(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006400
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】プレス成形装置、及び、プレス成形体製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20250109BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107179
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000180885
【氏名又は名称】児玉化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関山 政義
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AB25
4F202AC03
4F202AK01
4F202AK02
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK18
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN12
4F202CN15
4F202CN22
4F204AC03
4F204AK01
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】繊維強化複合材のプレス成形において、加熱と冷却のサイクルを短縮し、かつ、別途の予熱装置がなくても品質の高いプレス成形体を製造可能なプレス成形装置を提供すること等を課題とする。
【解決手段】 固定金型(2)と、可動金型(3)を備え、前記固定金型(2)は、固定金型基部(21)と、前記固定金型基部(21)とともに固定金型間隙(2s)を挟んで設けられる固定金型中間部(22)を有し、前記可動金型(3)は、可動金型基部(31)と、前記可動金型基部(31)とともに可動金型間隙(3s)を挟んで設けられる可動金型中間部(32)を有する、プレス成形装置(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材のプレス成形体をプレス成形するプレス成形装置(1)であって、該プレス成形装置(1)は、
固定金型(2)と、可動金型(3)を備え、
前記固定金型(2)は、固定金型基部(21)と、前記固定金型基部(21)とともに固定金型間隙(2s)を挟んで設けられる固定金型中間部(22)を有し、
前記可動金型(3)は、可動金型基部(31)と、前記可動金型基部(31)とともに可動金型間隙(3s)を挟んで設けられる可動金型中間部(32)を有し、
前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)は、接触可能に対向するように配置され、
前記固定金型基部(21)は、固定金型基部冷却流路(211)を有し、
前記可動金型基部(31)は、可動金型基部冷却流路(311)を有し、
前記固定金型中間部(22)は、前記固定金型間隙(2s)側に固定金型中間部加熱冷却流路(221)を有し、前記固定金型間隙(2s)とは離れた側であって、前記可動金型(3)の側に固定金型中間部ヒータ(222)を有し、
前記可動金型中間部は(32)、前記可動金型間隙(3s)側に可動金型中間部加熱冷却流路(321)を有し、前記可動金型間隙(3s)とは離れた側であって、前記固定金型(2)の側に可動金型中間部ヒータ(322)を有し、
前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流れ、冷却時は冷却流体が流れ、
前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流れ、冷却時は冷却流体が流れ、
前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)は、間隙の幅を調整可能であり、かつ、間隙の幅を0にして間隙をなくして、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させることが可能な、プレス成形装置(1)。
【請求項2】
請求項1記載のプレス成形装置(1)で複合材のプレス成形体を製造する方法であって、該製造方法は、A工程、B工程と、C工程、D工程、E工程、F工程とを含み、
前記A工程は、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を予熱する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させる金型中間閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱する工程であり、
前記B工程は、プレス成形体の材料を可動金型(3)に塗布する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)が非接触となるように金型開きの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱し、前記プレス成形体の材料を前記可動金型(3)側に塗布する工程であり、
C工程は、前記プレス成形体の材料を加熱する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させる金型中間閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱する工程であり、
