、蒸着等の方法でもよい。例えば、第1部分110A,110Bの形成方法は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0053】
本実施形態では、第1部分110A,110Bが銅(例えば、熱伝導率386~402W/m・K)で形成され、第2部分120がポリイミド(例えば、熱伝導率0.28~0.34W/m・K)で形成される。例えば、樹脂製(例えば、ポリイミド製)のバルーン20の一部を、金属シート(例えば、銅製のシート)に置き換えることで、置き換えた部分(第1部分110A,110B)の熱伝導率が数百倍に増加するため、局所的な加熱が可能になる。
【0054】
なお、樹脂製(例えば、ポリイミド製)のバルーン20の一部を、金属シート(例えば、銅製のシート)に置き換えた場合、置き換えた部分以外は、例えば、ウレタン製の被覆層(不図示)で覆われてもよい。例えば、被覆層の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0055】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のバルーンカテーテル2は、消化管に対して加熱を行うことが可能に構成される。バルーンカテーテル2は、消化管に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分110A,110B及び第2部分120を有する。第1部分110A,110B及び第2部分120は、熱伝導率が互いに異なる。
この構成によれば、第1部分110A,110B及び第2部分120は、熱伝導率が互いに異なることで、バルーンカテーテル2の接触部において供給熱量の勾配が生じ、接触する消化管に対して温度差を与えることができる。したがって、消化管に対して局所的な加熱を行うことができる。
加えて、消化管の一部の箇所に対する温度だけを上げ、他の部分の箇所に対する温度は上げない場合等に容易に対応することができる。例えば、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行い、それ以外の箇所には極力温度上昇を起こさないようにすることができる。
【0056】
本実施形態では、バルーンカテーテル2は、接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーン20を備える。第1部分110A,110B及び第2部分120のうち熱伝導率が高い部分である第1部分110A,110Bは、バルーン20の外表面に配置される。
この構成によれば、第1部分110A,110Bがバルーン20の外表面とは反対側の内側面(裏面)に配置される場合と比較して、バルーンカテーテル2を容易に製造することができる。
【0057】
本実施形態では、第1部分110A,110Bは、金属で形成される。
この構成によれば、第1部分110A,110Bが樹脂で形成される場合(例えば、第1部分110A,110B及び第2部分120の各々が樹脂で形成される場合)と比較して、第1部分110A,110Bと第2部分120とで数十~数百倍程度の熱伝導率の差が生じる。そのため、バルーンカテーテル2の接触部においてより大きな供給熱量の勾配が生じ、接触する消化管に対してより大きな温度差を与えることができる。したがって、消化管に対して局所的な加熱を行うことが容易となる。
【0058】
本実施形態では、第2部分120は、樹脂で形成される。
この構成によれば、第2部分120が金属で形成される場合(例えば、第1部分110A,110B及び第2部分120の各々が金属で形成される場合)と比較して、第1部分110A,110Bと第2部分120とで数十~数百倍程度の熱伝導率の差が生じる。そのため、バルーンカテーテル2の接触部においてより大きな供給熱量の勾配が生じ、接触する消化管に対してより大きな温度差を与えることができる。したがって、消化管に対して局所的な加熱を行うことが容易となる。
【0059】
本実施形態では、バルーン20は、膨張した際に筒状となる筒部20Cを有する。第1部分110A,110Bは、筒部20Cの周方向に等間隔をあけて複数配置される。
例えば、第1部分110A,110Bが1のみ配置される場合、又は、複数の第1部分110A,110Bが筒部20Cの周方向に不等間隔に配置される場合は、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行いたい場合に対応しにくい。これに対し本構成によれば、複数の第1部分110A,110Bが、筒部20Cの周方向に等間隔をあけて配置されることで、複数の第1部分110A,110Bのうちのどれかを、加熱したい箇所のみに接触させやすい。したがって、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行うことが容易となる。
【0060】
本実施形態では、第1部分110A,110Bと第2部分120の一部とは、筒部20Cの周方向において交互に配置される。
この構成によれば、消化管の周方向において加熱したい箇所とそれ以外の箇所とが交互に配置される場合でも、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行うことが容易となる。
【0061】
本実施形態では、第1部分110A,110Bは、第2部分120よりも筒部20Cの周方向における長さが短い。
例えば、第1部分110A,110Bが、第2部分120よりも筒部20Cの周方向における長さが長い場合は、第1部分110A,110Bからの熱が、加熱したい箇所以外の箇所(加熱不要な箇所)に回り込み易くなる。これに対し本構成によれば、第1部分110A,110Bが、第2部分120よりも筒部20Cの周方向における長さが短いことで、第1部分110A,110Bからの熱は、加熱不要な箇所に回り込みにくい。したがって、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行うことが容易となる。
