(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006454
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20250109BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61H23/02 360
A61H23/02 386
A61N5/06 A
A61N5/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107260
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】519174263
【氏名又は名称】平野 昌治
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 昌治
【テーマコード(参考)】
4C074
4C082
【Fターム(参考)】
4C074AA10
4C074CC01
4C074DD01
4C074FF01
4C074FF05
4C074GG01
4C074HH03
4C074HH04
4C074HH09
4C082PA01
4C082PA02
4C082PC10
(57)【要約】
【課題】使い勝手が良く、プローブが熱を持ちにくい経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置を提供する。
【解決手段】操作部を備えた箱型の本体部と、振動モータと近赤外光の光源と赤色可視光の光源とを内蔵して本体部から外部へ延長されるプローブを備え、プローブは、グリップ部と、ポリカーボネート樹脂からなるキャップが先端に設けられたヘッド部とからなり、グリップ部及びヘッド部は、外面の全周に渡って複数のひだ部が形成され、振動モータは、偏心錘付きのDCモータからなり、4つのスイッチを切り替えることにより回転とブレーキを繰り返す間断運転を行ない、操作部により、振動モータの回転数と、振動モータの間断の周期と、近赤外光及び赤色可視光の照射強度と、が設定され、振動モータの間断の周期が、0.066~2.0Hzの範囲に設定される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を備えた箱型の本体部と、振動モータと近赤外光の光源と赤色可視光の光源とを内蔵して前記本体部から外部へ延長されるプローブを備え、
前記プローブは、手に握るグリップ部と、先端にポリカーボネート樹脂のキャップを備えたヘッド部とからなり、
前記グリップ部及び前記ヘッド部は、外面の全周に渡ってひだ部が形成され、
前記振動モータは、偏心錘付きのDCモータからなり、4つのスイッチを切り替えることにより回転とブレーキを繰り返す間断運転を行ない、
前記操作部の操作により、前記振動モータの回転数と、前記振動モータの間断の周期と、前記近赤外光及び赤色可視光の照射強度と、が設定され、
前記振動モータの間断の周期が、0.066~2.0Hzの範囲に設定されることを特徴とする経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置。
【請求項2】
前記振動モータの間断は、1周期(回転、ブレーキ)が、(0.4秒、0.4秒)、(5秒、3秒)、(10秒、5秒)のいずれかにワンタッチで設定されることを特徴とする請求項1に記載経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置。
【請求項3】
前記ヘッド部は、複数の通気用スリットが外周に設けられることを特徴とする請求項1に記載経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置。
【請求項4】
前記キャップは、表裏両面の内少なくとも表面が鏡面仕上げされていることを特徴とする請求項1に記載の経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置。
【請求項5】
