(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025063474
(43)【公開日】2025-04-16
(54)【発明の名称】グミキャンディー用糖組成物、グミキャンディー、及びグミキャンディーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20250409BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20250409BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20250409BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20250409BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23L29/30
A23L29/281
A23L5/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172701
(22)【出願日】2023-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柿野 あけみ
(72)【発明者】
【氏名】三輪 加納
(72)【発明者】
【氏名】今泉 茜
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 智久
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GG07
4B014GG12
4B014GK05
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP14
4B014GP20
4B014GP23
4B014GQ06
4B014GQ12
4B014GY04
4B035LC03
4B035LC06
4B035LG15
4B035LG19
4B035LG20
4B035LK02
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP26
4B035LP34
4B041LC03
4B041LD02
4B041LK10
4B041LK11
4B041LK12
4B041LK17
4B041LP01
4B041LP09
4B041LP10
4B041LP13
(57)【要約】
【課題】チューイー性が非常に高いグミキャンディーの原料となるグミキャンディー用糖組成物、この糖組成物を含有するグミキャンディー、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】グミキャンディー用糖組成物が、この糖組成物中の重合度1の糖の含有量が30%以下の範囲であり、この糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量が45%以下の範囲であり、この糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50~75%の範囲である。グミキャンディーがこの糖組成物を含有する。グミキャンディーの製造方法が、この糖組成物、及びこの糖組成物に含まれる糖以外の糖類を水に溶解する糖液調製工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖組成物であって、
当該糖組成物中の重合度1の糖の含有量が30%以下の範囲であり、当該糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量が45%以下の範囲であり、
当該糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50~75%の範囲である、グミキャンディー用糖組成物。
【請求項2】
前記糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量が35%以下の範囲である、請求項1に記載されたグミキャンディー用糖組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載された糖組成物、前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類、ゼラチン、及び水を含有する、グミキャンディー。
【請求項4】
ゼラチンを水に溶解するゼラチン溶解工程、
請求項1または2に記載された糖組成物、及び前記糖組成物に含まれる糖以外の糖類を水に溶解する糖液調製工程、
当該ゼラチン溶解工程で得られたゼラチン水溶液と、当該糖液調製工程で得られた糖液を混合するグミ液調製工程、及び、
当該グミ液調製工程で得られたグミ液を成形する成形工程を含む、グミキャンディーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディー用糖組成物、グミキャンディー、及びグミキャンディーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディーは、その強固な弾力のある食感が特徴的なソフトキャンディの一種であり、その特徴的な食感が好まれて世界中で広く食されている。また、その弾力のある食感により噛む力を鍛えることができるため、アゴの発達促進、肥満防止、脳への刺激等の効果を得ることができる。
近年、噛んだ際に、保形性と一定の反発力(弾力)を持ちながら、しなやかに変形する食感(チューイー性)を有するハードグミキャンディーが好まれる傾向にあり、チューイー性を有するハードグミキャンディーとして、HARIBO社製グミキャンディー(「HappyCola」や「Gold bear」)が販売されている。しかし、前記グミキャンディーのように、保形性と一定の反発力(弾力)を持ちながら、しなやかに変形する食感(チューイー性)を有するハードグミキャンディーを製造するには、製造工程が煩雑なため、製造効率を優先すると、これら食感を再現する事は難しい。
【0003】
