(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006479
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】魚挟み具
(51)【国際特許分類】
A01K 97/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A01K97/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107298
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
(57)【要約】
【課題】魚の胴体を挟む際に、使用者が力を入れ続ける必要がない魚挟み具を提供する。
【解決手段】第1挟み部21及び第2挟み部22を有する挟み機構部2と、前記第1挟み部21と前記第2挟み部22を相対的に接近する方向に付勢する付勢部5と、前記第1挟み部21と前記第2挟み部22を相対的に離反する方向に移動させる操作部4と、を備える魚挟み具1である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1挟み部及び第2挟み部を有する挟み機構部と、
前記第1挟み部と前記第2挟み部を相対的に接近する方向に付勢する付勢部と、
前記第1挟み部と前記第2挟み部を相対的に離反する方向に移動させる操作部と、
を備える魚挟み具。
【請求項2】
前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記離反する方向への移動を阻止するロック機構を備える、請求項1に記載の魚挟み具。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記操作部による前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記離反する方向への移動を許容する、請求項2に記載の魚挟み具。
【請求項4】
前記操作部は、前記離反する方向に対して交差する方向に進退するトリガーを有する、請求項1~3のいずれかに記載の魚挟み具。
【請求項5】
前記操作部は、対向する一対の操作片を有し、前記一対の操作片が接近及び離反するように操作される、請求項1~3のいずれかに記載の魚挟み具。
【請求項6】
前記第1挟み部と前記第2挟み部は、回動して前記接近及び前記離反するように構成されており、
前記操作部は、前記第1挟み部及び前記第2挟み部の前記接近する方向及び前記離反する方向に対し、前記回動の中心となる点を基準とした点対称な方向に操作される、請求項5に記載の魚挟み具。
【請求項7】
前記ロック機構は、ラチェットを有する第1ロック部材と、前記ラチェットに係合する係合爪を有する第2ロック部材と、を備え、
前記第1ロック部材と前記第2ロック部材の組み合わせにより、前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記接近する方向への移動は許容し、前記離反する方向への移動は阻止する、請求項2または3に記載の魚挟み具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りにおいて釣り針を外す場合等に、魚の胴体を挟んで魚を一定位置に保つための魚挟み具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚挟み具として、例えば特許文献1に記載のものがある。これはトング状の形態とされており、使用者(釣り人等)が手で握ることにより魚の胴体を挟むことができる。この魚挟み具は、保管時に用いられるロックを解除した状態では、内蔵されたばねによって一定角度での開き状態となる。魚の胴体を挟む際には、使用者が開き方向へのばね力に抗して握る必要がある。よって、魚の胴体を挟んでいる最中、使用者は握る力を入れ続ける必要があった。このことは、使用者が疲労する原因になりえるため、この魚挟み具は改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、魚の胴体を挟む際に、使用者が力を入れ続ける必要がない魚挟み具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1挟み部及び第2挟み部を有する挟み部と、前記第1挟み部と前記第2挟み部を相対的に接近する方向に付勢する付勢部と、前記第1挟み部と前記第2挟み部を相対的に離反する方向に移動させる操作部と、を備える魚挟み具である。
