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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006507
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】メタン製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20250109BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20250109BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107341
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野中 博樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】臼田 敬介
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA61
4H006BC10
4H006BD20
4H006BD60
4H006BD81
4H039CB20
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】メタン化触媒の量を低減できるメタン製造装置を提供すること。
【解決手段】本開示のメタン製造装置1は、原料ガスを第1反応器10及び第2反応器20に通すことでメタンを製造する。各反応器は、原料ガスを適温まで加熱する加熱部112と、適温に保たれる触媒によって原料ガスをメタネーション反応させる反応部113と、反応ガスを冷却する冷却部114と、それらの部を取り囲んだ状態で配置され、熱媒体が流される流路である熱媒体流路13と、を備える。熱媒体流路に供給された第1温度帯の熱媒体は、冷却部114の反応ガスとの間で熱交換して第1温度帯よりも高い第2温度帯となり、反応部113の触媒との間で熱交換して第2温度帯よりも高い第3温度帯となり、加熱部112の原料ガスとの間で熱交換して第3温度帯よりも低く第1温度帯よりも高い第4温度帯となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と二酸化炭素とを含む原料ガスを直列で接続された第1及び第2反応器に通すことでメタンを製造するメタン製造装置であって、
前記第1及び第2反応器は、それぞれ、
前記原料ガスをメタネーション反応に適した温度まで加熱する加熱部と、
メタネーション反応に適した温度に保たれる触媒によって、前記原料ガスをメタネーション反応させる反応部と、
前記原料ガスからメタネーション反応によって生成された反応ガスを前記反応ガスから水が凝縮される温度まで冷却する冷却部と、
前記加熱部、前記反応部及び前記冷却部を取り囲んだ状態で配置されており、熱媒体が流される流路である熱媒体流路と、を備え、
前記加熱部、前記反応部及び前記冷却部は、順に配置されており、
前記熱媒体流路に供給された第1温度帯の前記熱媒体は、
前記冷却部に対応する領域、前記反応部に対応する領域及び前記加熱部に対応する領域を順に通過するように前記熱媒体流路内を移動し、前記冷却部に対応する領域を通過する際、前記反応ガスとの間で熱交換して前記第1温度帯よりも高い第2温度帯となり、前記反応部に対応する領域を通過する際、前記触媒との間で熱交換して前記第2温度帯よりも高い第3温度帯となり、前記加熱部に対応する領域を通過する際、前記原料ガスとの間で熱交換して前記第3温度帯よりも低く前記第1温度帯よりも高い第4温度帯となる
メタン製造装置。
【請求項2】
前記第1及び第2反応器は、それぞれ、
前記加熱部を取り囲んだ状態で配置されており、前記熱媒体とは別の熱媒体である別熱媒体が流される流路である別熱媒体流路をさらに備え、
前記別熱媒体流路に供給された前記別熱媒体は、前記加熱部に対応する領域を通過するように前記熱媒体流路内を移動し、前記加熱部に対応する領域を通過する際、前記原料ガスを加熱し、
前記メタン製造装置は、
前記原料ガスのメタネーション反応が安定するまで、前記別熱媒体を前記別熱媒体流路に供給する別熱媒体供給部と、
前記原料ガスのメタネーション反応が安定した後、前記第1温度帯の前記熱媒体を前記熱媒体流路に供給する熱媒体供給部と、をさらに備える
請求項1に記載のメタン製造装置。
【請求項3】
前記第1及び第2反応器は、それぞれ、
