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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006363
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】3次元構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/10 20170101AFI20250109BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20250109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250109BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B29C64/10
B33Y80/00
B33Y10/00
F16C11/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107111
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】512209689
【氏名又は名称】SOLIZE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 文嶺
【テーマコード(参考)】
3J105
4F213
【Fターム(参考)】
3J105AA02
3J105AA12
3J105AB50
3J105AC06
3J105BB02
3J105BB12
4F213AH04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL62
(57)【要約】
【課題】ガタつきの少ない軸部及び軸受部を含む3次元構造体を容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】3次元構造体1は、軸受部23A,23Bを含むベース部材2と、軸方向に沿って延び、軸受部23A,23Bに対して回転可能に連結される軸部34A,34Bを含む蓋部材3とを備える。ベース部材2及び蓋部材3は積層造形法により作製される。蓋部材3の軸部34A,34Bは、周方向に沿って配置される複数の頂面42と、隣接する頂面42sの間を周方向に接続する複数の接続部45とを有する。頂面42は、軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26Aから半径方向に最小離間距離Dだけ離れた位置で軸孔26の内周面26Aに対面している。接続部45は、頂面42よりも軸孔26の内周面26Aから半径方向に離れた位置にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、
軸方向に沿って延び、前記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材と
を備え、
前記第2の部材の前記軸部は、
周方向に沿って配置される複数の頂面であって、前記軸受部の前記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で前記軸受面に対面する複数の頂面と、
前記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を前記周方向に接続する複数の接続部であって、前記複数の頂面よりも前記軸受部の前記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部と
を有する、
3次元構造体。
【請求項2】
前記第2の部材の前記軸部の前記複数の頂面のそれぞれの前記周方向における位置は前記軸方向に沿って変化する、請求項1に記載の3次元構造体。
【請求項3】
前記第1の部材の前記軸受部には、前記軸受面の半径方向内側に形成される内部空間を前記軸受部の外部に接続する連絡通路が形成されている、請求項1又は2に記載の3次元構造体。
【請求項4】
軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、軸方向に沿って延び、前記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材とを備える3次元構造体を製造する方法であって、
第1の材料層及び第2の材料層を積層方向に積層して前記第1の材料層により構成される前記第1の部材及び前記第2の材料層により構成される前記第2の部材を形成する積層造形工程を有し、
前記積層造形工程は、前記第1の材料層及び前記第2の材料層を同一の積層平面上で連続的に形成する連続層形成工程を前記積層方向に繰り返すことで前記軸受部及び前記軸部を形成する軸構造造形工程を含み、
前記軸構造造形工程では、
前記第1の材料層により、前記軸受部の前記軸受面を形成し、
前記第2の材料層により、周方向に沿って配置される複数の頂面であって、前記軸受部の前記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で前記軸受面に対面する複数の頂面と、前記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を前記周方向に接続する複数の接続部であって、前記複数の頂面よりも前記軸受部の前記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部とを形成する、
