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特開2025-6378打楽器およびボトムフレームの補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006378
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】打楽器およびボトムフレームの補強方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/10 20200101AFI20250109BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G10D13/10 160
G10H1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107133
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮賢
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478LL00
(57)【要約】
【課題】ボトムフレームの放射部を補強しつつ、外観を向上できる打楽器およびボトムフレームの補強方法を提供すること。
【解決手段】放射部21の下面に形成される凹部24a~24cは、ボトムフレーム2の中央部20側から外周側に向けて径方向に延びる溝状に形成される。これにより、ボトムフレーム2の放射部21に対し、リブの形成を不要にすること、或いは形成するリブの数を減らすことを可能にしつつ、ボトムフレーム2(放射部21)の剛性を凹部24a~24cによって確保できる。よって、ボトムフレーム2を樹脂で成形した場合でも、放射部21にヒケが生じることを抑制できるので、ボトムフレーム2を凹部24a~24cで補強しつつ、打楽器100の外観を向上できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打面を形成するヘッドと、前記ヘッドに上端側の開口が覆われる筒状の胴部を有した筐体と、前記筐体の底面を構成するボトムフレームと、を備え、
前記ボトムフレームは、その中央部分を構成する中央部と、前記中央部から前記筐体の外縁側へ放射状に延びる複数の放射部と、前記複数の放射部の外縁同士を周方向で接続する外周部と、を備え、
前記放射部の下面には、前記中央部側から前記外周部側へ延びる凹部が形成されることを特徴とする打楽器。
【請求項2】
前記凹部は、前記胴部の径方向で連続する溝状に形成されることを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項3】
前記ボトムフレームよりも硬質な材料を用いて形成され、前記外周部に固定される環状の補強フレームを備え、
前記補強フレームは、その内周側に突出して前記放射部に固定される突出部を備えることを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項4】
前記胴部の外周側に設けられる締結部と、前記締結部に締結されることで前記ヘッドに張力を付与するためのテンションボルトと、を備え、
前記締結部は、前記凹部の外周側に設けられることを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項5】
前記ヘッドに接触して前記ヘッドへの打撃時の振動を検出するヘッドセンサを備え、
前記放射部の上面側には、前記凹部に対応する形状の凸部が形成され、
前記ヘッドセンサは、前記凸部に支持されることを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項6】
前記放射部には、周方向における寸法が外周側に向けて徐々に小さく又は大きくなる部位が形成され、
前記凹部の周方向における寸法は、前記放射部の周方向における寸法に対応して外周側に向けて徐々に小さく又は大きく形成されることを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項7】
打面を形成するヘッドと、前記ヘッドに上端側の開口が覆われる筒状の胴部を有した筐体と、前記筐体の底面を構成するボトムフレームと、を備え、
前記ボトムフレームが、その中央部分を構成する中央部と、前記中央部から前記筐体の外縁側へ放射状に延びる複数の放射部と、前記複数の放射部の外縁同士を周方向で接続する外周部と、を備える打楽器における前記ボトムフレームの補強方法であって、
前記中央部側から前記外周部側へ延びる凹部を前記放射部の下面に形成することを特徴とするボトムフレームの補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打楽器およびボトムフレームの補強方法に関し、特に、ボトムフレームの放射部を補強しつつ、外観を向上できる打楽器およびボトムフレームの補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、打楽器の筐体の底面を構成するセンサフレーム4(ボトムフレーム)の連結部4cに、略三角形状の開口部を形成する技術が記載されている。開口部は、センサフレーム4の周方向に複数並んでいるため、ヘッド5を打撃した時の振動が開口部を通して外部に放出され易くなる。これにより、ヘッド5への打撃時の振動が筐体内で反響することを抑制できるので、かかる打撃時に生じる音量を低減できる。
【0003】
この一方で、センサフレーム4に複数の開口部を形成すると、センサフレーム4の剛性が低下し易くなる。センサフレーム4の剛性を確保するためには、周方向に並ぶ開口部の間で放射状に延びる部位(以下、「放射部」という。)に、補強用のリブを形成することが考えられる。補強用のリブとしては、例えば特許文献2のフレーム3(ボトムフレーム)を補強するリブ34が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-198657号公報(例えば、段落0044,0048、図2
【特許文献2】特開2021-105702号公報(例えば、段落0044、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放射部の上面に複数のリブを設ける構成では、ボトムフレームを樹脂で成形する場合に、リブとは反対側の放射部の下面にヒケが生じて外観が悪化し易いという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ボトムフレームの放射部を補強しつつ、外観を向上できる打楽器およびボトムフレームの補強方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の打楽器は、打面を形成するヘッドと、前記ヘッドに上端側の開口が覆われる筒状の胴部を有した筐体と、前記筐体の底面を構成するボトムフレームと、を備え、前記ボトムフレームは、その中央部分を構成する中央部と、前記中央部から前記筐体の外縁側へ放射状に延びる複数の放射部と、前記複数の放射部の外縁同士を周方向で接続する外周部と、を備え、前記放射部の下面には、前記中央部側から前記外周部側へ延びる凹部が形成される。
【0008】
本発明のボトムフレームの補強方法は、打面を形成するヘッドと、前記ヘッドに上端側の開口が覆われる筒状の胴部を有した筐体と、前記筐体の底面を構成するボトムフレームと、を備え、前記ボトムフレームが、その中央部分を構成する中央部と、前記中央部から前記筐体の外縁側へ放射状に延びる複数の放射部と、前記複数の放射部の外縁同士を周方向で接続する外周部と、を備える打楽器における前記ボトムフレームの補強方法であって、前記中央部側から前記外周部側へ延びる凹部を前記放射部の下面に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の打楽器の分解斜視図である。
図2】(a)は、ボトムフレームを下面側から視た斜視図であり、(b)は、ラグ及び緩み止めの斜視図である。
図3】打楽器の筐体の分解斜視図である。
図4】(a)は、図3のIVa-IVa線における打楽器の部分拡大断面図であり、(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における放射部の断面図である。
図5図3のV-V線における打楽器の部分拡大断面図である。
図6】第2実施形態の打楽器の部分拡大断面図である。
図7】第3実施形態の打楽器の斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線における打楽器の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施形態の打楽器100の全体構成について説明する。図1は、第1実施形態の打楽器100の分解斜視図である。なお、図1では、図面を簡素化するために、トップフレーム3の支持部31に隠れているボトムフレーム2の内部の構造のうち、後述する突起部29(ヘッドセンサ10を支持する部位)のみを図示している。