【0062】
本実施形態では、第1部分110A,110Bは、筒部20Cの軸方向と平行な方向に沿って延びる延在部111を有する。
この構成によれば、消化管が延びる方向に沿って加熱したい箇所が配置される場合でも、第1部分110A,110Bのうちの延在部111を、加熱したい箇所のみに接触させやすい。したがって、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行うことが容易となる。
【0063】
本実施形態のシステム1は、上記のバルーンカテーテル2と、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器3A,3Bと、を備える。
この構成によれば、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体を流すことができる。したがって、1つの容器のみを備える場合と比較して、所望の温度の熱媒体をバルーン20内部に速やかに流すことができる。
【0064】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に流れる熱媒体の流量を調整する流量調整弁4と、流量調整弁4を制御する流量制御部51と、を更に備える。流量制御部51は、バルーン20内部に熱媒体を流す時間とバルーン20内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、流量調整弁4に熱媒体の流量を調整させる。
この構成によれば、予め取得したデータに基づいた流量制御部51の制御により、流量調整弁4の操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、バルーン20内部に流れる熱媒体の流量調整を自動で行うことができる。
【0065】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bからバルーン20内部に熱媒体が流れるように複数の容器3A,3Bに対して圧縮空気を供給するコンプレッサ5と、コンプレッサ5から供給される圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器6と、圧力調整器6を制御する圧力制御部52と、を更に備える。圧力制御部52は、バルーン20内部の目標圧力に基づいて、圧力調整器6に圧縮空気の圧力を調整させる。
この構成によれば、バルーン20内部の目標圧力に基づいた圧力制御部52の制御により、圧力調整器6の操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、バルーン20内部の圧力調整を自動で行うことができる。
【0066】
本実施形態では、システム1は、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度を測定する温度測定部8A,8Bと、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部9A,9Bと、熱源部9A,9Bを制御する熱源制御部53と、を更に備える。熱源制御部53は、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいて、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように熱源部9A,9Bに熱エネルギーを付与させる。
この構成によれば、温度測定部8A,8Bの測定温度に基づいた熱源制御部53の制御により、熱源部9A,9Bの操作に人手を要しない。したがって、システム1の自動化に寄与する。例えば、複数の容器3A,3Bに貯留される熱媒体の温度調整を自動で行うことができる。
【0067】
本実施形態では、システム1は、バルーン20内部の圧力を減圧するための減圧機構11を更に備える。
この構成によれば、減圧機構11の操作により、バルーン20内部の圧力を減圧することができる。例えば、バルーン20内部の圧力を減圧するために新たにコンプレッサ等を設ける場合と比較して、システム1の構成を簡素化することができる。
例えば、内視鏡等からバルーン20を引き抜く際に、バルーン20内部に流体が入っていると、引き抜きにくい。これに対し本構成によれば、減圧機構11によりバルーン20内部の流体を出すことができるため、バルーン20を容易に引き抜くことができる。
【0068】
本実施形態では、システム1は、出口流路23に通じる部分を開閉するための開閉弁12を更に備える。
この構成によれば、開閉弁12の操作により、バルーン20内部から液体を排出することができる。例えば、開閉弁12の開度を調整することで、バルーン20内部の圧力を調整することができる。
【0069】
<バルーン内部の温度及び圧力の制御の一例>
例えば、バルーン内部の温度及び圧力の制御は、以下の手順で行ってもよい。
バルーンカテーテルの利用者(例えば、医師)は、まず内視鏡を患者の体内に挿入する。例えば、内視鏡の先端部を、狭窄箇所の近傍に配置する。利用者は、内視鏡の鉗子チャネルを通して造影剤を狭窄箇所に注入する。その後、狭窄箇所をエックス線により造影することで、狭窄箇所の長さや径などの情報を得る。次に、利用者は、内視鏡の鉗子チャネルにバルーンカテーテルを通す。例えば、バルーンが狭窄箇所に亘って存在するように、バルーンカテーテルを進める。利用者は、制御装置を操作し、制御装置による拡張制御を開始させる。
【0070】
拡張制御を開始する際は、まず、対象組織の熱変性温度(例えば65℃)以上の熱水を、バルーン内部に供給する。これにより、バルーン内部を所定温度に加熱する。加熱後に、冷水(例えば0℃以上37℃以下の温度の水)をバルーン内部に供給する。
【0071】
