(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006510
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】床面洗浄機およびスキージ装置のリセット方法
(51)【国際特許分類】
A47L 11/30 20060101AFI20250109BHJP
A47L 11/16 20060101ALI20250109BHJP
A47L 11/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A47L11/30
A47L11/16
A47L11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107347
(22)【出願日】2023-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年4月25日~令和5年6月23日までの間に株式会社ボイスへの販売により公開 令和5年4月27日付にて星光ビル管理株式会社への販売により公開 令和5年6月16日付にてイオンディライト株式会社への販売により公開
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】油井 昇晶
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】笹井 清志
(57)【要約】
【課題】小型で小回りが利き、製品価格を高騰させずに、洗浄水での洗浄後に生じる汚水の吸い残しや、スキージ装置と床面との密着不良によりスキージ装置の後方に漏れ出す汚水のすじの発生を抑制する。
【解決手段】
車体2を走行させながら、洗浄水を供給して床面Fを洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機1は、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置15と、スキージ装置15のリセット動作を実行するためのリセット条件を記憶する記憶部26と、制御部10と、を備える。制御部10は、走行清掃の実行中にリセット条件を満たす場合に、リセット動作として、走行を一旦停止する走行停止動作と、走行停止動作の後でスキージ装置15による汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離を後進走行する吸引後進動作と、吸引後進動作の後でスキージ装置15を上昇させるスキージ上昇動作とを実行するスキージリセット制御部75として機能する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を走行させながら、洗浄水を供給して床面を洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機であって、
洗浄後の汚水を回収するスキージ装置と、
前記スキージ装置のリセット動作を実行するためのリセット条件を記憶する記憶部と、
前記走行清掃の実行中に前記リセット条件を満たす場合に、前記リセット動作として、
走行を一旦停止する走行停止動作と、
前記走行停止動作の後で前記スキージ装置による前記汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離を後進走行する吸引後進動作と、
前記吸引後進動作の後で前記スキージ装置を上昇させるスキージ上昇動作と、を実行する制御部と、
を備えることを特徴とする床面洗浄機。
【請求項2】
前記制御部は、前記走行停止動作として、
床面を洗浄する洗浄部材を床面から離間させると共に前記洗浄水の供給を停止する洗浄停止動作と、
前記洗浄停止動作の後で所定の予備前進距離を前進走行してから走行停止する予備前進動作と、を実行することを特徴とする請求項1に記載の床面洗浄機。
【請求項3】
前記制御部は、前記リセット動作として、
前記吸引後進動作および前記スキージ上昇動作の後で、更に、所定の第2後進距離を後進走行する予備後進動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項4】
前記制御部は、前記リセット動作として、前記スキージ上昇動作の後で、更に、前記スキージ装置を振動させるスキージ振動動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項5】
前記制御部は、前記走行清掃の経過距離が所定の経過距離閾値以上を経過した場合に、前記リセット条件を満たすと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項6】
前記スキージ装置によって吸引された前記汚水の濁度を検出する濁度判定部を更に備え、
前記制御部は、前記濁度に応じて前記リセット条件を変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項7】
前記記憶部は、前記リセット条件と共に、前記スキージ装置の前記リセット動作の実行を抑制するためのリセット抑制条件を記憶し、
前記制御部は、前記リセット条件を満たす場合でも前記リセット抑制条件を満たす場合に、前記リセット動作の実行を保留することを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項8】
前記記憶部は、前記リセット抑制条件として、前記車体の走行状態が旋回走行であることを記憶することを特徴とする請求項7に記載の床面洗浄機。
【請求項9】
前記記憶部は、前記リセット抑制条件として、前記車体の走行状態が段差後の走行であることを記憶することを特徴とする請求項7に記載の床面洗浄機。
【請求項10】
前記スキージ装置は、
前記車体の進行方向に直交する左右方向に長く形成され、
前記スキージ装置を前記車体に連結する連結アームを前記車体の進行方向に沿う姿勢とした中立位置と、前記連結アームを前記車体の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置との間において回動可能に設けられ、
前記連結アームの回動方向に沿って湾曲した状態で前記車体の底部に設けられる中立ガイド部に対し、前記連結アームの一部または前記連結アームに設けられる中立移動体を押し当て、前記スキージ装置を前記回動位置から前記中立位置に移動させる中立移動機構を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の床面洗浄機。
【請求項11】
前記中立移動機構は、前記中立位置に保持された前記スキージ装置を外力に応じて回動可能にするリミッター機構を備えることを特徴とする請求項10に記載の床面洗浄機。
【請求項12】
車体を走行させながら、洗浄水を供給して床面を洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機において、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置のリセット方法であって、
前記走行清掃の実行中に、前記スキージ装置のリセット動作を実行するためのリセット条件を満たす場合に、前記リセット動作として、
走行を一旦停止する走行停止動作と、
前記走行停止動作の後で前記スキージ装置による前記汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離を後進走行する吸引後進動作と、
前記吸引後進動作の後で前記スキージ装置を上昇させるスキージ上昇動作と、を実行することを特徴とするリセット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面洗浄機およびスキージ装置のリセット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広範囲な床面を効率よく洗浄する自走式床面洗浄機が実現している。また、昨今では、自律走行機能を備えた所謂清掃ロボットや、清掃ロボットを大型化して床面洗浄機能を備えた自律走行式床面洗浄機も実現している。
【0003】
自走式床面洗浄機および自律走行式床面洗浄機は、洗浄水を床面に散布しつつ車体を走行させながら、ブラシやパッドなどの洗浄部材によって床面を洗浄し、洗浄水での洗浄後に生じる汚水をスキージ装置によって回収する。
【0004】
清掃面積が広くなると搭乗タイプの自走式床面洗浄機が採用されるが、搭乗した作業者は洗浄後の汚水の回収漏れをタイムリーに発見することができない。また、自律走行式床面洗浄機を採用した場合、作業者が清掃を常時監視することはなく、洗浄後の汚水の回収漏れをタイムリーに発見することができない。そのため、何れの場合でも広い清掃面積での清掃をやり直す必要が生じて清掃効率が低下するおそれがある。そこで、洗浄後の汚水の回収漏れを対策した自走式床面洗浄機や自律走行式床面洗浄機も提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、床洗浄機の前面に取り付けられる清掃装置が開示されている。この清掃装置では、左右に曲がりながら洗浄する場合でも、洗浄作業に先立つ清掃作業を不要にするために、第1シャフトと第2シャフトとがフレームに回動自在に支持され、第1シャフトが、床洗浄機の前方に延びる第1アームの先端部に固定され、第2シャフトには、先端部に清掃具が設けられた第2アームの後端部が固定されていて、床洗浄機が進行方向を変えた方向に、フレームおよび第2アームが回動して清掃具の方向が変化するようになっている。
【0006】
また、特許文献2では、洗浄汚水を吸引するためのスキージを有する床面洗浄機が開示されている。この床面洗浄機では、簡単な構成で、床面洗浄機のスキージによる洗浄水の吸い残しや洗浄水のすじをなくし、人手による洗浄水(汚水)の吸い残しや洗浄水(汚水)のすじを拭き上げる作業をなくすために、スキージの進行方向後側に、スキージにより吸引できなかった洗浄汚水を更に吸収する、水分吸収性および保水性を有するマイクロファイバーから構成された拭き取りマットを設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-007320号公報
【特許文献2】実用新案登録第3182733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のような従来技術の床面洗浄機では、清掃具やマットを追加する必要があり、装置が大型化して小回りの利かないものになってしまう。また、これらの従来技術を自律走行式の床面洗浄機に採用した場合は、清掃具やマットの自動動作機構も必要となり、構造が複雑化して製品価格が高騰してしまう。更に、従来技術では、清掃具やマットに特有の手入れが必要となり、利用者の利便性が低下してしまう。
【0009】
加えて、床面に綿埃や髪の毛などの異物が堆積している場合には、スキージ装置と床面との間に異物が挟まることで、洗浄水での洗浄後に生じる汚水を吸引・回収する際に、汚水の吸い残し(回収残り)や、スキージ装置と床面との密着不良によりスキージ装置の後方に漏れ出す汚水のすじなどが発生し易い。特に自律走行式の床面洗浄機では、作業員が逐一目視で確認して走行を後進させて再洗浄するような運転操作ができないので、汚水の吸い残しやすじが残り易いという問題がある。
【0010】
本発明は、上述したような問題に鑑みなされたものであり、小型で小回りが利き、製品価格を高騰させずに、洗浄水での洗浄後に生じる汚水の吸い残しや、スキージ装置と床面との密着不良によりスキージ装置の後方に漏れ出す汚水のすじの発生を抑制することができる床面洗浄機およびスキージ装置のリセット方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の床面洗浄機は、車体を走行させながら、洗浄水を供給して床面を洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機であって、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置と、前記スキージ装置のリセット動作を実行するためのリセット条件を記憶する記憶部と、前記走行清掃の実行中に前記リセット条件を満たす場合に、前記リセット動作として、走行を一旦停止する走行停止動作と、前記走行停止動作の後で前記スキージ装置による前記汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離を後進走行する吸引後進動作と、前記吸引後進動作の後で前記スキージ装置を上昇させるスキージ上昇動作と、を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の床面洗浄機は、上記のような構成により、小型で小回りが利き、製品価格を高騰させることなく構成されていて、吸引後進動作やリセット動作によって、スキージ上昇動作によりスキージ装置と床面との間に挟まっている異物をスキージ装置から離脱させて床面に落下させることができるため、汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第2の床面洗浄機において、前記制御部は、前記走行停止動作として、床面を洗浄する洗浄部材を床面から離間させると共に前記洗浄水の供給を停止する洗浄停止動作と、前記洗浄停止動作の後で所定の予備前進距離を前進走行してから走行停止する予備前進動作と、を実行する。