【0006】
この構成によれば、付勢部により第1挟み部と第2挟み部が接近する方向に付勢されるため、使用者が力を入れ続けなくても魚の胴体を挟むことができる。
【0007】
また、前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記離反する方向への移動を阻止するロック機構を備えるものとできる。
【0008】
この構成によれば、挟み機構部で挟んだ状態の魚が暴れた場合でも、挟み機構部が胴体から外れにくい。
【0009】
また、前記ロック機構は、前記操作部による前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記離反する方向への移動を許容するものとできる。
【0010】
この構成によれば、ロック機構を許容状態とすることで、操作部によって魚を容易に放すことができる。
【0011】
また、前記操作部は、前記離反する方向に対して交差する方向に進退するトリガーを有するものとできる。
【0012】
この構成によれば、使用者が指だけでトリガーを操作できるので、操作が容易である。
【0013】
また、前記操作部は、対向する一対の操作片を有し、前記一対の操作片が接近及び離反するように操作されるものとできる。
【0014】
この構成によれば、入力である操作方向と出力である第1挟み部及び第2挟み部の、接近・離反の移動に関連があるので、使用者は直感的な操作が可能である。
【0015】
また、前記第1挟み部と前記第2挟み部は、回動して前記接近及び前記離反するように構成されており、前記操作部は、前記第1挟み部及び前記第2挟み部の前記接近する方向及び前記離反する方向に対し、前記回動の中心となる点を基準とした点対称な方向に操作されるものとできる。
【0016】
この構成によれば、第1挟み部と第2挟み部が、回動により接近及び離反するように構成されていて、操作部を前記回動基準の点対称の方向で構成できるから、構成を単純化できる。
【0017】
また、前記ロック機構は、ラチェットを有する第1ロック部材と、前記ラチェットに係合する係合爪を有する第2ロック部材と、を備え、前記第1ロック部材と前記第2ロック部材の組み合わせにより、前記第1挟み部と前記第2挟み部の前記接近する方向への移動は許容し、前記離反する方向への移動は阻止するものとできる。
【0018】
この構成によれば、一般的なラチェット機構で、第1挟み部と第2挟み部の離反阻止を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、付勢部により第1挟み部と第2挟み部が接近する方向に付勢されるため、使用者が力を入れ続けなくても魚の胴体を挟むことができる。このため、魚の胴体を挟む際に、使用者が力を入れ続ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る魚挟み具(閉じ状態)を示す斜視図である。
【
図2】前記魚挟み具(開き状態)を示す斜視図である。
【
図3】前記魚挟み具(閉じ状態)を示す縦断面図である。
【
図4】前記魚挟み具(開き状態)を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る魚挟み具を示す側面図であり、(A)は閉じ状態を示し、(B)は開き状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態に係る魚挟み具1を取り上げて説明を行う。まず第1実施形態について説明する。本実施形態の魚挟み具1は、
図1~
図4に示すように、挟み機構部2、動作部3、操作部4、付勢部5、ケース6の各々を備える。なお、以下の説明における方向の表現に関し、前後方向は、使用時に使用者から見て魚に近い方を「前方」とし、魚から遠い側を「後方」とする。また、上下左右方向も、
図1~
図4に示した状態での使用時に、使用者から見た場合の方向とする。なお、この方向はあくまでも各部の説明のためのものであって、この魚挟み具1は、例えば挟み機構部2を横倒しの状態としたり、ケース6よりも挟み機構部2が下方に位置するようにして用いたりすることが、当然可能である。挟み機構部2、動作部3の一部(第1支持部31、第2支持部32)、操作部4の一部(トリガー42)は、