特許文献1には、DE70~100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンおよび/またはその食品加工処理物を含んでなるグミキャンディーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、グミキャンディーの保形性と一定の反発力(弾力)を持ちながら、しなやかに変形する食感(チューイー性)の更なる向上が求められている。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、チューイー性が非常に高いグミキャンディーの原料となるグミキャンディー用糖組成物を提供することである。さらに本発明が解決しようとする課題は、チューイー性が非常に高いグミキャンディー、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、特定の糖組成物が前記グミキャンディーの原料となることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、糖組成物であって、当該糖組成物中の重合度1の糖の含有量が30%以下の範囲であり、当該糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量が45%以下の範囲であり、当該糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50~75%の範囲である、グミキャンディー用糖組成物に関する。
前記糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量は、好ましくは35%以下の範囲である。
【0009】
また本発明は、前記糖組成物、前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類、ゼラチン、及び水を含有する、グミキャンディーに関する。
【0010】
さらに本発明は、ゼラチンを水に溶解するゼラチン溶解工程、前記糖組成物、及び前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類を水に溶解する糖液調製工程、当該ゼラチン溶解工程で得られたゼラチン水溶液と、当該糖液調製工程で得られた糖液を混合するグミ液調製工程、及び、当該グミ液調製工程で得られたグミ液を成形する成形工程を含む、グミキャンディーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグミキャンディー用糖組成物は、チューイー性が非常に高いグミキャンディーの原料となる。さらに本発明のグミキャンディーのチューイー性は非常に高く、本発明のグミキャンディーの製造方法は、前記グミキャンディーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】グミキャンディーの破断強度の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
【0014】
<糖組成物>
本発明のグミキャンディー用糖組成物は、単糖類及び重合度が2以上の糖質からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。前記単糖類として、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトースが挙げられる。前記重合度2以上の糖としては、二糖類として、例えばスクロース、マルトース、セロビオース、トレハロース等、三糖類としてはマルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース等、四糖類としてはマルトテトラオース、イソマルトテトラオース等が挙げられる。
【0015】
前記糖組成物中の重合度1(DP-1)の糖(単糖類)の含有量は30%以下の範囲であり、前記糖組成物中の重合度7(DP-7)以上の糖の含有量は45%以下の範囲である。前記糖組成物中の重合度1の糖の含有量が30%を超える場合、糖組成物を原料とするグミキャンディーのチューイー性が小さくなり、噛み応えがなくなる。一方、前記糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量は45%を超える場合、糖組成物を原料とするグミキャンディーの歯付が生じ噛みにくくなる。
【0016】
前記糖組成物中の重合度1の糖の含有量は、好ましくは25%以下の範囲である。前記糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下の範囲である。この場合、前記糖組成物を原料とするグミキャンディーのチューイー性がより高くなる。また、前記糖組成物中の重合度3~6の糖の含有量は、好ましくは40~50%、より好ましくは45~50%の範囲である。この場合も、前記糖組成物を原料とするグミキャンディーのチューイー性がより高くなる。
【0017】
ここで、前記糖組成物中の重合度1、重合度3~6、及び重合度7以上のそれぞれの糖の含有量は、後述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定されてよい。さらに重合度2の糖(二糖類)の含有量も、後述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定されてよい。
【0018】
前記糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量は50~75%、好ましくは52~70%の範囲である。前記分岐糖の含有量が50%未満である場合、チューイー性が小さくなり、噛み応えがなくなる。前記分岐糖の含有量が75%の範囲を超える場合、歯付が生じ好ましくない。前記糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量は、後述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定されてよい。
【0019】
