(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006463
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】振動計
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20250109BHJP
G01V 1/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01V1/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107276
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】592041982
【氏名又は名称】国陽電興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川満 逸雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博之
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 孝
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE01
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】ポータビリティ性に優れ、かつ計測の準備作業の煩わしさが低減された振動計を提供する。
【解決手段】振動計1は、内部空間20を有するケース2と、内部空間20に収容された振動センサ3と、振動センサ3を支持する台座41と、内部空間20に収容され、振動センサ3から出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニット7とを含む。振動計1が、載置面100に載置される。ケース2の底部には、第2貫通穴18が形成されている。台座41の第2下端45aは、第2貫通穴18を通過して載置面100に接触する。台座41は、内部空間20に収容されている振動センサ3を、ケース2から独立して支持可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットとを含む、振動計。
【請求項2】
前記振動センサを支持する台座であって、前記内部空間に収容されている前記振動センサを、前記ケースから独立して支持可能な台座をさらに含む、請求項1に記載の振動計。
【請求項3】
前記ケースには、当該ケースの底壁を上下に貫通する貫通穴が形成されており、
前記台座の下端は、前記貫通穴を介して、前記ケースの下方に突出可能である、請求項2に記載の振動計。
【請求項4】
前記ケースに形成された第1係合部と、
前記台座に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部とを含み、
前記第1係合部の前記ケースの第1下端からの第1距離が、前記第2係合部の前記台座の第2下端からの第2距離よりも短い、請求項2に記載の振動計。
【請求項5】
前記第1係合部および前記第2係合部が、互いに上下に当接する第1当接面および第2当接面を含む、請求項4に記載の振動計。
【請求項6】
前記第1当接面および前記第2当接面が、円錐台状である、請求項5に記載の振動計。
【請求項7】
前記振動センサと前記台座との間に配置された粘性シートをさらに含む、請求項4に記載の振動計。
【請求項8】
前記振動センサは、微動加速度を測定するためのセンサである、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動計。
【請求項9】
前記ケースの底部を覆う保護カバーであって、前記台座に対してねじ締結可能に結合可能な保護カバーをさらに含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の振動計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動を計測する振動計が知られている。特許文献1に記載の振動計は、振動センサとしての加速度センサと、記録装置とを備えている。そして、加速度センサは、記録装置と別に設けられている。そして、加速度センサと記録装置とは、ケーブル(配線)によって接続されている。加速度センサからの検出出力は、ケーブルを介して記録装置に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動計測は、様々な計測地点で行われる。振動計によって振動を計測する場合、作業者(計測者)は、振動計を計測地点まで運搬する必要がある。
【0005】
しかし、上記の振動計では、振動センサ(加速度センサ)が記憶装置と別に設けられているため、振動センサと記憶装置とを別々に持ち運びする必要がある。そのため、持ち運びに適していない。すなわち、ポータビリティに欠けている、という問題がある。
【0006】
また、振動計測の際には、その準備のために、振動センサを記録装置に接続させる。すなわち、振動計測の度に、ケーブルを介して振動センサを接続したり、そのケーブルの接続を解除したりする作業が必要になる。そのため、振動計測のための準備作業が煩わしい。
【0007】
さらには、ケーブルをケース外において引き回すために、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、計測地点が工場等である場合には、ケーブルを地面や床に這わせることにより、迷走電流等のノイズを信号として受け取る可能性がある。また、ケーブルがケース外に配線されているために、ケーブルの断線等の障害の発生する可能性がある。また、複数種のケーブルによって、振動センサと記録装置とを接続する場合には、作業者の接続ミスを招くおそれもある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、ポータビリティ性に優れ、かつ計測の準備作業の煩わしさが低減された振動計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、次のような特徴を有する振動計を提供する。
【0010】
1. 振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットとを含む、振動計。
【0011】
この構成によれば、振動センサが内部空間に収容されている。そのため、振動センサおよび処理ユニットを、一体に持ち運びできる。これにより、振動計のポータビリティ性が向上する。
【0012】
また、振動計測の度に、振動センサをケースや処理ユニットに接続する必要がない。そのため、振動計測のための準備作業が簡便になり、準備作業の煩わしさが低減される。さらには、ケース外でケーブルが引き回されないので、これに起因する不具合を回避できる。
