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特開2025-6416眼科装置、及び眼科装置制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006416
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】眼科装置、及び眼科装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107202
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】石井 澪
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA06
4C316FC04
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合を軽減する。
【解決手段】 被検眼を検査する検眼部を有する眼科装置であって、被検者に照明光を照射する照明手段と、被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影手段と、撮影画像を表示する表示手段と、制御手段と、を備え、制御手段は、被検眼の検査時に適用される照明手段の照明光量及び撮像手段のゲインに対して、被検眼に対する検眼部のアライメント時に、照明手段の照明光量と、撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、表示手段に表示される撮影画像を白飛びさせる。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する検眼部を有する眼科装置であって、
被検者に照明光を照射する照明手段と、
被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影手段と、
前記撮影画像を表示する表示手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記照明手段の照明光量と、前記撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、前記表示手段に表示される前記撮影画像を白飛びさせることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、
前記制御手段は、被検眼に対する前記検眼部のアライメント時に得られる前記撮影画像を白飛びさせるために、被検眼の検査時に適用される前記照明光量及び前記ゲインに対して、それらの少なくとも一方を上げることを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科装置において、
前記制御手段は、被検眼の検査時には、前記撮影画像を白飛びさせるために上げた前記照明光量及び前記撮像手段のゲインを、所定の検査レベルに戻すことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの眼科装置において、
被検眼の検知信号と、被検眼に対する前記検眼部のアライメント完了の完了信号と、前記検眼部による検査を開始するための検査開始信号と、前記撮影画像の白飛びを終了するために検者によって操作される操作信号と、の少なくとも一つの信号を受け付ける受付手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段によって受け付けられた何れかの信号に基づき、前記撮影画像を白飛びさせるために上げた前記照明光量及び前記撮像手段のゲインを、所定の検査レベルに戻すことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかの眼科装置において、
前記検眼部は、被検眼の眼特性を測定する測定光学系であって、被検眼に測定光を投光する投光光学系と、被検眼からの測定光の戻り光を受光する撮像素子を有する受光光学系と、を備える測定光学系を備え、
前記撮像手段は、前記受光光学系が有する前記撮像素子と兼用されることを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの眼科装置において、
前記制御手段は、被検者に対して前記検眼部が所定の検査距離に位置する状態において、被検者の顔に含まれる被検眼を前記撮影画像上で識別可能なレベルで、前記撮影画像を白飛びさせることを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかの眼科装置において、
前記制御手段は、前記照明光によって被検眼に形成される角膜反射輝点と、その輝点の周りの瞳孔と、を前記撮影画像上で検出可能なレベルで、前記撮影画像を白飛びさせることを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
被検眼を検査する検眼部を有する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、制御部によって実行されることで、
被検者に照明光を照射する照明ステップと、
撮像手段で被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影ステップと、
