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特開2025-6441配送ロボットシステムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006441
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】配送ロボットシステムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/083 20240101AFI20250109BHJP
【FI】
G06Q10/083
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107236
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩村 光貴
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】在宅勤務およびフリーアドレス制の導入された施設において、従業員に届いた荷物を好適に配送することができる配送ロボットシステムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】サーバ装置10は、従業員5が使用する端末30,携帯端末80の情報に基づき、従業員5が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定する。サーバ装置10は、対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定する。配送ロボット40は、対象荷物があると判定された場合、対象従業員の作業場所まで対象荷物を配送する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に届けられた荷物を前記施設に出勤する従業員に配送する配送ロボットと、
前記配送ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記従業員の作業場所は、前記施設内で自由に選択可能であり、
前記制御装置は、
前記従業員が使用する端末の情報に基づき、前記従業員が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定し、
前記対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定し、
前記配送ロボットは、前記対象荷物があると判定された場合、前記対象従業員の作業場所まで前記対象荷物を配送する、配送ロボットシステム。
【請求項2】
前記施設に届けられた前記荷物は、前記従業員ごとに割当てられた宅配ロッカーに格納され、
前記制御装置は、
前記宅配ロッカーから前記従業員の前記荷物が格納されているか否かの情報を取得可能であり、
前記宅配ロッカーから取得した情報に基づき、前記対象荷物があるか否かを判定し、
前記配送ロボットは、前記宅配ロッカーから前記対象荷物を取り出して、前記対象従業員に配送する、請求項1に記載の配送ロボットシステム。
【請求項3】
前記施設には、複数の通信装置が設置されており、
前記端末は、前記複数の通信装置と通信可能であって前記従業員が携帯する第1端末と、前記従業員が作業に使用する第2端末とを含み、
前記制御装置は、
前記複数の通信装置と前記第1端末との間の通信信号の強度に基づき、前記従業員の位置を特定し、
前記従業員が前記第2端末にログインした場合、前記従業員が出勤したと判定するとともに、前記従業員の位置が前記従業員の作業場所であると判定する、請求項1または請求項2に記載の配送ロボットシステム。
【請求項4】
施設に届けられた荷物を前記施設に出勤する従業員に配送する配送ロボットの制御方法であって、
前記従業員の作業場所は、前記施設内で自由に選択可能であり、
前記制御方法は、
前記従業員が使用する端末の情報に基づき、前記従業員が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定するステップと、
前記対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定するステップと、
