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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006360
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
H01L21/304 601M
H01L21/304 621B
H01L21/304 622Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107104
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 克典
(72)【発明者】
【氏名】帆角 良平
(72)【発明者】
【氏名】淺野 光
(72)【発明者】
【氏名】篠原 敬
【テーマコード(参考)】
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
5F057AA01
5F057AA21
5F057AA24
5F057AA25
5F057AA41
5F057BA11
5F057BA15
5F057BB11
5F057CA11
5F057CA25
5F057DA07
5F057DA08
5F057DA10
5F057DA39
5F057EB10
5F057FA13
5F057FA17
5F057FA32
5F057FA34
5F057GA23
5F057GB02
5F057GB17
5F157AA03
5F157AA09
5F157AA73
5F157AA76
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB90
5F157BA03
5F157BA07
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB11
5F157CB13
5F157CD27
5F157CD29
5F157CD32
5F157CD42
5F157CE32
5F157CE42
5F157CF02
5F157CF14
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF60
5F157DC88
(57)【要約】
【課題】ブラシの摩耗を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、保持工程S1と、除去工程S2とを備える。保持工程S1では、凹凸欠陥が存在する主面を有する基板を保持する。除去工程S2では、基板の主面に処理液を供給しつつ、基板の主面のうち凹凸欠陥を含まない非処理領域を避けて、主面のうち凹凸欠陥を含む処理領域に対して第1ブラシを摺動させて、凹凸欠陥の少なくとも一部を除去する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸欠陥が存在する主面を有する基板を保持する保持工程と、
前記基板の前記主面に処理液を供給しつつ、前記基板の前記主面のうち前記凹凸欠陥を含まない非処理領域を避けて、前記主面のうち前記凹凸欠陥を含む処理領域に対して第1ブラシを摺動させて、前記凹凸欠陥の少なくとも一部を除去する除去工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記凹凸欠陥は、前記保持工程の前において前記基板を支持または保持する部材と、前記基板との接触に起因して前記主面に固着した付着物を含み、
前記除去工程において、研磨材を含む前記第1ブラシが前記処理領域を研磨して、前記付着物の少なくとも一部を除去する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記除去工程の後に、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、研磨材を含まない第2ブラシを前記基板の前記処理領域および前記非処理領域に対して摺動させて、前記除去工程によって生じた前記処理領域および前記非処理領域上のパーティクルの少なくとも一部を除去するスクラバ工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の基板処理方法であって、
前記除去工程は、
前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記第1ブラシである、研磨材を含む第1研磨ブラシを、前記非処理領域を避けて前記処理領域に対して摺動させる粗研磨工程と、
前記粗研磨工程の後に、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記第1研磨ブラシの前記研磨材よりも細かい研磨材を含む第2研磨ブラシを、前記非処理領域を避けて前記処理領域に摺動させる細研磨工程と
を含む、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除去工程の前に、前記基板の前記主面上の前記凹凸欠陥の位置に関する位置関連情報に基づいて、前記処理領域を設定する設定工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理方法であって、
外部から前記位置関連情報を受け取る、基板処理方法。
【請求項7】
請求項5に記載の基板処理方法であって、
センサが前記凹凸欠陥を検出して前記位置関連情報を生成する、基板処理方法。
【請求項8】
凹凸欠陥が存在する主面を有する基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面に向かって処理液を吐出するノズルを含む吐出部と、
第1ブラシと、
前記第1ブラシを移動させる第1ブラシ移動駆動部と、
前記基板保持部、前記吐出部および前記第1ブラシ移動駆動部を制御して、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記基板の前記主面のうち前記凹凸欠陥を含まない非処理領域を避けて、前記主面のうち前記凹凸欠陥を含む処理領域に対して前記第1ブラシを摺動させて、前記凹凸欠陥の少なくとも一部を除去させる制御部と
を備える、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
第2ブラシと、
前記第2ブラシを移動させる第2ブラシ移動駆動部と
をさらに備え、
前記第1ブラシは、研磨材を含む研磨ブラシであり、
前記第2ブラシは、研磨材を含まない非研磨ブラシである、基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記第1ブラシは、研磨材を含む第1研磨ブラシであり、
前記基板処理装置は、
前記第1研磨ブラシの前記研磨材よりも細かい研磨材を含む第2研磨ブラシと、
前記第2研磨ブラシを移動させる研磨ブラシ移動駆動部と
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記主面上の前記凹凸欠陥を検出するセンサをさらに備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に対して物理洗浄を行う基板処理装置が開示されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、スピンチャックと、洗浄液供給ノズルと、洗浄ブラシとを含んでいる。スピンチャックは基板を水平姿勢で保持しつつ基板を回転させる。洗浄液供給ノズルは基板の主面に向かって洗浄液を吐出する。洗浄ブラシは移動可能に設けられており、基板の主面に当接した状態で基板の主面に対して相対的に移動する。これにより、洗浄ブラシが基板の主面を擦って洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-059885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄ブラシが基板の主面のうちの中心から基板の端まで移動すれば、基板の主面の全面を洗浄することができる。しかしながら、基板の主面上の除去対象物は、必ずしも基板の主面の全面に存在しているとは限らず、主面のうちの一部のみの領域に存在している場合もあり得る。このような場合には、洗浄ブラシが基板の主面の全面を洗浄すると、洗浄ブラシの不要な摩耗を招き得る。
【0005】
そこで、本開示は、ブラシの摩耗を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、基板処理方法であって、凹凸欠陥が存在する主面を有する基板を保持する保持工程と、前記基板の前記主面に処理液を供給しつつ、前記基板の前記主面のうち前記凹凸欠陥を含まない非処理領域を避けて、前記主面のうち前記凹凸欠陥を含む処理領域に対して第1ブラシを摺動させて、前記凹凸欠陥の少なくとも一部を除去する除去工程とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記凹凸欠陥は、前記保持工程の前において前記基板を支持または保持する部材と、前記基板との接触に起因して前記主面に固着した付着物を含み、前記除去工程において、研磨材を含む前記第1ブラシが前記処理領域を研磨して、前記付着物の少なくとも一部を除去する。
【0008】
第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記除去工程の後に、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、研磨材を含まない第2ブラシを前記基板の前記処理領域および前記非処理領域に対して摺動させて、前記除去工程によって生じた前記処理領域および前記非処理領域上のパーティクルの少なくとも一部を除去するスクラバ工程をさらに備える。
【0009】
第4の態様は、第2または第3の態様にかかる基板処理方法であって、前記除去工程は、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記第1ブラシである、研磨材を含む第1研磨ブラシを、前記非処理領域を避けて前記処理領域に対して摺動させる粗研磨工程と、前記粗研磨工程の後に、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記第1研磨ブラシの前記研磨材よりも細かい研磨材を含む第2研磨ブラシを、前記非処理領域を避けて前記処理領域に摺動させる細研磨工程とを含む。
【0010】
第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除去工程の前に、前記基板の前記主面上の前記凹凸欠陥の位置に関する位置関連情報に基づいて、前記処理領域を設定する設定工程をさらに備える。
【0011】
第6の態様は、第5の態様にかかる基板処理方法であって、外部から前記位置関連情報を受け取る。