【0014】
本発明の第2の床面洗浄機によれば、予備前進動作を行った後で、上記の吸引後進動作や後述の予備後進動作を行うので、吸引ブロアによる吸引動作などを含む走行清掃を再開する位置を、リセット動作により走行清掃を中断した位置から大きく変化することを抑制することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第3の床面洗浄機において、前記制御部は、前記リセット動作として、前記吸引後進動作および前記スキージ上昇動作の後で、更に、所定の第2後進距離を後進走行する予備後進動作を実行する。
【0016】
本発明の第3の床面洗浄機によれば、吸引後進動作およびスキージ上昇動作によって床面に異物が落下する位置よりも、予備後進動作によって後進した位置から走行清掃を再開することができる。そのため、リセット動作によって床面に落下した異物を、スキージ装置によって確実に回収することができ、汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第4の床面洗浄機において、前記制御部は、前記リセット動作として、前記スキージ上昇動作の後で、更に、前記スキージ装置を振動させるスキージ振動動作を実行する。
【0018】
本発明の第4の床面洗浄機によれば、スキージ装置に付着した異物をより確実に落下させて回収することができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第5の床面洗浄機において、前記制御部は、前記走行清掃の経過距離が所定の経過距離閾値以上を経過した場合に、前記リセット条件を満たすと判定する。
【0020】
本発明の第5の床面洗浄機によれば、走行清掃の経過距離を参照することによって、スキージ装置と床面との間に挟まる可能性のある異物の堆積が相当程度溜まる前に、スキージ装置のリセット動作を実行することができるため、効率よく汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第6の床面洗浄機において、前記スキージ装置によって吸引された前記汚水の濁度を検出する濁度判定部を更に備え、前記制御部は、前記濁度に応じて前記リセット条件を変化させる。
【0022】
本発明の第6の床面洗浄機によれば、汚水の濁度によってリセット条件を変化させることで、スキージ装置のリセット動作の頻度を清掃状態に適合させることができ、適切に汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第7の床面洗浄機において、前記記憶部は、前記リセット条件と共に、前記スキージ装置の前記リセット動作の実行を抑制するためのリセット抑制条件を記憶し、前記制御部は、前記リセット条件を満たす場合でも前記リセット抑制条件を満たす場合に、前記リセット動作の実行を保留する。
【0024】
本発明の第7の床面洗浄機によれば、適切な状態でない場合には、スキージ装置のリセット動作を抑制し、一方、適切な状態である場合に、リセット動作を実行することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第8の床面洗浄機において、前記記憶部は、前記リセット抑制条件として、前記車体の走行状態が旋回走行であることを記憶する。
【0026】
本発明の第8の床面洗浄機によれば、車体の走行状態が旋回走行の場合、適切な状態でないとして、スキージ装置のリセット動作を抑制し、一方、適切な状態である場合に、リセット動作を実行することができる。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の第9の床面洗浄機において、前記記憶部は、前記リセット抑制条件として、前記車体の走行状態が段差後の走行であることを記憶する。
【0028】
本発明の第9の床面洗浄機によれば、車体の走行状態が段差後の走行の場合、適切な状態でないとして、スキージ装置のリセット動作を抑制し、一方、適切な状態である場合に、リセット動作を実行することができる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の第10の床面洗浄機において、前記スキージ装置は、前記車体の進行方向に直交する左右方向に長く形成され、前記スキージ装置を前記車体に連結する連結アームを前記車体の進行方向に沿う姿勢とした中立位置と、前記連結アームを前記車体の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置との間において回動可能に設けられ、前記連結アームの回動方向に沿って湾曲した状態で前記車体の底部に設けられる中立ガイド部に対し、前記連結アームの一部または前記連結アームに設けられる中立移動体を押し当て、前記スキージ装置を前記回動位置から前記中立位置に移動させる中立移動機構を更に備える。
【0030】
本発明の第10の床面洗浄機によれば、スキージ装置のリセット動作を行った場合、吸引後進動作での後進走行において、スキージ装置をカム機構によって中立位置に変位させることができ、スキージ装置を適切な状態にして走行清掃を再開することができる。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明の第11の床面洗浄機において、前記中立移動機構は、前記中立位置に保持された前記スキージ装置を外力に応じて回動可能にするリミッター機構を備える。
【0032】
本発明の第11の床面洗浄機によれば、スキージ装置に対して障害物などが衝突した場合に、中立位置を解除してスキージ装置を回動可能にするため、スキージ装置の破損を防止することができる。
【0033】
また、上記課題を解決するために、本発明において、車体を走行させながら、洗浄水を供給して床面を洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機において、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置のリセット方法は、前記走行清掃の実行中に、前記スキージ装置のリセット動作を実行するためのリセット条件を満たす場合に、前記リセット動作として、走行を一旦停止する走行停止動作と、前記走行停止動作の後で前記スキージ装置による前記汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離を後進走行する吸引後進動作と、前記吸引後進動作の後で前記スキージ装置を上昇させるスキージ上昇動作と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、床面洗浄機およびスキージ装置のリセット方法は、小型で小回りが利き、製品価格を高騰させずに、洗浄水での洗浄後に生じる汚水の吸い残しや、スキージ装置と床面との密着不良によりスキージ装置の後方に漏れ出す汚水のすじの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る床面洗浄機を前方から示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る床面洗浄機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る床面洗浄機を上方から示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る床面洗浄機のスキージ装置を後方から示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る床面洗浄機のスキージ装置の動作を側方から示す概要図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る床面洗浄機のスキージ装置の動作を上方から示す概要図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る床面洗浄機における動作例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る床面洗浄機におけるスキージ装置のリセット動作の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る床面洗浄機におけるリセット条件およびリセット抑制条件の例を示す表である。
【
図10】本発明の実施形態に係る床面洗浄機の段差検出時の動作を側方から示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る床面洗浄機1の実施形態について添付した図面を参照しながら説明する。なお、各図に矢印で示す方向は、床面洗浄機1を操作する作業者を基準に設定され、図中に示す「Fr」は「前」を示し、「Rr」は「後」を示し、「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。
【0037】
<床面洗浄機の全体構成>
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る床面洗浄機1の構成について説明する。
図1は床面洗浄機1を示す斜視図である。
図2は床面洗浄機1を示すブロック図である。
図3は床面洗浄機1を示す平面図である。床面洗浄機1は、車体2を走行させながら、洗浄水を供給して床面F(
図5参照)を洗浄する走行清掃を実行するもので、搭乗タイプの自走式で構成されてもよく、あるいは、自律走行式の所謂ロボット床面洗浄機で構成されてもよい。
【0038】
自律走行式の床面洗浄機1は、手動操作に基づく手動走行、および自動制御に基づく自律的な走行(自動走行)が可能な車両であって、手動走行モードおよび自動走行モードの何れかの動作モードで動作する。自動走行モードでは、床面洗浄機1は、予め設定されたデータやプログラムからなる清掃プランに基づいて自律的に走行し自動で清掃する自動走行清掃を行う。
【0039】
床面洗浄機1は、
図1に示すように、各部を収容するための車体2と、車体2を走行させる走行部3と、車体2の下方の床面Fの清掃作業を実行する清掃部4とを備え、清掃部4は、洗浄パッド13やスキージ装置15を備えている。床面洗浄機1は、車体2を走行させながら洗浄水などを供給した洗浄パッド13を回転させて床面Fを洗浄し、洗浄後の汚水をスキージ装置15によって回収する。床面洗浄機1は、例えば、ショッピングモールなどの商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場などの全部または一部の領域を清掃エリア80(
図6(1)参照)として、清掃エリア80の床面Fを清掃対象とする。
【0040】
床面洗浄機1は、床面洗浄機1の各種機能の操作や表示のための走行操作部5および操作表示部6を備え、走行操作部5および操作表示部6が床面洗浄機1の操作ユニットを構成する。また、床面洗浄機1は、車体2と当該車体2の周囲の壁や置物などの障害物(物体)との距離および角度(例えば、車体2の前進方向に対する角度)などを計測する計測部7と、車体2の周囲を撮像する撮像部8とを備える。更に、床面洗浄機1は、
図2に示すように、バッテリ(図示せず)の充電制御や各部に電力を供給するための電源部9と、床面洗浄機1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部4による清掃作業、計測部7による計測など)を統括制御する制御部10とを備える。
【0041】
車体2は、略直方体状の外観を構成している。車体2の底部には、走行部3として、左右一対の車輪11と左右一対のキャスター12とが設けられている。
【0042】
左右一対の車輪11は、車体2の前後方向略中央で左右方向に延びる車軸11aに支持され(
図3(1),(2)参照)、それぞれが左右の駆動モータ11bを有している(
図3(2)参照)。左右の駆動モータ11b(車軸11a)には、回転数を検出する左右のエンコーダ11cがそれぞれ設けられる。各駆動モータ11bが各車軸11aを介して各車輪11を同時に回転させることで車体2を前進または後進させることができる一方、左側の車輪11または右側の車輪11を停止または減速回転させると同時に右側の車輪11または左側の車輪11を回転させることで車体2を左旋回または右旋回させることができる。左右一対のキャスター12は、各車輪11よりも後方に配置され、車体2の底面に回転可能に支持されている。
【0043】
清掃部4は、車体2の下部に設けられ、車体2の下方の床面Fを清掃するように構成される。清掃部4は、初期設定された清掃データ、操作表示部6を介して設定された清掃データ、または自動制御によって設定された清掃データに従って床面Fを清掃する。
【0044】
