(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025064387
(43)【公開日】2025-04-17
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/20 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
F16L37/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174108
(22)【出願日】2023-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南原 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田邉 裕樹
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD02
3J106BE13
3J106BE29
3J106ED24
3J106ED35
3J106EF04
(57)【要約】
【課題】シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】本開示の管継手は、第1継手と、第2継手と、組付機構と、を備え、前記組付機構は、前記第1継手及び前記第2継手のうちの一方の継手に固定され、当該一方の継手から径方向外方に突出する支持軸と、前記支持軸に長手方向の途中部が支持され、前記支持軸の軸線回りに回転可能なアームと、前記アームの長手方向の一端部に設けられ、前記第1継手及び前記第2継手のうちの他方の継手に係合可能な係合部と、前記アームの長手方向の他端部に設けられ、前記挿入部の前記被挿入部への挿入時に、前記支持軸の前記軸線上を支点として前記アームを第1位置から第2位置まで回転させる回転操作が行われる操作部と、を備え、前記操作部は、前記回転操作により、前記係合部と前記他方の継手との係合部分である作用点に対して、前記挿入部が前記被挿入部に挿入される方向の力を付与する力点を有する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の配管に接続され、軸方向に延びる挿入部を有する筒状の第1継手と、
他の配管に接続され、前記挿入部が挿入される被挿入部を有する筒状の第2継手と、
前記挿入部を前記被挿入部に挿入するための組付機構と、を備え、
前記組付機構により前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで、前記挿入部にシール面圧が発生する、管継手であって、
前記組付機構は、
前記第1継手及び前記第2継手のうちの一方の継手に固定され、当該一方の継手から径方向外方に突出する支持軸と、
前記支持軸に長手方向の途中部が支持され、前記支持軸の軸線回りに回転可能なアームと、
前記アームの長手方向の一端部に設けられ、前記第1継手及び前記第2継手のうちの他方の継手に係合可能な係合部と、
前記アームの長手方向の他端部に設けられ、前記挿入部の前記被挿入部への挿入時に、前記支持軸の前記軸線上を支点として前記アームを第1位置から第2位置まで回転させる回転操作が行われる操作部と、を備え、
前記操作部は、前記回転操作により、前記係合部と前記他方の継手との係合部分である作用点に対して、前記挿入部が前記被挿入部に挿入される方向の力を付与する力点を有する、管継手。
【請求項2】
前記第1位置は、前記アームが前記一方の継手側に倒伏した位置である、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記第2位置は、前記アームが前記一方の継手に対して起立した位置であり、
前記アームは、前記他端部が前記支持軸から離れた状態で、前記第1位置から前記第2位置まで回転可能であり、かつ前記第2位置において、前記他端部が前記支持軸に近づくように、前記支持軸に対して前記アームの長手方向にスライド可能に支持されている、請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記アームは、前記支持軸が嵌め込まれている嵌合溝を有し、
前記嵌合溝は、
前記アームの前記一端部側に形成され、前記支持軸に対して前記アームを回転させるための回転溝部と、
前記回転溝部から前記アームの前記他端部側に延びて形成され、前記支持軸に対して前記アームをスライドさせるためのスライド溝部と、を有し、
前記支持軸は、前記回転溝部に前記支持軸が位置するときは前記アームの回転が許容され、前記アームが前記第2位置にあるときだけ、前記回転溝部から前記スライド溝部への前記支持軸の相対移動が許容されるように形成されている、請求項3に記載の管継手。
【請求項5】
前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、
前記他方の継手に設けられ、前記アームが前記第3位置にあるときに、前記操作部と係合して前記被挿入部に対する前記挿入部の抜け出しを規制する第1規制部をさらに備える請求項3又は請求項4に記載の管継手。
【請求項6】
前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、
前記他方の継手に設けられ、前記アームが前記第3位置にあるときに、前記係合部と係合して前記被挿入部に対する前記挿入部の抜け出しを規制する第2規制部をさらに備える請求項3又は請求項4に記載の管継手。
【請求項7】
前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、
前記第3位置にある前記アームが前記第2位置側へスライドするのを制限する制限部をさらに備える請求項3又は請求項4に記載の管継手。
【請求項8】
前記アームを前記第1位置に保持するための保持部をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項9】
