IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エコ・テクノロジーの特許一覧

<>
  • 特開-車両 図1
  • 特開-車両 図2
  • 特開-車両 図3
  • 特開-車両 図4
  • 特開-車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006467
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 1/10 20100101AFI20250109BHJP
   B62J 43/00 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
B62M1/10 Z
B62J43/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107280
(22)【出願日】2023-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】309025199
【氏名又は名称】株式会社エコ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政春
(57)【要約】
【課題】自動二輪車又は自動三輪車において、風力発電することを目的とする。
【解決手段】車両10は、自動二輪車又は自動三輪車の車体20と、収容室50と、車体20の高さ方向に沿った回転軸72を中心として収容室50に回転可能に収容される風力タービン70と、収容室50よりも前方に位置し、収容室50に空気を取り込む給気口54と、収容室50よりも後方かつ給気口54よりも幅方向外側に位置し、収容室50内の空気を幅方向外側へ向けて排出する排気口58と、を有し、車体20に設けられるタービン収容部42と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車又は自動三輪車の車体と、
収容室と、前記車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として前記収容室に回転可能に収容される風力タービンと、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも幅方向外側に位置し、前記収容室内の空気を幅方向外側へ向けて排出する排気口と、を有し、前記車体に設けられるタービン収容部と、
を備える車両。
【請求項2】
前記車体には、幅方向に並ぶ一対の前記タービン収容部が設けられる、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
一対の前記タービン収容部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記車体の前後方向に対して左右対称とされる、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記給気口は、前記タービン収容部の前面に形成され、
前記排気口は、前記タービン収容部の側面に形成される、
請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記タービン収容部の前記側面は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記排気口から前方へ向かって幅方向内側へ湾曲し、前記給気口に至る、
請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記タービン収容部の前記側面における前記排気口の前縁部には、前記側面から突出する風向ガイド部が設けられ、
前記風向ガイド部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜又は湾曲するガイド面を有する、
請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記風向ガイド部は、前記排気口の前記前縁部に沿って設けられる、
請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記車体の幅方向両側にそれぞれ設けられるステップを備え、
前記ステップの少なくとも一部は、前記タービン収容部の前記側面における幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置する、
請求項4に記載の車両。
【請求項9】
前記車体の前方に配置される前輪と、
前記車体の後方に配置される後輪と、
を備え、
前記タービン収容部は、前記前輪と前記後輪との間に配置される、
請求項1に記載の車両。
【請求項10】
前記車体に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機と、
前記車体に設けられ、前記発電機によって発電された電力を蓄電するバッテリと、
を備える請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用風力発電装置を備えた貨物車両(トラック)がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された車両用風力発電装置は、貨物車両の乗員室上に設置されている。この車両は、走行風を受けて回転する回転翼を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/269938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された車両用風力発電装置は、一例として、貨物車両に適用されているが、自動二輪車又は自動三輪車においても、風力発電することが望まれる。
