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特開2025-64082人体検知装置、介護用トイレ検知システム、及び介護用トイレ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025064082
(43)【公開日】2025-04-17
(54)【発明の名称】人体検知装置、介護用トイレ検知システム、及び介護用トイレ
(51)【国際特許分類】
   G01V 11/00 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
G01V11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173534
(22)【出願日】2023-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲浩
(72)【発明者】
【氏名】古坊 文浩
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB02
2G105BB16
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH01
(57)【要約】
【課題】利用者がトイレを利用する場合に、利用者の状態を検知し、利用者に声掛けするとともに、必要に応じて職員に通報する人体検知装置を提供する。
【解決手段】人感センサ10と、利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサ20と、利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサ30と、人感センサ10と超音波センサ20と赤外線センサ30との測距値に基づき利用者の状態を判断する状態判断部35と、を備え、状態判断部35は、利用者が便座に着座していない状態での初期測距値と便座に着座した状態での着座測距値とを記録し、人感センサ10が人の動きを検知した場合に、超音波センサ20と赤外線センサ30との測距値を、超音波センサと赤外線センサとの初期測距値および着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置であって、
人の動きを検知する人感センサと、
利用者が便座に着座した場合の利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサと、
利用者が便座に着座した場合の利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサと、
前記超音波センサと前記赤外線センサとの測距値に基づき利用者の状態を判断する状態判断部と、
を備え、
前記状態判断部は、
利用者が便座に着座していない状態での前記超音波センサと前記赤外線センサの測距値である初期測距値と、利用者が便座に着座した状態での前記超音波センサと前記赤外線センサの測距値である着座測距値とを記録し、
前記人感センサが人の動きを検知した場合に、前記超音波センサと前記赤外線センサとの測距値を、前記超音波センサと前記赤外線センサとの前記初期測距値および前記着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断する、人体検知装置。
【請求項2】
トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置であって、
利用者が便座に着座した場合の利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサと、
利用者が便座に着座した場合の利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサと、
前記超音波センサと前記赤外線センサとの測距値に基づき利用者の状態を判断する状態判断部と、
を備え、
前記状態判断部は、利用者が便座に着座していない状態での前記超音波センサと前記赤外線センサの測距値である初期測距値と、利用者が便座に着座した状態での前記超音波センサと前記赤外線センサの測距値である着座測距値とを記録し、前記超音波センサと前記赤外線センサとの測距値を、前記超音波センサと前記赤外線センサとの前記初期測距値および前記着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断する、人体検知装置。
【請求項3】
前記状態判断部は、前記超音波センサの測距値と前記着座測距値との差が所定の閾値以上、または、前記赤外線センサの測距値と前記着座測距値との差が所定の閾値以上である場合、利用者が立ち上がろうとしていると判断する、請求項1または2に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記状態判断部は、前記超音波センサの測距値と前記初期測距値との差が所定の閾値以下であり、かつ、前記赤外線センサの測距値と前記初期測距値との差が所定の閾値以下である場合、利用者が完全に立ち上がっていると判断する、請求項1または2に記載の人体検知装置。
【請求項5】
音声出力部をさらに含み、
前記状態判断部が、利用者が立ち上がろうとしていると判断した場合、
前記音声出力部は、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力する、請求項1または2に記載の人体検知装置。
【請求項6】
無線通信部と音声出力部とをさらに含み、
前記状態判断部が、利用者が完全に立ち上がっていると判断した場合、
前記音声出力部は、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力するとともに、
前記無線通信部は、利用者を介護する職員の携帯端末に注意情報を無線で送信する、請求項1または2に記載の人体検知装置。
【請求項7】
請求項6に記載の人体検知装置と職員の前記携帯端末とで構成される介護用トイレ検知システムであって、