本発明の糖組成物は、天然物から精製されたものであってもよく、また、本発明の糖組成物を直鎖状グルカンから、分岐グルカンの製造に用いられる周知の手法に従って製造することができる。
【0020】
本発明の糖組成物は、その製造方法に特に制限はないが、澱粉分解物に糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。具体的には、澱粉分解物の5~50質量%水溶液に糖転移酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させる。反応は通常、pH4~9の範囲で実施することができ、好適な反応pHは、pH5~7の範囲である。反応は通常、70℃付近までの温度範囲で実施することができ、好適な反応温度は、40~60℃の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができ、通常は15~96時間程度反応させる。目的組成物の生成を確認後、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、製品形態に応じて濃縮又は粉末化してもよい。
【0021】
ここで、糖転移作用を有する酵素は、例えば、α-グルコシダーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、及び環状マルトシルマルトース生成酵素からなる群から選択される少なくとも1つである。α-グルコシダーゼは、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアクレモニウム・スピーシーズ(Acremonium sp.)由来のものを使用することができる。
【0022】
糖転移作用を有する酵素としてα-グルコシダーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-グルコシダーゼの添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01~30単位とすることができる。ここで、α-グルコシダーゼ1単位とは後述するα-グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
【0023】
本発明の糖組成物はまた、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素とを組み合わせて澱粉分解物に作用させることによって、より効率的に製造することができる。前記アミラーゼとしては、例えば、シクロデキストリン生成酵素、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ等が挙げられる。
【0024】
ここで、シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルス・スピーシーズ (Paenibacillus sp.)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、及びバチルス・マゼランス(Bacillus macerans)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物に由来のものの中から選択することができる。また、α-アミラーゼは、市販のα-アミラーゼであるクライスターゼL-1及びクライスターゼT-5(いずれも天野エンザイム株式会社製)からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
β-アミラーゼは、β-アミラーゼL(ナガセケムテックス株式会社製)、GODO-GBA2(合同酒精株式会社製)、ビオザイムM、ビオザイムML、ビオザイムL(天野エンザイム株式会社製)からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0025】
アミラーゼとしてシクロデキストリン生成酵素を使用する場合、前記酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.1~10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは、後述するβ-シクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ-シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
【0026】
アミラーゼとしてα-アミラーゼ、及びβ-アミラーゼからなる群から選ばれる少なくとも1つを使用する場合、前記酵素反応に用いられる前記アミラーゼの添加量は、反応性及び製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.0005~1質量%とすることができる。
【0027】
本発明の糖組成物を、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素を更に組み合わせて澱粉分解物に作用させることによって製造することができる。枝切り酵素は、アミラーゼ及び糖転移作用を有する酵素と一緒に、澱粉分解物に作用させることが好ましい。
【0028】
ここで、枝切り酵素は、イソアミラーゼ、及びプルラナーゼからなる群から選択される少なくとも1つであってよく、より好ましい態様では、マイロイデス・オドラータス(Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)由来イソアミラーゼ、及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0029】