清掃部4は、例えば、洗剤として洗浄水を用いて床面Fを清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面Fに接触して床面Fを清掃する洗浄パッド13と、洗浄水を床面Fに供給して散布するための供給ポンプ14と、床面Fを清掃した使用後の洗浄水、即ち、汚水を回収するスキージ装置15と、を備える。清掃部4は、車体2の内部に、清水または洗浄水を貯留する洗浄タンク16と、床面Fを清掃した使用後の洗浄水、即ち、汚水を貯留する回収タンク17とを搭載している。清掃部4は、洗浄タンク16内の洗浄水の水位を検出する洗浄タンクセンサ16aや回収タンク17内の汚水の水位を検出する回収タンクセンサ17aを備える。
【0045】
また、清掃部4は、車体2の内部に、回収タンク17内(または後述する吸引ホース23内)を負圧にする吸引ブロア18を設けていて、吸引ブロア18は、スキージ装置15が回収した汚水を回収タンク17内に吸引する吸引部として機能する。清掃部4は、洗浄パッド13を床面F上で回転させる洗浄モータ19と、洗浄パッド13を床面Fに対して上下方向に移動させるパッドシリンダ20と、スキージ装置15を床面Fに対して上下方向に移動させるスキージシリンダ21と、を備える。
【0046】
洗浄部材の一例としての洗浄パッド13は、車体2の前部下面(車輪11よりも前側)に回転可能に支持されている。洗浄パッド13は、円板状に形成され、円板の底面部分を床面Fに接触させる姿勢で車体2に設けられている。なお、洗浄パッド13は、パッドシリンダ20などによって、床面Fに接触させた姿勢と床面Fから離間させた姿勢との間で上下方向に移動可能に構成されてよい。
【0047】
洗浄パッド13の回転軸13aは、車体2の内部に設けられた洗浄モータ19に回転伝達機構を介して接続されている。洗浄パッド13は、洗浄モータ19の駆動によって回転軸13aを中心に一方向に回転し、洗浄パッド13の下方の床面Fの汚れを拭いとる。洗浄パッド13の上面および側面の大部分は、車体2の前部下面に固定されるパッドカバー22(兼バンパー)に覆われている。なお、洗浄パッド13に代えて回転するブラシを洗浄部材として用いてもよい。
【0048】
スキージ装置15は、車体2の後部下側に配置されている。スキージ装置15は、車体2の後方に牽引され、洗浄後の洗浄水(汚水)などを回収する装置である。スキージ装置15によって、洗浄パッド13から後方に送出される汚水を受け止めて収集し、吸引ブロア18に接続された吸引ホース23によって、収集された汚水を吸引ブロア18の吸引力を利用して吸引し、吸引された汚水を、吸引ホース23に接続された回収タンク17へ回収する。なお、スキージ装置15の詳細は後述する。
【0049】
上記のような清掃部4における清掃データには、洗浄パッド13の回転の作動/停止、供給ポンプ14による洗浄水供給の作動/停止、吸引ブロア18による吸引の作動/停止、洗浄パッド13の床面Fに対する接地圧の強度や回転数、供給ポンプ14による洗浄水供給量、吸引ブロア18による吸引強度などがある。
【0050】
走行操作部5は、車体2の後側に設けられ、手動走行を操作するためのハンドル24やスロットル(図示せず)などを備える。ハンドル24は、自走式の床面洗浄機1での床面Fの洗浄作業や、自律走行式の床面洗浄機1での教示走行を行う作業者に把持されて操作される部品である。走行操作部5は、ハンドル24の操舵量を検出するハンドルセンサ24aおよびスロットルの操作量を検出するアクセルセンサ24bを備える。走行操作部5は、作業者によるハンドル24の操舵量やスロットルの操作量を電気信号に変換し、当該電気信号を走行部3に出力して駆動モータ11bを駆動させることで、手動走行や教示走行を可能とする。
【0051】
操作表示部6は、車体2の後側に設けられ、例えば、図示しないが、メインスイッチと、強制停止ボタンと、マイクと、スピーカと、表示器とを備える。操作表示部6の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部6は、車体2と一体的に構成されるものでよいが、あるいは、車体2に対して着脱可能なタブレット型端末などで構成されていてもよい。
【0052】
メインスイッチは、「切」、「手動」、「自動」を切換可能に構成されている。メインスイッチを「手動」に切り換えることで、制御部10(モード切換部70)によって床面洗浄機1の動作モードが手動走行モードに切り換えられる一方、メインスイッチを「自動」に切り換えることで、制御部10(モード切換部70)によって床面洗浄機1の動作モードが自動走行モードに切り換えられる。
【0053】
強制停止ボタンは、床面洗浄機1の強制停止を操作するもので、操作に応じて強制停止信号を制御部10へと出力する。スピーカは、制御部10の制御に応じて警報音などを発生させる。表示器は、タッチパネルなどで構成され、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。
【0054】
計測部7は、車体2の周囲の障害物(物体)や壁面との距離および角度を計測する障害物センサ7aを備える。障害物センサ7aは、例えば、車体2の前面に設けられ、レーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)などから構成され、床面Fから所定の計測可能高さ(例えば、30cm)以内で、障害物センサ7aから所定の計測可能範囲(例えば、半径20m)以内に存在する障害物を検出する。なお、障害物センサ7aを構成するLRFは、左右方向に複数(2個)設けられている。計測部7は、制御部10に接続されていて、計測結果を制御部10へと送信する。
【0055】
また、計測部7は、バンパーを兼ねるパッドカバー22に取り付けられて壁や障害物との接触を検出するバンパーセンサ7bと、車体2に近接する障害物を検出する複数の超音波センサ7cと、走行部3が走行する床面Fの段差を検出する段差センサ7dとを備える。超音波センサ7cは、車体2に近接する未知の障害物を検知することができる。段差センサ7dは、車体2の前面から前下方向に向いた赤外線センサによって構成され、前下方向の床面Fにおける階段や溝を検出し、車体2が階段や大きな溝に落ちるのを防止するために設けられている。なお、段差センサ7dは、前下方向の床面Fにおける凸形状の物体も検出可能であって、例えば、事務フロアの電源線をカバーした配線モールや、引き戸の床レールや、点字ブロックの凸部を検出することができる。
【0056】
撮像部8は、床面Fを含む車体2の前景を撮像可能な前方カメラ8aと、車体2の後方を撮像可能な後方カメラ8bとを備える。前方カメラ8aは、車体2に近接する未知の障害物を検知することができる。
【0057】
電源部9は、車体2内部に搭載されたバッテリ(電源)を備え、外部電源に接続することで充電可能に構成されていて、床面洗浄機1の各部に電力を供給する。
【0058】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される。制御部10は、
図2に示すように、記憶部26に対してバス27を介して接続され、バス27は、更にインターフェース28に接続されている。また、制御部10は、バス27およびインターフェース28を介して、上記の走行部3、清掃部4、走行操作部5、操作表示部6、計測部7、撮像部8および電源部9に接続され、更に、通信部29に接続されている。通信部29は、Wi-Fi(登録商標)などの無線LANやBluetooth(登録商標)などの近距離無線を利用した無線通信方式によって外部機器と無線通信を行う。
【0059】
記憶部26は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリなどからなり、床面洗浄機1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータが格納される。制御部10は、記憶部26に格納されたプログラムやデータを読み取り、このプログラムを実行することにより、各部および各種機能を制御する。本実施形態では特に、記憶部26は、
図9に示すように、スキージ装置15(スキージ30)のリセット動作を実行するためのリセット条件や、リセット動作を抑制するためのリセット抑制条件を記憶する。なお、制御部10の機能の詳細は後述する。
【0060】
<床面洗浄機の作用>
以上説明した床面洗浄機1は自走式または自律走行式であり、作業者はハンドル24を操作して車体2を走行させながら床面Fの洗浄作業を行う。床面Fの洗浄作業は、供給ポンプ14を駆動させ、洗浄タンク16内の洗浄水などを洗浄パッド13に供給しつつ、洗浄パッド13を床面F上で回転させることで行われる。洗浄後の汚水は、車体2の後方に牽引されるスキージ装置15に集められ、吸引ブロア18の駆動によってスキージ装置15から回収タンク17内に吸引回収される。
【0061】
<スキージ装置の構成>
図3ないし
図5を参照して、第1実施形態に係るスキージ装置15について説明する。
図4はスキージ装置15を示す斜視図である。
図5はスキージ装置15を示す側面図である。
【0062】
スキージ装置15は、スキージ30と、摺動連結部40と、昇降部50と、を備えている。スキージ30は、車体2の後方に配置され、汚水を掻き取る。摺動連結部40は、車体2とスキージ30との間に設けられている。昇降部50は、スキージ30を床面Fから離間させる。
【0063】
図3および
図4に示すように、スキージ30は、車体2の移動に伴って床面F上を引き摺られる部材である。スキージ30は、左右方向に長く、且つ後方に凸となる弓形状に形成されている。スキージ30は、スキージ本体31と、前側ブレード32と、後側ブレード33と、左右一対のガイドローラ34と、を含んでいる。
【0064】
スキージ本体31は、例えば、金属材料や硬質の合成樹脂材料などで、後方に凸となるように湾曲して形成されている。換言すれば、スキージ本体31は、平面から見て左右方向中央部から左右両端に向かって前方に湾曲している(
図3参照)。スキージ本体31は、平面から見て左右方向中央から左右両端に向かって徐々に細く形成された板状の部材である。
【0065】
前側ブレード32はスキージ本体31の前側に取り付けられ、後側ブレード33はスキージ本体31の後側に取り付けられている。各ブレード32,33は、平面から見て左右方向中央部から左右両端に向かって前方に湾曲している(
図3参照)。スキージ本体31には、各ブレード32,33の上端部が固定されている。各ブレード32,33は、スキージ本体31よりも下方に延びている。各ブレード32,33は、例えば、シリコンゴムなどの弾性変形可能な材料で矩形板状に形成されている。後側ブレード33は、前側ブレード32よりも厚く、且つ前側ブレード32よりも上下方向に高く形成されている。スキージ本体31と前後一対のブレード32,33とで囲まれる範囲には、スキージ室Sが形成されている(
図5参照)。なお、図示は省略するが、前側ブレード32の下端部には、外部とスキージ室Sとを連通させる複数の凹部が左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0066】
スキージ本体31の左右方向略中央には、スキージ室Sに通じる吸引ホース23の下端部が接続されている。吸引ホース23は、例えば、柔軟性を有する軽量な材料から成る所謂ダクトホースである。吸引ホース23は、スキージ本体31から車体2の後面に沿って上方に延び、車体2の上部後面から内部に進入している。吸引ホース23の上端部は、車体2内の回収タンク17に接続されている(
図1参照)。吸引ホース23は、スキージ室Sと回収タンク17(吸引ブロア18)とを連通させている。
【0067】
図3および
図4に示すように、左右一対のガイドローラ34は、スキージ本体31の左右両側から後方に延びる一対のローラブラケット35に回転可能に支持されている。各ローラブラケット35の前端部は、スキージ本体31の上面にボルト・ナットで固定されている。各ローラブラケット35の後端部は、左右方向に延びるローラ軸34aを介してガイドローラ34を支持している。各ガイドローラ34は、床面Fに接触し、ローラ軸34aを中心に回転する。
【0068】
後側ブレード33の左右両端には、一対の水平ローラ36が取り付けられている。各水平ローラ36は、上下方向に延びるローラ軸36aを中心に回転可能に設けられている。
【0069】
図3ないし
図5に示すように、摺動連結部40は、連結アーム41と、旋回支持部42と、左右一対の支持壁部43と、を含んでいる。摺動連結部40は、例えば、剛性の高い金属材料で構成されている。連結アーム41は、スキージ30を車体2に連結するための部材である。旋回支持部42は、車体2の底部に回転可能に接続されている。摺動支持部の一例としての左右一対の支持壁部43は、旋回支持部42に連結されている。
【0070】
連結アーム41は、前後方向に長く形成され、正面(背面)から見て略逆U字状の断面を有している。連結アーム41の後端部は、左右2つに分岐した板状に形成され、吸引ホース23を避けたスキージ本体31の上面にボルトを介して取り付けられている。連結アーム41の左右方向中央を通る中心軸は、スキージ30(スキージ本体31)の左右方向中央に略一致している。つまり、連結アーム41とスキージ30とは、真っ直ぐ(平面から見て略逆Tの字状)に連結されている。