例えば、対象組織を単に加熱するのみではタンパク質は収縮する。これに対し本実施形態によれば、加熱後の冷却により、対象組織のタンパク質を拡げつつ、拡張したまま固めることができる。
【0072】
例えば、バルーン内部の温度が65℃を超える前に、バルーン内部に供給する流体を熱水から冷水に切り換える。なお、冷水への切り換えタイミングは、上記に限らず、要求仕様に応じて変更することができる。
【0073】
次に、バルーン内部の圧力調整を行う。例えば、バルーン内部の圧力を、0MPa以上0.7MPa以下の圧力に調整する。このような手順により、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御することができる。
【0074】
<バルーンカテーテルの用途の一例>
例えば、身体の管腔内の狭窄に対して、バルーンカテーテルを用いた拡張が行われる。その際にバルーン内部を加熱することで管腔組織の熱変性を起こし、拡張時の機械的損傷を緩和する手法が提案されている。この手法を実施するにあたり、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する必要がある。
【0075】
例えば、バルーン内部の温度及び圧力を独立して制御する構成としては、バルーン内部又は表面に発熱体(例えば、RF電源、レーザー発光部等)を設け、バルーン内部に送る熱媒体の圧力を調整する構成が知られている。しかし、このような構成では、高額かつ複雑な制御装置を要するため、安全面でリスクを伴う可能性が高い。
【0076】
これに対し本実施形態では、2つのルーメン(管)として入口流路及び出口流路を有する流路部材を備えたバルーンカテーテルにより、加熱流体を循環させることで、従来の高額かつ複雑な制御装置を廃することができる。したがって、安価で安全性の高い装置を実現することができる。
【0077】
例えば、本実施形態のバルーンカテーテルを食道狭窄部に適用する場合は、次の効果が得られる。壁が厚くなった瘢痕組織のコラーゲン線維を加熱によりゼラチン化することで組織を軟化しながら食道壁を傷つけることなくバルーン拡張することができる。これにより、再狭窄を予防することができる。
【0078】
例えば、生体内部の加熱手段として、バルーンカテーテルを体内に挿入して加熱する技術が存在する。多くの場合、バルーン内部が高温になることで、バルーンと接触する生体組織の温度が上昇する。このとき、組織が温度閾値(例えば、42.5℃)を超えると、広範囲に熱傷を起こし、その後の炎症反応や潰瘍の形成など深刻な合併症をもたらすことがある。つまり、加熱による効用と合併症(副作用)とにはトレードオフの関係がある。
【0079】
これに対し本実施形態では、バルーンカテーテルの接触部を構成する第1部分及び第2部分は、熱伝導率が互いに異なることで、接触する消化管に対して温度差を与えることができ、消化管に対して局所的な加熱を行うことができる。すなわち、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行い、それ以外の箇所には極力温度上昇を起こさないようにすることができる。したがって、組織の広範囲に熱傷を起こしたり、合併症をもたらしたりする事態を回避することができる。
【0080】
<局所加熱・拡張による再狭窄抑制メカニズム>
図4は、実施形態に係る局所加熱・拡張による再狭窄抑制メカニズムの説明図である。図5は、図4に続く、再狭窄抑制メカニズムの説明図である。図6は、図5に続く、再狭窄抑制メカニズムの説明図である。
図4から図6を併せて参照し、本実施形態では、バルーンカテーテルの接触部を構成する第1部分及び第2部分のうち第1部分に接した組織のみ局所的に加熱が行われる。
【0081】
図の例では、筋層の上にコラーゲン層を介して上皮層があり、これらの組織の一部のみに局所的な加熱が行われる。図4の例では、加熱領域は、幅(図の左右方向の長さ)が第1部分(例えば、金属シート)の幅に対応して約2.0mm、奥行き(図の上下方向の長さ)が約1.5mmとされる。
【0082】
組織レベルで見ると、第1部分(例えば、金属シート)に対応する個所のみコラーゲン繊維の熱変性が生じる。これにより、繊維層がゼラチン化し、円周方向に引き伸ばされる。例えば、図5に示すように、局所加熱されたコラーゲン層が熱変性してゼラチンに変わり、そこを起点に組織が伸長する。その結果、図6に示すように、上皮層が回復する。
【0083】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るバルーンカテーテル202の一例を示す斜視図である。図7においては、バルーン20を2点鎖線で示す。
以下、図7を参照しつつ、第2実施形態に係るバルーンカテーテル202について説明する。図7に示す構成において、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0084】
例えば、図7に示すように、バルーンカテーテル202は、消化管に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分210及び第2部分120を有する。第1部分210及び第2部分120は、熱伝導率が互いに異なる。
【0085】
本実施形態では、第1部分210の熱伝導率は、第2部分120の熱伝導率よりも高い。第1部分210は、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分に相当する。第2部分120は、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が低い部分に相当する。
【0086】
第1部分210は、筒部20Cの周方向に沿って延びる環状部212A,212Bを有する。図の例では、環状部212A,212Bは、筒部の周方向に沿う円環状をなしている。なお、環状部212A,212Bの形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0087】