【0013】
ゆえに、ポータビリティ性に優れ、かつ計測の準備作業の煩わしさを低減できる振動計を提供できる。
【0014】
2. 前記振動センサを支持する台座であって、前記内部空間に収容されている前記振動センサを、前記ケースから独立して支持可能な台座をさらに含む、項1に記載の振動計。
【0015】
振動センサがケースの内部空間に収容されていると、次のような問題がある。すなわち、計測地点が屋外である場合には、ケースは、風等の影響を受けて微細に振動することがある。また、内部空間に収容されている他の機器の振動が入力されることにより、ケースが微細に振動することもある。これらの微細な振動が、ケースを介して振動センサに伝わると、振動センサがこれらの振動までも検出してしまい、振動センサの検出出力に誤差が発生するおそれがある。これにより、振動計測の精度が低下するおそれがある。
【0016】
上記の構成によれば、振動センサを支持する台座は、内部空間に収容されている振動センサを、ケースから独立して支持可能である。振動センサをケースから独立して台座が支持している状態では、振動センサはケースに接触していないだけでなく、振動センサとケースとが連結していない。すなわち、振動センサが、ケースから物理的に切り離されている。そのため、ケースから振動センサに振動が伝わらない。これにより、振動を高精度に計測できる。ゆえに、ポータビリティ性に優れ、かつ高精度な振動計測を実現可能な振動計を提供できる。
【0017】
3. 前記ケースには、当該ケースの底壁を上下に貫通する貫通穴が形成されており、
前記台座の下端は、前記貫通穴を介して、前記ケースの下方に突出可能である、項2に記載の振動計。
【0018】
この構成によれば、台座の下端が、ケースの底壁に形成された収容された貫通穴を介して、載置面に当接可能である。そのため、内部空間に収容されている振動センサをケースから独立して台座によって支持する構成を、簡単な構成で実現できる。
【0019】
4. 前記ケースに形成された第1係合部と、
前記台座に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部とを含み、
前記第1係合部の前記ケースの第1下端からの第1距離が、前記第2係合部の前記台座の第2下端からの第2距離よりも短い、項2または3に記載の振動計。
【0020】
この構成によれば、第1係合部のケースの第1下端からの第1距離が、第2係合部の台座の第2下端からの第2距離よりも短い。そのため、ケースおよび台座が載置面に載置された載置状態において、第1係合部と第2係合部とが係合しない。そのため、この載置状態において、振動センサを、ケースから確実に物理的に切り離すことができる。振動計による振動計測は、振動計の載置状態において行われる。そのため、振動センサをケース2から確実に物理的に切り離した状態で、振動計を用いて振動計測できる。
【0021】
また、ケースが持ち上げられた振動計の持ち上げ状態において、第1係合部と第2係合部との係合により、振動センサおよび台座がケースに吊り下げ支持されてもよい。これにより、振動センサ、台座およびケースを一体に持ち運びできるから、振動計のポータビリティ性をより一層向上できる。
【0022】
また、前記振動計が、前記ケースを持ち上げるための把持部をさらに含んでいてもよい。これにより、ポータビリティ性を、さらに一層向上できる。
【0023】
5. 前記第1係合部および前記第2係合部が、互いに上下に当接する第1当接面および第2当接面を含む、項4に記載の振動計。
【0024】
6. 前記第1当接面および前記第2当接面が、円錐台状である、項5に記載の振動計。
【0025】
この構成によれば、第1当接面および第2当接面が円錐台状であるので、第1当接面および第2当接面が当接している状態では、ケースに対する台座の横方向への移動が規制される。これにより、振動計の持ち上げ状態において、振動センサおよび台座がケースに対して移動することを抑制できる。ゆえに、ケースに対する振動センサおよび台座の移動を効果的に規制しながら、振動計を持ち運びできる。
【0026】
7. 前記振動センサと前記台座との間に配置された粘性シートをさらに含む、項4~6のいずれか一項に記載の振動計。
【0027】
振動センサとして加速度センサが用いられることがある。加速度センサは衝撃に弱い。そのため、振動計の運搬時にケースに加わる衝撃を、振動センサにできるだけ伝えないようにすることが望ましい。
【0028】
上記の構成によれば、振動センサと台座との間に、粘性シートが配置される。粘性シートは、振動を吸収する。そのため、ケースに大きな衝撃が加わった場合でも、その衝撃は、粘性シートによって吸収される。これにより、ケースから振動センサに伝わる衝撃を低減または零にできる。これにより、振動センサを保護できる。ゆえに、ケースに大きな衝撃が加わった場合でも、振動センサに衝撃が伝わるのを抑制または防止できる。
【0029】
8.前記振動センサは、微細な振動(微動加速度)を測定するためのセンサである、項1~7のいずれか一項に記載の振動計。
【0030】
微細な振動を測定するための振動計は、様々な計測地点において計測される。そのため、ポータビリティ性に優れている必要がある。
【0031】
上記の構成によれば、微細な振動を測定するための振動センサが、内部空間に収容されている。そのため、この振動センサおよび処理ユニットを、一体に持ち運びできる。これにより、微細な振動を測定するための振動計において、ポータビリティ性を向上できる。
【0032】
9.前記ケースの底部を覆う保護カバーであって、前記台座に対してねじ締結可能に結合可能な保護カバーをさらに含む、項2~7のいずれか一項に記載の振動計。
【0033】
この構成によれば、保護カバーによって、ケースの底部が覆われる、これにより、ケース2の底部を保護することができ、振動センサに衝撃が伝わるのを抑制または防止できる。
【0034】
また、保護カバーを台座にねじ締結することによって、ねじ込みにより台座をケースに押し付けて、台座をケースに位置決めできる。これにより、振動センサが内部空間でぐらつくことを抑制または防止できる。ゆえに、振動計の運搬を良好に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る振動計の要部の模式的な断面図である。
【
図2】
図1の切断面線II-IIから見た模式的な断面図である。
【
図3】前記振動計を持ち上げた状態における前記振動計の断面図であり、
図2に対応する図である。
【
図4】前記振動計の模式的な斜視図であり、蓋を開いた状態を示している。
【
図5】前記振動計の模式的な斜視図であり、
図4に示す状態から処理ユニットを取り除いた状態を示している。
【
図6】前記振動計の模式的な斜視図であり、
図5からセンサ収容ユニットを取り除いた状態を示している。
【
図8】前記振動計の電気的構成を示すブロック図である。
【
図9】前記振動計を用いた振動計測処理の流れを示す流れ図である。
【