D工程は、前記プレス成形体をプレスする工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)の間隙の幅を0にして間隙をなくし、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させ、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させる金型閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにする工程であり、
E工程は、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)、及び、前記プレス成形体を冷却する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)の間隙の幅を0にして間隙をなくし、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させ、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させる金型閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をOFFにする工程であり、
F工程は、前記プレス成形体を取り出す工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)が非接触となるように金型開きの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をOFFにし、前記プレス成形体を前記可動金型(3)から取り出す工程であり、
前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に流す加熱流体又は冷却流体は、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)が所定の温度に到達したら供給を停止することを特徴とする、プレス成形体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複合材等の複合材を材料とするプレス成形体のプレス成形装置及びプレス成形体製造方法に関する。特にプレス成形温度が150℃以上となる複合材のプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品、電動バイク、EV水素エンジンのセパレータ、航空機部材、ドローン部品、義足等を形成するための材料として、金属材料に変わる複合材が開発されており、特に近年では、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いた複合材は、プレス成形により大量生産が可能であり、複雑な形状にも対応できることから注目されている。
【0003】
プレス成形に用いる樹脂を用いた複合材として、例えばGMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)、炭素繊維強化複合材、天然繊維強化複合材、アラミド繊維強化複合材等がある。これらの複合材の成形には、特許文献1のようなプレス成形方法等が開示されている。
ところで、複合材のプレス成形温度は150℃以上と高く、加熱と冷却のサイクルが長くなり、製造効率が低く、製造コストが高くなるという課題があった。
【0004】
また、品質の高いプレス成形体を製造するには、プレス成形体の材料をプレス成形装置にセットする前に予熱しておくことが望ましい(特許文献2等)。しかしながら、材料の形状や複合材に含まれる繊維等の種類によって、予熱が困難なもの(不織布やチョップ材等)、予熱が可能であっても予熱した材料を金型へセットするのが困難なものがあるため、予熱できずに品質の高いプレス成形体を得られないという課題があった。
【0005】
さらに、上下金型をガイドピン等に沿って全体を閉じる場合(金型全閉めの場合)、ガイドピンの調整、すなわち、金型の部品やプレス成形体の位置決めが困難となるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-112827号公報
【特許文献2】国際公開2018/003433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みたものであり、複合材のプレス成形において、加熱と冷却のサイクルを短縮し、かつ、別途の予熱装置がなくても品質の高いプレス成形体を製造可能なプレス成形装置を提供すること等を課題とする。
ここで、「品質の高いプレス成形体」とは、複合材の繊維等と樹脂が十分に混ざってプレス成形体の表面への繊維の露出が少ないものや、プレス成形体の形状が複雑(ボス、リブ、薄肉部、アンダーカット形状等が含まれる形状)であっても、また、材料の均質性に難点があっても精度よく成形されているもの等をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合材のプレス成形体をプレス成形するプレス成形装置(1)は、固定金型(2)と、可動金型(3)を備え、前記固定金型(2)は、固定金型基部(21)と、前記固定金型基部(21)とともに固定金型間隙(2s)を挟んで設けられる固定金型中間部(22)を有し、前記可動金型(3)は、可動金型基部(31)と、前記可動金型基部(31)とともに可動金型間隙(3s)を挟んで設けられる可動金型中間部(32)を有し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)は、接触可能に対向するように配置され、前記固定金型基部(21)は、固定金型基部冷却流路(211)を有し、前記可動金型基部(31)は、可動金型基部冷却流路(311)を有し、前記固定金型中間部(22)は、前記固定金型間隙(2s)側に固定金型中間部加熱冷却流路(221)を有し、前記固定金型間隙(2s)とは離れた側であって、前記可動金型(3)の側に固定金型中間部ヒータ(222)を有し、前記可動金型中間部は(32)、前記可動金型間隙(3s)側