前記キャップは、フッ素樹脂によるコーティングがなされていることを特徴とする請求項4に記載の経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に近赤外光を照射すると共に振動や刺激を加え、化粧品等の薬液を皮膚から良好に浸潤させることができる経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1に示すように、赤色可視光と近赤外光を照射し、振動や刺激を加えることができる装置を提案した。このような装置では、プローブに赤色可視光と近赤外光の複数のLED素子が配置され、振動モータは短い時間で間断を繰り返すので、プローブが熱を持つとの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、使い勝手が良く、プローブが熱を持ちにくい経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置は、操作部を備えた箱型の本体部と、振動モータと近赤外光の光源と赤色可視光の光源とを内蔵して前記本体部から外部へ延長されるプローブを備え、前記プローブは、手に握るグリップ部と、先端にポリカーボネート樹脂のキャップを備えたヘッド部とからなり、前記グリップ部及び前記ヘッド部は、外面の全周に渡ってひだ部が形成され、前記振動モータは、偏心錘付きのDCモータからなり、4つのスイッチを切り替えることにより回転とブレーキを繰り返す間断運転を行ない、前記操作部の操作により、前記振動モータの回転数と、前記振動モータの間断の周期と、前記近赤外光及び赤色可視光の照射強度と、が設定され、前記振動モータの間断の周期が、0.066~2.0Hzの範囲に設定されることを特徴とする。
【0006】
前記振動モータの間断は、1周期(回転、ブレーキ)が、(0.4秒、0.4秒)、(5秒、3秒)、(10秒、5秒)のいずれかにワンタッチで設定されることを特徴とする。
【0007】
前記ヘッド部は、複数の通気用スリットが外周に設けられることを特徴とする。
【0008】
前記キャップは、表裏両面の内少なくとも表面が鏡面仕上げされていることを特徴とする。
【0009】
前記キャップは、フッ素樹脂によるコーティングがなされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置によれば、
(1)振動モータは、偏心錘付きなので、振動モータの回転数1.5k~12krpmから、1回転で1刺激として、25~200Hzの振動の刺激が得られる。これに加えて、振動モータを回転とブレーキを繰り返す間断運転を行なったので、間断の周期を0.066~2.0Hzの範囲で設定することで、刺激が単調にならず、複合的な振動となり、明確に刺激を感じることができる。低周波の刺激は筋肉をリラックスできる。
(2)また、プローブのヘッド部とグリップ部の全周にひだ部を設けたので、内部の熱を外部に逃がすことができる。
(3)プローブのキャップをポリカーボネート樹脂としたので、ポリプロピレンなどに比べて近赤外光の透過率を高くできる。
【0011】
振動モータの間断は、1周期(回転、ブレーキ)を(0.4秒、0.4秒)、(5秒、3秒)、(10秒、5秒)の中から設定でき、0.066~2.0Hzの低周波数の範囲をカバーできる。間断の周期の設定は、ワンタッチで可能で、細かい数値を入力しないで済む。
【0012】
ヘッド部には、外周に複数の通気用スリットを設けたので、振動モータの熱や近赤外光や赤色可視光の光源の熱を外部に逃がすことができる。
【0013】
キャップの表裏両面の内少なくとも表面を鏡面仕上げとしたので、光の透過性を向上できる。
【0014】
キャップをフッ素樹脂によってコーティングしたので、耐摩耗性や耐溶剤性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置の構成図で、光源をプローブ側に設けた例である。
【
図5】設定メニュー(m1~m3)の詳細を示す表である。
【
図7】近赤外光の光源と近赤外光駆動回路を示す図である。
【
図8】振動モータとスイッチ(SW1~4)の動作表である。
【
図9】振動モータの回転とブレーキを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置を説明する。
【実施例0017】
図1は、本発明による経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置100の構成図で、本装置は、本体部1とプローブ2からなる。本体部1には、AC100Vの電源がACアダプタ3で直流に変換して給電される。本体部1は箱型で、操作部4、制御部5、表示部6、アダプタ部7を備える。操作部4と表示部6は、本体部1の表面に設けている。プローブ2は円筒状で、一端に近赤外光と赤色可視光を透過するキャップ10を有し、他端にスタートストップスイッチ11を有し、振動モータ8を内蔵し、近赤外光と赤色可視光の光源12を内蔵している。例として、近赤外光は855nmの波長、赤色可視光は630nmの波長を使用することができる。本体部1とプローブ2の間は、インターフェースコード9で接続される。本体部1の一側には、図示しないが、プローブ2のヘッド部2bを上に向けて取り出し自在に嵌め込むL型の保持板が取り付けられる。
