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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006494
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】エンジンの検油装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/12 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F01M11/12 A
F01M11/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107318
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏介
(72)【発明者】
【氏名】川添 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 達介
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 利裕
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 謙吾
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BL02
3G015CA06
3G015DA01
3G015DA02
3G015DA07
3G015EA04
3G015EA11
3G015FC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガイドパイプの斜め上方向に沿ってオイルゲージを挿脱することができると共に、オイルゲージが慣性力によってガイドパイプから抜けるのを防止することができる、エンジンの検油装置を提供する。
【解決手段】サポートパイプ52はクランクケース1のサポートパイプ挿通孔51に挿通され、ガイドパイプ53の下端に内嵌部53Aを備え、この内嵌部53Aがサポートパイプ52の上端部に内嵌固定され、この内嵌部53Aの内周に突条54が周設され、ガイドパイプ53の中間部に湾曲部を備え、湾曲部によりガイドパイプ53の上側部がクランクケース1から離れる向きに上り傾斜すると共に、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部と突条54とサポートパイプ52の各内周面に接触するように構成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルゲージ30と、オイルパン8内のエンジンオイルEOにオイルゲージ30を案内するガイドパイプ53と、ガイドパイプ53をクランクケース1に支持するサポートパイプ52を備え、
サポートパイプ52はクランクケース1のサポートパイプ挿通孔51に挿通され、
ガイドパイプ53の下端に内嵌部53Aを備え、この内嵌部53Aがサポートパイプ52の上端部に内嵌固定され、この内嵌部53Aの内周に突条54が周設され、ガイドパイプ53の中間部に湾曲部53cを備え、
湾曲部53cによりガイドパイプ53の上側部がクランクケース1から離れる向きに上り傾斜すると共に、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部53cと突条54とサポートパイプ52の各内周面に接触するように構成されている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンの検油装置において、
サポートパイプ52の下端部に、その内径が下向きに次第に縮径するテーパ部52Dを備えている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたエンジンの検油装置において、
ガイドパイプ53の内嵌部53Aは拡径され、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、拡径された内嵌部53Aにその上側で隣接するガイドパイプ53の非拡径部53Aaにも接触するように構成されている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたエンジンの検油装置において、
