(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006497
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コーティング剤、積層繊維布帛及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 155/00 20060101AFI20250109BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250109BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20250109BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250109BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20250109BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D155/00
C08L101/00
C08F20/00
C09D7/61
D06M15/643
D06M13/395
D06M15/263
D06M15/233
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107322
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】南嶋(野尻) 由枝
(72)【発明者】
【氏名】野末 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】末定 君之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4J002BC02W
4J002BC07W
4J002BG01X
4J002BG04X
4J002BG06X
4J002GH00
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4J038CR001
4J038DG102
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4J038HA376
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4J038MA13
4J038PA07
4J038PB02
4J038PC10
4J100AB02Q
4J100AJ01P
4J100AL03P
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4J100AL08P
4J100AL09P
4J100BC43P
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA25
4J100DA29
4J100JA01
4L033AB04
4L033AC03
4L033BA69
4L033CA12
4L033CA18
4L033CA58
(57)【要約】
【課題】撥水剤が付与された繊維布帛に対して優れた防風性(特に洗濯後の防風性)を付与可能なコーティング剤を開示する。
【解決手段】本開示のコーティング剤は、樹脂(A)と、多価金属塩(B)とを含む。前記樹脂(A)は、共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方である。前記共重合樹脂(A1)は、芳香環を有する所定のラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、カルボキシ基を有する所定のラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)とを有する。前記混合樹脂(A2)は、前記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、前記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)との組み合わせである。前記樹脂(A)の芳香環率は、0.5%以上30%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、多価金属塩(B)とを含むコーティング剤であって、
前記樹脂(A)が、共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方であり、
前記共重合樹脂(A1)が、
下記式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、
下記式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)と
を有し、
前記混合樹脂(A2)が、
前記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、
前記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)と
の組み合わせであり、
前記樹脂(A)の芳香環率が、0.5%以上30%以下である、
コーティング剤。
【化1】
式(1)において、
R
101は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
R
102は、水素、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
X
101は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
102は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【化2】
式(2)において、
R
201は、カルボキシ基であり、
R
202は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
203は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
204は、水素、カルボキシ基、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
X
201は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
202は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
203は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
204は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【請求項2】
前記樹脂(A)を構成する前記単位(u2)の質量に対する前記多価金属塩(B)の質量の比率が、1.0%以上10.0%以下である、
請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記樹脂(A)のガラス転移温度Tgが、-40℃以上0℃以下である、
請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記樹脂(A)の酸価が、1以上20以下である、
請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項5】
繊維布帛と、撥水被膜と、コーティング剤被膜とを有する積層繊維布帛であって、
前記撥水被膜が、非フッ素系撥水剤を含み、
前記撥水被膜が、前記繊維布帛の少なくとも一部に形成され、
前記コーティング剤被膜が、前記繊維布帛の片面に形成され、
前記コーティング剤被膜が、前記撥水被膜の表面の少なくとも一部に形成され、
前記コーティング剤被膜が、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤からなる、
積層繊維布帛。
【請求項6】
1cm3/cm2・s以下の通気度を有し、
2cm3/cm2・s以下の耐久通気度を有する、
請求項5に記載の積層繊維布帛。
【請求項7】
積層繊維布帛の製造方法であって、
繊維布帛を第1処理液で処理して撥水性布帛を得ること、及び、
前記撥水性布帛の片面を第2処理液で処理すること、を含み、
前記第1処理液が、非フッ素系撥水剤を含み、
前記第2処理液が、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤を含む、
製造方法。
【請求項8】
コーティング法によって、前記第2処理液を前記繊維布帛の片面に付与する、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2処理液の粘度が、5,000mPa・s以上50,000mPa・s以下である、
請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コーティング剤、積層繊維布帛及びその製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、繊維布帛の片面に樹脂(コーティング剤)を塗布して樹脂被膜(コーティング剤被膜)を形成することで、繊維布帛に防風性を付与する技術が開示されている。ここで、繊維布帛に対して樹脂を塗布した場合、当該樹脂が繊維布帛の塗布面から反対側の面へと浸透(裏抜け)してしまい、繊維布帛の片面に所望の樹脂被膜を形成することができない場合がある。
【0003】
特許文献2には、繊維布帛に対して撥水剤を付与したうえで、当該繊維布帛の片面に樹脂(コーティング剤)を塗布して樹脂被膜(コーティング剤被膜)を形成することで、繊維布帛に防風性等を付与する技術が開示されている。特許文献2に開示されているように撥水剤が付与された繊維布帛に対して樹脂を塗布することで、樹脂が繊維布帛の塗布面とは反対側の面にまで浸透(裏抜け)することを抑えることができる。撥水剤としては、フッ素系撥水剤及び非フッ素系撥水剤が挙げられるが、環境への影響が小さい非フッ素系撥水剤を使用することが好ましいといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-127253号公報
【特許文献2】特開2018-009268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の新たな知見によると、非フッ素系撥水剤を付与した繊維布帛に対して樹脂(コーティング剤)を塗布した場合と、フッ素系撥水剤を付与した繊維布帛に対して樹脂(コーティング剤)を塗布した場合とで、繊維布帛の表面に形成される樹脂被膜(コーティング剤被膜)の性能が異なる。例えば、非フッ素系撥水剤を付与した繊維布帛に対して樹脂(コーティング剤)を塗布した場合、樹脂被膜(コーティング剤被膜)の性能が十分なものとならず、良好な防風性が得られない場合がある。特に、洗濯後の防風性に関して改善の余地がある。
【0006】
本願は、撥水剤が付与された繊維布帛に対して優れた防風性(特に、洗濯後の防風性)を付与可能なコーティング剤、当該コーティング剤を用いた積層繊維布帛、及び、当該積層繊維布帛の製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決するための手段として、以下の複数の態様を開示する。
<態様1>
樹脂(A)と、多価金属塩(B)とを含むコーティング剤であって、
前記樹脂(A)が、共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方であり、
前記共重合樹脂(A1)が、
下記式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、
下記式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)と
を有し、
前記混合樹脂(A2)が、
前記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、
前記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)と
の組み合わせであり、
前記樹脂(A)の芳香環率が、0.5%以上30%以下である、
コーティング剤。
【化1】
式(1)において、
R
101は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
R
102は、水素、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
X
101は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
102は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【化2】