【0018】
制御部5(
図1参照)は、プロセッサとメモリを備え、プログラム制御され、無線通信機能を備える。Wi-Fiの無線LANを備えており、最寄りのアクセスポイントとインターネットを経由してサーバーやPC(パーソナルコンピュータ)に接続できる。また、シムカード(携帯電話の加入者を特定するID番号が記録されたカード)を備えており、携帯電話会社を経由してサーバーやPCに接続できる。例として、サーバーをカスタマーセンターに設置し、経皮薬液浸潤、血流促進、及び細胞活性装置100の運転情報を読み取り、レンタル料の算出と請求の業務を行なうことができる。サーバーへ送信する運転情報には、(a)利用者の氏名、(b)使用日時、(b)運転した強度、(c)運転時間、(d)機器の稼働状況(正常稼働・故障・故障個所)などがある。無線通信機能を使用して、携帯電話から操作部の操作を可能とすることもできる。
【0019】
本体部1(
図1参照)には、課金端末(図示せず)が接続される。課金端末に使用料金が表示されるので、利用者が携帯電話をかざすと、課金端末はインターネット経由で決済運営会社にアクセスし、決済がOKかどうか確認できる。決済がOKで決済が完了したなら、課金端末は、本体部1に運転操作の許可信号を出す。本体部1は、運転操作の許可信号を受けると、待機状態にある電源をオンする。決済がNGの場合、例えば現金での支払いが完了すれば、人手によって本体部1の操作部4で操作を行なう。
【0020】
図2は、本体部1の操作部4の詳細を示す図である。電源投入スイッチ13を一方の側に倒すことで電源の投入を行なう。他方に倒せば電源が切断となる。操作部4のモード選択ボタン4aは、設定メニューm1~m3(
図5参照)を選択する。1回押下する毎に変化し、何回も押下すればm1⇒m2⇒m3⇒m1のように循環する。m1は、振動モータ8の回転数を設定するメニューで、m2は、振動モータの振動の間断の周期を設定するメニューで、m3は、近赤外光と赤色可視光の照射強度を設定するメニューで、m1~m3を選択し、表示された中から強度を選択する。
【0021】
図2に示すスタートストップスイッチ4bは、運転の開始のスイッチである。プローブ2のスタートストップスイッチ11も同じスイッチで操作性を向上させている。スタートストップスイッチ4bを押下すると、プローブ2のキャップ10から近赤外光と赤色可視光が照射され、プローブ2が振動する。再度押下すると、近赤外光と赤色可視光の照射が停止され、振動も停止する。
【0022】
強度アップボタン4cと強度ダウンボタン4d(
図2参照)は、モード選択ボタン4aで設定メニューm1~m4の1つを表示部6に表示させると、強度の範囲が表示されるので、その範囲の中で数値をアップし又はダウンして所望の値にする。タイマーアップボタン4eとタイマーダウンボタン4fは、運転時間の設定で、5~40分の範囲で設定できる。
【0023】
図3は、
図2のアダプタ部7の構成を示す図である。アダプタ部7は、プローブ2とのインターフェース回路を備える。アダプタ部7には、振動モータ駆動回路16、近赤外光駆動回路17、赤色可視光駆動回路18、スタートストップスイッチ11の受信回路19が備えられる。近赤外線の光源12aと赤色可視光の光源12bが、プローブ2に内蔵されるので、近赤外光駆動回路17と赤色可視光駆動回路18からの出力がプローブ2に送られる。これら駆動回路や受信回路は、制御部5とバス形式で接続され、制御データがやり取りされる。
【0024】
プローブ2には複数の種類がある。
図3には示さないが、プローブ2の型式信号を本体部1に送り出すことができる。制御部5はコネクタ15の型式信号を見て、プローブの種類を判定できる。例えばプローブの型式によってLEDの個数が異なるので、これに合った電流を流すことができる。LEDの個数が多い場合、キャップの径が大きい。なお、振動モータ8の定格も本体部1に通知できる。
【0025】
図4は、制御部5のフローチャートを示す図である。S1の電源投入後、S2では、あらかじめ運転タイマーの時間と刺激の強さを設定する。S3は、
図1のプローブ2のスタートストップスイッチ11又は
図2の操作部のスタートストップスイッチ4bが、押下されたかの判定である。スイッチが押下され、運転が開始されると、あらかじめ設定された強度で運転を行なう。運転は、S5の運転タイマーの時間に到達するか、S6のプローブ2のスタートストップスイッチ11又は操作部4のスタートストップスイッチ4bが押下されるまで続けられる。