【0005】
本開示は、上記の事実を考慮し、自動二輪車又は自動三輪車において、風力発電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る車両は、自動二輪車又は自動三輪車の車体と、収容室と、前記車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として前記収容室に回転可能に収容される風力タービンと、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも幅方向外側に位置し、前記収容室内の空気を幅方向外側へ向けて排出する排気口と、を有し、前記車体に設けられるタービン収容部と、を備える。
【0007】
上記態様によれば、自動二輪車又は自動三輪車の車体には、タービン収容部が設けられる。タービン収容部は、収容室と、風力タービンと、給気口と、排気口とを有する。収容室には、風力タービンが収容される。風力タービンは、車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として収容室に回転可能に収容される。
【0008】
給気口は、収容室よりも前方に位置する。この給気口から収容室に空気が取り込まれる。一方、排気口は、収容室よりも後方かつ給気口よりも幅方向外側に位置する。この排気口から、収容室内の空気を幅方向外側へ向けて排出される。
【0009】
ここで、車両が走行すると、排気口の幅方向外側を流れる走行風によって収容室に負圧が生じる。この負圧によって、収容室内の空気が排気口から排出されるとともに、給気口から収容室に走行風(空気)が取り込まれる。この際、風力タービンが走行風を受けて、車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として回転する。この風力タービンの回転を利用することにより、発電することができる。
【0010】
このように、排気口の幅方向外側を流れる走行風によって収容室に生じる負圧を利用することにより、風力タービンの回転効率が高められる。したがって、発電効率を高めることができる。また、風力発電に伴う走行抵抗の増加が抑制される。
【0011】
また、風力タービンの回転に伴うジャイロ効果によって、車体の姿勢が保持される。したがって、車両の安定性が向上する。
【0012】
第2態様に係る車両は、第1態様に係る車両において、前記車体には、幅方向に並ぶ一対の前記タービン収容部が設けられる。
【0013】
上記態様によれば、車体には、幅方向に並ぶ一対のタービン収容部が設けられる。一対のタービン収容部の収容室には、風力タービンがそれぞれ収容される。各風力タービンは、車両の走行に伴って、車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として回転する。これらの風力タービンの回転を利用することにより、発電することができる。したがって、本態様では、車体に1つのタービン収容部が設けられる場合と比較して、発電効率が高められる。
【0014】
また、一対のタービン収容部における風力タービンの回転に伴うジャイロ効果によって、車体の姿勢が保持され易くなる。したがって、車両の安定性がさらに向上する。
【0015】
第3態様に係る車両は、第2態様に係る車両において、一対の前記タービン収容部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記車体の前後方向に対して左右対称とされる。
【0016】
上記態様によれば、一対のタービン収容部は、車体の高さ方向から見た平断面にて、車体の前後方向に沿った中心線に対して左右対称とされる。これにより、一対のタービン収容部において、風力タービンの回転に伴うジャイロ効果が車体の前後方向に沿った中心線に対して左右対称に発生し易くなる。したがって、車両の安定性がさらに向上する。
【0017】
第4態様に係る車両は、第2態様に係る車両において、前記給気口は、前記タービン収容部の前面に形成され、前記排気口は、前記タービン収容部の側面に形成される。
【0018】
上記態様によれば、給気口は、タービン収容部の前面に形成される。一方、排気口は、タービン収容部の側面に形成される。これにより、給気口から収容室に走行風を取り込み易くなるとともに、収容室に取り込まれた走行風が排気口から排出され易くなる。したがって、風力タービンの回転効率が高められる。
【0019】
第5態様に係る車両は、第4態様に係る車両において、前記タービン収容部の前記側面は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記排気口から前方へ向かって幅方向内側へ湾曲し、前記給気口に至る。
【0020】
上記態様によれば、タービン収容部の側面は、車体の高さ方向から見た平断面にて、排気口から前方へ向かって幅方向内側へ湾曲し、給気口に至る。これにより、車両が走行すると、走行風がタービン収容部の側面に沿って斜め後方へ流れる。したがって、タービン収容部の空気抵抗が低減される。
【0021】
また、タービン収容部の側面に沿って斜め後方へ流れた走行風は、排気口の幅方向外側を通過する。つまり、タービン収容部の側面に沿って流れた走行風が、排気口の幅方向外側に集められる。これにより、排気口の幅方向外側を通過する走行風の風量が増加するため、収容室に生じる負圧が大きくなる。
【0022】