前記加熱部を取り囲んだ状態で配置された導線部を備え、
前記メタン製造装置は、
前記原料ガスのメタネーション反応が安定するまで、前記導線部を介して前記原料ガスを加熱するヒータ回路と、
前記原料ガスのメタネーション反応が安定した後、前記第1温度帯の前記熱媒体を前記熱媒体流路に供給する熱媒体供給部と、をさらに備える
請求項1に記載のメタン製造装置。
【請求項4】
前記第1反応器で転化されるメタン転化率が前記第2反応器で転化されるメタン転化率よりも高くなるように前記原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給源をさらに備える
請求項1に記載のメタン製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素と二酸化炭素から構成される原料ガスを直列で接続された第1反応器と第2反応器に通すことでメタンを製造するメタン製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-083799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術では、常温の原料ガスを第1反応器へ、凝縮水を除去するため常温まで冷却した反応ガスを第2反応器に投入しているため、第1反応器及び第2反応器において原料ガスが接触するメタン化触媒において反応に適さない温度域の触媒領域が発生する。特許文献1に係る技術では、高価なメタン化触媒を必要以上に使用しているという課題があった。
【0005】
本開示は、そのような課題を鑑みることによって、メタン化触媒の量を低減できるメタン製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のメタン製造装置は、水素と二酸化炭素とを含む原料ガスを直列で接続された第1及び第2反応器に通すことでメタンを製造するメタン製造装置であって、前記第1及び第2反応器は、それぞれ、前記原料ガスをメタネーション反応に適した温度まで加熱する加熱部と、メタネーション反応に適した温度に保たれる触媒によって、前記原料ガスをメタネーション反応させる反応部と、前記原料ガスからメタネーション反応によって生成された反応ガスを前記反応ガスから水が凝縮される温度まで冷却する冷却部と、前記加熱部、前記反応部及び前記冷却部を取り囲んだ状態で配置されており、熱媒体が流される流路である熱媒体流路と、を備え、前記加熱部、前記反応部及び前記冷却部は、順に配置されており、前記熱媒体流路に供給された第1温度帯の前記熱媒体は、前記冷却部に対応する領域、前記反応部に対応する領域及び前記加熱部に対応する領域を順に通過するように前記熱媒体流路内を移動し、前記冷却部に対応する領域を通過する際、前記反応ガスとの間で熱交換して前記第1温度帯よりも高い第2温度帯となり、前記反応部に対応する領域を通過する際、前記触媒との間で熱交換して前記第2温度帯よりも高い第3温度帯となり、前記加熱部に対応する領域を通過する際、前記原料ガスとの間で熱交換して前記第3温度帯よりも低く前記第1温度帯よりも高い第4温度帯となる。
【0007】
上述のメタン製造装置は、そのような構成により、原料ガスを加熱し、第1反応器及び第2反応器において原料ガスが接触するメタン化触媒において反応に適さない温度域の触媒領域が発生することを防ぐ。そのため、上述のメタン製造装置は、メタン化触媒の量を低減できる。
【0008】
また、本開示のメタン製造装置では、前記第1及び第2反応器は、それぞれ、前記加熱部を取り囲んだ状態で配置されており、前記熱媒体とは別の熱媒体である別熱媒体が流される流路である別熱媒体流路をさらに備え、前記別熱媒体流路に供給された前記別熱媒体は、前記加熱部に対応する領域を通過するように前記熱媒体流路内を移動し、前記加熱部に対応する領域を通過する際、前記原料ガスを加熱し、前記メタン製造装置は、前記原料ガスのメタネーション反応が安定するまで、前記別熱媒体を前記別熱媒体流路に供給する別熱媒体供給部と、前記原料ガスのメタネーション反応が安定した後、前記第1温度帯の前記熱媒体を前記熱媒体流路に供給する熱媒体供給部と、をさらに備える。
【0009】
上述のメタン製造装置は、そのような構成により、時間短縮や省エネルギー化も実現できる。
【0010】
また、本開示のメタン製造装置では、前記第1及び第2反応器は、それぞれ、前記加熱部を取り囲んだ状態で配置された導線部を備え、前記メタン製造装置は、前記原料ガスのメタネーション反応が安定するまで、前記導線部を介して前記原料ガスを加熱するヒータ回路と、前記原料ガスのメタネーション反応が安定した後、前記第1温度帯の前記熱媒体を前記熱媒体流路に供給する熱媒体供給部と、をさらに備える。