図1及び
図2に示すようにケース6の外部に露出している。ケース6は例えば樹脂製の中空体であって、外周に使用者が手で掴むことができる把持部61を有している。
【0022】
挟み機構部2は、対向していて接近・離反するように移動する第1挟み部21及び第2挟み部22の二部材を一対に有する。第1挟み部21と第2挟み部22は、相対的に接近及び離反する(相互に接近する方向または離反する方向に移動する)ように構成されている。より詳しくは、回動して接近及び離反するように構成されている。
図1は、第1挟み部21と第2挟み部22が接近することにより挟み機構部2が閉じた状態を示す。また
図2は、第1挟み部21と第2挟み部22が離反することにより挟み機構部2が開いた状態を示す。前記回動は、挟み機構部2の後方において左右方向に延びる仮想軸を基準になされる。このため挟み機構部2は、前部が後部に比べて第1挟み部21と第2挟み部22の間隔が大きくなるように開く。
【0023】
第1挟み部21及び第2挟み部22の各々は、両者が対向する側に内端部211,221を有している。第1挟み部21及び第2挟み部22における内端部211,221はそれぞれ20mm以上の前後長さを有し、その全体または一部が魚の胴体に接することで、魚を魚挟み具1に対して保持できる。本実施形態の内端部211,221には、側方視にて僅かに凹状に湾曲した基部に複数の三角形状の歯が形成されており、歯の先端が胴体に食い込むことで、挟んだ魚をずらさないようにできる。この食い込みは、内端部211,221における前後方向の中央寄りで長さを有する範囲において主になされ、これに加え、前後方向の端の範囲でなされてもよい。本実施形態の歯は、前方が斜辺である直角三角形状とされている。このため、魚の胴体が前方にずれてしまうことを有効に抑制できる。また本実施形態では、各挟み部21,22にて、左右2列で複数の歯が形成されているが(
図2参照)、歯の配置形態は特に限定されるものではない。第1挟み部21及び第2挟み部22における内端部211,221の前後長さと曲率は、挟む対象として想定される魚の大きさ、及び胴体の形状(丸み)に応じて適宜設定できる。
【0024】
動作部3は、第1挟み部21及び第2挟み部22の各々に接続されていて、第1挟み部21及び第2挟み部22を接近及び離反させるため、操作部4が操作されることにより、また、付勢部5の付勢により動作する。動作部3は、第1挟み部21の後方に接続されている。接続は固定的な接続である(第2挟み部22に関しても同じ)。動作部3は、第1支持部31、第2支持部32、リンク部33の各々、及び、前記各部の動作範囲を規定するための複数の支軸34,37、及び、複数の連結軸35,36,38が設けられている。
【0025】
第1支持部31及び第2支持部32は細長い形状の板状体である。第1支持部31のうち前端部は第2支持部32の上側に位置している。第1支持部31は、前後方向に沿って上側に向けて湾曲した形状であり、前端部に第1挟み部21が固定されている。第2支持部32は、前後方向に沿って下側に向けて湾曲した形状であり、前端部に第2挟み部22が固定されている。第1支持部31と第2支持部32とは前後方向の途中(第1連結軸35の位置)で上下交差している。
【0026】
ケース6における前側上部に第1支軸34が設けられている。第1支軸34は左右方向に延びている。第2支持部32の後端部は、第1支軸34に回動可能に支持されている。第2支持部32は、第1支軸34を中心として回動する。挟み機構部2の閉じ状態において、第2支持部32の前端部は第1支軸34に対して前側かつ下側に位置している。
【0027】
第1支持部31と第2支持部32は、第1連結軸35により互いに連結されている。第1連結軸35は左右方向に延びている。第1支持部31は、第2支持部32に第1連結軸35を介して回動可能に連結されており、第1支持部31は、第1連結軸35を中心として回動する。第1連結軸35はケース6に固定されておらずケース6に対して移動できる。第1連結軸35は、第2支持部32と一体に、第1支軸34を中心として回動する。第1連結軸35は、第2支持部32の後端部と前端部との間に位置し、第1支軸34と第2支持部32の前端部との間に位置している。第1連結軸35は、第1支持部31の後端部と前端部との間に位置している。挟み機構部2の閉じ状態において、第1連結軸35は、第1支軸34に対して前側かつ下側に位置している。第1支持部31は、第1連結軸35を中心として、