突条54の外周に凹状溝54aが周設され、この凹状溝54aにOリング54bが内嵌され、このOリング54bで、ガイドパイプ53の内嵌部53Aとサポートパイプ52の間のパイプ間隙間54cが密封されている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたエンジンの検油装置において、
サポートパイプ52の上端部52aは、クランクケース1のサポートパイプ挿通孔51の上縁部51aから上方に離間dしている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの検油装置に関し、詳しくは、ガイドパイプの斜め上方向に沿ってオイルゲージを挿脱することができると共に、オイルゲージが慣性力によってガイドパイプから抜けるのを防止することができる、エンジンの検油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルゲージと、オイルパン内のエンジンオイルにオイルゲージを案内するガイドパイプを備えたエンジンの検油装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-51948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点1》 ガイドパイプの斜め上方向に沿ってオイルゲージを挿脱することができない。
車両のエンジン搭載条件により、ガイドパイプの斜め上にしか検油装置へのアクセス経路がない場合があり、ガイドパイプの斜め上からアクセスして、ガイドパイプの斜め上方向に沿ってオイルゲージを挿脱することができない状況がある。
《問題点2》 オイルゲージが慣性力によってガイドパイプから抜けることがある。
問題点1を解決するため、オイルゲージ全体を斜め上向きに傾斜させると、エンジンを搭載した車両の制動時に、オイルゲージが慣性力によってガイドパイプから抜けることがある。
【0005】
本発明の課題は、ガイドパイプの斜め上方向に沿ってオイルゲージを挿脱することができると共に、オイルゲージが慣性力によってガイドパイプから抜けるのを防止することができる、エンジンの検油装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図11に例示するように、オイルゲージ30と、オイルパン8内のエンジンオイルEOにオイルゲージ30を案内するガイドパイプ53と、ガイドパイプ53をクランクケース1に支持するサポートパイプ52を備え、
サポートパイプ52はクランクケース1のサポートパイプ挿通孔51に挿通され、
ガイドパイプ53の下端に内嵌部53Aを備え、この内嵌部53Aがサポートパイプ52の上端部に内嵌固定され、この内嵌部53Aの内周に突条54が周設され、ガイドパイプ53の中間部に湾曲部53cを備え、
図11に例示するように、湾曲部53cによりガイドパイプ53の上側部がクランクケース1から離れる向きに上り傾斜すると共に、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部53cと突条54とサポートパイプ52の各内周面に接触するように構成されている、ことを特徴とするエンジンの検油装置。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果1》 ガイドパイプ53の斜め上方向に沿ってオイルゲージ30を挿脱することができる。
エンジン搭載環境により、ガイドパイプ53の斜め上にしか検油装置へのアクセス経路がない場合でも、この検油装置では、ガイドパイプ53の斜め上からアクセスし、ガイドパイプ53の斜め上方向に沿ってオイルゲージ30を挿脱することができる。
《効果2》オイルゲージ30が慣性力によってガイドパイプ53から抜け出るのを防止することができる。
図11に例示するように、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部53cと突条54とサポートパイプ52の各内周面の3箇所に接触するため、オイルゲージ30の抜き方向の抵抗が大きく、エンジンを搭載した車両の制動時に、オイルゲージ30が慣性力によってガイドパイプ53から抜け出るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る多目的四輪車を前方上方から見た斜視図である。
図2図1の多目的四輪車に搭載するエンジンとその周辺部の説明図で、図2(A)は側面図、図2(B)は背面図である。
図3図2のエンジンの側面図である。
図4図2のエンジンの背面図である。
図5】吸気マニホルドとその周辺部の斜視図である。
図6図5の背面図である。
図7図5の吸気マニホルドの下部支持構造を説明する図で、図7(A)は要部の断面図、図7(B)は要部の分解斜視図である。
