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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006505
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/58 20180101AFI20250109BHJP
【FI】
B05B15/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107339
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】亀井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】椙尾 聡
【テーマコード(参考)】
4D073
【Fターム(参考)】
4D073AA05
4D073AA09
4D073BB03
4D073CC03
4D073CC13
4D073CC17
(57)【要約】
【課題】使用者の利便性を向上させることができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る液体噴射装置1は、開閉可能であり、開かれている場合に液体が噴射されるノズル5と、液体源2から汲み上げた前記液体を前記ノズル5へ圧送するポンプ4と、該ポンプ4により圧送された前記液体が通流する流路(吐出路45及び圧送路12)と、該流路を通流する前記液体を前記ポンプ4の上流側(液体源2)へ返戻するための返戻路13と、該返戻路13を閉じ、前記流路の液圧が第1の液圧より高い場合に開く第1弁6と、前記流路を通流する前記液体を前記液体源2へ排出するための排出路15と、該排出路15を開き、前記流路の液圧が、前記第1の液圧より低い第2の液圧より高い場合に閉じる第2弁7とを備えることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能であり、開かれている場合に液体が噴射されるノズルと、
液体源から汲み上げた前記液体を前記ノズルへ圧送するポンプと、
該ポンプにより圧送された前記液体が通流する流路と、
該流路を通流する前記液体を前記ポンプの上流側へ返戻するための返戻路と、
該返戻路を閉じ、前記流路の液圧が第1の液圧より高い場合に開く第1弁と、
前記流路を通流する前記液体を前記液体源へ排出するための排出路と、
該排出路を開き、前記流路の液圧が、前記第1の液圧より低い第2の液圧より高い場合に閉じる第2弁と
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
開閉可能であり、開かれている場合に液体が噴射されるノズルと、
液体源から汲み上げた前記液体を前記ノズルへ圧送するポンプと、
該ポンプに回転運動を与えることによって前記ポンプを駆動する駆動源と、
前記ポンプにより圧送された前記液体が通流する流路と、
該流路を通流する前記液体を前記ポンプの上流側へ返戻するための返戻路と、
前記流路の液圧が低い場合に前記返戻路を閉じ、高い場合に開く第1弁と、
前記流路を通流する前記液体を前記液体源へ排出するための排出路と、
前記駆動源の回転数が低い場合に前記排出路を開き、高い場合に閉じる第2弁と
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
前記第2弁は、
弁座と弁体とを備え、
該弁体が、自重、又は前記弁体を前記弁座から離座する方向に付勢する付勢部材の付勢力により、前記弁座から離座している場合に前記排出路を開き、
前記弁体が、前記流路の液圧により前記弁座に着座している場合に前記排出路を閉じ、
前記弁体の前記弁座への着座が、前記流路から前記排出路に前記液体が流入した後で完了するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の液体噴射装置は、ポンプ、ノズル、及び流路(文中「吐液路」)を備える。ポンプは液体源から汲み上げた液体をノズルへ圧送する。ポンプにより圧送された液体は流路を通流する。
液体噴射装置の使用者は、手動でノズルを開閉する。ノズルが開かれている場合、ノズルから液体が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-001002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプは、例えば内燃機関のような駆動源からの回転運動を受けてプランジャが往復運動することにより、液体を圧送する。駆動源の回転数が高い場合、駆動源がポンプを駆動する力が大きいので、ポンプは流路内の液体の圧力(流路の液圧)に打ち勝って液体を圧送することができる。