【0071】
旋回支持部42は略板状に形成され、旋回支持部42の上面には旋回支軸42aが上方に突出している。旋回支軸42aは、車体2の後部底面に形成される軸受部(図示せず)に回転可能に嵌合している。
【0072】
左右一対の支持壁部43は、旋回支持部42の左右両端部から下方に延びている。旋回支持部42と一対の支持壁部43とは、正面(背面)から見て略逆U字状に形成されている。なお、各支持壁部43は、旋回支持部42と別々に形成されて連結されてもよいし、あるいは、旋回支持部42と一体に形成されてもよい。
【0073】
各支持壁部43には、傾斜溝44が連通状に形成されている。各傾斜溝44は、支持壁部43に開いた長穴であって、後方から前方に向かって上方に傾斜している。左右一対の支持壁部43は、連結アーム41の前部を左右両側から挟み込むように配置されている。連結アーム41の前部側面には、連結アーム41を左右方向に貫通する摺動軸45が設けられている。摺動部の一例としての摺動軸45は、円柱状または円筒状に形成されている。摺動軸45の左右両端部は、連結アーム41の側面から左右方向外側に向けて延び、左右一対の支持壁部43の傾斜溝44に摺動可能に嵌合している。つまり、左右一対の支持壁部43は、連結アーム41の前部に摺動軸45を介して接続されている。連結アーム41は、各傾斜溝44に案内される摺動軸45の移動範囲内で移動可能に設けられている。
【0074】
スキージ30は、連結アーム41を介して旋回支持部42の旋回支軸42a(旋回支点)を中心に左右方向に回動可能(揺動可能)に設けられている。詳細には、スキージ30は、連結アーム41を車体2の進行方向に沿う姿勢とした中立位置(
図3(2)参照)と、連結アーム41を車体2の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置(
図3(1)参照)との間で回動可能に設けられている。
【0075】
図4に示すように、昇降部50は、車体2の後面上部に設けられるスキージレバー51から下方に延びるワイヤ52を含んでいる。懸架部材の一例としてのワイヤ52は、例えば、可撓性を有する金属材料などで形成されている。ワイヤ52の下端部は、連結アーム41の後端部にフック53を介して接続されている。ワイヤ52の上端部はスキージレバー51に取り付けられている。スキージレバー51は、車体2の後面に穿設された溝部(図示せず)に沿って移動可能に設けられ、溝部の内部には、スキージレバー51を上下方向に駆動するスキージシリンダ21が内蔵されている。
【0076】
昇降部50は、ワイヤ52を介して連結アーム41を昇降させる。具体的には、スキージシリンダ21の一方への動作(例えば、収縮)によってスキージレバー51を溝部の下端まで移動させると、連結アーム41などが最も下降し、スキージ30(各ブレード32,33)が床面Fに接触した下降位置に変位する(
図5(1),(2)参照)。このとき、床面Fに対する各ブレード32,33の接触部が、各ブレード32,33の全体に亘って形成される。なお、
図5(1),(2)などには正確に図示していないが、この状態でワイヤ52は弛んでいる。あるいは、ワイヤ52の一部を巻き取り可能なリールなど(図示せず)を設けてワイヤ52を弛ませない構成としてもよい。一方、スキージシリンダ21の他方への動作(例えば、伸長)によってスキージレバー51を溝部の上端まで移動させると、連結アーム41などが最も上昇し、各ブレード32,33が床面Fから離れた上昇位置に変位する(
図5(4),(5)参照)。この状態で、ワイヤ52は、略垂直に張られた状態になる。
【0077】
<車体前進時のスキージ装置の作用>
次に、車体2を前進させて床面Fの洗浄作業を行う場合におけるスキージ装置15の作用について説明する。車体2が前進した場合、スキージ装置15も車体2に牽引されて前進する。前側ブレード32および後側ブレード33は、スキージ本体31や連結アーム41の重量によって下方に付勢された状態で床面F上を引き摺られる。このため、
図5(1),(2)に示すように、各ブレード32,33の下端部は、後方に撓んだ状態(後方に湾曲した状態)で床面F上を摺動する。なお、後側ブレード33は、前側ブレード32よりも上下方向に幅広いため、後側ブレード33の撓み量は、前側ブレード32の撓み量よりも大きくなる。また、後側ブレード33は、前側ブレード32よりも高い汚水の掻き取り能力を有している。
【0078】
スキージ本体31は、床面Fに接触したガイドローラ34にローラブラケット35を介して支持されるため、必要以上に下降することがない。すなわち、各ガイドローラ34は、スキージ本体31の垂れ下りを防止し、床面Fに対する各ブレード32,33の接触圧を略均一に維持する。
【0079】
車体2を前進させた場合、床面Fに対する各ブレード32,33の接触部には、後方に向かう摩擦力が作用する。この後方への摩擦力によって、
図5(1),(2)に示すように、連結アーム41は相対的に後方に引っ張られ、摺動軸45は傾斜溝44に案内されながら後下方に移動する。連結アーム41は、床面Fに対する各ブレード32,33(スキージ30)の接触部に働く摩擦力によって引き下げられ、各ブレード32,33を床面Fに接触させる第1の姿勢(
図5(1)参照)になる。具体的には、連結アーム41は、摺動軸45を傾斜溝44の後方下端部44aまで移動させることで第1の姿勢に姿勢変更される。
【0080】
図5(1),(2)に示すように、連結アーム41が第1の姿勢になった状態(スキージ30が床面Fに接触した状態)で、吸引ブロア18の駆動によって発生する吸引力は、吸引ホース23を介してスキージ室Sに作用する。床面Fの洗浄後の汚水は、前側ブレード32の下端部に開口した複数の凹部を通って負圧になったスキージ室Sに進入する。そして、スキージ室S内の汚水は、吸引ホース23を通って回収タンク17に回収される。
【0081】
なお、前進する車体2が左方または右方に旋回する場合、スキージ装置15は旋回支持部42の旋回支軸42aを中心に回動する。つまり、スキージ装置15は、車体2の旋回に追従して、中立位置から回動位置に向かって回動する。また、スキージ装置15に設けられた各水平ローラ36は、床面F上に配置された配置物(障害物)や部屋の壁面などに接触したときに回転することで、スキージ30または配置物などの破損を抑制する。
【0082】
<車体後進時のスキージ装置の作用>
次に、
図5(3)を参照して、車体2の進行方向を前進から後進に転換した場合におけるスキージ装置15の作用について説明する。
図5(3)は車体2後進時におけるスキージ装置15の作用を説明する側面図である。また、この車体2後進時の作用の説明では、スキージ30は中立位置に配置され、車体2の進行方向に関わらず、吸引ブロア18は駆動した状態である。
【0083】
車体2の進行方向が前進から後進に転換する過程において、前後一対のブレード32,33は、後方に撓んだ状態から複雑な略S字状に撓んだ状態に変化する。この状態で、各ブレード32,33は撓みによる反発力(弾性力)と自身の重量によって床面Fに押し付けられている。なお、後側ブレード33の接触圧は前側ブレード32の接触圧よりも大きくなる。このように、床面Fに対する各ブレード32,33の接触圧が非常に大きくなるため、床面Fと各ブレード32,33との接触部に生じる摩擦力も増大する。すると、車体2を後進させるために非常に大きな力が必要になるため、車輪11を駆動する駆動モータ11bに大きな負担が掛かる。なお、車体2の後進が継続すると、各ブレード32,33は前方に撓むことになる。
【0084】
そこで、スキージ装置15は、車体2の進行方向の転換時にスキージ30と床面Fとの間に働く摩擦力を利用して連結アーム41の姿勢を自動的に変更し、車体2の後進を安定させるように構成されている。
【0085】
車体2の進行方向を前進から後進に転換した場合、床面Fに対する各ブレード32,33の接触部には、車体2の後進を妨げるように前方に向かう摩擦力が作用する。この前方への摩擦力によって、
図5(3)に示すように、連結アーム41は相対的に前方に押され、摺動軸45は傾斜溝44に案内されながら前上方に移動する。連結アーム41は、床面Fに対するスキージ30の接触部に働く摩擦力によって押し上げられ、スキージ30の一部を除く部分を床面Fから離間させる第2の姿勢(
図5(3)参照)になる。
【0086】
具体的には、連結アーム41は、摺動軸45を傾斜溝44の前方上端部44bまで移動させることで第2の姿勢に姿勢変更される。連結アーム41が第2の姿勢に姿勢変更すると、左右一対のガイドローラ34が床面Fに接触した状態で、後側ブレード33の一部が弾性変形した状態で床面Fに接触し、前側ブレード32の全部が床面Fから上方に離間する。詳細には、後側ブレード33の左右方向中央付近は床面Fに接触しているが、後側ブレード33の左右両側は床面Fから上方に離れている。前側ブレード32は、長手方向(左右方向)全体に亘って床面Fから上方に離れている。なお、前側ブレード32の左右方向中央付近は床面Fから僅かに離間しているが、僅かに接触していても差し支えない。
【0087】
連結アーム41を第2の姿勢にした状態において、各ブレード32,33のほとんどが床面Fから上方に離れるため、スキージ室Sが大気開放される。このため、吸引ブロア18の駆動によって発生する吸引力がスキージ室S内を負圧にすることがなく、床面Fに対する各ブレード32,33の吸着が解除される。これにより、駆動モータ11bに大きな負荷をかけずに車輪11を駆動して車体2を後進させることができる。
【0088】
<昇降部の作用>
次に、
図5(4)を参照して、昇降部50の作用について説明する。
図5(4)はスキージ装置15を上昇させた状態を示す側面図である。なお、昇降部50の作用の説明では、スキージ30は中立位置に配置され、洗浄モータ19は駆動停止している。
【0089】
洗浄作業中にスキージ30を下降位置から上昇位置に引き上げる操作を行う場合、作業者による操作表示部6などを用いた上昇操作または制御部10による上昇制御に応じてスキージシリンダ21を駆動させてスキージレバー51を溝部の上端まで移動させると、
図5(4)に示すように、スキージ30が上昇位置に配置され、連結アーム41がワイヤ52を介して吊り下げられた状態になる。なお、図示は省略するが、洗浄パッド13およびパッドカバー22に関しても、別途、作業者による操作表示部6などを用いた上昇操作または制御部10による上昇制御に応じてパッドシリンダ20を駆動することで、床面Fから引き上げる操作を行っている。
【0090】
<スキージの形状>
次に、
図3(2)を参照して、スキージ30の形状について説明する。
【0091】
スキージ30(スキージ本体31および各ブレード32,33)は湾曲した弓形状であるため、後側ブレード33の左右方向中央部が最も後方に位置している。また、左右一対のガイドローラ34のローラ軸34a(左右一対のローラ軸34aを結ぶ軸心線C)は、スキージ30(後側ブレード33)の最後端よりも僅かに前側に位置している。また、車体2が後進すると、後側ブレード33の左右方向中央部は前方に撓む。ここで、スキージ30の左右方向の全長を「全長L1」と呼び、軸心線Cよりも後方に位置する後側ブレード33の左右方向長さを「基準長さL2」と呼び、車体2の後進時に後側ブレード33の撓む部分の左右方向長さを「撓み長さL2´」と呼ぶこととする。
【0092】
撓み長さL2´は、基準長さL2よりも僅かに長く(幅広く)なる。スキージ装置15のスキージ30では、全長L1と、基準長さL2または撓み長さL2´との比が(L1:L2(またはL2´))=(10:2)程度に設定されることが望ましい。すなわち、スキージ30の全長L1に対し、後側ブレード33の長さの約20%に相当する部分が床面Fに接触して撓むように、スキージ30の形状や寸法、各ガイドローラ34の配置などが設計されることが望ましい。なお、この比は、各ローラ軸34a(軸心線C)の位置と、後側ブレード33の湾曲形状(曲率)によって多少異なることもある。
【0093】
車体2の後進時に、上記した比で撓んだ後側ブレード33が床面Fに押し付けられると、連結アーム41の姿勢変更に最適な摩擦力が発生する。つまり、この摩擦力が適度な負荷になるため、摺動軸45を傾斜溝44の後方下端部44aから前方上端部44bに押し上げることが可能になる。
【0094】
仮に、各ガイドローラ34が
図3(2)に示した位置よりも後方に配置された場合、摺動軸45が傾斜溝44の後方下端部44aから前方上端部44bに移動する過程で、床面Fと後側ブレード33との間の摩擦力が無くなり、連結アーム41を第2の姿勢にすることができないおそれがある。一方、各ガイドローラ34が
図3(2)に示した位置よりも前方に配置された場合、床面Fと後側ブレード33との間の摩擦力が過大になり、車体2の後進を妨げるなど、操作性を損なうことになる。したがって、上記した比を満たすようにスキージ30が構成されている。
【0095】
<スキージ装置の効果>