職員の前記携帯端末は、前記無線通信部から前記注意情報を受信すると、音楽とランプの点灯で職員に注意を喚起し、職員が応答ボタンを押すと前記無線通信部に応答信号を送信し、
前記無線通信部が前記携帯端末から前記応答信号を受信すると、前記音声出力部は職員がトイレに向かっているとのアナウンスを出力する、介護用トイレ検知システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の人体検知装置が設置された、介護用トイレ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置、および人体検知装置を用いた介護用トイレ検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置については、多くの特許が出願されている。
例えば、特許文献1(特開2021-016753号公報)には、高齢者住宅・介護施設又は病院のトイレ内でのトイレ使用者の心疾患、脳卒中発症や立ち上がり時に発生する転倒事故の迅速な発見を可能にするトイレセンサシステムが開示されている。
特許文献1に記載のトイレセンサシステムは、トイレ室内の壁に便座より高い位置に取り付けた検知器である光センサで光センサのビームをトイレ使用者に照射し、距離変化から又は反射光からのトイレ使用者の着座や立ち上がりの判断をする手段とトイレの着座・立ち上がり状態を外部に知らせる無線又は有線通報手段を有する。
【0003】
特許文献2(特開2016-121460号公報)には、利用者を精度よく検出することができるトイレ装置が開示されている。
特許文献2に記載のトイレ装置は、便器と洗浄装置とを有するトイレ装置において、利用者を検出する人体センサと、人体センサを駆動する駆動部と、人体センサが利用者を検出しない状態にある場合、人体センサの駆動方式をドップラー方式に設定し、人体センサが利用者を検出した場合、人体センサの駆動方式をパルス方式に設定することにより、利用者の状態に応じて洗浄装置を制御する制御部と、を備え、駆動部は、パルス方式での人体センサの検出結果に基づいて、利用者と人体センサとの間の距離を測定し、制御部は、駆動部により測定された距離に基づいて、利用者の状態を特定することを特徴とする。
【0004】
特許文献3(特開2011-113406号公報)には、より簡易で安価な利用者の状態検出装置が開示されている。
特許文献3に記載の状態検出装置は、個室空間を画成する天井または壁の上部に設置され、被検出物を検出するとともに被検出物までの距離を計測する距離計測手段と、距離計測手段が計測した被検出物までの距離があらかじめ設定した転倒判定高さまでの距離を超えた場合に利用者が転倒していると判定する状態判定手段と、状態判定手段が利用者が転倒していると判定した場合に第三者に転倒を報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0005】
特許文献4(特開2015-56103号公報)には、動きが少ないトレイにおいても見守り対象者が正常か異常かを正確に検知することができ、しかも見守り対象者の人権やプライバシーも守ることができるようにするトイレ見守り方法が開示されている。
特許文献4に記載のトイレ見守り方法は、トイレへの使用者の入退室を検知するステップと、入室時にトイレの天井から便器に座った使用者の頭部までの距離を測定するステップと、測定した距離を基準距離として記憶しておくステップと、トイレの天井から使用者を撮影するステップと、撮影した画像を二値化・記号化してマトリクスにおける複数のブロックによって表されるブロック画像に変換するステップと、ブロック画像における縦横の長さを測定するステップと、測定した縦横の長さを基準長さとして記憶しておくステップと、記憶しておいた基準距離と基準長さの両方を新たに測定した距離および長さとそれぞれ比較して両方ともに変化があるか否かに基いて正常状態か異常状態かを判断するステップと、比較により両方ともに所定の変化があった場合に異常状態情報を発報するステップを有する。
【0006】
特許文献5(特開2019-219903号公報)には、トイレ内の人の異常を早期に検知することが可能なトイレ使用状態監視装置が開示されている。
特許文献5に記載のトイレ使用状態監視装置は、トイレ内に位置する人を検知する第1センサ部と、第1センサ部とは異なる種類のセンサにより構成され、トイレを使用している人を検知する第2センサ部とを備え、第1センサ部および第2センサ部の両方の検知信号に基づいて、トイレ内の人の異常を検知するように構成されている。なお、第1センサ部は例えば赤外線センサであり、第2センサ部は例えばトイレ内の上方側領域を複数画素の検知領域に分割して、各画素毎の温度状態を検知する温度センサ、または、トイレを使用している人がいる場合にはトイレを使用している人までの距離を測定し、トイレを使用している人がいない場合にはトイレ内の所定の構造物までの距離を測定するような位置に配置された距離センサである。
【0007】
特許文献6(特開2019-192020号公報)には、人体の異常を迅速に検知することができる人体検出装置が開示されている。
特許文献6に記載の人体検出装置は、家屋内の特定空間に設置されたセンサの測定結果に基づいて、特定空間内における人体の頭部の少なくとも4か所の測定点の座標を検出する座標検出部と、座標検出部が検出した座標に基づいて頭部の中心とみなす位置を算出する中心位置算出部と、中心位置算出部が算出した中心位置の所定時間における変化量を検出する変化量検出部と、変化量検出部が検出した変化量が所定の閾値以下である場合は、人体に異常が発生していると判断する異常判断部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
特許文献7(特開2013-80689号公報)には、トイレ、風呂場、廊下等に設置してある既存の照明器具の代わりに設置するだけで、人体の位置、呼吸数及び心拍数等を検出することができ、人体の容体の急変を迅速に検知することができる定在波レーダー内蔵型LED照明器具が開示されている。