環状部212A,212Bは、延在部211A~211Fの長手方向の端部に連結される。図の例では、環状部212A,212Bは、延在部211A~211Fの長手方向の両端部に連結される。なお、環状部212A,212Bは、上記に限らず、延在部211A~211Fの長手方向の一方の端部に連結され、他方の端部に連結されなくてもよい。例えば、環状部212A,212Bは、延在部211A~211Fの長手方向の片端部のみに連結されてもよい。例えば、環状部212A,212Bの連結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0088】
図の例では、6個の延在部211A~211Fが、筒部20Cの周方向に等間隔をあけて配置されている。なお、延在部211A~211Fの数は、上記に限らず、5個以下でもよいし、7個以上でもよい。例えば、延在部211A~211Fの数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0089】
本実施形態では、第1部分210は、筒部20Cの周方向に沿って延びる環状部212A,212Bを有する。
この構成によれば、消化管の周方向に沿って加熱したい箇所が配置される場合でも、第1部分210のうちの環状部212A,212Bを、加熱したい箇所のみに接触させやすい。したがって、必要最小限の箇所のみ局所的に加熱を行うことが容易となる。
【0090】
本実施形態では、環状部212A,212Bは、延在部211A~211Fの長手方向の端部に連結される。
この構成によれば、環状部212A,212Bが延在部211A~211Fと一体化されるため、環状部212A,212Bが延在部211A~211Fに連結されない場合と比較して、バルーン20に対する環状部212A,212B及び延在部211A~211Fの位置合わせをしやすい。したがって、バルーン20に対する第1部分210の位置決めが容易となる。
【0091】
<変形例>
上述した実施形態では、組織加熱装置は、バルーンカテーテルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、組織加熱装置は、ブジー等の他の装置であってもよい。例えば、組織加熱装置は、対象組織に対する温度及び圧力を制御しかつ対象組織を拡張及び固定可能に構成されていればよい。例えば、組織加熱装置の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0092】
上述した実施形態では、第1部分及び第2部分は、熱伝導率が互いに異なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1部分及び第2部分は、熱伝導率が互いに同じでもよい。例えば、第1部分及び第2部分は、厚みが互いに異なってもよい。例えば、第1部分及び第2部分は、熱伝導率及び厚みが互いに異なってもよい。例えば、バルーンの一部の厚みを、他の部分の厚みよりも薄くすることで、薄くした部分は他の部分よりも熱が伝わり易いため、局所的な加熱が可能になる。例えば、第1部分及び第2部分は、熱伝導率及び/又は厚みが互いに異なっていればよい。例えば、第1部分及び第2部分における熱伝導率及び/又は厚みの態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0093】
上述した実施形態では、バルーンカテーテルは、接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーンを備え、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分は、バルーンの外表面に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分は、バルーンの外表面とは反対側の内側面(裏面)に配置されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0094】
上述した実施形態では、熱伝導率が高い部分は、金属で形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が高い部分は、樹脂で形成されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分の各々は、樹脂で形成されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0095】
上述した実施形態では、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が低い部分は、樹脂で形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が低い部分は、形成で構成されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分の各々は、金属で形成されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0096】
上述した実施形態では、バルーンは、膨張した際に筒状となる筒部を有し、熱伝導率が高い部分は、筒部の周方向に等間隔をあけて複数配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が高い部分は、1のみ配置されてもよい。例えば、複数の熱伝導率が高い部分は、筒部の周方向に不等間隔に配置されてもよい。例えば、熱伝導率が高い部分の配置数及び配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0097】