前記アームが前記第1位置にある状態で、前記第1継手と前記第2継手とを仮止めする仮止め機構をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車内に配置されるゴムホースや金属パイプ等の様々な配管を互いに連結する管継手として、特許文献1に記載された管継手が知られている。特許文献1の管継手は、一の配管が接続される本体と、他の配管が接続されるスリーブと、を備えている。本体には雌ねじと環状溝が形成されている。スリーブには、雄ねじと環状突起が形成されている。本体の雌ねじにスリーブの雄ねじが締め込まれると、本体の環状溝にスリーブの環状突起が圧入される。これにより、本体とスリーブとが接続され、その接続部分がシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記管継手において、シール性能を向上させるためには、環状溝に対する環状突起のシール面圧を高くする必要がある。しかし、シール面圧を高くすると、環状突起を環状溝に圧入するときの圧入荷重が高くなり、管継手の組み付け作業が重労働となる。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示は、一の配管に接続され、軸方向に延びる挿入部を有する筒状の第1継手と、他の配管に接続され、前記挿入部が挿入される被挿入部を有する筒状の第2継手と、前記挿入部を前記被挿入部に挿入するための組付機構と、を備え、前記組付機構により前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで、前記挿入部にシール面圧が発生する、管継手であって、前記組付機構は、前記第1継手及び前記第2継手のうちの一方の継手に固定され、当該一方の継手から径方向外方に突出する支持軸と、前記支持軸に長手方向の途中部が支持され、前記支持軸の軸線回りに回転可能なアームと、前記アームの長手方向の一端部に設けられ、前記第1継手及び前記第2継手のうちの他方の継手に係合可能な係合部と、前記アームの長手方向の他端部に設けられ、前記挿入部の前記被挿入部への挿入時に、前記支持軸の前記軸線上を支点として前記アームを第1位置から第2位置まで回転させる回転操作が行われる操作部と、を備え、前記操作部は、前記回転操作により、前記係合部と前記他方の継手との係合部分である作用点に対して、前記挿入部が前記被挿入部に挿入される方向の力を付与する力点を有する、管継手である。
【0007】
本開示の管継手によれば、組付機構により第1継手の挿入部を第2継手の被挿入部に挿入するとき、作業者は、操作部によって、一方の継手に固定された支持軸に対してアームを支点(軸線)回りに回転させる回転操作を行うことができる。その際、係合部が他方の継手に係合することで、その係合部分である作用点に対して、第1継手の挿入部が第2継手の被挿入部に挿入される方向の力が、操作部の力点から付与される。これにより、作業者は、テコの原理を利用して、第1継手の挿入部を第2継手の被挿入部に容易に挿入することができる。したがって、挿入部に発生するシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
(2)前記(1)の管継手において、前記第1位置は、前記アームが前記一方の継手側に倒伏した位置であるのが好ましい。
操作部の回転操作が行われる前に、アームの他端部が一方の継手から離れた位置にあると、管継手以外の他部材等が操作部に接触しやすいため、このような外的要因によってアームが不用意に回転しやすくなる。これに対して、上記(2)の管継手では、アームは、操作部の回転操作が行われる前の第1位置において、一方の継手側に倒伏している。これにより、管継手以外の他部材等が操作部に接触しにくくなるので、外的要因によってアームが第1位置から第2位置側へ不用意に回転するのを抑制することができる。
【0009】
(3)前記(2)の管継手において、前記第2位置は、前記アームが前記一方の継手に対して起立した位置であり、前記アームは、前記他端部が前記支持軸から離れた状態で、前記第1位置から前記第2位置まで回転可能であり、かつ前記第2位置において、前記他端部が前記支持軸に近づくように、前記支持軸に対して前記アームの長手方向にスライド可能に支持されているのが好ましい。
【0010】
操作部の回転操作が行われる後、アームが一方の継手に対して起立した位置あると、管継手以外の他部材等が操作部に接触しやすいため、このような外的要因によってアームが不用意に回転しやすくなる。これに対して、上記(3)の管継手では、操作部の回転操作が行われた後、アームの他端部が支持軸に近づくようにアームを第2位置からスライドさせることができる。これにより、操作部が一方の継手に近づき、管継手以外の他部材等が操作部に接触しにくくなるので、外的要因によってアームが第2位置から第1位置側へ不用意に回転するのを抑制することができる。
【0011】
(4)前記(3)の管継手において、前記アームは、前記支持軸が嵌め込まれている嵌合溝を有し、前記嵌合溝は、前記アームの前記一端部側に形成され、前記支持軸に対して前記アームを回転させるための回転溝部と、前記回転溝部から前記アームの前記他端部側に延びて形成され、前記支持軸に対して前記アームをスライドさせるためのスライド溝部と、を有し、前記支持軸は、前記回転溝部に前記支持軸が位置するときは前記アームの回転が許容され、前記アームが前記第2位置にあるときだけ、前記回転溝部から前記スライド溝部への前記支持軸の相対移動が許容されるように形成されているのが好ましい。
【0012】
この場合、アームの嵌合溝に嵌め込まれている支持部は、アームが第2位置にあるときだけ、回転溝部からスライド溝部への相対移動が許容される。このため、操作部の回転操作により、アームを第1位置から第2位置まで回転させるときに、支持部が回転溝部からスライド溝部へ相対移動することはない。これにより、アームは回転中にスライドすることがないので、管継手の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0013】
(5)前記(3)又は(4)の管継手において、前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、前記他方の継手に設けられ、前記アームが前記第3位置にあるときに、前記操作部と係合して前記被挿入部に対する前記挿入部の抜け出しを規制する第1規制部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、アームを第2位置から第3位置までスライドさせることで、第1継手の挿入部が第2継手の被挿入部から抜け出るのを、第1規制部により規制することができる。また、アームのスライド動作とは別に、被挿入部に対する挿入部の抜け出しを規制する作業が不要になる。これにより、管継手の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0014】