【0011】
上述のメタン製造装置は、そのような構成により、時間短縮や省エネルギー化も実現できる。
【0012】
また、本開示のメタン製造装置は、前記第1反応器で転化されるメタン転化率が前記第2反応器で転化されるメタン転化率よりも高くなるように前記原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給源をさらに備える。
【0013】
上述のメタン製造装置は、そのような構成により、効率よくメタンを製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示により、メタン化触媒の量を低減できるメタン製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
図2】第2の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
図3】第3の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
図4】第4の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
図5】第5の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
図6】第6の実施形態に係るメタン製造装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係るメタン製造装置1の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るメタン製造装置1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、メタン製造装置1は、水素(H)と二酸化炭素(CO)とからメタン(CH)を製造する装置である。メタン製造装置1は、第1反応器10、第2反応器20、二酸化炭素供給源30、流量計31、水素供給源40,50、マスフローコントローラ(MFC)41,51、熱媒体供給部60,70、流量調節弁61,71、別熱媒体供給部80及びインラインヒータ81を備える。
【0017】
第1反応器10は、インナーチューブ11、アウターチューブ12及び熱媒体流路13、別熱媒体流路14を備える。
インナーチューブ11は、チューブ型の部材である。インナーチューブ11は、ガス入口部111、加熱部112、反応部113、冷却部114、凝縮水排出部115及びガス出口部116を備える。インナーチューブ11には、加熱部112、反応部113及び冷却部114がこの順に設けられる。
【0018】
ガス入口部111は、インナーチューブ11の一方側の端部に設けられる。ガス入口部111には、二酸化炭素供給源30及び水素供給源40から配管を介して、常温の原料ガス(CO+4H×α)が供給される。第1反応器10では、メタン転化率α(0.5<α<0.9)が設定され、供給される水素量も固定されている。
【0019】
加熱部112は、原料ガスを原料ガスにおけるメタネーション反応に適した温度(好ましくは150℃~200℃)まで加熱する。
反応部113には、メタン化触媒におけるメタネーション反応に適した温度(好ましくは200℃~300℃)に保たれるメタン化触媒が充填される。反応部113は、当該メタン化触媒によって原料ガスをメタネーション反応させる。メタン化触媒は、例えば、RuやNiなどのメタン化触媒性能を有する金属である。メタネーション反応は、CO+4H→CH+2HO-165KJの化学式で示される。
冷却部114は、原料ガスからメタネーション反応によって生成された反応ガス(CH+HO+CO)を反応ガスから水が凝縮されるための温度(好ましくは常温(30℃))まで冷却する。
【0020】
加熱部112、反応部113及び冷却部114は、後述する熱媒体と熱交換する。そのため、加熱部112、反応部113及び冷却部114に対応するインナーチューブ11の内壁は、熱伝導の高い銅などの材料でできている。また、加熱部112、反応部113及び冷却部114に対応するインナーチューブ11の内壁は、メッシュ構造を有する。
【0021】
凝縮水排出部115は、インナーチューブ11の他方側の端部に設けられる。凝縮水排出部115は、反応ガスから凝縮された常温の凝縮水(HO)を溜め、溜められた凝縮水を排出する。
