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特開2025-6381逆流抑止継手及びその継手を備えた逆流抑止システム
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  • 特開-逆流抑止継手及びその継手を備えた逆流抑止システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006381
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】逆流抑止継手及びその継手を備えた逆流抑止システム
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/04 20060101AFI20250109BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20250109BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20250109BHJP
   F16K 15/03 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E03F7/04
E03C1/12 E
F16K51/00 A
F16K15/03 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107139
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【テーマコード(参考)】
2D061
3H058
3H066
【Fターム(参考)】
2D061AA05
2D061AB04
2D061AC00
2D061AC07
2D061AD01
3H058AA07
3H058BB33
3H058CD13
3H058CD29
3H058EE02
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】弁体を回動させためのヒンジ等の回転部分を備えた逆流抑止手段において、排水に含まれる異物によって弁体が作動しなくなるのが防止された逆流抑止手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】弁体と、入口開口と、弁体と当接する弁座部を形成する出口開口とを有する弁管と、弁体の周縁部に設けられたヒンジ部と、そしてヒンジ部を回動可能に支持するためにヒンジ部の側部に配置され、弁管の上部に設けられたヒンジ支持部とを備える逆流抑止継手において、ヒンジ部およびヒンジ支持部の全部または一部を覆うように、ヒンジ部およびヒンジ支持部の上部に配置された付着防止カバーを備えている逆流抑止継手及びその継手を備えた逆流抑止システムが提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、
入口開口と、前記弁体と当接する弁座部を形成する出口開口とを有する弁管と、
前記弁体の周縁部に設けられたヒンジ部と、そして
前記ヒンジ部を回動可能に支持するために前記ヒンジ部の側部に配置され、前記弁管の上部に設けられたヒンジ支持部と
を備える逆流抑止継手において、
前記ヒンジ部および前記ヒンジ支持部の全部または一部を覆うように、前記ヒンジ部および前記ヒンジ支持部の上部に配置された付着防止カバーを備えていることを特徴とする逆流抑止継手。
【請求項2】
前記付着防止カバーは、前記ヒンジ支持部に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止継手。
【請求項3】
前記付着防止カバーは、前記ヒンジ支持部の外周を挟持するクランプ部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の逆流抑止継手。
【請求項4】
前記付着防止カバーは、前記ヒンジ部と当接することにより前記弁体の回動範囲を規制するものであることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止継手。
【請求項5】
無負荷時、前記付着防止カバーの下流側端部は前記ヒンジ部から離間して配置されることを特徴とする請求項4に記載の逆流抑止継手。
【請求項6】