枝切り酵素としてイソアミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるイソアミラーゼの添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10~1000単位とすることができる。前記製造方法の酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性及び製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001~0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において、610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
【0030】
α-グルコシダーゼ、β-シクロデキストリン生成酵素、及びイソアミラーゼの活性の測定方法は、それぞれ以下の通りである。
【0031】
(α-グルコシダーゼの活性測定)
50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25質量%のマルトース溶液80μlに、0.05質量%トリトンX-100を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μlを添加し、37℃に10分間保持する。反応10分後に反応液50μlを抜き出し、2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μlと混合して反応を停止する。これにグルコースCII-テストワコー(富士フイルム和光純薬株式会社製)40μlを添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定する。生成したグルコース量は0~0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出する。
【0032】
(β-シクロデキストリン生成酵素の活性測定)
50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1質量%可溶性デンプン(ナカライテスク株式会社製)溶液0.9mlに、適宜水で希釈した酵素溶液0.1mlを添加し、40℃に10分間保持する。得られた反応液に40mM水酸化ナトリウム水溶液2.5mlを添加して反応を停止する。生成したβ-シクロデキストリンをフェノールフタレイン法により測定する。具体的には、0.1mg/mlフェノールフタレイン、及び2.5mM炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mlを反応が停止された溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定する。0~0.1mg/mlの範囲で作成したβ-シクロデキストリンの標準曲線に基づき、生成したβ-シクロデキストリン量を算出する。
【0033】
(イソアミラーゼの活性測定)
20mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μlに、5mg/mlワキシーコーンスターチ(日本食品化工株式会社製)350μlを添加し、45℃に5分間保持した後、当該緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μlを添加して45℃に15分間保持する。得られた反応液に反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mlヨウ素、及び83mg/mlヨウ化カリウムからなる溶液2mlと0.1N塩酸8mlを混合したもの)500μlを添加して反応を停止する。得られた反応停止液を室温に15分間保持後、純水10mlを添加して得られる溶液の610nmにおける吸光度を測定する。
【0034】
澱粉又はその分解物に対して各種酵素処理を行うことによって本発明の糖組成物を調製する際、使用する酵素の種類、組み合わせ、使用量、使用温度、使用時間等は、得られる酵素処理物の全固形分量に占める本発明の糖組成物中の重合度7以上の糖の含有量及びα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が所望の範囲になるように、適宜調整することもできる。例えば、前記アミラーゼ等による処理時間を長くする等により、重合度7以上の糖の量を十分に低減させた酵素処理物を得ることができる。また、糖転移作用を有する酵素使用量の調整等により、前記糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50~75%の酵素処理物を得ることができる。
【0035】
なお、後述される[実施例]で使用された糖組成物4~7は、前記される澱粉分解物に各種酵素を作用させる方法で製造された。
【0036】
酵素処理によって得られた本発明の糖組成物は、必要に応じて、分画処理を行ってもよい。酵素処理後の糖組成物の分画処理により、当該糖組成物に含まれる所望の重合度の分岐グルカンの含有割合を高めたり、平均重合度を所望の範囲内に調整したりすることもできる。前記の分画処理を行う方法に特に制限は無く、膜分画、クロマト分画、沈殿分画等を例示することができる。
【0037】
本発明の糖組成物として市販品が用いられ得る。前記市販品として、例えば日本食品化工株式会社製日食パノリッチ(商品名)、日食マイルドオリゴ(商品名)、日食ブランチオリゴ(商品名)等が挙げられる。
【0038】
前記チューイー性は、チューイー性を有するハードグミキャンディーであるハリボー社製の「ゴールドベア」を以下の方法で測定した結果、プラスの値を示したことから、下記測定方法で得られた値がプラスに大きい値ほどチューイー性が高いと判断する。例えば以下の通りに測定される。
グミキャンディーの破断強度は、レオメーターを使用し、破断歪率300%、ロードセル200N、プランジャーにカッター背を用いて測定し、2回目の破断荷重ピーク値から1回目の破断荷重ピーク値を引いた値を算出する。
【0039】
<グミキャンディー>
本発明のグミキャンディーは、前記糖組成物、前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類、ゼラチン、及び水を含有する。前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類として、例えばスクロース、マルトース、セロビオース、トレハロース等が挙げられる。前記糖組成物に含まれる糖以外の二糖類は、グラニュー糖、上白糖として本発明のグミキャンディーに含有されてよい。