式(2)において、
R
201は、カルボキシ基であり、
R
202は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
203は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
204は、水素、カルボキシ基、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
X
201は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
202は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
203は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
204は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
<態様2>
前記樹脂(A)を構成する前記単位(u2)の質量に対する前記多価金属塩(B)の質量の比率が、1.0%以上10.0%以下である、
態様1のコーティング剤。
<態様3>
前記樹脂(A)のガラス転移温度Tgが、-40℃以上0℃以下である、
態様1又は2のコーティング剤。
<態様4>
前記樹脂(A)の酸価が、1以上20以下である、
態様1~3のいずれかのコーティング剤。
<態様5>
繊維布帛と、撥水被膜と、コーティング剤被膜とを有する積層繊維布帛であって、
前記撥水被膜が、非フッ素系撥水剤を含み、
前記撥水被膜が、前記繊維布帛の少なくとも一部に形成され、
前記コーティング剤被膜が、前記繊維布帛の片面に形成され、
前記コーティング剤被膜が、前記撥水被膜の表面の少なくとも一部に形成され、
前記コーティング剤被膜が、態様1~4のいずれかのコーティング剤からなる、
積層繊維布帛。
<態様6>
1cm
3/cm
2・s以下の通気度を有し、
2cm
3/cm
2・s以下の耐久通気度を有する、
態様5の積層繊維布帛。
<態様7>
積層繊維布帛の製造方法であって、
繊維布帛を第1処理液で処理して撥水性布帛を得ること、及び、
前記撥水性布帛の片面を第2処理液で処理すること、を含み、
前記第1処理液が、非フッ素系撥水剤を含み、
前記第2処理液が、態様1~4のいずれかのコーティング剤を含む、
製造方法。
<態様8>
コーティング法によって、前記第2処理液を前記撥水性布帛の片面に付与する、
態様7の製造方法。
<態様9>
前記第2処理液の粘度が、5,000mPa・s以上50,000mPa・s以下である、
態様7又は8の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示のコーティング剤によれば、撥水剤が付与された繊維布帛に対して優れた防風性(特に、洗濯後の防風性)を付与可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係るコーティング剤、積層繊維布帛及びその製造方法について説明するが、本開示のコーティング剤、積層繊維布帛及びその製造方法は、この形態に限定されるものではない。
【0010】
1.コーティング剤
一実施形態に係るコーティング剤は、樹脂(A)と、多価金属塩(B)とを含む。前記樹脂(A)は、共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方である。前記共重合樹脂(A1)は、下記式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、下記式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)とを有する。前記混合樹脂(A2)は、前記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、前記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)との組み合わせである。前記樹脂(A)の芳香環率は、0.5%以上30%以下である。
【0011】
【化3】
式(1)において、
R
101は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
R
102は、水素、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基であり、
X
101は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
102は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【0012】
【化4】
式(2)において、
R
201は、カルボキシ基であり、
R
202は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
203は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R
204は、水素、カルボキシ基、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
X
201は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
202は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
203は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-であり、
X
204は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【0013】
1.1 樹脂(A)
樹脂(A)は、上記の共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方である。すなわち、樹脂(A)は、共重合樹脂(A1)のみからなるものであってもよいし、混合樹脂(A2)のみからなるものであってもよいし、共重合樹脂(A1)と混合樹脂(A2)との組み合わせであってもよい。また、樹脂(A)は、1種類の樹脂からなるものであってもよいし、複数種類の樹脂からなるものであってもよい。特に、樹脂(A)が2種類以上の樹脂からなる場合に、より優れた性能が発揮され易い。一方、樹脂(A)が3種類以下の樹脂からなる場合に、調整の手間等を省くことができる。好ましくは、樹脂(A)は、2種類の樹脂からなる。
【0014】
1.1.1 共重合樹脂(A1)
共重合樹脂(A1)は、上記式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、上記式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)とを有する。共重合樹脂(A1)は、1種類の共重合樹脂からなるものであってもよいし、複数種類の共重合樹脂からなるものであってもよい。
【0015】
<式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)>
式(1)で表されるように、ラジカル重合性単量体(a1)は、ラジカル重合性基に加えて芳香環を有する。
【0016】
式(1)において、R101は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基である。置換基を有していてもよいC6~20のアリール基は、例えば、フェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、クミルフェニル基、アルキルフェニル基(トリル基、キシリル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基など)、ナフチル基、フェニルナフチル基、ベンジルナフチル基、クミルナフチル基、アルキルナフチル基(ブチルナフチル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基など)、又は、これらの基に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセトアミド基、アセチル基等で置換された基等が挙げられる。式(1)において、R101がフェニル基又はベンジル基である場合、特に、フェニル基である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0017】
式(1)において、R102は、水素、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいC6~20のアリール基である。C1~24の飽和炭化水素基は、直鎖でも分岐でもよく、脂環式構造を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセトアミド基、アセチル基等が挙げられる。置換基を有していてもよいC6~20のアリール基については、上述の通りである。式(1)において、R102が水素である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0018】
式(1)において、X101は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐でもよく、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、脂環式構造を有していてもよい。式(1)において、X101が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0019】
式(1)において、X102は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基については、上述の通りである。式(1)において、X102が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0020】
式(1)において、R101がフェニル基又はベンジル基、特にフェニル基であり、R102が水素であり、X101及びX102が、各々独立して単結合又は-COO-、特に双方とも単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。これを満たすラジカル重合性単量体(a1)としては、スチレン及びベンジルアクリレートのうちの一方又は両方が挙げられる。密着性(膜剥離がより少ない)の観点から、ラジカル重合性単量体(a1)はスチレンであることが好ましい。
【0021】
<式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)>
式(2)で表されるように、ラジカル重合性単量体(a2)は、ラジカル重合性基に加えてカルボキシ基を有する。
【0022】
式(2)において、R201は、カルボキシ基である。当該カルボキシ基は、後述の多価金属塩(B)に由来する金属イオンと結合し得る。
【0023】
式(2)において、R202は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基である。C1~24の飽和炭化水素基は、直鎖でも分岐でもよく、脂環式構造を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセトアミド基、アセチル基等が挙げられる。式(2)において、R202が水素又はC1~24の飽和炭化水素基である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0024】
式(2)において、R203は、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基である。C1~24の飽和炭化水素基については、上述の通りである。式(2)において、R203が水素である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0025】
式(2)において、R204は、水素、カルボキシ基、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基である。C1~24の飽和炭化水素基については、上述の通りである。カルボキシ基は、後述の多価金属塩(B)に由来する金属カチオンと結合し得る。式(2)において、R204が水素である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0026】
式(2)において、X201は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐でもよく、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、脂環式構造を有していてもよい。式(2)において、X201が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0027】