特許文献7に記載の定在波レーダー内蔵型LED照明器具は、少なくとも一部に透光性のカバーを備えたケースと、このケース内に格納され、カバーを介して照明光を外部に照射する発光体としてのLED光源と、ケース内に格納され、カバーを介して周波数掃引された電波を外部に送信し、λを送信波の波長として、外部の被反射体から受信した反射波を送信波長に基づく一定距離λ/8だけ離隔した2点にて検出し、送信波及び受信波から合成される定在波を検知する定在波検知部と、定在波検知部が検知した合成波の周波数分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを演算し、得られた距離スペクトルから、測定空間が無人の場合に得られた距離スペクトルと比較し、測定空間内に進入してきた測定対象者との間の距離成分を抽出し、この抽出された距離成分により測定対象者までの距離を求めると共に、距離スペクトルの位相の変化分から求まる微小変位により呼吸数及び/又は脈拍を求める信号処理部と、測定対象者との間の距離並びに呼吸数及び/又は脈拍から、測定対象者の身体状態並びに呼吸数及び/又は脈拍を含む生理状態の異常の有無を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
特許文献8(特開2012-16514号公報)には、トイレの使用状況を正確に表示することができるトイレ使用表示装置が開示されている。
特許文献8に記載のトイレ使用表示装置は、少なくとも一つの便器を含む設備機器を有したトイレ室における、少なくとも設備機器に対して所定位置に設定した特定領域内をカメラ又は超音波センサによって取込む取込手段と、該取込手段により取込んだ特定領域内の変化に基いて設備機器の使用の有無を判断する制御部と、該制御部で判断された設備機器の使用の有無を文字で表示し、トイレ室の外側に配置された表示器とを具備し、取込手段は、特定領域を含む該特定領域よりも広い一般領域内を取込み、且つ、制御部は、該一般領域内で移動した物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段により検出した物体が人体であるか否かを判定する人体判定手段と、該人体判定手段で人体であると判定された物体における特定領域での動きに基いて設備機器の使用の有無を判断する使用判断手段と、該使用判断手段で判断された設備機器の使用の有無に基いて表示器に表示する文字を制御する表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-016753号公報
【特許文献2】特開2016-121460号公報
【特許文献3】特開2011-113406号公報
【特許文献4】特開2015-056103号公報
【特許文献5】特開2019-219903号公報
【特許文献6】特開2019-192020号公報
【特許文献7】特開2013-080689号公報
【特許文献8】特開2012-016514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
介護施設等においては、利用者がトイレを利用する場合職員が付き添うことが多い。この場合、利用者が用を足し終わるまで職員がその場で待機することが望ましいが、職員も多忙であり、利用者が用を足し終わるまでその場で待機することができない場合も多い。介護施設における利用者のトイレ利用の場合、用を足し終わるまでに30分以上かかることもある。
このような場合に、トイレ内の利用者の状態を検知し、利用者の状態に応じて利用者に声掛けするとともに、職員に連絡することのできる、安価でメンテナンスフリーの人体検知装置、および介護用トイレ検知システムが要望されている。
【0012】
特許文献1に記載のトイレセンサシステムは、光センサで光センサのビームをトイレ使用者に照射し、距離変化から又は反射光からのトイレ使用者の着座や立ち上がりの判断をするトイレセンサシステムである。トイレの利用者は立ち上がろうとするときに、まず上半身を前屈することが多いが、特許文献1のセンサシステムでは、光センサの照射位置がトイレ利用者の腰のあたりのみであるため、利用者が便座から立ちあがろうとする前兆までは捉えることができない。
【0013】
特許文献2に記載のトイレ装置は、介護用というよりはより一般的なトイレ利用者の検出装置である。特許文献2のトイレ装置では超音波センサで利用者の上半身との距離を測定して判断しているが、利用者によっては便座から立ち上がる前に下半身を動かす場合もあり、そのような場合には特許文献2のトイレ装置では立ち上がる前兆をとらえることができない。
また、特許文献2のトイレ装置では利用者の動きを検出するセンサとして、人感センサではなく超音波センサをドップラーモードで使用しているが、ドップラーモードでの超音波センサによる利用者の動きの検出装置は高価になる場合もある。
【0014】
特許文献3に記載の状態検出装置は、トイレの天井に設置した距離計測センサで測定した距離があらかじめ設定した起立判定高さまでの距離に満たない場合に利用者が起立していると判定している。特許文献3の状態検出装置においても、利用者が便座から立ち上がる前に下半身を動かす場合には、利用者が立ち上がる前兆をとらえることができない。
【0015】
特許文献4に記載のトイレ見守り方法では、CCD等のカメラと距離計測手段とを備え、測定距離の変化に加えて、カメラで撮影した画像をブロック化、2値化して利用者に変化があったかどうかを判断している。
しかし、カメラ自体および画像処理に必要な信号処理装置はやや高価であり、介護施設のすべてのトイレに設置するのは困難である。
【0016】
特許文献5に記載のトイレ使用状態監視装置は赤外線センサとn×m画素の温度センサによりトイレ内の人の異常を検知している。
しかし、n×m画素の温度センサはやや高価であり、介護施設のすべてのトイレに設置するのは困難である。
【0017】