上述した実施形態では、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分と熱伝導率が低い部分の少なくとも一部とは、筒部の周方向において交互に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分と熱伝導率が低い部分の少なくとも一部とは、筒部の周方向において交互に配置されなくてもよい。例えば、筒部の周方向における熱伝導率が高い部分と熱伝導率が低い部分との配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0098】
上述した実施形態では、熱伝導率が高い部分は、熱伝導率が低い部分よりも筒部の周方向における長さが短い例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が高い部分が、熱伝導率が低い部分よりも筒部の周方向における長さが長くてもよい。例えば、例えば、筒部の周方向における熱伝導率が高い部分と熱伝導率が低い部分との長さの大小関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0099】
上述した実施形態では、熱伝導率が高い部分は、筒部の軸方向と平行な方向に沿って延びる延在部を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が高い部分は、延在部を有しなくてもよい。例えば、熱伝導率が高い部分における延在部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0100】
上述した実施形態では、熱伝導率が高い部分は、筒部の周方向に沿って延びる環状部を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱伝導率が高い部分は、環状部を有しなくてもよい。例えば、熱伝導率が高い部分における環状部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0101】
上述した実施形態では、環状部は、延在部の長手方向の端部に連結される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、環状部は、延在部に連結されなくてもよい。例えば、環状部は、延在部と一体化されなくてもよい。例えば、環状部と延在部との連結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0102】
上述した実施形態では、流路部材は、単一の部材で構成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流路部材は、複数の部材で構成されてもよい。例えば、流路部材は、入口流路が形成された入口配管と、出口流路が形成された出口配管と、で構成されてもよい。例えば、流路部材の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0103】
上述した実施形態では、流路部材は、出口流路において入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部と、出口流路においてバルーンの基端近傍の部分をバルーンの内部に通じさせる開口部と、を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、入口流路及び出口流路の両方が流路部材の基端から先端にわたって開口していてもよい。例えば、流路部材は、出口流路において入口流路の先端開口近傍の部分を閉塞する閉塞部を有しなくてもよい。例えば、流路部材は、出口流路においてバルーンの基端近傍の部分をバルーンの内部に通じさせる開口部を有しなくてもよい。例えば、入口流路及び出口流路の開口態様、並びに、閉塞部及び開口部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0104】
上述した実施形態では、システムは、上記の組織加熱装置と、流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、1つの容器のみを備えてもよい。例えば、容器の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0105】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器から接触部の内部に流れる熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流量調整弁の操作に人手を要してもよい。例えば、接触部の内部に流れる熱媒体の流量調整を手動で行ってもよい。例えば、流量調整弁及び流量制御弁の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0106】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器から接触部の内部に熱媒体が流れるように複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、コンプレッサから供給される圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、圧力調整器の操作に人手を要してもよい。例えば、接触部の内部の圧力調整を手動で行ってもよい。例えば、コンプレッサ、圧力調整器及び圧力制御部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0107】