前記弁体は、下流側表面が平板形状であり、そして上流側裏面が上流側へ膨らんだ形状であることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止継手。
【請求項7】
前記弁体の下流側表面と上流側裏面との間には、空間が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の逆流抑止継手。
【請求項8】
前記弁管は、前記入口開口と接続口とを有する固定部と、前記接続口に接続される被接続口と前記出口開口とを有する装着部とに分割されており、そして
前記装着部は、上下方向に抜き差しすることにより前記固定部に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止継手。
【請求項9】
水平方向に開口した流入口と、
前記流入口と連通し、且つ下向きに開口した流出口と、そして
前記流入口および前記流出口と連通し、且つ上向きに開口した点検口と
を備えたT字型の筒状体において、
前記流入口には、請求項1から8のいずれか1項に記載の逆流抑止継手が取り付けられていることを特徴とする逆流抑止システム。
【請求項10】
前記流出口の内径と同径の外径を有する外周部と、前記外周部の外径よりも小さな内径を有する内周部とを有する異径ソケットを、前記流出口にさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の逆流抑止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流抑止継手及びその継手を備えた逆流抑止システムに関し、特に弁管に回動可能に支持された弁体のヒンジ部等を覆う付着防止カバーを備えた逆流抑止継手及びその継手を備えたT字型の筒状体を有する逆流抑止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅などのトイレ等の排水設備から排出される排水は、急激な排水量の変化を緩和するために、或いはゴミ等の異物の除去や点検する目的で、各排水設備に接続された排水管を経由して宅地内に設置された排水ますに集められ、そして該排水ますに集められた排水は公共ますやマンホールを経由して下水道本管へ流出される。
【0003】
ところが、大量の雨水が短時間の間に下水道本管内に流入すると、下水道本管の排水能力を超えて溢れ出た排水が排水ます等を通って逆流し、排水管に接続された屋内の排水設備から逆流した排水が噴き出るという問題がある。
【0004】
そのため、下水道本管から逆流した排水が排水ます等を通って屋内の排水設備から溢れ出ることを防止するために、例えば特開2020-176507号公報(特許文献1)に記載されているように、排水ますの流入口へ取り付ける逆止弁付き継手管や、例えば特開2021-169701号公報(特許文献2)の図2に記載されているように、流入口に上述したような逆流防止弁を取り付けた排水ますが開発されている。このように、近年では、異常気象などにより、短時間の間に大量の雨水が発生した時の逆流防止対策がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-176507号公報
【特許文献2】特開2021-169701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような逆流抑止手段には、宅内の排水設備から汚物等の異物を含んだ排水が流れ込み、特に排水量が多いときは逆流抑止手段付近で排水が暴れ、壁面と衝突した排水が逆流抑止手段へ跳ね返ることがある。そのため、上述のような逆流抑止手段では、弁体を回動させためのヒンジ部等に汚物等が付着ないし堆積し、延いては付着物が固化等することにより弁体が作動しなくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、弁体を回動させためのヒンジ等の回転部分を備えた逆流抑止手段において、排水に含まれる異物によって弁体が作動しなくなるのが防止された逆流抑止手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、逆流抑止手段の構造や排水の流れなどについて鋭意検討を重ねた結果、逆流抑止手段の構造についてはヒンジ等の回転部分には付着防止カバーを設け、逆流抑止手段を通過する排水の流れについては、逆流抑止手段へ跳ね返る排水を減少させるために流入口と流出口とを直交させることが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、弁体と、入口開口と、弁体と当接する弁座部を形成する出口開口とを有する弁管と、弁体の周縁部に設けられたヒンジ部と、そしてヒンジ部を回動可能に支持するためにヒンジ部の側部に配置され、弁管の上部に設けられたヒンジ支持部とを備える逆流抑止継手において、ヒンジ部およびヒンジ支持部の全部または一部を覆うように、ヒンジ部およびヒンジ支持部の上部に配置された付着防止カバーを備えている逆流抑止継手が提供される。