方法。
【請求項5】
前記積層造形工程の後に、前記第1の部材の前記軸受部に対して前記第2の部材の前記軸部を回転する回転工程をさらに有する、請求項4に記載の3次元構造体の製造方法。
【請求項6】
前記軸構造造形工程において、前記軸部の前記複数の頂面及び前記複数の接続部のそれぞれの前記周方向における位置が前記積層方向に沿って変化するように前記連続層形成工程を前記積層方向に繰り返す、請求項4又は5に記載の3次元構造体の製造方法。
【請求項7】
前記積層造形工程は、前記軸構造造形工程の前又は後に、前記軸受部の前記軸受面の半径方向内側に形成される内部空間を前記軸受部の外部に接続する連絡通路が前記軸受部に形成されるように前記第1の材料層を積層する通路形成工程をさらに含む、
請求項6に記載の3次元構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元構造体及びその製造方法に係り、特に軸部とその軸部を受ける軸受部とを含む3次元構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から3Dプリンタにより材料を1層ずつ積み重ねて3次元構造体を造形する積層造形法が知られている。このような積層造形法は、軸部とこの軸部を受ける軸受部とを含む3次元構造体を作製する際にも用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような3次元構造体を積層造形法により作製する場合には、造形中や2次硬化中に軸部と軸受部とが癒着してしまい、軸部と軸受部の機能が阻害されてしまうことがある。このような癒着は、軸部と軸受部との間に十分な間隙を確保することにより抑制することができるが、軸部と軸受部との間の間隙を大きくすると、軸部が軸受部に対して回転する際にガタつきが生じやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-12981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ガタつきの少ない軸部及び軸受部を含む3次元構造体を提供することを第1の目的とする。
【0005】
また、本発明は、ガタつきの少ない軸部及び軸受部を含む3次元構造体を容易に製造することができる方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ガタつきの少ない軸部及び軸受部を含む3次元構造体が提供される。この3次元構造体は、軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、軸方向に沿って延び、上記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材とを備える。上記第2の部材の上記軸部は、周方向に沿って配置される複数の頂面であって、上記軸受部の上記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で上記軸受面に対面する複数の頂面と、上記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を上記周方向に接続する複数の接続部であって、上記複数の頂面よりも上記軸受部の上記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部とを有する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、ガタつきの少ない軸部及び軸受部を含む3次元構造体を容易に製造することができる方法が提供される。この方法は、軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、軸方向に沿って延び、上記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材とを備える3次元構造体を製造する方法である。この方法は、第1の材料層及び第2の材料層を積層方向に積層して上記第1の材料層により構成される上記第1の部材及び上記第2の材料層により構成される上記第2の部材を形成する積層造形工程を有する。上記積層造形工程は、上記第1の材料層及び上記第2の材料層を同一の積層平面上で連続的に形成する連続層形成工程を上記積層方向に繰り返すことで上記軸受部及び上記軸部を形成する軸構造造形工程を含む。上記軸構造造形工程では、上記第1の材料層により、上記軸受部の上記軸受面を形成し、上記第2の材料層により、周方向に沿って配置される複数の頂面であって、上記軸受部の上記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で上記軸受面に対面する複数の頂面と、上記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を上記周方向に接続する複数の接続部であって、上記複数の頂面よりも上記軸受部の上記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部とを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態における3次元構造体を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す3次元構造体の分解斜視図である。