前記撮影画像を表示する表示ステップと、
前記照明ステップの照明光量と、前記撮像ステップでの撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、前記表示ステップで表示される前記撮影画像を白飛びさせる制御ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする眼科装置制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する眼科装置、および眼科装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査する眼科装置としては、眼屈折力測定装置、眼圧測定装置、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope: SLO)、眼底カメラ、視野測定装置、角膜形状測定層、角膜内皮撮影装置など、各種の装置が知られている。これらの眼科装置は、被検眼に対して検眼部を適正な位置にアライメントした状態で検査を行う。
【0003】
被検眼に対する検眼部のアライメントに当たり、被検者の画像を撮影して表示部に表示させる場合、背景や被検者の衣服などの不要な情報が表示部に表示されてしまい、不要な情報が検者や観察者の目に入って煩わしく感じたり、検査には不必要な情報が表示画面に映し出されたりする不都合があった。
【0004】
この不都合の対応として、表示画面に映し出される撮影画像の表示を制限する眼科装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-80459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の実施例では、被検者が検出されるまで、撮影画像にメッセージウィンドウを重畳表示させる技術が開示されている。しかし、この場合、検者が被検眼に対して検眼部を位置合わせするに、メッセージウィンドウに被検者の顔が隠れてしまい、表示画面を見ながら被検者の顔に検眼部を誘導又は移動することが行い難い不都合がある。
【0007】
本開示は、上記従来技術に鑑み、検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合を軽減できる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本開示の第1態様に係る眼科装置は、被検眼を検査する検眼部を有する眼科装置であって、被検者に照明光を照射する照明手段と、被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影手段と、前記撮影画像を表示する表示手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記照明手段の照明光量と、前記撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、前記表示手段に表示される前記撮影画像を白飛びさせることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る眼科装置制御プログラムは、被検眼を検査する検眼部を有する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、制御部によって実行されることで、被検者に照明光を照射する照明ステップと、撮像手段で被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影ステップと、前記撮影画像を表示する表示ステップと、前記照明ステップの照明光量と、前記撮像ステップでの撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、前記表示ステップで表示される前記撮影画像を白飛びさせる制御ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼科装置の外観構成及び光学系の構成を説明する図である。
図2】眼科装置を被検者側から見た図である。
図3】投光光学系が備える測定光源の配置を説明する図である。
図4】眼科装置における制御系の概略構成を示す図である。
図5】撮像素子に撮影される撮影画像の撮影領域を説明する図である。
図6】照明光量及び撮像素子のゲインが検査時(測定時)の条件にて設定されている場合の撮影画像の例である。
図7】本実施例の眼科装置の制御動作を示すフローチャートである。
図8図6の撮影画像の表示に対して、照明光量及び撮像素子のゲインが上げられた場合の撮影画像の例である。
図9】被検眼に対する検眼部のアライメント完了状態における表示画面の例を示す図である。
図10】フォトレフラクション方式による眼屈折力の測定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0011】
例えば、眼科装置(例えば、眼科装置1)は、検眼部(例えば、検眼部2)を備える。例えば、眼科装置は、照明手段(例えば、照明光学系30)と、撮影手段(例えば、撮像素子24)と、表示手段(例えば、ディスプレイ5)と、制御手段(例えば、制御部50)と、を備える。
【0012】
<検眼部>