ガス出口部116は、インナーチューブ11の他方側の端部に設けられる。ガス出口部116は、反応ガスから水が除去されたガスである反応混合ガス(CH+CO)を排出する。排出された反応混合ガスは、配管を介して第2反応器20に供給される。
【0022】
アウターチューブ12は、チューブ型の部材であり、インナーチューブ11の外側においてインナーチューブ11を取り囲むように配置される。アウターチューブ12は、断熱材でできており、真空断熱を含む断熱手段で外部と内部との熱交換を遮断する構造を有する。
【0023】
熱媒体流路13は、熱媒体が流される流路であり、インナーチューブ11とアウターチューブ12との間に設けられる。つまり、熱媒体流路13は、断熱構造を有する。熱媒体流路13は、幅が均一な螺旋構造の流路である。熱媒体は、例えばオイルである。熱媒体流路13の入口は、アウターチューブ12の他方側の端部においてアウターチューブ12を貫通するように設けられる。また、熱媒体流路13の出口は、アウターチューブ12の一方側の端部においてアウターチューブ12を貫通するように設けられる。具体的には、熱媒体流路13は、インナーチューブ11の加熱部112、反応部113及び冷却部114を取り囲んだ状態で配置されている。
【0024】
反応部113におけるメタネーション反応が安定するまでのアクティベーション(起動)動作時、熱媒体は、熱媒体流路13において停止している。そして、反応部113におけるメタネーション反応の安定後の通常動作時、熱媒体は、熱媒体供給部60から配管を介して第1温度帯(常温)で供給開始される。熱媒体は、冷却部114に対応する領域、反応部113に対応する領域及び加熱部112に対応する領域を順に通過するように熱媒体流路13内を流れる。熱媒体流路13に供給された第1温度帯の熱媒体は、冷却部114に対応する領域を通過する際、反応ガスとの間で熱交換して第1温度帯よりも高い第2温度帯となる。次に、熱媒体は、反応部113に対応する領域を通過する際、メタン化触媒との間で熱交換して第2温度帯よりも高い第3温度帯となる。次に、熱媒体は、加熱部112に対応する領域を通過する際、原料ガスとの間で熱交換して第3温度帯よりも低く第1温度帯よりも高い第4温度帯となる。その後、熱交換された熱媒体は、熱活用先に供給される。
【0025】
別熱媒体流路14は、熱媒体流路13を流れる熱媒体とは別の熱媒体(以下、別熱媒体)が流される流路であり、インナーチューブ11とアウターチューブ12との間に設けられる。別熱媒体流路14は、例えば螺旋構造の流路である。別熱媒体流路14は、インナーチューブ11とアウターチューブ12との間に熱媒体流路13と共に2重螺旋構造として設けられる。具体的には、別熱媒体流路14は、加熱部112を取り囲むように配置される。また、別熱媒体流路14の入口及び出口は、アウターチューブ12を貫通するように設けられる。
【0026】
アクティベーション動作時、別熱媒体は、別熱媒体供給部80から配管を介して、加熱された状態で別熱媒体流路14に供給される。別熱媒体は、加熱部112に対応する領域を通過する際、原料ガスとの間で熱交換する。その後、熱交換された別熱媒体は、配管を介して第2反応器20に供給される。通常動作時、別熱媒体供給部80からの別熱媒体の供給は停止し、別熱媒体は別熱媒体流路14において停止する。
【0027】
第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20は、インナーチューブ21、アウターチューブ22、熱媒体流路23及び別熱媒体流路24を備える。また、インナーチューブ21は、ガス入口部211、加熱部212、反応部213、冷却部214、凝縮水排出部215及びガス出口部216を備える。
【0028】
第2反応器20のインナーチューブ21、アウターチューブ22、熱媒体流路23及び別熱媒体流路24は、第1反応器10のインナーチューブ11、アウターチューブ12、熱媒体流路13及び別熱媒体流路14にそれぞれ対応する。また、第2反応器20のガス入口部211、加熱部212、反応部213、冷却部214、凝縮水排出部215及びガス出口部216は、第1反応器10のガス入口部111、加熱部112、反応部113、冷却部114、凝縮水排出部115及びガス出口部116にそれぞれ対応する。
【0029】
ここで、第2反応器20では、ガス入口部211には、第1反応器10から配管を介して、常温の反応混合ガス(CH+CO)が供給される。また、ガス入口部211には、水素供給源50から配管を介して、常温の原料ガス(4H×(1-α))が供給される。第2反応器20では、メタン転化率(1-α)(0.1<(1-α)<0.5)が設定されている。