一方、始動時の駆動源の回転数は低いので、ポンプが流路の液圧に打ち勝てず、ポンプの作動が阻止されることが懸念される。
そこで、使用者は駆動源の始動時に手動でノズルを開く。すると、流路の液圧が下がるので、ポンプは円滑に作動する。しかしながら、使用者の利便性は損なわれる。
【0005】
本開示の目的は、使用者の利便性を向上させることができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る液体噴射装置は、開閉可能であり、開かれている場合に液体が噴射されるノズルと、液体源から汲み上げた前記液体を前記ノズルへ圧送するポンプと、該ポンプにより圧送された前記液体が通流する流路と、該流路を通流する前記液体を前記ポンプの上流側へ返戻するための返戻路と、該返戻路を閉じ、前記流路の液圧が第1の液圧より高い場合に開く第1弁と、前記流路を通流する前記液体を前記液体源へ排出するための排出路と、該排出路を開き、前記流路の液圧が、前記第1の液圧より低い第2の液圧より高い場合に閉じる第2弁とを備えることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、ポンプが液体源から汲み上げた液体をノズルへ圧送する。ノズルは開閉可能であり、ノズルが開かれている場合にノズルから液体が噴射される。
ポンプが圧送する液体は流路を通流する。ノズルが閉じている場合はノズルから液体が噴射されないので、流路の液圧が上昇することがある。
【0008】
第1弁は返戻路を閉じている。ただし、流路の液圧が第1の液圧より高い場合には第1弁が返戻路を開くので、流路を通流する液体の少なくとも一部が、返戻路を通してポンプの上流側へ返戻される。故に、流路の液圧が過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプに過負荷が加わる不都合を防止することができる。ポンプの上流側に返戻された液体は再びノズルへ圧送され得るので、無駄がない。
【0009】
ポンプが作動していない場合、流路の液圧は第2の液圧以下である。ポンプが作動を開始した場合、液体がノズルへ圧送され始める。一般に、ポンプの作動開始直後は、ポンプが液体を圧送しようとする力(ポンプの圧送力)は小さい。しかしながら、第2弁が排出路を開いているので、流路を通流する液体の少なくとも一部が、排出路を通して液体源へ排出される。故に、流路の液圧が、ポンプの小さな圧送力に比して過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプは順調に作動する。
この結果、ポンプの作動開始時に、流路の液圧を下げる目的で使用者が手動でノズルを開く必要がない。故に、使用者の利便性を向上させることができる。また、排出路を通して排出された液体は液体源に回収されるので、無駄がない。
【0010】
ポンプの圧送力が増大することによって流路の液圧が第2の液圧より高くなれば、第2弁は排出路を閉じる。第2の液圧は第1の液圧より低いので、流路の液圧を、第2の液圧より高く、第1の液圧以下の液圧(ノズルからの液体の噴射に適した液圧)に保つことができる。
【0011】
本開示に係る液体噴射装置は、開閉可能であり、開かれている場合に液体が噴射されるノズルと、液体源から汲み上げた前記液体を前記ノズルへ圧送するポンプと、該ポンプに回転運動を与えることによって前記ポンプを駆動する駆動源と、前記ポンプにより圧送された前記液体が通流する流路と、該流路を通流する前記液体を前記ポンプの上流側へ返戻するための返戻路と、前記流路の液圧が低い場合に前記返戻路を閉じ、高い場合に開く第1弁と、前記流路を通流する前記液体を前記液体源へ排出するための排出路と、前記駆動源の回転数が低い場合に前記排出路を開き、高い場合に閉じる第2弁とを備えることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、ポンプが液体源から汲み上げた液体をノズルへ圧送する。ポンプは駆動源から回転運動が与えられることによって液体を圧送する。ノズルは開閉可能であり、ノズルが開かれている場合にノズルから液体が噴射される。
ポンプが圧送する液体は流路を通流する。ノズルが閉じている場合はノズルから液体が噴射されないので、流路の液圧が上昇することがある。
【0013】
流路の液圧が低い場合、第1弁は返戻路を閉じている。ただし、流路の液圧が高い場合には第1弁が返戻路を開くので、流路を通流する液体の少なくとも一部が、返戻路を通してポンプの上流側へ返戻される。故に、流路の液圧が過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプに過負荷が加わる不都合を防止することができる。ポンプの上流側に返戻された液体は再びノズルへ圧送され得るので、無駄がない。