例えば、検眼部は、被検眼を検査するために使用される。例えば、検眼部は、検査光学系(例えば、測定光学系10)を備える。例えば、検査光学系は、被検眼の眼特性を測定する測定光学系であってもよいし、眼組織の断層像をえるOCT光学系、被検眼の前眼部の組織や眼底を撮影する撮影光学系であってもよい。例えば、検査光学系は、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する測定光学系であってもよい。この場合、測定光学系は、被検眼に測定光を投光する投光光学系(例えば、投光光学系10a)と、被検眼からの測定光の戻り光(反射光)を受光する受光光学系(例えば、受光光学系10b)を備え、受光光学系は、被検眼からの戻り光を受光する撮像素子を有していてもよい。
【0013】
例えば、検眼部には、照明手段(例えば、照明光学系30)と、撮影手段(例えば、撮像素子24)と、が配置される。例えば、検眼部は、被検眼に検査光学系をアライメントするために、移動される。例えば、検眼部には、観察光学系(例えば、観察光学系40)が備えられてもよい。観察光学系は被検者や被検眼を観察するために使用される。
【0014】
<照明手段>
例えば、照明手段は、被検者に照明光を照射するために使用される。例えば、照明手段は、照明光源(例えば、照明光源32)を備える。例えば、照明光源は近赤外光を発する。例えば、照明光源は複数個が設けられていてもよい。例えば、検査光学系がフォトレフラクション方式の測定光学系である場合、照明手段は、測定光学系の投光光学系と兼用されていてもよい。
【0015】
<撮影手段>
例えば、撮影手段は、照明手段によって照明された被検者を撮影することで撮影画像を取得する。例えば、撮影手段は、検眼部が備える観察光学系(例えば、観察光学系40)に設けられていてもよい。例えば、撮影手段は、取得する撮影画像のゲインを変更可能にされている。例えば、検査光学系がフォトレフラクション方式の測定光学系である場合、撮影手段は、測定光学系の受光光学系が備える撮像素子と兼用されていてもよい。すなわち、測定光学系が備える撮影手段(撮像素子)により、被検者が撮影されることで撮影画像が取得されてもよい。
【0016】
<制御手段>
例えば、制御手段は、照明手段の照明光量の上げ下げ(増減)を制御する。例えば、制御手段は、撮影手段のゲインの上げ下げを制御する。例えば、制御手段は、照明手段の照明光量と、撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、表示手段に表示される撮影画像を飛びさせる。言い換えれば、制御手段は、表示手段に表示される撮影画像が白飛びするように、照明手段の照明光量と、撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げる。これにより、検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合が軽減される。なお、例えば、撮影画像の白飛びとは、撮影画像の諧調(輝度)が飽和(サチレート)されることである。これにより、撮影画像に輝度の高い白色部分が現れる。この白飛びによって、撮影画像に含まれていた、検査に不必要な情報が消され、表示画面に現われなくなる。
【0017】
例えば、制御手段は、撮影画像に白飛び部分が現れるように、照明手段の照明光量と撮像手段のゲインの両方を上げてもよい。制御手段が照明手段の照明光量を上げる(増加する)場合、照明光源自体の光量を上げる(増加する)ことでもよいし、点灯する照明光源の数を増やしてもよいし、光量減光フィルタを利用し、照明光路に配置された光量減光フィルタを外すことで、照明光量を上げてもよい。
【0018】
例えば、制御手段は、被検者に対して検眼部が所定の検査距離(作動距離)に位置する状態において、被検者の顔に含まれる被検眼(例えば、左右眼)を撮影画像上で識別可能なレベルで、撮影画像を白飛びさせてもよい。言い換えれば、白飛びの程度の上限は、被検眼に対して検眼部が所定の検査距離に位置する状態において、撮影画像上で被検眼が検出可能なレベルとされればよい。これにより、被検者の衣服等が白飛びしていても、検者は、少なくとも被検者の被検眼を識別できれば、撮影画像を観察しながら検眼部を被検眼に移動できる。また、検眼部が自動的に移動される構成の場合には、被検眼の検知に基づいて検眼部を移動できる。
【0019】
例えば、撮影画像上の白飛びの程度は、照明光学系の照明光によって被検眼に形成される角膜反射輝点と、その輝点の周りの瞳孔と、を撮影画像上で検出可能なレベルとされていてもよい。また、この場合、白飛びの程度は、撮影画像上の瞳孔内が明るくならず、瞳孔が黒い部分として検出可能なレベルとされていてもよい。これにより、被検眼を適切に検知でき、検眼部を被検眼に適切にアライメントできる。
【0020】
また、例えば、白飛びの下限の程度は、被検者が検眼部に対して所定の検査距離に位置する状態において、その被検者が着用する白い服部分が白飛びするレベルに調整されていればよい。この場合、被検者の顔部の頬、額の部分が白飛びするように調整されていてもよい。なお、白飛びの程度は、実験により定めることができる。
【0021】