【0010】
本発明によれば、逆流抑止継手は、弁体を回動させためのヒンジ等の回転部分にその上部を覆うように付着防止カバーを設けているので、排水に含まれる汚物等の異物がヒンジ部等の回転部分に付着ないし堆積することが防止され、付着物により弁体の動きが阻害されることがない。
【0011】
また、本発明の逆流抑止継手は、逆流抑止システムとして、水平方向に開口した流入口と、流入口と連通し、且つ下向きに開口した流出口と、そして流入口および流出口と連通し、且つ上向きに開口した点検口とを備えたT字型の筒状体の前記流入口に取り付けてもよい。なお、本願明細書において「下向き」、「上向き」とは、略鉛直方向に向いた「下向き」、「上向き」であれば足り、厳密な意味での鉛直方向に向いた「鉛直方向下向き」、「鉛直方向上向き」を意味するものではない。
【0012】
また、本発明の逆流抑止システムにおいては、流出口に接続可能な配管径の自由度を拡げるために、流出口の内径と同径の外径を有する外周部と、前記外周部の外径よりも小さな内径を有する内周部とを有する異径ソケットを流出口に取り付けることもできる。
【0013】
本発明の逆流抑止システムによれば、逆流抑止継手の中を略水平方向に通過した排水は、逆流抑止継手の出口開口から流出するとき、その自重により自由落下するように流出口を流入口に対して直交させて配置しているので、排水量が多いときでも、直接に又は壁面等に衝突して逆流抑止継手に跳ね返る排水を大幅に削減することが可能となり、排水に含まれる異物がヒンジ部等に付着等するリスクを大幅に低減することができる。
【0014】
本発明の逆流抑止継手では、そのメンテナンス性を向上させるために付着防止カバーをヒンジ支持部に着脱可能に取り付けることができる。弁管のヒンジ支持部を利用して着脱可能に取り付ける場合、付着防止カバーには、例えばヒンジ支持部の外周を挟持できるクランプ部を設けることが好ましい。
【0015】
本発明の逆流抑止継手では、付着防止カバーを、ヒンジ部と当接させることにより弁体(ヒンジ部)の回動範囲を規制するように配置してもよい。弁体の回動範囲は、例えば、排水が無い又は排水量が少なくて弁体に衝突して作用する排水の圧力が無負荷のときに、自重により吊り下げられた状態にある弁体において、付着防止カバーの下流側端部をヒンジ部から離間するように配置することで規制することができる。
【0016】
逆流抑止継手において、弁体の開く側への回動範囲が大きくなり過ぎると、逆流発生時に弁体の上流側裏面に逆流水が衝突してしまい、弁体が閉じる側へ作動できなくなる場合がある。そのため、本発明では、付着防止カバーを弁体の回動範囲を規制するストッパーとして機能させることで、逆流水が弁体の下流側表面に確実に衝突するようになり、逆流水に対して弁体が誤作動することなく確実に閉じる側へ回動するようになる。
【0017】
本発明の逆流抑止継手では、弁体は、下流側表面を平板形状とし、そして上流側裏面を上流側へ膨らんだ形状とすることが好ましい。また、その際弁体の下流側表面と上流側裏面との間に空間を形成することが好ましい。
【0018】
本発明において弁体を上記のような形状とすると、下流側から上流側へ膨らんだ弁体の上流側裏面は排水が衝突しても大きな力を受けることがないが、平板形状の弁体の下流側表面は排水が衝突すると大きな力を受けることになるので、逆流発生時、主として逆流水が弁体の下流側表面に衝突することにより、弁体をより確実に閉じる側へ回動させることが可能になる。
【0019】
また、弁体の下流側表面と上流側裏面との間に空間を設けると、弁体が逆流水に浸漬するような状態では前記空間に浮力が発生し、弁体が弁座部と当接した閉じた状態を安定して保持することができるので、排水の逆流を確実に抑止することができる。なお、図示しないが、浮力発生部は、例えば発泡スチロール等の水より比重の小さな部材を弁体の上流側裏面に取り付けることによって構成することができる。
【0020】
