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特開2025-6460作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006460
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/52 20060101AFI20250109BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/52
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107270
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】廣島 浩司
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】村本 憲一
【テーマコード(参考)】
3B087
3D301
【Fターム(参考)】
3B087DD10
3B087DD11
3B087DD12
3B087DE10
3D301AA02
3D301BA07
3D301DA34
3D301EA04
3D301EA19
3D301EB13
3D301EC01
(57)【要約】
【課題】走行中における乗り心地を改善できる作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法を提供する。
【解決手段】運転席5Sは床5Fの上に配置されている。シートサスペンション40は、床5Fと運転席5Sとの間に配置され、少なくとも第1減衰力と第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素20を有する。変位センサ41は、床5Fに対する運転席5Sの相対変位量を検出する。コントローラ50は、変位センサ41により検出された相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きい場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両であって、
床と、
前記床の上に配置された運転席と、
前記床と前記運転席との間に配置され、少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるコントローラと、を備えた、作業車両。
【請求項2】
前記床の上下方向における加速度を検出する加速度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記加速度センサにより検出された前記床の前記加速度における第1ピークの絶対値が前記第1ピークの1つ前の第2ピークの絶対値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第2減衰力から前記第1減衰力へ切替える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラは、前記変位センサにより検出された相対変位量が前記第1所定値より大きくなり、かつ相対変位量の絶対値が増加から減少に変わったと判定した場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラは、前記相対変位量のピークの絶対値が前記第1所定値より小さい第2所定値未満となった場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第2減衰力から前記第1減衰力へ切替える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記コントローラは、前記可変ダンパー要素に与える指令電流の値が第1電流値から前記第1電流値よりも大きい第2電流値へ時間軸上で傾斜しながら増加することにより前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記可変ダンパー要素は、磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に作用する磁場を形成するコイルと、を有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
作業機を有する作業車両のシステムであって、
床と、
前記床の上に配置された運転席と、
前記床と前記運転席との間に配置され、少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるコントローラと、を備えた、作業車両を含むシステム。
【請求項8】
作業機と、床と、前記床の上に配置された運転席と、前記床と前記運転席との間に配置され少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、を有する作業車両の制御方法であって、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を取得するステップと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きいか否かを判定するステップと、
前記ピーク値が前記第1所定値より大きいと判定した場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるステップと、を備えた、作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル、ホイールローダなどの作業車両では、運転室(キャブ)の床に運転席(運転シート)が固定される、いわゆるリジットシートが用いられていた。しかし乗り心地を改善し、オペレータの疲労を軽減するために、運転席と床の間にメカニカルサスペンション、エアサスペンションなどが配置された作業車両が登場するようになった。
【0003】
またオペレータの好みに合わせて、シートサスペンションに含まれるダンパーの硬さを複数段階で調整できるようにした作業車両もある。ダンパーの硬さを調整可能な作業車両は、特開2000-85435号公報(特許文献1)、特開2000-85436号公報(特許文献2)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-85435号公報
