IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ショベル 図1
  • 特開-ショベル 図2
  • 特開-ショベル 図3
  • 特開-ショベル 図4
  • 特開-ショベル 図5
  • 特開-ショベル 図6
  • 特開-ショベル 図7
  • 特開-ショベル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006535
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20250109BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20250109BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20250109BHJP
   F15B 11/044 20060101ALI20250109BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F15B11/08 A
E02F9/22 R
F15B11/00 Q
F15B11/00 H
F15B11/044
F15B11/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107387
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AB06
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003FA02
3H089AA05
3H089AA20
3H089AA22
3H089AA23
3H089AA25
3H089AA60
3H089AA74
3H089BB15
3H089BB28
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB13
3H089DB43
3H089DB55
3H089DB75
3H089EE05
3H089EE22
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF08
3H089FF09
3H089FF10
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストを低減しつつ、意図しない駆動源の停止を防止するショベルを提供する。
【解決手段】下部走行体と、前記下部走行体に対し旋回可能な上部旋回体と、駆動源11と、前記駆動源によって駆動される油圧ポンプ14と、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量を制御するレギュレータ13と、油圧アクチュエータ9と、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給する作動油を制御する方向制御弁174と、操作装置26と、制御装置30と、を備え、前記制御装置は、前記レギュレータの故障を判定する故障判定部と、前記操作装置の操作量が入力され、前記方向制御弁を制御する制御弁制御部と、を有し、前記制御弁制御部は、前記故障判定部が前記レギュレータが故障したと判定した場合、駆動源ストール防止制御によって前記方向制御弁を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対し旋回可能な上部旋回体と、
駆動源と、
前記駆動源によって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量を制御するレギュレータと、
油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給する作動油を制御する方向制御弁と、
操作装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記レギュレータの故障を判定する故障判定部と、
前記操作装置の操作量が入力され、前記方向制御弁を制御する制御弁制御部と、を有し、
前記制御弁制御部は、
前記故障判定部が前記レギュレータが故障したと判定した場合、駆動源ストール防止制御によって前記方向制御弁を制御する、
ショベル。
【請求項2】
前記レギュレータのパイロット圧を制御する傾転制御比例弁と、
前記傾転制御比例弁と前記レギュレータとを接続するパイロットラインにおいて、前記レギュレータに供給される実パイロット圧を検出するレギュレータパイロット圧センサと、を更に備え、
前記故障判定部は、
前記傾転制御比例弁への制御指令値に基づく推定パイロット圧と、前記レギュレータパイロット圧センサで検出した前記実パイロット圧と、の差が閾値以上の場合、前記レギュレータの故障と判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記駆動源の実回転数を検出する駆動源回転数センサを更に備え、
前記故障判定部は、
前記駆動源の回転数指令値と、前記駆動源回転数センサで検出した前記実回転数と、の差が閾値以上の場合、前記レギュレータの故障と判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記駆動源の実回転数を検出する駆動源回転数センサを更に備え、
前記故障判定部は、
前記駆動源の回転数指令値と、前記駆動源回転数センサで検出した前記実回転数と、の差が閾値以上、かつ、前記駆動源への燃料供給量が閾値以上の場合、前記レギュレータの故障と判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記駆動源ストール防止制御は、前記油圧ポンプのポンプ圧が所定の閾値ポンプ圧を超えないように、前記方向制御弁を制御する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項6】
前記レギュレータのパイロット圧を制御する傾転制御比例弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記傾転制御比例弁を制御することで前記レギュレータの斜板の傾転角を制御するレギュレータ制御部をさらに有し、
前記レギュレータ制御部は、
前記油圧ポンプの流量を一定として制御する第1の制御領域と、前記油圧ポンプのトルクを一定として制御する第2の制御領域と、を有し、
前記閾値ポンプ圧は、前記第1の制御領域と前記第2の制御領域とを分ける圧力である、
請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御弁制御部は、
前記故障判定部が前記レギュレータが故障したと判定し、かつ、前記油圧ポンプのポンプ圧が所定の閾値を超えた場合、前記油圧ポンプから作動油タンクへと連通する前記方向制御弁の開口の開口面積の最小値を制限する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項8】
前記制御弁制御部は、
前記故障判定部が前記レギュレータが故障したと判定した場合、前記油圧ポンプから作動油タンクへと連通する前記方向制御弁の開口の開口面積の最小値を制限する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項9】
前記油圧ポンプは、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを有し、
前記方向制御弁は、前記第1油圧ポンプから作動油が供給される第1系統の方向制御弁と、前記第2油圧ポンプから作動油が供給される第2系統の方向制御弁と、を有し、
前記制御弁制御部は、
前記第1系統の方向制御弁及び前記第2系統の方向制御弁の両方が操作されている場合、第1上限で前記方向制御弁を制御し、
前記第1系統の方向制御弁または前記第2系統の方向制御弁のいずれか一方のみが操作されている場合、前記第1上限よりも大きい第2上限で前記方向制御弁を制御する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項10】
前記方向制御弁のパイロット圧を制御する電磁比例弁をさらに備え、
前記制御弁制御部は、前記電磁比例弁を制御することで、前記方向制御弁を制御する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項11】
前記レギュレータのパイロット圧を制御する傾転制御比例弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記傾転制御比例弁を制御することで前記レギュレータの斜板の傾転角を制御するレギュレータ制御部をさらに有し、
前記レギュレータは、前記傾転制御比例弁が閉じた状態で、前記傾転角が最大傾転となり、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量が最大となる、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レギュレータと、コントローラと、電磁比例弁と、冗長用電磁式切換弁と、パイロット式油圧比例弁と、パイロット油圧ポンプと、を備え、可変容量型の油圧ポンプのポンプ吐出量を制御する吐出量制御回路を備えるショベルが開示されている。特許文献1によれば、電気系に不具合が生じたとき、冗長用電磁式切換弁を介してレギュレータの制御側ピストンにパイロット式油圧比例弁からの2次圧が加えられ、これにより油圧ポンプの吐出量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-256814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたショベルは、電磁比例弁を用いたレギュレータの制御システムにおいて、冗長用装置として、冗長用電磁式切換弁やパイロット式油圧比例弁を備えている。このため、ショベルのコストが上昇するという課題がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、コストを低減しつつ、意図しない駆動源の停止を防止するショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に対し旋回可能な上部旋回体と、駆動源と、前記駆動源によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量を制御するレギュレータと、油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給する作動油を制御する方向制御弁と、操作装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記レギュレータの故障を判定する故障判定部と、前記操作装置の操作量が入力され、前記方向制御弁を制御する制御弁制御部と、を有し、前記制御弁制御部は、前記故障判定部が前記レギュレータが故障したと判定した場合、駆動源ストール防止制御によって前記方向制御弁を制御する。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、コストを低減しつつ、意図しない駆動源の停止を防止するショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図3】ポンプ吐出量制御回路の構成を示す図である。