前記対象荷物があると判定された場合、前記対象従業員の作業場所まで前記対象荷物を配送する指令を前記配送ロボットに送信するステップとを備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配送ロボットシステムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザに対して配送物(物品)が届けられる集合住宅等の施設において、物品の受け取りを効率化するシステムとして、たとえば、特開2021-15436号公報(特許文献1)に記載された物品受取システムが挙げられる。この物品受取システムでは、配送業者が物品を収納装置に入庫すると、収納装置の収納状況等が管理サーバで管理され、解錠情報をユーザが入力することで、収納ボックスを解錠して荷物を取り出すことが可能となる。
【0003】
一方、オフィス等の施設においては、従業員宛ての郵便物等の荷物が施設に届けられた場合、この荷物を従業員が作業している場所まで施設の配送担当者が配送するといった運用が行われている。ところが、近年、新型コロナウイルス感染症の拡大とともに在宅勤務を採用する企業が増加している。これに伴い、施設内において、フリーアドレス制を導入する企業も増加している。フリーアドレス制において、従業員が固定席を持たず、自由な座席を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-15436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの制度が導入された場合、従業員の作業場所が不明であるため、施設の配送担当者が荷物を届ける際に、従業員の作業場所を特定する必要が生じる。また、施設への出勤日に荷物を従業員に届ける必要があるため、配送担当者が従業員の勤務スケジュールを確認する必要が生じ、配送担当者の負担が大きくなっていた。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、在宅勤務およびフリーアドレス制の導入された施設において、従業員に届いた荷物を好適に配送することができる配送ロボットシステムおよびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る配送ロボットシステムは、配送ロボットと、制御装置とを備える。配送ロボットは、施設に届けられた荷物を施設に出勤する従業員に配送する。制御装置は、配送ロボットを制御する。従業員の作業場所は、施設内で自由に選択可能である。制御装置は、従業員が使用する端末の情報に基づき、従業員が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定する。制御装置は、対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定する。配送ロボットは、対象荷物があると判定された場合、対象従業員の作業場所まで対象荷物を配送する。
【0008】
本開示に係る制御方法は、施設に届けられた荷物を施設に出勤する従業員に配送する配送ロボットの制御方法である、従業員の作業場所は、施設内で自由に選択可能である。制御方法は、従業員が使用する端末の情報に基づき、従業員が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定するステップと、対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定するステップと、配送ロボットは、対象荷物があると判定された場合、対象従業員の作業場所まで対象荷物を配送するステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、在宅勤務およびフリーアドレス制の導入された施設において、従業員に届いた荷物を好適に配送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】配送ロボットシステムの構成を示す図である。
図2】配送ロボットシステムのハードウェア構成を示す図である。
図3】作業場所データの一例である。
図4】荷物データの一例である。
図5】宅配ロッカーから荷物を取り出す様子を説明するための図である。
図6】荷物を配送する様子を説明するための図である。
図7】出勤判定処理のフローチャートである。
図8】サーバ側処理およびロボット側処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、配送ロボットシステム100の構成を示す図である。図2は、配送ロボットシステム100のハードウェア構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、配送ロボットシステム100は、施設1内に設置されている。本実施の形態において、施設1は、A社が所有するオフィスビルである。A社に勤務する複数の従業員5は、在宅での勤務および施設1での出勤のいずれかを選択できる。A社では、フリーアドレス制が導入されている。フリーアドレス制において、従業員5は固定席を持たず、自由な座席を使用する。つまり、従業員5は、施設1内で作業場所(座席)を自由に選択して業務を行うことができる。