例えば、制御手段は、被検眼に対する検眼部のアライメント時に得られる撮影画像を白飛びさせるために、被検眼の検査時に適用される照明光量及び撮像手段のゲインに対して、それらの少なくとも一方を上げることでもよい。また、例えば、制御手段は、被検眼の検査時には、撮影画像を白飛びさせるために上げた照明光量及び撮像手段のゲインを、検査時に適用される所定の検査レベルに戻す(下げる)ことでもよい。これにより、白飛びの調整が終了されて検査時の条件に戻されることで、適切に検査が行える。なお、例えば、照明光量及び撮像手段のゲインに関する所定の検査レベルは、撮影画像を基に被検眼の検査(測定)の解析が可能なように、撮影画像が白飛びやハレーションを起こさないレベルとされていればよい。
【0022】
例えば、制御手段は、被検眼の検知信号と、被検眼に対する検眼部のアライメント完了の完了信号と、検眼部による検査を開始するための検査開始信号と、撮影画像の白飛びを終了するために検者によって操作される操作信号と、の何れかに基づいて、撮影画像を白飛びさせるために上げた照明光量及び撮像手段のゲインを、所定の検査レベルに戻す処理(下げる処理)を行ってもよい。この場合、眼科装置は、被検眼の検知信号と、アライメント完了の完了信号と、検査開始信号と、検者によって操作される操作信号と、の少なくとも一つを受け付ける信号受付手段(例えば、制御部50)を備える。
【0023】
例えば、撮影画像の白飛びを終了するために、被検眼の検知信号が利用される場合、眼科装置には、被検眼に指標を投影して形成する指標投影手段(例えば、照明光学系30)と、指標検出手段(例えば、観察光学系40)と、が備えられ、被検眼に形成された指標が指標検出手段によって検出されることにより、被検眼の検知信号が出力される。
【0024】
例えば、撮影画像の白飛びを終了するために、アライメントの完了信号が利用される場合、眼科装置には、指標検出手段によって検出された指標が所定の許容範囲に有るかを判定する判定手段(例えば、制御部50)が備えられ、判定手段によってアライメントの完了信号が出力される。
【0025】
例えば、撮影画像の白飛びを終了するために、検査開始信号が利用される場合、眼科装置に設けられた判定手段によるアライメント完了の判定に基づいて、自動的に検査開始信号が出力されてよいし、眼科装置には、検査開始のトリガー信号を入力する操作スイッチが設けられ、その操作スイッチが検者によって操作されることで、検査開始信号が出力されてもよい。
【0026】
例えば、撮影画像の白飛びを終了するために、検者によって操作される操作信号が利用される場合、眼科装置には、検者が操作する操作手段(例えば、操作部52)が備えられ、その操作手段が検者によって操作されることで、操作信号が出力されてもよい。
【0027】
<制御プログラム>
なお、本開示においては、本実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う制御プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0028】
例えば、眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムは、制御部によって実行されることで、被検者に照明光を照射する照明ステップと、撮像手段で被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影ステップと、撮影画像を表示する表示ステップと、照明ステップの照明光量と、撮像ステップでの撮像手段のゲインと、の少なくとも一方を上げることで、表示ステップで表示される撮影画像を白飛びさせる制御ステップと、を眼科装置に実行させる。これにより、検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合が軽減される。
【0029】
[実施例]
本実施形態の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、実施例に係る眼科装置1の外観構成及び光学系の構成を説明する図であり、眼科装置1を側方から見た図である。図2は、眼科装置1を被検者側から見た図である。
【0030】
本実施例では、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置1を例にして説明する。フォトレフラクション方式の眼屈折力測定は、例えば、被検眼の眼底からの反射光の瞳孔における割合から被検眼の眼屈折力を他覚的に得るものである。また、本実施例では、手持ち式の眼科装置1を例にして説明する。
【0031】
図1及び図2において、眼科装置1は、検眼部2を備える。検眼部2の内部には、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するための測定光学系10を含む光学系が配置されている。被検眼に対向する検眼部2の側には、測定光学系10の光軸L1上に位置する測定窓3が設けられている。また、検眼部2の被検者側には、被検者との距離を検知するための距離検知器9が配置されていてもよい。例えば、距離検知器9には超音波センサが用いられる。
【0032】
また、検眼部2において、測定窓3の反対側にはディスプレイ5が配置されている。また、検眼部2に下には検者が手で把持する把持部7が取り付けられている。検者は、把持部7を片手で把持することで、被検眼に対して検眼部2を移動できる。なお、図1において、被検眼(被検者)に対する左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、前後方向(作動距離方向)をZ方向とする。