図3、
図4上で時計回りに回動しながら開く。
【0028】
リンク部33は、第1支持部31と操作部4にそれぞれ回動可能に連結された、細長い板状体である。第1支持部31とリンク部33は、第2連結軸36により互いに連結されている。第1支持部31の後端部とリンク部33の前端部とが第2連結軸36によって回動可能に連結されている。第2連結軸36はケース6に固定されておらずケース6に対して移動できる。第2連結軸36は左右方向に延びている。第2連結軸36は、第1支軸34と前後方向の位置が略同じであって、第1支軸34の下方に位置している。第2連結軸36は、挟み機構部2の閉じ状態において、第1連結軸35よりも後側かつ下側に位置している。
【0029】
ケース6における後部に第2支軸37が設けられている。第2支軸37は左右方向に延びている。第2支軸37は、第1支軸34よりも後側かつ下側に位置している。リンク部33は前後方向に長い形状である。リンク部33の後端部が第2支軸37に回動可能に支持されている。リンク部33は、第2支軸37を中心として上下方向に回動する。リンク部33は、挟み機構部2の閉じ状態から開き状態にかけて第2支軸37を中心として、
図3、
図4上で反時計回りに回動する。
【0030】
操作部4は、ケース6に対してスライド可能である。操作部4のスライド方向は前後方向である。操作部4は、第1支持部31及び第2支持部32に対して接近離反する方向にスライドする。操作部4は、前後方向に長い形状のスライダ41と、このスライダ41の後部下面から下方に突出するトリガー42とを有している。スライダ41は前後方向に延びるガイド孔411(
図4参照)を有している。ガイド孔411はスライダ41を左右方向に貫通する貫通孔である。ガイド孔411を第2支軸37が貫通している。
【0031】
トリガー42は、第1挟み部21と第2挟み部22が離反する方向に対して交差する方向に進退する。使用者は、トリガー42の前面に指を掛けて引く操作を行う。トリガー42は、初期位置から一対の挟み部(第1挟み部21、第2挟み部22)の移動方向と交差する方向に引き操作可能である。使用者が指だけでトリガーを操作できるので、操作部の操作が容易である。トリガー42には例えば把持部61を把持する使用者の手の人差し指等が引っ掛けられる。ケース6は、後側下部に、左右方向に貫通した指挿入孔43を有している。指挿入孔43にトリガー42が上側から突出している。ケース6は、指挿入孔43の前方、下方、後方の三方を包囲するトリガーガード44を備えている。
【0032】
付勢部5は、例えばコイルバネ(圧縮バネ)が用いられる。付勢部5は、操作部4を前方に付勢している。この付勢は常時なされている。このため、トリガー42は前記初期位置に向けて付勢されていて、使用者がトリガー42から指を外すと、トリガー42は前記初期位置に戻る。付勢部5が操作部4を前側に付勢することにより、第1支持部31に接続された第1挟み部21、及び、第2支持部32に接続された第2挟み部22の各々は、閉じ側に付勢される。つまり付勢部5は、第1挟み部21と第2挟み部22を接近する方向に付勢する。この付勢部5により第1挟み部21と第2挟み部22が接近する方向(挟み機構部2の閉じ方向)に付勢されるため、使用者が力を入れ続けなくても、挟み機構部2で魚の胴体を挟むことができる。
【0033】
操作部4とリンク部33は、第3連結軸38により互いに連結されている。第3連結軸38は、スライダ41の前端部に固定されている。第3連結軸38は左右方向に延びている。第3連結軸38はスライダ41を左右方向に貫通している。ケース6は、左右一対であって、各々が前後方向に延びるガイド溝62を有している。第3連結軸38の両端部はそれぞれ左右のガイド溝62に位置しており、第3連結軸38は左右のガイド溝62に案内されながら前後方向にスライドする。第3連結軸38がガイド溝をスライドすることにより、操作部4が前後にスライドする。第3連結軸38はスライダ41と一体であることから、第3連結軸38のスライドと操作部4のスライドは連動する関係である。
【0034】