(6)前記(3)から(5)のいずれかの管継手において、前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、前記他方の継手に設けられ、前記アームが前記第3位置にあるときに、前記係合部と係合して前記被挿入部に対する前記挿入部の抜け出しを規制する第2規制部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、アームを第2位置から第3位置までスライドさせることで、第1継手の挿入部が第2継手の被挿入部から抜け出るのを、第2規制部により規制することができる。また、アームのスライド動作とは別に、被挿入部に対する挿入部の抜け出しを規制する作業が不要になる。これにより、管継手の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0015】
(7)前記(3)から(6)のいずれかの管継手において、前記アームは、前記第2位置から第3位置までスライド可能であり、前記第3位置にある前記アームが前記第2位置側へスライドするのを制限する制限部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、外的要因によってアームが第3位置から第2位置側へ不用意にスライドするのを、制限部により制限することができる。
【0016】
(8)前記(1)から(7)のいずれかの管継手は、前記アームを前記第1位置に保持するための保持部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、操作部の回転操作が行われないとき、保持部によりアームは第1位置に保持されるので、アームが第1位置から第2位置側へ不用意に回転するのをさらに抑制することができる。
【0017】
(9)前記(1)から(8)のいずれかの管継手は、前記アームが前記第1位置にある状態で、前記第1継手と前記第2継手とを仮止めする仮止め機構をさらに備えるのが好ましい。
この場合、仮止め機構により第1継手と第2継手とを仮止めした状態で、操作部の回転操作を行うことができる。これにより、操作部の回転操作中に第1継手と第2継手とが互いに離反するのを抑制できるので、管継手の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る管継手を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、管継手を組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す状態から第1継手と第2継手を互いに接近させた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第2継手の前側を示す側面図である。
【
図8】
図8は、組付機構のアーム、係合部、及び操作部を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2継手及び組付機構を示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す状態からアームが支持軸に対して回転した状態を示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す状態からアームが支持軸に対してスライドした状態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す状態からアームが回転している途中の状態を示す側面図である。
【
図14】
図14は、操作部によりアームを第2位置まで回転させた状態を示す側面図である。
【
図15】
図15は、
図14に示す状態から操作部の押込操作が行われた状態を示す側面図である。
【
図16】
図16は、組付機構の支持軸及び嵌合溝の変形例を示しており、アームが第1位置にあるときの側面図である。
【
図17】
図17は、上記変形例においてアームが第2位置にあるときの側面図である。
【
図18】
図18は、上記変形例においてアームが第3位置にあるときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
図1は、実施形態に係る管継手1を示す斜視図である。
図2は、
図1の管継手1の軸方向の断面図である。
図2では、後述する組付機構4の図示を省略している。
図1及び
図2において、管継手1は、例えば電気自動車(EV)のバッテリーパックの冷却ラインに設けられ、冷却水(LLC)を通す第1ホース(一の配管)91及び第2ホース(他の配管)92を連結するために用いられる。第1ホース91及び第2ホース92は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂材料からなる。
【0021】
管継手1は、第1継手2と第2継手3とを備える。第1継手2及び第2継手3は、いずれも、ポリアミド(PA)又はガラス繊維強化ポリアミド(PA-GF)等の樹脂材料により円筒状に形成されている。第1継手2及び第2継手3の各形状は特に限定されない。本実施形態では、第1継手2はストレート型の継手であり、第2継手3はエルボ型の継手である。第1継手2及び第2継手3は、同一の内径を有し、同一の軸線C上に配置された状態で互いに接続される。
【0022】
第1継手2は第1ホース91に接続され、第2継手3は第2ホース92に接続される。第1継手2及び第2継手3の各内部空間は、第1ホース91の内部空間と第2ホース92の内部空間とを連通している。すなわち、第1継手2及び第2継手3の各内部空間は、2本のホース91,92の間を繋ぐLLCの流路として機能する。
【0023】
以下、本明細書において、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、及び「後」といった方向は、
図1に示す方向を意味する。したがって、前後方向は、軸線Cに沿う軸方向を意味する。また、本明細書において、「径方向」とは、軸線Cに直交する方向であり、「周方向」とは、軸線C回りの方向である。
【0024】
<第1継手>
図3は、第1継手2を示す斜視図である。
図2及び