この結果、排気口からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口からの給気効率がさらに高められる。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0023】
第6態様に係る車両は、第4態様に係る車両において、前記タービン収容部の前記側面における前記排気口の前縁部には、前記側面から突出する風向ガイド部が設けられ、前記風向ガイド部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜又は湾曲するガイド面を有する。
【0024】
上記態様によれば、タービン収容部の側面における排気口の前縁部には、風向ガイド部が設けられる。風向ガイド部は、タービン収容部の側面から突出する。この風向ガイド部は、車体の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜又は湾曲するガイド面を有する。
【0025】
これにより、車両の走行に伴って、タービン収容部の側面に沿って後方へ流れた走行風が、風向ガイド部のガイド面によって斜め後方へ案内される。この走行風によって、排気口付近の空気が幅方向外側へ引っ張られるため、収容室に生じる負圧が大きくなる。
【0026】
この結果、排気口からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口からの給気効率がさらに高められる。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0027】
第7態様に係る車両は、第6態様に係る車両において、前記風向ガイド部は、前記排気口の前記前縁部に沿って設けられる。
【0028】
上記態様によれば、風向ガイド部は、排気口の前縁部に沿って設けられる。これにより、車両の走行に伴って、タービン収容部の側面に沿って後方へ流れた走行風が、風向ガイド部のガイド面によって、より広い範囲で幅方向外側へ案内される。したがって、収容室に生じる負圧が増加するため、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0029】
第8態様に係る車両は、第4態様に係る車両において、前記車体の幅方向両側にそれぞれ設けられるステップを備え、前記ステップの少なくとも一部は、前記タービン収容部の前記側面における幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置する。
【0030】
上記態様によれば、ステップは、車体の幅方向両側にそれぞれ設けられる。ここで、ステップの少なくとも一部は、タービン収容部の側面における幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置する。これにより、車両の走行時に、タービン収容部の側面に沿って流れた走行風が、ステップ上の乗員の脚(下肢)に当たることが抑制される。したがって、乗員の脚による空気抵抗が低減される。
【0031】
第9態様に係る車両は、第1態様に係る車両において、前記車体の前方に配置される前輪と、前記車体の後方に配置される後輪と、を備え、前記タービン収容部は、前記前輪と前記後輪との間に配置される。
【0032】
上記態様によれば、前輪は、車体の前方に配置される。一方、後輪は、車体の後方に配置される。この前輪と後輪との間に、タービン収容部が配置される。
【0033】
このように前輪と後輪との間にタービン収容部を配置することにより、車両の走行に伴う風力タービンのジャイロ効果によって車体の姿勢が保持され易くなる。したがって、車体の安定性が向上する。
【0034】
第10態様に係る車両は、第1態様に係る車両において、前記車体に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機と、前記車体に設けられ、前記発電機によって発電された電力を蓄電するバッテリと、を備える。
【0035】
上記態様によれば、発電機は、車両の走行に伴う風力タービンの回転に伴って発電する。この発電機によって発電された電力は、バッテリに蓄電される。そして、バッテリに蓄電された電力を、例えば、車両の駆動源としてのモータ等に供給することにより、車両の連続走行距離を長くすることができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本開示によれば、自動二輪車又は自動三輪車において、風力発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施形態に係る車両を示す斜視図である。
図2図1に示されるタービン収容部を示す車体の高さ方向から見た平断面図である。
図3図2に一部拡大断面図である。
図4図3に示される風力タービンを示す斜視図である。
図5図3に示される風力タービンを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0039】
(車両)
図1には、本実施形態に係る車両10が示されている。車両10は、一例として、自動二輪車とされている。また、車両10は、一例として、電気自動車とされている。この車両10は、車体20と、前輪12と、後輪14とを備えている。
【0040】
なお、車両10は、電気自動車に限らず、例えば、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、又はガソリン自動車でもよい。
【0041】
車体20は、前輪12と後輪14との間に配置されている。また、車体20は、サイドカバー22によって覆われている。この車体20は、メインフレーム20A及びシートフレーム(リヤフレーム)20Bを有している。