図3A図3Aは、図2に示す3次元構造体におけるベース部材の横断面図である。
図3B図3Bは、図3AのA-A線断面の一部を拡大して示す図である。
図4A図4Aは、図2に示す3次元構造体における蓋部材の一部を拡大して示す斜視図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す蓋部材の一部の正面図である。
図4C図4Cは、図4Aに示す蓋部材の一部の平面図である。
図5図5は、図1に示す3次元構造体の一部を拡大して示す断面図である。
図6A図6Aは、本発明の一実施形態における3次元構造体を製造する工程の一例を示すフローチャートである。
図6B図6Bは、図6Aに示す積層造形工程の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る3次元構造体及びその製造方法の実施形態について図1から図6Bを参照して詳細に説明する。図1から図6Bにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図6Bにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は本発明の一実施形態における3次元構造体1を示す斜視図、図2は分解斜視図である。図1及び図2に示すように、3次元構造体1は、略平板状のベース部材2(第1の部材)と、ベース部材2に対して回転可能に設けられる蓋部材3(第2の部材)とを含んでいる。ベース部材2及び蓋部材3は、後述するように3Dプリンタを用いた積層造形法によって製造されるものである。
【0011】
図2に示すように、蓋部材3は、平板状の蓋本体30と、蓋本体30の縁部に形成されたフック部31と、ベース部材2に連結される2つの連結部32(32A,32B)とを有している。それぞれの連結部32は、蓋本体30から+X方向に延びる基部33と、基部33からY方向(軸方向)に延びる軸部34A,34Bとを含んでいる。本実施形態では、基部33を挟んでY方向の両側に軸部34A,34Bが配置されているが、基部33の+Y方向側又は-Y方向側にのみ軸部が配置されていてもよい。また、本実施形態の蓋部材3は2つの連結部32を含んでいるが、蓋部材3がベース部材2に対して回転可能に連結されていのであれば、連結部32の数はこれに限られるものではない。例えば、蓋部材3が1つの連結部32のみを含んでいてもよい。
【0012】
ベース部材2は、XY平面に沿って延びる板部20と、板部20から+Z方向に延びる壁21と、蓋部材3のフック部31が係合可能な係合部22と、蓋部材3の連結部32の軸部34A,34Bをそれぞれ受ける軸受部23A,23Bとを含んでいる。壁21の内側には、例えば電池を収容するための収容空間24が形成されており、板部20には、この収容空間24に連絡する開口25が形成されている。開口25は、蓋部材3の蓋本体30の外形に略対応した形状を有しており、蓋部材3が閉状態(図1に示す状態)にあるときには、ベース部材2の開口25の内部に蓋部材3の蓋本体30が位置するようになっている。
【0013】
図1に示す3次元構造体1は、例えば収容空間24に電池が収容されている場合に、蓋部材3をベース部材2に対してY軸周りに回転させることによって、開口25から収容空間24内の電池に-Z方向側からアクセスして交換できるようにするものである。しかしながら、本発明は、このような構造に限らず、軸部とこの軸部を受ける軸受部とを含む任意の3次元構造体に適用できるものである。
【0014】
図3Aはベース部材2の横断面図、図3B図3AのA-A線断面の一部を拡大して示す図である。図3A及び図3Bに示すように、ベース部材2の軸受部23A,23Bのそれぞれには、Y方向に円筒状に延びる軸孔26が形成されており、この軸孔26の内部に形成される空間Sに蓋部材3の連結部32の軸部34A又は34Bが配置される。すなわち、この軸孔26の内周面26A(図3B参照)が蓋部材3の連結部32の軸部34A又は34Bを受ける軸受面となっている。図3Aに示すように、軸受部23Aと軸受部23Bとの間には、蓋部材3の連結部32の基部33を収容する空間27が形成されている。
【0015】
また、図3A及び図3Bに示すように、軸受部23Bには、軸孔26から-Y方向に延び、板部20の表面20A(図1及び図2参照)で開口する連絡通路28Bが形成されている。同様に、軸受部23Aには、軸孔26から+Y方向に延び、板部20の表面20Aで開口する連絡通路28Aが形成されている。これらの連絡通路28A,28Bは、軸孔26の内部、すなわち軸孔26の内周面26Aの径方向内側に形成される内部空間Sを軸受部23A,23Bの外部に接続するものである。
【0016】
図4Aは、蓋部材3の連結部32を拡大して示す斜視図、図4B図4Aに示す連結部32の正面図、図4Cは平面図である。図4Aから図4Cに示すように、連結部32の軸部34A,34Bのそれぞれは、コア部40と、コア部40から周方向に所定の間隔で半径方向外側に突出する複数の突出部41とを含んでいる。本実施形態における軸部34A,34Bのそれぞれは、周方向に沿って等間隔に配置された6つの突出部41を含んでいるが、突出部41の数は図示のものに限られるものではなく、またこれらの突出部41が周方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0017】