【0012】
第7の態様は、第5の態様にかかる基板処理方法であって、センサが前記凹凸欠陥を検出して前記位置関連情報を生成する。
【0013】
第8の態様は、基板処理装置であって、凹凸欠陥が存在する主面を有する基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面に向かって処理液を吐出するノズルを含む吐出部と、第1ブラシと、前記第1ブラシを移動させる第1ブラシ移動駆動部と、前記基板保持部、前記吐出部および前記第1ブラシ移動駆動部を制御して、前記基板の前記主面に前記処理液を供給しつつ、前記基板の前記主面のうち前記凹凸欠陥を含まない非処理領域を避けて、前記主面のうち前記凹凸欠陥を含む処理領域に対して前記第1ブラシを摺動させて、前記凹凸欠陥の少なくとも一部を除去させる制御部とを備える。
【0014】
第9の態様は、第8の態様にかかる基板処理装置であって、第2ブラシと、前記第2ブラシを移動させる第2ブラシ移動駆動部とをさらに備え、前記第1ブラシは、研磨材を含む研磨ブラシであり、前記第2ブラシは、研磨材を含まない非研磨ブラシである。
【0015】
第10の態様は、第9の態様にかかる基板処理装置であって、前記第1ブラシは、研磨材を含む第1研磨ブラシであり、前記基板処理装置は、前記第1研磨ブラシの前記研磨材よりも細かい研磨材を含む第2研磨ブラシと、前記第2研磨ブラシを移動させる研磨ブラシ移動駆動部とをさらに備える。
【0016】
第11の態様は、第8から第10のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記基板の前記主面上の前記凹凸欠陥を検出するセンサをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
第1および第8の態様によれば、非処理領域に第1ブラシを当接させないので、第1ブラシの摩耗を抑制することができる。
【0018】
第2の態様によれば、基板の主面に付着物が固着していても、付着物を適切に除去することができる。しかも、第1ブラシは非処理領域を研磨しないので、パーティクルの発生も抑制できる。
【0019】
第3の態様によれば、スクラバ工程において、除去工程によって生じたパーティクルの少なくとも一部を除去する。このため、基板の主面に残留するパーティクルの数をさらに低減させることができる。
【0020】
第4の態様によれば、粗研磨工程においては、粗い研磨材を含む第1研磨ブラシが処理領域を研磨する。このため、凹凸欠陥を効果的に除去することができる。その一方で、基板の主面により深いスクラッチが形成され得る。深いスクラッチの輪郭部では、基板の主面が盛り上がるため、当該輪郭部に凸部が形成され得る。
【0021】
細研磨工程においては、細かい研磨材を含む第2研磨ブラシが処理領域を研磨する。このため、粗研磨工程で生じた凸部の少なくとも一部を除去して、基板の主面をより平坦にすることができる。
【0022】
第5および第6の態様によれば、ユーザビリティを向上させることができる。
【0023】
第7の態様によれば、基板の主面の凹凸欠陥の位置を高い精度で得ることができる。
【0024】
第9の態様によれば、第1ブラシを用いた研磨によって基板の主面上に生じたパーティクルの少なくとも一部を、第2ブラシを用いて除去することができる。
【0025】
第10の態様によれば、粗い第1研磨ブラシを用いた研磨によって基板の主面の凹凸欠陥の少なくとも一部を効果的に除去することができる。その一方で、基板の主面にはより深いスクラッチが生じる。深いスクラッチの輪郭部では、基板の主面が盛り上がるので、輪郭部に凸部が形成される。この凸部の少なくとも一部を細かい第2研磨ブラシを用いて除去することができるので、基板の主面をさらに平坦にすることができる。
【0026】
第11の態様によれば、凹凸欠陥の位置を高い精度で取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態にかかる基板処理装置に属する処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図2】第1実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図3】基板の一部の構成の一例を示す断面図である。
図4】基板の第2主面の一例を概略的に示す平面図である。
図5】処理領域および非処理領域の一例を概略的に示す図である。
図6】制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図7】第1実施形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図8】除去処理における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図9】第2実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図10】第2実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図11】第2実施形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図12】スクラバ処理における処理ユニットの様子の時間変化の一例を概略的に示す図である。
図13】第3実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図14】第3実施形態にかかる除去処理の具体的な一例を示すフローチャートである。
図15】基板の一部の構成の一例を示す断面図である。
図16】処理領域を設定する動作の一例を示すフローチャートである。
図17】第5実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図18】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0029】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0030】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0031】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる基板処理装置に属する処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。図2は、第1実施形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す平面図である。なお、基板処理装置は一つの処理ユニット1のみを含む必要はなく、例えば、複数の処理ユニット1と、複数の処理ユニット1の各々に対して基板Wの搬出入を行う搬送ロボットとを含んでいてもよい。
【0033】
処理ユニット1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、第1主面Waおよび第2主面Wbを有する、薄い平板形状を有する。第2主面Wbは第1主面Waと逆側の面である。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの厚さは例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。
【0034】
基板Wの第1主面Waには、半導体デバイスの製造途中のパターンが形成され得る。図1の例では、後に詳述するように、基板Wは、第1主面Waが鉛直下方を向いた姿勢で保持される。基板Wは、処理ユニット1への搬入前において、半導体デバイスを製造するための製造工程のうちのいくつかの処理を受ける。つまり、基板Wは処理ユニット1の搬入前に、不図示の搬送ロボットによって不図示の種々の前処理装置に搬送される。各前処理装置は基板Wの第1主面Waが鉛直上方を向く姿勢で基板Wを支持または保持しつつ、基板Wの第1主面Waに対して種々の処理を行う。例えば前処理装置は基板Wの第1主面Waに種々の薄膜(例えばレジスト膜)を形成する。
【0035】
一方で、このような処理によって、基板Wの第2主面Wbには種々の付着物が付着し得る。図3は、基板Wの一部の構成の一例を示す断面図であり、図4は、基板Wの第2主面Wbの一例を概略的に示す平面図である。図3の例では、基板Wの第2主面Wbには付着物Adが付着している。付着物Adは異物Ad1および膜Ad2を含み得る。異物Ad1は、例えば、パーティクルを含み得る。膜Ad2は、基板Wの第1主面Waへの成膜処理において、第2主面Wbにも形成され得る。図3の例では、膜Ad2は異物Ad1の少なくとも一部を覆って基板Wの第2主面Wbに形成される。このため、付着物Adは、基板Wの第2主面Wbに固着した固着物であるともいえる。付着物Adが基板Wの第2主面Wbに固着することで、基板Wの第2主面Wbは凹凸形状を有する。基板Wの第2主面Wbの付着物Adに起因する凸部の高さの最大値は、例えばnmオーダーであり得る。
【0036】
付着物Adは、図4(a)に示されるように、基板Wの周縁部に付着し得る。図4(a)の例では、基板Wの周縁部のうちの3か所にそれぞれ付着物Adが形成されている。これらの付着物Adは、例えば、前処理装置において、基板Wの周縁部の当該3か所が支持部材に接触することに起因して生じ得る。例えば、当該前処理装置は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置であり、当該支持部材は、複数の基板Wを鉛直方向に並べた状態で支持する部材であってもよい。
【0037】
あるいは、付着物Adは、図4(b)に示されるように、基板Wの第2主面Wbのうちの仮想円VC上で等間隔となる3か所に形成されることもある。仮想円VCは基板Wと同心状であり、仮想円VCの直径は、例えば、基板Wの直径の半分程度である。これらの付着物Adは、例えば、前処理装置において、基板Wの仮想円VC上の3か所が支持部材に接触することに起因して生じ得る。例えば、当該前処理装置は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置であり、当該支持部材は、基板Wの第2主面Wbに当接する3つの支持ピンであってもよい。
【0038】
あるいは、付着物Adは、図4(c)に示されるように、基板Wの第2主面Wbの全面において、分散して固着し得る。図4(c)の例では、付着物Adはマトリックス状に形成される。これらの付着物Adは、例えば、前処理装置において、基板Wの第2主面Wbのうちのマトリックス状の複数個所が保持部材に接触することに起因して生じ得る。例えば、当該前処理装置は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置であり、当該保持部材は、基板Wの第2主面Wbを静電式または吸引式により吸着するチャック部材であってもよい。