式(2)において、X202は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基については、上述の通りである。式(2)において、X202が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0028】
式(2)において、X203は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基については、上述の通りである。式(2)において、X203が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0029】
式(2)において、X204は、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。C1~10の2価の炭化水素基については、上述の通りである。式(2)において、X204が単結合又は-COO-である場合、特に、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。
【0030】
式(2)において、R101がカルボキシ基であり、R102が水素又はC1~24の飽和炭化水素基であり、R103及びR104が水素であり、X101、X102、X103及びX104が各々独立して単結合又は-COO-、特にすべて単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。これを満たすラジカル重合性単量体(a2)としては、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの一方又は両方が挙げられる。樹脂(A)の乳化分散液の安定性の観点からも、ラジカル重合性単量体(a2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの一方又は両方であることが好ましい。
【0031】
<その他の単量体(a3)>
共重合樹脂(A1)は、上記のラジカル重合性単量体(a1)及び(a2)に由来する単位(u1)及び(u2)からなるものであってもよいし、当該単位(u1)及び(u2)に加えて、その他の単量体に由来する単位を有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、下記式(3)で示されるラジカル重合性単量体(a3)が挙げられる。
【0032】
【化5】
式(3)において、
R
301、R
302、R
303及びR
304は、それぞれ独立して、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
X
301、X
302、X
303及びX
304は、それぞれ独立して、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である。
【0033】
式(3)において、C1~24の飽和炭化水素基は、直鎖でも分岐でもよく、脂環式構造を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセトアミド基、アセチル基等が挙げられる。また、C1~10の2価の炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐でもよく、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、脂環式構造を有していてもよい。
【0034】
式(3)において、
R301が、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R302、R303及びR304が、それぞれ独立して、水素、又は、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
X301が、-COO-であり、かつ
X302、X303及びX304が、それぞれ独立して、単結合、C1~10の2価の炭化水素基、-COO-、-O-、-CONH-、又は、-CO-である場合に、より優れた性能が確保され易く、
特に、R301が、置換基を有していてもよいC1~24の飽和炭化水素基であり、
R302、R303及びR304が、それぞれ独立して、水素又はメチル基であり、
X301が、-COO-であり、かつ
X302、X303及びX304が、単結合である場合に、より一層優れた性能が確保され易い。これを満たすラジカル重合性単量体(a3)としては、ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、メチルメタクリレート、及び、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
<共重合比>
共重合樹脂(A1)において、式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)との比率は、樹脂(A)全体として後述の芳香環率が満たされるような比率であればよい。また、共重合樹脂(A1)において、その他の単量体(例えば、上述のラジカル重合性単量体(a3))に由来する単位の比率も、特に限定されるものではなく、後述の芳香環率が満たされるような比率であればよい。一実施形態において、共重合樹脂(A1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a1)の割合が、0.5モル%以上50モル%以下、又は、10モル%以上30モル%以下であってもよく、共重合樹脂(A1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a2)の割合が、1モル%以上10モル%以下、又は、2モル%以上5モル%以下であってもよく、共重合樹脂(A1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a1)及びラジカル重合性単量体(a2)の合計の割合が、1.5モル%以上60モル%以下、又は、12モル%以上35モル%以下であってもよい。
【0036】
1.1.2 混合樹脂(A2)
混合樹脂(A2)は、上記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、上記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)との組み合わせである。
【0037】
<樹脂(A2-1)>
混合樹脂(A2)を構成する「単位(u1)を有する樹脂(A2-1)」とは、樹脂(A2-1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a1)の割合が、0.5モル%以上であるものをいう。ラジカル重合性単量体(a1)については、上述の通りである。樹脂(A2-1)は、1種類の樹脂からなるものであってもよいし、複数種類の樹脂からなるものであってもよい。
【0038】
樹脂(A2-1)は、その繰り返し単位が、上記の単位(u1)からなるものであってもよいし、上記単位(u1)に加えて、その他の単位を有するものであってもよい。その他の単位としては、例えば、上記の単位(u2)や単位(u3)が挙げられる。一実施形態において、樹脂(A2-1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a1)の割合が、0.5モル%以上50モル%以下、又は、10モル%以上30モル%以下であってもよく、樹脂(A2-1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a2)の割合が、1モル%以上10モル%以下、又は、2モル%以上5モル%以下であってもよく、樹脂(A2-1)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a3)の割合が、49モル%以上98.5モル%以下、又は、65モル%以上88モル%以下であってもよい。
【0039】
<樹脂(A2-2)>
混合樹脂(A2)を構成する「単位(u2)を有する樹脂(A2-2)」とは、樹脂(A2-2)を構成する全単量体に占める単量体(a2)の割合が、1モル%以上であるものをいう。単量体(a2)については、上述の通りである。樹脂(A2-2)は、1種類の樹脂からなるものであってもよいし、複数種類の樹脂からなるものであってもよい。
【0040】
樹脂(A2-2)は、その繰り返し単位が、上記の単位(u2)からなるものであってもよいし、上記単位(u2)に加えて、その他の単位を有するものであってもよい。その他の単位としては、例えば、上記の単位(u1)や単位(u3)が挙げられる。一実施形態において、樹脂(A2-2)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a1)の割合が、0モル%以上50モル%以下、又は、0モル%以上30モル%以下であってもよく、樹脂(A2-2)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a2)の割合が、1モル%以上10モル%以下、又は、2モル%以上5モル%以下であってもよく、樹脂(A2-2)を構成する全単量体に占めるラジカル重合性単量体(a3)の割合が、49モル%以上98.5モル%以下、又は、65モル%以上88モル%以下であってもよい。
【0041】
<配合比>
混合樹脂(A2)において、単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、単位(u2)を有する樹脂(A2-2)との比率は、樹脂(A)全体として後述の芳香環率が満たされるような比率であればよい。一実施形態において、樹脂(A2-1)と樹脂(A2-2)との合計に占める樹脂(A2-1)の割合が、1質量%以上99質量%以下、30質量%以上99質量%以下、50質量%以上99質量%以下、又は、70質量%以上99質量%以下であってもよい。或いは、一実施形態において、樹脂(A2-1)と樹脂(A2-2)との合計に占める樹脂(A2-2)の割合が、1質量%以上99質量%以下、30質量%以上99質量%以下、50質量%以上99質量%以下、又は、70質量%以上99質量%以下であってもよい。
【0042】
<混合樹脂(A2)の好ましい組み合わせ>
特に、混合樹脂(A2)が、以下の樹脂(A2-1)及び樹脂(A2-2)の組み合わせである場合に、より優れた効果が発揮され易い。
樹脂(A2-1):単位(u1)とともに単位(u2)及び単位(u3)のうちの一方又は両方、特に単位(u2)及び単位(u3)の両方を有する。各単位の比率については、例えば、上述の通りであってもよい。
樹脂(A2-2):単位(u2)とともに単位(u3)を有する一方で、単位(u1)を有しない。各単位の比率については、例えば、上述の通りであってもよい。
【0043】
1.1.3 芳香環率
樹脂(A)は、0.5%以上30%以下の芳香環率を有する。「芳香環率」とは、樹脂(A)を構成する全単量体の総重量(Wt)に占める芳香環の重量(Wa)の割合であり、(Wa/Wt)×100(%)として計算されるものである。コーティング剤に含まれる樹脂(A)の芳香環率は、種々の分析装置によって特定可能である。芳香環率の算出方法としては、例えば、分光光度計(UV-Vis Lambda650S、パーキンエルマー社製)を用い、250nm付近に観察される芳香環の吸収スペクトルを測定し、その吸収強度から定量する方法が挙げられる。或いは、例えば、樹脂(A)の製造段階において、当該樹脂(A)を構成する単量体の仕込み比から、当該樹脂(A)の芳香環率を特定することも可能である。本発明者の知見によると、コーティング剤に含まれる樹脂(A)の芳香環率は、撥水性の繊維布帛に対してコーティング剤被膜によって付与される防風性(通気度)に影響を与える。樹脂(A)の芳香環率が低過ぎると、防風性(通気度)が悪化し、また、コーティング剤被膜が剥離し易くなる傾向にある。一方、樹脂(A)の芳香環率が高過ぎると、樹脂(A)のガラス転移温度Tgが過剰に高くなるなどして、風合いを損ねる場合がある。樹脂(A)の芳香環率が0.5%以上30%以下であれば、優れた防風性(例えば、洗濯後の防風性)が発揮されるとともに、コーティング剤被膜が剥離し難いものとなり、風合いにも優れたものとなり易い。樹脂(A)の芳香環率は、5%以上20%以下であることが好ましく、5%以上10%以下であることがより好ましい。
【0044】
上述の通り、樹脂(A)は、共重合樹脂(A1)であってもよいし、混合樹脂(A2)であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。樹脂(A)は、1種類の樹脂からなるものであってもよいし、複数種類の樹脂からなるものであってもよい。樹脂(A)が複数種類の樹脂からなるものである場合、当該樹脂(A)の芳香環率は、当該複数種類の樹脂の各々の芳香環率と、当該複数種類の樹脂の構成比率とに基づいて計算(加重平均)により求めることができる。