【0014】
配送ロボットシステム100は、制御装置としてのサーバ装置10と、機器管理装置20と、配送ロボット40と、宅配ロッカー110と、複数の無線通信機(通信装置)72とを備える。配送ロボット40は、施設1内を自律移動する自律移動型のロボットであり、荷物6を配送する。サーバ装置10は、機器管理装置20を介して配送ロボット40および宅配ロッカー110等と通信可能に構成されている。
【0015】
A社の従業員5宛に外部から施設1に届けられる郵便物等の荷物6は、配送業者によって宅配ロッカー110に格納される。宅配ロッカー110において、各従業員5に1つのロッカーが割当てられている。
【0016】
仮に従業員5の席が固定席である場合、荷物6が届いた場合に、社内の配送担当者がその席まで荷物6を届ければよい。しかし、フリーアドレス制の場合、施設1に荷物6が届いても、従業員5が自由に席を決めて作業を行うため、どの席で作業をしているか分からない。自宅勤務を行っている場合は、荷物6を届ける先がない。人の手によって従業員5の席まで荷物6を届ける場合、出勤スケジュールの確認および作業している席(作業場所)を特定するための作業負担が大きい。一方、従業員5自らが集荷場所まで出向いて荷物6の有無の確認および受け取りを行う運用とした場合も、従業員5の負担が大きい。このような問題を解決するため、以下に説明するように配送ロボットシステム100を構成した。
【0017】
各従業員5は、端末を携帯および使用する。携帯は、第1端末としての携帯端末80と、第2端末としての端末30とを含む。各従業員5は、A社から貸与された携帯端末80を携帯している。携帯端末80は、たとえば、通話可能なスマートフォンである。各従業員5は、施設1に出勤すると、端末30にログインして業務に使用する。端末30は、施設1に設置されたものであってもよいし、従業員5が各自所持するものであってもよい。端末30は、たとえば、ノートパソコンである。
【0018】
施設1内の各居室、廊下等の天井には、複数の無線通信機72が設置されている。これらの無線通信機72は、配送ロボット40に備えられた無線通信機42、および、携帯端末80に備えられた無線通信機(図示なし)と通信し、携帯端末80および配送ロボット40の現在位置を特定することができる。
【0019】
また、端末30は、サーバ装置10と通信可能であり、サーバ装置10は、従業員5が端末30からログインしたことを特定することができる。配送ロボット40は、施設1に届けられた(宅配ロッカー110に格納された)荷物6を取り出して、施設1に出勤する従業員5に配送する機能を備える。
【0020】
図2に示すように、サーバ装置10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、HDD(Hard Disk Drive)14と、通信IF(Interface)15とを含んで構成される。プロセッサ11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)である。これらは、通信バス16を通じて各種データのやり取りをする。
【0021】
プロセッサ11は、HDD14またはROM12に格納されているプログラムをRAM13に展開して実行する。このプログラムには、サーバ装置10によって実行される処理が記述されている。
【0022】
通信IF15は、機器管理装置20および端末30と信号あるいはデータをやり取りするための入出力装置である。サーバ装置10は、通信IF15を介して、機器管理装置20が検出した配送ロボット40の位置、配送ロボット40が出力する配送ロボット40を識別するためのIDおよび配送ロボット40が出力する信号、宅配ロッカー110および携帯端末80からの情報等を受信する。
【0023】
HDD14は、各種情報を記憶するストレージである。HDD14は、後述する作業場所データ91、荷物データ92、施設1の情報、配送ロボット40の情報等が記憶されている。
【0024】
配送ロボット40は、制御部41と、無線通信機42と、記憶部44と、カメラ45と、アーム47と、バッテリ48と、駆動部49とを含む。
【0025】