【0014】
駆動源の回転数が低い場合、ポンプの圧送力は小さい。しかしながら、第2弁が排出路を開いているので、流路を通流する液体の少なくとも一部が、排出路を通して液体源へ排出される。故に、流路の液圧が、ポンプの小さな圧送力に比して過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプは順調に作動する。
この結果、駆動源の回転数が低い場合に、流路の液圧を下げる目的で使用者が手動でノズルを開く必要がない。故に、使用者の利便性を向上させることができる。また、排出路を通して排出された液体は液体源に回収されるので、無駄がない。
駆動源の回転数が高い場合、第2弁は排出路を閉じる。故に、流路の液圧を、ノズルからの液体の噴射に適した液圧まで上昇させることができる。
【0015】
本開示に係る液体噴射装置は、前記第2弁は、弁座と弁体とを備え、該弁体が、自重、又は前記弁体を前記弁座から離座する方向に付勢する付勢部材の付勢力により、前記弁座から離座している場合に前記排出路を開き、前記弁体が、前記流路の液圧により前記弁座に着座している場合に前記排出路を閉じ、前記弁体の前記弁座への着座が、前記流路から前記排出路に前記液体が流入した後で完了するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本開示にあっては、第2弁が弁座と弁体とを備える。
第2弁は、弁体が弁座から離座している場合に排出路を開き、弁体が弁体に着座している場合に排出路を閉じる。
弁体は、自重、又は弁体を弁座から離座する方向に付勢する付勢部材の付勢力により、弁座から離座する。また、弁体は、流路の液圧が弁体の自重及び/又は付勢部材の付勢力に打ち勝った場合に、弁体に着座する。
つまり、第2弁は流路の液圧の高/低に応じて自然に閉/開する。このような第2弁の構成は簡易である。
【0017】
第2弁は、弁体の弁座への着座が、流路から排出路に液体が流入した後で完了するように構成されている。故に、ポンプの作動開始前に流路に気体が溜まっていたとしても、流路から排出路を通って気体が排出されただけで第2弁が排出路を閉じてしまう虞がない。
【発明の効果】
【0018】
本開示の液体噴射装置によれば、使用者の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る液体噴射装置の構成を示すブロック図である。
図2】ポンプの外観、並びに第1弁及び第2弁夫々の断面を示す図である。
図3】第2弁の断面図である。
図4】通常運転中にノズルが閉じられている場合の液体の流れを説明するための図である。
図5】始動時の液体の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は実施の形態に係る液体噴射装置の構成を示すブロック図である。
図中1は液体噴射装置であり、液体噴射装置1は液体源2と共に用いられる。
液体源2は、例えば水道水、薬液等の液体が貯留されているタンクである。液体源2の液圧は大気圧に等しい。なお、液体源2はタンクに限定されず、河川、溜池等でもよい。
【0022】
液体噴射装置1は、駆動源3、ポンプ4、及びノズル5を備える。
駆動源3はエンジン31及びスタータ32を備える。エンジン31は、エンジン31が有する出力軸の回転運動をポンプ4に与えることによって、ポンプ4を駆動する。エンジン31は、例えばガソリンエンジンである。スタータ32は、停止しているエンジン31に回転運動を与えることによって、エンジン31の始動を補助する。スタータ32は、例えばモータである。
始動時のエンジン31の回転数は、スタータ32の回転数に対応する低い回転数R1(例えば500rpm)である。始動に成功したエンジン31の回転数は上昇する。エンジン31は、回転数R1より高い回転数R2(例えば3000rpm)で通常運転される。
【0023】
ポンプ4は、吸入口41、吸入路42、液体室43、プランジャ44、吐出路45、吐出口46、及び排出口47を備える。吸入口41は、給液路11を介して液体源2に接続されている。吸入路42は吸入口41から液体室43にわたる。プランジャ44は液体室43に配されており、エンジン31の出力軸に連動する。駆動源3から与えられた回転運動を受けてプランジャ44が往復運動することにより、液体室43に正圧及び負圧が交互に生じる。吐出路45は液体室43から吐出口46及び排出口47夫々にわたる。
【0024】
吸入路42と液体室43との間には逆止弁431が設けられている。通常、逆止弁431は閉じており、液体室43に負圧が生じた場合に開く。逆止弁431が開いている場合、吸入路42から液体室43に向けて液体が流入可能である。逆止弁431が閉じている場合、吸入路42と液体室43との間を液体が流れることはない。