【0011】
図1に示すように、打楽器100は、アコースティックのドラムを模す電子打楽器であり、その本体部分を構成する筐体1を備える。筐体1は、その底面を構成する略円盤状のボトムフレーム2と、そのボトムフレーム2に重ねられるトップフレーム3と、を備える。ボトムフレーム2及びトップフレーム3は、ヘッドセンサ10やリムセンサ11を支持するためのフレームであるが、これらの各センサ10,11の支持構造については図5,6を参照して後述する。
【0012】
トップフレーム3は、筒状の胴部30と、その胴部30の内周側でリムセンサ11を支持する支持部31と、を備え、これらの各部30,31が樹脂材料を用いて一体に形成される。以下の説明においては、筒状の胴部30の軸と直交する方向を径方向と記載し、胴部30の軸回りの方向を周方向と記載して説明する。
【0013】
胴部30の上面側の開口部分が膜状のヘッド4によって覆われることにより、ヘッド4の上面が打楽器100の打面となる。ヘッド4は、合成繊維を編み上げたメッシュ用いて円盤状に形成され、ヘッド4の外縁には円環状のヘッド枠40が固定される。
【0014】
ヘッド枠40は、樹脂材料を用いて形成されており、ヘッド4とヘッド枠40とが金型成形によって一体的に成形される。なお、ヘッド枠40を樹脂以外の材料(例えば、金属や木材)を用いて形成し、接着などによってヘッド4にヘッド枠40を接合しても良い。
【0015】
ヘッド4は、円環状のリム5と共にフープ6によって筐体1に取り付けられ、この取付状態においては、ヘッド4の外縁部分が全周にわたってリム5に取り囲まれる。リム5は、演奏者がヘッド4とリム5とを同時に打撃するリムショットや、リム5のみを打撃するリムオンリーショットを行うための部材である。リム5は、演奏者による打撃を受ける環状の被打撃部50と、その被打撃部50の外周面に形成される略直方体状の被挟持部51と、を備え、これらの各部50,51がフープ6よりも軟質な樹脂材料(ゴムやエラストマなど)を用いて一体に形成される。
【0016】
被挟持部51は、被打撃部50の周方向等間隔(又は不等間隔)に複数(本実施形態では、16箇所に)形成され、フープ6の内周面には、被挟持部51と対応する位置に複数の収容部60が形成される。収容部60は、被挟持部51と対応する形状の凹みであり、リム5がヘッド4の上面に取り付けられる際には、被挟持部51が収容部60に収容される。なお、このリム5の取り付け構造は、公知の構成が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、公知の構成としては、特開2019-148623号公報のリム5の取り付け構造が例示される。
【0017】
フープ6には、テンションボルトB1を挿入するための貫通孔61(図4(a)参照)が周方向等間隔に形成され、筐体1には、テンションボルトB1を締結する(ねじ込む)ためのラグ7が周方向等間隔に複数(本実施形態では、6箇所に)設けられる。
【0018】
ラグ7は、トップフレーム3の胴部30よりも外周側に配置される締結部70を備え、締結部70には、上下に延びるめねじ孔70aが形成される。フープ6の収容部60にリム5の被挟持部51を嵌め込みつつ、ヘッド4のヘッド枠40をフープ6に引っ掛けた状態で、テンションボルトB1をラグ7のめねじ孔70aに締結することによってヘッド4に張力が付与される。次いで、図2及び図3を参照して筐体1の詳細構成を説明する。
【0019】
図2(a)は、ボトムフレーム2を下面側から視た斜視図であり、図2(b)は、ラグ7及び緩み止め8の斜視図である。図3は、打楽器100の筐体1の分解斜視図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、筐体1のボトムフレーム2は、その中央部分を形成する円形(略円盤状)の中央部20と、その中央部20から放射状に延びる複数の放射部21と、それら複数の放射部21の外縁同士を接続する円環状の外周部22と、を備え、これらの各部20~22が樹脂材料を用いて一体に形成される。
【0021】
中央部20は、胴部30の軸を含む領域に設けられる部位である。なお、中央部20には、複数の凹部(中央部20を区画する板状のリブ)や、基板などの電子部品が設けられているが、図2では、図面を簡素化するためにそれらの凹部や電子部品の図示を省略している。
【0022】
放射部21は、中央部20から外周側に向けて径方向に沿って延びている。この放射部21が周方向等間隔に複数(本実施形態では、6本)並んでいるため、複数の放射部21の間には、ボトムフレーム2を上下に貫通する略三角形状の放音孔23が複数(本実施形態では、6箇所に)形成される。
【0023】
このような放音孔23を形成する構成は公知であるが(例えば、特開2004-198657号公報)、ボトムフレーム2に複数の放音孔23を形成すると、ヘッド4(図1参照)を打撃した時の振動が放音孔23を通して外部に放出され易くなる一方で、ボトムフレーム2の剛性が低下し易くなる。これに対して本実施形態では、ボトムフレーム2を補強するための凹部24a~24cが放射部21に形成される(図2参照)。この凹部24a~24cは、ラグ7(図2(b)参照)を固定するための部位である。
【0024】
放射部21の下面に形成される凹部24a~24cは、ボトムフレーム2の中央部20側から外周側に(径方向に沿って)延びる溝状に形成される。これにより、ボトムフレーム2の放射部21に対し、従来技術のようなリブ(例えば、特開2021-105702号公報のリブ34)の形成を不要にすること、或いは形成するリブの数を減らすことを可能にしつつ、ボトムフレーム2(放射部21)の剛性を凹部24a~24cによって確保できる。よって、ボトムフレーム2を樹脂で成形した場合でも、放射部21にヒケが生じることを抑制できるので、ボトムフレーム2を凹部24a~24cで補強しつつ、打楽器100の外観を向上できる。
【0025】
凹部24aは、中央部20側から外周側に向けて延びる凹みであり、凹部24bは、凹部24aの外周側の端部に連なるように形成される凹みである。これらの凹部24a,24bは、周方向における放射部21の中央を含む領域に形成され、凹部24aが形成される領域では、周方向における放射部21の幅寸法(周方向における放射部21の厚み)が凹部24bに近付くにつれて徐々に小さく形成される。また、凹部24b(凹部24c)が形成される領域では、周方向における放射部21の幅寸法が外周側に向かうにつれて徐々に大きく形成される。
【0026】
これに対し、周方向における凹部24aの幅寸法(周方向における凹部24aの開口幅)も同様に、凹部24bに近付くにつれて徐々に小さく形成され、同方向における凹部24bの幅寸法も、外周側に向かうにつれて徐々に大きく形成される。これにより、放射部21の剛性をその長手方向(各凹部24a,24bが形成される領域)において均一に高めることができる。また、放射部21の幅寸法の変化に応じて凹部24a,24bの幅寸法を同様に変化させることにより、打楽器100の外観を向上できる。
【0027】
凹部24aの底面(下方側を向く面)は、外周側に向けて下降傾斜する平面であり(図4(a)参照)、放射部21の底面21aは、外周側に向けて徐々に上昇傾斜する湾曲面である(図4(a)参照)。よって、放射部21の底面21aに対する凹部24aの深さは、中央部20側から外周側にかけて徐々に浅く形成される。以下、放射部21の底面21aに対する凹部24a~24cの深さを単に「凹部24aの深さ」などと記載して説明する。
【0028】
凹部24aの外縁部分(外周側の端部)の深さよりも、凹部24bの内縁部分(内周側の端部)の深さが深く形成され、これらの凹部24a及び凹部24bの境界部分(接続部分)には段差が形成される。このような段差を形成することにより、放射部21の剛性を効果的に向上できる。
【0029】
凹部24bの底面は、その内縁から外縁側に向けて延びる水平面と、その水平面の外縁に接続され、外周側に向けて上昇傾斜する傾斜面と、から構成されている。この凹部24bの深さも、内周側から外周側にかけて徐々に浅くなっている。
【0030】
凹部24cの内縁は、凹部24bの内縁よりも外周側に位置しており、凹部24bの底面の周方向中央を含む領域に凹部24cが形成される。即ち、凹部24cは、凹部24bの底面よりも更に深く凹む溝であるため、これらの凹部24b,24cによって形成される段差によっても放射部21の剛性をより効果的に向上できる。
【0031】
凹部24b及び凹部24cは、いずれもボトムフレーム2の外縁まで延びており、これらの各凹部24b,24cを利用してラグ7が固定される。
【0032】
ラグ7は、締結部70の下端から内周側に延びてラグ7の下面を構成する下面部71と、その下面部71から立ち上がってボトムフレーム2に固定される固定部72と、を備え、これらの各部70~72が金属を用いて一体に形成される。
【0033】