以上説明したスキージ装置15では、連結アーム41は、車体2を前進させた場合にスキージ30を床面Fに接触させる第1の姿勢と、車体2を後進させた場合にスキージ30の略全部を床面Fから離間させる第2の姿勢と、の間で姿勢変更可能に構成した。この構成によれば、車体2の前進時または後進時において、スキージ30と床面Fとの間に働く摩擦力を利用し、連結アーム41を自動的に姿勢変更することができる。車体2の後進時に、連結アーム41が第1の姿勢から第2の姿勢になると、スキージ30のほとんど全てが床面Fから離間する。これにより、床面Fに対するスキージ30の吸着力(負荷)が軽減されるため、車体2を円滑に後進させることができる。
【0096】
また、連結アーム41の姿勢変更は、特定の操作や他の駆動装置からの駆動力を必要とせず、車体2を前進または後進させるだけで自動的に実行される。これにより、特定の操作構成や他の駆動装置を省略することができるため、車体2の後進時にスキージ30を上昇させる構造を、簡単且つ安価な構築することができ、床面洗浄機1の製造コストを低減することができる。
【0097】
また、スキージ装置15では、車体2の後進時に、連結アーム41を第2の姿勢にしてスキージ30と床面Fとの間の摩擦力を低減させる構成にした。この構成によれば、スキージ30が左右に回動したり、左右に揺動したりすることを防止することができる。
【0098】
また、スキージ装置15では、車体2の後進時に、連結アーム41を第2の姿勢にした状態で、後側ブレード33の左右方向中央部(全長L1の約20%)が床面Fに弾性力をもって接触する構成とした。この構成によれば、後側ブレード33の弾性に基づく反発力が床面Fに対して安定した負荷を作用させるため、連結アーム41を第2の姿勢にした状態を維持することができる。また、吸引ブロア18がスキージ室S内に吸引力を作用させた状態でも、車体2の後進時に前側ブレード32全体を床面Fから上昇させることで、負圧になったスキージ室Sを開放することができる。これにより、床面Fに対するスキージ30(各ブレード32,33)の吸着が解除されるため、車体2の後進時にスキージ30の姿勢が左右にブレたりせずに安定し、車体2の後進時の直進性を向上させることができる。
【0099】
<スキージ装置の中立移動機構>
次に、
図3(1),(2)を参照して、本実施形態に係るスキージ装置15について説明する。
図3(1)は、旋回時の床面洗浄機1を示す平面図である。
図3(2)は、後進時の床面洗浄機1を示す平面図である。
【0100】
例えば、
図3(1)に示すように、車体2が右方向に旋回した場合、スキージ装置15も右側に傾く。つまり、スキージ30は、回動位置に回動する。ここで、車体2を旋回走行させた後に、車体2を真っ直ぐ後進させる場合を考える。この場合、スキージ30が回動位置に変位したまま、車体2を後進させることになる。スキージ30は、左右方向に長いため、右側の回動位置に変位すると車体2の右方向に大きくはみ出す。この状態で、車体2を後進させると、はみ出したスキージ30が、床面F上に配置された配置物(障害物)や部屋の壁面などに接触するリスクが高まる。また、スキージ30が中立位置と回動位置との中間に位置する場合、スキージ30(連結アーム41)が不安定に揺動することがあった。
【0101】
そこで、本実施形態に係るスキージ装置15では、摺動連結部40は、車体2の後進時にスキージ30を中立位置に変位させる中立移動機構60を備えている。中立移動機構60は、中立ローラ61と、中立ガイド部62と、を含んでいる。
【0102】
中立移動体の一例としての中立ローラ61は、連結アーム41の前端から前方に延びる中立ブラケット61aに設けられている。中立ローラ61は、中立ブラケット61aの前端部から下方に延びる支軸に回転可能に支持されている。中立ローラ61は、旋回支持部42の旋回支軸42aよりも前方に設けられている。
【0103】
中立ガイド部62は、車体2の底面にて旋回支軸42aよりも前方に設けられている。中立ガイド部62は、旋回支持部42の回動方向に沿って湾曲した状態で車体2の底部に設けられている。中立ガイド部62は、車体2の底面から下方に延びる左右一対の湾曲壁62aで構成されている。左右一対の湾曲壁62aは、旋回支軸42aの前側を覆うように左右対称を成す略半円弧状に形成されている。左右一対の湾曲壁62aは、旋回支軸42aを中心とした中立ローラ61の回動(揺動)範囲に形成されている。左右一対の湾曲壁62aは、スキージ30を回動位置に変位させたときに中立ローラ61が当接するように形成されている(
図3(1)参照)。左右一対の湾曲壁62aの前端部は、互いに離間しており、中立ローラ61を係合させるための係合溝62bを構成している。
【0104】
<車体旋回走行後の後進時のスキージ装置の作用>
次に、車体2を旋回走行させた後に後進させた場合におけるスキージ装置15の作用について説明する。なお、スキージ30は回動位置(
図3(1)参照)に変位しているものとする。
【0105】
車体2が後進し始めると、連結アーム41は、第1の姿勢から第2の姿勢に姿勢変更される(
図5(3)参照)。この連結アーム41を姿勢変更する過程において、連結アーム41に設けた中立ローラ61は中立ガイド部62の湾曲壁62aに押し当てられる。車体2の後進によって連結アーム41が前方に相対移動することを利用し、中立ローラ61は、湾曲壁62aにガイドされて係合溝62bに向かって転がる。すると、連結アーム41は、自動的に旋回支軸42aを中心として回動し、
図3(2)に示すように、スキージ30を回動位置から中立位置に向けて移動させる。連結アーム41が第2の姿勢を維持したまま、スキージ30は中立位置に変位した状態になる。
【0106】
車体2の後進が進むと、連結アーム41は、第2の姿勢に姿勢変更した状態で、床面Fに対するスキージ30の接触部に働く摩擦力によって前方に押され、スキージ30の一部を除く部分を床面Fから離間させた状態を維持される。具体的には、
図5(3)に示すように、連結アーム41は、摺動軸45を傾斜溝44の前方終端部である前方上端部44bまで移動させることで第2の姿勢を維持される。連結アーム41は、第2の姿勢を維持しつつ前方に自動的に平行移動する。このとき、床面Fに対する各ブレード32,33の接触状態は、第2の姿勢時における接触状態を維持する。すなわち、後側ブレード33の左右方向中央部が床面Fに接触し、後側ブレード33の左右方向外側と前側ブレード32の全部とが床面Fから離間する。連結アーム41が第2の姿勢を維持した状態で、
図3(2)に示すように、中立ローラ61は、中立ガイド部62の係合溝62bに軽く嵌合(係合)する。中立ローラ61を係合溝62bに係合させることで、スキージ30が中立位置に保持される。
【0107】
また、スキージ装置15は、車体2の後進走行時に中立移動機構60によってスキージ30を中立位置に保持するだけでなく、中立位置に保持されたスキージ30を外力に応じて揺動可能(回動可能)にするリミッター機構(図示せず)を設けてもよい。上記した中立移動機構60では、中立ガイド部62の左右一対の湾曲壁62aの間に設けられた係合溝62bに中立ローラ61が係合することで、スキージ30が中立位置に保持される。
【0108】
これに対して、リミッター機構は、中立ガイド部62の湾曲壁62aの高さを低く抑えて、湾曲壁62aを若干外向き(下方向に開くよう)に傾斜させて構成され、中立ローラ61が中立ガイド部62の湾曲壁62aを乗り越え易くする。これにより、例えば、車体2の後進走行時に、スキージ装置15の後方(左後側または右後側)にある障害物にスキージ装置15の左右一対の水平ローラ36の何れかが当接した場合、スキージ装置15が障害物から受ける適当な付勢力によって、リミッター機構は、スキージ30の中立状態を解除してスキージ30を回動可能な状態にするため、スキージ装置15の破損を抑制することができ、スキージ装置15を好適に利用することができる。
【0109】
<制御部の機能>
次に、制御部10の機能の詳細について
図2を参照して説明する。自律走行式の床面洗浄機1では、制御部10は、モード切換部70と、地図作成部71と、プラン作成部72と、自動走行制御部73(走行制御部)とを備える。また、自走式および自律走行式に拘わらず、床面洗浄機1では、制御部10は、濁度判定部74と、スキージリセット制御部75とを備える。なお、モード切換部70、地図作成部71、プラン作成部72、自動走行制御部73、濁度判定部74、スキージリセット制御部75は、記憶部26に記憶されて制御部10に実行されるプログラムで構成されてよく、制御部10のようなコンピュータによって実行される。
【0110】
モード切換部70は、操作表示部6のメインスイッチなどの操作に応じて、床面洗浄機1の動作モードを手動走行モードおよび自動走行モードの何れかに切り換える。モード切換部70によって動作モードが手動走行モードに設定されている間、走行操作部5の手動操作入力が可能となり、自動走行モードに設定されている間、走行操作部5の手動操作入力が不能となる。
【0111】
地図作成部71は、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を用いる。地図作成部71は、所定位置の車体2について、計測部7で計測された障害物(物体)からの距離および角度を座標変換して車体2の周囲の局所地図を作成すると共に、作成した局所地図や計測部7で計測された車体2の移動量に基づいて局所地図における車体2の自己位置を推定する。なお、計測部7の障害物センサ7aは、障害物からの距離および角度の二次元データを取得し、地図作成部71は、障害物センサ7aによって取得された二次元データをつなぎ合わせることで局所地図を作成する。
【0112】
プラン作成部72は、自動走行清掃を行う清掃エリア80(
図6(1)参照)について環境地図と走行経路81(
図6(1)参照)を含む清掃プランを作成して記憶部26に記憶する。例えば、プラン作成部72は、事前に入力された清掃エリア80の図面データに基づいて環境地図を作成する。あるいは、プラン作成部72は、清掃エリア80において床面洗浄機1が手動走行を開始してから終了するまでの間の各位置で地図作成部71によって作成した各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで環境地図を作成する。
【0113】
また、プラン作成部72は、事前に入力された開始位置や終了位置、壁面などの障害物からの安全距離、走行部3の清掃時および非清掃時の走行速度などの走行データ、清掃部4の作業幅や清掃データ(洗浄パッド13の接地圧強度や回転数、供給ポンプ14の洗浄水供給量、吸引ブロア18の吸引強度など)などの各種設定値に基づいて、例えば、
図6(1)に示すような清掃エリア80の環境地図において、清掃エリア80を塗りつぶすように(清掃漏れのないように)ジグザグに往復走行するような走行経路81を作成する。
図6では、紙面上の左右方向に長い走行経路81の中間を省いて図示している。走行経路81の開始位置を四角マークで示し、終了位置をバツマークで示す。このとき、プラン作成部72は、すれ違う往路と復路とで清掃部4が所定幅でオーバーラップするように走行経路81を作成するとよい。プラン作成部72は、走行経路81のステップ(所定間隔の位置)毎に、位置データ(座標や角度)、走行部3の走行データ、清掃部4の清掃データを関連付けて走行経路81を作成する。
【0114】
自動走行制御部73は、自動走行モードの実行時に、実行すべき清掃プランを記憶部26から読み取って、この清掃プランに基づいて走行部3に対して自動制御を行い、車体2が清掃プランの走行経路81や各ステップの走行データに従った自動走行を行うように走行部3を制御する。
【0115】
更に、自動走行制御部73は、自動走行モードの実行時に、走行部3が車体2を清掃プランの走行経路81に従った自動走行をさせる間、車体2の走行経路81上の位置に対応する清掃データを清掃プランから読み取り、この清掃データに従った自動制御によって清掃作業を行うように清掃部4を制御する。
【0116】
濁度判定部74は、清掃部4のスキージ装置15から回収タンク17に回収される汚水の濁度を判定するものであり、具体的には、スキージ装置15の吸引ホース23から回収タンク17に至る通路内に設置した濁度センサ23aによって、当該通路を通過する吸引汚水の濁度を判定する。例えば、濁度センサ23aは、通路内の一部に検出部として光源および受光部を配置し、当該通路を通過する汚水中に光源から投射された光が水中の粒子によって散乱した際に、その反射光を受光部で検出して、その検出結果を変換器を介することで濁度の値を計測する。
【0117】
濁度判定部74は、汚水を吸引する吸引ブロア18の吸引強度(吸引力)や吸引速度を鑑みて、濁度センサ23aによって計測した汚水の濁度を、相対的に高・中・低などの段階で判定して出力する。例えば、汚水自体が汚れていれば、当然濁度は汚水の汚れ度合いに応じて低から中や高の判定となり、最も汚れている場合、濁度高と判定される。また、汚水中にゴミや髪の毛などの異物が混入していても、汚水の汚れに拘わらず、同様に濁度は中や高の判定となり易い。
【0118】
スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1が走行清掃(自動走行清掃)を実行中に、所定のリセット条件を満たす場合に、スキージ装置15(スキージ30)のリセット動作を実行するように制御する。
【0119】
スキージ装置15のリセット動作が必要となる状況について説明する。床面洗浄機1は、スキージ装置15(主に後側ブレード33)と床面Fとの間に髪の毛や糸ゴミなどの異物が挟まった場合、異物が吸引ブロア18の吸引力によって吸引されずに挟まったまま車体2が走行することがある。この場合、汚水の吸い残し(回収残り)や、スキージ30と床面Fとの密着不良によりスキージ30の後方に漏れ出す汚水のすじなどが床面Fに残るおそれがある。
【0120】
従来の歩行式床面洗浄機では、作業者が後方から歩行式床面洗浄機を押して走行させながら洗浄作業する際に、汚水の吸い残しやすじが床面Fに発生した場合には目視で確認し、歩行式床面洗浄機を後進させてから、汚水の吸い残しやすじの部分を再度走行させて再洗浄することが考えられる。
【0121】
ところが、自走式(例えば、搭乗式)床面洗浄機や自律走行式床面洗浄機の場合、汚水の吸い残しやすじを視認することは困難であり、即座に再洗浄することができない。従来では、自走式床面洗浄機や自律走行式床面洗浄機によって清掃プランに沿った自動走行清掃が完了した後で、床面Fに残った汚水の吸い残しやすじを作業者が目視で認識した場合に、手作業で再洗浄したり、自走式床面洗浄機または自律走行式床面洗浄機を手動走行させて再洗浄したりすることになる。
【0122】
そこで、本実施形態では、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15のリセット動作を実行することで、スキージ装置15と床面Fとの間の異物の挟み込みを解消し、汚水の吸い残しやすじの発生を抑制し、また、発生した汚水の吸い残しやすじの再洗浄を自動的に行うことができる。なお、リセット動作はスキージ装置15に対する一連の異物の挟み込み解消動作を示す。
【0123】
<リセット条件判定>
スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1が走行清掃(自動走行清掃)を開始してから終了するまでの間、スキージ装置15のリセット動作を実行する前提として、所定のリセット条件を満たすか否かを判定する。例えば、記憶部26は、リセット条件として、床面洗浄機1の走行清掃の経過距離について所定の経過距離閾値(例えば、30m)を記憶している。スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1の走行清掃の実行中に、経過距離を監視していて、経過距離が経過距離閾値以上を経過した場合に、リセット条件を満たすと判定する。なお、スキージリセット制御部75は、リセット条件を満たすと判定してスキージ装置15のリセット動作を実行した場合、監視する経過距離をリセットしてゼロに戻す。
【0124】
<走行停止動作>
スキージリセット制御部75は、スキージ装置15のリセット動作として、先ず、床面洗浄機1の走行(走行清掃)を一旦停止する走行停止動作を行う。例えば、床面洗浄機1は走行清掃として、パッドシリンダ20を駆動して洗浄パッド13を下降させると共に洗浄モータ19を起動して洗浄パッド13を回転させ、更に、供給ポンプ14を起動して洗浄水を供給することで、床面Fの洗浄を行う。また、床面洗浄機1は走行清掃として、スキージシリンダ21を駆動してスキージ装置15を下降させると共に吸引ブロア18を起動することで、洗浄後の汚水の吸引・回収を行う。また、床面洗浄機1は走行清掃として、左右の駆動モータ11bを駆動して車輪11を回転させることで、車体2の前進走行を行う。このとき、スキージ装置15は、
図5(1)に示すように、第1の姿勢になる。
【0125】
<洗浄停止動作>
スキージリセット制御部75は、上記のような走行清掃に対する走行停止動作として、パッドシリンダ20を駆動して洗浄パッド13を上昇させると共に洗浄モータ19を停止して洗浄パッド13の回転を停止させ、更に、供給ポンプ14を停止して洗浄水の供給を停止することで、床面Fの洗浄を停止する洗浄停止動作を実行する。なお、スキージリセット制御部75は、洗浄停止動作を実行する際に、スキージ装置15の上昇や吸引ブロア18の起動停止をさせることなく、スキージ装置15を自重で床面Fに下降した状態で、吸引ブロア18の吸引動作を継続してスキージ室Sを負圧にさせたままにする。
【0126】
<予備前進動作>
また、スキージリセット制御部75は、走行停止動作として、車体2の前進速度を徐々に低速にするように左右の駆動モータ11bの駆動を制御し、洗浄停止動作の後で、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止させることで、車体2の前進走行を停止する。ここで、スキージリセット制御部75は、洗浄停止動作の後で車体2の前進走行を停止するまでの間に、
図5(2)に示すように、所定の予備前進距離FDを前進走行してから前進走行を停止する予備前進動作を実行する。
【0127】
なお、予備前進距離FDは、床面洗浄機1の旋回によってスキージ30が左方または右方への回動位置に回動した場合でも、床面洗浄機1の(直進の)前進走行によってスキージ30を中立位置に戻すことができる距離に設定されてよい。あるいは、予備前進距離FDは、後述する吸引後進動作および予備後進動作において床面洗浄機1が後進走行によって移動された位置が、リセット条件を満たしてリセット動作を開始する位置(予備前進動作の開始位置)に戻るように設定されてもよい。若しくは、予備前進距離FDは、作業者の任意の操作に応じて設定可能にしてもよい。あるいは、予備前進距離FDは、リセット動作以前に使用されていた洗浄水をスキージ装置15が回収しきるだけの距離に設定してもよい。
【0128】
<吸引後進動作>
また、スキージリセット制御部75は、走行停止動作の後で、
図5(3)に示すように、スキージ装置15による汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離BD1を後進走行する吸引後進動作を実行する。スキージリセット制御部75は、吸引後進動作として、左右の駆動モータ11bを駆動して車輪11を回転させることで、車体2の後進走行を行う。このとき、スキージリセット制御部75は、車体2の後進速度を徐々に低速にするように左右の駆動モータ11bの駆動を制御し、第1後進距離BD1を経過したときに、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止させることで、車体2の後進走行を停止する。
【0129】
スキージ装置15と床面Fとの間に挟まっていた異物は、床面洗浄機1の後進走行でスキージ装置15が後方に引きずられることによって挟み込み状態から解放される可能性がある。第1後進距離BD1は、スキージ装置15と床面Fとの間の異物の挟み込みに対する解放を想定して設定されてよく、あるいは、作業者の任意の操作に応じて設定されてもよい。
【0130】
なお、スキージリセット制御部75は、吸引後進動作においても走行停止動作から継続して、洗浄パッド13を上昇させたまま維持すると共に洗浄パッド13の回転を停止させたままにし、更に、洗浄水の供給を停止したままにする。更に、スキージリセット制御部75は、吸引後進動作においても走行停止動作から継続して、スキージ装置15の上昇や吸引ブロア18の起動停止をさせることなく、スキージ装置15を自重で床面Fに下降した状態で、吸引ブロア18の吸引動作を継続するが、スキージ30と床面Fとの吸着が解除されるのでスキージ室Sは負圧にはならない。
【0131】
<スキージ上昇動作>
また、スキージリセット制御部75は、吸引後進動作の後で、
図5(4)に示すように、スキージ装置15(スキージ30)を上昇させるスキージ上昇動作を実行する。スキージリセット制御部75は、スキージシリンダ21を駆動してスキージレバー51を上側に回動させてワイヤ52を牽引することでスキージ装置15を上昇させる。スキージ上昇動作を実行する間、スキージリセット制御部75は、吸引ブロア18の吸引動作を継続するが、スキージ装置15を上昇させているため、スキージ装置15と床面Fとの隙間によってスキージ室Sが開放されて負圧にはならない。
【0132】
スキージ装置15と床面Fとの間に挟まっていた異物は、スキージ装置15の上昇によって挟み込み状態から解放される。上昇されたスキージ装置15から異物が自重で床面Fに落下した場合、吸引ブロア18の吸引力によって、落下した異物が回収される可能性がある。また、上昇されたスキージ装置15に異物が付着していた場合も、吸引ブロア18の吸引力によって、付着した異物が回収される可能性がある。
【0133】
<予備後進動作>
また、スキージリセット制御部75は、スキージ上昇動作の後で、更に、
図5(5)に示すように、所定の第2後進距離BD2を後進走行する予備後進動作を実行する。スキージリセット制御部75は、予備後進動作として、左右の駆動モータ11bを駆動して車輪11を回転させることで、車体2の後進走行を行う。このとき、スキージリセット制御部75は、車体2の後進速度を徐々に低速にするように左右の駆動モータ11bの駆動を制御し、第2後進距離BD2を経過したときに、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止させることで、車体2の後進走行を停止する。
【0134】
これにより、予備後進動作によって、スキージ上昇動作でスキージ装置15から床面Fに落下した異物よりも、スキージ装置15を後方に移動させることができ、当該異物を適切に回収することができる。第2後進距離BD2は、スキージ装置15から落下した異物やスキージ装置15に付着した異物の回収を想定して設定されてよく、あるいは、作業者の任意の操作に応じて設定されてもよい。
【0135】
なお、スキージリセット制御部75は、予備後進動作においても吸引後進動作やスキージ上昇動作から継続して、洗浄パッド13を上昇させたまま維持すると共に洗浄パッド13の回転を停止させたままにし、更に、洗浄水の供給を停止したままにする。更に、スキージリセット制御部75は、予備後進動作においてもスキージ上昇動作から継続して、スキージ装置15を上昇したままであり、吸引ブロア18の吸引動作を継続したままにする。
【0136】
スキージリセット制御部75は、予備後進動作において床面洗浄機1の後進走行によって第2後進距離BD2を経過すると、リセット動作を完了して、床面洗浄機1の走行清掃(自動走行清掃)を再開可能にする。
【0137】
<リセット抑制条件判定>
ところで、スキージリセット制御部75は、リセット条件を満たす場合でも、所定のリセット抑制条件を満たす場合には、リセット動作の実行を保留する。また、リセット抑制条件を満たすと判定した後、リセット抑制条件を満たさなくなった場合には、スキージリセット制御部75は、リセット動作の抑制を解除して、リセット動作を実行する。
【0138】
例えば、記憶部26は、スキージ装置15のリセット動作の実行を抑制するためのリセット抑制条件として、床面洗浄機1の走行状態が旋回走行であることを記憶し、具体的には、旋回半径(曲率)について所定の旋回半径閾値を記憶している。スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1の旋回走行の旋回半径が旋回半径閾値以下であって旋回走行中である(左右の駆動モータ11bの回転数が異なる)場合に、リセット抑制条件を満たすと判定する。
【0139】
図6では、清掃エリア80において、往復走行によって自動走行清掃を行う清掃プランで作成された走行経路81を二点鎖線で示し、走行済みの経路を太線で示す。
図6(1)に示すように、床面洗浄機1は、紙面上の右側から左側に向かって直進する自動走行清掃を行うところ、清掃エリア80の左端で右側に向かって折り返すために、180度旋回走行を行う。ここで、開始位置(四角マーク参照)からの経過距離が旋回走行中に経過距離閾値に達するものとする。
【0140】
このように、床面洗浄機1の走行清掃の経過距離が経過距離閾値以上を経過してリセット条件を満たす場合でも、床面洗浄機1が旋回走行中である場合には、スキージリセット制御部75は、リセット抑制条件を満たすと判定してリセット動作を抑制する。床面洗浄機1の旋回走行中にスキージ装置15のリセット動作を行うと、大きく傾いたスキージ装置15から、汚水が漏れ出す可能性があるが、本実施形態に係る床面洗浄機1では、旋回走行中であることをリセット抑制条件とするため、旋回走行中にリセット動作を行うことがなく、汚水の漏れを抑制することができる。
【0141】
その後、床面洗浄機1が旋回走行を終了して床面洗浄機1が直進進行を開始した場合に、スキージリセット制御部75は、リセット抑制条件を満たさなくなったと判定してリセット動作の抑制を解除する。
図6(2)に示すように、旋回走行の終了直後では、床面洗浄機1が壁面などに接近していて壁面との間に第1後進距離BD1および第2後進距離BD2を取ることができず、吸引後進動作および予備後進動作を行うことができない可能性がある。ここで、床面洗浄機1が旋回走行を終了して前進走行で走行清掃を開始可能な場合には、