【0033】
以下、検眼部2に配置される、検査光学系の例である測定光学系10、照明光学系30、観察光学系40を説明する。
【0034】
<測定光学系>
測定光学系10は、投光光学系10a、受光光学系10bを備える。投光光学系10aは、測定光源13を備える。例えば、測定光源13は、近赤外光を発光する赤色LED(発光ダイオード)が用いられる。受光光学系10bは、対物レンズ22、撮像素子24を備える。
【0035】
図3は、投光光学系10aが備える測定光源13の配置を説明する図であり、被検眼側から見た場合の図を示す。例えば、測定光源13としては、複数の測定光源が設けられ、少なくとも3経線方向に関して互いに分離して配置される。本実施例においては、測定光源13としては、4経線方向に8組の測定光源(測定光源13a、測定光源13b、測定光源13c、測定光源13d、測定光源13e、測定光源13f、測定光源13g、測定光源13h)が配置される。
【0036】
例えば、測定光源13a~測定光源13hの8組の測定光源は、対物レンズ22の外周円の外側に同心円上に45°間隔で配置されている。これらの測定光源13は、基盤14に固定されている。なお、対物レンズ22は、基盤14に固定されていてもよい。そして、8組の測定光源13a~13hは、それぞれ3つの測定光源を有する。例えば、一例として、測定光源13aにおいては、光軸L1から順に、3つの光源13a1,13a2,13a3が光軸L1を基準として経線方向(半径方向)に所定の間隔をあけて配置されている。その他の7組の測定光源13b~13hについても、図3上の符号は略されるが、同様に、光軸L1から順に、3つの光源が所定の間隔をあけて配置されている。つまり、8個の測定光源が対物レンズ22の外周円の外側に、異なる3つの同心円上にそれぞれ配置される。
【0037】
これらの測定光源13の点灯によって被検眼に測定光が投光され、被検眼の前眼部が照明されると共に、瞳孔内に測定光が入射される。なお、各測定光源は、後述する制御部50によって独立して制御される。例えば、各測定光源の点灯、光量の調整、等がそれぞれ独立して制御される。
【0038】
投光光学系10aによる測定光の被検眼からの戻り光(反射光)は、受光光学系10bの対物レンズ22を介して撮像素子24に受光され、撮像素子24によって被検眼の瞳孔を含む前眼部像が撮像されることで、撮影画像が得られる。
【0039】
<照明光学系>
照明光学系30は、被検者を照明するために使用される。照明光学系30は、近赤外光を発する照明光源32を備える。もちろん、異なる種類の光源が用いられてもよい。照明光源32の照明光が被検者に照射されることにより、被検者の眼を含む顔が照明される。照明光源32は複数個であってもよい。本実施例では、図2に示すように、4個の照明光源32が、光軸L1を中心にして、測定窓3の外側に左右対称に配置されている。なお、照明光学系30は、測定光源13が兼用されてもよい。
【0040】
また、本実施例では、照明光学系30は、被検眼角膜にアライメント検出用の指標の例である輝点を形成するアライメント指標投影光学系を兼ねる。もちろん、照明光学系30とは別に、アライメント指標投影光学系が設けられていてもよい。
【0041】
<観察光学系>
観察光学系40は、照明光学系30によって照明された被検者の撮影画像を得るために使用される。本実施では、観察光学系40は、測定光学系10(受光光学系10b)の対物レンズ22及び撮像素子24を兼用する。なお、観察光学系40は、測定光学系10の受光光学系10bとは別に設けられ、撮像素子24とは別に撮像素子を有していてもよい。照明光学系30によって照明された被検者(被検眼を含む顔)は、対物レンズ22を介して撮像素子24に撮影される。撮像素子24により撮影された撮影画像は、表示手段の例であるディスプレイ5の画面に表示される。ディスプレイ5に表示される撮影画像は、被検眼に対して検眼部2を位置合わせするための観察画像として利用される。
【0042】
また、本実施例では、観察光学系40は、アライメント指標投影光学系によって被検眼に形成される指標(角膜反射輝点)を検出するアライメント指標検出光学系を兼ねる。もちろん、観察光学系40とは別に、アライメント指標検出光学系が設けられていてもよい。
【0043】
<制御系の構成>
図4は、眼科装置1における制御系の概略構成を示す図である。制御部50によって眼科装置1の各部の制御が行われる。制御部50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部50には、ディスプレイ5、測定光源13、撮像素子24、照明光源32が接続されている。制御部50によって撮像素子24に撮影された撮影画像の画像処理が行われる。換言すれば、本実施例では、制御部50が、画像処理部を兼用している。また、制御部50は各種の信号を受け付ける受付手段を兼ねている。
【0044】