締結部70には、締結部70の内周側(内周面)に開口70bを有する空洞70cが形成され、この空洞70cには上述しためねじ孔70aが繋がっている。ラグ7の下面部71は、締結部70(空洞70c)の下縁から内周側に延びる板状に形成され、周方向における下面部71の中央を含む領域から固定部72が上方に突出する。言い換えると、固定部72の側面(周方向を向く面)及び内周面の下端から下面部71がフランジ状に張り出している。
【0034】
締結部70の空洞70cには、テンションボルトB1(図1参照)の緩みを抑制するための緩み止め8が挿入される。緩み止め8は、締結部70の空洞70cの内部空間に対応する形状(略半円柱状)の本体部80と、その本体部80の下面から下方に突出する一対の脚部81と、を備え、これらの各部80,81が樹脂材料を用いて一体に形成される。
【0035】
本体部80には、上下に延びるめねじ孔82が形成されているため、緩み止め8を空洞70c内に挿入した状態で、テンションボルトB1を締結部70のめねじ孔70aに締結することにより、緩み止め8のめねじ孔82にもテンションボルトB1が締結される(緩み止め8にテンションボルトB1が締結された状態については、図4(a)参照)。
【0036】
固定部72は、径方向における寸法が周方向における寸法よりも長い略直方体状に形成され、この径方向に延びる略直方体状の固定部72が締結部70の空洞70c内まで延びている。緩み止め8の本体部80が空洞70cに挿入された状態においては、周方向に間隔を隔てる一対の脚部81が固定部72を挟むようにして配置される。よって、めねじ孔82にテンションボルトB1が締結される際に緩み止め8が回転しようとしても、その回転が一対の脚部81と固定部72との引っ掛かりによって規制される。
【0037】
このように、空洞70cの内部まで延びる固定部72に一対の脚部81を引っ掛けることにより、固定部72を利用して緩み止め8の回転を規制できる。更に、一対の脚部81を固定部72に引っ掛けた(本体部80を固定部72に載せた)状態で、緩み止め8を空洞70c側にスライドさせることにより、空洞70cへの緩み止め8の挿入を固定部72によって案内できる。よって、ラグ7の組み付け作業の作業性を向上できる。
【0038】
下面部71の外形(上面および側面)は、上述した凹部24bの底面および側面(底面を取り囲む面)と一致した形状に形成され、固定部72の外形も同様に、凹部24cと一致した形状に形成される。ラグ7の固定部72には、径方向(固定部72の長手方向)に並ぶ一対のめねじ孔73,74が形成される。この一対のめねじ孔73,74は、ボトムフレーム2の下面にラグ7を固定するためのものであり、ボトムフレーム2にラグ7を固定する際には、凹部24b及び凹部24cにラグ7の固定部72及び下面部71が嵌め込まれる。
【0039】
凹部24b及び凹部24cにラグ7が嵌め込まれた状態では、凹部24b及び凹部24cがラグ7によって覆われる一方、凹部24aは、ラグ7に覆われることなくボトムフレーム2の下面側に露出する。この場合、例えば凹部24aを分断するリブ(周方向に延びる板状の壁)を形成すると、放射部21の剛性は高められるものの、リブが打楽器100の下面側に露出して外観が悪化する。
【0040】
これに対して本実施形態では、凹部24aが径方向に連続する1本の溝状に形成される。つまり、上記のようなリブを凹部24aに形成することなく、各凹部24a~24cを形成することによって生じる段差で放射部21を補強している。これにより、ボトムフレーム2の剛性を確保しつつ、打楽器100の外観を向上できる。
【0041】
次いで、図3及び図4を参照して、このラグ7の取り付け構造を含めた筐体1の詳細構成を説明する。図4(a)は、図3のIVa-IVa線における打楽器100の部分拡大断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における放射部21の断面図である。なお、図4(a)では、胴部30の軸とテンションボルトB1とを含む平面で切断した切断部端面を図示し、図4(b)では、放射部21の切断部端面を図示しているが、図4(a)では、切断面よりも後方(紙面垂直方向奥側)に位置する放射部21の底面21aを実線で図示している。
【0042】
図3及び図4に示すように、ボトムフレーム2の放射部21及び外周部22には、ラグ7のめねじ孔73,74に対応する位置に、径方向に並ぶ一対の貫通孔25,26が形成される。この一対の貫通孔25,26は、放射部21及び外周部22を上下に貫通して凹部24cの底面に繋がっている。一対の貫通孔25,26は、固定ボルトB2によってラグ7をねじ止めするための孔であるが、この固定ボルトB2によって補強フレーム9も共締めされる。補強フレーム9は、ボトムフレーム2及びトップフレーム3と共に筐体1の骨格を形成するフレームである。
【0043】
補強フレーム9は、ボトムフレーム2の外周部22に重ねられる円環状の円環部90(図3参照)と、その円環部90から内周側に突出する突出部91と、を備え、これらの各部90,91が金属板を用いて一体に形成される。
【0044】
補強フレーム9の円環部90及び突出部91には、ボトムフレーム2の貫通孔25,26と対応する位置に一対の貫通孔92,93(図4(a)参照)が形成される。ボトムフレーム2及び補強フレーム9の各貫通孔25,26,92,93に挿入した固定ボルトB2をラグ7のめねじ孔73,74に締結することにより、ボトムフレーム2及び補強フレーム9がラグ7に共締めされる。
【0045】
このように、本実施形態では、ボトムフレーム2よりも硬質な材料(金属板)を用いて形成された補強フレーム9(円環部90)がボトムフレーム2の外周部22に固定される。補強フレーム9は、その内周側に突出して放射部21に固定(ねじ止め)される突出部91を備えるので、放射部21の剛性を突出部91によって効果的に高めることができる。
【0046】
また、ラグ7の固定部72は、胴部30(筐体1)の外周面よりも内周側に延び、固定ボルトB2によってボトムフレーム2(筐体1)の下面に固定されるので、ヘッド4に張力を付与するためのテンションボルトB1(図4(a)参照)と、ボトムフレーム2にラグ7を固定するための固定ボルトB2とを径方向でずらして配置できる。これにより、従来技術(例えば、特開2014-130373号公報)のように、筐体にラグを固定するためのボルトをラグの下方から締結する構造に比べ、ラグ7の上下方向における寸法を小さくできる。よって、ボトムフレーム2(筐体1)を薄型化できる。
【0047】
また、ボトムフレーム2(補強フレーム9)に上方側から挿入された固定ボルトB2が固定部72に締結されるので、固定ボルトB2の頭部がラグ7の下面側に露出することを抑制できる。よって、打楽器100の外観を向上できる。
【0048】
ここで、固定ボルトB2によってボトムフレーム2の下面にラグ7(固定部72)がねじ止めされるため、締結部70にテンションボルトB1を締結する際の荷重が固定ボルトB2を介してボトムフレーム2(筐体1)の下面に作用する。
【0049】
より具体的には、ボトムフレーム2(凹部24cの底面)の外縁とラグ7の固定部72との接触部分を接触点P(図4(a)参照)とすると、テンションボルトB1が締結部70に締結される際には、接触点Pを中心(支点)にして締結部70を上方に引っ張る一方、固定部72や固定ボルトB2を下方に引っ張るモーメントが生じ、これによってボトムフレーム2(筐体1)の下面には固定ボルトB2を介した荷重が作用する。
【0050】
これに対して本実施形態では、径方向に並ぶ2本の固定ボルトB2によってラグ7(固定部72)がボトムフレーム2の下面にねじ止めされるので、テンションボルトB1を締結する際にボトムフレーム2に作用する荷重を径方向の2箇所に分散できる。これにより、ボトムフレーム2を薄型化しつつ、テンションボルトBの締結時の荷重に対するボトムフレーム2(筐体1)の耐久性を確保できる。
【0051】
また、上述した通り、ボトムフレーム2よりも硬質な材料からなる環状の補強フレーム9がボトムフレーム2の上に重ねられ、それらの各フレーム2,9及び固定部72が固定ボルトB2によって共締めされる。これにより、テンションボルトB1を締結する際の荷重が最も作用する固定ボルトB2の近傍を、補強フレーム9によって効果的に補強できる。これによっても、ボトムフレーム2を薄型化しつつ、テンションボルトBの締結時の荷重に対するボトムフレーム2(筐体1)の耐久性を確保できる。
【0052】
また、凹部24a~24cが形成された放射部21の外周側(径方向で並ぶ位置)に締結部70が設けられるため、ボトムフレーム2の剛性が比較的高い領域でテンションボルトB1の締結時の荷重を受けることができる。よって、ボトムフレーム2を薄型化しつつ、テンションボルトBの締結時の荷重に対するボトムフレーム2(筐体1)の耐久性を確保できる。
【0053】
また、ボトムフレーム2(筐体1)の下面に形成された凹部24b,24cにはラグ7(下面部71及び固定部72)が嵌め込まれるので、固定部72の周囲におけるボトムフレーム2(筐体1)の剛性を凹部24b,24cによって効果的に向上できる。更に、凹部24b,24cにラグ7を嵌め込むことにより、ボトムフレーム2の下面側に生じる段差をラグ7で埋めることができるので、打楽器100の外観を向上できる。