図8図5の下部支持構造を説明する図で、図8(A)は要部の背面図、図8(B)は要部の斜視図である。
図9図1の多目的四輪車に搭載するエンジンに用いる吸気マニホルドの横断平面図である。
図10図9の吸気マニホルドの縦断背面を示す斜視図である。
図11図1の多目的四輪車に搭載するエンジンに用いる検油装置の縦断側面図である。
図12図11の検油装置とその周辺部の斜視図である。
図13図12の検油装置の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図13は本発明の実施形態に係る多目的四輪車とこれに搭載するエンジンや変速装置を説明する図で、この実施形態では傾斜形の4サイクル直列2気筒ディーゼルエンジンやCTVを搭載した多目的四輪車について説明する。
【0010】
図1にオフロード用の多目的四輪車Vが示されており、図2に示すように、エンジンEは、クランク軸1Aが横向きとなる横置きで配置されている。
この実施形態では、図4に示すように、クランク軸心Cの軸長方向を左右方向、図3に示すように、左右方向と直交する水平方向を前後方向、前後方向の車両前進側を前側、その反対側を後側として説明する。
図1に示すように、この多目的四輪車Vは、左右一対の前輪31,31と、左右一対の後輪32,32と、フロントボンネット33と、搭乗部34と、後側の荷台(カーゴ)35とを備えている。パイプ材34pで囲まれた搭乗部34には、左右一対の座席(搭乗シート)34A・34Aが配置されている。図1中の符号34sは座席34Aの背凭れ、符号36は操向ハンドル、符号37は開閉ドアである。
【0011】
図2(A)(B)に多目的四輪車Vに搭載するエンジンEとその周辺部が示されており、図2(A)に示すように、座席34Aの後で、かつ、荷台35の前部下方にエンジンE及び変速装置2Aが配置されている。座席34Aは、シート座34bと、背凭れ34sとが、後倒れ斜め姿勢の支持フレーム部38で支持されて構成され、支持フレーム部38のすぐ後で、かつ、図2(B)に示すように、左右方向でやや右寄りとなる中央部の位置にエンジンEが設けられている。
【0012】
図2(A)に示すように、エンジンEは、ピストン(図示せず)移動方向がやや後倒れする姿勢で機体フレーム(図示省略)に搭載されており、エンジンEのクランクケース1の後に変速装置2Aが配置されている。この変速装置2Aは、CVT(Continuously Variable Transmission)で、その後側にデフ(差動装置)3が設けられている。デフ3から左右に後車軸4が延びており、図2(A)に示すように、荷台35の底板35eとデフケース3Aとを連結する支持連結部材39が架設されている。
【0013】
図2(B)に示すように、座席34Aを支持する支持フレーム部38は、左右の側板38a,38aと、これらの間の背板38bを有し、図2(A)に示すように、背板38bの上部は背凭れ34sを支える縦枠部38cとなっている。
図2(A)に示すように、荷台35は、前板35a、左右の側板35b、35c、後板(あおり板)35d、及び底板35eを備え、車体の後部に配置されたエンジンEの直上に装備されている。
【0014】
図2(A)に示すように、このエンジンは横置きの傾斜形エンジンで、図3に示すように、クランク軸心Cと平行な向きに見て、ピストン移動軸線Pが垂線に対し角度θで後方に傾けて搭載されており、クランクケース1と、シリンダ5と、シリンダヘッド6と、ヘッドカバー7とを有している。図3に示すエンジンEの全長(エンジン前後長寸法)L、全高(エンジン高)T、図4に示す全幅(エンジン幅)Wは、従来型のエンジンに比べてコンパクト化されている。
【0015】
図2(A)に示すように、クランクケース1の下にはオイルパン8が組付けられ、シリンダヘッド6の後側(吸気側)には吸気マニホルド9が組付けられている。エンジンEの出力は、クランクケース1の後方に配置された変速装置2Aで変速され、それからデフ3を経て左右の後車軸4,4及び後輪32,32(図1参照)に伝達される。なお、クランクケース1の前側には、オイルゲージ30を備えた検油装置が、前斜め上方に向く姿勢で装備されている。
【0016】
図9に示す吸気マニホルド9は合成樹脂製で、一対の枝管部9a,9bを備えるマニホルド前部9Aと、マニホルド前部9Aの後に続くマニホルド後部9Bとを有している。
図5に示すように、マニホルド前部9Aの前端部が弾性を備えたインシュレータ10を介してシリンダヘッド6に弾性支持され、マニホルド後部9Bの下部に設けられた被支持部15が変速装置2Aのハウジング2Aaに支持されている。