また、制御部50には、操作部52、記憶手段の例であるメモリ54が接続されている。操作部52によって検者の操作による各種の操作信号が入力される。操作部52は、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかが使用されてもよい。例えば、ディスプレイ5がタッチパネルとされることで、ディスプレイ5が操作部52の機能を有していてもよい。例えば、操作部52は、測定開始信号を入力するトリガスイッチを含んでいてもよい。なお、制御部50は、操作部52による操作信号を受け付ける受付部としも機能する。メモリ54には、測定結果や被検眼の撮影画像、等が記憶される。また、眼科装置1の動作を制御するための各種プログラム等が記憶されている。
【0045】
<動作>
以上のような構成を備える装置の動作を説明する。なお、本実施例の眼科装置1における検査は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するフォトレフラクション方式を例にしており、被検眼に対する作動距離(検査距離)が1mで設定され、撮像素子24には、被検者の両眼が含まれるアライメント状態で検査(測定)される。
【0046】
ここで、被検眼に対して検眼部2を位置合わせするに際し、本実施例の眼科装置1は、手持ちの装置であるため、直ぐに被検眼に対向するように検眼部2を移動できないことがある。この場合、例えば、図5に示すように、撮像素子24に撮影される撮影画像の撮影領域110が被検者の顔には存在せず、検眼部2を被検眼に位置合わせする過程で、図6に示すように、ディスプレイ5の画面には、被検者の衣服等の撮影画像が表示されてしまう場合がある。図6のように、被検者の衣服など、検査に不必要な情報がディスプレイ5に表示されると、不必要な部分に意識が注がれたり、場合によっては、被検者の個人情報が悪用されたりすることがある。
【0047】
このような検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合を改善するために、本実施例では、ディスプレイ5に表示される撮影画像が「白飛び」されるように、制御部50により、照明光学系30の照明光量と撮像素子24のゲインとの少なくとも一方が挙げられる(調整される)。なお、「白飛び」とは、言い換えれば、撮影画像の諧調(明るさ)が飽和(サチレート)されることであり、これにより、結果的に撮影画像に輝度の高い白色部分が現れる。撮影画像を「白飛び」させるときの照明光量、及び撮像素子24のゲインの上昇の程度は、実験によって定められればよい。
【0048】
例えば、被検眼に対して検眼部2が所定の作動距離(本実施例では1m)に位置する状態において、照明光量の上昇は、撮影画像上で瞳孔が検出されるレベルとされる。例えば、照明光量の上昇は、照明光学系30からの照明光が被検眼の瞳孔から入射し、被検眼の眼底からの反射光により、撮像素子24にて撮影される撮影画像上の瞳孔内が明るくならず(瞳孔内に輝度の勾配が生じず)、瞳孔が黒い部分として検出可能な程度とされる。また、撮影画像上の瞳孔と虹彩の輪郭が区別可能に検出される程度とされる。そして、例えば、撮像素子24のゲインの上昇は、被検者が着用する白い服部分や被検者の顔部の頬、額の部分が「白飛び」するように調整される。
【0049】
なお、図6は、照明光学系30の照明光量、及び撮像素子24のゲインが、測定光学系10による検査時(測定時)の条件(検査レベル)にて設定されている場合の例である。この場合、照明光量及び撮像素子24のゲインは、撮影画像に基づく被検眼の検査(測定)の解析が可能なように、撮影画像が白飛びやハレーションを起こさないレベルとされる。例えば、本実施例では、検査時には、4つの照明光源32の内の2つが消灯される。また、撮像素子24のゲインは、所定距離(本実施例では1mの作動距離)に位置する撮影対象物の撮影画像が「白飛び」しないレベルに調整される。
【0050】
以下、眼科装置1の制御動作を図7のフローチャートを使用して説明する。図7は、本実施例の眼科装置の制御動作を示すフローチャートである。
【0051】
眼科装置1の電源スイッチが投入されると、初めに、被検者のIDや年齢等の被検者情報を入力するための画面がディスプレイ5に表示される(S1)。検者は、操作部52を操作して被検者情報を入力する。次に、操作部52が有するスタートボタンが押されると、その信号は制御部50に受け付けされる(S2)。スタートボタンの信号が受付けされると、ディスプレイ5の表示画面は、撮像素子24に撮像される撮影画像の表示に切換えられると共に、制御部50の制御により、照明光学系30の照明光量と撮像素子24のゲインの少なくとも一方が、通常の検査時(測定時)に適用される照明光量及び撮像素子24のゲインに対して上げられる(S3)。本実施例では、4つの照明光源32が点灯されることで、照明光量が上げられると共に、撮像素子24のゲインが予め設定されたレベルに上げられる。
【0052】
検者は、眼科装置1を手に持ち、ディスプレイ5に被検者の顔(被検眼)が映し出されるように、検眼部2を移動する。なお、例えば、被検者は椅子に座って位置する。
【0053】
ここで、検眼部2を被検眼に位置合わせする過程で、図5に示される撮影領域110が被検者の衣服部分に位置していたとしても、ディスプレイ5の表示画面には、図6の撮影画像の表示に対して、図8のように、衣服部分が白飛びした撮影画像が表示される。これにより、検査に不必要な情報が表示画面に映り込んでしまう不都合が軽減される。また、検者による被検者の個人情報の悪用を防ぐことができる。図8の例では、点線領域220が白飛びした部分である。
【0054】