液体室43と吐出路45との間には逆止弁432が設けられている。通常、逆止弁432は閉じており、液体室43に正圧が生じた場合に開く。逆止弁432が開いている場合、液体室43から吐出路45に向けて液体が流出可能である。逆止弁432が閉じている場合、液体室43と吐出路45との間を液体が流れることはない。
【0025】
ノズル5は受入口51及び噴射口52を備える。受入口51は、圧送路12を介してポンプ4の吐出口46に接続されている。噴射口52は、使用者による不図示のトリガーの手動操作に応じて開閉する。
吐出路45及び圧送路12は、ポンプ4が圧送する液体が通流する流路(以下、圧送流路という)として機能する。圧送流路の適正な液圧(ノズル5からの液体の噴射に適した液圧)は、第1の液圧P1以下であり、第2の液圧P2より高い。ここで、第2の液圧P2は第1の液圧P1より小さく、大気圧より大きい。
【0026】
圧送路12の中途と液体源2とは、返戻路13を介して互いに接続されている。返戻路13には圧送路12を通流する液体が流入し得る。
ポンプ4の排出口47は、中継路14及び排出路15を介して返戻路13の中途に接続されている。中継路14は排出口47及び排出路15の一端に直結している。排出路15は、排出路15の他端が返戻路13に直結することにより、液体源2に間接的に接続されている。
【0027】
液体噴射装置1は第1弁6及び第2弁7を更に備える。
図2はポンプ4の外観、並びに第1弁6及び夫々の断面を示す図である。
図1及び図2に示すように、第1弁6は圧送路12と返戻路13との分岐点に設けられている。第1弁6は、圧送路12の液圧が低い場合に返戻路13を閉じ、圧送路12の液圧が高い場合に返戻路13を開く。第1弁6として、例えばアンローダーバルブが用いられる。図2に示す第1弁6は、返戻路13を閉じている。
【0028】
第1弁6は、第1流路61、第2流路62、及び弁体63を備える。第1流路61は圧送路12の一部を構成している。第2流路62は第1流路61の中途から分岐しており、返戻路13の一部を構成している。弁体63は、第2流路62を閉じるように付勢されており、且つ、第1流路61の液圧が第1の液圧P1より高い場合に第2流路62を開く。
【0029】
図1及び図2に示すように、第2弁7は中継路14と排出路15との接続部分に設けられている。第2弁7は、エンジン31の回転数が低い場合に排出路15を開き、エンジン31の回転数が高い場合に排出路15を閉じる。
図2に示すように、第2弁7は、第1流路71、第2流路72、及び弁体73を備える。第1流路71は中継路14の一部を構成しており、上下に延びる。第2流路72は排出路15の一部を構成しており、一端が第1流路71の上端に連通している。
【0030】
図3は第2弁7の断面図である。図3Aは第2弁7が排出路15を開いている状態を示し、図3Bは第2弁7が排出路15を閉じている状態を示している。
第1流路71は、縦筒体701の内周面に囲まれた空間である。縦筒体701は円筒状をなす。縦筒体701の軸長方向は上下に向く。
【0031】
第2流路72は、有底筒体702の内面及び横筒体703の内周面に囲まれた空間である。有底筒体702は有底円筒状をなす。有底筒体702の下端部は、有底筒体702の開口が下を向き、縦筒体701の上端部が有底筒体702に挿入されることにより、縦筒体701の上端部に液密に連結されている。
有底筒体702の軸長方向の中途には、円筒状のシート部材704が、有底筒体702に同軸に、且つ液密に嵌め込まれている。シート部材704の下端面は縦筒体701の上端面に接触している。シート部材704の下側の開口の内周縁には面取りが施されている。
【0032】
有底筒体702の周壁には貫通孔705が設けられている。貫通孔705は、有底筒体702の内底面とシート部材704の上端面との間に位置している。横筒体703の軸長方向の一端部は、貫通孔705に挿入されることにより、有底筒体702の上端部に液密に連結されている。
【0033】
第2弁7は、弁座74及び付勢部材75を備える。
弁座74は第1流路71と第2流路72との境界部分に設けられている。具体的には、シート部材704の下側の開口の内周縁(面取りが施されている部分)が弁座74として機能する。
【0034】
弁体73は球状をなす。弁体73の外径はシート部材704の内径よりも大きい。弁体73は、上下方向に移動可能に、第1流路71内に配されている。弁体73は、上昇して弁座74に着座し、下降して弁座74から離座する。弁体73が弁座74に着座することにより、第2流路72が閉じられる。弁体73が弁座74から離座することにより、第2流路72が開かれる。縦筒体701の内周面には、離座している弁体73を受け止める段部706が設けられている。
【0035】