【0017】
図5に示すように、各枝管部9a,9b(枝管部9bについては図9参照)の上部には、燃料インジェクタ11が前方下方に向く姿勢で装備されるとともに、マニホルド後部9Bの右側壁40fにはスロットルボディ12が取付けられている。 吸気マニホルド9は、その後部の右側に横向きに開口する状態の吸気入口9iを備え、前端(各枝管部9a,9bの前端)に2カ所の吸気出口部9dを備えている。
図9に示すように、スロットルボディ12は、ベンチュリ部12aと、スロットルバルブ12bと、バルブアクチュエータ12cを備えている。
【0018】
このエンジンの主要な要素である、吸気マニホルド9の支持構造、この吸気マニホルド9のコレクタ部40の内部構造と外壁構造、吸気マニホルド9を用いるエンジン機種、エンジンの検油装置について説明する。
【0019】
吸気マニホルド9の支持構造は、次の通りである。
図5に示すように、吸気マニホルド9の支持構造は、シリンダヘッド6と、固定構造体2を含み、吸気マニホルド9を支持するものである。
前記の通り、図4に示すクランク軸心Cの軸長方向を左右方向、図3に示すように、左右方向と直交する水平方向を前後方向、前後方向の一方側(車両前進側)を前側とする。
図5に示すように、吸気マニホルド9は、合成樹脂製のコレクタ部40と、コレクタ部40から前側に導出された複数の枝管部9a・9b(枝管部9bについては図9参照)を備え、各枝管部9a・9bの前端側の吸気出口部9dがシリンダヘッド6に支持され、コレクタ部40は固定構造体2に支持されている。
図5に示すように、合成樹脂製のコレクタ部40の左右一端側であって、固定構造体2による支持側とは反対側にスロットルボディ12が取り付けられている。
【0020】
図5に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造によれば、コレクタ部40の左右一端側にスロットルボディ12が取り付けられるので、図3に示すように、エンジン前後長寸法Lが短く維持される。
図5に示すように、コレクタ部40は固定構造体2に支持され、吸気マニホルド9が前後両持ち支持の状態になるため、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が軽減される。
図5に示すように、シリンダヘッド6から後側に離れたコレクタ部40が軽量な合成樹脂製であるため、コレクタ部40の上下動による回転モーメントが小さくなり、この点でも、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が軽減される。
通常コレクタ部40の後側に配置されていた比較的高重量のスロットルボディ12がコレクタ部40の左右一方側に取り付けられるため、コレクタ部40の後側に取り付けられる場合に比べ、スロットルボディ12の上下動による回転モーメントが小さくなり、この点でも、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が軽減される。
【0021】
この吸気マニホルド9の支持構造では、前記の支持構造に加え、図7(B)に示すように、コレクタ部40は同一の二等辺三角形に形成される一対の連結板17・17を介して固定構造体2に弾性支持されている。
この発明の二等辺三角形には、3個の頂点がエッジである幾何学的二等辺三角形の他、3個の頂点部分が円弧状や他の形状で、2辺に挟まれた2つの挟角が等しい、幾何学的二等辺三角形と類似的な形状(以下、「類似的二等辺三角形」という)も含まれる。
図5に示すように、コレクタ部40は一対の連結板17・17を介して固定構造体に弾性支持され、吸気マニホルド9が前後両持ち支持の状態になるため、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が軽減される。
また、コレクタ部40は固定構造体2に弾性支持されているため、コレクタ部40と比較的高重量のスロットルボディ12の上下の振動が軽減され、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が軽減される。
【0022】
図5に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、スロットルボディ12は吸気配管14を介して固定構造物12Bに支持され、吸気配管14に弾性を備えた可撓性パイプ14Aが用いられている。
固定構造物12Bには、車両の機体フレームが用いられているが、固定構造物12Bは、車両に搭載された装置であってもよい。
【0023】