【0039】
以上のように、付着物Adは、前処理装置において、基板Wを支持または保持する部材との接触に起因して生じ得る。そして、付着物Adに起因して基板Wの第2主面Wbに凹凸形状が形成されると、露光装置において、焦点ずれが生じ得る。具体的には、露光装置において、例えば、基板Wは、第1主面Waが鉛直上方を向く姿勢で、静電チャックまたは吸引チャック等のチャック部材により保持される。つまり、チャック部材は、基板Wの第2主面Wbに当接する。このため、基板Wの第2主面Wbの凹凸によって基板Wに撓みが生じ、基板Wの第1主面Waにも凹凸形状が形成される。したがって、基板Wの第1主面Waにおいて許容できない程度の焦点ずれが生じ得る。
【0040】
なお、基板Wの第2主面Wbの凹凸形状は必ずしも付着物Adによって形成される必要はない。凹凸形状は、例えば、前処理装置における基板Wの第2主面Wbと部材との接触に起因して生じる傷(スクラッチ)によっても生じ得る。つまり、基板Wの第2主面Wbに傷が生じると、第2主面Wbに凹みが生じるとともに、その凹みの輪郭が盛り上がり得る。このため、基板Wの第2主面Wbに凹凸が形成され得る。以下では、基板Wの第2主面Wbに凹凸形状を生じさせる原因となる欠陥を凹凸欠陥とも呼ぶ。凹凸欠陥は例えば付着物Adおよび傷の少なくともいずれか一方を含む。また、凹凸欠陥は、Boat痕と呼ばれる、基板Wを支持または保持する部材と、基板Wとの接触個所に生じる欠陥も含み得る。
【0041】
本実施の形態では、処理ユニット1は、基板Wの第2主面Wbの凹凸欠陥を少なくとも一部(例えば大部分)を除去して、基板Wの第2主面Wbをより平坦にする除去処理を行う。以下では、主として、基板Wの第2主面Wbに付着物Adが固着している場合について説明する。ここで、付着物Adのうちの除去対象部分は、露光装置において許容できない焦点ずれの原因となる程度の高さを有する凸部である。
【0042】
図1および図2に示されるように、処理ユニット1は、基板保持部2と、吐出部3と、第1ブラシ41と、第1ブラシ移動駆動部61と、制御部9とを含んでいる。
【0043】
基板保持部2は基板Wを水平姿勢で保持しつつ、基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。ここでは、基板保持部2は、第1主面Waが鉛直下方を向く姿勢(つまり、第2主面Wbが鉛直上方を向く姿勢)で基板Wを保持する。回転軸線Q1は、基板Wの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0044】
図1の例では、基板保持部2は、スピンベース21と、チャックピン22と、回転駆動部23とを含んでいる。スピンベース21は板状の形状(例えば円板形状)を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。スピンベース21の上面には複数のチャックピン22が設けられている。複数のチャックピン22は、回転軸線Q1についての周方向に沿って等間隔に設けられる。複数のチャックピン22は、次に説明する保持位置と解除位置との間で変位可能に設けられている。保持位置とは、チャックピン22が基板Wの周縁に当接する位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの保持位置で停止することにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。図1および図2では、保持位置で停止したチャックピン22が示されている。解除位置とは、各チャックピン22が基板Wから離れた位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置で停止することにより、複数のチャックピン22による基板Wの保持が解除される。基板保持部2は、チャックピン22を変位させるピン駆動部(不図示)も含む。ピン駆動部は、例えば、モータおよびエアシリンダ等の駆動源を含み、制御部9によって制御される。
【0045】
回転駆動部23はシャフト231とモータ232とを含んでいる。シャフト231の上端はスピンベース21の下面に接続されており、シャフト231はスピンベース21の下面から回転軸線Q1に沿って延びている。モータ232は制御部9によって制御され、シャフト231を回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、スピンベース21、チャックピン22および基板Wが回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。
【0046】
なお、基板保持部2は必ずしもチャックピン22を有している必要はない。例えば、基板保持部2は、真空チャック、静電チャックおよびベルヌーイチャック等のチャック方式により、基板Wを保持してもよい。
【0047】
吐出部3は、基板保持部2によって保持された基板Wの第2主面Wbに向かって処理液を吐出する。処理液は、基板Wに対する処理に用いられる液体であり、具体的な一例は後に述べる。吐出部3はノズル31を含んでいる。ノズル31は、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられている。また、図1および図2の例では、ノズル31は、基板保持部2によって保持された基板Wよりも径方向外側に設けられている。ノズル31はその先端に吐出口3aを有しており、吐出口3aから処理液を吐出する。図1に示されるように、ノズル31は、回転軸線Q1側かつ鉛直下方の斜め方向に向かって処理液を吐出してもよい。ノズル31から吐出された処理液は基板Wの第2主面Wbに着液し得る。基板Wの第2主面Wbに着液した処理液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。
【0048】
図1および図2の例では、ノズル31は処理液としての薬液およびリンス液に兼用される。薬液は、後述の除去処理に用いられる液体であり、リンス液は、薬液を基板Wの第2主面Wb上から押し流すための液体である。薬液およびリンス液の具体的な一例は後に述べる。
【0049】
図1および図2の例では、吐出部3は、供給管32と、供給管32aと、供給管32bと、供給弁33aと、供給弁33bとをさらに含む。ノズル31は供給管32の下流端に接続され、供給管32の上流端は供給管32aの下流端および供給管32bの下流端に接続されている。供給管32aの上流端は薬液供給源に接続される。薬液供給源は、薬液を貯留するタンク(不図示)を有し、供給管32aの上流端に薬液を供給する。薬液としては、例えば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水および過酸化水素水のうちの少なくとも1つを含む液を適用することができる。具体的には、薬液として、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC1)、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド:水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いることができる。
【0050】
供給管32aには供給弁33a、流量調整弁34aおよび流量計35aが設けられている。供給弁33aは供給管32aの開閉を切り換える。流量調整弁34aは、供給管32aを流れる薬液の流量を調整する。供給弁33aおよび流量調整弁34aは制御部9によって制御される。流量計35aは、供給管32aを流れる薬液の流量を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部9に出力する。流量計35aは例えば超音波流量計である。制御部9は、流量計35aによって測定された流量に基づいて、流量調整弁34aを制御してもよい。
【0051】
供給管32bの上流端はリンス液供給源に接続される。リンス液供給源は、リンス液を貯留するタンク(不図示)を有し、供給管32bの上流端にリンス液を供給する。リンス液としては、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、磁気水または希釈濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水を適用することができる。
【0052】
供給管32bには供給弁33b、流量調整弁34bおよび流量計35bが設けられている。供給弁33bは供給管32bの開閉を切り換える。流量調整弁34bは、供給管32bを流れるリンス液の流量を調整する。供給弁33bおよび流量調整弁34bは制御部9によって制御される。流量計35bは、供給管32bを流れるリンス液の流量を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部9に出力する。流量計35bは例えば超音波流量計である。制御部9は、流量計35bによって測定された流量に基づいて、流量調整弁34bを制御してもよい。
【0053】
第1ブラシ41は、後述の除去処理に用いられる。具体的には、第1ブラシ41は、基板Wの第2主面Wbに処理液の一例である薬液が供給され、かつ、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbに当接した状態で、基板Wの第2主面Wbに対して相対的に移動する。つまり、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbに対して摺動する。これにより、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbを擦って洗浄することができる。
【0054】
第1ブラシ41は、例えば、ポリビニルアルコール等の樹脂製のスポンジ状基体と、当該基体に含まれた研磨材とを有する研磨ブラシである。研磨材は複数の砥粒を含む。砥粒の材料は特に制限されず、基板Wの第2主面Wbを研磨可能な程度の硬度を有する材料を適用することができる。
【0055】
第1ブラシ41は、例えば、鉛直方向に沿う中心軸を有する円柱形状を有する。第1ブラシ41の少なくとも下面41aには研磨材が含まれ、当該研磨材が少なくとも下面41aにおいて露出する。第1ブラシ41の下面41aは例えば水平面に平行な略平坦面であり、平面視において円形状を有する。ここでいう平面視とは、視線が鉛直方向に沿う状態で見ることをいう。第1ブラシ41の下面41aの直径は基板Wの半径よりも小さい。下面41aの直径は、例えば、基板Wの直径の4分の1以下でもよく、5分の1以下でもよく、10分の1以下でもよい。
【0056】