なお、照明光学系30による照明光の反射光量が少ない被検者の体や顔の輪郭、顔内の眼、鼻、口等の特徴部分は、白飛びが生じ難い。このため、検者は、ディスプレイ5の表示画面を見ながら、表示画面に被検者の顔、及び被検眼は現れるように検眼部2を移動することができる。
【0055】
図9は、被検眼に対する検眼部2のアライメント完了状態における表示画面の例を示す図である。本実施例のフォトレフラクション方式の眼屈折力測定においては、被検者の左右両眼を含む撮影画像に基づいて眼屈折力が得られる。このため、被検眼に対する検眼部2のXY方向のアライメントは、光軸L1に対して被検眼の左右両眼の中心が位置合わせされる。また、本実施例では、被検眼に対する検眼部2のZ方向(作動距離方向)のアライメントは、1mの距離に位置合わせされる。
【0056】
図9において、ディスプレイ5の画面210上には、被検眼を位置合わせするためのガイド指標が撮影画像に重畳して表示される。本実施例では、被検者の右眼を位置合わせするためのガイド指標としてのガイド枠GRと、被検者の左眼を位置合わせするためのガイド指標としてのガイド枠GLと、が表示される。例えば、各ガイド枠GR及びGLは、矩形形状とされている。また、ガイド枠GRとガイド枠GLとの左右方向の中心には、被検者の両眼の左右中心を位置合わせするためのガイド指標としてのガイド線GCが表示される。なお、前述した図6及び図8の画面例においては、説明の便宜上、ガイド枠GR及びGL、ガイド線GCの表示は略されている。
【0057】
また、撮像素子24に撮影される撮影画像には、照明光学系30による、右眼ERの角膜反射の輝点KR、及び左眼ELの角膜反射の輝点KLが現れる。輝点KR及び輝点KLの周りの瞳孔EPは、反射光量が低いため、黒部分として現れる。検者は、輝点KR及び輝点KLと、それぞれの周りの瞳孔EPと、を確認することで、被検者の右眼ER及び左眼ELを判断することができる。そして、検者は、被検者の右眼ER及び左眼ELが、それぞれガイド枠GR及びGLに入り、ガイド線GCに対して右眼ER及び左眼ELが左右均等に位置するように、検眼部2をX方向に移動する。
【0058】
また、検者は、右眼ER及び左眼ELがガイド枠GR及びGLの上下方向の中央に位置するように、検眼部2をY方向に移動する。
【0059】
また、検眼部2に対する被検者の顔(眼)のZ方向におけるアライメント状態は、距離検知器9により検知され、その検知結果が画面210に表示される。例えば、右欄表示部212には、Z方向を位置合わせするためのガイド指標として、被検眼に対する検眼部2の遠近を示すインジケータ213が表示される。例えば、所定の作動距離に対して検眼部2が被検眼側に近い場合には、上側のインジケータ213aが増加される。また、所定の作動距離に対して検眼部2が被検眼から遠い場合には、下側のインジケータ213bが増加される。検者はインジケータ213a及び213bが減少して消えるように、検眼部2をZ方向に移動する。なお、図9に示された右欄表示部212のガイド表示は例示に過ぎず、Z方向のアライメント状態を検者に報知する形態としては、種々のものが有り得る。例えば、被検者の顔の撮影画像に、距離検知器9の検知結果を示すインジケータが重畳して表示されてもよい。
【0060】
以上のように、検者がディスプレイ5の画面表示を観察しながら検眼部2をXYZ方向に移動することにより、被検眼に対する検眼部2のアライメントを行うことができる。また、制御部50により、撮像素子24によって取得された撮影画像が画像処理され、角膜反射の輝点KR及び輝点KLが検出されることにより、XY方向のアライメント状態の適否が判定される。
【0061】
図7のフローチャートの説明に戻り、撮影画像内に2つの輝点が現れ、ガイド枠GR及びGL内にそれぞれ輝点が有るか否かが判定される(S4)。次に、各輝点の周りに瞳孔と見做される黒部分(例えば、輝度が所定値以下で、輝点を基準に所定範囲に広がる黒部分)が有るか否かが判定される(S5)。各輝点の周りに瞳孔と見做される黒部分が有れば、撮影画像内に被検眼が検知されたと判定される。輝点の周りの黒部分が瞳孔と見做されると、その瞳孔径が画像処理によって取得され、測定に使用される。そして、2つの輝点の位置関係により、左右眼の輝点KR及び輝点KLが判定される。すなわち、ガイド枠GR内の輝点が右眼ERの輝点KRであると判定され、ガイド枠GL内の輝点が左眼ELRの輝点KLであると判定される。次に、2つの輝点KR及び輝点KLが、それぞれガイド枠GR及びGLの内部の所定の許容範囲に有るか否かが判定されることで(S6)、XY方向のアライメント状態が判定される。
【0062】
また、距離検知器9により検知されるZ位置(Z方向の距離)が所定の許容範囲内に有るか否かが判定されることで(S7)、Z方向のアライメント状態が判定される。そして、XYZ方向のアライメント状態がそれぞれ所定の許容範囲にあれば、アライメント完了が判定される(S8)。
【0063】
XYZ方向のアライメントが完了したと判定された場合、制御部50の制御により、撮影画像の白飛び調整が終了される(S9)。すなわち、アライメント完了が判定されると、撮影画像を白飛びさせるために上げられた照明光量及び撮像素子24のゲインが、検査時の所定レベルに戻される(下げられる)。本実施例では、検査時には、4個の照明光源32の内の左側又は右側に位置する2個が点灯され、また、撮像素子24のゲインは、1mの作動距離に位置する撮影対象物の撮影画像が「白飛び」しないレベルに戻される。