図11】この発明の第2実施形態に係る振動計の要部の模式的な断面図であり、
図2に対応する図である。
【
図12】粘性シートの特性を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
【0037】
図1は、この発明の第1実施形態に係る振動計1の要部の模式的な断面図である。
図2は、
図1の切断面線II-IIから見た模式的な断面図である。
図3は、振動計1を持ち上げた状態における振動計1の断面図であり、
図2に対応する図である。
図4~
図6は、振動計1の斜視図である。
図7は、センサ収容ユニット8の斜視図である。
【0038】
図1の紙面の左右方向は、振動計1の左右方向Xと一致し、
図1の紙面に略直交する方向は、振動計1の前後方向Yと一致し、
図1の紙面の上下方向は、振動計1の上下方向Zと一致している。左右方向Xおよび前後方向Yは、横方向に含まれる。
【0039】
図1~
図3を参照して、振動計1は、予め定める計測地点に配置され、その計測地点における振動を計測するために用いられる。具体的には、振動計1は、計測地点における微動(常時微動および地震動の少なくとも一方を計測するために用いられてもよい。振動計1は、計測地点における地盤、床、机等の載置面100(
図1~
図3参照)に載置され、当該載置面100(すなわち、地盤や床)の振動を計測する。載置面100は、平坦面であることが好ましい。
【0040】
図1~
図6を参照して、振動計1は、ケース2と、振動センサ3と、バッテリー4と、表示ユニット5と、ハンドル(把持部)6と、処理ユニット7と、センサ収容ユニット8とを備えている。振動計1は、センサとして、振動センサ3の他、地磁気センサ、GPSセンサ、温度センサ、湿度センサ等を備えている(
図8を参照)。
図4には、ケース2の蓋11を開き、かつバッテリー4を取り除いた状態、すなわち、ケース本体10に、振動センサ3、処理ユニット7およびセンサ収容ユニット8が収容されている状態が示されている。
図5には、
図4に示す状態から、振動センサ3および処理ユニット7を取り除いた状態が示され、
図6には、
図5に示す状態からセンサ収容ユニット8を取り除いた状態が示されている。
【0041】
図1~
図6を参照して、ケース2は、ケース本体10と、ケース本体10に取り付けられた蓋11と、ロック部12(
図4等参照)と、ケース本体10の底部10a(底壁14)に取り付けられた底部リング13(
図1~
図3参照)とを備えている。蓋11は、ヒンジH(
図2等参照)を介してケース本体10に結合されている。蓋11は、ケース本体10の上面を片開き可能に閉塞する。ロック部12は、蓋11をケース本体10に開閉可能に固定する。ロック部12によって蓋11がケース本体10に固定された場合、蓋11が、ケース本体10に対して回動不能になる。蓋11には、表示ユニット5が内蔵されている。なお、バッテリー4が、ケース本体10ではなく、蓋11側(たとえば、蓋11の上面と表示ユニット5との間の空間)に配置されていてもよい。
【0042】
図1~
図6(とくに
図6)を参照して、ケース本体10は、中空の箱状に形成されている。ケース本体10は、内部空間20を有している。ケース本体10は、底部10aおよび4つの側壁10bを有するボックス状である。底部10aは、底壁14と、複数(たとえば4つの)の第1脚部15とを含む。底壁14は平板状である。底壁14の中央部には、円形の第1貫通穴16(とくに
図6参照)が形成されている。複数の第1脚部15は、底壁14の下面において、底壁14の四隅に配置されている。各第1脚部15の底面を第1下端15aとする。
【0043】
図1~
図3を参照して、底部リング13は、平面視で円形のリング状である。底部リング13は、磁性を持たない金属または合成樹脂材料を用いて形成されている。底部リング13は、第1貫通穴16に下側から嵌められている。底部リング13は、第2貫通穴18を有している。第2貫通穴18の内周壁が、底部リング13の内周面である。第2貫通穴18の内周壁には、第1当接面(第1係合部)19が形成されている。第1当接面19は、次に述べる台座41の第2当接面(第2係合部)47と上下に対向している。第1当接面19は、内側に向かって低くなるテーパ面である。第1当接面19は、水平面に対して、たとえば30°以上60°以内の傾斜角度(
図1等の例では、たとえば45°)で傾斜している。第1当接面19は平滑面である。第1当接面19は円錐台状である。底部リング13は、センサ収容ユニット8の後述する外枠48の外枠板51に取り付けられている。底部リング13は、ねじ等の締結部材(図示せず)を用いて外枠板51に固定されていてもよい。
【0044】
図1~
図3および
図6を参照して、ケース本体10は、中空に形成された直方体状の内部空間20を有している。内部空間20には、振動センサ3と、処理ユニット7と、センサ収容ユニット8とが収容されている。
【0045】
図1~
図3を参照して、振動センサ3は、たとえば加速度センサであり、たとえば、センサ軸三方向の加速度の大きさを検出する三軸加速度センサである。より具体的には、振動センサ3は、たとえば、圧電素子または水晶が使用された加速度センサである。振動センサ3は、微動加速度(微細な振動)を計測する。振動センサ3からの加速度の大きさは、デジタル値で出力されてもよい。振動センサ3は、処理ユニット7に、ケーブル21(
図1参照)を介して接続されている。振動センサ3の検出出力は、ケーブル21を介して、処理ユニット7の次に述べる制御装置70(
図8参照)に付与される。
【0046】
バッテリー4は、たとえば、リチウムイオン電池である。バッテリー4は、1次電池であってもよいし、2次電池であってもよい。バッテリー4は、内部空間20における最も上部分に配置されている。バッテリー4は、他の位置に配置されていてもよいが、バッテリーの重さが、振動計1の重心位置に影響を与えないような(振動計1が偏心しないような)位置に配置される。
【0047】
表示ユニット5は、たとえば液晶表示パネルを有している。この液晶表示パネルは、液晶表示部17aを下面(前面)に有している。液晶表示部17aは、たとえば8インチの液晶表示部である。表示ユニット5は、蓋11の内面の全域に形成されている。そのため、
図4~
図6に示すように、蓋11を開いた状態において、表示ユニット5の液晶表示部17aが露出する。
【0048】
ハンドル6は、たとえば把手であり、蓋11の上面に取り付けられている。蓋11が閉じられた状態でハンドル6を掴むことにより、振動計1を持ち運びできる。ハンドル6は、
図1~
図3に示すような傾倒可能な把手である。ハンドル6で振動計1を吊り下げることにより、振動計1の底面が水平になり、そのまま載置面100に載置(設置)できる。
【0049】
ケース2が小型であり、バッテリー4および表示ユニット5も小型タイプが採用されている。そのため、振動計1は小型化および軽量化が図られている。そのため、振動計1は、ポータブル性に優れ、持ち運びが容易である。しかも、ハンドル6付きであるため、ポータブル性のより一層の向上が図られている。