【特許文献2】特開2000-85436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両は足場の悪い作業現場を走行することが多く、走行時に段差を乗り越える機会も多い。そこで、そのような場合にも、走行中における乗り心地を改善したいとの要望がある。
【0006】
本開示の目的は、走行中における乗り心地を改善できる作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業車両および作業車両を含むシステムの各々は、作業機と、床と、運転席と、シートサスペンションと、変位センサと、コントローラとを備える。運転席は、床の上に配置されている。シートサスペンションは、床と運転席との間に配置され、少なくとも第1減衰力と第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有する。変位センサは、床に対する運転席の相対変位量を検出する。コントローラは、変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きい場合に可変ダンパー要素の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。
【0008】
本開示の作業車両の制御方法は、作業機と、床と、床の上に配置された運転席と、床と運転席との間に配置され少なくとも第1減衰力と第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、床に対する運転席の相対変位量を検出する変位センサと、を有する作業車両の制御方法であって、以下のステップを有する。
【0009】
床に対する運転席の相対変位が取得される。変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きいか否かが判定される。ピーク値が第1所定値より大きいと判定された場合に可変ダンパー要素の減衰力が第1減衰力から第2減衰力へ切替えられる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、走行中における乗り心地を改善できる作業車両、作業車両を含むシステムおよび作業車両の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態におけるホイールローダ(作業車両の一例)の構成を示す側面図である。
図2】本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムの構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムに採用される可変ダンパー要素の構成を示す断面図である。
図4】本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムに採用されるコントローラの機能ブロックを示す図である。
図5】作業車両の走行の様子を示す図(A)、走行時における運転室の床と運転席との相対変位量の時間変化を示す図(B)、運転室における床(ベース)の加速度の時間変化を示す図(C)、および可変ダンパー要素に与える指令電流値の時間変化を示す図(D)である。
図6】本開示の一実施形態における作業車両の制御方法を示す第1フロー図である。
図7】本開示の一実施形態における作業車両の制御方法を示す第2フロー図である。
図8】本開示の一実施形態における作業車両の制御方法を示す第3フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0014】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、図1に示す運転室5内の運転席5Sに着座したオペレータを基準とした方向である。図1では、前後方向をZで示し、前方向を示すときはZf、後方向を示すときはZbで示す。また図2では、上下方向をYで示す。
【0015】
<作業車両の構成>
【0016】
本実施形態における作業車両の一例としてホイールローダの構成について図1を用いて説明する。なお本実施形態における作業車両はホイールローダに限定されるものではない。本実施形態の作業車両は、作業機および運転席を有する作業車両であればよく、油圧ショベル、ブルドーザ、モータグレーダなどであってもよい。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態におけるホイールローダの構成を示す側面図である。図1に示されるように、本実施形態におけるホイールローダ1は、走行体2と、作業機3とを有している。作業機3は、走行体2に配置されている。走行体2は、車体フレーム10と、一対の前輪4と、運転室(キャブ)5と、エンジンルーム6と、一対の後輪7と、ステアリングシリンダ9とを有している。ホイールローダ1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行なう。
【0018】
車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート(回動)式であり、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、連結軸部13とを有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方向Zfに配置されている。連結軸部13は、車体フレーム10における左右方向(車幅方向)の中央に設けられており、フロントフレーム11と、リアフレーム12とを互いに回動可能に連結している。一対の前輪4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対の後輪7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0019】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18とを有している。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0020】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に回動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に回動する。