また、第2反応器20では、ガス出口部216は、反応ガスから水が除去されたメタンガス(CH)を排出する。排出されたメタンガスは、配管を介してメタンの利用先に供給される。
また、第2反応器20では、別熱媒体は、第1反応器10から配管を介して別熱媒体流路24に供給される。別熱媒体は、加熱部212に対応する領域を通過する際、原料ガスとの間で熱交換する。その後、熱交換された別熱媒体は、配管を介して、別熱媒体供給部80に戻される。
【0030】
二酸化炭素供給源30は、二酸化炭素を含む原料ガスを供給可能な供給源である。また、流量計31は、二酸化炭素供給源30から供給される二酸化炭素を含む原料ガスの流量を測定する。水素供給源40,50は、水素を含む原料ガスを供給可能な供給源である。ここで、二酸化炭素供給源30及び水素供給源40,50を原料ガス供給源と総称される。MFC41,51は、それぞれ、水素供給源40,50から供給される水素を含む原料ガスの量を調整する。二酸化炭素供給源30から供給される二酸化炭素及び水素供給源40から供給される水素を含む原料ガスは、配管を介して第1反応器10に供給される。また、水素供給源50から供給される水素を含む原料ガスは、配管を介して第2反応器20に供給される。
【0031】
熱媒体供給部60,70は、熱媒体を供給可能な部位ある。熱媒体供給部60,70は、例えば、オイルポンプで構成される。熱媒体供給部60から供給される熱媒体は、配管を介して第1反応器10に供給され、その後、熱活用先に供給される。また、熱媒体供給部70から供給される熱媒体は、配管を介して第2反応器20に供給され、その後、熱活用先に供給される。ここで、熱媒体供給部60,70は、別熱媒体供給部80による第1反応器10及び第2反応器20のアクティベーションによってメタネーション反応が開始された後に熱媒体を供給する。また、流量調節弁61,71は、それぞれ、熱媒体供給部60,70から供給される熱媒体の流量を調節する。具体的には、第1反応器10には、インナーチューブ11の内部の温度T1を計測する熱電対が設けられる。詳細には、第1反応器10には、原料ガスの温度T1in、メタン化触媒の温度T1、T1、T1、反応ガスの温度T1out、のそれぞれを計測する熱電対が設けられる。流量調節弁61は、温度T1の計測結果に基づいて、熱媒体の流量を調節する。また、第2反応器20には、インナーチューブ21の内部の温度T2を計測する熱電対が設けられる。詳細には、第2反応器20には、原料ガスの温度T2in、メタン化触媒の温度T2、T2、T2、反応ガスの温度T2out、のそれぞれを計測する熱電対が設けられる。また、流量調節弁71は、温度T2の計測結果に基づいて、熱媒体の流量を調節する。なお、第1反応器10のメタン化触媒の温度T1を計測する熱電対の数及び第2反応器20のメタン化触媒の温度T2を計測する熱電対の数は、本実施形態の一例に限られない。例えば、第1反応器10には、メタン化触媒の温度T1、T1、T1を計測する熱電対の代わりにメタン化触媒の代表の温度T1を計測する熱電対が設けられていてもよい。また、第2反応器20に関しても同様である。
【0032】
別熱媒体供給部80は、別熱媒体を供給可能な部位ある。別熱媒体供給部80は、例えば、オイルポンプで構成される。インラインヒータ81は、別熱媒体供給部80から供給される別熱媒体を所定温度(好ましくは250~300℃)まで加熱する。別熱媒体供給部80から供給される別熱媒体は、配管を介して第1反応器10に供給される。別熱媒体供給部80は、第1反応器10及び第2反応器20におけるメタネーション反応のアクティベーションの際に、別熱媒体を供給する。そして、別熱媒体供給部80は、アクティベーションが終わった後、別熱媒体の供給を停止する。
【0033】
また、上述の第1反応器10では、メタン転化率の設定値αに基づいて、第1反応器10で発生する熱量が予測できる。同時に、反応部113を通って排出される反応ガスの温度もシミュレーションで予測される。冷却部114の伝熱構成(例えば伝熱面積)は、第1反応器10で発生する熱量及び反応部113を通って排出される反応ガスの温度に基づいて計算される。また、加熱部112おける熱交換後の熱媒体の温度も予測できる。加熱部112の伝熱構成は、熱媒体温度の予想に基づいて計算される。
【0034】