図4】ブームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図5】ポンプ圧とポンプ流量及びトルクの関係を示すグラフである。
図6】ショベルの第1のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
図7】ショベルの第2のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
図8】ショベルの第3のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1は、ショベル100の側面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラを含む。クローラは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラは左クローラ及び右クローラを含む。左クローラは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラは右走行油圧モータ2MR(後述する図2参照)によって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例であるアタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。図1に示す例では、バケット6は、掘削バケットであるが、スケルトンバケット又は(除礫バケット)であってもよい。また、バケット6は、バケットチルト機構を備えていてもよい。
【0013】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の駆動源が搭載されている。キャビン10の内部には、操作装置26(後述する図2参照)及びコントローラ30等が設けられている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70等が取り付けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0014】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識するように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、撮像装置、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含む。撮像装置は、例えば、単眼カメラ又はステレオカメラ等である。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ(不図示)を含む。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方センサ(不図示)がショベル100に取り付けられていてもよい。
【0015】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
【0016】
コントローラ(制御装置)30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を支援したり或いはショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能を含む。コントローラ30は、ショベル100の周囲の監視範囲内に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的或いは自律的に動作させたり或いは停止させたりする接触回避機能を含んでいてもよい。ショベル100の周囲の物体の監視は、監視範囲内だけでなく監視範囲外に対しても実行される。
【0017】
次に、図2を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図2は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。図2は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0018】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0019】
図2において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0020】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0021】
メインポンプ(油圧ポンプ)14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0022】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量(ポンプ流量)を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0023】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0024】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁(方向制御弁)171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0025】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントローラ30によって制御される比例弁31を介してコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁171~176のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0026】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧(ポンプ圧)を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0027】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0028】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0029】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0030】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0031】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0032】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0034】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0035】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0036】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0037】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0038】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
【0039】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0040】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0041】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0042】
図2に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0043】
また、左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0044】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0045】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0046】
図2に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0047】