【0042】
メインフレーム20Aは、車体20の前部を構成しており、図示しない駆動源としてのモータ等を支持している。また、メインフレーム20Aの前端側には、フロントフォーク24が取り付けられる図示しないヘッドパイプが設けられている。このメインフレーム20Aは、フロントフォーク24を介して、車体20の前方に配置された前輪12に支持されている。
【0043】
メインフレーム20Aの後端側は、図示しないピボットを介してスイングアーム26が取り付けられている。このメインフレーム20Aの後端側は、スイングアーム26を介して、車体20の後方に配置された後輪14に支持されている。後輪14は、図示しないドライブシャフト等を介して前述したモータと接続されており、当該モータによって回転駆動される。
【0044】
シートフレーム20Bは、車体20の後部を構成している。このシートフレーム20Bは、メインフレーム20Aから後方へ延出しており、車両シート28を支持している。また、シートフレーム20Bは、バッテリ82(図5参照)、及び後輪14を上方から覆うリヤフェンダ30等を支持している。
【0045】
メインフレーム20Aには、車両シート28に着座した乗員が足を載せる一対のステップ16が設けられている。一対のステップ16は、メインフレーム20Aから幅方向外側へ延出している。なお、ステップ16の前方には、図示しないブレーキペダル又はシフトペダル等が設けられる。
【0046】
このように構成された車体20の前部に、一対の車両用風力発電装置40が設けられている。
【0047】
(車両用風力発電装置)
図1に示されるように、一対の車両用風力発電装置40は、車両10の走行に伴う走行風Wを利用して発電する風力発電装置である。図2に示されるように、一対の車両用風力発電装置40は、車両10の幅方向に並んで設けられている。
【0048】
一対の車両用風力発電装置40は、タービン収容部42と、一対の風力タービン70と、発電機80(図5参照)と、バッテリ82(図5参照)を備えている。
【0049】
なお、各図に示される矢印Xは、車両10(車体20)及び車両用風力発電装置40(タービン収容部42)の前方(車両前方)を示している。また、矢印Yは、車両10(車体20)及び車両用風力発電装置40(タービン収容部42)の幅方向(車両幅方向)の外側(右側)を示している。さらに、矢印Zは、車両10(車体20)及び車両用風力発電装置40(タービン収容部42)の上方(車両上方)を示している。
【0050】
また、一対の車両用風力発電装置40は、車両10(車体20)の前後方向に沿った中心線Cに対して、左右対称に構成されている。そのため、以下では、車両10の中心線Cに対して右側に配置された車両用風力発電装置40の構成について説明し、車両10の中心線Cに対して左側に配置された車両用風力発電装置40の説明は、省略する。
【0051】
(タービン収容部)
図3に示されるように、タービン収容部42は、内部に風力タービン70を収容する筐体とされている。このタービン収容部42は、車両10の側面を形成する側壁部44を有している。また、タービン収容部42は、収容室50と、給気流路52と、給気口54と、排気流路56と、排気口58とを有している。
【0052】
(収容室)
収容室50は、タービン収容部42の前後方向の中間部に配置されている。また、収容室50は、車体20の高さ方向に沿った円柱状に形成されている。つまり、収容室50は、車体20の高さ方向から見た平断面にて、円形状に形成されている。
【0053】
具体的には、収容室50における幅方向外側の壁面50Aは、円弧状に湾曲される湾曲面とされている。また、収容室50における幅方向内側の壁面50Bは、後方へ向かって幅方向外側へ湾曲する湾曲面とされている。この収容室50の壁面50Bは、後述する給気流路52及び排気流路56における幅方向内側の壁面52B,56Bと連続している。
【0054】
収容室50には、車両10の走行時に、給気口54から給気流路52を介して走行風Wが供給される。また、収容室50に供給された走行風Wは、排気流路56を介して排気口58から排気される。
【0055】
(給気口)
給気口54は、タービン収容部42の前面42Fに形成されており、収容室50の前方に位置している。また、給気口54は、前方を向くとともに、車両10の高さ方向に沿って形成されている。この給気口54は、収容室50に対して幅方向内側(車両10の幅方向中央側)に寄って配置されている。また、給気口54は、給気流路52を介して収容室50の前端部と接続されている。
【0056】
(給気流路)
給気流路52は、収容室50の前方に配置されている。また、給気流路52は、車両10の高さ方向に沿って形成されている。この給気流路52の後端部は、収容室50における幅方向の内側部に接続されている。また、給気流路52は、収容室50の幅方向の内側部から前方へ延出し、収容室50と給気口54とを接続している。この給気流路52の幅方向外側の壁面52A、及び幅方向内側の壁面52Bは、前後方向に沿っている。
【0057】
(排気口)
排気口58は、タービン収容部42の後部における側面42S(側壁部44)に形成されており、収容室50よりも後方、かつ、給気口54よりも幅方向外側に位置している。また、排気口58は、斜め後方(後方、かつ、幅方向外側)を向くとともに、車両10の高さ方向に沿って形成されている。この排気口58は、排気流路56を介して収容室50の後端部と接続されている。
【0058】
なお、排気口58の向きは、斜め後方に限らず、例えば、幅方向外側でもよい。
【0059】