図4Aから図4Cに示すように、それぞれの突出部41は、径方向外側に向いた頂面42と、頂面42の周方向の両縁部から延びる側面43とを有している。また、図4Cに示すように、頂面42及び側面43を有する突出部41のそれぞれは、その周方向における位置がY方向(軸方向)に沿って変化するように形成されている。本実施形態では、いずれの突出部41も-Y方向に向かうにつれて時計回りに回転するように螺旋状に形成されている。
【0018】
図4Aから図4Cに示すように、隣接する突出部41の側面43の間にはコア部40の外周面44が位置している。それぞれの軸部34A,34Bにおいては、突出部41の頂面42が最も半径方向外側に位置し、コア部40の外周面44が最も半径方向内側に位置しており、これら頂面42と外周面44との間が側面43で接続されている。このように、突出部41の一方の側面43、隣接する突出部41の一方の側面43、及びコア部40の外周面44によって、隣接する突出部41の頂面42の間を周方向に接続する接続部45が構成されている。
【0019】
図5は、連結部32の軸部34A及び軸受部23Aの近傍を示す拡大断面図である。図5に示すように、連結部32の軸部34Aは軸受部23Aの軸孔26の内部に位置しており、軸部34Aの突出部41の頂面42は、軸孔26の内周面26A(軸受面)から半径方向にわずかな距離(以下、最小離間距離Dという)だけ離れた位置で軸孔26の内周面26Aに対面している。上述したように、軸部34Aにおいては、突出部41の頂面42が最も半径方向外側に位置しているため、隣接する突出部41の頂面42を接続する接続部45のいずれの部分(突出部41の側面43及びコア部40の外周面44)も、軸孔26の内周面26Aから上記最小離間距離Dよりも大きな距離だけ離れた位置にある。
【0020】
このような構成により、軸部34Aが円筒軸である場合に比べて、すなわち軸部34Aが全周にわたって最小離間距離Dで軸孔26の内周面26Aに対面する場合に比べて、軸部34Aが最小離間距離Dで軸受部23Aの軸孔26の内周面26Aに対向する面積が小さくなるので、後述するようにベース部材2及び蓋部材3を造形する際に、軸受部23Aの軸孔26の内周面26Aと軸部34Aとの間で癒着が生じることが抑制される。軸部34B及び軸受部23Bについても同様のことがいえる。このように、軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26Aと軸部34A,34Bとの間で癒着が生じにくいので、軸部34A,34Bが円筒軸である場合に比べて、軸受部23A,23Bの内周面26Aと軸部34A,34Bの頂面42との間の距離を短くすることができる。これにより、軸受部23A,23Bの内周面26Aと軸部34A,34Bの頂面42との間の間隙が小さくなるため、軸部34A,34Bが軸受部23A,23Bに対して回転する際に生じるガタつきを低減することができる。また、結果的に、軸部34A,34B及び軸受部23A,23Bとからなる軸受構造がコンパクトになる。
【0021】
次に、上述した3次元構造体1を製造する方法について図6A及び図6Bを参照して説明する。上述した3次元構造体1は、3Dプリンタを用いて材料をY方向(積層方向)に積層することによって製造される(積層造形法)。以下では、材料を-Y方向に積層する場合の例について説明するが、材料を+Y方向に積層して上述した3次元構造体1を製造することもできる。
【0022】
具体的には、3次元構造体1を製造する方法は、図6Aに示すように、材料層を-Y方向(積層方向)に積層して上述したベース部材2(第1の部材)及び蓋部材3(第2の部材)を形成する積層造形工程S1と、積層造形工程S1により形成された蓋部材3の軸部34A,34Bをベース部材2の軸受部23A,23Bに対して回転する回転工程S2とを含んでいる。
【0023】
積層造形工程S1においては、3Dプリンタを用いた積層造形法によってベース部材2及び蓋部材3を作製する。この積層造形法の種類は特に限定されるものではなく、例えば、溶融した材料をノズルから押し出して積層する材料押出法、光硬化性樹脂をレーザで照射して積層する光造形法、ヘッドから噴射した材料を紫外線で硬化させて積層するマテリアルジェッティング法、材料粉末にノズルからバインダを噴射して固めることで積層するバインダジェッティング法、材料粉末にレーザを照射して焼結させることで積層する粉末床溶融結合法などを用いることができる。また、積層造形に用いる材料も特定のものに限定されるものではなく、例えば樹脂、金属、セラミック、石膏など各種の材料を用いることができる。さらに、ベース部材2を構成する材料層(第1の材料層)と蓋部材3を構成する材料層(第2の材料層)に同一の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0024】
積層造形工程S1では、積層造形法により3Dプリンタのステージ上にベース部材2を構成する材料層(第1の材料層)及び蓋部材3を構成する材料層(第2の材料層)を-Y方向に1層ずつ積み重ねていく。これにより、ベース部材2及び蓋部材3の各部が形成されていくが、以下では特に蓋部材3の-Y方向側に位置する連結部32A(図2参照)の軸部34A,34B及びこれらに対応する軸受部23A,23Bの形成を中心に説明する。なお、積層造形工程S1においては、必要に応じてサポート材(図示せず)を第1の材料層及び第2の材料層とともに積層してもよい。