【0040】
前記グミキャンディーの原料中の前記糖組成物の含有量は、固形分換算で好ましくは5.0~50.0質量%、より好ましくは20.0~45.0質量%、更に好ましくは30.0~45.0質量%である。前記グミキャンディーの原料中のゼラチンの含有量は、固形分換算で好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%、更に好ましくは4~6質量%である。
【0041】
本発明のグミキャンディーは、高甘味度甘味料などの甘味料(前記糖組成物、及び前記糖組成物に含まれる糖以外の糖類を除く)、果汁、ペクチン、澱粉、香料、着色料、クエン酸等の酸味料、光沢剤、乳化剤、保存料などのグミキャンディーの製造に用いられている副原料を含有していてよい。
【0042】
<グミキャンディーの製造方法>
本発明のグミキャンディーの製造方法は、ゼラチンを水に溶解するゼラチン溶解工程を含む。ゼラチンを水に溶解させる方法は、特定の方法に限定されない。前記方法として、例えば、ゼラチンを水で膨潤させ、次いで加熱攪拌してゼラチン水溶液を調製する方法が挙げられる。
【0043】
本発明のグミキャンディーの製造方法は、前記糖組成物、及び前記糖組成物に含まれる糖以外の糖類を水に溶解する糖液調製工程、及び、前記ゼラチン溶解工程で得られたゼラチン水溶液と、当該糖液調製工程で得られた糖液を混合するグミ液調製工程を含む。
【0044】
前記副原料は、前記ゼラチン水溶液、前記糖組成物、及び前記糖液からなる群から選ばれる少なくとも1つに溶解されてもよく、これらとは別個に混合されてもよい。
【0045】
本発明のグミキャンディーの製造方法は、前記グミ液調製工程で得られたグミ液を成形する成形工程を含む。前記成形工程で使用される型としてコーンスターチで成型された型を使用してもよい。さらに前記型から取り出されたグミキャンディーの表面にコーティング用オイルを塗布してよい。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において「固形分」当たりの割合、又は「固形分」の含有割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0047】
各実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
<破断荷重ピーク値の差>
室温で保管されている各グミキャンディーの破断強度を、レオメーター(株式会社山電製REONER II CREEOMETER RE2-33005B)を使用し、破断歪率300%、ロードセル200N、プランジャーにカッター背を用いて測定し、2回目の破断荷重ピーク値から1回目の破断荷重ピーク値を引いた値が算出した。前記値が大きいほど、チューイー性が高いと判断した。
【0048】
<各重合度の糖の組成分析>
糖組成物中の各重合度の糖の組成分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。
【0049】
下記HPLC分析条件(1)にて糖組成物を試料として各重合度の成分含有量を求めた。
HPLC分析条件(1)
分析カラムはMCI GEL CK04S(三菱ケミカル株式会社製)を用い、超純水を溶離液として流速0.4mL/分、カラム温度70℃で分析を行った。検出には示差屈折率検出器(株式会社島津製作所製RID-10A)を使用した。得られるクロマトグラムのピーク面積より各重合度成分の含有量を求めた。
【0050】
<α-1,6結合を有する分岐糖含有量分析>
本発明の糖組成物中における3糖類以上の分岐糖の含有量は、以下の通り算出した値のことを示している。まず、糖組成物をα-1,4結合の直鎖糖が十分分解処理できるようにβ-アミラーゼで処理した。このβ-アミラーゼで処理した糖組成物を試料として、前記HPLC分析条件(1)で分析し、単糖、二糖、及び三糖の含有量を測定した。
次にβ-アミラーゼで処理した糖組成物を試料として、下記HPLC分析条件(2)で分析し、クロマトグラムの三糖のピーク面積中のマルトトリオースのピーク面積の比率から三糖中のマルトトリオースの含有率を求めた。
そして、前記HPLC分析条件(1)で得られた三糖の含有量にマルトトリオースの含有率を掛け合わせることで、β-アミラーゼで処理した糖組成物のマルトトリオース含有量を求めた。
糖組成物中の3糖類以上のα-1,6結合を有する分岐糖含量は、前記で得られた単糖、二糖、及びマルトトリオースの含有量を用いて下記式(1)にて算出した。
α-1,6結合を有する分岐糖含量(%)=100-(単糖含有量+二糖含有量+マルトトリオース含有量)・・・(1)
【0051】
HPLC分析条件(2)
分析カラムはSHODEX NH2P-50(株式会社レゾナック製)を用い、アセトニトリル:超純水=75:25を溶離液として流速1.0mL/分、カラム温度は室温で分析を行った。検出には示差屈折率検出器(株式会社島津製作所製RID-10A)を使用した。得られるクロマトグラムのピーク面積よりマルトトリオースの含有率を求めた。
なお、後述する糖組成物5はDP-3~DP-6及びDP-7以上の合計含有割合が45.6%であり、分岐糖の含有量が50%以下であることが明らかであるため、当該分岐糖の含有量を測定しなかった。
【0052】
<チューイー性>
パネラーが、室温で保管された各グミキャンディーを喫食し、当該各グミキャンディーのチューイング性を下記基準に従って評価した。
-チューイー性の評価基準-
A:チューイー性が強い。
B:チューイー性がやや強い。
C:チューイー性が弱い。
D:チューイー性がない。
【0053】
各実施例及び比較例において使用された糖組成物は下記表1に記載の糖組成物中の単糖の含有量、重合度3~6の糖の含有量、重合度7以上の糖の含有量、及びα-1,6結合を有する分岐糖の含有量となる糖組成物1~7を用いた。糖組成物1~3は以下のように製造した。
【0054】
糖組成物1