図6(3)に示すように、予備前進距離FDを確保する予備前進動作を行うことで、壁面との間に第1後進距離BD1および第2後進距離BD2を取ることができるので、
図6(4)に示すように、吸引後進動作および予備後進動作を行った後、自動走行清掃を再開できるようになる。
【0142】
また、旋回走行の終了直後では、スキージ30は回動位置に変位しているが、スキージ装置15のリセット動作において予備前進動作を行うことで、スキージ装置15の旋回支軸42aが直進移動する過程で、スキージ装置15の各ブレード32,33と床面Fとの接触による負荷が進行方向とは逆方向に作用するため、スキージ30を中立位置に戻すことができるので、スキージリセット制御部75は、リセット抑制条件を満たさなくなったと判定してよい。なお、少なくとも、
図6(2)で最大に回動した状態のスキージ装置15の前端(左側の水平ローラ36の位置)よりも、
図6(3)のスキージ装置15の前端(両端の水平ローラ36の位置)が進行方向に位置するまで、予備前進動作を行うことが必要である。
【0143】
また、例えば、記憶部26は、リセット抑制条件として、床面洗浄機1の走行状態が段差後の走行であることを記憶し、具体的には、段差検出からの走行距離について所定の段差後距離閾値を記憶している。スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1の走行清掃中に、段差センサ7dによって床面Fの段差を検出した後、リセット条件を満たすと判定した場合であっても、段差検出からの走行距離を監視して、当該段差検出からの走行距離が段差後距離閾値以上を経過するまでの間は、リセット抑制条件を満たすと判定する。
【0144】
段差後距離閾値は、床面洗浄機1の段差通過後に、スキージ装置15が段差を通過した状態でリセット動作を行うことがないように設定される。具体的には、
図10(1)に示すように、段差センサ7dによる床面F上の検知位置からスキージ装置15の後端(例えば、後側ブレード33)までの長さWに所定距離αを足した距離を段差後距離閾値に設定してよい。例えば、当該所定距離は、上述の第1後進距離BD1および第2後進距離BD2であればよく、即ち、予備前進距離FDとしてよい。
【0145】
これにより、段差検出からの走行距離が段差後距離閾値以上を経過するまでの間は、スキージ装置15のリセット動作が行われないので、段差に乗り上げたスキージ装置15から汚水が漏れ出すことがない。また、段差検出からの走行距離が段差後距離閾値以上を経過した後で、リセット抑制条件が解除されるため、
図10(2)に示すように、段差の通過後の位置で、上記した予備前進動作、吸引後進動作、予備後進動作を含むスキージ装置15のリセット動作を行うことができる。
【0146】
また、スキージリセット制御部75は、リセット条件またはリセット抑制条件を判定する際に、床面洗浄機1の走行状態や清掃状態に応じてリセット条件またはリセット抑制条件をそれぞれ変化させてもよい。このとき、スキージリセット制御部75は、清掃状態に応じて、リセット動作の必要性が比較的高いと判定される場合には、リセット条件を強化し、一方、リセット動作の必要性が比較的低いと判定される場合には、リセット条件を緩和する。
【0147】
例えば、スキージリセット制御部75は、清掃状態として、吸引ブロア18で吸引されて回収タンク17に回収される汚水の濁度に応じてリセット条件を変化させる。具体的には、リセット条件である走行清掃の経過距離閾値に関して、通常値(例えば、30m)が予め設定されるところ、スキージリセット制御部75は、濁度判定部74で判定される汚水の濁度を監視していて、濁度高の判定が頻発した場合に、経過距離閾値に所定の係数を乗算することでリセット条件を強化する。このとき、
図9に示すように、濁度高の頻発に対して係数0.8(80%)が設定されている場合、通常値30mに係数0.8を乗算することで経過距離閾値を22mとする。
【0148】
これにより、濁度高の判定が頻発する場合、スキージ装置15と床面Fとの間に異物が堆積したり挟み込まれていたりする可能性が高いため、スキージリセット制御部75は、リセット動作の必要性が比較的高いと判断して、リセット動作の実行を早めることができる。
【0149】
なお、スキージリセット制御部75は、所定の単位時間当たりの濁度高の判定が所定の回数閾値を超える場合に、濁度高の判定が頻発であると判定してよい。また、スキージリセット制御部75は、濁度低の判定が所定の長距離または長時間続いた場合に、経過距離閾値に所定の係数を乗算することでリセット条件を緩和し、経過距離閾値を通常値よりも長くしてもよい。
【0150】
また、スキージリセット制御部75は、清掃状態として、供給ポンプ14によって供給される洗浄水の供給量に応じてリセット条件を変化させる。具体的には、リセット条件である走行清掃の経過距離閾値に関して、通常値(例えば、30m)が予め設定されるところ、スキージリセット制御部75は、洗浄水の供給量を監視していて、供給量が大での走行清掃が行われる場合に、経過距離閾値に所定の係数を乗算することでリセット条件を強化する。このとき、
図9に示すように、洗浄水の供給量大に対して係数0.8(80%)が設定されている場合、通常値30mに係数0.8を乗算することで経過距離閾値を22mとする。
【0151】
これにより、洗浄水の供給量が多い場合は、スキージリセット制御部75は、なるべく頻繁にリセット動作をおこない、スキージ装置15の状態を良好に保つことができる。また、スキージリセット制御部75は、供給量が小での走行清掃が所定の長距離または長時間続いた場合に、経過距離閾値に所定の係数を乗算することでリセット条件を緩和し、経過距離閾値を通常値よりも長くしてもよい。
【0152】
また、スキージリセット制御部75は、清掃状態として、汚水の濁度と洗浄水の供給量との両方を監視してもよく、濁度高が頻発且つ供給量が大である場合、それぞれの係数を経過距離閾値に乗算することでリセット条件を強化し、例えば、通常値30mに係数0.8(80%)×係数0.8(80%)を乗算することで経過距離閾値を19.2mとする。
【0153】
また、スキージリセット制御部75は、清掃状態として、スキージ装置15の異常を検出する状態センサの検出結果に応じてリセット条件を変化させる。具体的には、リセット条件である走行清掃の経過距離閾値に関して、通常値(例えば、30m)が予め設定されるところ、スキージリセット制御部75は、状態センサの検出結果によりスキージ装置15に異常ありと判定された場合に、経過距離閾値に所定の係数を乗算することでリセット条件を強化し、例えば、通常値30mに係数0(0%)を乗算することで経過距離閾値を0mとして、即時、リセット動作を実行させてもよい。
【0154】
なお、状態センサは、スキージ装置15の振動を検出する振動センサでもよく、吸引ブロア18による吸引力の異常を検出するセンサや、供給ポンプ14による供給量の異常を検出するセンサ、あるいは他の異常を検出するセンサでもよい。
【0155】
次に、自律走行式の床面洗浄機1の動作例を
図7および
図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0156】
先ず、床面洗浄機1では、洗浄作業を開始し、自動走行制御部73は、所定の清掃プランに基づく自動走行清掃を開始すると、洗浄モータ19を起動して洗浄パッド13を回転させると共に、吸引ブロア18を起動する(ステップS1)。このとき、洗浄モータ19(洗浄パッド13)の回転数や吸引ブロア18の吸引強度(吸引力)は、清掃プランに基づいて、あるいは作業者の任意の操作に応じて、適宜設定される。
【0157】
また、自動走行制御部73は、パッドシリンダ20を駆動して洗浄パッド13を下降させて床面Fに圧着させると共に、供給ポンプ14を起動して洗浄水を床面Fに供給し、更に、スキージシリンダ21を駆動してスキージ装置15を下降させてスキージ30を床面Fに接地させると共に、左右の駆動モータ11bを駆動して車輪11を回転させて床面洗浄機1を前進走行させる(ステップS2)。このとき、パッドシリンダ20(洗浄パッド13)の接地圧強度、供給ポンプ14の洗浄水供給量、左右の駆動モータ11b(車輪11)の回転数は、清掃プランに基づいて、あるいは作業者の任意の操作に応じて、適宜設定される。
【0158】
次に、上記のような状態で自動走行清掃の実行中に(ステップS3)、スキージリセット制御部75は、リセット条件を満たすか否かを判定する(ステップS4)。リセット条件を満たさない場合(ステップS4:No)、自動走行清掃を継続し、自動走行制御部73が清掃プランに基づく自動走行清掃を終了すると(ステップS5:Yes)、床面洗浄機1を停止して動作を終了する。
【0159】
一方、リセット条件を満たす場合(ステップS4:Yes)、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15のリセット動作の実行を開始する(ステップS6)。
【0160】
スキージリセット制御部75は、先ず、走行停止動作を行って、パッドシリンダ20を駆動して洗浄パッド13を上昇させて床面Fとの圧着を解除すると共に洗浄モータ19を停止して洗浄パッド13の回転を停止し、更に、供給ポンプ14を停止して洗浄水の供給を停止し、また、床面洗浄機1の前進走行を低速にするように左右の駆動モータ11bの駆動を制御する(ステップS7)。
【0161】
このときの前進走行は、予備前進動作であり、洗浄パッド13を床面Fから離間させて、洗浄水の供給を停止すると共に、スキージ装置15を自重で床面Fに下降した状態で、吸引ブロア18の吸引動作を継続したままで行われる。スキージリセット制御部75は、走行停止動作を開始してから予備前進動作の走行距離が予備前進距離FDを経過したか否かを判定する(ステップS8)。
【0162】
予備前進距離FDを経過した場合(ステップS8:Yes)、スキージリセット制御部75は、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止することで床面洗浄機1の前進走行(予備前進動作)を停止して走行停止動作を終了する。その後、スキージリセット制御部75は、吸引後進動作を行って、左右の駆動モータ11bを(後進方向に)駆動して車輪11を回転させることで、床面洗浄機1の後進走行を低速で行う(ステップS9)。
【0163】
このときの後進走行(吸引後進動作)は、洗浄パッド13を床面Fから離間させて、洗浄水の供給を停止すると共に、スキージ装置15を自重で床面Fに下降した状態で、吸引ブロア18の吸引動作を継続したままで行われる。スキージリセット制御部75は、吸引後進動作を開始してからの走行距離が第1後進距離BD1を経過したか否かを判定する(ステップS10)。
【0164】
第1後進距離BD1を経過した場合(ステップS10:Yes)、スキージリセット制御部75は、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止することで床面洗浄機1の後進走行(吸引後進動作)を停止する。その後、スキージリセット制御部75は、スキージ上昇動作を行って、スキージシリンダ21を駆動してスキージレバー51を上側に回動させてワイヤ52を牽引することでスキージ装置15を上昇させる(ステップS11)。このスキージ上昇動作は、吸引ブロア18の吸引動作を継続したままで行われる。
【0165】
更に、スキージリセット制御部75は、予備後進動作を行って、左右の駆動モータ11bを駆動して車輪11を回転させることで、床面洗浄機1の後進走行を低速で行う(ステップS12)。このときの後進走行(予備後進動作)は、洗浄パッド13を床面Fから離間させたままで、洗浄水の供給を停止したまま維持すると共に、スキージ装置15を上昇させたまま床面Fから離間させた状態で、吸引ブロア18の吸引動作を継続したままで行われる。スキージリセット制御部75は、予備後進動作を開始してからの走行距離が第2後進距離BD2を経過したか否かを判定する(ステップS13)。
【0166】
第2後進距離BD2を経過した場合(ステップS13:Yes)、スキージリセット制御部75は、左右の駆動モータ11bの駆動を停止して車輪11の回転を停止することで床面洗浄機1の後進走行(吸引後進動作)を停止する(ステップS14)。これにより、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15のリセット動作を終了する。
【0167】
その後、ステップS1に戻って、自動走行制御部73が清掃プランに基づく自動走行清掃を再開する。再開時の自動走行清掃では、洗浄モータ19(洗浄パッド13)の回転数、吸引ブロア18の吸引強度(吸引力)、パッドシリンダ20(洗浄パッド13)の接地圧強度、供給ポンプ14の洗浄水供給量、左右の駆動モータ11b(車輪11)の回転数は、リセット動作以前の状態に再度設定される。
【0168】