【0054】
上述した通り、ボトムフレーム2及び補強フレーム9は、固定ボルトB2によってラグ7に共締めされているが、補強フレーム9には、固定ボルトB3,B4によってボトムフレーム2及びトップフレーム3がねじ止めされる。
【0055】
具体的には、補強フレーム9の貫通孔92,93の間には、径方向に並ぶ一対のめねじ孔94,95が形成される。また、ボトムフレーム2の放射部21には、めねじ孔94と対応する位置に貫通孔27が形成され、トップフレーム3の支持部31(後述する環状部31c)には、めねじ孔95と対応する位置に貫通孔32(図4(a)参照)が形成される。
【0056】
補強フレーム9のめねじ孔94には、ボトムフレーム2(放射部21)の下方側から貫通孔27に挿入された固定ボルトB3が締結され、めねじ孔95には、トップフレーム3(支持部31)の上方側から貫通孔32に挿入された固定ボルトB4が締結される。これらの固定ボルトB3,B4は、一対の固定ボルトB2と共に径方向に並んでいる。これにより、テンションボルトB1の締結時の荷重が最も作用する固定ボルトB2の近傍において、ボトムフレーム2、トップフレーム3、及び補強フレーム9からなる筐体1を効果的に補強できる。よって、筐体1を薄型化しつつ、テンションボルトB1の締結時の荷重に対する筐体1の耐久性を確保できる。
【0057】
このように、本実施形態では、金属板を用いて形成された補強フレーム9にボトムフレーム2及びトップフレーム3がねじ止めされるので、筐体1の剛性を確保する機能を主に補強フレーム9に担わせることができ、その分、ボトムフレーム2及びトップフレーム3の厚みを薄くできる。よって、筐体1の剛性を確保しつつ、筐体1を薄型化できる。
【0058】
次いで、図3図5を参照して、ヘッド4及びリム5への打撃時の振動をヘッドセンサ10及びリムセンサ11で検出する構成について説明する。図5は、図3のV-V線における打楽器100の部分拡大断面図である。なお、図5では、胴部30の軸と突起部29とを含む平面で切断した打楽器100の切断部端面を図示しているが、切断面よりも後方(紙面垂直方向奥側)に位置する1本の第1接続部31b(図3参照)を模式的に図示している。
【0059】
まず、リム5への打撃について説明する。図4(a)に示すように、リム5は、トップフレーム3の胴部30の上方側にヘッド4を介して支持されるので、リム5が打撃された際の振動は、主に胴部30を介して支持部31に伝達される。
【0060】
以下の説明においては、板状の支持部31のうち、胴部30の軸を含む領域でリムセンサ11を支持する部位を中央部31a、その中央部31aから放射状に延びる部位を第1接続部31b、周方向に並ぶ複数(本実施形態では、6本)の第1接続部31bの外縁同士を環状に接続する部位を環状部31c(図3参照)として説明する。
【0061】
第1接続部31bは、トップフレーム3の中央部31a及び環状部31cを径方向に沿って(直線状に)接続しており、リム5への打撃時の振動は、胴部30、環状部31c及び第1接続部31b、及び中央部31aを介してリムセンサ11に伝達される。リムセンサ11は、円盤状の圧電素子であり、クッション性のある両面テープを介して中央部31aに接着されている(図5参照)。
【0062】
リムセンサ11で振動が検出されると、その検出結果に基づく楽音信号が音源(図示せず)により生成され、その楽音信号がアンプやスピーカ(共に図示せず)に出力されることにより、電子楽音がスピーカから放音される(後述するヘッドセンサ10においても同様である)。
【0063】
リムセンサ11を支持する支持部31(中央部31a、第1接続部31b、及び環状部31cから構成されるフレーム)は、その周方向の全周にわたって(環状部31cを介して)胴部30に接続されている。これにより、周方向においてリム5のどの位置が打撃された場合であっても、その打撃による振動が第1接続部31bを介して中央部31aのリムセンサ11に伝達され易くなる。
【0064】
また、ボトムフレーム2によるヘッドセンサ10の支持構造(図5参照)の詳細は後述するが、ヘッドセンサ10を支持するボトムフレーム2と、リムセンサ11を支持するトップフレーム3とが別部品である。よって、リム5への打撃時の振動がヘッドセンサ10で誤検出されることや、ヘッド4への打撃時の振動がリムセンサ11で誤検出されることを抑制できるので、リム5への打撃の検出精度を向上できる。
【0065】
また、胴部30(環状部31c)と中央部31aとを接続する第1接続部31bは、周方向に複数並べられるため、第1接続部31b同士の間には貫通孔が形成される。このような貫通孔を形成することにより、ヘッド4への打撃時の振動が支持部31で反響することを抑制できる。更に、支持部31の第1接続部31b同士の間に貫通孔を形成しつつ、ボトムフレーム2にも放音孔23を形成することにより、ヘッド4への打撃時の振動が支持部31の貫通孔とボトムフレーム2の放音孔23とを通して外部に放出され易くなる。よって、ヘッド4への打撃時に生じる音量を低減できる。
【0066】
また、胴部30は、第1接続部31bを備える支持部31と一体に形成されているため、リム5への打撃時の振動が胴部30から第1接続部31bに伝達され易くなる。これにより、リム5への打撃時の振動が中央部31aのリムセンサ11で検出され易くなるので、リム5への打撃の検出精度を向上できる。
【0067】
ここで、上述した通り、トップフレーム3の下面には、ボトムフレーム2が補強フレーム9を介して(固定ボルトB2~B4によって)ねじ止めされているが、例えば、ボトムフレーム2や補強フレーム9を第1接続部31bにねじ止めすることも可能である。しかしながら、ボトムフレーム2や補強フレーム9を第1接続部31bにねじ止めすると、そのねじ止め部分によって第1接続部31bの振動(撓み)が阻害されてしまう。
【0068】
これに対して本実施形態では、ボトムフレーム2及び補強フレーム9は、第1接続部31bよりも外周側でトップフレーム3の下面に(固定ボルトB4によって)ねじ止めされるので、かかるねじ止め部分が第1接続部31bの振動を阻害することを抑制できる。よって、リム5への打撃時に第1接続部31bが振動し易くなるので、リム5への打撃時の振動がリムセンサ11で検出され易くなる。
【0069】
また、後述する第2実施形態の打楽器200(図6参照)のように、補強フレーム9を省略してボトムフレーム202にトップフレーム3を直接ねじ止めすることも可能であるが、樹脂製の各フレーム202,3同士をねじ止めする構造では、そのねじ止め部分の剛性が低くなる。このねじ止め部分の剛性が低い場合、リム5への打撃の衝撃によってボトムフレーム2が振動し易くなったり、剛性の低いねじ止め部分で振動が減衰されたりするため、リム5への打撃時の振動を、第1接続部31bを介してリムセンサ11に効率良く伝達することができない。
【0070】
これに対して本実施形態では、ボトムフレーム2及びトップフレーム3よりも硬質な補強フレーム9がボトムフレーム2及びトップフレーム3の間にねじ止めされるため、それらの各フレーム2,3,9の連結部分の剛性を高めることができる。これにより、リム5への打撃の衝撃によってボトムフレーム2が振動することや、各フレーム2,3,9の連結部分で振動が減衰されたりすることを抑制できる。よって、リム5への打撃時の振動を、第1接続部31bを介してリムセンサ11に効率良く伝達できる。
【0071】
また、支持部31には、第1接続部31bから分岐する第2接続部31d(図3参照)が形成される。第2接続部31dは、径方向に対して傾斜した角度で直線状に延びており、第1接続部31bの略中央部分(径方向における第1接続部31bの両端よりも中央側の部位)と、環状部31cとが第2接続部31dによって接続される。
【0072】
このように、中央部31aよりも外周側で第1接続部31bから分岐する第2接続部31dを胴部30(環状部31c)に接続することにより、胴部30から第1接続部31bに繋がる振動の伝達経路を第2接続部31dによって増大できる。よって、リム5への打撃時の振動がリムセンサ11に伝達され易くなるので、リム5への打撃の検出精度を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態では、周方向に並ぶ第1接続部31bの各々に対し、2本の第2接続部31dが第1接続部31bを挟んだ対称の形状になっている。即ち、上面視において、径方向(第1接続部31b)に沿う直線を対象軸にして2本の第2接続部31dが線対称の形状になっているが、かかる2本の第2接続部31dを非対称に形成しても良い。
【0074】
第2接続部31dは、各第1接続部31bの周方向両側に形成される(各第1接続部31bから2本の第2接続部31dが分岐する)ため、トップフレーム3の周方向においては、第1接続部31bと第2接続部31dとが隣り合う領域と、第2接続部31d同士が隣り合う領域とが存在する。