本発明の逆流抑止継手では、弁管を、入口開口と接続口とを有する固定部と、接続口に接続される被接続口と出口開口とを有する装着部とに分割し、そして装着部を上下方向に抜き差しすることで固定部に着脱可能に取り付けられるように構成してもよい。
【0021】
本発明によれば、弁管を、固定部と装着部とに分割することにより、固定部を排水ますの流入口等に取り付けたまま、弁管の一部を構成する装着部および装着部に支持された弁体を前記固定部から容易に取り外すことが可能になり、弁体等の点検や交換などのメンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の逆流抑止継手によれば、弁体を回動させためのヒンジ等の回転部分にその上部を覆うように付着防止カバーを設けているので、排水に含まれる汚物等の異物がヒンジ部等の回転部分に付着ないし堆積することが防止され、付着物より弁体の動きが阻害されることがなくなる。
【0023】
本発明の逆流抑止システムによれば、逆流抑止継手の中を略水平方向に通過した排水は、逆流抑止継手の出口開口から流出するとき、その自重により自由落下するように流出口を流入口に対して直交させて配置しているので、排水量が多いときでも、直接に又は壁面等に衝突して逆流抑止継手に跳ね返る排水を大幅に削減することが可能となり、排水に含まれる異物がヒンジ部等に付着等するリスクを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る逆流抑止継手の全体概要を示す斜視図である。
図2図1に示される逆流抑止継手のうちの弁体を示す斜視図である。
図3図1に示される逆流抑止継手のうちの弁管を示す斜視図である。
図4図3に示される弁管のうちの装着部を示す斜視図である。
図5図3に示される弁管のうちの固定部を示す斜視図である。
図6図1に示される逆流抑止継手のうちの付着防止カバーを示す斜視図である。
図7図1に示される逆流抑止継手において、弁体の動きを模式的に表した部分的断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る逆流抑止システム(一部透明)の全体概要を示す斜視図である。
図9図8に示される逆流抑止システムのX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る逆流抑止継手1及びその継手1が取り付けられた逆流抑止システム2について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例0026】
<逆流抑止継手>
図1には、本発明の一実施形態に係る逆流抑止継手1の全体概要を示す斜視図が示されている。図1に示される逆流抑止継手1のうち、図2には弁体3を図示した斜視図が示され、図3には弁管4を図示した斜視図が示され、そして図6には付着防止カバー7を図示した斜視図が示されている。また、図3に示される弁管4のうち、図4には装着部5を図示した斜視図が示され、そして図5には固定部6を図示した斜視図が示されている。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態の逆流抑止継手1は、筒状の弁管4(図3)と、弁管4に回動可能に軸支された弁体3(図2)と、そして弁体3の回転部分を覆うように弁管4に取り付けられた付着防止カバー7(図6)とを備えている。本実施形態では、逆流抑止継手1は塩化ビニル樹脂から出来ているが、用いられる材料に特に限定はなく、プラスチック等の公知の材料を用いることができる。
【0028】
<弁体>
本実施形態において、弁体3は、図2に示されるように円盤形状を有しており、弁体3の上部周縁部にはヒンジ部30が形成されている。また、弁体3とヒンジ部30との連結を補強し、そしてヒンジ部30へ降りかかる汚物等の固形物を切り裂くことで破壊するのを容易にするために、ヒンジ部30の外周には、さらに外側へ拡張された板状のリブ31が形成されている。
【0029】
図8には、本実施形態の逆流抑止継手1を備えた、本発明の一実施形態に係る逆流抑止システム2(一部透明)の全体概要を図示した斜視図が示されており、図9には、図8に示される逆流抑止システム2のX-X断面図が示されている。
【0030】
弁体3は、平板形状の下流側表面32と、下流側から上流側へ膨らんだ形状を有する上流側裏面33とを有しており、下流側表面32部材の周縁部と上流側裏面33部材の周縁部とを液密に接合することにより形成されている(図9参照)。また、弁体3の周縁部には、弁座部51と当接する位置にゴム等の弾力のある材料からなるパッキン35が取り付けられており、弁体3を閉じたときのシール性が向上されている。