上述の第2反応器20では、メタン転化率(1-α)に応じた水素を加えてメタネーション反応を起こさせることで反応熱量が予測できる。加熱部212及び冷却部214の伝熱構成は、反応熱量に基づいて設計される。また、第2反応器20のメタン化触媒の量は、第1反応器10で生成されたメタンが反応阻害物質に当たるため、そのメタンの量を考慮して決定される。
【0035】
メタン製造装置1は、第1反応器10も第2反応器20でも同様にアクティベーション動作する。メタン製造装置1は、メタネーション反応の安定反応が始まったら、アクティベーション用の別熱媒体流入は停止させる。メタン製造装置1では、必要最低限の熱エネルギーで安定した、且つ短時間での反応開始ができる別熱媒体が選定され、第1反応器10も第2反応器20における熱交換の伝熱構成の適正設計がなされる。
【0036】
続いて、図1を用いて、第1の実施形態に係るメタン製造装置1の動作について説明する。以下の動作では、メタン製造装置1の第1反応器10における動作を中心に説明するが、第2反応器20における動作に関しても第1反応器10における動作と同様の動作を行う。
<アクティベーション動作>
まず、二酸化炭素供給源30及び水素供給源40は、処理される量の二酸化炭素と、メタン転化率αに応じた量の水素を含む常温の原料ガスを第1反応器10のガス入口部111に供給する。別熱媒体供給部80は、インラインヒータ81によって所定温度(好ましくは250~300℃)に加熱された別熱媒体を第1反応器10の別熱媒体流路14に供給する。別熱媒体の供給開始の際、第1反応器10の熱媒体流路13内の熱媒体の流れは停止しており、当該熱媒体の温度は常温(30℃)である。供給される別熱媒体は、第1反応器10の加熱部112に対応する領域を通過し、通過する際に原料ガスと熱交換する。別熱媒体と熱交換された原料ガスは、適温(好ましくは150~200℃程度)まで加熱される。加熱された原料ガスは、反応部113のメタン化触媒に触れた場合、すぐ反応適温になるため、メタネーション反応が開始される。
【0037】
<通常運転動作>
次に、第1反応器10の反応部113では、メタネーション反応がメタン化触媒の入口付近で開始される。その後、反応部113におけるメタネーション反応の反応熱は、熱媒体流路13における流れが停止している熱媒体を加熱し、熱媒体における熱伝達と反応ガスによる熱運搬により後方のメタン化触媒を連鎖的に反応適温にする。そうすることによって、メタン化触媒全体での原料ガスのメタネーション反応が開始される。メタネーション反応開始後、熱媒体供給部60は、熱媒体を第1反応器10の熱媒体流路13に供給開始する。ここで、流量調節弁61は、インナーチューブ11の内部の温度(原料ガスの温度(T1in)、メタン化触媒の温度(T1、T1、T1)、反応ガスの温度(T1out))に基づいて、第1反応器10に供給される熱媒体の流量を制御する。メタネーション反応が安定した場合、別熱媒体供給部80からのアクティベーション動作用の別熱媒体の供給が停止された場合でも、第1反応器10自身の反応熱によりメタネーショ反応は継続される。
【0038】
<熱媒体の作用>
熱媒体供給部60から熱媒体流路13に供給された常温(30℃)の熱媒体は、冷却部114に対応する領域へと移動し、冷却部114における高温(150℃)の反応ガスと熱交換する。反応ガスは冷却されて30℃程となる。一方、熱媒体は、加熱されて80~100℃程になる。そのため、反応ガスからは凝縮水が分離される。次に、加熱された熱媒体は、反応部113に対応する領域へと移動し、反応部113における原料ガスのメタネーション反応の反応熱を奪い、充填されるメタン化触媒の温度を200~300℃に保つ。一方、熱媒体は、加熱されて180℃程になる。次に、加熱された熱媒体は、加熱部112に対応する領域へと移動し、加熱部112における原料ガスと熱交換する。この際、原料ガスは、加熱されて常温(30℃)から150℃になる。一方、熱媒体は、冷却されて180℃程から120℃程になる。そして、熱媒体は、第1反応器10外に排出され、熱活用先に供給される。このように、第1反応器10では、外部エネルギーを投入することなく、常温の熱媒体を用いて連続的に必要な熱移動を起こすことができる構造となっている。第1反応器10より排出された反応混合ガスには、未反応の二酸化炭素(CO)の他、大量のメタン(CH)が含まれている。また、この反応混合ガスは、常温のため、外部との温度差がなく放熱により熱エネルギーが失われることがない。
【0039】
<原料ガスのマネジメント>