図3において、第1継手2は、前側に形成された第1接続部21と、後側に形成された第1本体部22と、を備える。第1接続部21は、第1ホース91との接続部分である。第1接続部21の外径は、第1ホース91の内径よりも少し大きい。第1接続部21は、第1ホース91内に圧入され、第1ホース91の開口端部を押し広げる。第1ホース91の開口端部の内周面は、その復元力により第1接続部21の外周面を径方向内方へ締め付ける。これにより、第1接続部21は第1ホース91に接続され、第1接続部21の外周面と第1ホース91の内周面との間はシールされる。
【0025】
第1本体部22は、第2継手3との接続部分である。第1本体部22の内径は、第1接続部21の内径と同一である。第1本体部22の外径は、第1接続部21の外径よりも大きい。したがって、第1本体部22の径方向の厚みは、第1接続部21の径方向の厚みよりも大きい。
【0026】
第1本体部22は、径方向内側において後方に延びるシール突起(挿入部)23と、径方向外側において前方に延びる外筒部24と、を有する。シール突起23は、円筒状に形成されている。外筒部24は、シール突起23の径方向外方に間隔をあけて円筒状に形成されている。第1本体部22におけるシール突起23と外筒部24との間には、後方に開口する円環状の凹部25が形成されている。
【0027】
第1継手2は、第1本体部22の下側に設けられた受け部26と、受け部26に設けられた一対の被係合部27と、第1本体部22の上側に設けられた突出部29と、をさらに備える。受け部26は、外筒部24の下側から後方に突出しており、外筒部24の周方向に沿って円弧状に形成されている。本実施形態の受け部26は、外筒部24と一体に設けられている。受け部26の内周面には、第2継手3の第2本体部32の外周面が嵌め込まれる。
【0028】
一対の被係合部27は、受け部26の外周の左右両端部から下方に延びている。各被係合部27は、上下方向に長い矩形板状に形成されている。本実施形態の各被係合部27は、受け部26と一体に設けられている。各被係合部27の外面27aにおける前後方向の途中には、上下方向の全長にわたって凹溝28が形成されている。
【0029】
凹溝28は、前側に形成された第1側面28aと、後側に形成された第2側面28bと、底面28cと、を有する。第1側面28a及び第2側面28bは、互いに対向して上下方向に延びている。底面28cは、第1側面28aと第2側面28bとの間に形成されている。第2側面28bには、円弧状の切欠溝28dが形成されている。切欠溝28dは、アーム6(後述)の回転中に係合部7(後述)が被係合部27と干渉しないように形成された溝である(
図12及び
図13参照)。
【0030】
突出部29は、外筒部24の上側から後方に突出しており、外筒部24の周方向に沿って円弧状に形成されている。本実施形態の突出部29は、外筒部24と一体に設けられている。突出部29の前後方向の長さは、受け部26の前後方向の長さと略同一である。突出部29の周方向の長さは、受け部26の周方向の長さよりも短い。
【0031】
<第2継手>
図4は、第2継手3を示す斜視図である。
図2及び
図4において、第2継手3は、後側に形成された第2接続部31と、前側に形成された第2本体部32と、を備える。第2本体部32は、前後方向に延びている。第2接続部31は、第2本体部32の後端から湾曲して後斜め下方に延びている。
【0032】
第2接続部31は、第2ホース92との接続部分である。第2接続部31の外径は、第2ホース92の内径よりも少し大きい。第2接続部31は、第2ホース92内に圧入され、第2ホース92の開口端部を押し広げる。第2ホース92の開口端部の内周面は、その復元力により第2接続部31の外周面を径方向内方へ締め付ける。これにより、第2接続部31は第2ホース92に接続され、第2接続部31の外周面と第2ホース92の内周面との間はシールされる。
【0033】
第2本体部32は、第1継手2との接続部分である。第2本体部32の内径は、第2接続部31の内径と同一である。第2本体部32の外径は、第2接続部31の外径よりも大きい。したがって、第2本体部32の径方向の厚みは、第2接続部31の径方向の厚みよりも大きい。
【0034】
第2本体部32は、径方向内側において前方に開口するシール溝(被挿入部)33と、径方向外側において前方に延びる凸部34と、を有する。シール溝33は、第1継手2のシール突起23が前方から圧入(挿入)されるように円筒状に形成されている。シール溝33の外径は、シール突起23の外径と同一である。シール溝33の内径は、シール突起23の内径よりも少し大きい。凸部34は、第1継手2の凹部25に挿入されるように円筒状に形成されている。
【0035】
第2継手3は、第2本体部32の前側に設けられた一対の膨出部35をさらに備える。一対の膨出部35は、第2本体部32の外周面の上側において、互いに左右両側に離れて設けられている。各膨出部35は、第2本体部32の外周面に沿って円弧状に形成されている。本実施形態の各膨出部35は、第2本体部32と一体に設けられている。
【0036】
図3及び
図4において、第2本体部32の上側における一対の膨出部35の間隔は、第1継手2の突出部29の周方向の長さよりも大きい。各膨出部35の周方向の長さは、第1継手2における受け部26と突出部29との周方向の間隔よりも小さい。
【0037】
以上の構成により、
図1に示すように、第1継手2の突出部29は、第2継手3の上側における一対の膨出部35の間に前方から挿入されるとともに、第2継手3の各膨出部35は、第1継手2における受け部26と突出部29との間に後方から挿入される。また、第2継手3の第2本体部32の外周面は、第1継手2の受け部26の内周面に後方から嵌め込まれる。
【0038】
これにより、
図2に示すように、第1継手2のシール突起23は、第2継手3のシール溝33に前方から圧入される。シール突起23がシール溝33に圧入されると、シール突起23の内周面とシール溝33の内周面とが密着し、これら両内周面にシール面圧が発生する。これにより、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
【0039】
<仮止め機構>
図5は、管継手1を組み付ける前の状態を示す斜視図である。
図6は、
図5に示す状態から第1継手2と第2継手3を互いに接近させた状態を示す斜視図である。
図5及び