に可動金型中間部加熱冷却流路(321)を有し、前記可動金型間隙(3s)とは離れた側であって、前記固定金型(2)の側に可動金型中間部ヒータ(322)を有し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流れ、冷却時は冷却流体が流れ、前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流れ、冷却時は冷却流体が流れ、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)は、間隙の幅を調整可能であり、かつ、間隙の幅を0にして間隙をなくして、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させることが可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の上記のプレス成形装置(1)で複合材のプレス成形体を製造する方法は、A工程、B工程と、C工程、D工程、E工程、F工程とを含み、前記A工程は、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を予熱する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させる金型中間閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱する工程であり、前記B工程は、プレス成形体の材料を可動金型(3)に塗布する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)が非接触となるように金型開きの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱し、前記プレス成形体の材料を前記可動金型(3)側に塗布する工程であり、C工程は、前記プレス成形体の材料を加熱する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させる金型中間閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにして加熱する工程であり、D工程は、前記プレス成形体をプレスする工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)の間隙の幅を0にして間隙をなくし、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させ、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させる金型閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に加熱流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をONにする工程であり、E工程は、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)、及び、前記プレス成形体を冷却する工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)の間隙の幅を0にして間隙をなくし、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)を接触させ、前記固定金型基部(21)と前記固定金型中間部(22)同士、前記可動金型基部(31)と前記可動金型中間部(32)同士を接触させる金型閉めの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をOFFにする工程であり、F工程は、前記プレス成形体を取り出す工程であり、前記固定金型間隙(2s)及び前記可動金型間隙(3s)を有するように構成し、前記固定金型中間部(22)と前記可動金型中間部(32)が非接触となるように金型開きの状態にし、前記固定金型基部冷却流路(211)及び前記可動金型基部冷却流路(311)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に冷却流体を流し、前記固定金型中間部ヒータ(222)及び前記可動金型中間部ヒータ(322)をOFFにし、前記プレス成形体を前記可動金型(3)から取り出す工程であり、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)に流す加熱流体又は冷却流体は、前記固定金型中間部加熱冷却流路(221)及び前記可動金型中間部加熱冷却流路(321)が所定の温度に到達したら供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレス成形体のプレス成形装置により、プレス成形の加熱と冷却のサイクルを短縮し、かつ、別途の予熱装置がなくても品質の高いプレス成形体を製造可能なプレス成形装置を提供することができる。
予熱が困難なもの(不織布やチョップ材等)、予熱した材料を金型へセットするのが困難なものであってもプレス成形が可能であり、また、プレス成形体の表面への繊維等の露出が少なく、プレス成形体の形状が複雑であっても精度よく成形することが可能である。
プレス成形の加熱と冷却のサイクルを短縮できるため、また、プレス時において位置決めが容易であるため、プレス成形体の製造効率を向上させると同時に、製造コストを抑制することができる。
さらに、固定金型中間部と可動金型中間部を接触させ、かつ、上下金型全体を閉じない状態(金型中間閉め)でプレス成形体の材料を加熱するため、金型全閉めの場合に比べ、金型の部品やプレス成形体の位置決めが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のプレス成形装置の一例であり、固定金型中間部と可動金型中間部が非接触の場合(金型開きの状態)を示す。