【0021】
運転室5は、リアフレーム12上に載置されている。運転室5の内部には、オペレータが着座するための運転席5S、ステアリング操作のためのハンドル、作業機3を操作するためのレバー、各種のスイッチ、表示装置などが配置されている。エンジンルーム6は、運転室5の後方向Zbであってリアフレーム12上に配置されており、エンジンを収納している。
【0022】
<作業車両を含むシステムの構成>
【0023】
次に、本実施形態における作業車両を含むシステムの構成について図2図4を用いて説明する。
【0024】
図2は、本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムの構成を示す図である。図3は、本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムに採用される可変ダンパー要素の構成を示す断面図である。図4は、本開示の一実施形態における作業車両を含むシステムに採用されるコントローラの機能ブロックを示す図である。
【0025】
図2に示されるように、作業車両を含むシステムは、シートサスペンション40と、変位センサ41と、電流調整装置42と、加速度センサ43と、コントローラ50とを有している。
【0026】
運転室5は床5Fを有している。運転室5の床5Fの上には運転席5Sが配置されている。床5Fと運転席5Sとの間には、シートサスペンション40が配置されている。
【0027】
シートサスペンション40は、可変ダンパー要素20と、弾性部材30とを有している。可変ダンパー要素20は、運転席5Sの上下方向Yの振動を吸収する。可変ダンパー要素20は、運転席5Sの上下方向Yにおける振動の減衰力を変更できるように構成されている。可変ダンパー要素20は、少なくとも第1減衰力と、第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能である。可変ダンパー要素20の一端(たとえば下端)は床5Fに固定され、他端(たとえば上端)は運転席5Sに固定されている。
【0028】
弾性部材30は、可変ダンパー要素20では吸収しきれない運転席5Sの上下方向Yの振動を吸収する。弾性部材30は、たとえばバネ(スプリング)よりなっている。弾性部材30の一端(たとえば下端)は床5Fに固定され、他端(たとえば上端)は運転席5Sに固定されている。
【0029】
可変ダンパー要素20および弾性部材30の各々の一端は、床5Fに直接的に固定されていてもよく、またブラケットなどを介在して間接的に固定されていてもよい。また可変ダンパー要素20および弾性部材30の各々の他端は、運転席5Sに直接的に固定されていてもよく、またブラケットなどを介在して間接的に固定されていてもよい。
【0030】
変位センサ41は、床5Fに対する運転席5Sの相対的な変位量を検出する。変位センサ41は、たとえば床5Fに固定されている。変位センサ41は、床5Fに直接的に固定されていてもよく、またブラケットなどを介在して間接的に固定されていてもよい。また変位センサ41は、たとえば運転席5Sに固定されていてもよい。この場合、変位センサ41は、運転席5Sに直接的に固定されていてもよく、またブラケットなどを介在して間接的に固定されていてもよい。
【0031】
電流調整装置42は、可変ダンパー要素20のコイル25(図3)に電気的に接続されている。電流調整装置42は、可変ダンパー要素20のコイル25に供給する電流量を調整する。電流調整装置42は、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25に電流を供給する状態と、電流供給を遮断する状態とを切替えることができる。
【0032】
加速度センサ43は、床5Fの加速度を検出する。加速度センサ43は、たとえば床5Fに固定されている。加速度センサ43は、床5Fに直接的に固定されていてもよく、またブラケットなどを介在して間接的に固定されていてもよい。
【0033】
コントローラ50は、プロセッサと、メインメモリと、ストレージとを含む。プロセッサはたとえばCPU(Central Processing Unit)などである。メインメモリは、たとえばROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。コントローラ50は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0034】
コントローラ50は、変位センサ41、電流調整装置42および加速度センサ43の各々に電気的に接続されている。コントローラ50は、変位センサ41により検出された変位データを取得する。コントローラ50は、変位センサ41により検出された変位データに基づいて電流調整装置42を制御する。コントローラ50は、加速度センサ43により検出された加速度データを取得する。コントローラ50は、加速度センサ43により検出された加速度データに基づいて電流調整装置42を制御する。コントローラ50は、電流調整装置42を制御することにより可変ダンパー要素20のコイル25に供給される電流量を調整する。これによりコントローラ50は、可変ダンパー要素20の減衰力を少なくとも第1減衰力と第2減衰力との間で調整する。
【0035】
第1減衰力は、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給を遮断した状態での可変ダンパー要素20の減衰力である。第2減衰力は、たとえば可変ダンパー要素20のコイルに電流を供給した状態での可変ダンパー要素20の減衰力である。
【0036】
ただし第1減衰力は、第2減衰力よりも小さい減衰力であればよく、可変ダンパー要素20のコイル25に電流を供給した状態での減衰力であってもよい。この場合、第1減衰力は、第2減衰力を得るために可変ダンパー要素20のコイル25に流す電流量よりも小さい電流量を供給した状態での減衰力である。
【0037】
床5Fは、走行体2に支持されたベースであればよく、シートサスペンション40を介在して運転席5Sを支持する部材であればよい。
【0038】