特許文献6に記載の人体検出装置は、三角法方式(またはTOF方式)の光センサで頭部の中心位置を測定し、中心位置の変化量が小さいとき、人体に異常が発生していると判断している。
しかし、特許文献6の人体検出装置では、利用者が立ち上がったかどうかを正確に判断することができない。また、三角法方式(またはTOF方式)の光センサはやや高価であり、介護施設のすべてのトイレに設置するのは困難である。
【0018】
特許文献7に記載の定在波レーダー内蔵型LED照明器具はマイクロ波の定在波レーダーを用いて人体の位置、呼吸数及び心拍数等を検出してる。
しかし、マイクロ波の定在波レーダーは高価であり、介護施設のすべてのトイレに設置するのは困難である。
【0019】
特許文献8に記載のトイレ使用表示装置は、反射してきた(超音波の)波長により移動した物体を検出(ドップラー効果)または距離の変化を比較することで移動した物体を検出している。
特許文献8のトイレ使用表示装置は、トイレに利用者が出入りするなどの利用者の大きな動きの検出には有効であるが、利用者がトイレの便座から立ち上がろうとする前兆などの細かな動きの検出には向かない。
【0020】
本発明の目的は、介護施設等において利用者がトイレを利用する場合に、利用者が立ち上がろうとする前兆を含めた利用者の状態を検知し、利用者に声掛けするとともに、必要に応じて職員に通報することにより、利用者の安心感の醸成と職員の負担の軽減、および事故の未然防止を図ることのできる人体検知装置、および介護用トイレ検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)
一局面に従う人体検知装置は、トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置であって、人の動きを検知する人感センサと、利用者が便座に着座した場合の利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサと、利用者が便座に着座した場合の利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサと、超音波センサと赤外線センサとの測距値に基づき利用者の状態を判断する状態判断部と、を備え、状態判断部は、利用者が便座に着座していない状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である初期測距値と、利用者が便座に着座した状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である着座測距値とを記録し、人感センサが人の動きを検知した場合に、超音波センサと赤外線センサとの測距値を、超音波センサと赤外線センサとの初期測距値および着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断する。
【0022】
トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置については、多くの先行技術が開示されているが、利用者の安心感の醸成と職員の負担の軽減、およびトイレ内における事故の未然防止を図るためには、以下の(a)~(c)が重要である。
(a)利用者が完全に立ち上がった時には、確実にそのことが検知でき、利用者に声掛けするとともに職員などに通報することができる。
(b)利用者が上半身を前屈させる、下半身を動かすなど、立ち上がる前兆と思われる動作をした場合にもそのことが検知でき、利用者に声掛けすることができる。
(c)介護施設等のすべてのトイレに簡単に設置するためには、安価であり、また、低消費電力でバッテリー動作が必要である。
【0023】
一局面に従う人体検知装置では、上記(a)(b)の条件を満たすために、利用者が便座に着座した場合の利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサと、利用者が便座に着座した場合の利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサとを備え、それらのセンサの測距値を初期測距値および着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断するようにしている。
特に、便座に腰かけた状態から立ち上がるとき、利用者は自身の重心を便座の中央付近から自身の足付近に移動させるための動作を事前に行うことになる。このとき利用者は、頭部を前にかがめて重心を前方に移動させるか、または、腰部を前方に移動して重心を前方に移動させるのが通常である。したがって、利用者の上半身の動きを超音波センサにより検出し、利用者の下半身(特に腰部)の動きを人感センサにより検出することによって、便座からの立ち上がろうとする動作を高い精度で検知することができる。
【0024】
なお、超音波センサを利用者の(頭部から肩にかけての)上半身の方向に向けて設置しているのは、超音波センサはビーム指向性が±15度程度と広く、利用者の姿勢のばらつきに対応できるためである。
また、赤外線センサを利用者の(腹部から腰にかけての)下半身の方向に向けて設置しているのは、超音波センサはビーム指向性が±5度程度と狭く、利用者が便座に着座した場合の利用者の腹部から腰にかけての位置をスポット的に捉えることができるためである。
【0025】
また、一局面に従う人体検知装置では、上記(c)の条件を満たすために、やや高価で消費電力の大きなカメラおよび画像信号処理装置の使用を避けている。また、カメラを使わないもう一つの理由は、トイレというプライバシーが問題になる場所で映像を記録することは個人情報の問題もからみ、避けたいという要望が強いことにある。
さらに、一局面に従う人体検知装置では、人感センサを備えて人の動きを検知することにより、超音波センサおよび赤外線センサを必要な期間のみ動作させ、人体検知装置の低消費電力化を図っている。人感センサを利用して超音波センサおよび赤外線センサのON/OFFなどの電力制御をすることにより、例えば、電力制御無しの場合の消費電流184mAを5mA程度まで低減することができる。