【0050】
図1~
図4を参照して、処理ユニット7(
図8も併せて参照)は、振動計用制御基板22(
図8も併せて参照)および板金部材23を、それぞれ下および上に備えた構成である。振動計用制御基板22は、配線基板24と、配線基板24に実装された部品25を含む。部品25は、電気部品、端子台等を含む。この電気部品は、後述する制御装置70(
図8参照)、記憶ユニット72(
図8参照)、地磁気センサ、GPSセンサ、温度センサ、湿度センサ、開始ボタン74(
図8参照)、終了ボタン75(
図8参照)等を含む。板金部材23は、振動計用制御基板22の上方(配線基板24の上方)の全域を覆う。板金部材23は、主として、電気部品の発熱を抑制するための板金部材である。振動計用制御基板22および板金部材23は、固定手段を用いて一体に結合されている。
【0051】
図1~
図3、
図5および
図6を参照して、センサ収容ユニット8は、振動センサ3(加速度センサ)を下方から支持する台座41と、振動センサ3および台座41を収容する収容枠42とを含む。センサ収容ユニット8は、振動センサ3を収容している。センサ収容ユニット8は、内部空間20の略下半分に収容されている。
【0052】
図1~
図3、
図5および
図7を参照して、台座41は、平面視で円形である。台座41は、ケース本体10の底壁14に対して上下動自在に取り付けられている。台座41は、後述する収容枠42の内枠49に当接することにより、ケース2に対する上限位置が規制されている。台座41は、底部リング13に当接することにより、ケース2に対する下限位置が規制されている。すなわち、台座41は、ケース2に対し、その上限位置と下限位置との間で上下動自在である。台座41は、振動センサ3が載置される台座本体43と、底部リング13に接触するケース対向部44と、たとえば3つの第2脚部45とを含む。
【0053】
台座本体43は、平面視で円形である。台座本体43の上面は、振動センサ3が配置されるセンサ配置面46である。振動センサ3は、センサ配置面46にねじ等の締結部材(図示せず)を用いて固定されている。台座本体43は、磁性を持たない金属または合成樹脂材料を用いて形成されている。
【0054】
ケース対向部44は、平面視で円形である。ケース対向部44の下面の周縁部には、環状の第2当接面(第2係合部)47が形成されている。第2当接面47は、内側に向かって低くなるテーパ面である。第2当接面47は、水平面に対して、たとえば30°以上60°以内の傾斜角度(
図1等の例では、たとえば45°)で傾斜している。第2当接面47は平滑面である。第2当接面47は円錐台状である。第2当接面47は、第1当接面19と平行である。ケース対向部44は、磁性を持たない金属または合成樹脂材料を用いて形成されている。
【0055】
この実施形態では、ケース対向部44および台座本体43は、一体に形成されている。台座本体43およびケース対向部44が互いに別部材で形成され、ねじ等の締結部材(図示せず)を用いて台座本体43に結合されていてもよい。
【0056】
3つの第2脚部45は、ケース対向部44の下面に、台座41の周方向に等間隔に配置されている。3つの第2脚部45は、互いに同じ高さを有している。第2脚部45の下端を第2下端45aとする。3つの第2脚部45は、ねじまたはピンなどにより、ケース対向部44に下方から固定されている。台座41は、ケース2に対する下限位置と、ケース2に対する上限位置との間で上下動自在である。第2脚部45の第2下端45a、すなわち台座41の第2下端45aは、第2貫通穴18を介して、ケース2の底壁14の底面よりも下方に突出可能である。
【0057】
図5および
図7を参照して、収容枠42は、外枠48と、内枠49とを含む。外枠48と、内枠49とは別の板金によって形成されている。収容枠48は、ねじ等の締結部材(図示せず)によって、ケース2に固定されていてもよい。外枠48と内枠49との結合は、ねじ等の締結部材(図示せず)を用いて行われてもよい。
【0058】
図7を参照して、外枠48は、上面が開放された有底のボックス状であり、平面視で四角形の外枠板51と、外枠板51の四隅から立ち上がった4つの支柱52と、左側板53と、右側板54とを備えている。各支柱52は断面視L字状である。左側板53は、左側の2つの支柱52とつながっている。右側板54は、右側の2つの支柱52とつながっている。外枠板51、4つの支柱52、左側板53および右側板54は、板金により一体に形成されている。外枠48は、たとえばアルミ製である。この実施形態では、4つの支柱52の上端および右側板54の上端は、いずれも同じ高さ位置である。4つの支柱52の上端および右側板54の上端は、収容枠42の上端を構成する。また、図示を省略するが、外枠48が、4つの支柱52の上端を連結する連結板をさらに備えていてもよい。
【0059】
図5および
図7を参照して、内部空間20において、収容枠42の上方に処理ユニット7が収容されている。収容枠42は、処理ユニット7を下方から支持している。内部空間20に、収容枠42および処理ユニット7が収容されている状態において、収容枠42の上端が処理ユニット7の下端(下面)に当接している。収容枠42の上端が処理ユニット7に当接することにより、振動センサ3を配置するための空間を台座41の上方に十分に確保できる。別の言い方では、4つの支柱52の上端が処理ユニット7に当接することにより、処理ユニット7が振動センサ3に当接することを回避できる。
【0060】
図7を参照して、内枠49は、台座41の上面の一部を覆うように配置されている。内枠49は、左右一対の内枠板56を有している。内枠板56は、前後方向Yに対向するように配置されている。各内枠板56は、前後方向Yの途中部に上側に凸の凸部を形成している。
【0061】
図7を参照して、センサ収容ユニット8は、さらに、収容枠42に対する台座41の横方向移動および回動を規制するための規制部57を有している。規制部57は、台座41の上面に結合された係合突起58と、各内枠板56に形成された係合凹部59とを含む。係合凹部59は、
図7の例では係合穴であるが、係合溝であってもよい。係合突起58と係合凹部59とが係合することにより、収容枠42に対する台座41の横方向移動および回動が所定範囲に規制される。台座41の上下位置によらずに(
図1および
図2に示す位置にある場合および
図3に示す位置にある場合のいずれであっても)、係合突起58と係合凹部59との係合が保たれる。図示を省略するが、係合凹部59が、内枠49でなく、外枠48に形成されていてもよい。また、図示を省略するが、係合突起58が収容枠42側に形成され、係合凹部59が台座41側に形成されていてもよい。
【0062】
図1~
図3を参照して(とくに