図5に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造によれば、可撓性パイプ14Aを介して吸気マニホルド9の後側が弾性支持されるため、スロットルボディ12の上下の振動が軽減され、吸気マニホルド9の前側の支持の負担が一層軽減される。
【0024】
図3に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、吸気マニホルド9の下方に固定構造体2が配置され、コレクタ部40はその下部に被支持部15を備え、固定構造体2はその上側から上向きに突出する支持部16を備え、この固定構造体2の支持部16にコレクタ部40の被支持部15が支持されている。
図3に示すように、このの吸気マニホルド9の支持構造によれば、吸気マニホルド9の下方空間が固定構造体2の配置空間として有効利用される。
【0025】
図8(A)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、固定構造体2がハウジング2Aaの分割合わせ面28Aを備え、固定構造体2の支持部16が分割合わせ面28Aに沿ってハウジング2Aaから突出している。
図8(A)に示すこの吸気マニホルド9の支持構造によれば、金型によるハウジング2Aaの成型時に支持部16を同時に形成できる。
この固定構造体2は、変速装置2Aで、そのハウジング2Aaは、左ハウジング部27と右ハウジング部28に分割され、分割合わせ面28Aで合わされ、支持部16は、右ハウジング部28に形成されている。
【0026】
図8(A)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、固定構造体2は支持部16を備え、この支持部16とコレクタ部40の被支持部15が弾性連結体Sを介して連結されている。
図8(B)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造によれば、弾性連結体Sの介在により、支持部16に被支持部15を直接に連結する場合に比べ、支持部16と被支持部15が短くなり、これらの剛性が高まるため、支持部16と被支持部15の耐久性が向上する。
【0027】
図7(A)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、弾性連結体Sは、支持部16と被支持部15を両側から挟む一対の連結板17・17と、この一対の連結板17・17を支持部16と被支持部15に取り付ける一対の締結具18・19と、支持部16と被支持部15のいずれかに取り付けられるノックピン20を備え、ノックピン20は、一対の連結板17・17に挿通され、一対の締結具18・19の少なくとも一方の締結具18に弾性カラー23・23が装着され、一対の締結具18・19とノックピン20で位置決めされた弾性カラー23・23を介して固定構造体2の支持部16にコレクタ部40の被支持部15が弾性支持されている。
この吸気マニホルド9の支持構造によれば、簡易な構造の弾性連結体Sで固定構造体2に吸気マニホルド9を弾性支持させることができる。
【0028】
図7(B)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造では、一対の連結板17・17は、それぞれノックピン20を挿通するノックピン挿通孔20aと、一対の締結具18・19(締結具18は図7(A)参照)を挿通する締結具挿通孔18a・19aを備えると共に、ノックピン挿通孔20aを径方向に横断する仮想対称軸20bに対して、線対称形状で、一対の締結具挿通孔18a・19aが線対称位置に配置されるように構成されている。
この一対の連結板17・17は3個の頂点が円弧状の類似的二等辺三角形であり、金属板で構成されている。
図7(B)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造によれば、連結板17・17は、表裏いずれの向きでも組み付け形状が一致すると共に、ノックピン挿通孔20aと一対の締結具挿通孔18a・19aの相対位置が一致するため、連結板17・17の表裏確認が不要になり、連結板17・17の取付作業が容易になる。
【0029】
図7(B)に示すように、各連結板17・17の頂角部17aにノックピン挿通孔20aが設けられ、頂角部17aと角度が異なる一対の底角部17b・17bに一対の締結具挿通孔18a・19aが設けられている。