リンク部33の前後方向の中間部には、長孔331が形成されている。この長孔331に第3連結軸38が位置している。第3連結軸38は長孔331に沿って移動する。長孔331は、前後方向に対して傾斜した方向に延びている。長孔331の前端部は後端部に比して下側に位置している。操作部4の後側へのスライドに伴って第3連結軸38が後側にスライドすると、第3連結軸38がリンク部33を、第2支軸37を中心として
図3、
図4上で反時計回りに回動させる。
【0035】
第1支持部31に接続された第1挟み部21、及び、第2支持部32に接続された第2挟み部22は、操作部4のトリガー42を後側に引くことにより、
図1及び
図3に示す閉じ状態から
図2及び
図4に示す開き状態まで開いていく。つまり、操作部は、第1挟み部21と第2挟み部22を相対的に離反する方向に移動させる。
【0036】
魚挟み具1は、第1挟み部21と第2挟み部22の離反する方向への移動を阻止するロック機構7を備える。本実施形態では、操作部4(詳しくは第3連結軸38)とリンク部33(詳しくは長孔331)により構成されたカム機構がロック機構7として機能する。第3連結軸38はスライダ41に固定されているため、前後方向のスライドしかできない。さらに付勢部5はスライダ41を前方に付勢している。このような状況下では、使用者によるトリガー42の引き操作により生じるスライダ41のスライド動作は、動作部3を介して挟み機構部2に伝達される。しかし、魚が暴れること等による外力で、挟み機構部2に開き方向の力がかかった場合、この外力が第1挟み部21から第2支軸37を介してリンク部33に伝達される。このように外力が伝達されたリンク部33は、前部が下方に移動しようとする。しかし、第3連結軸38がリンク部33に設けられた長孔331に対して引っ掛かってしまうので、リンク部33の前記下方への移動は阻止されて動かないことから、外力を受けて、使用者が意図していないのに挟み機構部2が開くことが防止される。
【0037】
このように機能するロック機構7により、挟み機構部2で挟んだ状態の魚が暴れた場合でも、挟み機構部2が胴体から外れにくい。また、ロック機構7は、操作部4による第1挟み部21と第2挟み部22の離反する方向への移動を許容する。ロック機構7を許容状態とすることで、操作部4が使用者によって操作されることにより、魚挟み具1から魚を容易に放すことができる。
【0038】
以上のように構成された魚挟み具1では、魚の所定の場所をねらって第1挟み部21及び第2挟み部22を動かす必要がなく、開き状態の挟み機構部2を胴体のように挟みやすい部位に向けて動かし、手の力を抜くだけで魚を挟むことができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、前記第1実施形態ではトリガーに応じて挟み機構部2の開き操作を行うものとしたが、例えばペンチやプライヤーのような、使用者の手による握り操作に応じて挟み機構部2の開き操作を行うものとして構成することもできる。この第2実施形態について、以下に説明する。なお、第1実施形態と機能上共通する部分については、同一の名称及び符号を用いて説明を行う。
【0041】
図5(A)(B)は第2実施形態の構成を簡略的に示している。第2実施形態の魚挟み具1は、一対の可動片81,82から構成されている。操作部4は、対向する一対の操作片45,46を有している。各操作片45,46は各可動片81,82のうち後部である。挟み機構部2は両可動片81,82の前部である。つまり、挟み機構部2は両操作片45,46の前方に連続して設けられている。一対の操作片45,46のうち一方側操作片45の前方延長位置に第1挟み部21が設けられており、他方側操作片46の前方延長位置に第2挟み部22が設けられている。
【0042】
この一対の操作片45,46は使用者が手で握ることによって、接近及び離反するように操作される。第2実施形態では、入力である操作部4の操作方向と出力である第1挟み部21及び第2挟み部22の、接近・離反の移動に関連がある。つまり、
図5(B)に示すように、使用者の操作により一対の操作片45,46を接近させた場合、第1挟み部21と第2挟み部22は離反し、
図5(A)に示すように、付勢部5の付勢により一対の操作片45,46が離反した状態に戻った場合、第1挟み部21と第2挟み部22は接近する。このため、使用者は直感的な操作が可能である。
【0043】
一対の操作片45,46の間には付勢部5としてのバネが設けられている。このバネには、例えばコイルバネ(圧縮バネ)が用いられていて、