図1の例では、処理ユニット1には第1ブラシ保持部51が設けられている。第1ブラシ保持部51は第1ブラシ41を保持する。第1ブラシ保持部51は第1ブラシ41の下面41aよりも鉛直上方に設けられ、第1ブラシ41の上端部分を保持し得る。第1ブラシ保持部51は例えば円柱状の側面を有し、図1の例では、当該側面の直径は第1ブラシ41の直径よりも大きい。
【0057】
図1および図2の例では、処理ユニット1にはアーム71が設けられている。アーム71は水平方向に延びている。アーム71の内部には第1ブラシ駆動部711が設けられる。第1ブラシ駆動部711は制御部9によって制御される。第1ブラシ駆動部711は、第1ブラシ41を回転軸線Q21のまわりで回転させる回転駆動部を含んでもよい。回転軸線Q21は、例えば、第1ブラシ41の中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。第1ブラシ駆動部711は、シャフト712と、不図示のモータとを含む。シャフト712は回転軸線Q21に沿って延びており、アーム71の下面から鉛直下方に突出する。シャフト712の下端は第1ブラシ保持部51の上面に接続されている。モータはシャフト712を回転軸線Q21のまわりで回転させる。これにより、シャフト712に接続された第1ブラシ保持部51と、第1ブラシ保持部51によって保持された第1ブラシ41が回転軸線Q21のまわりで一体に回転する。
【0058】
なお、第1ブラシ駆動部711には、シャフト712の回転を止める制動駆動部(不図示)が設けられてもよいし、第1ブラシ41を可制御の押圧力で基板Wの第2主面Wbに押圧する押圧駆動部(不図示)が設けられてもよい。
【0059】
第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41を移動させる。図1および図2の例では、第1ブラシ移動駆動部61はアーム71、第1ブラシ保持部51および第1ブラシ41を一体に移動させる。第1ブラシ移動駆動部61は制御部9によって制御される。
【0060】
第1ブラシ移動駆動部61は例えば鉛直方向および水平方向の各々に沿って第1ブラシ41を移動させる。図1の例では、第1ブラシ移動駆動部61は、鉛直駆動部611と、水平駆動部612とを含んでいる。鉛直駆動部611は第1ブラシ41を鉛直方向に沿って移動させる。鉛直駆動部611は昇降駆動部である、ともいえる。鉛直駆動部611は、例えば、モータ等の駆動源(不図示)と、駆動源からの回転力を鉛直方向の力に変換する動力伝達部(不図示)とを含む。水平駆動部612は第1ブラシ41を水平方向に沿って移動させる。水平駆動部612は、例えば、モータ等の駆動源(不図示)と、駆動源からの回転力を水平方向の力に変換する動力伝達部(不図示)とを含む。これらの動力伝達部は例えばボールねじ機構またはカム機構を含む。
【0061】
第1ブラシ移動駆動部61は、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbに当接する処理位置と、第1待機位置との間で第1ブラシ41を移動させる。第1待機位置は、例えば、基板保持部2によって保持された基板Wよりも径方向外側の位置である。図2の例では、第1待機位置に位置する第1ブラシ41が示されている。また、第1ブラシ移動駆動部61は、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbに当接した状態で、第1ブラシ41を基板Wの第2主面Wbに沿って移動させることもできる。
【0062】
第1ブラシ移動駆動部61は、ノズル31が回転中の基板Wの第2主面Wbに薬液を供給した状態で、第1ブラシ41を処理位置に移動させる。これにより、第1ブラシ41の下面41aが基板Wの第2主面Wbの少なくとも一部に対して摺動することができる。ここでは第1ブラシ41が研磨ブラシであるので、基板Wの第2主面Wbの少なくとも一部を研磨して付着物Adの少なくとも一部を除去する。
【0063】
基板Wの第2主面Wbにおける付着物Adの位置は、上述のように、処理ユニット1への搬入前の基板Wに対する各前処理装置に依存する。具体的には、付着物Adの位置は、各前処理装置おいて基板Wを支持または保持する部材と、基板Wとの接触位置に依存する。このため、前処理装置の構造が分かっていれば、付着物Adの位置は事前に把握され得る。なお、基板Wは処理ユニット1への搬入前に複数の前処理装置を経由し得る。この場合、各前処理装置での付着物Adが基板Wの第2主面Wbに積み重なって付着し得る。この場合であっても、複数の前処理装置の構造が分かっていれば、付着物Adの位置は事前に把握され得る。
【0064】
そこで、本実施の形態では、第1ブラシ移動駆動部61は、基板Wの第2主面Wbのうち付着物Adを含む処理領域R1に第1ブラシ41を当接させる。その一方で、第1ブラシ移動駆動部61は処理領域R1以外の、付着物Adを含まない非処理領域R2には第1ブラシ41を当接させない。この処理領域R1は事前に設定され得る。
【0065】
図5は、処理領域R1および非処理領域R2の一例を概略的に示す図である。図5に示されるように、基板Wの第2主面Wbは処理領域R1および非処理領域R2の2つの領域に区分される。図5では、処理領域R1には斜線のハッチングが付与されている。
【0066】
図5(a)の例では、付着物Adは基板Wの周縁部に位置しており、処理領域R1は、基板Wの周縁部を含み、かつ、基板Wと同心状の円環領域である。処理領域R1の外径は基板Wの直径と同じであってもよい。処理領域R1の内径は、処理領域R1が複数の付着物Adの全てを含むように設定される。また、図5(a)の例では、非処理領域R2は、処理領域R1よりも内側の円領域である。
【0067】
図5(b)の例では、付着物Adは基板Wの仮想円VC上に位置しており、処理領域R1は、仮想円VCを含み、かつ、基板Wと同心状の円環領域である。処理領域R1の外径および内径は基板Wの直径よりも小さい。処理領域R1の外径および内径は、処理領域R1が複数の付着物Adの全てを含むように設定される。また、図5(b)の例では、非処理領域R2は、処理領域R1よりも外側の円環領域と、処理領域R1よりも内側の円領域とを含む。
【0068】
図5(c)の例では、付着物Adは基板Wの第2主面Wbの大部分に分散して位置しているので、処理領域R1は、基板Wと同心状の円領域である。処理領域R1の直径は基板Wの直径よりもわずかに小さくてもよい。図5(c)の例では、処理領域R1は基板Wの直径よりもわずかに小さい。処理領域R1の直径は、処理領域R1が複数の付着物Adの全てを含むように設定される。図5(c)の例では、非処理領域R2は処理領域R1よりも外側の円環領域である。なお、図5(c)の例では、付着物Adは基板Wの第2主面Wbの大部分に分散しているので、処理領域R1は基板Wの第2主面Wbの全面に設定されてもよい。つまり、処理領域R1の直径は基板Wの直径と同じであってもよい。
【0069】
制御部9は、処理ユニット1の上述の各種構成を制御する。図6は、制御部9の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部9は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。図6の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバスを介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)等の演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory))921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部9が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部9が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部9が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0070】
図6に示されるように、制御部9はユーザインターフェース96に電気的に接続されていてもよい。ユーザインターフェース96は、例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイ(不図示)と、キーボードおよびマウス等の入力デバイス(不図示)とを含む。ユーザはディスプレイに表示された内容を確認することができ、また、入力デバイスに各種の情報を入力することができる。
【0071】
図6に示されるように、制御部9は通信回路98に電気的に接続されていてもよい。通信回路98はいわゆる通信インターフェースであり、有線または無線により、外部装置と通信する。外部装置は、例えば、前処理装置であってもよいし、複数の処理装置を集中的に管理する管理装置であってもよい。制御部9は通信回路98を通じて外部装置と情報の送受信を行うことができる。
【0072】
図6に示されるように、制御部9は記憶部97に電気的に接続されていてもよい。記憶部97は非一時的な記憶部であり、例えばメモリまたはハードディスクであってもよい。図6の例では、記憶部97にはデータD1が記憶されている。データD1は、基板Wの第2主面Wbのうちの処理領域R1を示すデータを含んでいる。また、例えば、データD1は、基板Wの処理手順を示すレシピを含み、当該レシピは、除去処理における第1ブラシ41の基板Wの第2主面Wb上の移動範囲を示すデータを含む。後の説明から明らかなように、この移動範囲は処理領域R1に相当する。このようなレシピは、ユーザによるユーザインターフェース96への入力によって生成されてもよい。制御部9は、記憶部97からデータD1(レシピ)を読み出し、当該データD1に基づいて処理ユニット1を制御する。これにより、処理ユニット1は後述の基板処理を行うことができる。
【0073】
<基板処理の一例>
次に、処理ユニット1による基板Wに対する処理の一例について説明する。図7は、第1実施形態にかかる処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部9は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS5の処理を処理ユニット1に実行させる。
【0074】
まず、搬送ロボットが基板Wを処理ユニット1に搬送する。そして、基板保持部2が、搬送ロボットから受け取った基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的な一例として、基板保持部2は複数のチャックピン22をそれぞれの解除位置から保持位置に変位させる。これにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。基板保持部2は、基板Wに対する処理の終了まで基板Wを保持し続ける。