【0031】
弁体3は、上流側へ膨らんだ上流側裏面33が流線形状と同様の機能を果たすので、排水が上流側裏面33に衝突しても大きな力を受けることがないが、他方、平板形状の下流側表面32に排水が衝突すると抵抗となり、大きな力を受けることになる。そのため、本実施形態の逆流抑止継手1は、逆流発生時、主として逆流水が弁体3の下流側表面32に衝突することになるので、弁体3は大きな力を受けて閉じる側へ作動し、排水の逆流を確実に抑止することができる。
【0032】
また、本実施形態では、弁体3の下流側表面32と上流側裏面33との間に空間34が形成されている(図9参照)。逆流発生時、弁体3は、逆流水に浸漬するような状態になると前記空間34内に浮力を発生するので、弁座部51と当接した閉じた状態を安定して保持することができ、排水の逆流を確実に抑止することができる。
【0033】
図9に示されているように、弁体3の空間34内における浮力の発生点Oは、弁体3の回転軸Pを通る鉛直面よりも上流側にくるように配置されている。そのため、逆流発生時、弁体3が逆流水に浸漬すると、弁体3には、浮力により弁管4の出口開口50を塞ぐように回動させるモーメントが働くので、弁体3が開く側へ回動してしまうという誤作動が防止される。
【0034】
<弁管>
弁管4は、図3に示されるように、排水ますの流入口や配管の流出口(いずれも図示せず)などに接続するための略円形の入口開口60と、入口開口60と連通し、且つ弁体3と当接する弁座部51を形成する略円形の出口開口50とを有している。
【0035】
また、本実施形態では、出口開口50(弁座部51)は、上から下へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されている(図9参照)。
【0036】
そのため、平常時、自重により懸架状態にある弁体3は、弁管4の出口開口50を開口しており、僅かな量の順フロー排水の流れも許容することができるので、排水に含まれる異物などによる詰まりを効果的に防止することができる。また、後述する、本実施形態の逆流抑止継手1をT字型の筒状体8の流入口80に取り付けた逆流抑止システム2においては、出口開口50から流出した排水はその自重により下方に自由落下するので、排水量が多いときでも、直接に又は壁面等に衝突して弁体3の回転部分に跳ね返る排水を大幅に削減することが可能となり、排水に含まれる異物が回転部分に付着等するリスクを大幅に低減することができる。
【0037】
本実施形態では、弁管4は、入口開口60と、前記入口開口60と連通した接続口61とを有し、排水ますの流入口や配管の流出口(いずれも図示せず)などに半恒久的に取り付けられる固定部6(図5)と、前記接続口61に着脱自在に接続される被接続口52と、前記被接続口52と連通した出口開口50とを有する装着部5(図4)とに分割されている。被接続口52は、装着部5を固定部6に装着したとき、接続口61と整合して接続されるように構成されており、両者の接続をより一層液密にするためには、接続口61の開口端または被接続口52の開口端にゴム等の弾力のある材料からなるパッキン(図示せず)を取り付けることもできる。
【0038】
固定部6の接続口61の左右両端部には、互いに向き合うように先が曲がり、且つ垂直方向に延びた鉤部62が形成されており、そして装着部5の被接続口52の左右両端部には、前記鉤部62の中へ上から差し込むことにより嵌合する垂直方向に延びた嵌合部53が形成されている。また、装着部5の上部には、ヒトの手で掴んだり又は専用の治具等を用いて引っ掛けることができるタワー状の把手部54が形成されている。
【0039】
そのため、本実施形態では、固定部6を排水ますの流入口などに取り付けたまま、装着部5を上下方向に抜き差しすることにより、装着部5および装着部5に軸支された弁体3を容易に取り付け又は取り外すことが可能となり、弁体3等の点検や清掃、交換などのメンテナンス性が向上している。
【0040】
図1,3に示されるように、装着部5(弁管4)の上部には、弁体3のヒンジ部30を回動可能に支持するためのヒンジ部支持部55が設けられている。ヒンジ支持部55の形状や個数に特に制限はないが、本実施形態では、ヒンジ部支持部55は、ヒンジ部支持部55の軸穴がヒンジ部30の軸穴と整合するようにヒンジ部30の側部に配置され、それぞれの軸穴を1本のピン56で挿通することにより弁体3を回動可能に軸支できる構造としている。
【0041】