図3を参照)、第1当接面19と第1下端15aとの間の第1距離H1が、第2当接面47と第2下端45aとの間の第2距離H2に比べて、数mm~十数mm(たとえば約5mm)短い。具体的には、第1当接面19における所定位置と、第2当接面47における前記所定位置と当接可能な位置との間の第1距離H1が、第2当接面47と第2下端45aとの間の第2距離H2よりも短い。
【0063】
載置面100上に載置された振動計1の状態(
図1および
図2に示す状態)を載置状態とする。台座41は、ケース2に対して、その上限位置と下限位置との間で上下動自在である。この載置状態では、台座41の第2下端45aは、第2貫通穴18を介して載置面100に当接する。そして、この載置状態では、ケース2の第1下端15aと、台座41の第2下端45aとが、同じ高さ位置にある。前述のように、第1当接面19と第1下端15aとの間の第1距離H1が、第2当接面47と第2下端45aとの間の第2距離H2よりも短い。そのため、ケース2および台座41を載置面100上に載置した載置状態(
図1および
図2に示す状態)において、第1当接面19と第2当接面47とは互いに当接(係合)せず、第1当接面19と第2当接面47との間には隙間S(
図3参照)が形成されている。この隙間Sは、数mm~十数mm(上下方向Zの距離)であってもよい。振動計1の載置状態では、台座41が、ケース対向部44に接触しておらず、そのため、台座41は、ケース対向部44によって支持されていない。
【0064】
なお、この載置状態において、台座41のセンサ配置面46は、内枠49(内枠板56)に当接してない。載置状態において、センサ配置面46は、内枠49(内枠板56)に当接しないように、内枠板56のサイズ等が調整されている。
【0065】
この載置状態(
図1および
図2に示す状態)において、台座41は、内部空間20に収容されている振動センサ3を、ケース2から独立して支持している。この載置状態では、振動センサ3がケース2に接触していないだけでなく、振動センサ3とケース2とが連結していない。すなわち、振動センサ3が、ケース2から物理的に切り離されている。
【0066】
振動計1の運搬時には、作業者は振動計1を持ち上げる。この場合、作業者は、ハンドル6を掴んで振動計1を持ち上げる。ケース2が上方に持ち上げられることにより、ケース2の底部リング13が台座41に対して、上方に移動する。そして、ケース2の底部リング13の第1当接面19が台座41の第2当接面47に当接し、これにより、
図3に示すように、底部リング13が台座41に接触する。その後、ケース2がさらに上方に持ち上げられる。すなわち、作業者がハンドル6を持って振動計1を持ち上げることにより、台座41が底部リング13にずれずに納めることができる。
【0067】
ケース2が上方に持ち上げられている振動計1の状態(
図3に示す状態)を持ち上げ状態とする。この持ち上げ状態において、第1当接面19と第2当接面47とが当接している。振動計1の持ち上げ状態(
図3に示す状態)では、台座41が、ケース2の底部リング13によって接触支持されている。すなわち、振動計1の持ち上げ状態(
図3に示す状態)において、振動センサ3および台座41がケース2によって支持されている。別の言い方では、振動センサ3および台座41が、ケース2に吊り下げ支持されている。
【0068】
前述のように、台座41は、ケース2に対して上下動可能である。そして、振動計1の載置状態(
図1および
図2に示す状態)と振動計1の持ち上げ状態(
図3に示す状態)とでは、ケース2に対する台座41の高さ位置が異なる。振動計1の載置状態(
図1および
図2に示す状態)では、台座41は下位置にある。振動計1の持ち上げ状態(
図3に示す状態)では、台座41は上位置にある。
【0069】
図8は、振動計1の電気的構成を示すブロック図である。振動計1は、制御装置70を含む。制御装置70は、マイクロコンピューターを含む構成である。より具体的には、制御装置70は、演算ユニット71、記憶部およびタイマー等を含む。演算ユニット71は、プロセッサを含む。プロセッサは、GPU(Graphic Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)等を含む。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。制御装置70は、記憶ユニット72に接続されている。記憶ユニット72は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスによって構成されている。記憶ユニット72は、様々な情報を記憶する。記憶ユニット72には、制御装置70の演算ユニット71によって実行可能なプログラムが記憶されている。
【0070】
制御装置70には、振動センサ3が接続されている。制御装置70は、振動センサ3の検出出力を、記憶ユニット72に記録データ73として記憶する。記録データ73には、振動センサ3の検出出力が、検出時刻やその他の測定条件と紐付いた形で記憶される。また、制御装置70には、地磁気センサ、GPSセンサ、温度センサ、湿度センサ等が接続されている。
【0071】
この実施形態では、制御装置70は、重力加速度の方向がZ軸に一致するように、振動センサ3(加速度センサ)の三方向出力値をセンサ三軸の座標系から所定の直交座標系(第2の直交座標系)に変換する。また、制御装置70は、変換後の加速度値を、振動センサ3(加速度センサ)のセンサ軸(y軸)が北(磁北)を向くように、前記直交座標系と異なる所定の直交座標系(第1の直交座標系)に変換する。
【0072】
制御装置70には、開始ボタン74および終了ボタン75が接続されている。制御装置70は、開始ボタン74の操作信号の入力に基づいて、振動センサ3による計測を開始させる。制御装置70は、終了ボタン75の操作信号の入力に基づいて、振動センサ3による計測を終了させる。
【0073】
この実施形態では、加速度センサ13が三軸加速度センサによって構成されている。加速度センサ13は重力加速度を加速度として含めて測定する。そのため、加速度センサ3によって出力されたセンサ軸三方向の加速度値に基づき、振動計1が、加速度センサ3の傾きを把握可能である。また、振動計1が、地磁気センサを含む。そのため、振動計1が、振動計1の水平方向の方位を把握可能である。そして、制御装置70は、加速度センサ3から出力されるセンサ軸三方向の座標系の加速度値を、所定の直交座標系に変換する。この加速度の座標変換は、特開2022-171245号公報に開示の手法を用いて行われる。 これにより、振動計1の傾きや方位に拘わりなく、振動計1に作用する、南北方向、東西方向および鉛直方向の三方向の加速度大きさを、良好に計測できる。
【0074】
図9は、振動計1を用いた振動計測処理の流れを示す流れ図である。
図1~
図3、
図8および
図9を参照しながら、振動計1を用いた振動計測処理の流れを説明する。
【0075】