第1反応器10では、メタネーション反応のメタン転化率αが設定される。第2反応器20ではメタンがメタネーション反応の阻害物質となるため、第1反応器10のメタン転化率αが第2反応器20のメタン転化率1-αよりも高くなるように、αは0.55~0.85の間を取ることが好ましい。例えば、α=0.8と設定した場合、第1反応器10の出口では、凝縮水の除去後、80%の生成したメタン(CH)と20%の未反応の二酸化炭素(CO)とが残る。そして、第2反応器20の入口で、残り20%の水素がさらに供給されて、メタン転化率98%以上が達成される。
【0040】
上述したように、本開示のメタン製造装置1は、外部エネルギーなしに熱媒体を常温のまま第1反応器10及び第2反応器20に供給するだけで、次の機能を持たせるような構成を備える。(1)反応ガス中から凝縮水を除去できる機能。ここで、除去される水は、常温であるため、放熱等の外部へ熱エネルギーが奪われることがない。(2)メタン化触媒の温度を適温(好ましくは200~300℃)に保つことができる機能。(3)原料ガスを適温(好ましくは100~150℃)に加熱してメタン化触媒に供給することでメタン化触媒量を削減することができる機能。また、メタン製造装置1は、上記構成を断熱構造内で実施できる事で、発熱反応であるメタネーション反応の熱エネルギーを全て活用でき、排出後でも熱媒体温度が高音のため別工程での熱利用ができる。
【0041】
ここで、メタン製造装置1は、第1反応器10内の温度T1及び第2反応器20の温度T2を用いて、熱媒体の供給量を制御することで、熱媒体の供給量を制御する構成を備える。そのため、メタン製造装置1は、メタン化触媒の温度を適温に保つことができる。
【0042】
さらに、メタン製造装置1は、別熱媒体回路により原料ガスを適温に加熱して、メタネーション反応をアクティベートする構成を備える。そのため、メタン製造装置1は、時間短縮や省エネ化もできる。
また、メタン製造装置1の第1反応器10では、メタン転化率α(0.5<α<0.9)が設定され、供給される水素量が固定される。第1反応器10では、メタン転化率αに応じた熱エネルギー予測に基づいて、加熱部112及び冷却部114の必要十分な伝熱設計がなされている。また、第2反応器20では、メタン転化率(1-α)(0.1<(1-α)<0.5)が設定され、供給される水素量が固定されている。第2反応器20では、メタン転化率に応じた熱エネルギー予測に基づいて、加熱部212及び冷却部214の必要十分な伝熱設計がなされている。
【0043】
(第2の実施形態)
続いて、図2を用いて、第2の実施形態に係るメタン製造装置2の構成について説明する。図2は、第2の実施形態に係るメタン製造装置2の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、メタン製造装置2は、第1の実施形態に係るメタン製造装置1と比較して、次の構成を備える。メタン製造装置2は、第1反応器10のアクティベーション動作に別熱媒体流路14を流れる別熱媒体を用いずに、導線部がシースヒータ(ヒータ)によって所定温度(好ましくは250~300℃)に加熱されるシースヒータ回路(ヒータ回路)15を用いる。つまり、メタン製造装置2は、別熱媒体供給部80及びインラインヒータ81を備えていない。また、メタン製造装置2の第1反応器10は、別熱媒体流路14を備えていない。シースヒータ回路15の導線部は、第1反応器10のインナーチューブ11とアウターチューブ12との間の加熱部112に対応する領域において、加熱部112を取り囲んだ状態で配置され、熱媒体流路13と共に2重螺旋構造として設けられる。また、メタン製造装置2の第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20のシースヒータ回路25は、第1反応器10のシースヒータ回路15に対応する。
【0044】
(第3の実施形態)
続いて、図3を用いて、第3の実施形態に係るメタン製造装置3の構成について説明する。図3は、第3の実施形態に係るメタン製造装置3の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、メタン製造装置3は、第1の実施形態に係るメタン製造装置1と比較して、メタネーション反応の処理能力を上げるための次の構成を備える。メタン製造装置3の第1反応器10は、メタン化触媒によって原料ガスをメタネーション反応させる反応部113に対応する領域について、シェルアンドチューブ構造を有する。具体的には、第1反応器10のインナーチューブ11は、反応部113n(nは自然数)を含む複数のチューブ16nを備える。また、インナーチューブ11は、複数のチューブ16nを取り囲むようにシェル構造を有する。また、インナーチューブ11は、チューブ16n周りの原料ガスの流速を安定させるため、チューブ16nの入口付近及び出口付近では、それぞれチャンバー構造を有する。例えば、インナーチューブ11のチャンバー部分に加熱部112及び冷却部114が設けられる。また、メタン製造装置3の第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20のチューブ26nは、第1反応器10のチューブ16nに対応する。