【0075】
周方向で隣り合う第2接続部31d同士は、第3接続部31eによって周方向で接続される。第3接続部31eは、周方向に沿う円弧状に延びて第2接続部31dの略中央部分(径方向における第2接続部31dの両端よりも中央側の部位)同士を接続する。
【0076】
周方向で隣り合う第2接続部31d同士を第3接続部31eで接続することにより、胴部30から第1接続部31bに繋がる振動の伝達経路を第3接続部31eによって更に増大できる。よって、リム5への打撃時の振動がリムセンサ11に伝達され易くなるので、リム5への打撃の検出精度を向上できる。
【0077】
周方向に並ぶ各第1接続部31bは、上下方向でボトムフレーム2の放音孔23(図3参照)と重なる位置に形成される。即ち、図示は省略するが、ボトムフレーム2を下方から視た場合には、放音孔23の周方向中央を含む領域に第1接続部31bが配置されるようになっている。一方、第1接続部31bから分岐する2本の第2接続部31dは、径方向に延びる放音孔23(放射部21)の縁に沿って配置される。このように、放音孔23(放射部21)に対応する形状で各接続部31b,31dを形成することにより、打楽器100を下面視した際の外観を向上できる。
【0078】
ここで、胴部30(環状部31c)から中央部31aに向けた振動の伝達経路を増大させることを目的とする場合、例えば第2接続部31dの一端を第1接続部31bではなく中央部31aに接続する構成や、第3接続部31eと中央部31aとを繋ぐ接続部分を更に設ける構成を採用できる。しかしながら、そのような構成では、振動の伝達経路は増やすことができるものの、中央部31a自体の振動(第1接続部31bの撓みに伴う中央部31aの上下の変位)を拘束する点が増えてしまう。よって、結果としてリム5への打撃に対するリムセンサ11の感度が低下し易くなる。
【0079】
これに対して本実施形態では、径方向に延びる第1接続部31bのみが中央部31aに接続される。これにより、中央部31a自体の振動を拘束する点を少なくできる一方、胴部30(環状部31c)の近傍では多数の振動伝達経路を形成できる。よって、リム5への打撃に対するリムセンサ11の感度を向上できる。
【0080】
次いで、ヘッド4への打撃について説明するが、まず、ヘッドセンサ10の支持構造について説明する。上述した通り、ボトムフレーム2の放射部21の底面21aには凹部24a~24cが形成されているが、これらの凹部24a~24cが形成されることに伴い、放射部21の上面側には凸部が形成される。以下の説明においては、凹部24aに対応する凸部28の構成について説明する。
【0081】
図4及び図5に示すように、凹部24aが形成される領域においては、放射部21が略一定の厚みの板状に形成されるため、放射部21の上面側には凹部24aに対応する凸部28が形成される。より具体的には、放射部21は、下面が凹部24aの底面(上面が凸部28の上面)となる第1板21bを備え、この第1板21bの周方向(図4(b)の左右方向)両端部からは一対の第2板21cが下方に延びている。第1板21b及び第2板21cによって取り囲まれる空間の内縁(図4(a)の右側の端部)が第3板21dによって閉塞され、これらの第1~3板21b~21dによって凹部24aが形成される。
【0082】
また、一対の第2板21cの下端からは径方向外側(互に離れる方向)に向けて一対の第4板21e(図4(b)参照)が延びており、この一対の第4板21eの径方向外側(第2板21cとは反対側)の端部からは第5板21fが上方に延びている。第4板21eは、放射部21の底面21aを構成する部位であり、第5板21fは、周方向を向く放射部21の側面を構成する部位である。
【0083】
このように、放射部21の第1~3板21b~21dによって凹部24aが形成されることに伴い、放射部21の上面側には凸部28が形成され、この凸部28の上面には、柱状に立ち上がる一対の突起部29が一体に形成される(図3及び図5参照)。
【0084】
図5に示すように、突起部29は、各第1接続部31b(第2接続部31dよりも内周側の部位)の間を通して第1接続部31bよりも上方に突出しており、この突起部29の上面にプレート12を介してヘッドセンサ10が取り付けられる。
【0085】
このように、本実施形態では、各第1接続部31bの間を通してトップフレーム3の上方側に延びる突起部29にヘッドセンサ10を取り付けられる。これにより、ヘッドセンサ10を支持するボトムフレーム2の上にトップフレーム3を重ねる(リムセンサ11を支持する支持部31をボトムフレーム2よりも上方側で胴部30に接続すること)を可能にしつつ、ヘッドセンサ10をヘッド4に接触させることができる。
【0086】
リムセンサ11を支持するトップフレーム3を、ヘッドセンサ10を支持するボトムフレーム2の上に重ねることにより、リム5からリムセンサ11までの振動伝達経路を短くできる一方、リム5からヘッドセンサ10までの振動伝達経路を長くできる。よって、リム5への打撃時の振動がリムセンサ11で検出され易くなると共に、リム5への打撃時の振動がヘッドセンサ10で誤検出されること抑制できる。よって、リム5への打撃を精度良く検出できる。
【0087】
一対の突起部29は、径方向に沿って並んでおり、一対の突起部29を一組とすると、周方向等間隔に合計4組の突起部29が設けられる(図3参照)。即ち、本実施形態では、ヘッド4への打撃時の振動が4つのヘッドセンサ10によって検出される。
【0088】
一対の突起部29の各々にはめねじ孔29aが形成され、プレート12には、めねじ孔29aと対応する位置に貫通孔12aが形成される。貫通孔12aに挿入された固定ボルトB5を突起部29のめねじ孔29aに締結することにより、突起部29の上面にプレート12が固定(支持)される。
【0089】
プレート12の上面には、クッション性のある両面テープ10aによって円盤状のセンサ10b(圧電素子)が接着され、このセンサ10bの上面にはクッション10cが接着される。これらの両面テープ10a、センサ10b、及びクッション10cによってヘッドセンサ10が構成される。
【0090】
クッション10cは、スポンジやゴム、熱可塑性エラストマ等の柔軟性のある材料を用いて形成される円錐台状の緩衝材であり、クッション10cの上端はヘッド4の下面に接触する。
【0091】
プレート12は、径方向(自身の長手方向)における寸法が周方向(幅方向)における寸法よりも大きい略長方形(略楕円形)の板であり、その長手方向の一端側(以下、「基端側」という)が突起部29に支持される。一方、プレート12の長手方向他端側(以下、「先端側」という)はボトムフレーム2に支持されていない。
【0092】
即ち、ヘッドセンサ10は、プレート12に片持ち状態で支持されるので、クッション10cの直上付近でヘッド4が打撃された際にプレート12が撓むように変形する。このプレート12の撓みによってヘッド4への打撃時の衝撃を吸収できるので、ヘッドセンサ10(クッション10c)の直上付近が打撃された場合に、センサ10bの出力値が極端に大きくなる(所謂ホットスポットが生じる)ことを抑制できる。これにより、ヘッドセンサ10の直上に近い打面領域と、ヘッドセンサ10から遠い打面領域とでセンサ10bの感度にバラつきが生じることを抑制できる。よって、ヘッド4への打撃に対するヘッドセンサ10の感度分布を均一化できる。
【0093】
ここで、例えば、ボトムフレーム2における比較的剛性が低い領域でプレート12(ヘッドセンサ10)が片持ち支持される構成であると、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃がボトムフレーム2の撓みによっても吸収され易くなる。このような構成の場合、ボトムフレーム2の成形時の厚み(剛性)の誤差などにより、ボトムフレーム2が必要以上に撓んで打撃力が過剰に吸収されることがあり、ヘッドセンサ10の感度に誤差が生じ易くなる(狙いの出力値が得られ難くなる)。
【0094】
これに対して本実施形態では、ボトムフレーム2(放射部21)の下面に凹部24aを形成することにより、ヘッドセンサ10を支持する部位の剛性が高められている。即ち、ボトムフレーム2(放射部21)の上面側には、凹部24aに対応する形状の凸部28が形成され、この凸部28に設けられた突起部29にプレート12が取り付けられるため、ヘッドセンサ10は、ボトムフレーム2の比較的剛性が高い領域に支持される。これにより、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃でボトムフレーム2(凸部28)が撓むことを抑制できる。
【0095】
また、プレート12の長手方向に沿って並ぶ一対の突起部29にプレート12が固定されるので、この一対の突起部29によってもボトムフレーム2(凸部28)の剛性を向上できる。よって、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃でボトムフレーム2(凸部28)が撓むことを抑制できる。
【0096】