【0045】
1.1.4 ガラス転移温度
樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、-40℃以上0℃以下であることが好ましく、-40℃以上-10℃以下であることがより好ましく、-40℃以上-20℃以下であることがさらに好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度Tgが低過ぎると、コーティング面のタック性(ニチャつき)が過剰に強くなる場合があり、ガラス転移温度Tgが高過ぎると、風合いが硬くなり過ぎる場合がある。樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、例えば、実測によって求めてもよいし、樹脂(A)を構成する各単量体のガラス転移温度と構成比率とに基づいて計算によって求めることもできる。
【0046】
1.1.5 酸価
樹脂(A)の酸価(mgKOH)は、1以上20以下であることが好ましく、5以上15以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。樹脂(A)の酸価が低過ぎると、乳化分散重合時に安定な乳化性が得られない場合があり、樹脂(A)の酸価が高過ぎると、耐洗濯性が劣る場合がある。尚、樹脂(A)の酸価は、JIS K 0070(1992)の3.1の中和滴定法に準じ、測定溶媒としてアセトン:水=10:1(体積比)の混合溶媒を用い、この混合溶媒60mLに試料1gを溶解させて測定する。
【0047】
1.1.6 樹脂(A)の製造方法
樹脂(A)は、例えば、以下の通りに合成することができる。ただし、以下に説明する方法は一例に過ぎず、これ以外の方法によって樹脂(A)を合成することも可能である。
【0048】
樹脂(A)は、必要に応じて水、界面活性剤、乳化分散剤、連鎖移動剤0.01~5質量部(単量体の合計100質量部当たり)及び重合開始剤等の存在下に、単量体(a1)と単量体(a2)と任意の単量体(a3)とを、前記の質量割合で乳化分散重合することで、樹脂(A)の乳化分散液を得ることができる。本開示では、乳化と分散をまとめて乳化分散と表現する。
【0049】
乳化分散重合には、場合によって、溶媒として水に加えて有機溶剤を併用することができる。このような有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等のグリコール類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0050】
上記乳化分散重合において、非イオン、アニオン、カチオン又は両性界面活性剤などの通常使用される公知の非反応性界面活性剤やビニル基又はアリル基等の重合性基を有する反応性界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
界面活性剤の含有量は、単量体の合計100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下の範囲が好ましい。樹脂(A)作製時のエマルジョン中の単量体の合計の濃度(樹脂分)は30質量%以上60質量%以下が好ましい。
【0052】
非イオン界面活性剤としては、例えば、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール類又はアルケノール類のアルキレンオキサイド付加物、単環又は多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールと直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸とアルキレンオキサイドとの反応物、油脂類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0053】
アニオン界面活性剤としては、例えば、前記非イオン界面活性剤の硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、カルボン酸塩及びスルホコハク酸型アニオン界面活性剤、高級アルコールの硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩、油脂類のスルホン化物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0054】
カチオン界面活性剤の例としては、脂肪族アミン塩及びその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩などを、両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体などを挙げることができる。
【0055】
これらの中でも、乳化分散性と安定性の観点から、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール類のアルキレンオキサイド付加物、単環又は多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物及びそれらのアニオン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0056】
単環又は多環フェノール類としては、フェノール、4-クミルフェノール、4-フェニルフェノール、又は2-ナフトールの、(3~8モル)スチレン付加物、(3~8モル)α-メチルスチレン付加物、又は(3~8モル)ベンジルクロライド反応物が好ましい。
【0057】
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、メルカプタン系化合物やアルコールなどを用いることができる。前記メルカプタン系化合物としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどが挙げられ、また、メルカプタン系化合物にはメルカプトエタノール、メルカプトプロパノールなどのメルカプト基含有アルコールなども含まれる。前記アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどのC1~C6程度の脂肪族アルコール、ベンジルアルコールなどのC7~C13程度の芳香族アルコールなどが挙げられる。これら以外の連鎖移動剤としては、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。連鎖移動剤は1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。好ましくはメルカプト基を有する連鎖移動剤である。
重合開始剤としては、特に限定されないが、通常アクリル樹脂の乳化分散重合で使用される公知の開始剤が使用できる。例えば、水溶性の重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などを単独又は併用して使用することができる。油溶性の重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾビス化合物及び高分子アゾ重合開始剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤は、併用して使用することもできる。また、上記の過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤との組み合わせからなるレドックス系開始剤なども使用することができる。
【0058】
上記乳化分散重合は、単量体混合物を水性液中で、必要に応じて連鎖移動剤、重合開始剤及び乳化分散剤などの存在下、撹拌下に加熱することによって実施できる。反応温度は、例えば、30~100℃程度、反応時間は、例えば、1~10時間程度である。水と重合開始剤とを仕込んだ反応容器に単量体混合液又は単量体乳化分散液を一括添加又は暫時滴下することによって反応温度の調節を行うことができる。
【0059】
乳化分散重合の方法としては、通常の一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコア・シェル重合法、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法など、いずれの重合法も採ることができる。
【0060】
当該アクリル樹脂のエマルジョンがより安定な乳化性を保持するといった観点から、乳化分散液における樹脂(A)の含有量を40~60質量%とし、乳化分散液のpHを6.0~9.0に調整することが好ましい。pHの調整は重合反応の前、途中、後のいずれでもよい。
【0061】
1.2 多価金属塩(B)
多価金属塩(B)は2価以上の多価金属イオンを含む塩である。多価金属塩(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
多価金属塩(B)を構成する多価金属イオンは、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びZr4+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にCa2+であることが好ましい。
【0063】
多価金属塩(B)を構成する陰イオンは、例えば、NO3-、Cl-、I-、Br-、ClO3-、CH3COO-及びSO4
2-から選ばれる少なくとも1種であってもよく、塩の溶解性等の観点から、NO3-及びSO4
2-のうちの一方又は両方であること特に好ましい。
【0064】
1.3 樹脂(A)に対する多価金属塩(B)の量
コーティング剤において樹脂(A)と多価金属塩(B)とを併用することにより、洗濯耐久性(洗濯後の防風性)に一層優れたコーティング剤被膜が得られ易い。樹脂(A)に対する多価金属塩(B)の添加量は、特に制限はない。例えば、樹脂(A)を構成する単位(u2)の質量に対する多価金属塩(B)の質量の比率が、1.0%以上10.0%以下である場合に、より優れた効果が得られ易い。多価金属塩(B)の添加量が多過ぎると、コーティング剤被膜が白化、脆化を起こし、剥離が大きくなる場合がある。多価金属塩(B)の添加量が少な過ぎると、コーティング剤被膜の剥離とタック(コーティング膜表面のニチャつき)が大きくなる場合がある。樹脂(A)を構成する単位(u2)の質量に対する多価金属塩(B)の質量の比率は、1.5%以上9.5%以下、又は、2.0%以上9.0%以下であってもよい。
【0065】
1.4 その他
コーティング剤は、上記の樹脂(A)及び多価金属塩(B)からなるものであってもよいし、樹脂(A)及び多価金属塩(B)とともにその他の成分(C)を含んでいてもよい。その他の成分(C)としては、増粘剤、樹脂(A)以外の樹脂、多価金属塩(B)以外の塩、後述の各種添加剤等が挙げられる。コーティング剤は、溶媒が除去された状態(乾燥後のコーティング剤被膜となった状態)で、樹脂(A)を49.998質量%以上99.998質量%以下、又は、75質量%以上99.9質量%以下含んでいてもよい。また、コーティング剤は、溶媒が除去された状態で、多価金属塩(B)を20ppm以上30000ppm以下、又は、200ppm以上15000ppm以下含んでいてもよい。また、コーティング剤は、溶媒が除去された状態で、溶媒以外の上記その他の成分(C)を0質量%以上50質量%以下、又は、0質量%以上30質量%以下含んでいてもよい。一実施形態において、溶媒が除去された乾燥状態において、樹脂(A)を10質量%以上50質量%以下、好ましくは30質量%以上50質量%以下含むコーティング剤に対して、多価金属塩(B)が100ppm以上2000ppm添加されることが好ましい。コーティング剤は、上記の各成分を混合することにより容易に得られる。例えば、水等の溶媒中に、樹脂(A)を分散させるとともに、多価金属塩を分散又は溶解させることで、コーティング剤を得てもよい。
【0066】
コーティング剤は、増粘剤を含んでもよい。増粘剤は、コーティング剤の粘度と粘性を調整し、繊維布帛に対する塗工性を調整するものである。増粘剤は1種又は2種以上を使用することができる。増粘剤の配合量は、コーティング機の加工適性に合わせて適宜設定すればよい。増粘剤は、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン等の天然の有機高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成の有機高分子;ポリビニルアルコール、ポリエーテルポリオール型ポリウレタン樹脂、アルカリ増粘型アクリル樹脂、エチレンオキサイド高級脂肪酸エステル、ポリエチレンオキサイド等の合成の有機高分子;等から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0067】