なおコントローラ50は、ホイールローダ1に搭載されていてもよく、ホイールローダ1の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ50がホイールローダ1の外部に離れて配置されている場合、コントローラ50は、変位センサ41、電流調整装置42、加速度センサ43などと無線により接続されていてもよい。コントローラ50は、ホイールローダ1から離れたサーバに格納されていてもよい。
【0039】
図3に示されるように、可変ダンパー要素20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、ダイヤフラム24と、コイル25と、配線26と、磁気粘性流体27と、シールベアリング28とを有している。
【0040】
シリンダ21は、筒形状(たとえば円筒形状)を有している。シリンダ21の筒形状の内部空間には、ピストン22と、ダイヤフラム24とが配置されている。ピストン22は、シリンダ21の内周面に接しながら、シリンダ21の軸線方向AXに沿って摺動可能である。
【0041】
ピストンロッド23は、軸線方向AXにて互いに対向する第1端部と第2端部とを有している。ピストンロッド23の第1端部は、ピストン22に接続され、シリンダ21の内部空間に位置している。ピストンロッド23の第2端部は、シリンダ21の外部に位置している。ピストンロッド23は、シールベアリング28によりシリンダ21に対して軸線方向AXに移動可能に支持されている。
【0042】
シリンダ21の内部空間は、ピストン22により第1流体室21Aと、第2流体室21Bとに区分けされている。ピストン22は、第1流体室21Aと第2流体室21Bとを繋ぐ環状オリフィス22aを有している。環状オリフィス22aは、ピストン22を軸線方向AXに貫通している。
【0043】
磁気粘性流体27は、第1流体室21Aと第2流体室21Bと環状オリフィス22aとの各々の内部を満たしている。磁気粘性流体27は、磁気粘性流体27に作用する磁場の強さに応じて粘度を変化させる。磁気粘性流体27は、たとえば磁場が作用しない状態では粘度の低い液体状態にあるが、磁場が作用すると粘度が増加して半固体のように振る舞う。磁気粘性流体27は、たとえば油、水などの液体に、直径1μm~10μmの強磁性体の微粒子を均一に分散させたものである。
【0044】
ダイヤフラム24は、シリンダ21の内部空間を第2流体室21Bとガス室21Cとに区分けする。ガス室21Cは、アキュムレータとして機能する。ダイヤフラムに代えて、フリーピストンが用いられてもよい。
【0045】
コイル25は、ピストン22の内部に設けられている。コイル25は、通電されることにより磁場を発生させ、磁気粘性流体27に磁場を作用させる。コイル25には配線26が電気的に接続されている。コイル25は、配線26を通じて電流調整装置42に電気的に接続されている。これにより電流調整装置42は、配線26を通じてコイル25に供給する電流量を調整することができる。
【0046】
図4に示されるように、コントローラ50は、変位情報取得部51と、変位情報判定部52と、減衰力制御部53と、加速度情報取得部54と、加速度情報判定部55と、メモリ56とを有している。変位情報取得部51は、変位センサ41が検出した床5Fに対する運転席5Sの上下方向Yの相対変位量を示す信号を取得する。
【0047】
変位情報判定部52は、変位情報取得部51によって取得された相対変位量のピーク値を取得する。変位情報判定部52は、取得した相対変位量のピーク値が第1所定値PL1(図5(B))より大きいか否かを判定する。変位情報判定部52は、この判定をする際にメモリ56に記憶された第1所定値PL1を参照する。減衰力制御部53は、変位情報判定部52が判定した判定結果に基づいて電流調整装置42を制御する指令電流を出力する。
【0048】
減衰力制御部53は、相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きいとの判定結果を変位情報判定部52から取得した場合、可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える指令電流を電流調整装置42へ出力する。このようにコントローラ50は、相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きいと判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。
【0049】
また減衰力制御部53は、相対変位量のピーク値が第1所定値PL1以下であるとの判定結果を変位情報判定部52から取得した場合、可変ダンパー要素20の減衰力を現状の減衰力に維持する指令電流を電流調整装置42へ出力する。このようにコントローラ50は、相対変位量のピーク値が第1所定値PL1以下であると判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を現状の減衰力に維持する。
【0050】
また変位情報判定部52は、取得した相対変位量におけるピークの絶対値が第2所定値PL2(図5(B))未満であるか否かを判定する。第2所定値PL2は、第1所定値PL1より小さい値である。変位情報判定部52は、この判定をする際にメモリ56に記憶された第2所定値PL2を参照する。
【0051】
減衰力制御部53は、相対変位量におけるピークの絶対値が第2所定値PL2未満であるとの判定結果を変位情報判定部52から取得した場合、可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える指令電流を電流調整装置42へ出力する。このようにコントローラ50は、相対変位量におけるピークの絶対値が第2所定値PL2未満であると判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える。
【0052】
加速度情報取得部54は、加速度センサ43が検出した床5Fの上下方向Yの加速度を示す信号を取得する。加速度情報判定部55は、加速度情報取得部54により取得された床5Fの加速度波形における第1ピークの絶対値が、第1ピークの1つ前(直前)の第2ピークの絶対値より大きいか否かを判定する。たとえば加速度情報判定部55は、図5(C)に示されるように、床5Fの加速度波形における第1ピークPB1の絶対値α1が、第1ピークPB1の1つ前の第2ピークPB2の絶対値α2より大きいか否かを判定する。この際、加速度情報判定部55は、メモリ56に記憶された床5Fの加速度波形を参照してもよい。メモリ56には、加速度情報判定部55が取得した加速度情報(加速度ピーク値を含む)が記憶されていてもよい。