また、径方向に並ぶ一対の突起部29のうち、ボトムフレーム2の中央側に位置する突起部29は、凸部28の内周面を構成する第3板21dと上下方向で重なる位置に形成される。また、図示は省略するが、一対の突起部29は、周方向を向く凸部28の側面を構成する第2板21c(図4(b)参照)と上下方向で重なる位置に形成されている。第2板21c及び第3板21dの直上に突起部29を形成することにより、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃でボトムフレーム2(凸部28)が撓むことを効果的に抑制できる。
【0097】
このように、ヘッドセンサ10の直上付近が打撃された際のボトムフレーム2(凸部28)の撓みを抑制することにより、かかる打撃による衝撃がプレート12の撓みだけで吸収され易くなる。よって、ヘッドセンサ10の感度に誤差が生じ難くなる(狙いの出力値が得られ難くなる)ので、ヘッド4への打撃を精度良く検出できる。
【0098】
また、プレート12の長手方向に沿って並ぶ一対の突起部29にプレート12が固定されるので、ボトムフレーム2にプレート12を強固に固定できる。これにより、ヘッド4への打撃を精度良く検出できる。
【0099】
ここで、本実施形態では、打楽器100に複数(本実施形態では、4つ)のヘッドセンサ10が設けられるが、例えば、これら4つのヘッドセンサ10を1つのプレート12で支持することも可能である。このような構成の一例として、十字形に形成したプレート12の中央を突起部29に固定する一方、十字形のプレート12の4つの先端部分にヘッドセンサ10を取り付ける構成が例示される。この構成においても、片持ち状態のプレート12の先端部分にヘッドセンサ10が支持されることになるので、各ヘッドセンサ10の直上付近の打撃をプレート12の撓みによって吸収できる。
【0100】
しかしながら、1つのプレート12に複数のヘッドセンサ10を取り付ける構成であると、いずれかのヘッドセンサ10の直上付近が打撃された場合に、その打撃による振動がプレート12を介して他のヘッドセンサ10(センサ10b)に伝達されてしまう。このような振動の干渉が生じると、ヘッド4への打撃を精度良く検出することができない。
【0101】
これに対して本実施形態では、1枚のプレート12の先端側に1つのヘッドセンサ10が取り付けられる。これにより、複数のヘッドセンサ10のうちのいずれかのヘッドセンサ10の直上付近が打撃された場合に、その打撃による振動が他のヘッドセンサ10(センサ10b)に伝達されることを抑制できる。よって、ヘッド4への打撃を精度良く検出できる。
【0102】
また、プレート12の長手方向における基端側がボトムフレーム2に固定される一方、プレート12の先端側の上面にヘッドセンサ10が支持されるので、クッション10cの直上付近でヘッド4が打撃された際にプレート12が撓み易くなる。これにより、ヘッド4への打撃時の衝撃が吸収され易くなるので、その打撃による振動がプレート12及びボトムフレーム2を介して他のヘッドセンサ10に伝達されることを効果的に抑制できる。
【0103】
このように、ヘッド4への打撃時の振動はヘッドセンサ10で検出されるが、その打撃の強度(ベロシティ)や打撃位置は、各ヘッドセンサ10の出力値を合算した値に基づいて算出される。この合算値の算出方法としては、例えば各ヘッドセンサ10の出力波形のピーク値を足し合わせた値(又はその値をセンサの数で割った平均値)を合算値とする構成や、各ヘッドセンサ10の出力波形を合成し、その合成波形のピーク値を合算値とする構成が例示される。
【0104】
各ヘッドセンサ10の出力値の合算値の大きさに基づいてヘッド4への打撃の強度や打撃値を算出する場合には、各ヘッドセンサ10を極力近付けて配置することが好ましい。これは、ヘッドセンサ10の距離が近いほど、ヘッド4が打撃された際の各ヘッドセンサ10の出力値(出力波形の位相やピーク値)に差が生じ難くなるためである。
【0105】
よって、本実施形態では、4つのプレート12の各々の先端を互いに突き合わせるようにしてボトムフレーム2の中央側に向けることにより、4つのヘッドセンサ10を片持ち支持しつつ極力近付けて配置している。そして、各ヘッドセンサ10は、図示しない基板上で直列に接続されており、各ヘッドセンサ10の出力波形を合成し、その合成波形のピーク値(各ヘッドセンサ10の出力値の合算値)の大きさに基づいてヘッド4への打撃の強度や打撃位置が算出される。
【0106】
各ヘッドセンサ10の出力値の合算値を用いることにより、いずれかのヘッドセンサ10の出力値が極端に大きくなったとしても、その大きな出力値が他のヘッドセンサ10の出力値によって平準化されるので、ヘッド4への打撃の強度や打撃位置を精度良く算出できる。
【0107】
次いで、図6を参照して、第2実施形態の打楽器200について説明するが、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図6は、第2実施形態の打楽器200の部分拡大断面図である。なお、図6では、打楽器200の切断部端面を図示しているが、切断面よりも後方(紙面垂直方向奥側)に位置する1本の第1接続部31bを模式的に図示している。
【0108】
図6に示すように、第2実施形態の打楽器200の筐体201は、第1実施形態の補強フレーム9が省略され、ボトムフレーム202の上にトップフレーム3が直接重ねされる。
【0109】
ボトムフレーム202には、トップフレーム3の貫通孔32と対応する位置にめねじ孔220が形成され、貫通孔32に挿入した固定ボルトB4をめねじ孔220に締結することによってボトムフレーム202にトップフレーム3が固定される。
【0110】
ボトムフレーム202の下面には、第1実施形態の締結部70、下面部71、及び固定部72等を備えるラグ7(図2参照)に相当する締結部221が一体に形成されており、第1実施形態で説明した凹部24a~24c(図2参照)のうち、凹部24b,24cが締結部221によって埋められる一方、締結部221の内周側(図6の右側)には凹部24aが形成される。
【0111】
図示は省略するが、本実施形態の打楽器200においても、第1実施形態と同様の周方向に並ぶ複数の放射部21(図2参照)が形成され、この放射部21の下面に凹部24aが形成される。これにより、放射部21にリブの形成を不要にすること、或いは形成するリブの数を減らすことを可能にしつつ、ボトムフレーム202(放射部21)の剛性を凹部24aによって確保できる。よって、ボトムフレーム202を樹脂で成形した場合でも、放射部21にヒケが生じることを抑制できるので、ボトムフレーム202を凹部24aによって補強しつつ、打楽器200の外観を向上できる。また、凹部24aは、径方向に連続する1本の溝状に形成されているので、ボトムフレーム202の剛性を確保しつつ、打楽器100の外観を向上できる。
【0112】
締結部221には、テンションボルトB1を締結するためのめねじ孔222が形成され、このめねじ孔222は、凹部24aの外周側(凹部24aと径方向で並ぶ位置)に形成される。テンションボルトB1が締結される締結部221(めねじ孔222)を、凹部24aが形成された放射部21の外周側に設けることにより、テンションボルトB1の締結時の荷重を剛性が高い領域で受けることができる。よって、テンションボルトB1の締結時の荷重に対するボトムフレーム202の耐久性を確保しつつ、ボトムフレーム202(筐体201)を薄型化できる。
【0113】
また、図6では、1本の第1接続部31bを模式的に図示しているが、この第1接続部31bは、第1実施形態と同様、周方向に複数並べられている。これにより、周方向においてリム5のどの位置が打撃された場合であっても、その打撃による振動が第1接続部31bを介して中央部31aのリムセンサ11に伝達され易くなる。また、ヘッドセンサ10を支持するボトムフレーム202と、リムセンサ11を支持するトップフレーム3とが別部品である。よって、リム5への打撃がヘッドセンサ10で誤検出されることや、ヘッド4への打撃がリムセンサ11で誤検出されることを抑制できるので、リム5への打撃の検出精度を向上できる。
【0114】
また、本実施形態においても、ボトムフレーム202に片持ち状態で支持されるプレート12の先端側にヘッドセンサ10(センサ10b及びクッション10c)が取り付けられるので、ヘッド4への打撃時の衝撃をプレート12の撓みによって吸収できる。これにより、ヘッドセンサ10(クッション10c)の直上付近が打撃された時のセンサ10bの出力値が極端に大きくなることを抑制できる。よって、ヘッド4への打撃に対するヘッドセンサ10の感度分布を均一化できる。
【0115】
また、上述した通り、ボトムフレーム202(放射部21)の下面に凹部24aが設けられるため、ボトムフレーム202(放射部21)の上面側には、凹部24aに対応する凸部28が形成される。剛性が高められた凸部28に突起部29を介してプレート12が取り付けられるので、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃でボトムフレーム202(凸部28)が撓むことを抑制できる。ボトムフレーム202(凸部28)の撓みを抑制することにより、ヘッドセンサ10の直上付近の打撃による衝撃がプレート12の撓みだけで吸収され易くなるため、ヘッド4への打撃を精度良く検出できる。