図7(B)に示すように、この吸気マニホルド9の支持構造によれば、連結板17・17の取付作業時に、角部の角度の相違を確認するだけで、ノックピン挿通孔20aが設けられた頂角部17aと締結具挿通孔18a・19aが設けられた底角部17b・17bを識別でき、連結板17・17の取付姿勢を確認できるため、連結板17・17の取付作業が一層容易になる。
【0030】
図7(A)に示すように、左右の連結板17・17の間に挟まれる支持部16のボス部16Aと各連結板17・17とは、ボス部16Aに形成されているボス孔16a及び各連結板17・17の締結具挿通孔19a・19aに挿通される第1の締結具19を構成する第1ボルト25及び第1ナット26によりリジッドに締付固定されている。各連結板17・17の第1ボルト25回りの姿勢は、支持部16から左右に突出したノックピン20の両端部20p・20pと、図7(B)に示す各連結板17・17のノックピン挿通孔20a・20aとの嵌合により定められている。
【0031】
図7(A)に示すように、被支持部15の通し孔15aには、左右の両側にゴムなどの可撓性を有する材料製の弾性カラー23・23が内嵌され、弾性カラー23,23のボス部23b・23bには金属製のスペーサ24が内嵌されている。そして、左右の連結板17・17の間にスペーサ24を挟んだ状態で、各連結板17・17の締結具挿通孔18a・18a及びスペーサ24の内孔24aに通される第2の締結具18を構成する第2ボルト21及び第2ナット22により締付固定されている。
【0032】
図7(A)に示すように、弾性カラー23は、筒状のボス部23bと円板状のフランジ部23aと有して断面L字形状をなしており、第2ボルト21と第2ナット22で締付けられた組付け状態では、左右のフランジ部23a・23aが若干左右に圧縮されている。従って、吸気マニホルド9は変速装置2Aのハウジング2Aaに弾性支持された状態になっている。なお、被支持部15にリジッド固定される連結板17・17を、支持部16に弾性支持状態で取付ける構成としてもよい。
【0033】
次に、吸気マニホルド9のコレクタ部40の内部構造について説明する。
図9に示すように、吸気マニホルド9は、コレクタ部40と、コレクタ部40から導出された複数の枝管部9a・9bを備えている。
コレクタ部40の長手方向を左右方向として、コレクタ部40の左右一端側にスロットル連通口41が開口されている。
枝管部9a・9bは、コレクタ部40の内部空間40Sに臨むタンク側開口部9aa・9baを備えている。
図9に示すように、コレクタ部40は、スロットル連通口41と、スロットル連通口41に近い枝管部9bのタンク側開口部9baの境界に境界壁45を備え、この境界壁45は、コレクタ部40の内部空間40Sに向けて突出する内向き突出部45aを備えている。
【0034】
図5に示すように、このコレクタ部40によれば、コレクタ部40の左右一端側にスロットル連通口41が開口され、ここにスロットルボディ12が接続されるので、図3に示すように、エンジン前後長寸法Lが短く維持される。
また、このコレクタ部40の内部構造によれば、各気筒の吸気量が均等化される。その理由は、次のように推定される。
図9に示す内向き突出部45aの吸気抵抗により、吸気量が多くなり易いスロットル連通口41に近い気筒への吸気供給が邪魔され、この気筒への供給に用いられなかった吸気が、吸気量が少なくなり易い遠い気筒に供給され、各気筒の吸気量が均等化される。
【0035】
図9に示すように、このコレクタ部40の内部構造では、内向き突出部45aの内面は、内向き突状の円弧面45aaで形成されている。
このコレクタ部40の内部構造によれば、図9に示す内向き突状の円弧面45aaにより、吸気に乱流が発生し難く、各気筒への吸気供給が乱流によって妨げられ難い。
【0036】
次に、コレクタ部40の外壁構造について説明する。
図9に示すように、このコレクタ部40の外壁構造では、コレクタ部40の左右両端壁のうち、スロットル連通口41のある端壁と反対側の反スロットル側端壁40eは、反スロットル側の枝管部9aの内部通路9acよりも反スロットル側に突出している。
このコレクタ部40の外壁構造によれば、図9に示す反スロットル側端壁40eで、コレクタ部40の内部空間40Sが反スロットル側の枝管部9aの内部通路9acよりも反スロットル側に拡張され、スロットル連通口41から遠い気筒への吸気が促進され、各気筒の吸気量が一層均等に近づく。
【0037】
図9に示すように、このコレクタ部40の外壁構造では、コレクタ部40の反シリンダヘッド側端壁40cは、スロットル連通口41よりも反シリンダヘッド側に突出している。
【0038】