図6において、管継手1は、アーム6が後述する第1位置にある状態で、第1継手2と第2継手3とを仮止めする仮止め機構9をさらに備える。仮止め機構9は、第1継手2に設けられた一対の係止部9aと、第2継手3に設けられた一対の被係止部9bと、を有する。
【0040】
図3及び
図5において、係止部9aは、第1継手2における突出部29の後端(先端)側において、左右両側にそれぞれ突出している。本実施形態の係止部9aは、平面視において略三角形状に形成され、突出部29と一体に設けられている。係止部9aの外側には、傾斜面9a1及び係止面9a2が形成されている。傾斜面9a1は、係止部9aの後端から前側に向かって、係止部9aの突出長さが徐々に大きくなるように傾斜している。係止面9a2は、傾斜面9a1の前端から突出部29の側面まで左右方向に延びる平坦面である。
【0041】
図4及び
図5において、被係止部9bは、第2継手3における各膨出部35の上側の側面35aに突出して設けられている。本実施形態の被係止部9bは、平面視において半円弧状に形成され、膨出部35と一体に設けられている。被係止部9bは、膨出部35の側面35aの前側に設けられている。
【0042】
図5に示す状態から、第1継手2と第2継手3を互いに接近させると、係止部9aの傾斜面9a1が被係止部9bの外周面に当接する。この状態から、さらに第1継手2と第2継手3を互いに接近させると、係止部9aの傾斜面9a1が被係止部9bの外周面に当接しながら後方へ移動する。これにより、
図6に示すように、係止部9aが被係止部9bを乗り越え、係止部9aの係止面9a2が被係止部9bの外周面に当接する。これにより、第1継手2と第2継手3は、仮止め機構9により仮止めされた状態となり、第1継手2と第2継手3が互いに前後方向に離反するのを抑制することができる。
【0043】
<組付機構>
図5及び
図6において、管継手1は、仮止め機構9により第1継手2と第2継手3を仮止めした状態で、シール突起23をシール溝33(
図2参照)に圧入するときに使用される組付機構4をさらに備える。組付機構4は、一対の支持軸5と、一対のアーム6と、一対の係合部7と、操作部8と、を備える。支持軸5、アーム6、係合部7、及び操作部8は、例えば、第1継手2及び第2継手3と同一の樹脂材料からなる。
【0044】
支持軸5は、第2継手3の各膨出部35の外面に固定されており、当該外面から径方向外方に突出している(
図4も参照)。アーム6は、第2継手3の左右両側にそれぞれ配置されている。アーム6の長手方向の途中部は、支持軸5に支持されている。係合部7は、各アーム6の長手方向の一端部6aに設けられている。操作部8は、両アーム6の長手方向の他端部6bに設けられ、これらの他端部6b同士を連結している。
【0045】
<支持軸に対するアームの支持構造>
図7は、第2継手3の前側を示す側面図である。
図4及び
図7において、支持軸5は、その突出端側から見て略D字形状に形成されている。支持軸5は、外周の一部に形成された平坦面5aと、外周の他部に形成された円弧面5bと、を有する。平坦面5aは、前側に面している。円弧面5bは、平坦面5aの後方に形成されている。円弧面5bは、支持軸5の軸線Xを中心として円弧状に形成されている。したがって、支持軸5において、前後方向の幅寸法W1は、上下方向の幅寸法W2よりも小さい。
【0046】
図8は、組付機構4のアーム6、係合部7、及び操作部8を示す斜視図である。
図5及び
図8において、各アーム6の長手方向の途中部には、支持軸5の突出端部が嵌め込まれる嵌合溝61が形成されている。嵌合溝61は、アーム6の第2継手3側の内側面6cに形成されている。嵌合溝61は、互いに連通する回転溝部62及びスライド溝部63を有する。支持軸5は、回転溝部62とスライド溝部63との間を相対移動可能である。
【0047】
図9は、第2継手3及び組付機構4を示す側面図である。
図7~
図9において、回転溝部62は、支持軸5に対してアーム6を回転させるための溝部分である。回転溝部62は、円溝からなり、アーム6における長手方向の途中部の一端部6a側に形成されている。回転溝部62の内径は、支持軸5の上下方向の幅寸法W2よりも少し大きい。これにより、支持軸5が回転溝部62内に位置するとき、アーム6は、支持軸5に対して軸線X回りに回転可能に支持される。
【0048】
図10は、
図9に示す状態からアーム6が支持軸5に対して回転した状態を示す側面図である。
図9及び
図10において、アーム6の一端部6a側の回転溝部62内に支持軸5が位置するとき、アーム6は、他端部6bが支持軸5から離れた状態で、支持軸5の軸線X回りに第1位置(
図9)と第2位置(
図10)との間で回転可能である。第1位置は、アーム6が第2継手3の上側に倒伏した位置である。第2位置は、アーム6が第2継手3に対して上方に起立した位置である。支持軸5の軸線X上の回転中心は、後述するテコの原理の支点P1として機能する。
【0049】
図7~
図9において、スライド溝部63は、支持軸5に対してアーム6をスライドさせる溝部分である。スライド溝部63は、長溝からなり、回転溝部62からアーム6の他端部6b側に延びて形成されている。スライド溝部63は、アーム6の長手方向に延びる第1側面63a及び第2側面63bと、これら両側面63a,63b同士を接続する端面63cと、を有する。端面63cは、円弧状に形成されている。端面63cの曲率半径は、回転溝部62の曲率半径と略同一である。
【0050】
スライド溝部63の短手方向の幅寸法W3は、支持軸5の前後方向の幅寸法W1よりも少し大きく、かつ支持軸5の上下方向の幅寸法W2よりも小さい。このため、アーム6が第1位置(
図9)にあるとき、回転溝部62内に位置する支持軸5の円弧面5bの一部分(後斜め上側の部分)は、回転溝部62に当接する。これにより、回転溝部62からスライド溝部63への支持軸5の相対移動が規制される。したがって、アーム6は、第1位置において、支持軸5に対してアーム6の長手方向へスライドすることはない。
【0051】
図9及び
図10において、アーム6が第1位置(
図9)から第2位置(
図10)まで回転すると、スライド溝部63は支持軸5の上方に配置される。そして、スライド溝部63の第1側面63aは、支持軸5の平坦面5aに沿って平行に配置される。これにより、回転溝部62からスライド溝部63への支持軸5の相対移動が許容される。したがって、アーム6は、第2位置において、支持軸5に対してアーム6の長手方向にスライド可能に支持される。アーム6がスライドするとき、支持軸5の平坦面5aがスライド溝部63の第1側面63aに接触することで、支持軸5に対するアーム6の回転は規制される。