【0026】
(2)
他の局面に従う人体検知装置は、トイレ内において利用者の状態を検知する人体検知装置であって、利用者が便座に着座した場合の利用者の上半身の方向に向けて設置される超音波センサと、利用者が便座に着座した場合の利用者の下半身の方向に向けて設置される赤外線センサと、超音波センサと赤外線センサとの測距値に基づき利用者の状態を判断する状態判断部と、を備え、状態判断部は、利用者が便座に着座していない状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である初期測距値と、利用者が便座に着座した状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である着座測距値とを記録し、超音波センサと赤外線センサとの測距値を、超音波センサと赤外線センサとの初期測距値および着座測距値と比較することにより、利用者が立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを判断する。
【0027】
介護施設等のトイレに設置する人体検知装置としては、一般的には、バッテリー動作で容易に設置できることが望ましいが、一方で、交流電源に接続される人体検知装置も用途として存在する。例えば、トイレの新設時に人体検知装置を設置する場合には、交流電源に接続され、トイレの壁に埋め込むことのできる人体検知装置が、トイレの内装をスマートに見せる点、また電池交換の必要がない点で望ましい。
この場合、消費電力を下げるために、人感センサを利用して超音波センサおよび赤外線センサのON/OFFなどの電力制御をする必要がないため、人体検知装置には人感センサが無くてもよい。
【0028】
(3)
第3の発明に係る人体検知装置は、一局面または他の局面に従う人体検知装置において、状態判断部は、超音波センサの測距値と着座測距値との差が所定の閾値以上、または、赤外線センサの測距値と着座測距値との差が所定の閾値以上である場合、利用者が立ち上がろうとしていると判断してもよい。
【0029】
利用者は通常、立ち上がる前に上半身を前屈させたり、腰を動かしたりすることが多い。第2の発明に係る人体検知装置では、利用者が便座に着座した状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である着座測距値とを記録しておいて、超音波センサの測距値と着座測距値との差が所定の閾値以上になった場合には上半身を前屈させている、赤外線センサの測距値と着座測距値との差が所定の閾値以上になった場合には腰を動かしているとみなし、いずれの場合にも、利用者が立ち上がろうとしていると判断している。
この場合の所定の閾値としては、100mm以上200mm以下の範囲とすることが望ましい。この閾値が100mmより小さいと、人体検知装置の反応が過敏になりすぎ、200mmより大きいと、反応が鈍感になりすぎ、利用者が完全に立ち上がっていると検知する前に前兆動作を検出することができなくなる。
【0030】
(4)
第4の発明に係る人体検知装置は、一局面または他の局面に従う人体検知装置において、状態判断部は、超音波センサの測距値と初期測距値との差が所定の閾値以下であり、かつ、赤外線センサの測距値と初期測距値との差が所定の閾値以下である場合、利用者が完全に立ち上がっていると判断してもよい。
【0031】
利用者が完全に立ち上がった場合には、超音波センサの超音波は対面の壁に当たって反射し、また、赤外線センサの赤外線は便器に当たって反射する。したがって、超音波センサと赤外線センサの測距値は、利用者が便座に着座していない状態での超音波センサと赤外線センサの測距値である初期測距値とほぼ同一になる。
そこで、第4の発明に係る人体検知装置では、超音波センサの測距値と初期測距値との差と赤外線センサの測距値と初期測距値との差がともに所定の閾値以下である場合に、利用者が完全に立ち上がっていると判断する。
所定の閾値としては、概ね50mm程度とすることが望ましい。この閾値は、測定誤差や人体検知装置の据付誤差を考慮して決定される。
【0032】
(5)
第5の発明に係る人体検知装置は、一局面または他の局面に従う人体検知装置において、音声出力部をさらに含み、状態判断部が、利用者が立ち上がろうとしていると判断した場合、音声出力部は、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力してもよい。
【0033】
認知症高齢者などでは、介護職員がトイレから離れるとトイレから立ち上がろうとする場合がある。このような場合、人体検知装置が「座っててください。立ち上がらず、職員を待ちましょうね」などのアナウンスをすることで、利用者に対して再度着座するよう促すことができる。
【0034】
(6)
第6の発明に係る人体検知装置は、一局面または他の局面に従う人体検知装置において、無線通信部と音声出力部とをさらに含み、状態判断部が、利用者が完全に立ち上がっていると判断した場合、音声出力部は、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力するとともに、無線通信部は、利用者を介護する職員の携帯端末に注意情報を無線で送信してもよい。
【0035】
利用者が完全に立ち上がった場合には、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力しても、そのまま、トイレから出ていく可能性もある。したがって、人体検知装置は、音声出力部から利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力するだけでなく、無線通信部から利用者を介護する職員の携帯端末に注意情報を無線で送信する必要がある。
【0036】
(7)
さらに他の局面に従う介護用トイレ検知システムは、第6の発明に係る人体検知装置と職員の携帯端末とで構成される介護用トイレ検知システムであって、職員の携帯端末は、人体検知装置の無線通信部から注意情報を受信すると、音楽とランプの点灯で職員に注意を喚起し、職員が応答ボタンを押すと無線通信部に応答信号を送信し、無線通信部が携帯端末から応答信号を受信すると、音声出力部は職員がトイレに向かっているとのアナウンスを出力する。