作業者は、予め定める計測地点において、地盤、床、机等の載置面100上に振動計1を設置(載置)する。振動センサ3に接続されているケーブル21は、既に内部空間20に収容されている。そのため、振動計1の設置の度に、ケーブル21を挿したり抜いたりする必要がない。加速度の方向を水平・鉛直に変換するため、振動計1を水平にするためのレベル調整は不要である、さらに振動計1の方向を磁北に合わせて調整する必要もない。ゆえに、振動計1の設置のための準備作業が簡便になり、準備作業の煩わしさが低減される。そして、ケーブル21がケース2外で引き回されることはないので、このことに起因する不具合を回避できる。
【0076】
振動計1の載置状態(
図1および
図2に示す状態)において、台座41は、内部空間20に収容されている振動センサ3を、ケース2から独立して支持している。振動計1の載置状態では、振動センサ3が、ケース2から物理的に切り離れており、そのため、ケース2から振動センサ3に振動が伝わらない。これにより、振動計1によって、振動を高精度に計測できる。ゆえに、ポータビリティ性に優れ、かつ高精度な振動計測を実現できる振動計1を提供できる。
【0077】
振動計測時において、風や他の機器の影響によりケース2が微細に振動することも考えられる。しかし、このような場合であっても、微細な振動がケース2から振動センサ3に伝わらないので、振動センサ3の検出出力に誤差が発生しない。これにより、振動計1による振動計測の精度を高く保つことができる。
【0078】
また、第1当接面19と第1下端15aとの間の第1距離H1が、第2当接面47と第2下端45aとの間の第2距離H2よりも短い。そのため、ケース2および台座41を、水平面からなる載置面100に載置した載置状態(
図1および
図2に示す状態)において、第1当接面19と第2当接面47との間に隙間Sが形成される。そのため、ケース2および台座41を載置面100に載置した載置状態において、振動センサ3を、ケース2から確実に物理的に切り離すことができる。振動計1による振動計測は、振動計1の載置状態において行われる。そのため、振動センサ3をケース2から確実に物理的に切り離した状態で振動計測できる。
【0079】
振動計1を載置した後、作業者は、開始ボタン74を操作する。開始ボタン74の操作があると(
図9のステップS1でYES)、制御装置は、振動センサ3の検出出力を出力開始させる(
図9のステップS2)。制御装置70は、開始ボタン74が操作されても直ちには、検出出力の記録を開始しない。そして、開始ボタン74の操作から30秒が経過すると(
図9のステップS3でYES)、制御装置70は、振動センサ3の検出出力の記録を開始する(
図9のステップS4)。検出出力は、記録データ73に記録される。このとき、制御装置70は、振動センサ3の検出出力だけでなく、他のセンサ(地磁気センサ、GPSセンサ、温度センサ、湿度センサ等)の検出出力の記録データ73への記録も開始される。
【0080】
また、開始ボタン74が操作されてから所定期間(たとえば30秒)が経過した後、検出出力の記録が開始される。前述のように、振動計1の載置状態(
図1および
図2に示す状態)では、振動センサ3がケース2から物理的に切り離れている。しかし、作業者による開始ボタン74の操作に伴う衝撃や作業者の歩行の振動が、ケース2から載置面100を介して台座41に伝わり、台座41から振動センサ3に伝わるおそれもある。この場合、振動センサ3がこの振動を検出してしまい、振動センサ3の検出出力に誤差が発生するおそれがある。そのため、開始ボタン74が操作された後直ちに検出出力の記録を開始すると、誤差が発生している検出出力が、記録データ73に記録されるおそれがある。
【0081】
この実施形態では、開始ボタン74が操作されてから検出出力の記録が開始されるまで、所定期間待つ。そして、開始ボタン74の操作に伴う衝撃が収まった後に、検出出力の記録が開始される。これにより、開始ボタン74の操作に伴う影響を排除した記録データ73を得ることができる。
【0082】
計測処理の終了タイミングになると、作業者が、終了ボタン75を操作する。終了ボタン75の操作があると(
図9のステップS5でYES)、制御装置70は、振動センサ3の検出出力を終了させ、かつ検出出力の記憶を終了する(
図9のステップS6)。
【0083】
その後、作業者は、ハンドル6を掴んで振動計1を持ち上げ、次の測定位置へと振動計1を運搬する。
【0084】
この振動計1の持ち上げ状態(
図3に示す状態)において、第1当接面19と第2当接面47とが当接(係合)する。そして、第1当接面19および第2当接面47が円錐台状であるので、第1当接面19および第2当接面47が当接している状態では、ケース2に対する台座41の横方向(左右方向Xおよび前後方向Y)への移動が規制される。これにより、振動計1の持ち上げ状態(
図7参照)において、振動センサ3および台座41がケース2に対して移動することを抑制できる。そのため、ケース2に対する振動センサ3および台座41の移動を効果的に規制しながら、振動計1を持ち運びできる。ゆえに、振動計1のポータビリティ性をより一層向上できる。
【0085】
ところで、振動計1では振動センサ3がケース2内に収容されているため、振動計1の運搬において、次に述べる問題がある。すなわち、振動計1の運搬時の振動に伴って、振動センサ3がケース2内でぐらついてケース2内の他の部材等とぶつかるおそれがある。その衝撃が大きいと、振動センサ3が損傷するおそれがある。とくに、振動センサ3として用いられる水晶型(クォーツ型)加速度センサや圧電素子型センサは衝撃に弱いため、その問題が顕在化する。このような問題の発生を未然に防止するために、振動計1は、運搬時に取り付けられる保護カバー80を備えている。
図10は、保護カバー80の斜視図である。
【0086】
図3および
図10を参照して、振動計1の運搬時には、保護カバー80が振動計1の底部10aに取り付けられる。保護カバー80は、平面視四角形の四角枠81と、4つのスペーサリブ82と、4つの第3脚部83と、締結用のボルト84(
図3参照)とを備えている。
図3では、保護カバー80を二点鎖線で示している。保護カバー80は、台座41(つまり、台座41および振動センサ3)を底部リング13に位置決めする(固定する)機能と、振動計1の底部10aを保護するための機能との2つの機能を備えている。
【0087】
主として
図10を参照して、四角枠81は、四角形状の金属板85と、金属板85の4辺の周縁から立ち上がった周縁リブ86とを一体に備えている。四角枠81は、板金部材である。金属板85は、平面視の形状および大きさが、振動計1の底部10aと一致している。金属板85の中央部には、ボルト挿通穴87が形成されている。周縁リブ86の高さは、4つのスペーサリブ82の高さと略同じである。周縁リブ86には、4つの第2脚部45を収容するための4つの脚部収容凹所88が形成されている。また、台座41の下面の中央部には、ボルト穴89(
図3参照)が形成されている。
【0088】
振動計1の運搬時には、