【0052】
図11は、
図10に示す状態からアーム6が支持軸5に対してスライドした状態を示す側面図である。アーム6が
図11に示す第3位置までスライドすると、スライド溝部63の端面63cが支持軸5の円弧面5bに当接する。これにより、アーム6が第3位置を超えて下方へスライドするのを規制することができる。
【0053】
したがって、アーム6は、支持軸5に対して、第2位置(
図10)と第3位置(
図11)との間で上下方向にスライド可能に支持されている。第2位置は、上記のようにアーム6が第2継手3に対して上方に起立した位置、すなわちアーム6の他端部6bが支持軸5から上方に離れた位置である。第3位置は、アーム6の他端部6bが支持軸5に近づいた位置である。アーム6が第3位置にあるとき、操作部8は、第2継手3に近づいた状態となる。
【0054】
以上より、支持軸5が略D字形状に形成され、嵌合溝61が回転溝部62とスライド溝部63を有することで、回転溝部62に支持軸5が位置するときは、アーム6の回転が許容される。そして、アーム6が第2位置(
図10)にあるときだけ、回転溝部62からスライド溝部63への支持軸5の相対移動が許容される。
【0055】
<係合部>
図5及び
図8において、組付機構4の係合部7は、各アーム6の一端部6aの内側面6cから第2継手3側に突出している。本実施形態の係合部7は、例えば円柱状に形成され、アーム6と一体に設けられている。係合部7は、アーム6と共に、支持軸5の軸線X回りに回転可能である(
図9及び
図10参照)。
【0056】
係合部7の先端面には、その中心側から外周に向かって、係合部7の突出長さが徐々に小さくなるように傾斜する傾斜面7aが形成されている。傾斜面7aは、アーム6が第1位置から第2位置まで回転すると、係合部7の下側に位置するように形成されている(
図10参照)。
【0057】
図12は、
図6の管継手1の側面図である。
図13は、
図12に示す状態からアーム6が回転している途中の状態を示す側面図である。
図12及び
図13において、各アーム6が第1位置から第2位置へ回転している途中に、各係合部7は、第1継手2の各凹溝28に係合可能である。
【0058】
具体的には、
図12に示す状態から、アーム6が軸線X回りに回転すると、係合部7が切欠溝28dの上方を通過することで、係合部7の外周面7bは、凹溝28の第1側面28aの上側に係合する。係合部7の外周面7bと凹溝28の第1側面28aとの係合部分は、後述するテコの原理の作用点P2として機能する。
【0059】
凹溝28の前後方向の溝幅(第1側面28aと第2側面28bとの間隔)は、係合部7の直径よりも少し大きい。これにより、アーム6がスライドする際に、係合部7は、凹溝28に沿って上下方向に移動可能である。
【0060】
<操作部と保持部>
図6及び
図8において、組付機構4の操作部8は、シール突起23のシール溝33(
図2参照)への圧入時に、作業者が把持して回転操作を行う部分である。この回転操作は、一対のアーム6をそれぞれ支点P1回りに第1位置から第2位置まで回転させる操作である。操作部8は左右方向に延びて形成され、操作部8の左右両端部は、各アーム6の他端部6bに接続されている。本実施形態の操作部8は、両アーム6と一体に設けられている。
【0061】
操作部8は、両アーム6の間に形成された底面8aを有する。底面8aは、アーム6が第1位置(
図12)にあるとき、第2継手3の第2接続部31における湾曲部分の上方において前側に面する。操作部8の底面8aの中央部には、窪み8bが形成されている。窪み8bは、操作部8の底面8a側から見て矩形状に形成されている。
【0062】
図12及び
図13において、管継手1は、アーム6を第1位置に保持するための保持部11をさらに備える。保持部11は、第2接続部31の湾曲部分の外周に設けられている。保持部11は、後側に面する引掛面11aを有する。アーム6が第1位置(
図12)にあるとき、保持部11の引掛面11aに対して、操作部8の底面8aが所定の締め代をもって面接触する。これにより、アーム6は第1位置に保持される。この状態から、作業者が操作部8を把持して回転操作を行うことで、保持部11の引掛面11aと操作部8の底面8aとの接触が解除される。
【0063】
操作部8の左右方向の中央部は、後述するテコの原理の力点P3として機能する(
図6も参照)。力点P3は、作業者による操作部8の回転操作により、作用点P2に対して、第1継手2のシール突起23が第2継手3のシール溝33に圧入される方向(後方)の力を付与する。このため、支点P1から力点P3までの直線距離は、支点P1から作用点P2までの直線距離よりも長い。
【0064】
図14は、操作部8によりアーム6を第2位置まで回転させた状態を示す側面図である。
図14に示すように、操作部8の回転操作によりアーム6が第2位置まで回転すると、操作者により、操作部8を下方に押し込む押込操作が行われる。この押込操作により、係合部7は、第1継手2の凹溝28内において、第1側面28aに当接しつつ凹溝28に沿って下方へ移動する。これにより、アーム6は、第2位置から
図15に示す第3位置までスライドする。アーム6が第3位置までスライドすると、操作部8は、第1継手2の第1本体部22に近づき、後述する基台13aの上面13a1に当接する。
【0065】
<制限部>
図3、
図14及び
図15において、管継手1は、第3位置にあるアーム6が外部要因(車両の走行中の振動等)によって第2位置側へスライドするのを制限する制限部12をさらに備える。制限部12は、第1継手2の各凹溝28内の上下方向の途中に設けられている。制限部12は、各凹溝28の底面28cから、当該凹溝28の開口側に向かって突出している。制限部12の前後方向の幅寸法は、凹溝28の前後方向の幅寸法と同一である。
【0066】
制限部12は、上側に形成された傾斜面12aと、下側に形成された係止面12bと、を有する。傾斜面12aは、制限部12の上端から下側に向かって、制限部12の突出長さが徐々に大きくなるように傾斜している。係止面12bは、制限部12の下端において左右方向に延びる平坦面である。
【0067】