増粘剤は、撥水性や防水性の観点から、非水溶性であることが好ましい。非水溶性の増粘剤としては、アルカリ増粘型アクリル樹脂、ポリエーテルポリオール型ポリウレタン樹脂及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0068】
アルカリ増粘型アクリル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、アルカリ増粘型アクリル樹脂の中には、上記の樹脂(A2-2)に該当するものもある。この場合のアルカリ増粘型アクリル樹脂は、例えば、所定の芳香環率が満たされるように上記の樹脂(A2-1)と組み合わされることで、上記の混合樹脂(A2)となり得る。コーティング剤において、アルカリ増粘型アクリル樹脂が、上記の樹脂(A2-2)に該当し、かつ、上記の樹脂(A2-1)と組み合わされて所定の芳香環率を有する混合樹脂(A2)となっている場合、当該アルカリ増粘型アクリル樹脂は、その他の成分(C)としてではなく、上記の樹脂(A2-2)として換算する。アルカリ増粘型アクリル樹脂は、例えば、乳化分散させた状態で用いることが好ましい。アルカリ増粘型アクリル樹脂としては、市販品を使用することができ、例えば、ニカゾールVT-253A(日本カーバイド工業(株)製)、アロンA-20P、アロンA-7150、アロンA-7070、アロンB-300、アロンB-300K、アロンB-500(以上東亞合成(株)製)、ジュリマーAC-10LHP、ジュリマーAC-10SHP、レオジック250H、レオジック835H、ジュンロンPW-110、ジュンロンPW-150(以上日本純薬(株)製)、プライマルASE-60、プライマルTT-615、プライマルRM-5(以上ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)、SNシックナーA-818、SNシックナーA-850(以上サンノプコ(株)製)、パラガム500(パラ-ケム・サザン(株)製)、レオレート430(エレメンティス・ジャパン(株)製)、ネオステッカーV-420(日華化学(株)製)などを挙げることができる。
【0069】
コーティング剤は、その塗工性を調整するために、アルカリ増粘型アクリル樹脂にポリウレタン樹脂を併用することができる。かかるポリウレタン樹脂は、コーティング剤に対して0.3質量%以上1質量%以下の量で使用することができる。
【0070】
アルカリ増粘型アクリル樹脂に併用可能なポリウレタン樹脂としては、非イオン系のポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーを挙げることができる。かかるポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーとしては、市販品を使用することができ、例えば、アデカノールUH-420、アデカノールUH-450、アデカノールUH-540、アデカノールUH-752(以上旭電化工業(株)製)、SNシックナー601、SNシックナー612、SNシックナー621N、SNシックナー623N(以上サンノプコ(株)製)、レオレート244、レオレート278、レオレート300(以上エレメンティス・ジャパン(株)製)、DKシックナーSCT-275(第一工業製薬(株)製)などを挙げることができる。
【0071】
2.積層繊維布帛
本開示の積層繊維布帛は、繊維布帛と、撥水被膜と、コーティング剤被膜とを有する。前記撥水被膜は、非フッ素系撥水剤を含む。前記撥水被膜は、前記繊維布帛の少なくとも一部に形成される。前記コーティング剤被膜は、前記繊維布帛の片面に形成される。前記コーティング剤被膜は、前記撥水被膜の表面の少なくとも一部に形成される。前記コーティング剤被膜は、上記本開示のコーティング剤からなる。
【0072】
2.1 繊維布帛
繊維布帛を構成する繊維は、特に限定されるものではなく、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、レーヨン(アセテートやビスコース等)、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミド又はポリフェニレンサルファイド等の化学繊維、綿、麻、絹又は羊毛などの天然繊維、或いは、これらの素材の混繊、混紡、交織または交編品を用いることができる。また、繊維布帛は、織物、編物、不織布など、いかなる形態であってもよい。
【0073】
繊維布帛は、特にコーティング剤(樹脂液)が当該繊維布帛の裏面(樹脂液の塗布面とは反対側の面)にまで含浸し易い薄地織物や、織物に比べて糸と糸の間に隙間ができやすい編物であってもよい。このような繊維布帛を用いた場合でも、樹脂液が繊維布帛の裏面にまで浸透(裏抜け)することを抑制することができ、繊維布帛に防風性等を有するコーティング剤被膜を形成することができる。
【0074】
繊維布帛を構成する繊維は、長繊維、短繊維又はこれらの組み合わせであってもよい。また、当該繊維を用いた糸は、生糸、撚糸、加工糸又はこれらの組み合わせであってもよい。加工糸は、特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(ウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸など)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などから選ばれる少なくとも1種であってもよい。繊維布帛に対してコーティング剤が浸透(裏抜け)することを防止するとの観点からは、加工糸を用いることが好ましい。
【0075】
繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどのいずれの形状であってもよい。繊維布帛に対してコーティング剤が浸透(裏抜け)することを防止するとの観点からは、繊維の断面形状は、三角、星形、扁平、又は、ドッグボーン等から選ばれる少なくとも1種の形状である(異形断面糸である)ことが好ましい。
【0076】
繊維布帛は、あらかじめ着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。繊維布帛は、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、又は、硫化染料などの染料、或いは、蛍光増白剤、又は、顔料等により着色され得る。繊維布帛を着色するために用いられる材料は、特に限定されるものではなく、繊維布帛の素材等に応じて選択されればよい。着色方法は、原着、浸染、または、捺染などの方法があり、特に限定されるものではない。
【0077】
繊維布帛は、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、又は、吸水加工等が施されたものであってもよい。
【0078】
2.2 撥水被膜
撥水被膜は、非フッ素系撥水剤を含む。非フッ素系撥水剤としては、炭化水素系化合物及びシリコーン系化合物のうちの一方又は両方であってもよい。繊維布帛の柔軟性の観点から、非フッ素系撥水剤がシリコーン系化合物を含むことが好ましい。非フッ素系撥水剤は、シリコーン系化合物単独であってもよいし、シリコーン系化合物と炭化水素系化合物との混合物であってもよい。撥水被膜は、非フッ素系撥水剤とともに、その他の撥水成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。撥水被膜は、非フッ素系撥水剤を50質量%以上100質量%以下、又は、60質量%以上100質量%以下含むものであってもよい。
【0079】
2.2.1 炭化水素系化合物
炭化水素系化合物は、撥水被膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、特開2015-120895号公報、特開2015-120894号公報、特開2015-120893号公報、特開2014-1252号公報、特開2006-328624号公報、特開2015-40365号公報、特開2015-3445号公報等に開示されたものが挙げられる。
【0080】
具体的には、炭化水素系化合物は、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、及び、ポリメタクリル酸エステル等から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0081】
脂肪族系炭化水素は、例えば、パラフィン系炭化水素及びオレフィン系炭化水素のうちの一方又は両方であってもよい。
【0082】
脂肪族カルボン酸は、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸であってもよいし、脂肪族カルボン酸のエステル化合物であってもよい。脂肪族カルボン酸の炭素数は、例えば、12以上が好ましい。
【0083】
ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、エチレン-プロピレン共重合体等から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0084】
ポリアクリル酸エステル及びポリメタクリル酸エステルは、エステル結合を介して存在する炭化水素の炭素数が12以上24以下のものを用いるとよい。この場合、炭化水素は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、さらに、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。
【0085】
これらの炭化水素系化合物としては、NR-158(日華化学(株)製)、TH-44(日華化学(株)製)、PW-182(大和化学(株)製)、ファボールRSH(ハンツマン・ジャパン(株)製)、パラヂウムECO-500(大原パラヂウム化学(株)製)、パラヂウムECO-85A(大原パラヂウム化学(株)製)、NX018((株)ナノテックス製)、メイシードP-300C(明成化学工業(株)製)、NT-X028(Nanotex,LLC.製)、miDorievoPelNF(BeyondSurfaceTechnologiesAG製)、XF-5001(ダイキン工業(株)製)等が市販されている。また、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物を含む製品としては、NEOSEED NR-158(日華化学(株)製)などが市販されている。
【0086】
2.2.2 シリコーン系化合物
シリコーン系化合物は、下記式(S1)で表されるオルガノ変性シリコーンであってもよい。当該シリコーン系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、下記式(S1)において、各構造単位はブロックであっても、ランダムであっても、交互に配列していてもよい。
【0087】
【化6】
[式(S1)中、R
20、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基であり、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基であり、aは0以上の整数であり、bは1以上の整数であり、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0088】
工業的に製造し易く、入手が容易であるという点で、R20、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0089】
上記の芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基としては、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、フェニルエチル基及びフェニルプロピル基のうちの一方又は両方が好ましい。
【0090】
上記の炭素数8~40のアルキル基は、コーティング剤の裏抜けを防止できる点で、炭素数12~36のアルキル基が好ましく、炭素数16~34のアルキル基がより好ましい。尚、アルキル基の炭素数が少ない方が、積層繊維布帛の柔軟性が優れる傾向にある。また、アルキル基の炭素数が大きい方が、裏抜けを防止できる傾向にある。また、炭素数40を超えると、撥水剤の安定性が低下する傾向にある。さらに、炭素数が8未満である場合、裏抜けし易くなる傾向にある。
【0091】
オルガノ変性シリコーンにおいて、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R30、R31、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、中でもメチル基であることがより好ましい。
【0092】