【0037】
介護施設等のトイレなどで使用される介護用トイレ検知システムでは、トイレの中に設置される人体検知装置と介護職員が携帯する携帯端末との連携が重要である。
他の局面に従う介護用トイレ検知システムでは、人体検知装置は、利用者が完全に立ち上がっていると判断した場合、利用者に対して再度着座するよう促すアナウンスを出力するとともに、職員の携帯端末に注意情報を無線で送信する。
携帯端末は注意情報を受信すると、音楽とランプの点灯で職員に注意を喚起する。職員は、注意情報を確認すると、携帯端末の応答ボタンを押し、応答信号を人体検知装置に送信する。
応答信号を受信した人体検知装置は、立ちあがった利用者に対して、「職員がこちらに向かっていますよ」などのアナウンスを流す。
他の局面に従う介護用トイレ検知システムでは、このような連携によって、職員の負担軽減を図りつつ、利用者の安心感の醸成と、職員が気づかないうちに利用者が行方不明になるといった事故の未然防止を図ることができる。
【0038】
(8)
さらに他の局面に従う介護用トイレは、一局面または他の局面に従う人体検知装置が設置されている。
【0039】
介護用トイレに一局面または他の局面に従う人体検知装置を設置することによって、介護トイレの利用者がトイレを利用する場合に、利用者が立ち上がろうとする前兆を含めた利用者の状態を検知し、利用者に声掛けするとともに、必要に応じて職員に通報することにより、利用者の安心感の醸成と職員の負担の軽減、および事故の未然防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】人体検知装置の構成を示す模式的ブロック図である。
図2】介護用トイレ検知システムの構成を示す模式的ブロック図である。
図3図3(a)は利用者が便座に着座していない場合の超音波および赤外線の照射場所を示す模式的図面であり、図3(b)は利用者が便座に着座している場合の超音波および赤外線の照射場所を示す模式的図面である。
図4】人体検知装置をトイレに設置する場合のフローを示す模式的フローチャートである。
図5】人体検知装置の検知、利用者への声掛け、および職員への通報のフローを示す模式的フローチャートである。
図6】職員の携帯端末の注意情報受信と応答信号送信のフローを示す模式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0042】
図1は本実施形態の人体検知装置100の構成を示す模式的ブロック図であり、図2は介護用トイレ検知システム300の構成を示す模式的ブロック図であり、図3(a)は利用者Pが便座170に着座していない場合の超音波23および赤外線33の照射場所を示す模式的図面であり、図3(b)は利用者Pが便座170に着座している場合の超音波23および赤外線33の照射場所を示す模式的図面である。
【0043】
図1に示すように、人体検知装置100は人感センサ10、超音波センサ20、赤外線センサ30の3つのセンサを備えている。人感センサ10は人の発する赤外線を感知する赤外線センサ部11を備えている。超音波センサ20は超音波出力部21および超音波センサ部22を備えている。赤外線センサ30は赤外線出力部31および赤外線センサ部32を備えている。
人体検知装置100はさらに、状態判断部35、無線通信部40、音声出力部50、制御部60、および電池70を備えている。無線通信部40はアンテナ41を、音声出力部50はスピーカ51を備えている。制御部60には、動作開始、リセットなどの操作ボタン(図示せず)が接続されている。電池としては、例えば単3電池3本を挿入するようにしてもよい。その場合、1回の電池交換で3か月以上連続使用できることが望ましい。
無線通信部40の通信方式は特に限定されないが、例えば小電力無線、または無線LANなどが使用可能である。
【0044】
なお、介護施設等のトイレに設置する人体検知装置100としては、一般的には、バッテリー動作で容易に設置できることが望ましいが、一方で、交流電源に接続される人体検知装置100も用途として存在する。例えば、トイレの新設時に人体検知装置100を設置する場合には、交流電源に接続され、トイレの壁に埋め込むことのできる人体検知装置100が、トイレの内装をスマートに見せる点、また電池交換の必要がない点で望ましい。
この場合、人体検知装置100には、外部から供給される交流電源を所定の電圧の直流電源に変換する電源部(AC/DCコンバータ等)を備えていてもよい。外部電源が供給される場合、消費電力を下げるために、人感センサ10を利用して超音波センサ20および赤外線センサ30のON/OFFなどの電力制御をする必要がないため、人体検知装置100には人感センサ10が無くてもよい。
また、外部電源の供給方法は上記に限らず、例えば、有線LANによるPoE(Power over Ethernet)を用いて電源を供給してもよい。有線LANを用いる場合は、無線通信部を有線通信部(有線LANポート等)に代えることもできる。
【0045】
図2に示すように、介護用トイレ検知システム300は、人体検知装置100と携帯端末200とで構成されている。
携帯端末200は表示部110、人体検知装置100の無線通信部40と通信可能な無線通信部120、音声出力部130、制御部140、および電池150を備えている。
無線通信部120はアンテナ121を備え、音声出力部130はスピーカ(図示せず)を備え、制御部140は職員が応答するための応答ボタン141を備えている。
電池150は無線通信方式が小電力無線であれば、例えばコイン電池が使用可能である。
ただし、無線通信方式が無線LANであれば、専用のアプリケーションプログラムをインストールしたスマートフォンを携帯端末200として使用することも可能である。
【0046】