図14に示す状態から、操作部8の押込操作が行われると、係合部7が凹溝28に沿って下方へ移動し、係合部7の傾斜面7aが制限部12の傾斜面12aに当接する。この状態から、さらに操作部8の押込操作が行われると、係合部7の傾斜面7aが制限部12の傾斜面12aに当接しながら下方へ移動し、係合部7が制限部12を乗り越える。これにより、アーム6は第3位置(
図15)まで移動する。
【0068】
第3位置にあるアーム6が、外部要因によって凹溝28の上側へ移動しようとすると、係合部7の外周面7bが制限部12の係止面12bに当接する。これにより、第3位置にあるアーム6が第2位置側へスライドするのを制限することができる。
【0069】
<第1規制部と第2規制部>
図3及び
図15において、管継手1は、第1継手2に設けられた第1規制部13及び第2規制部14をさらに備える。第1規制部13及び第2規制部14は、アーム6が第3位置(
図15)にあるときに、第2継手3のシール溝33に対する第1継手2のシール突起23の抜け出しを規制する。
【0070】
第1規制部13は、第1継手2の第1本体部22の上側に設けられている。本実施形態の第1規制部13は、第1本体部22の外周面の上側に一体に設けられた基台13aと、基台13aの上側に一体に設けられた突起13bと、を有する。基台13aは、例えば平面視において矩形状に形成されており、平坦に形成された上面13a1を有する。突起13bは、基台13aの上面13a1の中央部から上方に突出している。突起13bは、例えば直方体状に形成され、操作部8の窪み8bに係合可能である。
【0071】
図14及び
図15において、アーム6が第3位置(
図15)までスライドすると、第1規制部13の突起13bが、操作部8の窪み8bに係合される。これにより、第1継手2と第2継手3が前後方向に離反するのを規制できるので、第2継手3のシール溝33に対する第1継手2のシール突起23の抜け出しを規制することができる。なお、第1規制部13の突起13bが操作部8の窪み8bと係合した状態で、操作部8の底面8aは、第1規制部13の基台13aの上面13a1に当接する。
【0072】
図3及び
図15において、第2規制部14は、第1継手2の各被係合部27に設けられている。本実施形態の第2規制部14は、各被係合部27に形成された凹溝28の第1側面28aにより構成されている。アーム6が第3位置(
図15)にあるとき、係合部7の外周面7bは、凹溝28の下側において第1側面28aと係合している。これにより、第1継手2と第2継手3が前後方向に離反するのを規制できるので、第2継手3のシール溝33に対する第1継手2のシール突起23の抜け出しを規制することができる。
【0073】
<管継手の組み付け作業>
図5に示す状態から管継手1を組み付ける際には、まず作業者は、仮止め機構9により第1継手2と第2継手3とを仮止めする。具体的には、作業者が
図5に示す状態から第1継手2と第2継手3を互いに接近させると、係止部9aが被係止部9bを乗り越えることで、
図6及び
図12に示すように係止部9aの係止面9a2が被係止部9bの外周面に当接する。これにより、第1継手2及び第2継手3は、互いに離反しないように仮止めされた状態となる。
【0074】
次に、作業者は、
図12に示す状態から、操作部8を把持して一対のアーム6を支点P1回りに回転させる回転操作を行う。この回転操作により各アーム6が
図13に示す位置まで回転すると、各係合部7の外周面7bが、第1継手2の各凹溝28の第1側面28aに係合する。この係合部分は、上記作用点P2として機能する。
【0075】
図13に示す状態から、操作者がさらに回転操作を行うと、テコの原理によって、操作部8の力点P3から、前記係合部分である作用点P2に対して、後方への力が付与される。この作用点P2に付与される力により、係合部7が凹溝28の第1側面28aを後方に押し込むことで、
図14に示すように第1継手2が第2継手3側に引き寄せられる。これにより、
図2に示すように、第1継手2のシール突起23が、第2継手3のシール溝33に圧入された状態となり、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
【0076】
図14に示す状態から、操作者は、操作部8を下方に押し込む押込操作を行う。この押込操作により、係合部7が第1継手2の凹溝28に沿って下方へ移動するので、アーム6は、第2位置から第3位置(
図15)に向かってスライドする。
【0077】
図15に示すように、アーム6が第3位置までスライドすると、操作部8は、第1継手2の第1本体部22に近づき、基台13aの上面13a1に当接する。また、アーム6のスライド溝部63の端面63cが支持軸5の円弧面5bに当接する。これにより、アーム6は第3位置でスライドを停止し、操作部8の押込操作が終了する。
【0078】
<作用効果>
本実施形態の管継手1によれば、組付機構4により第1継手2のシール突起23を第2継手3のシール溝33に圧入するとき、作業者は、操作部8によって、第2継手3に固定された支持軸5に対してアーム6を支点P1回りに回転させる回転操作を行うことができる。その際、第1継手2の凹溝28の第1側面28aに係合部7が係合することで、その係合部分である作用点P2に対して、シール突起23がシール溝33に圧入される方向の力が、操作部8の力点P3から付与される。これにより、作業者は、テコの原理を利用して、第1継手2のシール突起23を第2継手3のシール溝33に容易に挿入することができる。したがって、シール突起23に発生するシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手1の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0079】
操作部8の回転操作が行われる前に、アーム6の他端部6bが第2継手3から離れた位置にあると、管継手1以外の他部材等が操作部8に接触しやすいため、このような外的要因によってアーム6が不用意に回転しやすくなる。これに対して、本実施形態では、アーム6は、操作部8の回転操作が行われる前の第1位置において、第2継手3の上側に倒伏している。これにより、管継手1以外の他部材等が操作部8に接触しにくくなるので、外的要因によってアーム6が第1位置から第2位置側へ不用意に回転するのを抑制することができる。
【0080】