【0075】
次に、処理ユニット1は基板Wに対して除去処理を行う(ステップS2:除去工程)。すなわち、処理ユニット1は薬液を基板Wの第2主面Wbに供給しつつ、非処理領域R2を避けて第1ブラシ41を処理領域R1に対して摺動させる。具体的には、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させ、制御部9が供給弁33aを開き、第1ブラシ移動駆動部61が第1ブラシ41を基板Wの処理領域R1に当接させる。処理領域R1を示す情報はデータD1に含まれている。
【0076】
図8は、除去処理における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。図8の例では、基板Wの第2主面Wbに向かって吐出された薬液が砂地の部分で模式的に示されている。薬液は基板Wの第2主面Wbに着液する。基板Wの第2主面Wbに着液した薬液は着液位置のまわりに広がりつつ、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、薬液が基板Wの第2主面Wbの全面に供給される。なお、図8では、基板Wの第2主面Wb上の薬液の図示を省略している。
【0077】
図8(a)は、基板Wの第2主面Wbの周縁部に付着物Adが固着しているときの一例を示しており、図8(b)は、基板Wの第2主面Wbの仮想円VC上に付着物Adが固着しているときの一例を示しており、図8(c)は、基板Wの第2主面Wbの全体に分散して付着物Adが固着しているときの一例を示している。
【0078】
図8(a)の例では、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41を当接位置Pb11で基板Wの第2主面Wbに当接させる。図8(a)の例では、当接位置Pb11に位置する第1ブラシ41の下面41aが処理領域R1の径方向の全体に当接している。第1ブラシ移動駆動部61は所定の除去処理時間にわたって第1ブラシ41を当接位置Pb11で停止させる。除去処理では、基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転するので、第1ブラシ41は相対的に回転軸線Q1のまわりで処理領域R1を周回することができる。このため、処理ユニット1は除去処理において処理領域R1の全面に第1ブラシ41に対して摺動させることができる。
【0079】
一方、図8(a)の例とは異なるものの、処理領域R1の径方向の幅が第1ブラシ41の下面41aの直径よりも広い場合もある。この場合、第1ブラシ移動駆動部61は除去処理において第1ブラシ41を径方向に沿って移動させる。第1ブラシ41の移動方向は例えば径方向内側から径方向外側に向かう方向である。第1ブラシ41の移動速度は、第1ブラシ41が処理領域R1の全体に当接可能な程度の速度に予め設定される。これにより、処理ユニット1は除去処理において処理領域R1の全体に対して第1ブラシ41を摺動させることができる。
【0080】
図8(b)の例では、第1ブラシ移動駆動部61は、第1ブラシ41を当接位置Pb12で基板Wの第2主面Wbに当接させる。当接位置Pb12は例えば仮想円VC上の位置である。図8(b)の例では、当接位置Pb12に位置する第1ブラシ41の下面41aが処理領域R1の径方向の全体に当接しているので、除去処理において、第1ブラシ移動駆動部61は所定の除去処理時間にわたって第1ブラシ41を当接位置Pb12で停止させる。基板Wは回転軸線Q1のまわりで回転するので、第1ブラシ41は処理領域R1の全体に対して摺動することができる。
【0081】
一方、処理領域R1の径方向の幅が第1ブラシ41の下面41aの直径よりも広い場合には、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41を径方向に沿って移動させて、処理領域R1の全体に対して第1ブラシ41を摺動させる。
【0082】
図8(c)の例では、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbに当接した状態で、中央位置Pb13から周縁位置Pb14に基板Wの第2主面Wbに沿って移動させる。中央位置Pb13は例えば第1ブラシ41の下面41aの中心が基板Wの中心と向かい合う位置である。周縁位置Pb14は中央位置Pb13よりも径方向外側の位置であり、より具体的な一例として、第1ブラシ41の下面41aの径方向外側の端が基板Wの周縁と一致、または、基板Wの周縁よりも径方向外側となる位置である。図8(c)の例では、処理領域R1は基板Wの第2主面Wbの全面に設定されており、基板Wの回転中に第1ブラシ41が中央位置Pb13から周縁位置Pb14へ移動することにより、第1ブラシ41が処理領域R1の全体に対して摺動する。
【0083】
以上のように、基板Wの第2主面Wbに薬液が供給された状態で、第1ブラシ41の下面41aが回転中の基板Wの第2主面Wbのうちの処理領域R1に当接する。これにより、第1ブラシ41の下面41aの処理領域R1を擦ることができる。ここでは第1ブラシ41は研磨ブラシであるので、処理領域R1を研磨することができる。この場合、ステップS2は研磨工程であるともいえる。これにより、処理領域R1内の付着物Adが基板Wに固着していても、処理ユニット1は付着物Adを研磨し、その少なくとも一部を基板Wの第2主面Wbから除去することができる。つまり、処理ユニット1は凹凸欠陥の少なくとも一部を除去して、基板Wの第2主面Wbをより平坦にする。言い換えれば、処理ユニット1は基板Wの第2主面Wbの凸部の高さを低減させる。
【0084】
基板Wの処理領域R1に対する研磨が十分に行われると、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41を上昇させ、第1ブラシ41を第1待機位置へ移動させつつ、制御部9は供給弁33aを閉じる。除去処理時間は、処理領域R1の研磨が十分に行われる程度の時間に予め設定される。なお、第1ブラシ移動駆動部61が第1ブラシ41を径方向に沿って移動させる場合、第1ブラシ移動駆動部61は除去処理時間で第1ブラシ41を移動させてもよい。図8(c)に即して説明すると、第1ブラシ移動駆動部61は除去処理時間で第1ブラシ41を中央位置Pb13から周縁位置Pb14に移動させてもよい。
【0085】
次に、処理ユニット1は基板Wの第2主面Wbにリンス液を供給する(ステップS3:リンス工程)。具体的には、制御部9が供給弁33bを開く。これにより、ノズル31から回転中の基板Wの第2主面Wbに向かってリンス液が吐出される。基板Wの第2主面Wbの中央部に着液したリンス液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。このとき、リンス液が基板Wの第2主面Wb上の薬液を径方向外側に押し流す。これにより、基板Wの第2主面Wb上の処理液が薬液からリンス液に置換される。
【0086】
薬液からリンス液への置換が十分に行われると、制御部9は供給弁33bを閉じる。具体的な一例として、制御部9はリンス液の吐出開始からの経過時間を測定し、当該経過時間が所定のリンス時間以上となったときに、供給弁33bを開状態から閉状態に切り替える。リンス時間は、薬液からリンス液の置換が十分に行われる程度の時間に予め設定される。
【0087】
次に、処理ユニット1は基板Wを乾燥させる(ステップS4:乾燥工程)。より具体的には、基板保持部2は基板Wの回転速度を増加させる(いわゆるスピンドライ)。基板Wが十分に乾燥すると、基板保持部2は基板Wの回転を停止させる。具体的な一例として、制御部9は、リンス液の吐出停止からの経過時間を測定し、当該測定時間が所定の乾燥時間以上であるか否かを判定する。乾燥時間は、基板Wが十分に乾燥する程度の時間に予め設定される。当該経過時間が乾燥時間以上であるときに、基板保持部2は基板Wの回転を停止させる。
【0088】
次に、基板保持部2が基板Wに対する保持を解除する(ステップS5:保持解除工程)。そして、搬送ロボットが処理済みの基板Wを処理ユニット1から搬出する。
【0089】
以上のように、処理ユニット1は基板Wの第2主面Wbの付着物Adの少なくとも一部を除去することができ、基板Wの第2主面Wbをより平坦にすることができる。しかも上述の例では、第1ブラシ41は処理領域R1に当接しつつも、非処理領域R2には当接しない。このため、第1ブラシ41の不要な摩耗を抑制することができ、第1ブラシ41の寿命を長くすることができる。また、処理ユニット1の消費電力も低減させることができる。さらに、第1ブラシ41が非処理領域R2を処理する時間も不要となるので、除去処理時間を短縮することもできる。
【0090】
また、上述の例では、第1ブラシ41が研磨ブラシであるので、付着物Adが基板Wに固着していても、研磨により、付着物Adの少なくとも一部を除去することができる。このため、処理ユニット1は基板Wの第2主面Wbを適切に平坦化させることができる。その一方で、第1ブラシ41による研磨によって、基板Wの第2主面Wbから除去された付着物Adはパーティクルとして薬液とともに基板Wの第2主面Wb上を流れる。つまり、第1ブラシ41によって研磨される処理領域R1が、パーティクル発生源として機能し得る。パーティクルの発生量が大きくなると、パーティクルが基板Wの第2主面Wbに再付着する可能性が高くなる。しかるに、本実施形態では、第1ブラシ41は処理領域R1に当接するものの、非処理領域R2には当接しない。このため、第1ブラシ41が基板Wの第2主面Wbの全面に当接する場合に比して、パーティクルの発生量を低減させることができる。したがって、基板Wの第2主面Wbにパーティクルが残留する可能性を低減させることができる。
【0091】
<薬液>
薬液として、SC1等のアルカリ性の薬液を適用すれば、基板Wの第2主面Wbのゼータ電位を負にすることができる。また、基板Wの第2主面Wbから除去された付着物Ad(パーティクル)のゼータ電位も負にすることができる。このため、一旦、第2主面Wbから離れたパーティクルは基板Wの第2主面Wbと電気的に反発する。したがって、パーティクルが基板Wの第2主面Wbに再付着する可能性を低減させることができる。
【0092】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態にかかる処理ユニット1Aの構成の一例を概略的に示す縦断面図であり、図10は、第2実施形態にかかる処理ユニット1Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。処理ユニット1Aは第2ブラシ42および第2ブラシ移動駆動部62の有無という点で処理ユニット1と相違している。また、第2実施形態では、第1ブラシ41は研磨ブラシである。
【0093】