制御部41は、配送ロボット40全体を制御する。制御部41は、図示は省略するが、主な構成要素として、CPU、ROM、RAM、および通信IFを有している。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、配送ロボット40によって実行される処理が記述されている。なお、処理については、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0026】
無線通信機42は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy、「Bluetooth」は登録商標)通信規格に従う通信方式を用いて、配送ロボット40の位置を検出するための信号を出力する。BLE通信規格に代えて、UWB(Ultra Wide Band)通信規格に従う通信方式を用いてもよい。また、無線通信機42は、例えばLTE(Long Term Evolution)などの無線通信規格に従う通信方式を用いて、配送ロボット40を識別するためのIDを示す信号などを機器管理装置20へ送信する。
【0027】
カメラ45は、配送ロボット40の周囲を撮像し、撮像画像を制御部41へ出力する。カメラ45に代えて、配送ロボット40の周辺に存在する物体と配送ロボット40との距離を測定するレーザ距離計などが設けられてもよい。
【0028】
駆動部49は、配送ロボット40が移動するための駆動力を発生する。駆動部49は、例えば、配送ロボット40が移動するための車輪と、車輪を駆動するためのモータとを含む。駆動部49は、バッテリ48から電力の供給を受けて作動することができる。
【0029】
アーム47は、宅配ロッカー110に格納された荷物6を取り出すロボットアームであり、取り出した荷物6を配送ロボット40に格納する。制御部41は、カメラ45からの撮像画像に基づき荷物6の位置を特定し、荷物6を取り出すようにアーム47を制御する。
【0030】
制御部41は、カメラ45からの撮像画像に基づいて、配送ロボット40が自律的に移動するように駆動部49を制御する。バッテリ48は、駆動部49その他配送ロボット40の各機器が作動するための電力を供給する。記憶部44は、配送ロボット40が使用する各種情報を一時的に記憶する。
【0031】
複数の無線通信機72は、天井61に適当な距離を置いて設置され、配送ロボット40の無線通信機42と同じ通信規格に従う通信方式を用いて、配送ロボット40から発信される信号を受信するとともにその受信強度を検知する。各無線通信機72における受信強度から、施設内における配送ロボット40の位置を検出することができる。無線通信機72は、配送ロボット40から受信した信号の受信強度を機器管理装置20へ出力する。無線通信機70は壁に設置されてもよい。
【0032】
携帯端末80も配送ロボット40同様の無線通信機を備えており、各無線通信機72と通信可能である。同様の方法により、携帯端末80も、各無線通信機72との通信により携帯端末80の位置が特定される。
【0033】
機器管理装置20は、施設1内に設置された無線通信機72、配送ロボット40、宅配ロッカー110等の機器を制御する。機器管理装置20は、サーバ装置10からの指令に基づき、配送ロボット40に対する指令、および、宅配ロッカー110との情報の送受信等を行う。機器管理装置20は、各無線通信機72において受信される受信強度に基づき、配送ロボット40の位置および携帯端末80の位置を特定する。
【0034】
機器管理装置20は、通信網NWに接続されている。通信網NWには、機器管理装置20、サーバ装置10、および端末30が接続されている。
【0035】
サーバ装置10は、機器管理装置20を介して、配送ロボット40に対する指令等を出力可能であるとともに、配送ロボット40の位置情報等の情報を取得可能である。また、サーバ装置10は、機器管理装置20を介して、宅配ロッカー110を制御可能であるとともに、端末30からログインする従業員5の情報を管理する。
【0036】
端末30は、たとえば、パーソナルコンピュータ、ノートパソコンである。端末30は、入力部34と、各種情報を表示するディスプレイ35とを備える。入力部34は、たとえば、キーボード、マウスである。入力部34の操作により、端末30に指示を与えることができる。
【0037】
端末30および携帯端末80も、サーバ装置10と同様に、CPU、RAM、ROM、通信IFを含んで構成される。なお、配送ロボット40の管理および制御は、サーバ装置10が行ってもよいし、機器管理装置20が行ってもよいし、その他のサーバが行ってもよい。サーバ装置10は、施設1の外部に設置されたクラウドサーバであってもよい。また、サーバ装置10が実行する機能を、全て配送ロボット40が備えるようにしてもよい。