ここで、タービン収容部42の側面42Sは、車体20の高さ方向から見た平断面にて、排気口58の前縁部58Fから前方に向かって幅方向内側へ湾曲し、給気口54の幅方向外側の外縁部54Sに至る湾曲面とされている。このタービン収容部42の側面42Sは、車両10の走行に伴う空気抵抗を低減するカウルとしても機能する。
【0060】
なお、タービン収容部42の側面42Sは、車体20の高さ方向から見た平断面にて、全体として、排気口58の前縁部58Fから前方に向かって幅方向内側へ湾曲していればよい。そのため、タービン収容部42の側面42Sには、直線部分、傾斜部分、又は凹凸部分等が部分的に含まれていてもよい。また、タービン収容部42の側面42Sは、前述した湾曲面に限らず、例えば、車両10の前後方向に対して傾斜する傾斜面等でもよい。
【0061】
(排気流路)
排気流路56は、収容室50の後方に配置されている。また、排気流路56の前端部は、収容室50における幅方向の内側部に接続されている。この排気流路56は、収容室50から後方へ向かって幅方向外側に湾曲し、収容室50と排気口58とを接続している。また、排気流路56の幅方向外側の壁面56A、及び幅方向内側の壁面56Bは、後方へ向かって幅方向外側へ湾曲する湾曲面とされている。
【0062】
(風向ガイド部)
タービン収容部42の側面42Sにおける排気口58の前縁部58Fには、風向ガイド部60が設けられている。風向ガイド部60は、排気口58の前縁部58Fに沿って設けられている。また、タービン収容部42の側面42Sから突出している。この風向ガイド部60は、ガイド面60Gを有している。
【0063】
ガイド面60Gは、車体20の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜する傾斜面とされている。このガイド面60Gによって、車両10の走行時に、タービン収容部42の側面42Sに沿って後方へ流れた走行風Wが、斜め後方(後方、かつ、幅方向外側)へ案内される。
【0064】
なお、ガイド面60Gは、車体20の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ湾曲する湾曲面とされてもよい。また、風向ガイド部60は、省略可能である。
【0065】
ここで、排気口58よりも後方には、ステップ16が設けられている。このステップ16は、タービン収容部42の側面42Sにおける幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置している。より具体的には、ステップ16の全体が、タービン収容部42の側面42Sに設けられた風向ガイド部60のガイド面60Gの後端60G1よりも幅方向内側に位置している。これにより、車両10の走行時に、風向ガイド部60のガイド面60Gに沿って斜め後方へ流れた走行風Wが、ステップ16上に配置された乗員の脚に当たることが抑制される。
【0066】
なお、タービン収容部42の側面42Sに風向ガイド部60がない場合、タービン収容部42の側面42Sにおける幅方向の最外端は、一例として、排気口58の前縁部58Fとなる。また、ステップ16の少なくとも一部が、タービン収容部42の側面42Sにおける幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置されてもよい。
【0067】
(風力タービン)
図4に示されるように、風力タービン70は、車体20の高さ方向(矢印Z方向)に沿った回転軸72を中心として回転する風車とされる。この風力タービン70は、回転軸72と、一対のサイドベース74と、複数の回転翼76とを有している。一対のサイドベース74は、車体20の高さ方向に互いに対向している。
【0068】
一対のサイドベース74は、中央部74Aと、複数(本実施形態では、4つ)の支持アーム部74Bとを有している。中央部74Aは、タービン収容部42の幅方向から見て、円形状に形成されている。
【0069】
複数の支持アーム部74Bは、タービン収容部42の幅方向から見て、回転軸72を中心として中央部74Aの外周部から外側へ放射状に延出している。この一対のサイドベース74の支持アーム部74Bに、回転翼76がそれぞれ架け渡されている。
【0070】
図3に示されるように、複数の回転翼76は、給気口54から給気流路52を介して供給される走行風Wを受けることにより、回転軸72を中心として回転する。この際、各回転翼76は、矢印Pで示されるように、回転軸72の前方に位置する回転翼76が、回転軸72の幅方向内側を通過して回転軸72の後方へ向かうように回転する。
【0071】
各回転翼76は、金属や樹脂等によって中空状に形成されている。また、各回転翼76の断面形状は、回転方向の前方から供給される風に対して、回転軸72の径方向外側へ向かう揚力を発生させる翼形状とされている。
【0072】
具体的には、各回転翼76の外面76S1は、回転方向の前方へ凸状に湾曲する湾曲面とされている。一方、各回転翼76の内面76S2は、回転方向の前方へ凸状に湾曲する湾曲面とされている。この回転翼76の内面76S2の曲率は、回転翼76の外面76S1の曲率よりも小さくされている。これにより、各回転翼76には、回転方向の前方から供給される風に対して、回転軸72の径方向外側へ向かう揚力が発生される。
【0073】
(発電機)
図5に示されるように、風力タービン70の回転軸72の両端部には、発電機80がそれぞれ接続されている。各発電機80は、一対の風力タービン70の回転に伴って発電する。つまり、発電機80は、一対の風力タービン70の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。各発電機80には、当該発電機80によって発電された電力を蓄電するバッテリ82が接続されている。