オルガノ変性シリコーンにおいて、aは0以上の整数である。工業的に製造しやすく、入手が容易であり、剥離強度がより優れるという点で、aは、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
【0093】
オルガノ変性シリコーンにおいて、(a+b)は10~200である。工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、(a+b)は、20~100であることが好ましく、40~60であることがより好ましい。(a+b)が上記範囲内であると、シリコーン自体の製造や取り扱いが容易になる傾向にある。
【0094】
シリコーン系化合物は、具体的には、ゲラネックスSH(松本油脂(株)製)、ドライポン600E(日華化学(株)製)、ポロンMR(信越化学工業(株)製)、ポロンMF-49(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0095】
シリコーン系化合物は、例えば、シリコーンレジン及びシリコーンオイルのうちの少なくとも一方であってもよい。この場合のシリコーン系化合物も、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
シリコーンレジンは、構成成分としてMQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含み、25℃にて固形状であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンであってもよい。ここで、M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)3SiO0.5単位、(R’’)2SiO単位、R’’SiO1.5単位及びSiO2単位を表す。R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0097】
シリコーンレジンは、一般に、MQレジン、MTレジン又はMDTレジンとして知られており、MDQ、MTQ又はMDTQと示される部分を有することもある。
【0098】
シリコーンレジンは、これを適当な溶媒に溶解させた溶液としても入手することができる。溶媒としては、例えば、比較的低分子量のメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、n-ヘキサン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン及びこれらの溶媒の混合物等が挙げられる。
【0099】
シリコーンレジンの溶液としては、例えば、信越化学工業(株)より市販されているKF7312J(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:デカメチルシクロペンタシロキサン=50:50混合物)、KF7312F(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン)、KF9021L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)、KF7312L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)等が挙げられる。
【0100】
シリコーンレジン単独としては、例えば、東レダウコーニング(株)より市販されているMQ-1600solidResin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン)、MQ-1640FlakeResin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン)などが挙げられる。上記市販品は、トリメチルシリル基含有ポリシロキサンを含み、MQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含むものである。
【0101】
シリコーンオイルは、直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基を有するものであってもよい。このようなシリコーンオイルとしては、疎水化シリコーンオイル、官能基化シリコーンオイルと同じものを使用することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪族アミド変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0102】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかにアミノ基及び/又はイミノ基を含む有機基を有する化合物が挙げられる。このような有機基としては、-R-NH2で表される有機基、-R-NH-R’-NH2で表される有機基が挙げられる。R及びR’としては、エチレン基、プロピレン基等の2価の基が挙げられる。アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基であってもよい。封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基は、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を封鎖剤で処理することにより得られる。封鎖剤としては、例えば、炭素数2~22の脂肪酸、炭素数2~22の脂肪酸の酸無水物、炭素数2~22の脂肪酸の酸ハライド、炭素数1~22の脂肪族モノイソシアネートなどが挙げられる。
【0103】
アミノ変性シリコーンオイルの官能基当量は、撥水性の観点から、100~20000g/molが好ましく、150~12000g/molがより好ましく、200~4000g/molがより好ましい。
【0104】
アミノ変性シリコーンオイルは25℃で液状であることが好ましい。アミノ変性シリコーンオイルの25℃における動粘度は、10~100,000mm2/sであることが好ましく、10~30,000mm2/sであることがより好ましく、10~5,000mm2/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm2/sより大きい場合、粘度が高すぎて作業性が悪くなる傾向にある。25℃における動粘度とは、JISK2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0105】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、市販品としても容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF8005、KF-868、KF-864、KF-393、KF-8021(いずれも、信越化学工業(株)製、商品名)、TSF-4709、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、商品名)、BY16-872、SF-8417、BY16-853U、BY16-892(いずれも、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)、KF-8010(信越化学工業(株)製)、WACKER(登録商標) FINISH WR 301(旭化成ワッカーシリコーン製)などが挙げられる。
【0106】
また、アミノ変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルも同様に市販品として容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF-101(信越化学工業(株)製、商品名、エポキシ変性シリコーンオイル)、X-22-3701E(信越化学工業(株)製、商品名、カルボキシル変性シリコーンオイル)、SF8428(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、カルビノール変性シリコーンオイル)、KF-9901(信越化学工業(株)製、商品名、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、X-22-715(信越化学工業(株)製、商品名、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル)、KF-96-3000cp(信越化学工業(株)製、商品名、ジメチルシリコーンオイル)、SF8416(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキル変性シリコーンオイル)、SH203(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル)、SF8410(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)などが挙げられる。
【0107】
2.2.3 その他の成分
撥水被膜は、縫い目ズレやスナッグの発生を防止するためのシリカ等の無機微粒子、シリコーン等の柔軟剤、塩酸グアニジンや高級アルコール硫酸エステル塩、アミン塩、ポリエチレングリコール型、ベタイン型界面活性剤等の帯電防止剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0108】
2.2.4 撥水被膜の厚みや位置
撥水被膜は、繊維布帛の少なくとも一部に形成される。撥水被膜は、繊維布帛の表面に形成されていてもよい。また、繊維布帛を構成する繊維の糸と糸との間の一部に撥水性樹脂が溜ることがあるが、本実施形態においてもこのような箇所が存在していてもよい。繊維布帛に形成された撥水被膜の厚みは、例えば、1μm以下であってもよく、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下である。撥水被膜の厚みが100nm以下の場合、当該撥水被膜を確認することが難しい場合があるが、この場合は、繊維布帛に対して撥水性の試験を行った場合に、撥水性を有し、かつ、撥水性が3級以上であれば、繊維布帛に撥水被膜が形成されているものとみなす。
【0109】
撥水被膜は、繊維布帛を構成する繊維(糸)の表面の少なくとも一部に付着したものであってもよいし、繊維布帛を構成する繊維(糸)の表面全部に付着したものであってもよい。さらに、撥水被膜は、繊維布帛を構成する繊維(糸)に点在するように付着していてもよい。
【0110】
2.3 コーティング剤被膜
コーティング剤被膜により、繊維布帛に対して優れた防風性を付与することができる。また、コーティング剤被膜は、中綿抜け防止や防水にも寄与し得る。コーティング剤被膜は、上記の繊維布帛の片面に形成される。また、コーティング剤被膜は、上記の撥水被膜の表面の少なくとも一部に形成される。また、コーティング剤被膜は、上記本開示のコーティング剤からなる。
【0111】
コーティング剤被膜を構成するコーティング剤については、上述の通りである。すなわち、コーティング剤被膜は、上述の樹脂(A)と多価金属塩(B)とその他の任意成分とを含む。各成分の比率については、上述の通りである。コーティング剤被膜は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、触媒、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、その他の撥水剤、二酸化ケイ素などの耐水性向上剤、顔料、赤外線吸収剤等の各種の添加剤が添加されていてもよい
【0112】
コーティング剤被膜は、多孔質であってもよいし無孔質であってもよい。防風性だけではなく通気性も要求される場合には、積層繊維布帛におけるコーティング剤被膜が多孔質膜であってもよいし、積層繊維布帛の片面の一部にコーティング剤被膜が存在しない個所があってもよい。コーティング剤被膜が存在しない個所としては、例えば、織物では経糸と緯糸の重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部などの全部又は一部、或いは、当該コーティング剤被膜に形成された貫通孔などが挙げられる。積層繊維布帛は、コーティング剤被膜が形成された面において、織物では経糸と緯糸とが重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部等、一部にコーティング剤被膜が形成されていない箇所を有するものであってもよい。
【0113】
コーティング剤被膜の厚みは、目的とする防風性等に応じて適宜決定されればよい。防風性に加えて風合いの観点から、コーティング剤被膜の厚みは、500μm以下であってもよく、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0114】