【0053】
減衰力制御部53は、加速度情報判定部55の判定結果に基づいて、可変ダンパー要素20の減衰力を制御する指令電流を電流調整装置42へ出力する。減衰力制御部53は、第1ピークの絶対値が第2ピークの絶対値より大きいとの判定結果を加速度情報判定部55から取得した場合、可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える指令電流を電流調整装置42へ出力する。このようにコントローラ50は、第1ピークの絶対値が第2ピークの絶対値より大きいと判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える。
【0054】
電流調整装置42は、減衰力制御部53から取得した指令電流に基づいて可変ダンパー要素20のコイル25に供給する電流値を調整する。電流調整装置42は、可変ダンパー要素20を第1減衰力とする指令電流を減衰力制御部53から取得した場合、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25に電流を供給しない(電流供給を遮断する)。一方、電流調整装置42は、可変ダンパー要素20を第2減衰力とする指令電流を減衰力制御部53から取得した場合、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25に電流を供給する。このように電流調整装置42は、可変ダンパー要素20のコイル25へ電流を供給または電流供給を遮断するオン・オフ制御により可変ダンパー要素20の減衰力を調整する。
【0055】
また電流調整装置42は、上記オン・オフ制御以外で可変ダンパー要素20の減衰力を調整してもよい。電流調整装置42は、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25へ供給する電流量を変更(増減)することにより可変ダンパー要素20の減衰力を調整してもよい。具体的には、可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力に調整する際にはコイル25へ供給される電流量は小さく、可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力に調整する際にはコイル25へ供給される電流量は大きくなるように制御されてもよい。
【0056】
<作業車両の制御方法>
【0057】
次に、本実施形態における作業車両の制御方法について、ホイールローダ1が走行時に段差を乗り越える状態を例に挙げて、図5図8を用いて説明する。
【0058】
図5は、作業車両の走行の様子を示す図(A)、走行時における運転室の床と運転席との相対変位量の時間変化を示す図(B)、運転室における床(ベース)の加速度の時間変化を示す図(C)、および可変ダンパー要素に与える指令電流値の時間変化を示す図(D)である。図6~8は、本開示の一実施形態における作業車両の制御方法を示すフロー図である。
【0059】
図5(A)に示されるように、ホイールローダ1が前進走行中に、ホイールローダ1の前輪4が段差STに乗り上げ、続いて後輪7が段差STに乗り上げる場合がある。この場合、運転室5の床5Fに対する運転席5Sの上下方向Yの相対変位量は、たとえば図5(B)に示すように変化する。
【0060】
なお図5(B)に示された矢印AR1および図5(C)の矢印AR3の各々はホイールローダ1の前輪4が段差STに乗り上げた時点を示している。また図5(B)の矢印AR2および図5(C)の矢印AR4の各々はホイールローダ1の後輪7が段差STに乗り上げた時点を示している。
【0061】
また図5(D)に示された矢印ARA、ARC、ARDの各々は相対変位量が、図5(B)に示されるようにピークPA1、PA2、PA3の各々に達した時点を示している。また図5(D)に示された矢印ARBは、図5(C)に示されるように運転室の床5Fの上下方向Yの加速度がピークPB1に達した時点を示している。
【0062】
図5(B)に示されるように、ホイールローダ1の前輪4が段差STに乗り上げると、その衝撃により運転室5の床5Fが突き上げられる。これにより床5Fはシートサスペンション40を介在して運転席5Sに近付き、床5Fに対して運転席5Sは負の方向に相対変位する。この後、弾性部材30(図2)の復元力により運転席5Sは床5Fから離れ、床5Fに対して正の方向に相対変位する。この後、床5Fに対する運転席5Sの相対変位量は、負の方向の変位と正の方向の変位とを繰り返しながら徐々に減衰していく。
【0063】
この後、ホイールローダ1の後輪7が段差STに乗り上げると、その衝撃により運転室5の床5Fが再度突き上げられる。これにより床5Fはシートサスペンション40を介在して運転席5Sに近付き、床5Fに対して運転席5Sは負の方向に相対変位する。この後、弾性部材30(図2)の復元力により運転席5Sは床5Fから離れ、床5Fに対して正の方向に相対変位する。この後、床5Fに対する運転席5Sの相対変位量は、負の方向の変位と正の方向の変位とを繰り返しながら徐々に減衰していく。
【0064】
本実施形態においては床5Fに対する運転席5Sの上下方向Yの相対変位量が変位センサ41により検出される。変位センサ41は、検出した相対変位量を示す信号をコントローラ50へ出力する。コントローラ50の変位情報取得部51は、変位センサ41から出力された運転席5Sの相対変位量を示す信号を取得する(ステップS1:図6)。相対変位量はたとえば図5(B)に示されるような波形となる。変位情報取得部51は、相対変位量を示す信号を変位情報判定部52へ出力する。
【0065】
変位情報判定部52は、相対変位量の波形におけるピークを認識する。変位情報判定部52は、認識したピークにおける相対変位量(ピーク値)を取得する(ステップS2:図6)。変位情報判定部52は、取得した相対変位量のピーク値が第1所定値PL1よりも大きいか否かを判定する(ステップS3:図6)。
【0066】