【0038】
宅配ロッカー110は、制御部114と、開錠部115とを備える。制御部114は、宅配ロッカー110を制御する。開錠部115は、制御部114からの指令に基づきロッカーの扉の開閉を行う。
【0039】
宅配ロッカー110は、複数のロッカーを備える。複数のロッカーの各々は、各従業員5に割当てられた個人専用のロッカーである。配送業者は、施設1に届ける荷物6の宛先に応じて各従業員5に割当てられたロッカーに荷物6を格納する。
【0040】
たとえば、従業員AにロッカーBが割り当てられており、荷物6の宛先が従業員Aである場合、配送業者は荷物6をロッカーBに格納する。その際、配送業者は、宅配ロッカー110に備えられた入力端末(図示なし)から宛先情報を入力する。これに応答して、制御部114は、宛先に対応するロッカーを解錠するよう開錠部115に指令を出すようにしてもよい(宛先が従業員AであればロッカーBを解錠)。
【0041】
サーバ装置10は、機器管理装置20を介して、宅配ロッカー110を制御する。配送業者によって宅配ロッカー110に荷物6が届けられた場合、制御部114は、ロッカー情報(たとえば、格納されたロッカー番号、荷物6の宛先(従業員5)等)をサーバ装置10に通知する。
【0042】
これにより、サーバ装置10は、どのロッカーにどの従業員5の荷物6が格納されているかを管理することができる。また、配送ロボット40が荷物6を配送する場合、サーバ装置10は、制御部114に対して開錠指令を送信する。制御部114は、開錠指令を受信すると、開錠部115は配送対象となるロッカーを開錠して、配送ロボット40が荷物6を取り出しできるようにする。
【0043】
以下、具体例で説明する。図3は、作業場所データ91の一例である。作業場所データ91は、サーバ装置10のHDD14に記憶される。作業場所データ91は、施設1に出勤した従業員5の「ログイン時刻」(従業員5が端末30にログインした時刻)、従業員5を識別する「従業員ID」、従業員5の「作業場所」を記録したデータである。
【0044】
施設1には、居室A~Dを含む複数の居室が備えられており、従業員5は、出勤時にいいずれかの居室を自由に選択して、その居室内の自由な座席で作業(業務)を行うものとする。
【0045】
たとえば、2023年5月18日8:44:10に、従業員ID「Z3」の従業員5が出勤(端末30にログイン)しており、その作業場所は施設1内の居室A(X1,Y1)である。ここで、居室A(X1,Y1)は、居室Aの床平面上の位置を特定するX軸方向の座標およびY軸方向の座標を示す数値である。
【0046】
また、2023年5月18日8:46:05に、従業員ID「Z6」の従業員5が出勤しており、その作業場所は施設1内の居室D(X2,Y2)である。2023年5月18日8:50:26に、従業員ID「Z1」の従業員5が出勤しており、その作業場所は施設1内の居室C(X3,Y3)である。
【0047】
図4は、荷物データ92の一例である。荷物データ92は、サーバ装置10のHDD14に記憶される。荷物データ92は、宅配ロッカー110に格納された荷物の情報を記録するデータである。
【0048】
荷物データ92には、荷物6の「到着時刻」(ロッカーに格納された時刻)、荷物の宛先である従業員5の「従業員ID」、荷物6が格納されたロッカーの「ロッカー番号」およびその荷物6の「状態」が記録されている。「状態」には、配送ロボット40によって荷物6が従業員5に配送済である(ロッカーに荷物6が存在しない)場合は「配送済」が記録され、未配送である(ロッカーに荷物6が存在する)場合は「未配送」が記録されている。
【0049】
たとえば、2023年5月16日10:20:05に、従業員ID「Z9」の従業員5を宛先とする荷物6がロッカー番号「N9」のロッカー(本従業員5に割当てられたロッカー)に格納されている。この荷物6は既に従業員ID「Z9」の従業員5に配送済みである。
【0050】
また、2023年5月17日18:44:00に、従業員ID「Z1」の従業員5を宛先とする荷物6がロッカー番号「N1」のロッカー(本従業員5に割当てられたロッカー)に格納されており、この荷物6はまだ従業員ID「Z1」の従業員5に配送されていない。
【0051】
作業場所データ91によれば、従業員ID:Z3,Z6,Z1の従業員5が出社しており、荷物データ92によれば、そのうち、従業員ID:Z1の従業員5に未配達の荷物6が存在することがわかる。この場合、配送ロボット40は、ロッカー番号「N1」のロッカーから荷物6を取り出し、居室Cの位置(X3,Y3)まで荷物6を搬送して、従業員ID:Z1の従業員5に荷物6を届ける。