積層繊維布帛は、繊維布帛の片面にコーティング剤被膜を有している。積層繊維布帛の他の一方の面においては、繊維布帛が最表面を形成していてもよい。尚、繊維布帛が最表面を形成する面においても、糸と糸の境目などにコーティング剤被膜を構成する樹脂が存在していてもよい。積層繊維布帛は、好ましくは、当該積層繊維布帛の片面にのみ、コーティング剤被膜が形成されており、かつ、繊維布帛が最表面を形成する面には、当該コーティング剤被膜を構成する樹脂が存在しないものである。
【0115】
2.4 撥水性
積層繊維布帛の撥水性は、例えば、JIS L1092はっ水度試験(スプレー試験)において、3級以上であってもよく、好ましくは4級以上、より好ましくは5級である。撥水性が3級以上であれば、繊維布帛の片面に、コーティング剤被膜をより容易に付着させることができる。また、当該積層繊維布帛を用いて繊維製品等を作製した場合にも、優れた撥水性によって、生地の濡れを抑制することができる。
【0116】
2.5 通気度
積層繊維布帛の通気度は、JIS L1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて試験を行った場合において、1cm3/cm2・s以下であってもよい。また、積層繊維布帛の耐久通気度は、2cm3/cm2・s以下であってもよい。尚、「耐久通気度」とは、積層繊維布帛に対してJIS L0217 103法に準じて洗濯処理を10回行った後の通気度をいう。1回あたりの洗濯時間を25分、1回あたりのすすぎ時間を10分とした洗濯処理を5回行い、これを繰り返して、10回の洗濯処理を行うものとする。乾燥は、10回の洗濯処理の後、つり干しにて1回を行うものとする。
【0117】
積層繊維布帛に防水性が必要な場合、積層繊維布帛の耐水圧は、例えば、JIS L1092耐水度試験(静水圧法)A法(低水圧法)にて測定した場合において、250mm以上であってもよく、好ましくは350mm以上、より好ましくは1000mm以上、さらにより好ましくは2000mm以上である。耐水圧が250mm以上の積層繊維布帛は、雨傘やレインコートといった各種の防水製品の防水素材として用いることができる。また、耐水圧が2000mm以上の積層繊維布帛は、カッパやスキーウエアーといったより優れた防水性が求められる製品の防水素材として用いることができる。また、積層繊維布帛が山岳用品やライダー用レインウエアー等の素材として用いられる場合には、積層繊維布帛の耐水圧は、JIS L1092耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)にて測定した場合において、好ましくは100kPa以上である。
【0118】
3.積層繊維布帛の製造方法
上述の積層繊維布帛は、例えば、以下の方法により製造することができる。一実施形態において、積層繊維布帛の製造方法は、繊維布帛を第1処理液で処理して撥水性布帛を得ること(S1)、及び、前記撥水性布帛の片面を第2処理液で処理すること(S2)、を含む。前記第1処理液は、非フッ素系撥水剤を含む。また、前記第2処理液は、上記本開示のコーティング剤を含む。
【0119】
3.1 S1
S1においては、繊維布帛を第1処理液で処理して撥水性布帛を得る。具体的には、繊維布帛を第1処理液で処理することで、繊維布帛の少なくとも一部に撥水被膜を形成し、撥水性布帛を得る。
【0120】
第1処理液は、非フッ素系撥水剤を含む。非フッ素系撥水剤の具体例については、上述の通りである。第1処理液は、溶液であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。第1処理液の溶媒は、例えば、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、トルエン及びミネラルスピリット等から選ばれる少なくとも1種であってよい。第1処理液は、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、スリップ防止剤、無機粒子、有機粒子等の各種の添加剤を含んでいてもよい。また、第1処理液は、溶媒に対する各成分の溶解、乳化、分散のための界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤の量は、後述のS2において第2処理液が繊維布帛に浸透(裏抜け)することを抑制するために、できるだけ少ない方が好ましい。
【0121】
繊維布帛を第1処理液で処理する方法は、ディップ-ニップ法、グラビア転写法、又は、スプレー法などの公知の方法が採用されればよい。生産性や加工の安定性の観点からは、ディップ-ニップ法によって繊維布帛を第1処理液で処理するとよい。
【0122】
S1においては、繊維布帛を第1処理液で処理した後、さらに、任意に熱処理を行ってもよい。熱処理方法としては、繊維布帛の素材や第1処理液に含まれる成分の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、135℃以上210℃以下で、10秒以上10分以下の熱処理を行ってもよい。また、S1においては、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。この場合、乾燥は、60℃以上135℃以下で、10秒以上10分以下行ってもよい。乾燥の温度は、熱処理の温度よりも低い方がよい。熱処理の前に乾燥を行うことにより、繊維に対してより均一な撥水被膜を形成することができる。
【0123】
3.2 S2
S2においては、S1にて得られた撥水性布帛について、その片面を第2処理液で処理する。具体的には、撥水性布帛の片面を第2処理液で処理することで、撥水性布帛の片面にコーティング剤被膜を形成し、積層繊維布帛を得る。
【0124】
第2処理液は、上記本開示のコーティング剤を含む。第2処理液は、溶液であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。第2処理液の溶媒は、例えば、水であってもよい。第2処理液は、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、赤外線吸収剤、その他の撥水剤、スリップ防止剤、無機粒子、有機粒子、顔料等の各種の添加剤を含んでいてもよい。また、第1処理液は、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の各種の有機溶剤を含んでいてもよい。また、第2処理液は、溶媒に対する各成分の溶解、乳化、分散のための界面活性剤を含んでいてもよい。
【0125】
尚、浸透剤としての界面活性剤については、含まれていない方がよく、含まれていても少量であるとよい。第2処理液が浸透剤を含まないか、含んでいたとしても少量とすることで、第2処理液が布帛に浸透(裏抜け)することを抑制することができる。これにより、撥水性布帛の片面に、コーティング剤被膜をより適切に形成することができる。第2処理液における浸透剤の含有量は、第2処理液の布帛への含浸抑制の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。浸透剤の材料としては、溶媒として水を用いたものでは、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、HLB10以上のアルキルアリルエーテル、及び、ジエタノールアミン等から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、特に、これらのナトリウム塩が挙げられる。これらは、ペレックスNBL(花王(株)製)、ペレックスOTP(花王(株)製)、スコアリンSW(新中村化学工業(株)製)等として販売されている。
【0126】
S2において、コーティング剤は、使用する加工装置に適した粘度に調整して、使用することができる。すなわち、コーティング剤の粘度を調整し、これを第2処理液として用いてもよい。第2処理液の粘度は、特に限定されるものではないが、5,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であることが好ましく、5,000mPa・s以上40,000mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が低過ぎると、裏抜けを起こす場合があり、粘度が高過ぎると、かすれが発生する場合がある。本開示において、第2処理液の粘度(mPa・s)は、内径50mmのガラス瓶に第2処理液を200ml入れ、B型粘度計((株)トキメック、BM型粘度計、測定温度(25℃))を用いて測定した値である。
【0127】
コーティング剤の繊維布帛への良好な塗工性を得る観点から、第2処理液の粘性を特定範囲に調整することが好ましい。粘性はPVI値により評価することができる。PVI値とは、捺染粘性指数のことであり、本開示において、第2処理液の粘度を前記の粘度測定条件で、回転数60rpmと6rpmで測定し、下記式により計算される値である。
PVI値=回転数60rpmでの測定値÷ 回転数6rpmでの測定値
【0128】
第2処理液のPVI値は、0.10以上0.50以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.30以下である。PVI値が0.10以上である場合、コーティング時にかすれを生じさせることなく十分な塗布量を与えることができ、加工適性が示される。一方で、PVI値が0.50より大きい場合、塗布量が過剰となったり、風合が硬化する場合がある。第2処理液の粘度・粘性は上記増粘剤の種類・配合量を変更することで調整すればよい。
【0129】
第2処理液を得る方法としては、特に制限されず、樹脂(A)及び多価金属塩(B)と、増粘剤等の任意成分とを配合、撹拌混合し、粘度、pH、固形分等を調整する方法が挙げられる。各成分を配合する順番や方法は適宜変更することができる。撹拌混合する方法としては、従来公知の撹拌装置や乳化分散装置を使用することができる。従来公知の撹拌装置や乳化分散装置としては、特に制限はなく、プロペラ、コロイドミル、ビーズミル、マイルダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ホモディスパー、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバーストなどの撹拌装置や乳化分散機を挙げることができる。
【0130】
第2処理液における分散粒子は、好ましくは、0.5μm以上30μm以下の平均粒子径d(50)を有し、かつ、200μm以下の最大粒子径d(max)を有し、より好ましくは、0.5μm以上20μm以下の平均粒子径d(50)を有し、かつ、100μm以下の最大粒子径d(max)を有する。平均粒子径d(50)が大き過ぎる場合、また、最大粒子径d(max)が大き過ぎる場合、コーティング剤の製品安定性が低下する場合がある。一方で、平均粒子径d(50)が小さ過ぎる場合、粒径を小さくするために多大の時間とコストが必要となるため、工業的に好ましくない場合がある。粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算体積粒度分布を測定し、積算体積が50%となる粒径(メジアン粒径)を平均粒子径d(50)とし、積算体積が100%となる粒径(最大粒径)を最大粒子径d(max)とする。
【0131】
第2処理液のpHは、6.0以上10.0以下に調整されることが好ましく、7.0以上9.0以下に調整されることがより好ましい。pHが小さ過ぎる場合や大き過ぎる場合は、第2処理液の粘度低下や製品安定性の低下を招き、繊維布帛に対する塗布量が過剰となったり、裏抜けが生じる恐れがある。
【0132】
撥水性布帛の片面を第2処理液で処理する方法としては、グラビアコーター、ナイフコーター、ナイフオーバーロールコーター、バーコーター、リバースコーター、又は、グラビアコーター等を用いたコーティング法、或いは、スプレーノズル等を用いたスプレー法が挙げられる。特に、コーティング法によって、第2処理液を撥水性布帛の片面に付与することが好ましい。
【0133】
S2においては、上記の通りにして、撥水性布帛の片面を第2処理液で処理した後、第2処理液から溶媒及び揮発性物質を除去し、さらに、必要に応じて熱処理を行うことにより、撥水性布帛の片面に、コーティング剤被膜を形成することができる。溶媒等の除去方法は、特に限定されるものではない。例えば、撥水性布帛の片面に第2処理液を付与した後に熱処理を行うことで、溶媒を除去することができる。熱処理は、例えば、135℃以上240℃以下で、10秒以上10分以下行ってもよい。また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。乾燥は、60℃以上135℃以下で10秒以上10分以下行ってもよい。
【0134】
S2により形成されるコーティング剤被膜は、上述の通り、多孔質であってもよいし、無孔質であってもよい。コーティング剤被膜中に、水(酸性やアルカリ性の水、熱水や温水等を含む)に溶解性を有する物質が含まれている場合、それぞれの物質に合わせたアルカリ性の水などを用いてソーピングを行って、コーティング剤被膜の中に含まれる水に溶解する物質を除去して当該被膜を多孔質膜にしてもよい。