上述した実施形態では、システムは、複数の容器に貯留される熱媒体の温度を測定する温度測定部と、複数の容器に貯留される熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、熱源部の操作に人手を要してもよい。例えば、複数の容器に貯留される熱媒体の温度調整を手動で行ってもよい。例えば、温度測定部、熱源部及び熱源制御部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0108】
上述した実施形態では、システムは、接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、減圧機構を備えなくてもよい。例えば、システムは、接触部の内部の圧力を減圧するためのコンプレッサ等を備えてもよい。例えば、減圧機構の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0109】
上述した実施形態では、システムは、出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、開閉弁を備えなくてもよい。例えば、システムは、出口流路に通じる部分を開閉するための栓等を備えてもよい。例えば、開閉弁の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0110】
<コンピュータ構成>
制御装置は、バスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置(記憶部に相当)などを備える。制御装置は、プログラムを実行することによってシステムの構成要素を制御する制御装置として機能する。プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0111】
例えば、制御装置の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0112】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0113】
(付記1)
対象組織に対して加熱を行うことが可能に構成される組織加熱装置において、
前記対象組織に接触する接触部に、互いに異なる部位に配置される第1部分及び第2部分を有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、熱伝導率及び/又は厚みが互いに異なる、
組織加熱装置。
【0114】
(付記2)
前記組織加熱装置は、バルーンカテーテルであり、
前記接触部を有し、流体の供給によって膨張するバルーンを備え、
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が高い部分は、前記バルーンの外表面に配置される、
付記1に記載の組織加熱装置。
【0115】
(付記3)
前記熱伝導率が高い部分は、金属で形成される、
付記2に記載の組織加熱装置。
【0116】
(付記4)
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が低い部分は、樹脂で形成される、
付記2又は3に記載の組織加熱装置。
【0117】
(付記5)
前記バルーンは、膨張した際に筒状となる筒部を有し、
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の周方向に等間隔をあけて複数配置される、
付記2から4の何れかに記載の組織加熱装置。
【0118】
(付記6)
前記第1部分及び前記第2部分のうち前記熱伝導率が高い部分と前記熱伝導率が低い部分の少なくとも一部とは、前記筒部の周方向において交互に配置される、
付記5に記載の組織加熱装置。
【0119】
(付記7)
前記熱伝導率が高い部分は、前記熱伝導率が低い部分よりも前記筒部の周方向における長さが短い、
付記6に記載の組織加熱装置。
【0120】
(付記8)
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の軸方向と平行な方向に沿って延びる延在部を有する、
付記5から7の何れかに記載の組織加熱装置。
【0121】
(付記9)
前記熱伝導率が高い部分は、前記筒部の周方向に沿って延びる環状部を有する、
付記8に記載の組織加熱装置。
【0122】
(付記10)
前記環状部は、前記延在部の長手方向の端部に連結される、
付記9に記載の組織加熱装置。
【0123】
(付記11)
付記1から10の何れか一項に記載の組織加熱装置と、
流体として互いに異なる温度の熱媒体を貯留する複数の容器と、を備える、
システム。
【0124】
(付記12)
前記複数の容器から前記接触部の内部に流れる前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁を制御する流量制御部と、を更に備え、
前記流量制御部は、前記接触部の内部に前記熱媒体を流す時間と前記接触部の内部の温度との関係を示す予め取得したデータに基づいて、前記流量調整弁に前記熱媒体の流量を調整させる、
付記11に記載のシステム。
【0125】
(付記13)
前記複数の容器から前記接触部の内部に前記熱媒体が流れるように前記複数の容器に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサから供給される前記圧縮空気の圧力を調整する圧力調整器と、
前記圧力調整器を制御する圧力制御部と、を更に備え、
前記圧力制御部は、前記接触部の内部の目標圧力に基づいて、前記圧力調整器に前記圧縮空気の圧力を調整させる、
付記11又は12に記載のシステム。
【0126】
(付記14)
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度を測定する温度測定部と、
前記複数の容器に貯留される前記熱媒体に熱エネルギーを付与する熱源部と、
前記熱源部を制御する熱源制御部と、を更に備え、
前記熱源制御部は、前記温度測定部の測定温度に基づいて、前記複数の容器に貯留される前記熱媒体の温度が予め設定した温度範囲に含まれるように前記熱源部に前記熱エネルギーを付与させる、