【0025】
図6Bは、積層造形工程S1の一部を示すフローチャートである。図6Bに示すように、積層造形工程S1は、ベース部材2の4つの連絡通路28A,28Bのうち最も+Y方向側に位置する連絡通路28Aを形成する通路形成工程S11と、連結部32Aの軸部34A及び軸受部23Aを形成する軸構造造形工程S12と、連結部32Aの基部33とベース部材2の対応する部分とを形成する基部造形工程S13と、連結部32Aの軸部34B及び軸受部23Bを形成する軸構造造形工程S14と、連絡通路28Bを形成する通路形成工程S15とを含んでいる。
【0026】
通路形成工程S11では、軸受部23Aに連絡通路28Aが形成されるように(第1の)材料層を積層する。この連絡通路28Aにより、軸受部23Aの軸孔26の内周面26Aの半径方向内側に形成される内部空間Sが軸受部23Aの外部に接続される。同様に、通路形成工程S15では、軸受部23Bに連絡通路28Bが形成されるように(第1の)材料層を形成する。この連絡通路28Bにより、軸受部23Bの軸孔26の内周面26Aの半径方向内側に形成される内部空間Sが軸受部23Bの外部に接続される。
【0027】
軸構造造形工程S12では、軸受部23Aを構成する(第1の)材料層と軸部34Aを構成する(第2の)材料層とを同一の積層平面上で連続的に形成する連続層形成工程S121を-Y方向に繰り返すことで連結部32Aの軸部34A及び軸受部23Aを形成する。同様に、軸構造造形工程S14では、軸受部23Bを構成する(第1の)材料層と軸部34Bを構成する(第2の)材料層とを同一の積層平面上で連続的に形成する連続層形成工程S141を-Y方向に繰り返すことで連結部32Aの軸部34B及び軸受部23Bを形成する。
【0028】
基部造形工程S13では、ベース部材2を構成する(第1の)材料層と連結部32Aの基部33を構成する(第2の)材料層とを同一の積層平面上で連続的に形成する工程を-Y方向に繰り返すことで連結部32Aの基部33及びベース部材2の一部を形成する。
【0029】
図6Bに示す工程により連結部32Aの軸部34A,34B及びこれらに対応する軸受部23A,23Bを形成することができる。同様の工程により、連結部32Bの軸部34A,34B及びこれらに対応する軸受部23A,23Bを形成することができる。
【0030】
積層造形工程S1によりベース部材2及び蓋部材3の造形が完了した後、必要に応じてサポート材を適切な方法により除去する。また、造形後に未硬化の材料が部材の間隙に残留してしまうことがあるが、本実施形態では、このようなサポート材や余分な材料など(以下、「不要物」という)を除去するために回転工程S2を実施する。この回転工程S2においては、蓋部材3の軸部34A,34Bをベース部材2の軸受部23A,23Bに対して回転する。このような回転工程により、軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26Aと軸部34A,34Bとの間に存在する不要物を隣接する突出部41の間の接続部45に集めることができるので不要物の除去が容易になる。
【0031】
特に本実施形態では、上述したように軸部34A,34Bの突出部41が螺旋状に形成されているので、回転工程において軸部34A,34Bを回転させると、軸部34A,34Bの接続部45に集められた不要物が突出部41に当たって接続部45に沿って軸方向(Y方向)に掻き出される。したがって、不要物の除去がさらに容易になる。
【0032】
また、本実施形態では、通路形成工程S11,S15によって、それぞれの軸受部23A,23Bに連絡通路28A,28Bを形成することができるので、軸部34A,34Bを回転させることにより、上述のように軸部34A,34Bの接続部45に沿って軸方向に掻き出された不要物を軸孔26の内周面26Aの半径方向内側に形成される内部空間S(図3A及び図3B参照)から連絡通路28A,28Bを通じてベース部材2の板部20の表面20Aに排出することができる。
【0033】
上述したように、本実施形態によれば、軸部34A,34Bの頂面42だけが軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26A(軸受面)の近傍で内周面26Aに対向することになり、内周面26Aの近傍で内周面26Aに対向する軸部34A,34Bの面積が軸部34A,34Bを円筒軸とする場合に比べて小さくなるので、軸部34A,34B及び軸受部23A,23Bを積層造形する際に、軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26Aと軸部34A,34Bとの間で癒着が生じることが抑制される。このように、軸受部23A,23Bの軸孔26の内周面26Aと軸部34A,34Bとの間で癒着が生じにくいので、軸部34A,34Bが円筒軸である場合に比べて、軸受部23A,23Bの内周面26Aと軸部34A,34Bの頂面42との間の距離を短くすることができる。これにより、軸受部23A,23Bの内周面26Aと軸部34A,34Bの頂面42との間の間隙が小さくなるため、軸部34A,34Bが軸受部23A,23Bに対して回転する際に生じるガタつきを低減することができる。すなわち、ガタつきの少ない軸部34A,34B及び軸受部23A,23Bを含む3次元構造体を容易に積層造形することができる。また、このような軸部34A,34Bはサポート材を使わずに積層造形することが可能である。