【
図2】本発明のプレス成形装置の一例であり、固定金型中間部と可動金型中間部が接触する場合(金型中間閉めの状態)を示す。
【
図3】本発明のプレス成形装置の一例であり、固定金型中間部と可動金型中間部、固定金型基部と固定金型中間部、及び、可動金型基部と可動金型中間部が接触する場合(金型閉めの状態)を示す。
【
図4】プレス成形装置が金型開きの状態において、50℃から150℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図5】プレス成形装置が金型開きの状態において、50℃から220℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図6】プレス成形装置が金型開きの状態において、50℃から300℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図7】プレス成形装置が金型中間閉めの状態において、50℃から150℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図8】プレス成形装置が金型中間閉めの状態において、50℃から220℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図9】プレス成形装置が金型中間閉めの状態において、50℃から300℃まで昇温させた場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図10】プレス成形装置の固定金型中間部加熱冷却流路及び可動金型中間部加熱冷却流路に蒸気を流した場合の、温度の経時変化を示したグラフである。
【
図11】本発明のプレス成形装置で製造した、プレス成形体の例である。
図11(a)及び(b)は、3Dイメージ画像、
図11(c)及び(d)は写真である。
【
図12】本発明のプレス成形装置の一例を示す。
図12(a)は金型開きの状態、
図12(b)は金型中間閉めの状態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のプレス成形装置及びプレス成形体の製造方法について、
図1~
図12等を参照しながら、以下に説明する。符号を付して説明するが、本発明は符号により限定されない。
【0013】
(プレス成形装置)
本発明のプレス成形装置1は、繊維強化複合材等の複合材のプレス成形体をプレス成形するものである。
【0014】
複合材が繊維強化複合材の場合、繊維等と合成樹脂を含む。
【0015】
繊維としては、GMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)に含まれるガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、アラミド繊維等が例示される。その他にも、アルミニウム等の金属繊維や、黒鉛繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレンなどの有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維を用いることができる。
【0016】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂が例示される。その他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの結晶性樹脂を用いることができる。
また、スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)などの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0017】
また、合成樹脂として、熱硬化性樹脂である、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(MF)、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン(PUP)、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、ユリア樹脂等を用いることができる。
【0018】
繊維強化複合材(プレス成形前)に対する強化繊維含有量としては、20質量%から75質量%程度の範囲で適宜設定することができる。物理的な強度の高い成形品を成形するために、繊維強化複合材に対する強化繊維含有量を50質量%以上、もしくは60%質量以上とすることも可能である。
【0019】
複合材は、繊維強化複合材の他、スーパーエンプラと合成樹脂を含むものが挙げられる。
【0020】
(固定金型と可動金型)
図1、2に示すように、プレス成形装置1は、対向する固定金型2と可動金型3を備える。具体的には、固定金型中間部22と可動金型中間部32が、接触可能なように対向するように配置される。
【0021】
(固定金型)
固定金型2は、固定金型基部21と、固定金型基部21とともに固定金型間隙2sを挟んで設けられる固定金型中間部22を有する。
【0022】
固定金型基部21の材料は、S45C等の炭素鋼が好ましい。
固定金型基部21のサイズは、プレス成形体のサイズによるが、50cm×70cm×厚み10cm程度が例示される。
固定金型中間部22の材料は、各種炭素鋼が例示され、鏡面品質や硬度の観点からPXA30(大同特殊鋼株式会社製、炭素鋼)等のプリハードン鋼が多く使われる。
固定金型中間部22のサイズは、プレス成形体のサイズによるが、40cm×50cm×厚み9cm程度が例示される。
【0023】