【0116】
次いで、図7及び図8を参照して、第3実施形態の打楽器300について説明するが、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図7は、第3実施形態の打楽器300の斜視図であり、図8は、図7のVIII-VIII線における打楽器300の部分拡大断面図である。なお、図7では、ヘッド4(図8参照)を取り外した状態を図示している。
【0117】
図7及び図8に示すように、第3実施形態の打楽器300は、その筐体部分を構成する円筒状のシェル301(胴部)を備え、このシェル301の軸方向端部の開口部分がヘッド4(図8参照)によって覆われる。
【0118】
ヘッド4は、円環状のフープ306によってシェル301に取り付けられる。フープ306には、その周方向の複数箇所に貫通孔360(図8参照)が形成され、この貫通孔360にテンションボルトB1が挿入される。シェル301の外周面には複数のラグ307が固定ボルトB6によって固定されており、ヘッド枠40をフープ306に引っ掛けた状態で、テンションボルトB1をラグ307のめねじ孔370に締結することによってヘッド4に張力が付与される。
【0119】
シェル301の内周側には、ヘッドセンサ10を支持する第1フレーム302と、リムセンサ11を支持する第2フレーム303と、が固定される。第1フレーム302は、ヘッドセンサ10が取り付けられる取付フレーム320と、その取付フレーム320をシェル301の内周面に固定するための固定金具321と、から構成される。
【0120】
固定金具321は、シェル301の内周面にねじ止めされるL字状の金具であり、取付フレーム320は、シェル301の径方向に延びる樹脂製のフレームである。取付フレーム320は、ウェブ及びフランジを有する溝形鋼状に形成され、取付フレーム320の長手方向両端部は下方に屈曲して固定金具321に固定(ねじ止め)されている。
【0121】
取付フレーム320の幅方向中央にはリブ320aが一体に形成される。リブ320aは、取付フレーム320の長手方向(径方向)に延びる板状に形成されるので、このリブ320aによって取付フレーム320の剛性を向上できる。
【0122】
取付フレーム320には、その長手方向に並ぶ一対の柱状の突起部320bが一体に形成され、この一対の突起部320bにプレート312が固定される。プレート312は略楕円形に形成され、その長手方向両端部が一対の突起部320bにねじ止めされる。このプレート312に支持されるヘッドセンサ10は、第1実施形態と同様、両面テープ10a、センサ10b、及びクッション10cを備えるものである。
【0123】
第2フレーム303は、リムセンサ11を支持する中央部330と、その中央部330から径方向に延びてシェル301の内周面に接続される接続部331と、を備え、これらの各部330,331が樹脂材料を用いて一体に形成される。接続部331の外縁部分が固定ボルトB6によってシェル301の内周面にねじ止めされる。
【0124】
フープ306の上部には、環状に形成されたゴム製のリムカバー305が取り付けられており、このリムカバー305への打撃時の振動は、主にヘッド4(ヘッド枠40)及びシェル301を介して第2フレーム303の接続部331に伝達される。
【0125】
リムセンサ11を支持する第2フレーム303は、その周方向の複数箇所で(複数の接続部331を介して)シェル301に接続されるので、周方向においてリムカバー305のどの位置が打撃された場合であっても、その打撃による振動が接続部331を介して中央部330のリムセンサ11に伝達され易くなる。また、ヘッドセンサ10を支持する第1フレーム302と、リムセンサ11を支持する第2フレーム303とが別部品であるため、リムカバー305(ヘッド4)への打撃時の振動がヘッドセンサ10(リムセンサ11)で誤検出されることを抑制できる。従って、リムカバー305への打撃の検出精度を向上できる。
【0126】
また、第2フレーム303の中央部330とシェル301とを接続する接続部331が周方向に複数(本実施形態では、6本)並べられることにより、接続部331同士の間には貫通孔が形成される。このような貫通孔を形成することにより、ヘッド4への打撃時の振動が貫通孔を通して外部に放出され易くなる。よって、ヘッド4への打撃時に生じる音量を低減できる。
【0127】
ここで、本実施形態では、シェル301と第1フレーム302との接続位置(シェル301に対する固定金具321の固定位置)よりも上方側で、シェル301に第2フレーム303(接続部331)を接続している。これにより、リムカバー305からリムセンサ11までの振動伝達経路を短くしつつ、リムカバー305からヘッドセンサ10までの振動伝達経路を長くできる。
【0128】
そして、第1フレーム302は、第2フレーム303の下方側から接続部331の間を通して第2フレーム303の上方側に延び、ヘッドセンサ10が取り付けられる取付フレーム320を備えている。これにより、シェル301と第2フレーム303との接続位置を、シェル301と第1フレーム302との接続位置よりも上方側に位置させることを可能にしつつ、ヘッドセンサ10をヘッド4に接触させることができる。
【0129】
また、上述した通り、リムカバー305への打撃時の振動は、主にヘッド4(ヘッド枠40)及びシェル301を介して第2フレーム303に伝達されるが、かかる打撃時には、テンションボルトB1及びラグ307を介してシェル301に伝達される振動も存在する。そこで、本実施形態では、固定ボルトB6によって第2フレーム303の接続部331とシェル301とをラグ307に共締めしている(図8参照)。これにより、リムカバー305への打撃時に、テンションボルトB1及びラグ307を介してシェル301に伝達される振動が、接続部331を介してリムセンサ11に伝達され易くなるので、リムカバー305への打撃の検出精度を向上できる。
【0130】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0131】
上記各実施形態では、打楽器100,200,300が電子打楽器である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ラグ7の締結部70よりも内周側に延びる固定部72をボトムフレーム2(筐体1)の下面に固定する構成や、ボトムフレーム2(筐体1の底部)の中央部20から放射状に延びる放射部21の下面に凹部24a~24cを形成する構成は、アコースティックの打楽器(ドラム)にも適用可能である。
【0132】
上記各実施形態では、胴部(胴部30やシェル301)と、リムセンサ11を支持するフレーム(支持部31や第1フレーム302)との接続位置よりも、胴部と、ヘッドセンサ10を支持するフレーム(ボトムフレーム2,202や第2フレーム303)との接続位置が上方に位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、かかる接続位置の関係が逆である構成でも良い。
【0133】
このような構成の一例として、第1,2実施形態において、支持部31(中央部31a)に取り付けたヘッドセンサ10をヘッド4に接触させる一方、ボトムフレーム2,202にリムセンサ11を取り付ける構成が例示される。また、他の例として、第3実施形態において、シェル301と接続部331との接続位置よりも上方側で、シェル301の内周面に固定金具321を固定する構成が例示される。
【0134】
上記第1,2実施形態では、凹部24aが径方向に連続する溝状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、凹部24aを分断するリブ(周方向に延びる板状の壁)を形成する構成、即ち、径方向に断続的に並ぶ複数の凹部をボトムフレーム2,202(放射部21)の下面に形成する構成でも良い。
【0135】
上記第1,2実施形態では、テンションボルトB1が締結される締結部70,221を凹部24a~24c(放射部21)の外周側に設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、締結部70,221を放音孔23の外周側(放音孔23と径方向で並ぶ位置)に設けても良い。
【0136】
上記第1,2実施形態では、ボトムフレーム2,202の上面側に形成された凸部28に突起部29を設け、この突起部29にヘッドセンサ10が取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ボトムフレーム2,202のうち、凸部28が形成されていない部位(例えば、中央部20)に突起部29を形成しても良い。
【0137】