第2ブラシ42は第1ブラシ41よりも柔らかいブラシであり、研磨材を含まない非研磨ブラシである。例えば、第2ブラシ42はポリビニルアルコール等の樹脂製のスポンジ状のブラシである。第2ブラシ42は、例えば、鉛直方向に沿う中心軸を有する円柱形状を有する。第2ブラシ42の下面42aは水平面に平行な略平坦面であり、平面視において円形状を有する。第2ブラシ42の下面42aの直径は基板Wの半径よりも小さい。下面42aの直径は、例えば、基板Wの直径の4分の1以下でもよく、5分の1以下でもよく、10分の1以下でもよい。第2ブラシ42の下面42aは後述のように、基板Wの第2主面Wbに当接する。
【0094】
図9の例では、処理ユニット1Aには第2ブラシ保持部52が設けられている。第2ブラシ保持部52は第2ブラシ42を保持する。第2ブラシ保持部52の構成の一例は第1ブラシ保持部51と同様である。
【0095】
図9および図10の例では、処理ユニット1Aにはアーム72が設けられている。アーム72は水平方向に延びている。アーム72の内部には第2ブラシ駆動部721が設けられている。第2ブラシ駆動部721は制御部9によって制御される。第2ブラシ駆動部721は、第2ブラシ42を回転軸線Q22のまわりで回転させる回転駆動部を含んでもよい。回転軸線Q22は、例えば、第2ブラシ42の中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。第2ブラシ駆動部721は、シャフト722と、不図示のモータとを含む。シャフト722は回転軸線Q22に沿って延びており、アーム72の下面から鉛直下方に突出する。シャフト722の下端は第2ブラシ保持部52の上面に接続されている。モータはシャフト722を回転軸線Q22まわりで回転させる。これにより、シャフト722に接続された第2ブラシ保持部52と、第2ブラシ保持部52によって保持された第2ブラシ42が回転軸線Q22のまわりで一体に回転する。
【0096】
なお、第2ブラシ駆動部721には、シャフト722の回転を止める制動駆動部(不図示)が設けられてもよいし、第2ブラシ42を可制御の押圧力で基板Wの第2主面Wbに押圧する押圧駆動部(不図示)が設けられてもよい。
【0097】
第2ブラシ移動駆動部62は第2ブラシ42を移動させる。図9および図10の例では、第2ブラシ移動駆動部62はアーム72、第2ブラシ保持部52および第2ブラシ42を一体に移動させる。第2ブラシ移動駆動部62は例えば鉛直方向および水平方向の各々に沿って第2ブラシ42を移動させる。第2ブラシ移動駆動部62の構成の一例は第1ブラシ移動駆動部61と同様である。
【0098】
第2ブラシ移動駆動部62は、第2ブラシ42が基板Wの第2主面Wbに当接する処理位置と、第2待機位置との間で第2ブラシ42を移動させる。第2待機位置は、例えば、基板保持部2によって保持された基板Wよりも径方向外側の位置である。図10の例では、第2待機位置に位置する第2ブラシ42が示されている。図10の例では、第2待機位置は、平面視において、基板Wの中心に対して第1ブラシ41の第1待機位置とは逆側の位置である。言い換えれば、基板保持部2は平面視において第1待機位置と第2待機位置との間に設けられている。また、第2ブラシ移動駆動部62は、第2ブラシ42が基板Wの第2主面Wbに当接した状態で、第2ブラシ42を基板Wの第2主面Wbに沿って移動させることもできる。
【0099】
次に、処理ユニット1Aによる基板Wに対する処理の一例について説明する。図11は、第2実施形態にかかる処理ユニット1Aの動作の一例を示すフローチャートである。制御部9は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS11からステップS16の処理を処理ユニット1Aに実行させる。
【0100】
まず、搬送ロボットが基板Wを処理ユニット1に搬送する。そして、ステップS1と同様に、基板保持部2が、搬送ロボットから受け取った基板Wを保持する(ステップS11:保持工程)。次に、処理ユニット1Aは、ステップS2と同様に、基板Wに対して除去処理を行う(ステップS12:除去工程)。これにより、第1ブラシ41が非処理領域R2を避けて処理領域R1を研磨する。
【0101】
次に、処理ユニット1Aは基板Wに対してスクラバ処理を行う(ステップS13:スクラバ工程)。すなわち、処理ユニット1Aは、基板Wの第2主面Wbに薬液を供給しつつ、第2ブラシ42を基板Wの処理領域R1および非処理領域R2に対して摺動させる。具体的には、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させ、かつ、ノズル31が薬液を基板Wの第2主面Wbに向かって吐出しつつ、第2ブラシ移動駆動部62が第2ブラシ42を処理位置に移動させる。
【0102】
図12は、スクラバ処理における処理ユニット1Aの様子の時間変化の一例を概略的に示す図である。図12の例では、まず、第2ブラシ移動駆動部62は第2ブラシ42を基板Wの中央位置Pb21の直上から下降させ、第2ブラシ42の下面42aを基板Wの第2主面Wbに当接させる。中央位置Pb21は例えば予め設定されており、より具体的な一例として、第2ブラシ42の下面42aの中心が基板Wの中心と向かい合う位置である。中央位置Pb21も例えばデータD1(レシピ)に含まれている。
【0103】
そして、第2ブラシ移動駆動部62は、第2ブラシ42が回転中の基板Wの第2主面Wbに当接した状態で、第2ブラシ42を中央位置Pb21から周縁位置Pb22に基板Wの第2主面Wbに沿って移動させる。周縁位置Pb22は例えば予め設定されており、中央位置Pb21よりも径方向外側の位置である。より具体的な一例として、周縁位置Pb22は第2ブラシ42の下面42aの径方向外側の端が基板Wの周縁と一致、または、基板Wの周縁よりも径方向外側となる位置であってもよい。周縁位置Pb22も例えばデータD1(レシピ)に含まれている。
【0104】
第2ブラシ移動駆動部62は、予め設定された所定のスクラバ処理時間で第2ブラシ42を中央位置Pb21から周縁位置Pb22に移動させる。このスクラバ処理時間もデータD1(レシピ)に含まれている。
【0105】
第2ブラシ駆動部721は、少なくとも中央位置Pb21から周縁位置Pb22への第2ブラシ42の移動中において、第2ブラシ42を回転軸線Q22のまわりで回転させてもよい。また、第2ブラシ駆動部721は、予め設定された押圧力で第2ブラシ42を基板Wの第2主面Wbに向かって押圧してもよい。当該押圧力の値もデータD1(レシピ)に含まれている。
【0106】
第2ブラシ42が周縁位置Pb22に到達すると、第2ブラシ駆動部721は第2ブラシ42の回転を停止させ、第2ブラシ移動駆動部62は第2ブラシ42を上昇させる。そして、第2ブラシ移動駆動部62は第2ブラシ42を第2待機位置に移動させる。また、制御部9は供給弁33aを閉じてノズル31からの薬液の吐出を停止させる。
【0107】
以上のように、基板Wの第2主面Wbに薬液が供給された状態で、第2ブラシ42の下面42aが回転中の基板Wの第2主面Wbに当接する。これにより、第2ブラシ42の下面42aが基板Wの第2主面Wbを擦ることができる。第2ブラシ42は基板Wの第2主面Wbの全面に当接するので、基板Wの第2主面Wbの全面を洗浄することができる。このため、基板Wの第2主面Wb上のパーティクルの少なくとも一部を除去することができる。ここでいうパーティクルは、基板Wの第2主面Wbに固着しておらず、第2主面Wbに付着した付着物Adを含む。つまり、ここでいうパーティクルは、第1ブラシ41による研磨によって基板Wの第2主面Wbから分離された付着物Adを含む。
【0108】
次に、処理ユニット1Aは、ステップS3と同様に、基板Wの第2主面Wbにリンス液を供給し(ステップS14:リンス工程)、その後、ステップS4と同様に、基板Wを乾燥させる(ステップS15:乾燥工程)。次に、ステップS5と同様に、基板保持部2が基板Wに対する保持を解除する(ステップS16:保持解除工程)。そして、搬送ロボットが処理済みの基板Wを処理ユニット1Aから搬出する。
【0109】
以上のように、第2実施形態でも、処理ユニット1Aは除去処理を行うので、処理領域R1に固着した付着物Adの少なくとも一部を除去することができる。その一方で、基板Wの第2主面Wbから離れた付着物Adはパーティクルとして、基板Wの第2主面Wb上を薬液とともに流れる。このため、パーティクルが基板Wの第2主面Wbに再付着する可能性も若干ある。当該パーティクルは処理領域R1のみならず、非処理領域R2にも再付着し得る。
【0110】
第2実施形態では、処理ユニット1Aは除去処理の後に、第2ブラシ42を用いたスクラバ処理を行う。第2ブラシ42は非研磨ブラシであるので、基板Wの第2主面Wbは研磨されず、研磨に伴うパーティクルは生じない。そして、第2ブラシ42が基板Wの第2主面Wbの全面を擦って洗浄する。このため、除去処理で生じたパーティクルが基板Wの第2主面Wbのうちの処理領域R1および非処理領域R2に再付着したとしても、スクラバ処理において、当該パーティクルの少なくとも一部(例えば大部分)を除去することができる。このため、基板Wの第2主面Wbに残留するパーティクルの数をさらに低減させることができる。
【0111】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態にかかる処理ユニット1Bの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。処理ユニット1Bは第2研磨ブラシ41Bおよび研磨ブラシ移動駆動部61Bの有無という点で処理ユニット1と相違している。第3実施形態では、第1ブラシ41は研磨ブラシである。このため、第3実施形態では、第1ブラシ41を第1研磨ブラシ41Aとも呼ぶ。また、以下では、第1研磨ブラシ41Aに関連する各構成要素の符号に「A」を付けることがある。例えば、第1ブラシ移動駆動部61を第1ブラシ移動駆動部61Aとも呼ぶ。
【0112】
第2研磨ブラシ41Bは、例えば、ポリビニルアルコール等の樹脂製のスポンジ状基体と、当該基体に含まれた研磨材とを有する研磨ブラシである。研磨材は複数の砥粒を含む。砥粒の材料は特に制限されず、基板Wの第2主面Wbを研磨可能な程度の硬度を有する材料を適用することができる。第2研磨ブラシ41Bの砥粒番手は第1研磨ブラシ41Aの砥粒番手よりも高い。言い換えれば、第2研磨ブラシ41Bに含まれる研磨材の粒径(例えば平均粒径)は、第1研磨ブラシ41Aに含まれる研磨材の粒径(例えば平均粒径)よりも小さい。さらに言い換えれば、第2研磨ブラシ41Bは、第1研磨ブラシ41Aの研磨材よりも細かい研磨材を含む。
【0113】