固定金型基部21と固定金型中間部22の間に、固定金型間隙2sが設けられる。固定金型間隙2sは、固定金型基部21と固定金型中間部22の間に空気を挟むことにより断熱効果を奏する。固定金型間隙2sは、固定金型基部21の側、及び/又は、固定金型中間部22の側にバネやコイル等の固定金型弾性体23を取り付けること等により、設けられる。固定金型弾性体23は、常に冷却流体が流れる固定金型基部21の側に取り付けられることが好ましい。
固定金型間隙2sの幅(固定金型基部21と固定金型中間部22の間の距離)は、0mm~10mm程度が例示され、0mm~6mm程度がより好ましい。断熱効果を求めるときは、4mm~6mmの範囲であることが好ましい。10mm以上になると、金型部品の位置決めが難しくなりやすい。
固定金型間隙2sは、バネやコイル等の固定金型弾性体23と厚み調整ボルト等により、間隙の幅を調整することができる。固定金型2と可動金型3の間に一定以上のプレス力をかけると、固定金型間隙2sは0mmとなり、間隙はなくなり、固定金型基部21と固定金型中間部22同士が接触する(
図3参照)。
【0024】
固定金型中間部22の、固定金型基部21とは反対側に、固定金型入駒24が設けることができる。固定金型入駒24は、後述する可動金型入駒34とともに、成形体金型4と合体し、平面部と横壁及びアンダーカット部を形成するのに用いられる。
【0025】
固定金型中間部22には、金型温度を測定する熱電対25を備えることができる。
【0026】
固定金型基部21には、動作中、常に冷却流体が流れる固定金型基部冷却流路211が設けられる。冷却流体は、冷却の媒体となり得るものであればよいが、冷水等が例示される。
固定金型基部冷却流路211としては、固定金型基部21の面内に直径11mmの管を24本(12本を2段に)並べる構成等が例示される。この場合、冷却流体の速度は、管径や所望の冷却温度、プレス成形体の面積等によるが、冷却効率の観点から、層流よりも乱流となるように設定することが好ましい。
【0027】
固定金型中間部22には、固定金型間隙2sの側に、加熱流体又は冷却流体が流れる固定金型中間部加熱冷却流路221が設けられる。固定金型中間部加熱冷却流路221には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流すことができ、冷却時は冷却流体を流すことができる。
【0028】
加熱流体は、加熱の媒体となり得るものであればよいが、熱水、熱油、蒸気が例示される。冷却流体は、冷却の媒体となり得るものであればよいが、冷水等が例示される。
固定金型中間部加熱冷却流路221としては、固定金型中間部22の固定金型間隙2sの側の面内に直径11mmの管を10本(10本を1段に)並べる構成等が例示される。加熱流体が蒸気の場合、流量は圧力によって調整される。冷却流体の速度は、管径や所望の冷却温度、プレス成形体の面積等によるが、冷却効率の観点から、層流よりも乱流となるように設定することが好ましい。
【0029】
固定金型中間部22には、固定金型間隙2sとは離れた側であって可動金型3の側に固定金型中間部ヒータ222が備えられる。固定金型中間部ヒータ222は、所望の加熱が可能であるものであればよいが、固定金型中間部22の固定金型間隙2sとは離れた側の面内に長さ400mm、直径Φ8mm、10A、220V、2000Wのヒータを12本(12本を1段に)並べる構成等が例示される。なお、固定金型中間部22は、固定金型中間部ヒータ222の位置に穴があけられ、その中に固定金型中間部ヒータ222を配置することが例示される。
【0030】
(可動金型)
可動金型3は、可動金型基部31と、可動金型基部31とともに可動金型間隙3sを挟んで設けられる可動金型中間部32を有する。
【0031】
可動金型基部31の材料は、各種炭素鋼が例示され、機械構造用炭素鋼としてjIS規格で認められた材質S45Cの炭素鋼が好ましい。
可動金型基部31のサイズは、50cm×70cm×厚み10cm程度が例示される。
可動金型中間部32の材料は、各種炭素鋼が例示され、鏡面品質や硬度の観点からPXA30(大同特殊鋼株式会社製、炭素鋼)等のプリハードン鋼が多く使われる。
可動金型中間部32のサイズは、プレス成形体のサイズによるが、40cm×50cm×厚み9cm程度が例示される。
【0032】
可動金型基部31と可動金型中間部32の間に、可動金型間隙3sが設けられる。可動金型間隙3sは、可動金型基部31と可動金型中間部32の間に空気を挟むことにより断熱効果を奏する。可動金型間隙3sは、可動金型基部31の側、及び/又は、可動金型中間部32の側にバネやコイル等の可動金型弾性体33を取り付けること等により、設けられる。可動金型弾性体33は、常に冷却流体が流れる可動金型基部31の側に取り付けられることが好ましい。
可動金型間隙3sの幅(可動金型基部31と可動金型中間部32の間の距離)は、0mm~10mm程度が例示され、0mm~6mm程度がより好ましい。断熱効果を求めるときは、4mm~6mmの範囲であることが好ましい。10mm以上になると、金型部品の位置決めが難しくなりやすい。
可動金型間隙3sは、バネやコイル等の可動金型弾性体33と厚み調整ボルト等により、間隙の幅を調整することができる。固定金型2と可動金型3の間に一定以上のプレス力をかけると、可動金型間隙3sは0mmとなり、間隙はなくなり、可動金型基部31と可動金型中間部32同士が接触する(
図3参照)。
【0033】
可動金型中間部32の、可動金型基部31とは反対側に、可動金型入駒34が設けることができる。可動金型入駒34は、固定金型入駒24とともに、成形体金型4と合体し、平面部と横壁及びアンダーカット部を形成するのに用いられる。
【0034】
可動金型基部31には、動作中、常に冷却流体が流れる可動金型基部冷却流路311が設けられる。冷却流体は、冷却の媒体となり得るものであればよいが、冷水等が例示される。
可動金型基部冷却流路311としては、可動金型基部31の面内に直径11mmの管を24本(12本を2段に)並べる構成等が例示される。この場合、冷却流体の速度は、管径や所望の冷却温度、プレス成形体の面積等によるが、冷却効率の観点から、層流よりも乱流となるように設定することが好ましい。