マルトース含量が約80%のマルトースシラップ(日本食品化工株式会社製、日食ハイマルトースシラップMC-80)を濃度35%に調製した後、α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製))を対固形分1g当たり300単位添加し、温度55℃、pH5,5で20時間反応行った。続いて、定法に従い精製、濃縮した。
【0055】
糖組成物2
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり0.3単位、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム株式会社製)を対固形分1g当たり0.2mg、α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製))を対固形分1g当たり3.75単位、クライスターゼL-1(天野エンザイム株式会社製)を対固形分1g当たり0.06mg添加して50時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL-1を対固形分1g当たり0.15mg添加して1時間作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮した。
【0056】
糖組成物3
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム株式会社製)を対固形分当たり0.01%、α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製))を対固形分1g当たり3.75単位添加して72時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL1(天野エンザイム株式会社製)を対固形分当たり0.005%添加してヨード反応が消失するまで作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮した。
なお、パエニバシルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素はAgr. Biol. Chem., 40(9), 1785-1791 (1976) の記載に従って調製し、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼは特開平5-227959号公報に従って調製した。
【0057】
[実施例1]
5gのゼラチン及び7.1gの水を耐熱袋に加えて冷蔵庫にて当該ゼラチンを一晩膨潤させた後、得られた混合物を恒温槽に入れて80℃で30分間かけて膨潤しているゼラチンを溶解させた(ゼラチン溶解工程)。52.7gの糖組成物1(固形分39.0g)、35gのグラニュー糖、20gの水を鍋の中で煮詰め、得られた混合物の質量が100gになるまでテフロン(登録商標)製のへらを用いて中火で当該混合物を加熱攪拌した(糖液調製工程)。前記鍋の底を温水で冷却して前記糖液調製工程で得られた糖液を100℃に冷却した後、前記ゼラチン溶解工程で得られたゼラチン水溶液と混合して、テフロン(登録商標)製のへらを用いて1分間攪拌し、更に1gのクエン酸を1gの水に溶解したクエン酸水溶液、0.15gの第1の香料(長谷川香料株式会社製グレープフレーバー)、及び0.15gの第2の香料(高田香料株式会社製グレープフレーバー)も混合してテフロン(登録商標)製のへらを用いて2分間攪拌した(グミ液調製工程)。前記グミ液調製工程で得られたグミ液を恒温槽に入れて80℃で10分間放置し、脱気されたグミ生地が得られた。4gの前記グミ生地を、コーンスターチを充填し、型押し成型した型に分注し、分注された前記グミ生地の上部に、コーンスターチを茶こしで篩いながら振りかけた。その後、前記グミ生地の水分活性(AW値)が0.65~0.70になるまで2~3日間送風乾燥機でグミ生地を凝固させ、得られたグミキャンディーを前記型から取り出した。前記グミキャンディーの表面に付着するコーンスターチをふき取り、前記グミキャンディーに対して0.3質量%のコーティング用オイルを塗布し、当該オイルが塗布されたグミキャンディーの破断強度を測定し、そのチューイー性を算出した(
図1の矢印Aで示される2回目の破断荷重ピーク値から、矢印Bで示される1回目の破断荷重ピーク値を引いた値)。また、上記チューイー性の評価基準に従い官能評価を実施した。結果を表2に示す。
【0058】
[実施例2~3及び比較例1~4]
52.7g(固形分39.0g)の糖組成物1に代えて、54.2g(固形分39.0g)の糖組成物2(実施例2)、52.0g(固形分39.0g)の糖組成物3(実施例3)、52.0g(固形分39.0g)の糖組成物4(比較例1)、52.0g(固形分39.0g)の糖組成物5(比較例2)、54.2g(固形分39.0g)の糖組成物6(比較例3)、54.2g(固形分39.0g)の糖組成物7(比較例4)を使用した以外、実施例1と同様にしてオイルが塗布されたグミキャンディーを調製した。また、実施例1と同様に破断強度の測定及び官能試験を行い、チューイー性の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
糖組成物中の重合度1の糖の含有量が30%を超え、糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50%未満である糖を含む糖組成物を原料とする比較例1のグミキャンディー、糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50%未満である糖を含む糖組成物を原料とする比較例2及び3のグミキャンディー、糖組成物中のα-1,6結合を有する分岐糖の含有量が50%未満である糖を含む糖組成物を原料とする比較例4のグミキャンディーの破断荷重ピーク値の差はマイナスであり、これらのチューイー性は弱い、ないし無かった。
【0062】
一方、所定の糖を含む糖組成物を原料とする実施例1~3のグミキャンディーの破断荷重ピーク値の差はプラスであり、これらのチューイー性は強い、ないしやや強かった。