相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きいと変位情報判定部52が判定した場合、変位情報判定部52は判定結果を示す信号を減衰力制御部53へ出力する。この場合、減衰力制御部53は、可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える指令電流を電流調整装置42へ出力する(ステップS4:図6)。具体的には減衰力制御部53は、図5(D)の矢印ARA、ARCに示されるように、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25へ電流を供給するように電流調整装置42を制御する。
【0067】
この際、図5(B)に示されるように、相対変位量が第1所定値PL1より大きくなり、かつ相対変位量が増加から減少に変わった時点(矢印ARA、ARCで示す時点)で、コントローラ50は可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。
【0068】
コントローラ50は、図5(D)に示されるように可変ダンパー要素20に与える指令電流の値が第1電流値C0(たとえば0)から第1電流値C0よりも大きい第2電流値C1へ時間軸上で傾斜しながら増加するように制御する。つまりコントローラ50は、時間Tをかけて指令電流値を第1電流値C0から第2電流値C1へ増加させることにより、第1電流値C0から第2電流値C1への指令電流値の時間軸上での立上がりを傾斜させる。
【0069】
指令電流値を第1電流値C0から第2電流値C1まで増加させる時間Tは、たとえば相対変位量の波形におけるピークPA1またはPA2から次の(直後の)ピークが来るまでの時間より長くてもよい。また、この時間Tは、第1電流値C0から第2電流値C1までの指令電流値の立上がり毎に一定であることが好ましい。時間Tは適宜変更されてもよい。また第1電流値C0から第2電流値C1への指令電流値の増加速度は一定であることが好ましい。
【0070】
一方、図6のステップS3において相対変位量のピーク値が第1所定値PL1未満であると変位情報判定部52が判定した場合、図6におけるステップS1、S2、S3が繰り返される。
【0071】
また図6に示される制御においては、床5Fの加速度の取得および判定も合せて行なわれる。そして上記の制御において第2減衰力とされた可変ダンパー要素20が床5Fの加速度の判定結果に基づいて以下のように第2減衰力から第1減衰力に切替えられる。
【0072】
床5Fの加速度(ベース加速度)が加速度センサ43により検出される。加速度センサ43は、検出した加速度を示す信号をコントローラ50へ出力する。コントローラ50の加速度情報取得部54は、加速度センサ43から出力された床5Fの加速度を示す信号を取得する(ステップS11:図7)。床5Fの加速度はたとえば図5(C)に示されるような波形となる。加速度情報取得部54は、加速度を示す信号を加速度情報判定部55へ出力する。
【0073】
加速度情報判定部55は、加速度の波形におけるピーク(加速度ピーク)を認識する。加速度情報判定部55は、認識した加速度ピークにおける加速度の絶対値を取得する(ステップS12:図7)。加速度情報判定部55は、取得した加速度ピーク(第1ピーク)の絶対値が直前(1つ前)の加速度ピーク(第2ピーク)の絶対値よりも大きいか否かを判定する(ステップS13:図7)。
【0074】
加速度ピークの絶対値が直前の加速度ピークの絶対値より大きいと加速度情報判定部55が判定した場合、加速度情報判定部55は判定結果を示す信号を減衰力制御部53へ出力する。この場合、減衰力制御部53は、可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える指令電流値を電流調整装置42へ出力する(ステップS14:図7)。減衰力制御部53は、加速度ピーク値の絶対値が直前の加速度ピーク値の絶対値より大きいとの判定結果を取得した場合には、図5(D)の矢印ARBに示されるように、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給を遮断するように電流調整装置42を制御する。なお矢印ARBで示すタイミングで可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替えるための判定は、加速度ピークの絶対値が直前の加速度ピークの絶対値より大きいか否かの判定以外の判定であってもよい。加速度情報判定部55は、たとえば相対変位量の実効値が所定値以上であるとの判定結果に基づいて可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える制御をしてもよい。また矢印ARBで示すタイミングで可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替えるための判定は、加速度ピークの絶対値が直前の加速度ピークの絶対値より大きいか否かの判定と、相対変位量の実効値が所定値以上であるとの判定との組合わせであってもよい。
【0075】
上記により、たとえば図5(C)に示されるように加速度ピークPB1(第1ピーク)の絶対値α1が直前の加速度ピークPB2(第2ピーク)の絶対値α2より大きい場合には、図5(D)に示されるように、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給が遮断される。
【0076】
一方、図7のステップS13において加速度ピークの絶対値が直前の加速度ピークの絶対値以下であると加速度情報判定部55が判定した場合、図7におけるステップS11、S12、S13が繰り返される。
【0077】
また図6に示される制御において、第2減衰力とされた可変ダンパー要素20が、床5Fに対する運転席5Sの相対変位量におけるピーク値の判定結果に基づいて以下のように第2減衰力から第1減衰力に切替えられる。
【0078】
コントローラ50の変位情報取得部51は、変位センサ41から出力された運転席5Sの相対変位量を示す信号を取得する(ステップS21:図8)。変位情報取得部51は、相対変位量を示す信号を変位情報判定部52へ出力する。
【0079】