【0074】
なお、風力タービン70の回転軸72には、少なくとも1つの発電機80を接続することができる。また、発電機80の配置は、適宜変更可能であり、例えば、タービン収容部42ではなく、車体20に取り付けられてもよい。
【0075】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0076】
図3に示されるように、車両10が走行(前進)すると、排気口58の幅方向外側を流れる走行風Wによって排気流路56に負圧が生じる。この負圧によって、収容室50内の空気(走行風W)が排気口58から排出されるとともに、給気口54から収容室50に走行風(空気)が取り込まれる。この際、風力タービン70が走行風Wを受けて、車体20の高さ方向に沿った回転軸72を中心として回転する。この風力タービン70の回転に伴って、発電機80が発電する。発電機80によって発電された電力は、バッテリ82に供給される。
【0077】
このように排気口58の幅方向外側を流れる走行風Wによって収容室50に生じる負圧を利用することにより、風力タービン70の回転効率が高められる。したがって、発電効率を高めることができる。また、風力発電に伴う走行抵抗の増加が抑制される。さらに、バッテリ82に蓄電された電力を、車両10の駆動源としての図示しないモータ等に供給することにより、車両10の連続走行距離を長くすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、車体20に一対のタービン収容部42が設けられている。一対のタービン収容部42は、幅方向に並んで配置されている。そして、一対のタービン収容部42の収容室50に収容された風力タービン70が、車両10の走行に伴ってそれぞれ回転する。これらの風力タービン70の回転に伴って、発電機80がそれぞれ発電する。
【0079】
したがって、本実施形態では、車体20に1つのタービン収容部42が設けられる場合と比較して、発電効率が高められる。
【0080】
また、給気口54は、タービン収容部42の前面42Fに形成されている。一方、排気口58は、タービン収容部42の側面42Sに形成されている。これにより、給気口54から収容室50に走行風Wを取り込み易くなるとともに、収容室50に取り込まれた走行風Wが排気口58から排出され易くなる。したがって、風力タービン70の回転効率が高められる。
【0081】
さらに、タービン収容部42の側面42Sは、車体20の高さ方向から見た平断面にて、排気口58から前方へ向かって幅方向内側へ湾曲し、給気口54に至る。これにより、車両10が走行すると、走行風Wがタービン収容部42の側面42Sに沿って斜め後方へ流れる。したがって、タービン収容部42の空気抵抗が低減される。
【0082】
また、タービン収容部42の側面42Sに沿って斜め後方へ流れた走行風Wは、排気口58の幅方向外側を通過する。つまり、タービン収容部42の側面42Sに沿って流れた走行風Wが、排気口58の幅方向外側に集められる。これにより、排気口58の幅方向外側を通過する走行風Wの風量が増加するため、収容室50に生じる負圧が大きくなる。
【0083】
この結果、排気口58からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口54からの給気効率がさらに高められる。したがって、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0084】
また、タービン収容部42の側面42Sにおける排気口58の前縁部58Fには、風向ガイド部60が設けられている。風向ガイド部60は、タービン収容部42の側面42Sから突出している。この風向ガイド部60は、車体20の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜又は湾曲するガイド面60Gを有している。
【0085】
これにより、車両10の走行に伴って、タービン収容部42の側面42Sに沿って後方へ流れた走行風Wが、風向ガイド部60のガイド面60Gによって斜め後方(後方、かつ、幅方向外側)へ案内される。この走行風Wによって、排気口58付近の空気が幅方向外側へ引っ張られるため、収容室50に生じる負圧が大きくなる。
【0086】
この結果、排気口58からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口54からの給気効率がさらに高められる。したがって、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0087】
また、風向ガイド部60は、排気口58の前縁部58Fに沿って設けられている。これにより、車両10の走行に伴って、タービン収容部42の側面42Sに沿って後方へ流れた走行風Wが、風向ガイド部60のガイド面60Gによって、より広い範囲で斜め後方へ案内される。したがって、収容室50に生じる負圧が増加するため、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0088】
また、風力タービン70の回転に伴うジャイロ効果によって、車体20の姿勢が保持される。さらに、タービン収容部42は、前輪12と後輪14との間に配置されている。これにより、車両10の走行に伴う風力タービン70のジャイロ効果によって車体20の姿勢が保持され易くなる。したがって、車体20の安定性がさらに向上する。
【0089】
また、本実施形態では、前述したように、車体20に一対のタービン収容部42が幅方向に並んで設けられている。これにより、一対のタービン収容部42における風力タービン70の回転に伴うジャイロ効果によって、車体20の姿勢が保持され易くなる。