このコレクタ部40の外壁構造によれば、図9に示す反シリンダヘッド側端壁40cで、コレクタ部40の内部空間40Sがスロットル連通口41よりも反シリンダヘッド側に拡張され、スロットル連通口41から遠い気筒への吸気が促進され、各気筒の吸気量が一層均等に近づく。
なお、図10の符号40aはコレクタ部40の天井壁、符号40bは底壁である。
【0039】
次に、吸気マニホルドを用いるエンジン機種について説明する。
図9に示すように、この吸気マニホルド9は、コレクタ部40から左右一対の枝管部9a・9bが導出された吸気マニホルドで、2気筒エンジンに用いられている。
この吸気マニホルド9をスロットル連通口41からの吸気経路差が大きい2気筒エンジンに用いた場合には、各気筒の吸気量の均等化の効果が顕在化する。
【0040】
図5に示す一対の枝管部9a・9b(枝管部9bは図9参照)は、コレクタ部40からシリンダヘッド6に向かって真っ直ぐ平行に伸びている。図9に示すように、一対の枝管部9a・9bのタンク側開口部9aa・9baの周壁9ab・9bbは、いずれもコレクタ部40のシリンダヘッド側端壁40dからコレクタ部40の内部空間40Sに向けて突出している。
【0041】
この吸気マニホルド9は、図4に示されるクランク軸1Aのクランクピン角度が180°で、図9に示されるスロットル連通口41側の第2気筒の吸気行程と、この吸気行程に続いて行われる第1気筒の吸気行程の位相差が、クランク角度で180°となる4サイクル直列2気筒エンジンに用いられている。
このエンジン機種に用いると、第2気筒の吸気行程の開始後に比較的小さい180°の位相差で吸気行程が開始される第1気筒には、吸気不足が起こり易く、上記エンジンにこの吸気マニホルド用いた場合には、各気筒の吸気量の均等化の効果が一層顕在化する。
【0042】
次に、エンジンの検油装置について説明する。
図2(A)に示すエンジン2は検油装置を備え、この検油装置は、図11に示すように、オイルゲージ30と、オイルパン8内のエンジンオイルEOにオイルゲージ30を案内するガイドパイプ53と、ガイドパイプ53をクランクケース1に支持するサポートパイプ52を備えている。
サポートパイプ52はクランクケース1のサポートパイプ挿通孔51に挿通されている。
ガイドパイプ53の下端に内嵌部53Aを備え、この内嵌部53Aがサポートパイプ52の上端部に内嵌固定され、この内嵌部53Aの内周に突条54が周設され、ガイドパイプ53の中間部に湾曲部53cを備えている。
図11に示すように、湾曲部53cによりガイドパイプ53の上側部がクランクケース1から離れる向きに上り傾斜すると共に、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部53cと突条54とサポートパイプ52の各内周面に接触するように構成されている。
【0043】
このエンジンの検油装置は、エンジン搭載環境により、ガイドパイプ53の斜め上にしか検油装置へのアクセス経路がない場合に好適で、ガイドパイプ53の斜め上からアクセスでき、ガイドパイプ53の斜め上方向に沿ってオイルゲージ30を挿脱することができる。
また、図11に示すように、このエンジンの検油装置によれば、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、湾曲部53cと突条54とサポートパイプ52の各内周面の3箇所に接触するため、オイルゲージ30の抜き方向の抵抗が大きく、エンジンを搭載した車両の制動時に、オイルゲージ30が慣性力によってガイドパイプ53から抜け出るのを防止することができる。
【0044】
図11に示すように、このエンジンの検油装置では、サポートパイプ52の下端部に、その内径が下向きに次第に縮径するテーパ部52Dを備えている。
図11に示すように、このエンジンの検油装置によれば、サポートパイプ52を貫通するオイルゲージ30がサポートパイプ52の下端部のテーパ部52Dの内側で受け止められ、サポートパイプ52からオイルパン8側に突出したオイルゲージ30の揺動が抑制される。
【0045】
図11に示すように、このエンジンの検油装置では、ガイドパイプ53の内嵌部53Aは拡径され、ガイドパイプ53に挿入されたオイルゲージ30が、拡径された内嵌部53Aにその上側で隣接するガイドパイプ53の非拡径部53Aaにも接触するように構成されている。
図11に示すように、このエンジンの検油装置によれば、オイルゲージ30が、内嵌部53Aに隣接するガイドパイプ53の非拡径部53Aaにも接触するため、オイルゲージ30の抜き方向の抵抗が一層大きくなる。
【0046】