【0034】
上述した実施形態では、螺旋状に形成された突出部41を不要物の掻き出しのために用いているが、例えばこのような突出部41を他の部材と噛合するように構成し、歯車としても用いるようにすることも考えられる。また、隣接する突出部41の間に形成される螺旋状の溝部に例えば潤滑油やグリスを注入してもよい。2つの部材を一体的に積層造形した構造では潤滑液やグリスが摺動面に行き渡りにくいという問題があるが、上述の工程により製造された3次元構造体では潤滑油やグリスが軸受部23A,23Bと軸部34A,34Bとの間に行き渡りやすくなっている。すなわち、上述した連絡通路28A,28Bから隣接する突出部41の間の溝部に潤滑油やグリスを導入し、軸部34A,34Bを上記と反対の方向に回転させることにより、連絡通路28A,28Bから導入される潤滑油やグリスを螺旋状に形成された突出部41によって軸方向に沿って奥の方に誘導することができる。
【0035】
上述した実施形態において図示されているベース部材2及び蓋部材3は例示に過ぎず、本発明に係る3次元構造体を構成する第1の部材及び第2の部材の形状や機能は、上述したものに限られるものではない。
【0036】
以上述べたように、本発明に係る3次元構造体は、以下のような構成を採用することが可能である。
[構成1]
軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、
軸方向に沿って延び、前記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材と
を備え、
前記第2の部材の前記軸部は、
周方向に沿って配置される複数の頂面であって、前記軸受部の前記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で前記軸受面に対面する複数の頂面と、
前記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を前記周方向に接続する複数の接続部であって、前記複数の頂面よりも前記軸受部の前記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部と
を有する、
3次元構造体。
【0037】
[構成2]
上記構成1において、
前記第2の部材の前記軸部の前記複数の頂面のそれぞれの前記周方向における位置は前記軸方向に沿って変化する、3次元構造体。
【0038】
[構成3]
上記構成1又は2において、
前記第1の部材の前記軸受部には、前記軸受面の半径方向内側に形成される内部空間を前記軸受部の外部に接続する連絡通路が形成されている、3次元構造体。
【0039】
また、本発明に係る3次元構造体の製造方法は、以下のような構成を採用することが可能である。
[構成4]
軸受面を有する軸受部を含む第1の部材と、軸方向に沿って延び、前記軸受部に対して回転可能に連結される軸部を含む第2の部材とを備える3次元構造体を製造する方法であって、
第1の材料層及び第2の材料層を積層方向に積層して前記第1の材料層により構成される前記第1の部材及び前記第2の材料層により構成される前記第2の部材を形成する積層造形工程を有し、
前記積層造形工程は、前記第1の材料層及び前記第2の材料層を同一の積層平面上で連続的に形成する連続層形成工程を前記積層方向に繰り返すことで前記軸受部及び前記軸部を形成する軸構造造形工程を含み、
前記軸構造造形工程では、
前記第1の材料層により、前記軸受部の前記軸受面を形成し、
前記第2の材料層により、周方向に沿って配置される複数の頂面であって、前記軸受部の前記軸受面から半径方向に所定の離間距離だけ離れた位置で前記軸受面に対面する複数の頂面と、前記複数の頂面のうち隣接する頂面の間を前記周方向に接続する複数の接続部であって、前記複数の頂面よりも前記軸受部の前記軸受面から半径方向に離れた位置にある複数の接続部とを形成する、
方法。
【0040】
[構成5]
上記構成4において、
前記積層造形工程の後に、前記第1の部材の前記軸受部に対して前記第2の部材の前記軸部を回転する回転工程をさらに有する、3次元構造体の製造方法。
【0041】
[構成6]
上記構成4又は5において、
前記軸構造造形工程において、前記軸部の前記複数の頂面及び前記複数の接続部のそれぞれの前記周方向における位置が前記積層方向に沿って変化するように前記連続層形成工程を前記積層方向に繰り返す、3次元構造体の製造方法。
【0042】
[構成7]
上記構成4から6のいずれかにおいて、
前記積層造形工程は、前記軸構造造形工程の前又は後に、前記軸受部の前記軸受面の半径方向内側に形成される内部空間を前記軸受部の外部に接続する連絡通路が前記軸受部に形成されるように前記第1の材料層を積層する通路形成工程をさらに含む、
3次元構造体の製造方法。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 3次元構造体
2 ベース部材(第1の部材)
3 蓋部材(第2の部材)
20 板部
23A,23B 軸受部
26 軸孔
26A 内周面(軸受面)
28A,28B 連絡通路
30 蓋本体
32 連結部
33 基部
34A,34B 軸部
40 コア部
41 突出部
42 頂面
43 側面
44 外周面
45 接続部
S 内部空間
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B