変位情報判定部52は、相対変位量の波形におけるピーク(変位ピーク)を取得する。変位情報判定部52は、取得した変位ピークにおける相対変位量の絶対値を取得する(ステップS22:図8)。変位情報判定部52は、取得した変位ピークの絶対値が第2所定値PL2未満か否かを判定する(ステップS23:図8)。
【0080】
変位ピークの絶対値が第2所定値PL2未満であると変位情報判定部52が判定した場合、変位情報判定部52は判定結果を示す信号を減衰力制御部53へ出力する。この場合、減衰力制御部53は、可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える指令電流を電流調整装置42へ出力する(ステップS24:図6)。具体的には減衰力制御部53は、図5(D)の矢印ARDに示されるように、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給を遮断するように電流調整装置42を制御する。なお矢印ARDで示すタイミングで可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替えるための判定は、変位ピークの絶対値が第2所定値PL2未満であるか否かの判定以外の判定であってもよい。変位情報判定部52は、たとえば相対変位量の過去0.2秒間(サスペンション振動の約1/2波長)の実効値が所定値未満であるとの判定結果に基づいて可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える制御をしてもよい。
【0081】
上記により、たとえば図5(B)に示される変位ピークPA3のようにピーク値の絶対値が第2所定値PL2未満である場合には、図5(D)に示されるように、たとえば可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給を遮断するようにコントローラ50が電流調整装置42を制御する。
【0082】
一方、図8のステップS23において変位ピークの絶対値が第2所定値PL2以上であると変位情報判定部52が判定した場合、図8におけるステップS21、S22、S23が繰り返される。
【0083】
以上の図6図8の制御により、図5に示されるように、第1所定値PL1より大きいピーク値を有する変位ピークPA1が検出された時点ARAから直前の加速度ピークPB2の絶対値α2よりも大きな絶対値α1の加速度ピークPB1が検出された時点ARBまで可変ダンパー要素20のコイル25に電流が供給され、オン状態とされる。また上記時点ARBから第1所定値PL1より大きいピーク値を有する変位ピークPA2が検出された時点ARCまで可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給が遮断され、オフ状態とされる。また上記時点ARCから第2所定値PL2未満の絶対値の変位ピークPA3が検出された時点ARDまで可変ダンパー要素20のコイル25に電流が供給され、オン状態とされる。また上記時点ARD経過後には可変ダンパー要素20のコイル25への電流供給が遮断され、オフ状態とされる。
なお上記においては2回目の段差STの乗り上げとして後輪7が段差STに乗り上げた場合について説明したが、2回目の段差の乗り上げは前輪4が2つ目の段差に乗り上げた場合であってもよい。また3回目以降の段差の乗り上げについても同様の制御が実行されてもよい。たとえば段差STへの乗り上げの順序は、前輪→後輪の場合に限定されず、前輪→前輪→後輪→後輪の順であってもよい。また上記においてはホイールローダ1の前進の場合について説明したが、後進の場合にも前進の場合と同様の制御が実行されてもよい。
【0084】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0085】
本実施形態においては図5(B)に示されるように変位センサ41により検出された相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きい場合に可変ダンパー要素20の減衰力が第1減衰力から第2減衰力へ切替えられる。これにより相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きくなるまでは、可変ダンパー要素20の減衰力を小さい第1減衰力とすることにより衝撃を吸収することが容易となる。また相対変位量のピーク値が第1所定値PL1より大きくなった後は、可変ダンパー要素20の減衰力を大きい第2減衰力とすることにより床5Fに対する運転席5Sの上下方向Yの振動を素早く吸収することができる。このためホイールローダ1の走行中における段差乗り越しの際の乗り心地が改善される。
【0086】
また本実施形態においては図5(C)に示されるように、コントローラ50は、加速度センサ43により検出された床5Fの加速度の波形における第1ピークPB1の絶対値α1が第1ピークPB1の1つ前の第2ピークPB2の絶対値α2より大きいと判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第2減衰力から第1減衰力へ切替える。これにより2回目以降の段差ST乗り上げ時における衝撃を可変ダンパー要素20により緩和することが容易となる。また上記のとおり加速度に着目することにより、2回目以降の車輪の段差STへの乗り上げを特定することが容易となる。このように相対変位量に着目することで1回目の段差ST乗り上げが特定され、加速度に着目することにより2回目以降における段差ST乗り上げの特定が容易となる。
【0087】
また本実施形態においては図5(B)に示されるように、コントローラ50は、変位センサ41により検出された相対変位量が第1所定値PL1より大きくなり、かつ相対変位が増加から減少に変わったと判定した場合に可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。これにより相対変位量のピークを基準にして減衰力を切替えることが可能となる。
【0088】
また本実施形態においては図5(B)に示されるように、コントローラ50は、相対変位量のピークPA3の絶対値が第2所定値PL2未満となった場合に可変ダンパー要素20の減衰力を小さい第1減衰力とする。これにより運転席5Sの振動が微弱な場合には、可変ダンパー要素20への供給する電流量を少なくすることができる。