【0035】
可動金型中間部32には、可動金型間隙3sの側に、加熱流体又は冷却流体が流れる可動金型中間部加熱冷却流路321が設けられる。可動金型中間部加熱冷却流路321には、予熱時及び加熱時は所定温度になるまで加熱流体が流すことができ、冷却時は冷却流体を流すことができる。。
【0036】
加熱流体は、加熱の媒体となり得るものであればよいが、熱水、熱油、蒸気が例示される。冷却流体は、冷却の媒体となり得るものであればよいが、冷水等が例示される。
可動金型中間部加熱冷却流路321としては、可動金型中間部32の可動金型間隙3sの側の面内に直径11mmの管を10本(10本を1段に)並べる構成等が例示される。加熱流体が蒸気の場合、流量は圧力によって調整される。冷却流体の速度は、管径や所望の冷却温度、プレス成形体の面積等によるが、冷却効率の観点から、層流よりも乱流となるように設定することが好ましい。
【0037】
(固定金型中間部と可動金型中間部)
固定金型中間部22と可動金型中間部32は、接触可能に対向するように配置される。後述する「金型中間閉め」及び「金型閉め」の状態のときには、固定金型中間部22と可動金型中間部32は接触し、「金型開き」の状態のときには、固定金型中間部22と可動金型中間部32は非接触となり、所定の距離を挟んで対向する。
【0038】
(プレス成形体製造方法)
本発明のプレス成形体は、A工程、B工程、C工程、D工程、E工程、F工程を含むものである。
【0039】
A工程は、固定金型中間部22と可動金型中間部32を予熱する工程である。A工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有するように構成し、固定金型中間部22と可動金型中間部32を接触させる金型中間閉めの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に加熱流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をONにして加熱する。
固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有するため、断熱効果で固定金型基部21や可動金型基部31が必要以上に昇温しない上、装置の形状安定性を保つために固定金型基部21や可動金型基部31に冷却流体を流しても、断熱効果で固定金型中間部22と可動金型中間部32の昇温効率を必要以上に低下させない。
【0040】
B工程は、プレス成形体の材料を可動金型3に塗布する工程である。B工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有するように構成し、固定金型中間部22と可動金型中間部32が非接触となるように金型開きの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に加熱流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をONにして加熱する。この状態で、プレス成形体の材料を可動金型3の可動金型中間部32側に塗布する。
【0041】
C工程は、プレス成形体の材料を加熱する工程である。C工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有するように構成し、固定金型中間部22と可動金型中間部32を接触させる金型中間閉めの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に加熱流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をONにして加熱する。
プレス成形体の材料は、たとえば繊維と合成樹脂といった異なる性質の材料を複合するものであるため、プレス成形の前に繊維の中に合成樹脂が十分に含浸するように、また、プレス成形品の場所(中心付近か端部付近か、厚みがある部分か薄い部分か等)によって合成樹脂の柔らかさや繊維への含浸の程度の差が少ないようにしておくことが望ましい。このため、A工程のあとにB工程、C工程を行う。
【0042】
D工程は、プレス成形体をプレスする工程である。D工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sの間隙の幅を0にして間隙をなくし、固定金型中間部22と可動金型中間部32を接触させ、固定金型基部21と固定金型中間部22同士、可動金型基部31と可動金型中間部32同士を接触させる金型閉めの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に加熱流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をONにする。
なお、A工程、B工程、C工程、D工程において、加熱流体に水(蒸気)を使用し、所定温度が150℃より高い場合は、加熱流体が140℃~150℃程度に到達したら、加熱流体の供給を停止することが望ましい。供給停止した場合、次の冷却工程に備えて、固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311をパージしておくことが望ましい。
【0043】
E工程は、固定金型中間部22と可動金型中間部32、及び、プレス成形体を冷却する工程である。E工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sの間隙の幅を0にして間隙をなくし、固定金型中間部22と可動金型中間部32を接触させ、固定金型基部21と固定金型中間部22同士、可動金型基部31と可動金型中間部32同士を接触させる金型閉めの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に冷却流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をOFFにする。