ヒンジ部30およびヒンジ支持部55の構成としては、本実施形態のように弁体3の1つヒンジ部30を両側から挟み込むように一対のヒンジ支持部55を弁管4に設けてもよく、或いは図示しないが、弁管の1つヒンジ部支持部を両側から挟み込むように一対のヒンジ部を弁体に設けてもよく、ピン56にかかる力が均等な回転を実現するためには、ヒンジ部またはヒンジ支持部のいずれか一方を少なくとも2つ以上配置することが好ましい。
【0042】
<付着防止カバー>
図6には、図1に示される逆流抑止継手1のうちの付着防止カバー7を図示した斜視図が示されており、図7には、図1に示される逆流抑止継手1において、弁体3の動きを模式的に表した部分的断面図が示されている。
【0043】
図1,9に示されるように、本実施形態の逆流抑止継手1は、弁体3のヒンジ部30および弁管4(装着部5)のヒンジ支持部55の上部において、前記ヒンジ部30および前記ヒンジ支持部55の全部または一部を覆うように付着防止カバー7が取り付けられている。
【0044】
そのため、本実施形態の逆流抑止継手1では、排水に含まれる汚物等の異物が、弁体3を回動させためのヒンジ部30等の回転部分に付着ないし堆積することが防止され、付着 物および付着物の固化により弁体3の動きが阻害されることがない。
【0045】
付着防止カバー7は、排水に含まれる汚物等の異物が弁体3の回転部分に飛散ないし付着するのを防止できる形状であれば、特に限定はない。本実施形態では、付着防止カバー7は、図6に示されるように、くの字状に曲がったストッパー部70と、前記ストッパー部70を支持するように連結されたクランプ部71とから構成されている。
【0046】
ストッパー部70は、弁体3のヒンジ部30のリブ31の上部において、ヒンジ部30およびリブ31を覆うように、リブ31から離間した位置に配置されている。クランプ部71は、少なくとも、ヒンジ部30とヒンジ支持部55との接触部分の上部とヒンジ支持部55の上部とを覆うように配置され、本実施形態では、排水に含まれる異物飛散による付着防止を強化するため、クランプ部71はヒンジ支持部55の軸方向外側までさらに拡張されている。
【0047】
また、クランプ部71は、弾性を有する樹脂材料からできており、ヒンジ支持部55の外周を着脱自在に挟持することができる。そのため、本実施形態では、付着防止カバー7はクランプ部71により弁管4のヒンジ支持部55に着脱可能に取り付けられており、汚れ易い付着防止カバー7を系外に取り出して容易に掃除等できるようになっている。また、本実施形態では、クランプ部71は、ヒンジ支持部55から離間する方向へ延びた折り返し部72を有しており、付着防止領域がさらに拡大されると共に、折り返し部72を摘まむことにより付着防止カバー7を容易に着脱できるようになっている。なお、付着防止カバー7は、必ずしもヒンジ支持部55により支持されている必要はなく、ヒンジ部30およびヒンジ支持部55の全部または一部を覆うことができれば、弁管4に直接的にまたは間接的に取り付けられていてもよい。
【0048】
図7には、図1に示される逆流抑止継手1において、弁体3の動きを模式的に表した部分的断面図が示されている。図7では、自重により懸架状態にあるときの弁体3が実線で表されており、ヒンジ部30のリブ31が付着防止カバー7と当接することにより、開く側の回動限界にあるときの弁体3が2点鎖線で表されている。
【0049】
図7を参照して理解されるように、本実施形態の逆流抑止継手1では、付着防止カバー7は、弁体3の回動範囲を規制するストッパーとしても機能する。より具体的には、弁体3が所定の角度まで開く側へ回動したとき、ヒンジ部30(リブ31)が当接する位置に付着防止カバー7を配置することにより、弁体3の回動範囲を規制している。本実施形態では、付着防止カバー7は、付着防止カバー7の下流側端部がリブ31と点接触するだけでなく、付着防止カバー7の下側当接面をリブ31の外形と相似形とすることにより付着防止カバー7の下側当接面全体がリブ31と線接触するので、局部的な偏摩耗を防止することができる。
【0050】
本実施形態では、付着防止カバー7はストッパーとしても機能するので、排水が無い又は排水量が少なくて弁体3に衝突して作用する排水の圧力が無負荷のとき、自重により懸架状態にある弁体3において、少なくとも付着防止カバー7の下流側端部がヒンジ部30(リブ31)から離間するように配置することが好ましい。なお、付着防止カバー7と当接する弁体3の部位は必ずしもリブ31である必要はなく、弁体3の回動範囲を規制することが可能な部位であれば、例えばヒンジ部30であっても弁体3本体であってもよい。