図3に二点鎖線で示すように、保護カバー80が、振動計1の底部10a全体を覆うように装着される。保護カバー80によって振動計1の底部10aを保護することにより、振動センサ3に衝撃が伝わるのを抑制または防止できる。
【0089】
保護カバー80の装着状態で、4つの第2脚部45は、対応する脚部収容凹所88に収容される。また、この保護カバー80の装着状態で、台座41のボルト穴89が、金属板85のボルト挿通穴87に上下に対向している。そして、ボルト84を、ボルト挿通穴87を介してボルト穴89にねじ込む。これにより、ボルト84がボルト穴89に締結される。ボルト84のねじ込み量が大きくなると、スペーサリブ82によって金属板85とボルト穴89との距離が一定に保たれつつ、ボルト84の頭部と台座41とが接近する。そのため、台座41が底部リング13に押し付けられ、これにより、台座41をケース2の底部に位置決め(固定)できる。したがって、振動センサ3が内部空間20でぐらつくことを抑制または防止できる。ゆえに、振動計1の運搬を良好に実現できる。
【0090】
図11は、この発明の第2実施形態に係る振動計201の要部の模式的な断面図であり、
図2に対応する図である。
図12は、粘性シート211の特性を説明するためのグラフである。第2実施形態において、第1実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1~
図10の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。振動計201が、振動計1と相違する点は、振動センサ3と台座41との間に、それぞれ粘性シート211を配置した点にある。
【0091】
振動センサ3と台座41との間には、第1粘性シート211が配置されている。第1粘性シート211は、振動センサ3と台座41との間の全域に配置されている。
【0092】
粘性シート211は、高い粘性を有するシートである。粘性シート211は、振動を吸収するシートであり、衝撃吸収シートである。粘性シート211は、たとえばウレタンゲルを用いて形成されている。
【0093】
第2実施形態によれば、ケース2に大きな衝撃が加わった場合でも、その衝撃は、粘性シート211によって吸収される。これにより、ケース2から振動センサ3に伝わる衝撃を低減または零にできる。これにより、振動センサ3を保護できる。ゆえに、ケース2に大きな衝撃が加わった場合でも、振動センサ3に衝撃が伝わるのを抑制または防止でき、これにより、振動センサ3が損傷することを未然に防止できる。
【0094】
粘性シート211は、たとえば、ハイパーゲルシート(株式会社エクシール製)である。
図12のサンプル1、サンプル2およびサンプル3のずれかを、粘性シート211として用いる。サンプル1、サンプル2およびサンプル3は、それぞれハイパーゲルシート(株式会社エクシール製)の「ハイパーゲル30」(商品名)、「ハイパーゲル50」(商品名)および「ハイパーゲル70」(商品名)であってもよい。
図12に示すように、サンプル1~サンプル3のいずれにおいても、30Hz以下での振動伝達率が高く、かつ50Hz以上での振動伝達率が低い。振動計201を用いて計測したい周波数領域は10Hz以下である。一方、衝撃による周波数領域は、50Hz以上である。すなわち、粘性シート211は、衝撃による周波数領域(50Hz以上)における振動伝達率が低く、計測したい周波数領域(10Hz以下)における振動伝達率が高い粘性シート211を用いることにより、振動計201による振動計測の精度を高く保ちながら、振動センサ3の破損を防止できる。
【0095】
以上、この発明の複数の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0096】
たとえば、第1当接面19および第2当接面47が、円錐台状であるとして説明したが、いずれも環状のテーパ面であれば、円錐台状を採用しなくてもよい。
【0097】
また、第1当接面19および第2当接面47が、テーパ面であるとして説明したが、第1当接面19および第2当接面47が、テーパ面でなく、水平面を有していてもよい。この場合、第1当接面19および第2当接面47は、平面視で円形であってもよいし、他の環状であってもよい。
【0098】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 :振動計
2 :ケース
3 :振動センサ
6 :ハンドル(把持部)
7 :処理ユニット
10a :底部
15a :第1下端
19 :第1当接面(第1係合部)
20 :内部空間
41 :台座
45a :第2下端
47 :第2当接面(第2係合部)
80 :保護カバー
201 :振動計
211 :粘性シート
H1 :第1距離
H2 :第2距離
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に載置された状態で振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットと、
前記振動センサを支持する台座であって、載置面に当接する脚部を有し、前記内部空間に収容されている前記振動センサと一体的に、前記ケースおよび前記処理ユニットに対して昇降可能な台座とを含む、振動計。
【請求項2】
前記ケースには、当該ケースの底壁を上下に貫通する貫通穴が形成されており、
前記台座の下端は、前記貫通穴を介して、前記ケースの下方に突出可能である、請求項1に記載の振動計。
【請求項3】
前記ケースに形成された第1係合部と、
前記台座に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部とを含み、
前記第1係合部の前記ケースの第1下端からの第1距離が、前記第2係合部の前記台座の第2下端からの第2距離よりも短い、請求項1に記載の振動計。
【請求項4】
前記第1係合部および前記第2係合部が、互いに上下に当接する第1当接面および第2当接面を含む、請求項3に記載の振動計。
【請求項5】
前記第1当接面および前記第2当接面が、円錐台状である、請求項4に記載の振動計。
【請求項6】
前記振動センサと前記台座との間に配置された粘性シートをさらに含む、請求項3に記載の振動計。
【請求項7】
前記台座が、平面視で円形であり、
前記脚部が複数であり、
複数の前記脚部が、平面視で前記台座の中心を除く位置において、前記台座の周方向に間隔を空けて配置されている、請求項1に記載の振動計。
【請求項8】
振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットと、
前記振動センサを支持する台座であって、前記内部空間に収容されている前記振動センサを、前記ケースから独立して支持可能な台座とを含み、
前記ケースの底部を覆う保護カバーであって、前記台座に対してねじ締結可能に結合可能な保護カバーをさらに含む、振動計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