【0090】
特に、本実施形態では、一対のタービン収容部42は、車体20の高さ方向から見た平断面にて、車体20の前後方向に沿った中心線Cに対して左右対称とされている。これにより、一対のタービン収容部42において、風力タービン70の回転に伴うジャイロ効果が、車体20の中心線Cに対して左右対称に発生し易くなる。したがって、車両10の安定性がさらに向上する。
【0091】
また、ステップ16は、車体20の幅方向両側にそれぞれ設けられている。ここで、ステップ16は、タービン収容部42の側面42Sにおける幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置している。より具体的には、本実施形態では、ステップ16の全体が、タービン収容部42の側面42Sに設けられた風向ガイド部60のガイド面60Gの後端60G1よりも幅方向内側に位置している。
【0092】
これにより、車両10の走行時に、風向ガイド部60のガイド面60Gに沿って流れた走行風Wが、ステップ16上の乗員の脚(下肢)に当たることが抑制される。したがって、乗員の脚による空気抵抗が低減される。
【0093】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0094】
上記実施形態では、一対の車両用風力発電装置40(タービン収容部42)が、車両10の前後方向に沿った中心線Cに対して左右対称に構成されている。しかし、一対の車両用風力発電装置40(タービン収容部42)は、車両10の中心線Cに対して左右非対称に構成されてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、車体20に一対の車両用風力発電装置40(タービン収容部42)が設けられている。しかし、車体20には、少なくとも1つの車両用風力発電装置40(タービン収容部42)を設けることができる。
【0096】
また、上記実施形態では、車両10が自動二輪車とされている。しかし、車両は、自動二輪車に限らず、自動三輪車でもよい。この場合、車両は、前輪が1つ、後輪が2つの自動三輪車でもよいし、前輪が2つ、後輪が1つの自動三輪車でもよい。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0098】
なお、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0099】
(付記1)
自動二輪車又は自動三輪車の車体と、
収容室と、前記車体の高さ方向に沿った回転軸を中心として前記収容室に回転可能に収容される風力タービンと、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも幅方向外側に位置し、前記収容室内の空気を幅方向外側へ向けて排出する排気口と、を有し、前記車体に設けられるタービン収容部と、
を備える車両。
(付記2)
前記車体には、幅方向に並ぶ一対の前記タービン収容部が設けられる、
付記1に記載の車両。
(付記3)
一対の前記タービン収容部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記車体の前後方向に対して左右対称とされる、
付記2に記載の車両。
(付記4)
前記給気口は、前記タービン収容部の前面に形成され、
前記排気口は、前記タービン収容部の側面に形成される、
付記2又は付記3に記載の車両。
(付記5)
前記タービン収容部の前記側面は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、前記排気口から前方へ向かって幅方向内側へ湾曲し、前記給気口に至る、
付記4に記載の車両。
(付記6)
前記タービン収容部の前記側面における前記排気口の前縁部には、前記側面から突出する風向ガイド部が設けられ、
前記風向ガイド部は、前記車体の高さ方向から見た平断面にて、後方へ向かって幅方向外側へ傾斜又は湾曲するガイド面を有する、
付記4又は付記5に記載の車両。
(付記7)
前記風向ガイド部は、前記排気口の前記前縁部に沿って設けられる、
付記6に記載の車両。
(付記8)
前記車体の幅方向両側にそれぞれ設けられるステップを備え、
前記ステップの少なくとも一部は、前記タービン収容部の前記側面における幅方向の最外端よりも幅方向内側に位置する、
付記4~付記7の何れか1つに記載の車両。
(付記9)
前記車体の前方に配置される前輪と、
前記車体の後方に配置される後輪と、
を備え、
前記タービン収容部は、前記前輪と前記後輪との間に配置される、
付記1~付記8の何れか1つに記載の車両。
(付記10)
前記車体に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機と、
前記車体に設けられ、前記発電機によって発電された電力を蓄電するバッテリと、
を備える付記1~付記9の何れか1つに記載の車両。
【符号の説明】
【0100】
10 車両
12 前輪
14 後輪
16 ステップ
20 車体
42 タービン収容部
42F 前面
42S 側面
50 収容室
54 給気口
58 排気口
58F 前縁部
60 風向ガイド部
60G ガイド面
60G1 後端(タービン収容部の側面における幅方向外側の最外端)
70 風力タービン
72 回転軸
80 発電機
82 バッテリ
矢印X 車体の前後方向
矢印Y 車体の幅方向
矢印Z 車体の高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5