第2研磨ブラシ41Bは、例えば、鉛直方向に沿う中心軸を有する円柱形状を有する。第2研磨ブラシ41Bの下面41Baは水平面に平行な略平坦面であり、平面視において円形状を有する。第2研磨ブラシ41Bの少なくとも下面41Baには研磨材が含まれ、当該研磨材が少なくとも下面41Baにおいて露出する。第2研磨ブラシ41Bの下面41Baは後述のように基板Wの第2主面Wbに当接する。
【0114】
図13の例では、処理ユニット1Bには第2研磨ブラシ保持部51Bが設けられる。第2研磨ブラシ保持部51Bは第2研磨ブラシ41Bを保持する。第2研磨ブラシ保持部51Bの構成の一例は第1ブラシ保持部51Aと同様である。
【0115】
図13の例では、処理ユニット1Bにはアーム71Bが設けられる。アーム71Bは水平方向に延びている。アーム71Bの内部には第2研磨ブラシ駆動部711Bが設けられている。第2研磨ブラシ駆動部711Bは制御部9によって制御される。第2研磨ブラシ駆動部711Bは、第2研磨ブラシ41Bを回転軸線Q21Bのまわりで回転させる回転駆動部を含んでもよい。回転軸線Q21Bは、例えば、第2研磨ブラシ41Bの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。第2研磨ブラシ駆動部711Bは、シャフト712Bと、不図示のモータとを含む。シャフト712Bは回転軸線Q21Bに沿って延びており、アーム71Bの下面から鉛直下方に突出する。シャフト712Bの下端は第2研磨ブラシ保持部51Bの上面に接続されている。モータはシャフト712Bを回転軸線Q21Bまわりで回転させる。これにより、シャフト712Bに接続された第2研磨ブラシ保持部51Bと、第2研磨ブラシ保持部51Bによって保持された第2研磨ブラシ41Bが回転軸線Q21Bのまわりで一体に回転する。
【0116】
なお、第2研磨ブラシ駆動部711Bには、シャフト712Bの回転を止める制動駆動部(不図示)が設けられてもよいし、第2研磨ブラシ41Bを可制御の押圧力で基板Wの第2主面Wbに押圧する押圧駆動部(不図示)が設けられてもよい。
【0117】
研磨ブラシ移動駆動部61Bは第2研磨ブラシ41Bを移動させる。図13の例では、研磨ブラシ移動駆動部61Bはアーム71B、第2研磨ブラシ保持部51Bおよび第2研磨ブラシ41Bを一体に移動させる。研磨ブラシ移動駆動部61Bは例えば鉛直方向および水平方向の各々に沿って第2研磨ブラシ41Bを移動させる。研磨ブラシ移動駆動部61Bの構成の一例は第1ブラシ移動駆動部61Aと同様である。
【0118】
研磨ブラシ移動駆動部61Bは、第2研磨ブラシ41Bが基板Wの第2主面Wbに当接する処理位置と、第3待機位置との間で第2研磨ブラシ41Bを移動させる。第3待機位置は、例えば、基板保持部2によって保持された基板Wよりも径方向外側の位置である。図13の例では、第3待機位置に位置する第2研磨ブラシ41Bが示されている。
【0119】
次に、処理ユニット1Bによる基板Wに対する処理の一例について説明する。処理ユニット1Bによる処理の一例は、図7に示されたフローチャートと同様である。ただし、除去処理(ステップS2)の具体的な動作の一例が相違する。図14は、第3実施形態にかかる除去処理の具体的な一例を示すフローチャートである。図14の例では、処理ユニット1Bは第1研磨ブラシ41Aを用いて基板Wの第2主面Wbに対して研磨処理を行う(ステップS21:粗研磨工程)。すなわち、処理ユニット1Bは、基板Wの第2主面Wbに薬液を供給しつつ、第1研磨ブラシ41Aを、非処理領域R2を避けて処理領域R1に対して摺動させる。具体的には、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させ、かつ、ノズル31が薬液を基板Wの第2主面Wbに向かって吐出しつつ、第1ブラシ移動駆動部61が第1研磨ブラシ41Aを処理位置に移動させる。薬液の吐出は、制御部9が供給弁33aを開くことによって行われる。第1ブラシ移動駆動部61Aは第1研磨ブラシ41Aを処理領域R1に当接させ、非処理領域R2には当接させない。つまり、ステップS21は、第1実施形態のステップS2と実質的に同一である。
【0120】
第1研磨ブラシ41Aの研磨材の粒径は大きいので、処理ユニット1Bは基板Wの処理領域R1をより大きな研磨量で研磨することができる。このため、処理ユニット1Bは大きな付着物Adをより効率的に除去することができる。その一方で、第1研磨ブラシ41Aによる研磨によって、基板Wの処理領域R1には比較的に深い擦り傷(以下、スクラッチと呼ぶ)が生じる。図15は、基板Wの一部の構成の一例を示す断面図である。図15では、基板Wの第2主面WbにスクラッチSCが生じている。スクラッチSCでは、第2主面Wbに凹みが生じるとともに、その凹みの輪郭部において第2主面Wbが盛り上がる。つまり、基板Wの第2主面Wbには、当該スクラッチSCの輪郭部において凸部が形成される。当該凸部の高さは、付着物Adの高さの最大値よりも小さいものの、当該凸部が露光装置の焦点ずれの原因ともなる可能性もある。
【0121】
そこで、第3実施形態では、ステップS21の次に、処理ユニット1Bは第2研磨ブラシ41Bを用いて基板Wの第2主面Wbに対して研磨処理を行う(ステップS22:細研磨工程)。すなわち、処理ユニット1Bは、基板Wの第2主面Wbに薬液を供給しつつ、第2研磨ブラシ41Bを、非処理領域R2を避けて処理領域R1に対して摺動させる。具体的には、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させ、かつ、ノズル31が薬液を基板Wの第2主面Wbに向かって吐出しつつ、研磨ブラシ移動駆動部61Bが第2研磨ブラシ41Bを処理位置に移動させる。研磨ブラシ移動駆動部61Bは第2研磨ブラシ41Bを処理領域R1に当接させる。また、ここでは、研磨ブラシ移動駆動部61Bは第2研磨ブラシ41Bを非処理領域R2には当接させない。
【0122】
第2研磨ブラシ41Bの研磨材の粒径は第1研磨ブラシ41Aの研磨材の粒径よりも小さいので、第2研磨ブラシ41Bは基板Wの処理領域R1をより小さな研磨量で研磨することができる。このため、処理ユニット1BはステップS21で生じたスクラッチSCの輪郭部の凸部の少なくとも一部を除去して、基板Wの第2主面Wbをより平坦にすることができる。
【0123】
<第4実施形態>
第4実施形態にかかる処理ユニット1の構成の一例は、第1実施形態から第3実施形態のいずれかと同様である。第4実施形態では、処理領域R1を示すデータD1について説明する。表1は、第4実施形態にかかるデータD1の構成の一例を概略的に示している。
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示されるように、データD1は、位置関連情報PDと処理領域R1との対応関係を示すデータである。位置関連情報PDは、基板Wの第2主面Wbにおける凹凸欠陥(例えば付着物Ad)の位置に関するデータである。位置関連情報PDは、基板Wの第2主面Wb上の凹凸欠陥の位置を示す座標データであってもよい。表1では、位置関連情報PDがデータPdaであるときの処理領域R1には、領域R1aが対応付けられている。例えば、データPdaは、図4(a)の付着物Adの位置を示すデータであり、領域R1aは、図5(a)の処理領域R1を示すデータである。同様に、図4(b)の付着物Adの位置を示すデータPdbに対応する処理領域R1には、図5(b)の処理領域R1である領域R1bが対応付けられ、図4(c)の付着物Adの位置を示すデータPdcに対応する処理領域R1には、図5(c)の処理領域R1である領域R1cが対応付けられる。
【0126】
なお、凹凸欠陥の位置は上述のように前処理装置に依存するので、位置関連情報PDは前処理装置の識別情報であってもよい。基板Wが複数の前処理装置を経由する場合には、位置関連情報PDは複数の識別情報を含み得る。あるいは、各前処理装置の処理内容が前処理装置に固有である場合、位置関連情報PDは前処理装置における処理内容を示す情報であってもよい。基板Wが複数の前処理装置を経由する場合には、位置関連情報PDは複数の処理内容を含み得る。
【0127】
図16は、処理領域R1を設定する動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、少なくとも除去処理(ステップS2またはステップS12)の前に実行される。制御部9は基板Wについての位置関連情報PDを、例えば前処理装置または管理装置から通信回路98を通じて受け取る(ステップS31:位置関連情報取得工程)。
【0128】
次に、制御部9は位置関連情報PDに基づいて処理領域R1を設定する(ステップS32:設定工程)。具体的には、制御部9は記憶部97からデータD1を読み出し、ステップS31で取得した位置関連情報PDに対応する領域をデータD1に基づいて特定し、該領域を処理領域R1に設定する。
【0129】
そして、制御部9は除去処理において、ステップS32にて設定した処理領域R1に第1ブラシ41を当接させる。
【0130】
以上のように、第4実施形態では、処理ユニット1に搬入される基板Wの付着物Adの位置が変化しても、その位置を示す位置関連情報PDが制御部9に入力される。このため、制御部9は位置関連情報PDに基づいて処理領域R1を適切に決定することができ、処理ユニット1は、除去処理において、付着物Adを含む処理領域R1に第1ブラシ41を適切に当接させることができる。したがって、処理ユニット1は適切に付着物Adの少なくとも一部を除去することができる。しかも、制御部9が位置関連情報PDに基づいて自動的に処理領域R1を設定する。このため、ユーザは基板Wごとに処理領域R1を設定する必要がなく、処理ユニット1のユーザビリティを向上させることができる。
【0131】
<第5実施形態>
図17は、第5実施形態にかかる処理ユニット1Cの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。処理ユニット1Cはセンサ8の有無という点で処理ユニット1と相違する。
【0132】
センサ8は基板Wの第2主面Wb上の凹凸欠陥(例えば付着物Ad)を検出して、凹凸欠陥の位置を測定する。図17の例では、センサ8は光源81と受光部82とを含んでいる。図17の例では、光源81は、回転軸線Q1についての径方向に沿って延びた長尺状の形状を有する。光源81は測定光を基板Wの第2主面Wbに向かって出射する。なお、図17の例では、センサ8と基板Wとの間にアーム71、第1ブラシ保持部51および第1ブラシ41が位置しているものの、センサ8による測定時には、これらは基板Wの直上の領域とは別の位置(例えば第1待機位置)に移動している。このため、測定光は、基板保持部2によって保持された基板Wの第2主面Wbに照射される。具体的には、測定光は、径方向に延びる帯状の領域で基板Wの第2主面Wbに照射される。当該領域は基板Wの中心から基板Wの周縁までの領域を含み得る。
【0133】