台座が、載置面に接触する脚部を有していてもよい。
台座が、振動センサと一体的に、ケースおよび処理ユニットに対して昇降可能であってもよい。
前記台座が、平面視で円形であってもよい。前記脚部が複数であってもよい。複数の前記脚部が、平面視で前記台座の中心を除く位置において、前記台座の周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。
3. 前記ケースには、当該ケースの底壁を上下に貫通する貫通穴が形成されており、
前記台座の下端は、前記貫通穴を介して、前記ケースの下方に突出可能である、項2に記載の振動計。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
主として
図10を参照して、四角枠81は、四角形状の金属板85と、金属板85の4辺の周縁から立ち上がった周縁リブ86とを一体に備えている。四角枠81は、板金部材である。金属板85は、平面視の形状および大きさが、振動計1の底部10aと一致している。金属板85の中央部には、ボルト挿通穴87が形成されている。周縁リブ86の高さは、4つのスペーサリブ82の高さと略同じである。周縁リブ86には、4つの第
1脚部
15を収容するための4つの脚部収容凹所88が形成されている。また、台座41の下面の中央部には、ボルト穴89(
図3参照)が形成されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
保護カバー80の装着状態で、4つの第1脚部15は、対応する脚部収容凹所88に収容される。また、この保護カバー80の装着状態で、台座41のボルト穴89が、金属板85のボルト挿通穴87に上下に対向している。そして、ボルト84を、ボルト挿通穴87を介してボルト穴89にねじ込む。これにより、ボルト84がボルト穴89に締結される。ボルト84のねじ込み量が大きくなると、スペーサリブ82によって金属板85とボルト穴89との距離が一定に保たれつつ、ボルト84の頭部と台座41とが接近する。そのため、台座41が底部リング13に押し付けられ、これにより、台座41をケース2の底部に位置決め(固定)できる。したがって、振動センサ3が内部空間20でぐらつくことを抑制または防止できる。ゆえに、振動計1の運搬を良好に実現できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に配置された状態で振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットと、
前記振動センサを支持する台座であって、載置面に当接する脚部を有し、前記内部空間に収容されている前記振動センサと一体的に、前記ケースおよび前記処理ユニットに対して昇降可能な台座と、
前記台座に形成され、前記台座の内方に向かうに従って下方に向かうテーパ状の台座側当接面と、
前記ケースに形成され、前記台座側当接面と上下に対向し、前記台座側当接面に整合するテーパ状のケース側当接面とを含み、
前記振動計が前記載置面から離反した状態において、前記台座側当接面と前記ケース側当接面とが面接触し、
前記振動計が前記載置面に配置された状態において、前記振動センサおよび前記台座が前記ケースによって支持されていない、振動計。
【請求項2】
前記ケースには、当該ケースの底壁を上下に貫通する貫通穴が形成されており、
前記台座の下端は、前記貫通穴を介して、前記ケースの下方に突出可能である、請求項1に記載の振動計。
【請求項3】
前記ケース側当接面の第1下端からの第1距離が、前記台座側当接面の第2下端からの第2距離よりも短い、請求項1に記載の振動計。
【請求項4】
前記ケース側当接面および前記台座側当接面が、円錐台状である、請求項1に記載の振動計。
【請求項5】
前記振動センサと前記台座との間に配置された粘性シートをさらに含む、請求項1または4に記載の振動計。
【請求項6】
前記台座が、平面視で円形であり、
前記脚部が複数であり、
複数の前記脚部が、平面視で前記台座の中心を除く位置において、前記台座の周方向に間隔を空けて配置されている、請求項1または4に記載の振動計。
【請求項7】
振動を計測するための振動計であって、
内部空間を有するケースと、
前記内部空間に収容された振動センサと、
前記内部空間に収容され、前記振動センサから出力される検出出力に基づいて計測処理を行う処理ユニットと、
前記振動センサを支持する台座であって、前記内部空間に収容されている前記振動センサを、前記ケースから独立して支持可能な台座とを含み、
前記ケースの底部を覆う保護カバーであって、前記台座に対してねじ締結可能に結合可能な保護カバーをさらに含む、振動計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
前記振動計が、前記ケースに形成された第1係合部と、前記台座に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部とを含んでいてもよい。前記第1係合部および前記第2係合部が、互いに上下に対向するケース側当接面および台座側当接面を有していてもよい。前記台座側当接面が、前記台座に形成され、前記台座の内方に向かうに従って下方に向かうテーパ状の台座側当接面であってもよい。前記ケース側当接面が、前記ケースに形成され、前記台座側当接面に整合するテーパ状のケース側当接面であってもよい。前記振動計が前記載置面から離反した状態において、前記台座側当接面と前記ケース側当接面とが面接触してもよい。前記振動計が前記載置面に配置された状態において、前記振動センサおよび前記台座が前記ケースによって支持されていなくてもよい。
7. 前記振動センサと前記台座との間に配置された粘性シートをさらに含む、項4~6のいずれか一項に記載の振動計。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
図1~
図3を参照して、底部リング13は、平面視で円形のリング状である。底部リング13は、磁性を持たない金属または合成樹脂材料を用いて形成されている。底部リング13は、第1貫通穴16に下側から嵌められている。底部リング13は、第2貫通穴18を有している。第2貫通穴18の内周壁が、底部リング13の内周面である。第2貫通穴18の内周壁には、第1当接面(
ケース側当接面、第1係合部)19が形成されている。第1当接面19は、次に述べる台座41の第2当接面(
台座側当接面、第2係合部)47と上下に対向している。第1当接面19は、内側に向かって低くなるテーパ面である。第1当接面19は、水平面に対して、たとえば30°以上60°以内の傾斜角度(
図1等の例では、たとえば45°)で傾斜している。第1当接面19は平滑面である。第1当接面19は円錐台状である。底部リング13は、センサ収容ユニット8の後述する外枠48の外枠板51に取り付けられている。底部リング13は、ねじ等の締結部材(図示せず)を用いて外枠板51に固定されていてもよい。