付勢部材75は第2流路72内にて弁体73の上部に載せられており、例えばコイルスプリングである。
第1流路71の液圧の高/低は吐出路45の液圧の高/低に影響される。吐出路45の液圧が第2の液圧P2以下である場合、第1流路71の液圧は低いので、弁体73は、自重及び付勢部材75の重量により、弁座74から離座している(図3A参照)。
【0036】
第1流路71の液圧が非常に低く、段部706が弁体73を受け止めている場合、液体は、段部706に受け止められた弁体73と縦筒体701との間に形成される不図示の空隙を通流する。
第1流路71の液圧の上昇に伴い、弁体73が段部706から離れて上昇を開始する。しかしながら、上昇した弁体73が弁座74に着座する前に、付勢部材75が弁体73と有底筒体702の内底面とに挟まれて圧縮される。このとき、付勢部材75が弁体73を弁座74から離座する方向に付勢するので、弁体73は弁座74に着座しない。
【0037】
吐出路45の液圧が第2の液圧P2より高い場合、第1流路71の液圧は高いので、弁体73の自重にも付勢部材75による付勢にも打ち勝って弁体73を押し上げ、弁座74に着座させる(図3B参照)。
【0038】
以上のような液体噴射装置1によれば、ポンプ4は、液体源2から汲み上げた液体をノズル5へ圧送する。更に詳細には、駆動源3がポンプ4を駆動することによって液体室43に負圧が生じた場合、液体源2の液体が給液路11及び吸入路42をこの順に通って液体室43に吸入される。駆動源3がポンプ4を駆動することによって液体室43に正圧が生じた場合、液体室43の液体が吐出路45及び圧送路12をこの順に通ってノズル5へ吐出(圧送)される。
【0039】
図1は、通常運転中にノズル5が開かれている場合の液体の流れを説明するための図でもある。液体が流れる方向は二点鎖線で示されている。
ノズル5へ圧送された液体は、受入口51を通してノズル5の内部空間に受け入れられる。
噴射口52が開かれている場合、ノズル5から噴射口52を通して液体が噴射される。噴射口52から噴射される液体の形態は限定されず、例えばストレート状、シャワー状、又はミスト状である。
噴射口52が閉じられている場合、液体はノズル5から噴射されない。
【0040】
図4は通常運転中にノズル5が閉じられている場合の液体の流れを説明するための図である。液体が流れる方向は二点鎖線で示されている。
ポンプ4の作動と停止とを切り換えるためにはエンジン31の作動と停止とを切り換える必要がある。液体噴射装置1の使用中にノズル5の開閉に応じてエンジン31の作動と停止とを切り換えることは非効率的なので、エンジン31及びポンプ4はノズル5の開閉とは無関係に作動し続ける。
故に、ノズル5からの液体の噴射後にノズル5が閉じられた場合、ノズル5及び圧送流路の液圧が上昇する。
【0041】
液体室43の液圧は、ポンプ4の逆止弁432が開かれたときに圧送流路の液圧に影響される。故に、圧送流路の液圧が過剰に上昇した場合、液体室43の液圧は過剰な高圧となる。すると、プランジャ44の往復運動が阻害され、ポンプ4に過負荷が加わる。
しかしながら、圧送流路の一部である第1流路61の液圧が第1の液圧P1より高い場合には第1弁6が返戻路13を開くので、圧送流路を通流する液体の少なくとも一部が返戻路13を通ってポンプ4の上流側へ返戻される。故に、圧送流路の液圧が第1の液圧P1を超えて過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプ4に過負荷が加わる不都合を防止することができる。
本実施の形態では液体が返戻路13を通して液体源2に回収されるので、無駄がない。
【0042】
例えばノズル5が再び開かれることによって第1流路61の液圧が下降し、第1の液圧P1以下になれば、第1弁6が返戻路13を閉じる(図1参照)。故に、液体が液体源2へ返戻されるせいでノズル5から噴射される液体の圧力が無用に低下する虞はない。従って、液体の散布又は液体による洗浄等を効果的に行なうことができる。
【0043】
ところで、通常運転時のエンジン31の回転数は高い(回転数R2である)。故に、エンジン31がポンプ4を駆動する力が大きいので、プランジャ44は液体室43の液圧(延いては圧送流路の液圧)に打ち勝って円滑に往復運動する。この結果、ポンプ4の圧送力が大きいので、ポンプ4は圧送流路の液圧に打ち勝って液体を圧送することができる。
【0044】
一方、始動時のエンジン31の回転数は低い(回転数R1である)。故に、エンジン31がポンプ4を駆動する力が小さいので、プランジャ44が液体室43の液圧に打ち勝てずに停止する(又は静止し続ける)ことが懸念される。プランジャ44とエンジン31の出力軸とは互いに連動しているので、プランジャ44が往復運動しなければ、エンジン31の出力軸が回転せず、エンジン31の始動が失敗に終わる。従って、ポンプ4を作動させることができない。