【0135】
S2においては、撥水性布帛に対する第2処理液の含浸防止の観点から、撥水性布帛の片面を第2処理液で処理する前に、カレンダー加工を行ってもよい。
【0136】
S2においては、撥水性布帛の片面にコーティング剤被膜を形成した後に、撥水加工、消臭加工、紫外線遮蔽加工、赤外線吸収加工、抗菌防臭加工、制菌加工、及び、難燃加工のうちの少なくとも1種の加工を施してもよい。また、コーティング剤被膜の表面に、捺染法やグラビア転写法で顔料を用いて模様や絵、柄などを付与したり、コーティング剤被膜の表面の風合いやタッチを変えたり、滑り止め性を付与するためにコーティング剤被膜に樹脂や微粒子などを付与してもよい。
【0137】
また、撥水性布帛の塗布面とは反対側の面には、他の織物や編物などの繊維布帛が、接着剤などを用いて貼り合わされてもよい。
【0138】
4.繊維製品
上述の積層繊維布帛は、各種の繊維製品の材料として用いられる。すなわち、繊維製品は、その少なくとも一部に、上述の積層繊維布帛を備える。繊維製品の具体例としては、例えば、コート、ジャケット、ジャンパー、ダウンウエアー、帽子、手袋、スキーウエアー、ウインドブレーカー、または、作業着などの衣服、あるいは、鞄、テント、寝袋、ダウンパック等が挙げられる。本開示の積層繊維布帛を用いた繊維製品は、優れた防風性を有するほか、柔らかい風合いで、外観品位に優れ、ファッション性にも優れた繊維製品である。
【0139】
5.効果
本開示のコーティング剤、積層繊維布帛及びその製造方法によれば、非フッ素系撥水剤を用いて加工された繊維布帛に対しても、コーティング剤の裏抜けがなく、繊維布帛の片面にコーティング剤被膜を適切に付与することができる。このため、撥水性に加えて、優れた防風性(特に、洗濯後の防風性)、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)を有し、かつ、風合い及び外観品位に優れた積層繊維布帛を得ることができる。また、非フッ素系撥水剤としてシリコーン系撥水剤を用いた場合であっても、コーティング剤被膜の剥離が抑えられ、柔軟性に優れた積層繊維布帛を得ることができる。このような積層繊維布帛によれば、優れた撥水性、防風性、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)を有し、かつ、風合い及び外観品位に優れた、衣服、靴、鞄、テント等の各種の繊維製品を提供することができる。これらの繊維製品は防水性も期待できる。
【実施例0140】
以上の通り、本開示の技術の一実施形態について説明したが、本開示の技術は、その要旨を逸脱しない範囲で上記の実施形態以外に種々変更が可能である。以下、実施例を示しつつ、本開示の技術についてさらに詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
【0141】
1.樹脂(A)の合成
以下の原料を用いて、樹脂(A)を合成した。
【0142】
ラジカル重合性単量体(a1):
ST:スチレン(ガラス転移温度:80℃)
BzAc:ベンジルアクリレート(ガラス転移温度:6℃)
【0143】
ラジカル重合性単量体(a2):
MA:メタクリル酸(ガラス転移温度:228℃)
AA:アクリル酸(ガラス転移温度:106℃)
【0144】
ラジカル重合性単量体(a3):
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(ガラス転移温度:-70℃)
BA:ブチルアクリレート(ガラス転移温度:-55℃)
MMA:メチルメタアクリレート(ガラス転移温度:105℃)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ガラス転移温度:―15℃)
【0145】
界面活性剤:
ニューコール(登録商標)707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、50質量%溶液、日本乳化剤(株)製)
ニューコール(登録商標)723(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、日本乳化剤(株)製)
TSP-20E(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物)
TSP-10ES(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステル塩、50質量%溶液)
【0146】
1.1 合成例1
反応装置に、イオン交換水(327質量部)、ニューコール707SF(5質量部)、ニューコール723(10質量部)、単量体(a1)としてのスチレン(80質量部)、単量体(a2)としてのメタアクリル酸(5質量部)単量体(a3)としての2-エチルヘキシルアクリレート(275質量部)、及び、単量体(a3)としての2-ヒドロキシエチルメタクリレート(40質量部)を仕込み、攪拌混合し、乳化混合液を調製した。反応装置内を窒素ガスに置換した後、攪拌しながら、装置の内温を80±5℃に加温した。別容器にイオン交換水(230質量部)、ニューコール707SF(5質量部)、及び、過硫酸アンモニウムの10質量%水溶液(20質量部)を仕込み、開始剤溶液を作製した。次に、上記乳化混合液に開始剤溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、上記装置の内温を80±5℃に保ちながら、さらに3時間反応を行った。その後、内温を25±5℃まで冷却した。次いで、25%アンモニア水で中和しpH7~9、樹脂分濃度40質量%になるように調整して、樹脂エマルジョン(A-1)を得た。得られた樹脂の芳香環率(計算値)は15%、酸価(計算値)は8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg、計算値)は-30℃であった。
【0147】
1.2 合成例2~6
各成分を表1のようにしたこと以外は、合成例1と同様に操作を行って樹脂エマルジョン(A-2)、(A-3)、(B-1)、(B-2)及び(B-3)を得た。それぞれの芳香環率(計算値)、酸価(計算値)、ガラス転移温度(Tg、計算値)を表1に示す。
【0148】
【0149】
2.積層繊維布帛の作製
2.1 実施例1
2.1.1 繊維布帛の用意
ポリエステル繊維を用いた編物(天竺、46ゲージ、56デシテックス/96フィラメント、加工糸、丸断面糸)を、分散染料で青色に染色し、熱セットを行った。
【0150】
2.1.2 撥水処理
染色及び熱セット後の上記編物に対して、下記の第1処理液を、ディップ-ニップ法で付与し、130℃で1分間乾燥した後、170℃で1分間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。当該撥水性布帛の撥水性は4級であった。したがって、優れた撥水性を有しており、布帛の繊維表面に非フッ素系撥水剤を含有する撥水被膜が付着していることが確認できた。
【0151】
第1処理液:
非フッ素系撥水剤 5%
ブロックドイソシアネート系架橋剤 0.5%
安定化剤 1.0%
水 残部
【0152】
尚、上記の「非フッ素系撥水剤」としては、実施例1、後述の実施例2~17、19~22、及び、比較例1~4については「シリコーン系化合物を含む撥水剤」を、実施例18については「シリコーン化合物と炭化水素系化合物とを含む撥水剤」を、実施例23については「炭化水素系化合物を含む撥水剤」を各々用いた。また、上記の「ブロックドイソシアネート系架橋剤」としては、NKアシストFU(日華化学(株)製)を用いた。また、上記の「安定化剤」としては、テキスポートBG-290(日華化学(株)製)を用いた。
【0153】
2.1.3 コーティング処理
撥水性布帛の片面に、コーティング法により下記の第2処理液を付与した(ナイフコーターを用い、フローティングにより第2処理液を塗布)。引き続き、110℃、60秒の乾燥を行い、次に、150℃、30秒の熱処理を行うことで、撥水性布帛の片面にコーティング剤被膜が積層された積層繊維布帛を得た。
【0154】
第2処理液:
表2に示される樹脂(A) 100部
アンモニア水(25%) 1部
増粘剤 4部
硫酸カルシウム 1000ppm
イソシアネート系架橋剤 1部
【0155】
尚、上記の「増粘剤」としては、NEOSTEKER V-420(日華化学(株)製)を用いた。また、上記の「イソシアネート系架橋剤」としては、NKアシストIS-100N(日華化学(株)製)を用いた。
【0156】
2.2 実施例2~23、比較例1~4
第2処理液に含まれる樹脂(A)の種類や多価金属塩(B)の種類や量を下記表2又は3に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層繊維布帛を得た。
【0157】
尚、比較例1は、樹脂(A)の芳香環率が30%を上回る例である。また、比較例2は、樹脂(A)の芳香環率が0.5%を下回る例である。また、比較例3は、塩(B)として、多価金属塩に替えて、一価金属塩を用いた例である。また、比較例4は、塩(B)を含まない例である。
【0158】
2.3 参考例1、比較例5~6
第1処理液において、シリコーン系撥水剤に替えて、フッ素系撥水剤(NKガードS-33、日華化学社製)を付与して撥水性布帛を得たこと以外は、実施例3、比較例1又は比較例2と同様にして積層繊維布帛を得た。
【0159】
3.積層繊維布帛の評価
3.1 撥水性
JIS L1092:2009 はっ水度試験 スプレー法に準じて試験を行い、積層繊維布帛の撥水性を確認した。
【0160】
3.2 通気度
JIS L1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて試験を行い、積層繊維布帛の通気度を測定した。通気度が低いものほど、防風性に優れるものといえる。
【0161】
3.3 耐久通気度
下記の10回の洗濯処理後、上記と同様にして、積層繊維布帛の通気度を測定した。通気度の低いものほど、洗濯後の防風性に優れるものといえる。
【0162】
3.4 被膜剥離性
下記の10回の洗濯処理後、積層繊維布帛のコーティング剤被膜の剥離性を目視にて観察した。被膜の変化が無いものを合格(○)とし、被膜が剥離又は白化したものを不合格(×)とした。
【0163】
3.4 風合い
積層繊維布帛を手で触って確認し、5段階で評価した。風合いの柔らかいものを5級、硬いものを1級とした。実験例、比較例、参考例の中で最も柔らかいものを5級、最も硬いものを1級として分類した。
【0164】
3.5 洗濯処理
積層繊維布帛に対してJIS L0217 103法に準じて洗濯処理を10回行った。具体的には、1回あたりの洗濯時間を25分、1回あたりのすすぎ時間を10分とした洗濯処理を5回行い、これを繰り返して、10回の洗濯処理を行った。乾燥は、10回の洗濯処理の後、つり干しにて1回を行った。
【0165】
下記表2及び3に、第2処理液に含まれる樹脂(A)、中和剤、増粘剤、塩(B)の種類及び含有量と、樹脂(A)の芳香環率、Tg、酸価及びPVI値と、樹脂(A)の単位(u2)の質量に対する塩(B)の質量比率と、積層繊維布帛の撥水性、通気度、耐久通気度(洗濯後通気度)、膜剥離性及び風合いとを示す。尚、表2、3において、A-1、A-2、A-3、B-1、B-2及びB-3は、各々、表1に示されるものと対応し、いずれも、樹脂分が40%のものである。また、表2、3において、樹脂(A)の単位(u2)とは、ラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位を意味する。
【0166】
【0167】
【0168】
上記表2及び3に示される結果から明らかなように、以下の(1)~(3)を満たすコーティング剤(実施例1~23、参考例1)を用いることで、撥水性布帛に対して防風性(特に、洗濯後の防風性)に優れるコーティング剤被膜を適切に形成可能といえる。
(1)コーティング剤は、樹脂(A)と、多価金属塩(B)とを含む。
(2)前記樹脂(A)は、共重合樹脂(A1)及び混合樹脂(A2)のうちの一方又は両方である。
(2-1)前記共重合樹脂(A1)は、上記式(1)で表されるラジカル重合性単量体(a1)に由来する単位(u1)と、上記式(2)で表されるラジカル重合性単量体(a2)に由来する単位(u2)とを有する。
(2-2)前記混合樹脂(A2)は、前記単位(u1)を有する樹脂(A2-1)と、前記単位(u2)を有する樹脂(A2-2)との組み合わせである。
(3)前記樹脂(A)の芳香環率は、0.5%以上30%以下である。
【0169】
これに対し、樹脂(A)の芳香環率が30%を上回る場合(比較例1及び5)、樹脂(A)の芳香環率が0.5%を下回る場合(比較例2及び6)、塩(B)として、多価金属塩に替えて一価金属塩を用いた場合(比較例3)、及び、塩(B)を含まない場合(比較例4)は、いずれも、耐久通気度が大きく、すなわち、洗濯後の防風性に劣る結果となった。