【0052】
図5は、宅配ロッカー110から荷物6を取り出す様子を説明するための図である。図3,4で示した例において、サーバ装置10は、ロッカー番号「N1」のロッカーに開錠指令を送信する。これにより、宅配ロッカー110の制御部114は、ロッカー番号「N1」のロッカーを開錠部115に開錠させる。
【0053】
配送ロボット40は、サーバ装置10から、ロッカー番号「N1」のロッカーから、従業員ID「Z1」の従業員5の荷物6を取り出して、この荷物6を居室Cの位置(X3,Y3)まで搬送する指令を受ける。
【0054】
配送ロボット40は、宅配ロッカー110まで走行し、アーム47を駆動してロッカー番号「N1」のロッカーから荷物6を取り出す。配送ロボット40は、カメラ45で撮像した画像に基づき、ロッカー番号「N1」のロッカーおよび荷物6の位置を検出する。配送ロボット40は、取り出した荷物6を配送ロボット40の格納部(図示せず)に格納する。
【0055】
図6は、荷物6を配送する様子を説明するための図である。図6には、居室Cに配置されたデスクおよび居室Cに出勤した従業員5aと従業員5bとが示されている。従業員5aの従業員IDは「Z1」であり、位置(X3,Y3)の作業場所で作業(業務)を行っている。
【0056】
配送ロボット40は、居室Cに入室する。そして、配送ロボット40は、従業員ID「Z1」の従業員5aがいる位置(X3,Y3)まで走行する。配送ロボット40は、アーム47を駆動して格納部から荷物6を取り出す。その際、配送ロボット40は、従業員5aに対して、荷物6が届いている旨を音声等により通知してもよい。
【0057】
これにより、従業員ID「Z1」の従業員5aは、荷物6を受け取ることができる。配送ロボット40は、従業員ID「Z1」の従業員5aが荷物6を受け取った旨をサーバ装置10に通知する。これにより、サーバ装置10は、図4に示した荷物データ92において、従業員ID「Z1」のデータにおける「状態」を「未配送」から「配送」に更新する。
【0058】
なお、配送ロボットシステム100は、上記のような宅配ロッカー110を用いず構成してもよい。この場合、施設1に届いた荷物6は1箇所に集められ、人の手によって、荷物データ92を入力(従業員5を特定)して登録するようにしてもよい。また、宅配ロッカー110は、個人単位でなく、複数人(たとえば、部署単位)で1つのロッカーが使用されるようにしてもよい。また、配送ロボット40の配送先も、従業員5が作業する席でなく、居室単位で配送するようにしてもよい(たとえば、各居室の入口付近に届ける等)。
【0059】
以下、フローチャートを用いて説明する。図7は、出勤判定処理のフローチャートである。出勤判定処理は、サーバ装置10が実行する処理である。出勤判定処理は、周期的(たとえば、1秒ごと)に起動すればよい。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0060】
出勤判定処理を開始すると、サーバ装置10は、S11において、携帯端末80からの信号を受信した無線通信機72の情報を取得する。サーバ装置10は、S12において、無線通信機72の情報から携帯端末80の位置(従業員の位置)を特定する。サーバ装置10は、複数の無線通信機72と携帯端末80との通信強度(無線通信機72が携帯端末80から受信した信号の強度)に基づき、従業員5の位置を特定する(たとえば、三点測位による)。
【0061】
携帯端末80は、各従業員5がそれぞれ1台ずつ所持しており、携帯端末80の情報から、従業員5(従業員ID)を特定可能である。つまり、サーバ装置10は、無線通信機72から取得した情報に基づき、従業員5の従業員IDおよびその位置を特定可能である。
【0062】
従業員5が出社すると自由に席を選択して、端末30にログインし、端末30を用いて作業を開始する。つまり、端末30にログインしたときの従業員5の位置が、出勤時(ログイン時刻)における作業場所ということになる。サーバ装置10は、端末30のログイン情報を管理している。サーバ装置10は、ログイン情報(たとえば、ログイン時のユーザID)から従業員5の従業員IDを特定可能である。
【0063】
サーバ装置10は、S13において、従業員5が端末30にログインした場合、従業員5が出勤したと判定するとともに、従業員5の位置が従業員5の作業場所であると判定する。上記例では、サーバ装置10は、従業員ID「Z1」の従業員5aが、端末30にログインした場合、従業員5aが出勤したと判定するとともに、位置(X3,Y3)が従業員5aの作業場所であると判定される。
【0064】