なお、上記した実施形態では、スキージリセット制御部75は、洗浄停止動作および予備前進動作を含む走行停止動作と、吸引後進動作と、スキージ上昇動作と、予備後進動作とを実行する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15と床面Fとの間の異物の挟み込みを直接的に解消するために、吸引後進動作およびスキージ上昇動作の少なくとも一方を実行すればよく、すなわち、洗浄停止動作、予備前進動作、吸引後進動作、スキージ上昇動作および予備後進動作を適宜組み合わせて実行すればよい。
【0169】
更に、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15と床面Fとの間の異物の挟み込みや、スキージ装置15に対する異物の付着を直接的に解消するために、吸引後進動作およびスキージ上昇動作に加えて、上昇させたスキージ装置15を振動させるスキージ振動動作を行ってもよい。例えば、スキージリセット制御部75は、スキージ装置15を上昇させた状態で、更にスキージシリンダ21を駆動してスキージレバー51を上下に回動させてワイヤ52を上下に牽引することでスキージ装置15を上下に振動させる。これにより、スキージ装置15に付着した異物が脱落し易くなる。
【0170】
上述のように、本実施形態によれば、車体2を走行させながら、洗浄水を供給して床面Fを洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機1は、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置15(スキージ30)と、スキージ装置15のリセット動作を実行するためのリセット条件を記憶する記憶部26と、制御部10と、を備える。制御部10は、走行清掃の実行中にリセット条件を満たす場合に、リセット動作として、走行を一旦停止する走行停止動作と、走行停止動作の後でスキージ装置15による汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離BD1を後進走行する吸引後進動作と、吸引後進動作の後でスキージ装置15を上昇させるスキージ上昇動作とを実行するスキージリセット制御部75として機能する。
【0171】
換言すれば、車体2を走行させながら、洗浄水を供給して床面Fを洗浄する走行清掃を実行する床面洗浄機1において、洗浄後の汚水を回収するスキージ装置15(スキージ30)のリセット方法は、走行清掃の実行中に、スキージ装置15のリセット動作を実行するためのリセット条件を満たす場合に、リセット動作として、走行を一旦停止する走行停止動作と、走行停止動作の後でスキージ装置15による汚水の吸引を継続しながら所定の第1後進距離BD1を後進走行する吸引後進動作と、吸引後進動作の後でスキージ装置15を上昇させるスキージ上昇動作と、を実行する。
【0172】
このような構成により、本実施形態に係る床面洗浄機1は、小型で小回りが利き、製品価格を高騰させることなく構成されていて、吸引後進動作やスキージ装置15のリセット動作によって、スキージ上昇動作によりスキージ装置15と床面Fとの間に挟まっている異物をスキージ装置15から離脱させて床面Fに落下させることができるため、汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0173】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、スキージリセット制御部75は、走行停止動作として、床面Fを洗浄する洗浄部材である洗浄パッド13を床面Fから離間させると共に洗浄水の供給を停止する洗浄停止動作と、前記洗浄停止動作の後で所定の予備前進距離FDを前進走行してから走行停止する予備前進動作と、を実行する。
【0174】
このような構成により、床面洗浄機1は、予備前進動作を行った後で、上記の吸引後進動作や後述の予備後進動作を行うので、吸引ブロア18による吸引動作などを含む走行清掃を再開する位置を、リセット動作により走行清掃を中断した位置から大きく変化することを抑制することができる。
【0175】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、スキージリセット制御部75は、リセット動作として、吸引後進動作およびスキージ上昇動作の後で、更に、所定の第2後進距離BD2を後進走行する予備後進動作を実行する。
【0176】
このような構成により、床面洗浄機1は、吸引後進動作およびスキージ上昇動作によって床面Fに異物が落下する位置よりも、予備後進動作によって後進した位置から走行清掃を再開することができる。そのため、リセット動作によって床面Fに落下した異物を、スキージ装置15によって確実に回収することができ、汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0177】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、スキージリセット制御部75は、リセット動作として、スキージ上昇動作の後で、更に、スキージ装置15を振動させるスキージ振動動作を実行する。
【0178】
このような構成により、床面洗浄機1は、スキージ装置15に付着した異物をより確実に落下させて回収することができる。
【0179】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、スキージリセット制御部75は、走行清掃の経過距離が所定の経過距離閾値以上を経過した場合に、リセット条件を満たすと判定する。
【0180】
このような構成により、床面洗浄機1は、走行清掃の経過距離を参照することによって、スキージ装置15と床面Fとの間に挟まる可能性のある異物の堆積が相当程度溜まる前に、スキージ装置15のリセット動作を実行することができるため、効率よく汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0181】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、制御部10は、スキージ装置15によって吸引された汚水の濁度を検出する濁度判定部74として機能し、スキージリセット制御部75は、濁度に応じてリセット条件を変化させる。
【0182】
このような構成により、床面洗浄機1は、汚水の濁度によってリセット条件を変化させることで、スキージ装置15のリセット動作の頻度を清掃状態に適合させることができ、適切に汚水の吸い残しや汚水のすじの発生を抑制することができる。
【0183】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、記憶部26は、リセット条件と共に、スキージ装置15のリセット動作の実行を抑制するためのリセット抑制条件を記憶し、スキージリセット制御部75は、リセット条件を満たす場合でもリセット抑制条件を満たす場合に、リセット動作の実行を保留する。
【0184】
例えば、記憶部26は、リセット抑制条件として、車体2の走行状態が旋回走行であることを記憶する。
【0185】
あるいは、記憶部26は、リセット抑制条件として、車体2の走行状態が段差後の走行であることを記憶する。
【0186】
このような構成により、床面洗浄機1は、適切な状態でない場合には、スキージ装置15のリセット動作を抑制し、一方、適切な状態である場合に、リセット動作を実行することができる。
【0187】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、スキージ装置15は、車体2の進行方向に直交する左右方向に長く形成され、スキージ装置15を車体2に連結する連結アーム41を車体2の進行方向に沿う姿勢とした中立位置と、連結アーム41を車体2の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置との間において回動可能に設けられ、連結アーム41の回動方向に沿って湾曲した状態で車体2の底部に設けられる中立ガイド部62に対し、連結アーム41の一部または連結アーム41に設けられる中立ローラ61などの中立移動体を押し当て、スキージ装置15を回動位置から中立位置に移動させる中立移動機構60を更に備える。
【0188】
このような構成により、床面洗浄機1は、スキージ装置15のリセット動作を行った場合、吸引後進動作での後進走行において、スキージ30をカム機構によって中立位置に変位させることができ、スキージ装置15を適切な状態にして走行清掃を再開することができる。
【0189】
また、本実施形態に係る床面洗浄機1において、中立移動機構60は、中立位置に保持されたスキージ装置15を外力に応じて回動可能にするリミッター機構を備える。
【0190】
このような構成により、床面洗浄機1は、スキージ装置15に対して障害物などが衝突した場合に、中立位置を解除してスキージ装置15を回動可能にするため、スキージ装置15の破損を防止することができる。
【0191】
<他の実施形態>
なお、本実施形態では、スキージ装置15において、摺動軸45が連結アーム41に設けられ、各傾斜溝44が支持壁部43に設けられる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、摺動部の一例としての左右一対の摺動軸を左右一対の支持壁部43に固定し、左右一対の摺動軸を嵌合させる左右一対の傾斜溝を連結アーム41の左右両側面に形成してもよい。この場合、連結アーム41は、各摺動軸を各傾斜溝の前方上端部まで相対移動させることで第1の姿勢に姿勢変更され、各摺動軸を傾斜溝の後方下端部まで相対移動させることで第2の姿勢に姿勢変更される。
【0192】
なお、本実施形態に係るスキージ装置15の中立ローラ61(中立ブラケット61a)は省略されてもよい。この場合、例えば、連結アーム41の先端部(一部)を、中立ガイド部62(湾曲壁62a)に押し当て、且つ係合溝62bに係合させてもよい。
【0193】
なお、本実施形態では、スキージ装置15において、スキージ本体31(スキージ30)が、弓形状に形成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、スキージ本体31は、略U字状(山型)に形成されてもよい。あるいは、例えば、スキージ本体31は、後方に凸となるように屈曲して略V字型に形成されてもよい。
【0194】
なお、本実施形態では、スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1の走行清掃の経過距離が経過距離閾値以上を経過した場合にリセット条件を満たすと判定する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、スキージリセット制御部75は、床面洗浄機1の走行清掃中に洗浄水の供給量または汚水の回収量を監視して、洗浄水供給量または汚水回収量が所定の閾値以上を経過した場合にリセット条件を満たすと判定してもよい。
【0195】
なお、本実施形態では、スキージ装置15のリセット動作中の吸引ブロア18の吸引強度(吸引力)は、リセット動作以前の動作の状態を継続しながら予備前進動作、吸引後進動作および予備後進動作などを実行しているが、本発明はこれに限定されず、これらのリセット動作中の一部もしくは全部において、吸引ブロア18による吸引力を最大強度に制御して行ってもよい。
【0196】
なお、本実施形態では、スキージ装置15のリセット動作中の実行中に特に警報などの出力を行っていないが、例えば、適宜リセット動作の実行中を示す警報音やランプの点灯などを出力し、周囲に居る可能性のある歩行者や作業者にその旨を認識させて、リセット動作に伴う車体2の走行停止、後進などが行われることを注意喚起してもよい。
【0197】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩または派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0198】
以上説明したように、本発明の技術は、大規模なショッピングモールなどの商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場などで使用される床面洗浄機において、好適に利用可能な技術である。
【符号の説明】
【0199】
1 床面洗浄機
2 車体
3 走行部
4 清掃部
5 走行操作部
6 操作表示部
7 計測部
8 撮像部
9 電源部
10 制御部
13 洗浄パッド
14 供給ポンプ
15 スキージ装置
18 吸引ブロア
19 洗浄モータ
20 パッドシリンダ
21 スキージシリンダ
23a 濁度センサ
26 記憶部
30 スキージ
32 前側ブレード
33 後側ブレード
36 水平ローラ
40 摺動連結部
41 連結アーム
42 旋回支持部
42a 旋回支軸
43 支持壁部
44 傾斜溝
45 摺動軸
50 昇降部
51 スキージレバー
52 ワイヤ
60 中立移動機構
61 中立ローラ
62 中立ガイド部
62a 湾曲壁
62b 係合溝
70 モード切換部
71 地図作成部
72 プラン作成部
73 自動走行制御部
74 濁度判定部
75 スキージリセット制御部