図5(A)に示すように、常時閉じ方向に一対の操作片45,46を付勢しており、これに応じて挟み機構部2は閉じ状態となっている。
【0044】
第1挟み部21と第2挟み部22は、
図5(A)(B)に示すように、回動して接近及び離反するように構成されている。操作部4は、第1挟み部21及び第2挟み部22の接近する方向及び離反する方向に対し、前記回動の中心となる点Cを基準とした点対称な方向に操作される。具体的には、使用者が操作部4を握ると、
図5(B)に示すように、第1挟み部21と第2挟み部22が離反し、使用者が操作部4を握る力を緩めると、
図5(A)に示すように、第1挟み部21と第2挟み部22が接近する。このように、第1挟み部21と第2挟み部22が、操作部4を回動基準の点対称の方向で構成できるから、構成を単純化できる。
【0045】
ロック機構7は、複数の歯からなるラチェット711を有する第1ロック部材71と、ラチェット711の歯に係合する係合爪721を有する第2ロック部材72と、を備える。第1ロック部材71においてラチェット711を構成する複数の歯は、個々の形状が図示のような片傾斜の三角形状とされており、一方側可動片81の全周に設けられている。第2ロック部材72は、一方側可動片81に対して所定範囲で回動可能に設けられている。第2ロック部材72の係合爪721は、第1ロック部材71のラチェット711に対し、爪用バネ73により押し付けられている。このため、係合爪721に対するラチェット711の移動は、周方向の一方向(
図5(B)の例では反時計回り)は許容されるが、他方向(
図5(B)の例では時計回り)は阻止される。ラチェット711に対する係合爪721の係合状態は、
図5(A)に示すように、第2ロック部材72の後部を一方側可動片81に押し込むことで解除可能である。
【0046】
この第2実施形態では、第1ロック部材71と第2ロック部材72の組み合わせにより、第1挟み部21と第2挟み部22の接近する方向への移動は許容し、離反する方向への移動は阻止する。この構成により、一般的なラチェット機構を用いつつ、第1挟み部21と第2挟み部22の離反阻止を実現できる。以上が第2実施形態に関する説明である。
【0047】
また、その他実施形態の変更可能性として、挟み機構部2は、専ら魚の胴体を挟めればよいため、閉じ状態において、第1挟み部21と第2挟み部22の前端同士が密着した状態にならず、閉じ状態でも第1挟み部21と第2挟み部22の間に隙間を保つよう構成することもできる。
【0048】
また、第1及び第2実施形態では、第1挟み部21、第2挟み部22の両方がケース6に対して移動するように構成されていた。しかし、第1挟み部21と第2挟み部22は、相対的に接近及び離反するものであってよい。このため例えば、第1挟み部21、第2挟み部22の一方がケース6等に対して固定的に設けられており、他方だけがケース6等に対して移動する構成とすることもできる。
【0049】
また、第1及び第2実施形態では、第1挟み部21及び第2挟み部22の内端部211,221が前後方向にわずかに湾曲して延びていた。しかしこれに限定されず、第1挟み部21、第2挟み部22の一方または両方の内端部211,221につき、直線状であってもよい。湾曲の度合は、挟む対象として想定される魚の胴体の形状(例えば大型の魚であるか、小型の魚であるか、平たい胴体か丸みを帯びた胴体か等)に応じて適宜設定できる。
【0050】
また、第1及び第2実施形態の挟み機構部2は、前部が後部に比べて第1挟み部21と第2挟み部22の間隔が大きくなるように開くよう構成されていた。しかしこれに限定されず、前部と後部で第1挟み部21と第2挟み部22の間隔が等しいまま(つまり、内端部211,221が平行なまま)開くよう構成されていてもよい。このような開閉は、挟み機構部2または動作部3にリンクやギアを付加することで実現できる。
【0051】
また、第1実施形態では、挟み機構部2は動作部3とは別体に構成されていて、両者が連結された関係とされていたが、両者が一体不可分に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 魚挟み具
2 挟み機構部
21 第1挟み部
22 第2挟み部
3 動作部
4 操作部
42 トリガー
45 一方側操作片
46 他方側操作片
5 付勢部
6 ケース
7 ロック機構