固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sの間隙の幅を0にして間隙をなくすことで、固定金型基部冷却流路211、可動金型基部冷却流路311を流れる冷却流体も、冷却に寄与させることができ、冷却効率が向上する。
なお、E工程において、所定温度に到達したら、冷却流体の供給を停止することが望ましい。
【0044】
F工程は、プレス成形体を取り出す工程である。F工程は、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有するように構成し、固定金型中間部22と可動金型中間部32が非接触となるように金型開きの状態で行う。固定金型基部冷却流路211及び可動金型基部冷却流路311に冷却流体を流し、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321に冷却流体を流し、固定金型中間部ヒータ222及び可動金型中間部ヒータ322をOFFにし、プレス成形体を可動金型3から取り出す。
【0045】
以上のように、本発明のプレス成形装置及びプレス成形体の製造方法は、固定金型中間部22及び可動金型中間部32により加熱するときに、ヒータをプレス成形品側に配置し、加熱冷却流路を金型基部側に配置して加熱流体を流し、かつ、固定金型基部21及び可動金型基部31から固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sそれぞれにより断熱することを、主な特徴の1つとしている。さらに、冷却するときには、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sの幅を0にして、固定金型基部21と固定金型中間部22同士、可動金型基部31と可動金型中間部32同士を接触させ、固定金型基部冷却流路211、可動金型基部冷却流路311を流れる冷却流体も、冷却に寄与させることができることも特徴である。これらの特徴により、加熱と冷却のサイクルを短縮しつつ、かつ、複雑な形状や予熱に不適な複合体の材料であっても、品質の高いプレス成形体を得ることができる。
【0046】
(ヒータ及び加熱流体による加熱の評価試験)
本発明のプレス成形装置を用いて、所定温度に到達するまでの、ヒータ及び蒸気(加熱流体)による加熱時間を評価した。同様に、従来のヒータのみによる加熱時間を評価し、短縮時間を検証した。
【0047】
評価は、金型開きの状態と、金型中間閉めの状態で行い、50℃から150℃まで到達する時間、50℃から220℃まで到達する時間、50℃から300℃まで到達する時間を測定した。なお、蒸気は金型温度が140℃になった時点で供給を停止し、圧縮空気を10秒流してパージし、バルブを閉めた。
評価結果を、
図4~
図9、表1に示した。
参照データとして、蒸気のみによる加熱時間を、金型開きの状態と、金型中間閉めの状態で行い、
図10に示した。
【0048】
【0049】
図4~
図9、表1より、金型開きの状態では短縮時間が34秒~101秒、金型中間閉めの状態では短縮時間が53秒~115秒と大幅に短縮可能なことが分かった。
蒸気は金型温度が140℃になった時点で停止していることから、50℃から220℃までや50℃から300℃まで加熱するときは140℃を超えるとヒータだけで加熱しているにもかかわらず、1分~2分の時間短縮が見られる。また、
図10より蒸気のみで150℃まで加熱すると、金型開きの状態では1155秒、金型中間閉めの状態では917秒と、ヒータのみの場合(それぞれ、
図4より172秒、
図7より173秒)に比べ、それぞれ6.7倍、5.3倍の加熱時間を要していることが分かる。
以上から、蒸気のみではヒータのみに比べて加熱効率が低いが、ヒータを併せて加熱初期に蒸気で加熱することにより、加熱時間の大幅な短縮が可能であることとともに、蒸気の供給が停止する後半のヒータ加熱の効率も高まることが分かった。特に、ヒータをプレス成形体側に、蒸気の流路をプレス成形体とは逆側に配置することにより、より熱効率が高められる。
【0050】
一方で冷却時は、固定金型中間部加熱冷却流路221及び可動金型中間部加熱冷却流路321には冷却流体が流れるため、冷却時間の短縮となる。
【0051】
図11に本発明のプレス成形装置で製造した、プレス成形体(ポリアミド樹脂とカーボンファイバー不織布の複合材を成形したもの、320mm×230mm)の例を示す。
図11(a)は裏側、
図11(b)は表側の3Dイメージ画像であり、
図11(c)は裏側、
図11(d)は表側の写真である。
このように凹凸やリブ、厚い部分や薄い部分があっても、品質の高いプレス成形体を得ることができる。
【0052】
図12に本発明のプレス成形装置の例を示す。
図12(a)は金型開きの状態、
図12(b)は金型中間閉めの状態であり、固定金型間隙2s及び可動金型間隙3sを有する。
【0053】
本明細書において、プレス成形装置の上側を「固定金型」、下側を「可動金型」として記載したが、上側を可動金型、下側を固定金型としてもよい。また、上下両方を可動金型としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 プレス成形装置
2 固定金型
21 固定金型基部
211 固定金型基部冷却流路
22 固定金型中間部
221 固定金型中間部加熱冷却流路
222 固定金型中間部ヒータ
23 固定金型弾性体
24 固定金型入駒
25 熱電対
2s 固定金型間隙
3 可動金型
31 可動金型基部
311 可動金型基部冷却流路
32 可動金型中間部
321 可動金型中間部加熱冷却流路
322 可動金型中間部ヒータ
33 可動金型弾性体
34 可動金型入駒
3s 可動金型間隙
4 成形体金型
5 駆動部