【0089】
相対変位のピーク時に指令電流値を第1電流値から第2電流値へ瞬時に立ち上げると床5Fに対する運転席5Sの振動の収束が遅れる。そこで本実施形態においては図5(D)に示されるように、コントローラ50は、可変ダンパー要素20に与える指令電流の値が第1電流値から第1電流値よりも大きい第2電流値へ時間軸上で傾斜しながら増加することにより可変ダンパー要素20の減衰力を第1減衰力から第2減衰力へ切替える。これにより相対変位のピーク時に指令電流値が第1電流値から第2電流値へゆっくりと立ち上がるため床5Fに対する運転席5Sの振動を素早く収束させることができる。
【0090】
また本実施形態においては図3に示されるように、可変ダンパー要素20は、磁気粘性流体27と、磁気粘性流体27に磁気を加えるコイル25とを有している。これによりコイル25に通電することにより可変ダンパー要素20の減衰力を容易に調整することが可能となる。
【0091】
また本実施形態においては図6(B)、(C)に示されるように、コントローラ50は、変位センサ41により検出された相対変位量の波形の原点から頂点までの区間において第1減衰力となるように可変ダンパー要素20を制御し、相対変位量の波形の頂点から原点までの区間において第2減衰力となるように可変ダンパー要素20を制御する。これにより衝撃の吸収と振動の素早い収束とが可能となり、ホイールローダ1の走行中における段差乗り越しの際の乗り心地が改善される。
【0092】
<付記>
【0093】
上述したような実施形態は、以下のような技術思想を含む。
【0094】
(付記1)
作業機を有する作業車両であって、
床と、
前記床の上に配置された運転席と、
前記床と前記運転席との間に配置され、少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるコントローラと、を備えた、作業車両。
【0095】
(付記2)
前記床の上下方向における加速度を検出する加速度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記加速度センサにより検出された前記床の前記加速度における第1ピークの絶対値が前記第1ピークの1つ前の第2ピークの絶対値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第2減衰力から前記第1減衰力へ切替える、付記1に記載の作業車両。
【0096】
(付記3)
前記コントローラは、前記変位センサにより検出された相対変位量が前記第1所定値より大きくなり、かつ相対変位量が増加から減少に変わったと判定した場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替える、付記1または付記2に記載の作業車両。
【0097】
(付記4)
前記コントローラは、前記相対変位量のピークの絶対値が前記第1所定値より小さい第2所定値未満となった場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第2減衰力から前記第1減衰力へ切替える、付記1から付記3のいずれか1つに記載の作業車両。
【0098】
(付記5)
前記コントローラは、前記可変ダンパー要素に与える指令電流の値が第1電流値から前記第1電流値よりも大きい第2電流値へ時間軸上で傾斜しながら増加することにより前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替える、付記1から付記4のいずれか1つに記載の作業車両。
【0099】
(付記6)
前記可変ダンパー要素は、磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に作用する磁場を形成するコイルと、を有する、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業車両。
【0100】
(付記7)
作業機を有する作業車両のシステムであって、
床と、
前記床の上に配置された運転席と、
前記床と前記運転席との間に配置され、少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きい場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるコントローラと、を備えた、作業車両を含むシステム。
【0101】
(付記8)
作業機と、床と、前記床の上に配置された運転席と、前記床と前記運転席との間に配置され少なくとも第1減衰力と前記第1減衰力よりも大きい第2減衰力との間で減衰力を切替え可能な可変ダンパー要素を有するシートサスペンションと、前記床に対する前記運転席の相対変位量を検出する変位センサと、を有する作業車両の制御方法であって、
前記床に対する前記運転席の相対変位量を取得するステップと、
前記変位センサにより検出された相対変位量のピーク値が第1所定値より大きいか否かを判定するステップと、
前記ピーク値が前記第1所定値より大きいと判定した場合に前記可変ダンパー要素の減衰力を前記第1減衰力から前記第2減衰力へ切替えるステップと、を備えた、作業車両の制御方法。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 ホイールローダ、2 走行体、3 作業機、4 前輪、5 運転室、5F 床、5S 運転席、6 エンジンルーム、7 後輪、9 ステアリングシリンダ、10 車体フレーム、11 フロントフレーム、12 リアフレーム、13 連結軸部、14 ブーム、15 バケット、16 リフトシリンダ、17 バケットシリンダ、18 ベルクランク、20 可変ダンパー要素、21 シリンダ、21A 第1流体室、21B 第2流体室、21C ガス室、22 ピストン、22a 環状オリフィス、23 ピストンロッド、24 ダイヤフラム、25 コイル、26 配線、27 磁気粘性流体、28 シールベアリング、30 弾性部材、40 シートサスペンション、41 変位センサ、42 電流調整装置、43 加速度センサ、50 コントローラ、51 変位情報取得部、52 変位情報判定部、53 減衰力制御部、54 加速度情報取得部、55 加速度情報判定部、56 メモリ、ST 段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8