図3にはトイレ内における人体検知装置100、便座170、および利用者Pの位置関係を示す。図3(a)は利用者Pが便座170に着座していない場合の超音波23の照射位置Aおよび赤外線33の照射位置Cを示す模式的図面であり、図3(b)は利用者Pが便座170に着座している場合の超音波23の照射位置Bおよび赤外線33の照射位置Dを示す模式的図面である。
人体検知装置100はトイレの側面の壁の高い位置に固定されるのが望ましい。具体的には、着座した利用者Pの肩部付近の高さ以上とすることが好ましく、例えば床上900mm以上1800mm以下の位置が好ましい。また、壁の前後方向の設置位置としては、着座した利用者Pの頭部付近より前方とすることが好ましく、例えば頭部付近から前方600mm以下の位置に設置することが好ましい。人体検知装置100の設置方法は特に限定されないが、例えば、人体検知装置100をフック等で壁に掛けるようにしてもよい。
【0047】
人体検知装置100はトイレの側面の壁の高い位置に固定するのは、以下の理由による。
利用者Pの肩部よりも低い位置に設置されると、利用者Pがトイレの紙を手に取る場合または手摺等に触れる場合に、人体検知装置100のセンサを遮り、誤動作の原因となる場合がある。また、トイレの前面は古いタイプのトイレだと戸がある場合もあり、また台を設置するのも介助や車いすの動線に対して邪魔になる。奥行きの広いブースだと壁までの距離も長くなり、本体が見えづらくなる。また、人体検知装置100を利用者Pより後方に設けた場合は、トイレのタンクまたはフタが邪魔になり下半身(主に腰部)の検出が十分にできない場合がある。なお、利用者Pと人体検知装置100との距離が離れすぎると、センサの検出精度が悪くなる場合がある。
また、人体検知装置100はトイレの側面の壁に設けることが好ましい。これにより利用者Pの上半身(主に肩部)および下半身(主に腰部)の動きを確実に検出することができる。一方、トイレの背面に設けた場合は、人体検知装置100が見えずトイレの利用者Pが人体検知装置100の存在に気づかない場合も多いため、関心を持ってもらえない。また姿が見えないのに声がすると不安がられる恐れもあるためである。
【0048】
人体検知装置100は人感センサ10、超音波センサ20、赤外線センサ30の3つのセンサを備えているが、このうち、超音波センサ20と赤外線センサ30についてはセンサの固定位置、および照射方向が重要である。
具体的には、超音波23は、利用者Pが便座170に着座している場合には利用者Pの頭部から肩にかけての上半身の位置(B)に照射し、利用者Pが便座170に着座していない場合には人体検知装置100が固定された壁面と対向する壁面(A)に照射することが望ましい。
また、赤外線33は、利用者Pが便座170に着座している場合には利用者Pの腹部から腰にかけての下半身の位置(D)に照射し、利用者Pが便座170に着座していない場合には便座170の位置(C)に照射することが望ましい。
このため、超音波出力部21および超音波センサ部22は人体検知装置100の上部に、赤外線出力部31および赤外線センサ部32は人体検知装置100の下部に配置されている。
また、超音波出力部21および超音波センサ部22、および赤外線出力部31および赤外線センサ部32については、それぞれ、照射位置を容易に調整するために、角度調整機構(図示せず)を追加してもよい。
あるいは、人が座っていない状態の初期値を取る際に角度設定の目安となるように、レーザーポインタ(図示せず)を各センサ部の近傍に取り付けるようにしてもよい。
【0049】
また、利用者Pが便座170に着座している場合の利用者Pの頭部の位置は利用者Pの身長および姿勢によってばらつきが大きいため、利用者Pの頭部までの距離を測定するセンサとしてはビームの指向性が±15度程度と比較的広い超音波センサ20が用いられている。一方、利用者Pが便座170に着座している場合の利用者Pの腹部の位置は比較的ばらつきが少ないため、ビームの指向性が±6度程度と比較的狭い赤外線センサ30が用いられている。
【0050】
図4乃至図6は、それぞれ、人体検知装置100をトイレに設置する場合のフロー、人体検知装置100の検知、利用者Pへの声掛け、および職員への通報のフロー、および職員の携帯端末200の注意情報受信と応答信号送信のフローの模式的フローチャートである。
以下、各フローチャートについて説明する。
人体検知装置100をトイレに設置する場合のフローの模式的フローチャートを図4に示す。
(ステップS01)
人体検知装置100をトイレの側面の壁の高い位置に固定する。
(ステップS02)
利用者Pが便座170に着座していない状態での超音波センサ20と赤外線センサ30の測距値である初期測距値を測定して記録する。この場合、レーザーポインタをそれぞれのセンサの近傍に取り付け、角度調整機構を用いて、超音波センサ20と赤外線センサ30とがそれぞれ図3(a)の(A)および(C)の位置、および、図3(b)の(B)および(D)の位置に照射されるように調整してから初期測距値を測定するようにすることが望ましい。なお、初期測距値は、設置場所や調整角度を変更しない限り再度測定する必要はない。
【0051】
人体検知装置100の検知、利用者Pへの声掛け、および職員への通報のフローを示す模式的フローチャートを図5に示す。
(ステップS11-S12)
利用者Pが便座170に着座したら、超音波センサ20および赤外線センサ30でそれぞれ、超音波センサ20の着座測距値と赤外線センサ30の着座測距値とを測定して記録する。
(ステップS13-14)
人感センサ10で利用者Pの動きを検知すると、超音波センサ20の測距値と赤外線センサ30の測距値とを測定する。
(ステップS15-S16)
測定した現在の超音波センサ20の測距値と着座測距値との差異、および現在の赤外線センサ30の測距値と着座測距値との差異を計算し、どちらの差異とも所定の閾値以下であれば、再度人感センサ10で利用者Pの動きを検知するまで待機する。
この場合の所定の閾値としては、100mmから200mmの範囲とすることが望ましい。この閾値が100mmより小さいと、人体検知装置100の反応が過敏になりすぎ、200mmより大きいと、反応が鈍感になりすぎ、利用者Pが完全に立ち上がっていると検知する前に前兆動作を検出することができなくなる。