図17の例では、受光部82は、基板Wの径方向に沿って延びた長尺状の形状を有する。つまり、図17の例では、センサ8はいわゆるラインセンサである。受光部82は、基板Wの第2主面Wbで反射した光を受光し、その反射光の強度に応じた信号を例えば制御部9に出力する。基板Wの第2主面Wbで反射した反射光の強度は、基板Wの第2主面Wb上の付着物Adに依存して変化する。例えば、光は付着物Adによって散乱するので、反射光の強度分布は、基板Wの第2主面Wb上の付着物Adの分布に応じた分布をとる。そこで、制御部9は、受光部82からの信号(反射光の強度分布)に基づいて、各付着物Adの位置を検出する。この場合、制御部9の一部の機能は、センサ8に属しているともいえる。具体的な一例として、センサ8(制御部9)は、基板Wの第2主面Wb上の各付着物Adの位置を求める。
【0134】
センサ8の光源81が測定光を出射した状態で、基板保持部2が基板Wを回転させることにより、センサ8の光源81は基板Wの第2主面Wbの全面に測定光を出射する。このため、センサ8は基板Wの第2主面Wbの全面を走査することができる。したがって、制御部9は基板Wの第2主面Wbの全面における付着物Adの位置を求めることができる。
【0135】
図17に示されるように、処理ユニット1Cには、センサ8を測定位置とセンサ待機位置との間で移動させるセンサ移動駆動部83が設けられてもよい。測定位置は、センサ8が基板Wの第2主面Wb上の付着物Adを検出するための位置であり、例えば、センサ8が、基板保持部2によって保持された基板Wの第2主面Wbと鉛直方向において対向する位置である。測定位置は、例えば、センサ8の長手方向が径方向に沿う位置でもある。センサ待機位置は、センサ8が基板Wの第2主面Wb上の付着物Adを検出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。センサ移動駆動部83は、例えば、モータ等の駆動源と、ボールねじ機構等の動力伝達部とを含んでもよい。
【0136】
なお、センサ8は、必ずしも長尺状のラインセンサでなくてもよい。例えば、センサ8の光源81および受光部82の径方向の長さは、基板Wの半径よりも十分に小さくてもよい。言い換えれば、センサ8はポイントセンサであってもよい。この場合、センサ移動駆動部83は、測定中に、センサ8を基板Wの中心と周縁との間で水平に往復移動させればよい。これにより、センサ8は基板Wの主面の全面を走査することができる。
【0137】
処理領域R1を設定する動作の一例は図16と同様であるものの、ステップS31およびステップS32の具体例が第4実施形態と相違する。また、この動作は、第1実施形態のステップS1とステップS2との間、または、第2実施形態のステップS11とステップS12との間で行われる。つまり、この動作は、基板保持部2が基板Wを保持し、かつ、除去処理が行われる前に行われる。
【0138】
センサ8が付着物Adの位置を測定する(ステップS31:位置関連情報取得工程)。具体的には、まず、センサ移動駆動部83はセンサ8を測定位置に移動させる。そして、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させつつ、センサ8の光源81が測定光を基板Wの第2主面Wbに向かって出射する。センサ8の受光部82が基板Wの第2主面Wbで反射された測定光を受光することで、基板Wの第2主面Wbの全面での反射光を得ることができる。センサ8(具体的には制御部9)は、反射光の強度分布に基づいて、基板Wの第2主面Wb上の付着物Adの位置を算出する。センサ8は、付着物Adの位置を示すデータを位置関連情報PDとして生成する。そして、センサ移動駆動部83はセンサ8を待機位置に移動させる。
【0139】
次に、制御部9は、センサ8によって測定された付着物Adの位置(つまり、位置関連情報PD)に基づいて、処理領域R1を設定する(ステップS32:設定工程)。例えば、制御部9は、全ての付着物Adを含む円環状または円状の領域を処理領域R1に設定する。具体的な一例として、制御部9は、最も基板Wの中心に近い付着物Adの最内周位置と、最も基板Wの中心から遠い付着物Adの最外周位置とに基づいて、処理領域R1を設定してもよい。
【0140】
以上のように、第5実施形態では、センサ8が凹凸欠陥(例えば付着物Ad)の位置を検出し、制御部9が当該位置に基づいて処理領域R1を設定する。このため、制御部9はより高い精度でより適切な処理領域R1を設定することができる。また、ユーザは基板Wごとに処理領域R1を設定する必要がなく、処理ユニット1のユーザビリティを向上させることができる。
【0141】
<外部装置>
センサ8は、基板処理装置の外部に設けられてもよい。図18は、基板処理システム1000の構成の一例を概略的に示す図である。図18の例では、基板処理システム1000は、基板処理装置100と、キャリア搬送装置400と、測定装置500とを含む。
【0142】
基板処理装置100は、ロードポート111と、第1搬送部112と、複数の処理ユニット1と、第2搬送部122とを含んでいる。ロードポート111には、複数の基板Wを収納したキャリアCが搬入される。第1搬送部112および第2搬送部122は搬送ロボットである。第1搬送部112はロードポート111と第2搬送部122との間で基板Wを搬送する。第2搬送部122は第1搬送部112と処理ユニット1との間で基板Wを搬送する。なお、処理ユニット1に代えて、処理ユニット1A、処理ユニット1Bまたは処理ユニット1Cが設けられてもよい。
【0143】
測定装置500は、基板Wの第2主面Wb上の凹凸欠陥の位置を検出する装置である。図18の例では、測定装置500は、ロードポート501と、搬送部502と、測定部503と、制御部504とを含んでいる。ロードポート501はロードポート111と同様であり、複数の基板Wを収納したキャリアCがロードポート501に載置される。搬送部502は搬送ロボットであって、ロードポート501に載置されたキャリアCと、測定部503との間で基板Wを搬送する。
【0144】
測定部503は基板保持部2Cおよびセンサ8を含んでいる。基板保持部2Cは、搬送部502によって搬入された基板Wを水平姿勢で保持する。基板保持部2Cは基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させてもよい。基板保持部2Cの構成の一例は基板保持部2と同様である。センサ8は、基板保持部2Cによって保持された基板Wの第2主面Wb上の凹凸欠陥の位置を検出する。
【0145】
制御部504は測定装置500を制御する。具体的には、制御部504は、搬送部502、基板保持部2Cおよびセンサ8を制御する。制御部504は、センサ8によって検出された凹凸欠陥の位置をキャリアC内の基板Wに対応付けて測定結果データ(つまり、位置関連情報PD)を生成し、当該測定結果データを不図示の通信回路を通じて、制御部9に送信する。
【0146】
キャリア搬送装置400はキャリアCを測定装置500に搬送するとともに、測定装置500によって測定済みの複数の基板Wを収納したキャリアCを測定装置500から取り出し、該キャリアCを基板処理装置100に搬送する。
【0147】
制御部9は、外部(測定装置500)から受け取った測定結果データ(つまり、位置関連情報PD)に基づいて、処理領域R1を基板Wごとに決定する。
【0148】
この例によれば、センサ8は、薬液が供給される処理ユニット1の外部に設けられる。このため、センサ8が薬液雰囲気に曝される可能性を低減させることができる。よって、薬液耐性が低いセンサ8を適用することができ、より安価なセンサ8を適用することができる。
【0149】
以上のように、基板処理装置100および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0150】
上述の例では、処理ユニット1は研磨材を含む第1ブラシ41を用いて基板Wの処理領域R1を研磨した。しかしながら、処理ユニット1は、研磨材を含む処理液を基板Wの第2主面Wbに供給し、研磨材を含まない第1ブラシ41を処理領域R1のみに当接させてもよい。この場合でも、処理ユニット1は処理領域R1を研磨することができる。また、第1ブラシ41は非処理領域R2に当接しないので、第1ブラシ41の摩耗も抑制することができる。ただし、この態様では、研磨材を含む処理液が基板Wの非処理領域R2にも供給されるので、パーティクルの発生量が増加するおそれがある。
【0151】
これに対して、処理ユニット1が研磨材を含まない処理液(例えば薬液)を基板Wの第2主面Wbに供給しつつ、研磨材を含む第1ブラシ41を処理領域R1に当接させれば、非処理領域R2におけるパーティクルの発生を回避することができる。このため、基板Wの第2主面Wbに残留するパーティクルの数をより効果的に低減させることができる。
【0152】
また、上述の例では、付着物Ad、傷およびBoat痕等の凹凸欠陥が、第2主面Wbのうちの処理領域R1内に形成されている。このため、処理ユニット1は処理領域R1を研磨した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えば、基板Wの第2主面Wbのうちの処理領域R1内においてパーティクルが付着し、非処理領域R2内においてパーティクルが付着していない場合、処理ユニット1は研磨材を含まない処理液および研磨材を含まない第1ブラシ41を用いて処理領域R1のみを洗浄してもよい。これによっても、処理ユニット1は処理領域R1内のパーティクルの少なくとも一部を除去することができる。また、第1ブラシ41の非処理領域R2への当接を回避するので、第1ブラシ41の摩耗を抑制することができる。
【0153】
また、上述の例では、第1ブラシ41(第1研磨ブラシ41A)、第2ブラシ42および第2研磨ブラシ41Bは、基板Wの第2主面Wbに沿って径方向外側に向かって移動しているものの、複数回移動してもよい。例えば、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41が径方向内側の第1位置から径方向外側の第2位置まで移動した後に、第1ブラシ41を上昇させ、再び第1ブラシ41を第1位置に移動させる。そして、第1ブラシ移動駆動部61は第1ブラシ41を再び第1位置から第2位置に移動させる。
【符号の説明】
【0154】
2 基板保持部
3 吐出部
31 ノズル
41 第1ブラシ
41A 第1研磨ブラシ
41B 第2研磨ブラシ
42 第2ブラシ
61 第1ブラシ移動駆動部
61B 研磨ブラシ移動駆動部
62 第2ブラシ移動駆動部
8 センサ
9 制御部
S1,S11 保持工程(ステップ)
S2,S12 除去工程(ステップ)
S13 スクラバ工程(ステップ)
S31 粗研磨工程(ステップ)
S32 細研磨工程(ステップ)
R1 処理領域
R2 非処理領域
W 基板
Wb 主面(第2主面)
図1
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