付記11から13の何れかに記載のシステム。
【0127】
(付記15)
前記接触部の内部の圧力を減圧するための減圧機構を更に備える、
付記11から14の何れかに記載のシステム。
【0128】
(付記16)
前記組織加熱装置は、
前記接触部の内部に流体を流入させる入口流路と、
前記入口流路から流入した前記流体を外部に流出させる出口流路と、を有し、
前記システムは、前記出口流路に通じる部分を開閉するための開閉弁を更に備える、
付記11から15の何れかに記載のシステム。
【実施例0129】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0130】
<全体vs局所による加熱後の経過>
図8は、実施例に係る食道狭窄部の加熱(全域)の1週間後を示す図である。図9は、実施例に係る食道狭窄部の加熱(局所)の2週間後を示す図である。
本発明者は、動物実験により、全体vs局所による加熱後の経過を確認した。
【0131】
図8及び図9を併せて参照し、実験の結果、食道狭窄部の加熱(全域)の1週間後では、潰瘍の形成が確認された。一方、食道狭窄部の加熱(局所)の2週間後では、潰瘍の形成は確認されなかった。これは、加熱(局所)は、加熱(全域)よりも食道狭窄部に対する熱負荷が少ないためと考えられる。
【0132】
<加熱拡張を行った箇所(加熱箇所)の組織と通常組織との比較>
図10は、実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所をMT染色(マッソントリクローム染色)した一例を示す図である。図11は、実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所をHE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)した一例を示す図である。図10は、局所加熱したコラーゲン繊維がMT染色により青色に染まった箇所を白黒画像のグラデーションで示した図に相当する。図11は、局所加熱したコラーゲン繊維が熱変性してゼラチンに変わった部分がHE染色により赤色に染まった箇所を白黒画像のグラデーションで示した図に相当する。
本発明者は、加熱拡張を行った箇所(加熱箇所)の組織と通常組織とを比較した。
【0133】
図10及び図11を併せて参照し、加熱箇所では、MT染色により染まった青色(図10では黒色)が局所的に薄くなることが確認された。これは、鬱血が生じ、コラーゲン密度が低下し、筋板など正常構造が破綻したためと考えられる、また、加熱箇所では、HE染色により染まった赤色(図11では黒色)が局所的に濃くなることが確認された。これは、局所加熱したコラーゲン繊維が熱変性してゼラチンに変わったためと考えられる。
【0134】
図12は、実施例に係るブタAの食道狭窄部の加熱箇所のコラーゲン繊維の指向性を通常組織の場合と併せて示す図である。
本発明者は、加熱拡張を行った箇所(加熱箇所)のコラーゲン繊維の指向性を通常組織の場合と比較した。
【0135】
図12を併せて参照し、加熱箇所は、通常組織よりもコラーゲン繊維の指向性が高い(コラーゲン繊維が円周方向に揃っている)ことが確認された。これは、局所加熱したコラーゲン繊維が熱変性によりゼラチンに変わることで軟化し、円周方向に引き伸ばされたためと考えられる。
【0136】
<瘢痕箇所と通常組織との比較>
図13は、実施例に係るブタBの食道壁の各層の厚みを示す図である。図13においては、豚食道壁の上皮、粘膜下層、筋層の各々の厚みを、瘢痕箇所及び非瘢痕箇所(通常組織)について示す図である。
本発明者は、瘢痕箇所の上皮、粘膜下層、筋層の各々の厚みを非瘢痕箇所の場合と比較した。
【0137】
図13を併せて参照し、瘢痕箇所は、非瘢痕箇所と比べて、各層の厚みが薄いことが確認された。これは、一般に瘢痕箇所はコラーゲン繊維が蓄積して硬化しているが、上皮および粘膜下層の切除後、回復過程において上皮および粘膜下層の厚みが十分に回復しないためと考えられる。
【0138】
図14は、実施例に係るブタBの食道壁の粘膜下層のコラーゲン繊維の層の青色平均強度を示す図である。図14において、240以下は青色の背景色(灰色)と分布が異なるため排除している。なお、図14において、横軸は青色の色調を示す。厳密には、図14は、MT染色された病理スライドのカラー画像から、コラーゲン繊維を示す青色成分を分離抽出することで青色単色画像を生成し、さらに青色単色画像の関心領域において、各ピクセルの青色色調(青色の発色の強さ)をヒストグラム(度数分布)として示したものである。この場合、上述のように図14の横軸は「青色の色調」となり、コラーゲン繊維の密度を間接的に表している。
本発明者は、瘢痕箇所の繊維層青色平均強度(青色発色の強さ)を非瘢痕箇所の場合と比較した。
【0139】
図14を併せて参照し、瘢痕箇所は、非瘢痕箇所と比べて、245以上254以下の範囲で、繊維層青色平均強度が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0140】
1…システム、2…バルーンカテーテル(組織加熱装置)、3A,3B…容器、4…流量調整弁、5…コンプレッサ、6…圧力調整器、8A,8B…温度測定部、9A,9B…熱源部、11…減圧機構、12…開閉弁、20…バルーン、20C…筒部、22…入口流路、23…出口流路、51…流量制御部、52…圧力制御部、53…熱源制御部、110A,110B…第1部分、111…延在部、120…第2部分、202…バルーンカテーテル(組織加熱装置),210…第1部分,211A~211F…延在部、212A,212B…環状部、W1…第1部分の幅(第1部分及び第2部分のうち熱伝導率が高い部分の筒部の周方向における長さ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14