【0045】
(第4の実施形態)
続いて、図4を用いて、第4の実施形態に係るメタン製造装置4の構成について説明する。図4は、第4の実施形態に係るメタン製造装置4の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、メタン製造装置4は、第1の実施形態に係るメタン製造装置1と比較して、メタネーション反応の処理能力を上げるための次の構成を備える。メタン製造装置4の第1反応器10は、メタン化触媒によって原料ガスをメタネーション反応させる反応部113に対応する領域について、多管の2重管構造を有する。具体的には、第1反応器10のインナーチューブ11は、加熱部112n、反応部113n及び冷却部114nを含む複数のチューブ17nを備える。ここで、第1反応器10では、熱媒体流路13及び別熱媒体流路14は、チューブ17nのそれぞれを取り囲むように配置されている。また、メタン製造装置3の第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20のチューブ27nは、第1反応器10のチューブ17nに対応する。
【0046】
(第5の実施形態)
続いて、図5を用いて、第5の実施形態に係るメタン製造装置5の構成について説明する。図5は、第5の実施形態に係るメタン製造装置5の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、メタン製造装置5は、第3の実施形態に係るメタン製造装置3と比較して、次の構成を備える。メタン製造装置5は、第1反応器10のアクティベーション動作に別熱媒体流路14を流れる別熱媒体を用いずに、導線部が所定温度(好ましくは250~300℃)に加熱されるシースヒータ回路15を用いる。また、メタン製造装置5の第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20のシースヒータ回路25は、第1反応器10のシースヒータ回路15に対応する。
【0047】
(第6の実施形態)
続いて、図6を用いて、第6の実施形態に係るメタン製造装置6の構成について説明する。図6は、第6の実施形態に係るメタン製造装置6の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、メタン製造装置6は、第4の実施形態に係るメタン製造装置4と比較して、次の構成を備える。メタン製造装置6は、第1反応器10のアクティベーション動作に別熱媒体流路14を流れる別熱媒体を用いずに、導線部が所定温度(好ましくは250~300℃)に加熱されるシースヒータ回路15を用いる。また、メタン製造装置6の第2反応器20も、第1反応器10と同様の構成を備える。第2反応器20のシースヒータ回路25は、第1反応器10のシースヒータ回路15に対応する。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1~6 メタン製造装置、10 第1反応器、11 インナーチューブ、12 アウターチューブ、13 熱媒体流路、14 別熱媒体流路、15 シースヒータ回路(ヒータ回路)、16n チューブ、17n チューブ、20 第2反応器、21 インナーチューブ、22 アウターチューブ、23 熱媒体流路、24 別熱媒体流路、25 シースヒータ回路、26n チューブ、27n チューブ、30 二酸化炭素供給源、31 流量計、40,50 水素供給源、41,51 マスフローコントローラ(MFC)、60,70 熱媒体供給部、61,71 流量調節弁、80 別熱媒体供給部、81 インラインヒータ、111,211 ガス入口部、112,112n,212,212n 加熱部、113,113n,213,213n 反応部、114,114n,214,214n 冷却部、115,215 凝縮水排出部、116,216 ガス出口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6