操作部8の回転操作が行われた後、アーム6が第2継手3に対して起立した位置にあると、管継手1以外の他部材等が操作部8に接触しやすいため、このような外的要因によってアーム6が不用意に回転しやすくなる。これに対して、本実施形態では、操作部8の回転操作が行われた後、アーム6の他端部6bが支持軸5に近づくようにアーム6を第2位置からスライドさせることができる。これにより、操作部8が第2継手3に近づき、管継手1以外の他部材等が操作部8に接触しにくくなるので、外的要因によってアーム6が第2位置から第1位置側へ不用意に回転するのを抑制することができる。
【0081】
アーム6の嵌合溝61に嵌め込まれている支持軸5は略D字形状に形成されている。そして、嵌合溝61の回転溝部62に支持軸5が位置するときはアーム6の回転が許容され、アーム6が第2位置にあるときだけ、嵌合溝61の回転溝部62からスライド溝部63への支持軸5の相対移動が許容される。このため、操作部8の回転操作により、アーム6を第1位置から第2位置まで回転させるときに、支持軸5が回転溝部62からスライド溝部63へ相対移動することはない。これにより、アーム6は回転中にスライドすることがないので、管継手1の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0082】
操作部8の押込操作によりアーム6が第2位置から第3位置までスライドすると、第1規制部13の突起13bが操作部8の窪み8bに係合される。これにより、第1継手2のシール突起23が第2継手3のシール溝33から抜け出るのを規制することができる。また、アーム6をスライドさせる押込操作とは別に、シール溝33に対するシール突起23の抜け出しを規制する作業が不要になる。これにより、管継手1の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0083】
操作部8の押込操作によりアーム6が第2位置から第3位置までスライドしたとき、係合部7の外周面7bは凹溝28の第1側面28a(第2規制部14)と係合している。これにより、第1継手2のシール突起23が第2継手3のシール溝33から抜け出るのを規制することができる。また、アーム6をスライドさせる押込操作とは別に、シール溝33に対するシール突起23の抜け出しを規制する作業が不要になる。これにより、管継手1の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0084】
第1継手2の凹溝28の底面28cに設けられた制限部12は、第3位置にあるアーム6が第2位置側へスライドするのを制限する。これにより、外的要因によってアーム6が第3位置から第2位置側へ不用意にスライドするのを制限することができる。
【0085】
操作部8の回転操作が行われる前に、第1継手2の外周に設けられた保持部11により、アーム6は第1位置に保持される。これにより、アーム6が第1位置から第2位置側へ不用意に回転するのをさらに抑制することができる。
【0086】
仮止め機構9により第1継手2と第2継手3とを仮止めした状態で、操作部8の回転操作が行われる。これにより、操作部8の回転操作中に第1継手2と第2継手3とが互いに離反するのを抑制できるので、管継手1の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0087】
<変形例>
図16~
図18は、組付機構4の支持軸5及び嵌合溝61の変形例を示す側面図である。
図16において、本変形例の支持軸5は、その突出端側から見て円形状に形成されている。嵌合溝61は、アーム6の長手方向に延びる長溝からなる。嵌合溝61は、アーム6の長手方向に延びる第1側面61a及び第2側面61bと、両側面61a,61bの一端同士を接続する第1端面61cと、両側面61a,61bの他端同士を接続する第2端面61dと、を有する。第1端面61c及び第2端面61dは、それぞれ円弧状に形成されている。第1端面61c及び第2端面61dの各曲率半径は、支持軸5の半径と略同一である。
【0088】
図16及び
図17に示すように、支持軸5の外周面に嵌合溝61の第1端面61cを当接させながら、アーム6を回転させることで、アーム6は、支点P1回りに第1位置(
図16)と第2位置(
図17)との間で回転可能である。アーム6が第2位置の状態で、嵌合溝61の長手方向は、上下方向に配置される。これにより、支持軸5を嵌合溝61の長手方向に沿って相対移動させることで、アーム6は、第2位置(
図17)から第3位置(
図18)へスライド可能となる。支持軸5の外周面が嵌合溝61の第2端面61dに当接することで、アーム6は第3位置でスライドを停止する。
【0089】
<その他>
以上のとおり開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでない。例えば、管継手1は、電気自動車での使用に限定されない。組付機構4は、樹脂材料以外に、金属材料等の他の材料からなる部材であってもよい。組付機構4は、支持軸5、アーム6、及び係合部7を、それぞれ一対備えているが、それぞれ1つだけ備えていてもよい。組付機構4の係合部7及び操作部8は、アーム6と一体に設けられているが、アーム6と別体に設けられてもよい。
【0090】
アーム6の第1位置及び第2位置は、上記実施形態に限定されない。例えばアーム6が第2継手3に対して起立した位置を第1位置とし、アーム6が第1継手2側に倒伏した位置を第2位置としてもよい。上記実施形態の支持軸5は、第2継手3に固定されているが、第1継手2に固定されてもよい。その場合、アーム6、係合部7、操作部8、及び保持部11は、第2継手3に設ければよい。
【0091】
仮止め機構9、保持部11、制限部12、第1規制部13、及び第2規制部14は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態の管継手1は、第1規制部13及び第2規制部14を備えているが、いずれか一方のみを備えていればよい。
【符号の説明】
【0092】
1 管継手
2 第1継手
3 第2継手
4 組付機構
5 支持軸
6 アーム
7 係合部
8 操作部
9 仮止め機構
11 保持部
12 制限部
13 第1規制部
14 第2規制部
23 シール突起(挿入部)
33 シール溝(被挿入部)
61 嵌合溝
62 回転溝部
63 スライド溝部
91 第1ホース(一の配管)
92 第1ホース(他の配管)
P1 支点
P2 作用点
P3 力点
X 軸線