これにより、サーバ装置10は、従業員5aが出勤時に着席した座席を把握することができる。以下、出勤したと判定された従業員5を「対象従業員」と称する。また、配送対象となる荷物6を「対象荷物」と称する。
【0065】
サーバ装置10は、S14において、作業場所データ91を更新し、出勤判定処理を終了する。上記例において、図3に示したような、従業員ID「Z1」の作業場所データ91が記録される。
【0066】
なお、携帯端末80および端末30のいずれか1つにより、従業員5の出勤有無および作業場所を特定するようにしてもよい。たとえば、携帯端末80のみにより特定する場合、無線通信機72と携帯端末80とが通信接続した場合に、従業員5が出勤したと判定し、座席付近で所定時間以上停止している位置が作業場所であると判定してもよい。端末30のみにより特定する場合、端末30へのログインにより従業員5が出勤したと判定し、端末30が接続するネットワークにより作業場所を特定するようにしてもよい(たとえば、居室Cのネットワークに接続された場合は、作業場所が「居室C」であると判定する)。
【0067】
以下、配送ロボットシステム100が実行する処理についてフローチャートを用いて説明する。図8は、サーバ側処理およびロボット側処理のフローチャートである。サーバ側処理は、サーバ装置10が実行する処理である。ロボット処理は、配送ロボット40が実行する処理である。
【0068】
サーバ側処理は、たとえば、毎日の定められた時間(たとえば、10時、13時、16時等)に起動してもよい。ロボット側処理は、対象荷物を配送する指令を受信したときに起動すればよい。
【0069】
サーバ装置10は、宅配ロッカー110から従業員5の荷物6が格納されているか否かの情報を取得可能である。サーバ装置10は、宅配ロッカー110から取得した情報(具体的は、荷物データ92)に基づき、対象荷物があるか否かを判定することができる。
【0070】
サーバ側処理を開始すると、サーバ装置10は、S101において、i=1に設定する。サーバ装置10は、S102において、i番目の作業場所データ91を取得する。作業場所データ91において、1番目の作業場所データ91は、従業員ID「Z3」のデータである。
【0071】
サーバ装置10は、S103において、従業員IDが一致しかつ状態が未配送の荷物データ92であるか否かを判定する。サーバ装置10は、従業員IDが一致しかつ状態が未配送の荷物データである場合(S103でYES)に、処理をS104に進める。サーバ装置10は、従業員IDが一致しかつ状態が未配送の荷物データでない場合(S103でNO)に、処理をS106に進める。
【0072】
i=1である場合、従業員IDが「Z3」である荷物データ92がないため、S106に進む。サーバ装置10は、S106において、iを1増やす。これにより、i=2となる。
【0073】
サーバ装置10は、S107において、全ての作業場所データ91を確認済であるか否かを判定する。サーバ装置10は、全ての作業場所データ91を確認済である場合(S107でYES)、サーバ側処理を終了する。一方、サーバ装置10は、全ての作業場所データ91を確認済でない場合(S107でNO)、処理をS102に戻す。
【0074】
上記例において、i=1(1行目)の作業場所データ91しか確認していないため、処理をS102に戻し、これにより、i=2(2行目)の作業場所データ91について、S102~S106の処理を繰り返す。
【0075】
i=2である場合、従業員IDが「Z6」である荷物データ92がないため、S106に進む。サーバ装置10は、S106において、iを1増やす。これにより、i=3となり、再び、S102に戻って、S102~S106の処理を繰り返す。
【0076】
i=3である場合、従業員IDが「Z1」である荷物データ92が存在し、かつ、このデータは状態が「未配送」に設定されている。このように、サーバ装置10は、対象従業員(出勤している従業員5)に届けられた対象荷物があるか否を判定している。この場合、処理がS104に進む。
【0077】
サーバ装置10は、S104において、作業場所に荷物6を配送する指令を配送ロボット40に送信する。上記例では、従業員IDが「Z1」の対象社員の対象荷物(ロッカー番号N1に格納された荷物6)を居室Cの作業場所(X3,Y3)まで搬送する指令が配送ロボット40に送信される。
【0078】
サーバ装置10は、S105において、配送ロボット40から配送完了情報を受信した場合、荷物データ92の状態を配送済に変更する。上記例において、配送ロボット40から配送完了情報を受信した場合に、従業員ID「Z1」の状態を「配送済」に変更する。