【0051】
逆流抑止継手1において、弁体3の開く側への回動範囲が大きくなり過ぎると、逆流発生時に弁体3の上流側裏面33に逆流水が衝突してしまい、弁体3が閉じる側へ作動できなくなる場合がある。しかし、本実施形態の逆流抑止継手1によれば、付着防止カバー7を弁体3の回動範囲を規制するストッパーとして機能させているので、逆流水が弁体3の下流側表面32に確実に衝突するようになり、逆流水に対して弁体3が誤作動することなく確実に閉じる側へ回動するようになる。
【0052】
なお、本実施形態では、順フロー排水の適切な流れを保証し、且つ逆流水の流れを確実に阻止するために、弁管4の出口開口50(弁座部51)は、鉛直方向から上流側に向けて角度(α)20°傾けて形成されており、付着防止カバー7による弁体3の開く側への回動角度(θ)は、上記出口開口50(弁座部51)から好ましくは約60°(鉛直方向から下流側に向けて回動角度(β)40°)、より好ましくは約45°(鉛直方向から下流側に向けて回動角度(β)25°)に設定されている(図7参照)。
【0053】
<逆流抑止システム>
図8,9に示されるように、本実施形態の逆流抑止システム2は、上述した本発明の逆流抑止継手1をT字型の筒状体8の流入口80に取り付けることにより構成することができる。
【0054】
より詳細には、本実施形態の逆流抑止システム2に用いられるT字型の筒状体8は、一般的には二方チーズと呼ばれ、水平方向に開口した流入口80と、流入口80と連通し、且つ下向きに開口した流出口81と、そして流入口80および流出口81と連通し、且つ上向きに開口した点検口82とを備えている。また、本実施形態において、流入口80、流出口81および点検口82はいずれも受口形状を有しており、各受口80,81,82の内部には、接続配管(図示せず)の先端を当接させる段差83が形成されている。
【0055】
そのため、本実施形態の逆流抑止システム2では、本発明の逆流抑止継手1は、逆流抑止継手1の入口開口60を、筒状体8の外部から流出口81の中へ挿入することにより取り付けられており、順フロー排水量が多いときでも、逆流抑止継手1が流出口81から抜け落ちることがない。
【0056】
本実施形態の逆流抑止システム2は、図8,9に示されるように、T字型の筒状体8の流出口81へ、流出口81の内径と同径の外径を有する外周部と、前記外周部の外径よりも小さな内径を有する内周部とを有する異径ソケット9を取り付けることにより、流出口81に接続される接続管の配管径に合わせて適宜流出口81の口径を調節することもできる。
【0057】
本実施形態の逆流抑止システム2によれば、逆流抑止継手1の中を略水平方向に通過した排水は、逆流抑止継手1の出口開口50から流出するとき、その自重により自由落下するように流出口81を流入口80に対して直交させて配置しているので、排水量が多いときでも、直接に又は壁面等に衝突して逆流抑止継手1に跳ね返る排水を大幅に削減することが可能となり、排水に含まれる異物が弁体3のヒンジ部30等の回転部分に付着等するリスクが大幅に低減される。
【0058】
なお、本実施形態では、T字型の筒状体8および異径ソケット9はいずれも塩化ビニル樹脂から出来ているが、用いられる材料に特に限定はなく、プラスチック等の公知の材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・逆流抑止継手
2・・・・逆流抑止システム
3・・・・弁体
30・・・ヒンジ部
31・・・リブ
32・・・下流側表面
33・・・上流側裏面
34・・・空間
35・・・パッキン
4・・・・弁管
5・・・・装着部
50・・・出口開口
51・・・弁座部
52・・・被接続口
53・・・嵌合部
54・・・把手部
55・・・ヒンジ支持部
56・・・ピン
6・・・・固定部
60・・・入口開口
61・・・接続口
62・・・鉤部
7・・・・付着防止カバー
70・・・ストッパー部
71・・・クランプ部
72・・・折り返し部
8・・・・T字型の筒状体
80・・・流入口
81・・・流出口
82・・・点検口
83・・・段差
9・・・・異径ソケット
O・・・・浮力の発生点
P・・・・回転軸
α・・・・弁管の出口開口(弁座部)の傾斜角度
β・・・・鉛直方向からの弁体の回動角度
θ・・・・弁体の回動角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9