【0026】
図5は、設定メニュー(m1~m3)の詳細を示す表である。m1~m3を選択すると、表示部6に設定可能な範囲の数値Aと、設定すべき数値Bが表示される。強度アップボタン4cと強度ダウンボタン4dを使用して、設定すべき数値Bを確定する。m1の振動モータ8の回転数は、例として1.5k~12krpmの範囲で設定できる。m2の振動モータ8の間断の1周期を(回転、ブレーキ)で表すと、(回転、ブレーキ)=(0.4秒、0.4秒)、(回転、ブレーキ)=(5秒、3秒)、(回転、ブレーキ)=(10秒、5秒)のいずれかにワンタッチで設定できる。m3の近赤外光と赤色可視光の強度は、照射強度を小~大の範囲で設定できる。任意の値には設定不可で、複数の振動数を示して選択させる。このように、振動モータ8の回転数、間断の周期、光源の照射強度を個別に設定できるので、その人に合った刺激の強度が設定できる。
【0027】
図6は、プローブ2の側面図である。プローブ2は、手に握るグリップ部2aとヘッド部2bからなる。ヘッド部2bにキャップ10が設けられる。キャップ10は、ポリカーボネート樹脂を使用した。ポリカーボネートは、耐久性を有し、光の透過率が高い。表面と裏面の両方を鏡面仕上げしたので光の透過率が86%であり、表面だけを鏡面仕上げした場合、光の透過率が約40%である。なお、加工後に鏡面仕上げをしない場合、光の透過率は10%以下となる。光の透過率を高くしたキャップは、皮膚に照射される全光束を多くでき、熱がキャップにこもらない。キャップ10の表面にはフッ素樹脂のコーティングを施した。フッ素樹脂のコーティングは、耐摩耗性と耐溶剤性を向上でき透明感も持続できる。プローブ2のヘッド部2bの外周に沿って内部の空間と連通した複数の通気用スリット10aを設けている。これにより外部との空気流通ができる。近赤外線の光源12aの発熱に起因してキャップ10の内部に溜まった熱を外部に逃がすことができる。ファンを設けないでも一定の熱を外に逃がす効果がある。プローブ2のグリップ部2aとヘッド部2bの全周に金属製のひだ部2cを設けたので、ここからも熱が外部に放散される。なお、プローブ2は樹脂製としてもよい。キャップ10に通気用小孔を設けてもよい。
【0028】
図7は、近赤外光の光源12aと近赤外光駆動回路17を示す図である。光源12aには発光ダイオード(LED)を使用することができる。この回路は、近赤外光駆動回路17でも、赤色可視光駆動回路18でも同じである。LEDは、所定の照射強度となるようにPWM信号(Pulse Width Modulation)の矩形波を送り、照射強度を強くしたり弱くしたりできる。
図7でオンの信号幅を拡げ、オフの信号幅を狭くすれば、照射強度が増える。
【0029】
図8は、振動モータ8とスイッチ(SW1~4)の動作表である。
図9は、振動モータ9の回転とブレーキを説明する図である。振動モータ8は、回転軸に偏心錘が取り付けられたDCモータで、回転数は、例えば1.5k~12krpmが可能である。その場合、1回転で1刺激(押圧)として、刺激の周波数は25~200Hzである。これは1500rpm÷60秒から25回/秒が、12000rpm÷60秒から200回/秒が算出される。振動モータ8の周囲に4つのスイッチSW1~SW4を設けて切り替える。
図8の表に示すように、SW1とSW4をオンして通電すると例えば正転となる。SW3とSW2をオンして通電すると逆転となる。SW1とSW3がオフで、SW2とSW4をオンにするとブレーキになる。これはロータの回転で逆起電力が生じ、電気エネルギーとなって電流が流れるので、ブレーキとして作用できる。振動モータ8を短い時間回転し、短い時間でブレーキをかけることを繰り返す。この場合、間断の1周期は、(回転、ブレーキ)で表すと、(回転、ブレーキ)=(0.4秒、0.4秒)、(回転、ブレーキ)=(5秒、3秒)、(回転、ブレーキ)=(10秒、5秒)のいずれかに設定できる。
図5を参照。これにより、偏心錘による早い刺激に加えて、振動モータの回転とブレーキの繰り返しによって振動が複合的な振動となり、刺激が変化し、単調ではないリラックスした刺激とすることができる。なお、SW1とSW3がオンで、SW2とSW4をオフとしても、振動モータ8への給電がないので、ブレーキとして作用できる。
本装置は、皮膚に近赤外光を照射すると共に振動を加えるので、皮膚の細胞を活性化や薬液の浸潤ができる装置として好適である。血行促進や消炎鎮痛の装置としても有効である。