(ステップS17)
超音波センサ20の測距値と着座測距値と差異、または赤外線センサ30の測距値と着座測距値と差異が所定の値以上であれば、利用者Pが立ち上がろうとしていると判断し、人体検知装置100は音声出力部50よりアナウンス1を出力する。アナウンス1は例えば「もう一度座ってください。」、「立たないでください。」のような、利用者Pに再度着座を促すアナウンスである。
なお、超音波センサ20の測距値と着座測距値と差異、または赤外線センサ30の測距値と着座測距値と差異が所定の値以上であれば、利用者Pが立ち上がろうとしていると判断するのは、便座170に着座した利用者Pが立ち上がる場合、上半身を前屈したり、腰を動かしたりすることが多いためである。この場合、実際には立ち上がろうとはしていない場合もありうるが、利用者Pに声掛けをすることは利用者Pの安心感の醸成に有効であるので、利用者Pが立ち上がろうとはしていない場合に声掛けをしても問題はない。
【0052】
(ステップS18-S19)
測定した現在の超音波センサ20の測距値と初期測距値との差異、および現在の赤外線センサ30の測距値との初期測距値との差異を計算し、どちらかの差異が所定の閾値以上であれば、利用者Pは完全には立ち上がっていないと判断し、再度人感センサ10で利用者Pの動きを検知するまで待機する。
(ステップS20)
現在の超音波センサ20の測距値と初期測距値との差異、および現在の赤外線センサ30の測距値と初期測距値との差異がどちらも所定の値以下であれば、利用者Pは完全に立ち上がっていると判断し、人体検知装置100は音声出力部50よりアナウンス2を出力する。アナウンス2は例えば「職員が来るまでもう少し座っていてください。」、「職員を呼びましたよ。」、「職員が来るまで一緒に待っていましょう」のような、職員の見守りを意識して、職員が来るまでの間利用者Pに立ち上がらないよう促すアナウンスである。
所定の値としては、概ね50mm程度とすることが望ましい。この値は、測定誤差や人体検知装置100の据付誤差を考慮して決定されている。
この場合、超音波センサ20の測距値と初期測距値との差異、および現在の赤外線センサ30の測距値と初期測距値との差異がどちらも所定の値以下である場合にのみ、利用者Pは完全には立ち上がっていると判断するのは、利用者Pが完全に立ち上がっていないにもかかわらず職員の携帯端末200に注意情報を送信した場合、職員の負担が増加するためである。
(ステップS21-S22)
アナウンス2の出力後、人体検知装置100は無線通信部40を介して職員の携帯端末200に注意情報を送信し、職員の携帯端末200から応答信号を受信するまで待機する。
(ステップS23)
携帯端末200から応答信号を受信すると、人体検知装置100は音声出力部50よりアナウンス3を出力する。アナウンス3は例えば「職員がこちらに向かっていますよ。」、「間もなく職員が到着します。」のような、利用者Pを安心させるアナウンスである。
(ステップS24)
職員が戻ってきてリセットボタンを押すと、一連の処理が終了する。
【0053】
職員の携帯端末200の注意情報受信と応答信号送信のフローを示す模式的フローチャートを図6に示す。
(ステップS31)
携帯端末200は人体検知装置100から注意情報を受信するまで待機する。
(ステップS32-S33)
無線通信部120を介して注意情報を受信すると、携帯端末200は表示部110のランプを点灯するとともに音声出力部130より音楽を出力する。表示部110にはランプ以外に数字表示を備え、注意情報を送信した人体検知装置100の番号を表示することが望ましい。あるいは、人体検知装置100と携帯端末200とをペアリングし、ペアリングされた携帯端末200のみが注意情報を受信するようにしてもよい。また、携帯端末200がスマートフォンである場合は、スマートフォンの表示部に注意情報および注意情報を送信した人体検知装置100の番号を表示するようにしてもよい。
(ステップS34-S35)
携帯端末200は応答ボタン141が押下されるまで待機し、応答ボタン141が押下されると応答信号を送信し、一連の処理が終了する。
【0054】
以上のように、本発明の人体検知装置100は、超音波センサ20の測距値と赤外線センサ30の測距値とを初期測距値および着座測距値と比較することにより、利用者Pが立ち上がろうとしているか、または、完全に立ち上がっているかを区別する。
さらに、立ち上がろうとしている場合には再度着座するよう利用者Pにアナウンスし、完全に立ち上がっている場合には職員が来るまでの間立ち上がらないよう利用者Pにアナウンスするとともに職員に注意情報を送信する。
そして、これらのステップを備えることにより、本発明の人体検知装置100は、利用者Pの安心感の醸成と職員の負担の軽減、および事故の未然防止を図っている。
【0055】
本発明においては、利用者Pが『利用者』に相当し、人体検知装置100が『人体検知装置』に相当し、人感センサ10が『人感センサ』に相当し、超音波センサ20が『超音波センサ』に相当し、赤外線センサ30が『赤外線センサ』に相当し、状態判断部35が『状態判断部』に相当し、便座170が『便座』に相当し、音声出力部50が『音声出力部』に相当し、無線通信部40が『無線通信部』に相当し、携帯端末200が『携帯端末』に相当し、応答ボタン141が『応答ボタン』に相当し、介護用トイレ検知システム300が『介護用トイレ検知システム』に相当する。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
10 人感センサ
20 超音波センサ
30 赤外線センサ
35 状態判断部
40 無線通信部
50 音声出力部
100 人体検知装置
141 応答ボタン
170 便座
200 携帯端末
300 介護用トイレ検知システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6