上記第1,2実施形態では、放射部21の幅寸法が外周側に向けて徐々に小さく又は大きくなる部位が形成され、凹部24a,24bの幅寸法が放射部21の幅寸法に対応して外周側に向けて徐々に小さく又は大きく形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、放射部21や凹部24a,24bのいずれか一方(又は両方)の幅寸法が、内周側から外周側にかけて一定であっても良い。即ち、放射部21や凹部24a,24bの幅寸法(形状)は適宜設定できる。
【0138】
上記第1,2実施形態では、リムセンサ11が取り付けられる支持部31が周方向の全周にわたって(環状部31cを介して)胴部30に接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、環状部31cを省略し、第1接続部31bを胴部30に直接接続する構成でも良い。このような構成においても、周方向においてリム5のどの位置が打撃された場合でも、その打撃による振動が第1接続部31bを介して中央部31aのリムセンサ11に伝達され易くなる。
【0139】
上記第1,2実施形態では、各接続部31b,31d,31e同士の間に複数の貫通孔が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、各接続部31b,31d,31e同士の間の貫通孔を省略し、支持部31を1枚の板状のフレームとしても良い。この場合には、支持部31でヘッドセンサ10を支持してヘッド4に接触させる一方、ボトムフレーム2にリムセンサ11を支持する構成にすれば良い。この構成においても、リムセンサ11を支持するボトムフレーム2が、その周方向の全周にわたって(補強フレーム9を介して)胴部30に接続されることになるため、周方向においてリム5のどの位置が打撃された場合でも、その打撃による振動がリムセンサ11に伝達され易くなる。
【0140】
上記第1,2実施形態では、リムセンサ11を支持する支持部31が胴部30と一体に形成される場合を説明したが、胴部30と支持部31とが別部品であっても良い。
【0141】
上記第1,2実施形態では、胴部30(環状部31c)と第1接続部31bとを第2接続部31dで接続し、周方向で隣り合う第2接続部31d同士を第3接続部31eで接続する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、複数の第2接続部31dや第3接続部31eの一部または全部を省略しても良いし、環状部31cを省略して第1接続部31bを胴部30に直接接続しても良い。
【0142】
また、第2接続部31dを省略する場合には、周方向で隣り合う第1接続部31b同士を接続する接続部(第4接続部)を設けても良い。このような構成であれば、第1接続部31bの撓みを拘束する点が減少すると共に、周方向に並ぶ各第1接続部31bが一体的に撓み易くなるので、リム5への打撃時の振動がリムセンサ11に伝達され易くなる。
【0143】
また、第1接続部31bと第2接続部31dとを接続する部位や、中央部31aと第2接続部31dとを接続する部位を設けても良い。また、中央部31aと第3接続部31eとを接続する部位や、第3接続部31eと環状部31cとを接続する部位を設けても良い。
【0144】
また、上記第1,2実施形態では、支持部31の各部31a~31eが一体に形成される場合を説明したが、これらの各部31a~31eの一部または全部を他の部位とは別体に形成しても良い。
【0145】
また、上記第1,2実施形態では、各第1接続部31bが放音孔23の上方に位置し、第2接続部31dが放音孔23(放射部21)の縁に沿って配置される場合を説明したが、例えば第1接続部31bや第2接続部31dを放射部21の上方に配置しても良い。即ち、リムセンサ11を支持する支持部31の構成は、上記の形態に限定されるものでなく、適宜変更できる。
【0146】
上記第1,2実施形態では、一対の突起部29にプレート12が固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、1又は3以上の突起部29にプレートを固定しても良い。
【0147】
上記第1,2実施形態では、ヘッドセンサ10が複数設けられ、1枚のプレート12の先端側に1つのヘッドセンサ10が取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ヘッドセンサ10の数は、1以上であれば良い。また、ヘッドセンサ10の数に応じた円形または多角形状にプレート12を形成し、その1枚のプレート12に複数のヘッドセンサ10を支持しても良い。
【0148】
このような構成の一例として、円形または多角形(例えば、十字形)に形成したプレート12の中央部分を突起部29に固定する一方、その固定部分よりもプレート12の外縁側の部位(該固定部分から張り出して片持ち状態になっている先端部分)にヘッドセンサ10を取り付ける構成が例示される。このような構成であれば、部品点数を低減させつつ、複数のヘッドセンサ10をプレート12に片持ち状態で支持できる。
【0149】
上記第1,2実施形態では、複数のプレート12の各々の先端がボトムフレーム2の中央側に向けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、各プレート12の先端がボトムフレーム2の外周側に向けられていても良い。
【0150】
上記第1実施形態では、ボトムフレーム2(補強フレーム9)に上方側から挿入された固定ボルトB2が固定部72に締結される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ラグ7の下方側から挿入された固定ボルトB2をボトムフレーム2(補強フレーム9)に締結しても良い。
【0151】
上記第1実施形態では、ボトムフレーム2よりも硬質な材料からなる環状の補強フレーム9がボトムフレーム2の上に重ねられ、それらの各フレーム2,9及びラグ7(固定部72)が固定ボルトB2によって共締めされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ボトムフレーム2に対し、補強フレーム9やラグ7を別々のボルトで固定することは当然可能である。また、トップフレーム3、補強フレーム9、及びボトムフレーム2を固定ボルトB4によってラグ7に共締めすることも可能である。
【0152】
また、第1実施形態では、固定ボルトB2~B4が径方向に沿って並んでいる場合を説明したが、これらの固定ボルトB2~B4による固定位置が周方向でずれていても良い。また、径方向に並ぶ2本の固定ボルトB2のうちの一方を省略することや、固定ボルトB3を省略することも可能である。
【0153】
なお、径方向に並ぶ2本の固定ボルトB2のうちの一方を省略する場合には、内周側(図4(a)の右側)に位置する固定ボルトB2を残す(外周側の固定ボルトB2を省略する)ことが好ましい。これは、接触点Pからの距離が比較的遠い内周側の固定ボルトB2には、上述したテンションボルトB1の締結時に作用する荷重が比較的小さいためである。
【0154】
また、第1実施形態では、ボトムフレーム2及び補強フレーム9が第1接続部31bよりも外周側でトップフレーム3(環状部31c)の下面にねじ止めされる場合を説明したが、例えばボトムフレーム2及び補強フレーム9を第1接続部31bや第2接続部31dにねじ止めしても良い。即ち、各フレーム2,3,9同士やラグ7の固定構造は、上記の形態に限定されるものでなく、適宜変更できる。
【0155】
上記第1実施形態では、補強フレーム9の円環部90から突出部91が内周側に突出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、突出部91を省略し、円環部90のみをボトムフレーム2の外周部22にねじ止めしても良い。
【0156】
上記第3実施形態では、リムセンサ11を支持する第2フレーム303が周方向の複数箇所で(複数の接続部331を介して)シェル301に接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、各接続部331同士の間の貫通孔を省略して第2フレーム303を1枚の板状のフレームとしても良い。この場合には、シェル301と第2フレーム303との接続位置よりも上方側で、シェル301と第1フレーム301とを接続する構成にすれば良い。このような構成であれば、第2フレーム303をその周方向の全周にわたってシェル301に接続することができるので、周方向においてリムカバー305のどの位置が打撃された場合でも、その打撃による振動が第2フレーム303を介してリムセンサ11に伝達され易くなる。
【符号の説明】
【0157】
100,200 打楽器
1,201 筐体
2,202 ボトムフレーム(筐体の一部)
20 中央部
21 放射部
22 外周部
24a~24c 凹部
28 凸部
30 胴部
4 ヘッド
70,221 締結部
9 補強フレーム
91 突出部
B1 テンションボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8