【0045】
返戻路13が開かれれば圧送流路の液圧を下げることができるが、エンジン31の始動時にはポンプ4の圧送力が小さいので、第1流路61の液圧が第1の液圧P1を上回って返戻路13が開かれることは期待できない。
使用者がノズル5を開けば圧送流路の液圧を下げることができるが、エンジン31の始動時にノズル5を開くことを使用者に強要すれば、使用者の利便性が損なわれる。
【0046】
図5は始動時の液体の流れを説明するための図である。図5(及び図3)において、液体が流れる方向は二点鎖線で示されている。
第2弁7は、エンジン31の回転数が低く、吐出路45の液圧が第2の液圧P2以下である場合に排出路15を開いている(図3A参照)。吐出路45は、中継路14、排出路15、及び返戻路13を介して液体源2に連通しているので、エンジン31の始動時には圧送流路の液圧は大気圧に等しい。故に、エンジン31がポンプ4を駆動する力は小さくとも、プランジャ44は液体室43の液圧に打ち勝って円滑に往復運動する。従って、エンジン31の始動を成功させることができる。また、ポンプ4の圧送力が小さくとも、ポンプ4は圧送流路の液圧に打ち勝って液体を圧送することができる。
【0047】
排出路15が開いている間、圧送流路を通流する液体の少なくとも一部が、中継路14、排出路15、及び返戻路13をこの順に通って液体源2に排出される。故に、圧送流路の液圧が、ポンプ4の小さな圧送力に比して過剰に上昇する虞はない。従って、ポンプ4は順調に作動する。
以上の結果、エンジン31の始動時(エンジン31の回転数が低く、吐出路45の液圧が第2の液圧P2以下である場合)に、圧送路12の液圧を下げる目的で使用者が手動でノズル5を開く必要がない。故に、使用者の利便性を向上させることができる。また、中継路14、排出路15、及び返戻路13を通して排出された液体は液体源2に回収されるので、無駄がない。
【0048】
エンジン31の始動に成功してエンジン31の回転数が高くなり、ポンプ4の圧送力が増大することによって第1流路61の液圧が第2の液圧P2より高くなれば、第2弁7は排出路15を開じる(図3B参照)。
以上の結果、圧送流路の液圧を適正な液圧に保つことができる。
【0049】
エンジン31の始動前に液体室43又は吐出路45等に気体が溜まっている場合、中継路14、排出路15、及び返戻路13は、いわゆるエア抜きのための気体通流路としても機能する。具体的には、液体室43又は吐出路45等に溜まっている気体は、液体によって液体室43又は吐出路45等から押し出され、中継路14、排出路15、及び返戻路13をこの順に通って液体源2に排出される。
付勢部材75のバネ定数及び弁座74のオリフィス径等は、弁体73の弁座74への着座が圧送流路から排出路15に液体が流入した後で完了するように設計される。故に、第2弁7は圧送流路から排出路15に液体が流入する前に排出路15を閉じることはない。つまり、第2弁7はエア抜き専用の弁とは異なる。
【0050】
なお、駆動源3はエンジン31及びスタータ32を備える構成に限定されず、例えばポンプ4に回転運動を与えるモータでもよい。しかしながら、エンジン31はモータに比べて始動時の回転数の上昇が緩やかなので、本開示の液体噴射装置1は、駆動源3がエンジン31を備える場合に特に好適である。エンジン31はガソリンエンジンに限定されず、水素エンジンでもよい。エンジン31は内燃機関に限定されず、外燃機関でもよい。
ポンプ4は回転運動を与えられる構成に限定されない。
【0051】
本実施の形態では返戻路13の一端が圧送路12の中途に接続され、返戻路13の他端が液体源2に接続される。しかしながら、返戻路13が接続される部位はこれらに限定されない。例えば、返戻路13の他端が給液路11の中途に接続されてもよい。返戻路13が液体源2に接続されない場合、排出路15は返戻路13ではなく液体源2に直接的又は間接的に接続されることが望ましい。
本実施の形態の第2弁7は、エンジン31の回転数の高/低に対応する圧送流路の液圧の高/低により、排出路15を自然に閉/開する。しかしながら、例えば第2弁7として電磁バルブが用いられてもよい。この場合、エンジン31の回転数が検出され、検出結果に応じて第2弁7の開閉が制御される。
【0052】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 液体噴射装置
12 圧送路(流路)
13 返戻路
15 排出路
2 液体源(ポンプの上流側)
3 駆動源
4 ポンプ
45 吐出路(流路)
5 ノズル
6 第1弁
7 第2弁
73 弁体
74 弁座
75 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5