【0079】
一方、サーバ装置10からの指令に基づき、配送ロボット40は、宅配ロッカー110から対象荷物を取り出して、対象従業員に配送する。ロボット側処理が開始すると、配送ロボット40は、S201において、対象荷物を取り出す。上記例では、図5を用いて説明したように、配送ロボット40は、従業員ID「Z1」の対象従業員の対象荷物をロッカー番号「N1」のロッカーから取り出す。
【0080】
配送ロボット40は、S202において、対象荷物を対象従業員の作業場所に搬送する。上記例では、図6を用いて説明したように、配送ロボット40は、従業員ID「Z1」の対象従業員の対象荷物を居室Cの作業場所(X3,Y3)まで搬送する。このように、配送ロボット40は、対象荷物があると判定された場合、対象従業員の作業場所まで対象荷物を配送する。
【0081】
配送ロボット40は、S203において、配送完了情報をサーバ装置10に送信し、ロボット側処理を終了する。
【0082】
以上説明したように、配送ロボットシステム100は、配送ロボット40と、制御装置としてのサーバ装置10とを備える。配送ロボット40は、施設1に届けられた荷物6を施設1に出勤する従業員5に配送する。サーバ装置10は、配送ロボット40を制御する。従業員5の作業場所は、施設1内で自由に選択可能である。サーバ装置10は、従業員5が使用する端末30,携帯端末80の情報に基づき、従業員5が出勤しているか否かおよび出勤していると判定した対象従業員の作業場所を判定する。サーバ装置10は、対象従業員に届けられた対象荷物があるか否を判定する。配送ロボット40は、対象荷物があると判定された場合、対象従業員の作業場所まで対象荷物を配送する。
【0083】
このように、配送ロボット40が従業員5の出勤状況を把握し、郵便物等の荷物6を届けるので、配送担当者を用意して人による手渡しを行わなくてよくなる。また、従業員5は、出勤日に自分宛に届いた荷物6の確認および受け取りのために、わざわざ宅配ロッカー110まで出向く必要もない。上記のように構成することで、在宅勤務およびフリーアドレス制の導入された施設1において、従業員5に届いた荷物を好適に配送することができる。
【0084】
施設1に届けられた荷物6は、従業員5ごとに割当てられた宅配ロッカー110に格納される。サーバ装置10は、宅配ロッカー110から従業員5の荷物6が格納されているか否かの情報を取得可能である。サーバ装置10は、宅配ロッカー110から取得した情報に基づき、対象荷物があるか否かを判定する。配送ロボット40は、宅配ロッカー110から対象荷物を取り出して、対象従業員に配送する。これにより、従業員5に荷物6が届いているか否かを自動判定するとともに、人の手を介することなく、宅配ロッカー110から従業員5へ荷物6を配送することが可能となる。
【0085】
施設1には、複数の無線通信機72が設置されている。端末は、第1端末としての携帯端末80と、第2端末としての端末30とを含む。携帯端末80は、複数の無線通信機72と通信可能であって従業員5が携帯する。端末30は、従業員5が作業に使用する。サーバ装置10は、複数の無線通信機72と携帯端末80との通信強度に基づき、従業員5の位置を特定する。サーバ装置10は、従業員5が端末30にログインした場合、従業員5が出勤したと判定するとともに、従業員5の位置が従業員5の作業場所であると判定する。このように構成することで、出勤時点での作業場所を確実に特定することができる。
【0086】
以上のように構成することで、従業員5が出勤していることおよび出勤時における作業場所を自動的に特定し、さらに、出勤した従業員5に荷物6が届いているか否かを自動的に判定し、人の手を介することなく、荷物6を従業員5まで自動的に搬送することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 施設、5,5a,5b 従業員、6 荷物、10 サーバ装置、11,21,41 プロセッサ、12,22 ROM、13,23 RAM、14,24 HDD、15,25 通信IF、16,26,46 通信バス、20 機器管理装置、30 端末、34 入力部、35 ディスプレイ、40 配送ロボット、42,72 無線通信機、44 記憶部、45 カメラ、47 アーム、48 バッテリ、49 駆動部、61 天井、80 携帯端末、91 作業場所データ、92 荷物データ、100 配送ロボットシステム、110 宅配ロッカー、114 制御部、115 開錠部、NW 通信網。
図1
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図8