【0064】
また、XYZ方向のアライメントが完了されると、制御部50により自動的に測定開始のトリガー信号が発せられ、測定が実行される(S10)。また、自動的に測定が実行されるのではなく、ディスプレイ5にアライメント完了の旨を示す表示がなされ、これを確認した検者が、操作部52に設けられた測定開始信号の入力スイッチを操作し、その信号が受付けられることで、測定が実行されてもよい。
【0065】
測定が実行されると、例えば、図3に示される第1経線方向の測定光源13aの光源13a1,13a2,13a3が順次点灯される。測定光源13からの測定光は、被検眼に照射されることで瞳孔内に入射し、眼―底で反射された反射光は瞳孔から射出され、撮像素子24によって撮影される。そして、測定光源13aの順次点灯に同期して、撮像素子24によって撮影された撮影画像が取得され、メモリ54に順次記憶される。以降、同様に、他の経線方向に位置する測定光源13b~13hの各光源が順次点灯され、これに同期して、撮像素子24によって撮影された撮影画像がメモリ54に順次記憶される。各撮影画像が記憶されると、制御部50によって各画像が画像処理されることで、左右の被検眼の眼屈折力が求められる。
【0066】
図10は、フォトレフラクション方式による眼屈折力の測定を説明する図である。フォトレフラクション方式においては、瞳孔内における明るいクレッセントKの瞳孔半径方向の寸法Bについて、瞳孔径2rに対する割合R(B/2r)に基づき、下記の数式1によって眼屈折力Aが求められる。
【0067】
【数1】
ここで、eは対物レンズ22の端部22aから測定光源13(図10では、測定光源13における測定光源13a1を例示)までの距離であり、Lは被検眼と対物レンズ22との離間距離(測定距離)Sの逆数である(L=1/S)。
【0068】
上記により、各光源の経線方向毎の眼屈折力が求められることで、左右の被検眼の眼屈折力のS(球面度数)、C(乱視度数)及びA(乱視軸角度)が取得される。測定が終了すると、その測定結果が出力される(S11)。例えば、測定結果は、ディスプレイ5の画面に表示される。
【0069】
なお、測定に時間が掛る場合、測定中にXYZ方向のアライメント状態が許容範囲から外れてしまうことがある。特に、手持ちの眼科装置1では、アライメントがすれやすい。XYZ方向の何れかのアライメント状態が許容範囲から外れた場合、測定は中断され、再び、照明光学系30の照明光量と撮像素子24のゲインとの少なくとも一方が上げられることにより、撮影画像を「白飛び」させる調整が行われる。
【0070】
<変容例>
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、種々の変容が可能である。
【0071】
例えば、上記では、眼科装置として手持ち式の眼科装置を例にして説明したが、これに限られない。例えば、眼科装置はテーブルに設置される据置タイプであってもよい。この場合、アライメント時には、撮像素子24によって撮影される撮影画像上の左右眼の輝点KR及び輝点KLが所定位置に位置するように、検眼部2が移動又は誘導される。
【0072】
また、白飛びの程度を決めるにあたり、上記の実施例では、被検眼に対して検眼部2が位置する所定の検査距離(作動距離)を1mとしたが、これに限られない。所定の検査距離は、眼科装置の検査目的に応じて適宜設定されればよい。
【0073】
また、被検眼を検査(測定を含む)する検査光学系は、片眼を検査するものであってもよい。この場合、特開2022-80459号公報に例示されたように、片眼の前眼部の拡大像を得る撮光学系を有する眼科装置においては、被検者を撮影する撮像素子24は、前眼部の拡大像を得る光学系とは別に設けられた顔撮影部であってもよい。
【0074】
また、照明光学系の照明光量の上げ下げ(増減)に関し、点灯される照明光源の数が上げ下げ(増減)される他、照明光量から発せられる光量自体が上げ下げ(増減)されてもよい。あるいは、照明光学系の光路に挿入・脱出可能に配置された光量減衰フィルタが利用されることで、照明光量が上げ下げ(増減)されてもよい。
【0075】
また、撮影画像を白飛びさせる調整の終了(所定の検査レベルに戻す処理)に関し、上記ではZYZ方向のアライメント完了(図7のおけるS8)の信号をトリガーとする例を説明したが、撮影画像内に被検眼が検知されたこと(図7におけるS4又はS5)の検知信号をトリガーとしてもよいし、測定開始信号の受付をトリガーとしてもよい。あるいは、撮影画像の白飛びを終了するために、検者によって操作されるスイッチが操作部52に設けられている場合、その操作信号の受付をトリガーとしてもよい。制御手段50は、各信号は受け付ける信号受付手段を兼ね、制御部50によって、アライメント完了信号、被検眼の検知信号、測定開始信号、検者による操作信号が受け付けられる。
【符号の説明】
【0076】
1 眼科装置
5 ディスプレイ
10 測定光学系
10a 投光光学系
10b 受光光学系
24 撮像素子
30 照明光学系
32 照明光源
40 観察光学系
50 制御部
52 操作部
54 メモリ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10