図11に示すように、このエンジンの検油装置では、突条54の外周に凹状溝54aが周設され、この凹状溝54aにOリング54bが内嵌され、このOリング54bで、ガイドパイプ53の内嵌部53Aとサポートパイプ52の間のパイプ間隙間54cが密封されている。
このエンジンの検油装置によれば、パイプ間隙間54cの密封性が高まる。
【0047】
図11に示すように、このエンジンの検油装置では、サポートパイプ52の上端部52aは、クランクケース1のサポートパイプ挿通孔51の上縁部51aから上方に離間dしている。
【0048】
図11に示すように、このエンジンの検油装置によれば、サポートパイプ挿通孔51の周囲に溜まった塵埃等の異物は、上方に離間dしているサポートパイプ52の上端部52aからパイプ間隙間54cに進入することがないため、異物の噛み込みによるOリング54bの損傷が防止される。
【0049】
図11に示すように、金属材などによるガイドパイプ53は、サポートパイプ52の拡径部52Aに内嵌される内嵌部53Aと、オイルゲージ30の上端部に嵌装された弾性材製の栓部30Aが内嵌される上端部(基端部)53Bと、これら内嵌部53Aと上端部53Bとの間の中間部53Cとを有している。元のパイプ材の径である中間部53Cには、その長手方向の中間部が角度x(例:35~45度)で曲げられた湾曲部53cが形成されている。
【0050】
図11に示すように、上端部53Bは、元のパイプ材を拡径して栓部30Aが密内嵌される箇所である拡径開口部53bを有している。拡径開口部53bの上側(基端側)は開先部58に、そして下側(先端側)は、拡径開口部53bに向けて元の径から徐々に径が大きくなる径徐変部59に形成されている。拡径開口部53bは、その内周面に手指の操作によって押し込まれた栓部30Aが容易には抜け出ない程度の径に設定されている。
【0051】
図11に示すように、オイルゲージ30は、金属棒材でなる上部(基端部)の把持部30Bと、把持部30Bの下部にリベット60により連結一体化されたゲージ部30Cと、把持部30Bに嵌装された栓部30Aとを有している。栓部30Aは、拡径開口部53bに軽圧入される段付筒部30aと、開先部58で受止められる大径のストップ部30bとを備えている。把持部30Bの上端部は270度でほぼ丸められて、手指が通せるフック部30fが形成されている。
【0052】
図11に示すように、ゲージ部30Cは、厚さが薄く断面が扁平な長尺板状で可撓性を有する材料(例:バネ鋼)製であり、その下端部に180度で、そして下端には90度でそれぞれ捻られた第1及び第2捩り部61,62が形成されている。
なお、図11に示すラインNは、オイルパン8及びクランクケース1の下部に溜まっているエンジンオイルEOの上限である。
【0053】
図11に示すように、ガイドパイプ53における内嵌部53Aと湾曲部53cとの間の箇所に、金属板製のブラケット64が溶着などの手段によって取付けられている。ブラケット64は、これに形成されている孔(図示省略)により、クランクケース1に形成された取着ボス50Aにボルト65によって締付固定可能である。なお、取着ボス50Aは、改良前のエンジンのクランクケースにおけるオイルゲージ装着用のボス部であり、本エンジンでは、ボルト65螺着用のボスとして有効利用されている。
図12図11の検油装置とその周辺部の斜視図を、図13図12の検油装置の拡大斜視図を示している。
【0054】
図1に示す多目的四輪車Vでは、図2(A)に示すように、エンジンEが座席34Aの後で、かつ、荷台35の前部の下に配置され、検油装置はクランクケース1の前側に配置され、ガイドパイプ53の上部は、前方上方に向かって斜めに延びている。
図3に示すように、オイルゲージ30の上端の把持部30Bは、座席34A(図2(A)(B)参照)のサポートメンバである背板38bの後方に位置し、背板38bに開閉可能な(又は着脱可能な)蓋体66が設けられ、蓋体66を開き(又は取り外して)、ガイドパイプ53の前方斜め上から検油装置にアクセスして、ガイドパイプ53の前方斜め上方向に沿ってオイルゲージ30を挿脱して、エンジンオイル量の点検作業を行うことができる。なお、図3中の符号67はオイルフィルタである。
【符号の説明】
【0055】
1…クランクケース、8…オイルパン、30…オイルゲージ、51…サポートパイプ挿通孔、51a…上縁部、52…サポートパイプ、52a…上端部、52D…、テーパ部、53…ガイドパイプ、53c…湾曲部、53A…内嵌部、53Aa…非拡径部、54…突条、54a…凹状溝、54b…Oリング、54c…パイプ間隙間、d…離間、EO…エンジンオイル。
図1
図2
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