走行レバー26Dは、クローラの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0048】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0049】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0050】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0051】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り(ネガコン絞り)18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0052】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0053】
具体的には、図2で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0054】
上述のような構成により、図2の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、図2の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0055】
即ち、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないように算出された第1の吐出量と、制御圧センサ19で検出された制御圧に基づいて算出された第2の吐出量と、のうち、小さい方の吐出量となるようにレギュレータ13を制御する。
【0056】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられている。
【0057】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0058】
また、コントローラ30は、故障判定部30Xと、制御弁制御部30Yと、レギュレータ制御部30Zと、を有する。
【0059】
故障判定部30Xは、レギュレータ13の故障を判定する。なお、レギュレータ13の故障を判定する方法については、後述する(図6S101等参照)。
【0060】
制御弁制御部30Yは、操作センサ29で検出した操作装置26の操作量が入力され、制御弁171~176に供給されるパイロット圧(2次圧)を制御する比例弁31(併せて図4参照)に制御指令(電気信号)を出力することにより、制御弁171~176を制御する。
【0061】
レギュレータ制御部30Zは、レギュレータ13に供給されるパイロット圧(2次圧)を制御する傾転制御比例弁37(後述する図3参照)に制御指令(電気信号)を出力することにより、レギュレータ13を制御する。
【0062】
次に、図3を参照し、メインポンプ14の吐出量を制御するポンプ吐出量制御回路300について説明する。図3は、ポンプ吐出量制御回路300の構成を示す図である。
【0063】
ポンプ吐出量制御回路300は、レギュレータ13と、傾転制御比例弁37と、コントローラ30と、パイロットポンプ15と、レギュレータパイロット圧センサ38と、を備え、可変容量型のメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0064】
レギュレータ13は、サーボ切換弁33と、制御側ピストン34と、サーボシリンダ35と、を備える。レギュレータ13は、制御側ピストン34に入力されるパイロット圧に応じてメインポンプ14の斜板14Aの傾転角を変化させて、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0065】
サーボ切換弁33は、スプール33Aと、スリーブ33Bと、を有する。スプール33Aの一端には制御側ピストン34が取り付けられ、スプール33Aの他端にはばね33Cが取り付けられている。サーボ切換弁33は、3つの切換位置(a)、(b)、(c)を備えており、切換位置(a)側に切り換わるとメインポンプ14の吐出量が減少し、切換位置(b)側に切り換わるとメインポンプ14の吐出量を維持し、切換位置(c)側に切り換わるとメインポンプ14の吐出量が増加する。
【0066】
制御側ピストン34は、傾転制御比例弁37からのパイロット圧を受けると、メインポンプ14の吐出量が減少する方向にスプール33Aを付勢する。傾転制御比例弁37からのパイロット圧を受ける場合は通常の電気制御がなされるときである。ばね33Cは、メインポンプ14の吐出量が増加する方向にスプール33Aを付勢する。スリーブ33Bは、連結ロッド36を介してサーボシリンダ35内のサーボピストン35Aに機械的に連結されており、スプール33Aの移動に追従して移動する。
【0067】
サーボシリンダ35は、内部にサーボピストン35Aを備える。サーボピストン35Aはメインポンプ14の斜板14Aと連結されており、斜板14Aの傾転角を変化させる。サーボピストン35Aの断面積は、図3において左端が大きくなっており、右端が小さくなっている。サーボピストン35Aの右端には常にメインポンプ14の吐出圧が加わっているが、サーボピストン35Aの左端にはサーボ切換弁33が切換位置(a)側に切り換わっているときにメインポンプ14の吐出圧が加わる。サーボピストン35Aの断面積は左端の方が右端よりも大きいので、サーボ切換弁33が切換位置(a)側に切り換わるとサーボピストン35Aは図3において右方に移動し、メインポンプ14の吐出量は減少する。
【0068】
傾転制御比例弁37は、電磁比例弁であって、電気信号線30aを介してコントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。傾転制御比例弁37は、スプールの一端にソレノイド部37Aを備える。コントローラ30からソレノイド部37Aに電気信号が送られると、ソレノイド部37Aは、電気信号の内容に応じて開度(連通の程度)を大きくするようにスプールに対する付勢力を調整し、傾転制御比例弁37の開度が切り換えられる。また、傾転制御比例弁37は、スプールの他端にばね37Bを備える。ばね37Bは、開度を小さくする方向にスプールを付勢している。
【0069】
通常の電気制御時において、傾転制御比例弁37は、コントローラ30からの制御指令(ソレノイド部37Aに送られる電気信号)に応じて開度を切り換える。これにより、パイロットポンプ15から制御側ピストン34(レギュレータ13)に供給されるパイロット圧を制御する。そして、レギュレータ13は、制御側ピストン34に入力されるパイロット圧に応じてメインポンプ14の斜板14Aの傾転角を変化させ、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0070】
傾転制御比例弁37と制御側ピストン34(レギュレータ13)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するレギュレータパイロット圧センサ38が設けられている。レギュレータパイロット圧センサ38で検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0071】
次に、図4を参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。図4は、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、図4は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0072】
図4に示すように、油圧システムは、比例弁31を含む。比例弁31は、電磁比例弁であって、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。比例弁31は、比例弁31BL及び31BRを含む。
【0073】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、比例弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0074】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0075】
例えば、図4に示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0076】
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0077】
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BLは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。また、比例弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0078】
また、比例弁31BLと制御弁175の一方のポート(制御弁175Rの左側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32BLが設けられている。また、比例弁31BRと制御弁175の他方のポート(制御弁175Rの右側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32BRが設けられている。各パイロット圧センサ32BL,32BRで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0079】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。
【0080】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。
【0081】
なお、図4においては、コントローラ30は、比例弁31BL,31BRを制御し、制御弁175Rにパイロット圧を供給する構成について説明した。同様に、コントローラ30は、比例弁(図示せず)を制御し、制御弁175Lにパイロット圧を供給する。
【0082】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁175のブーム上げ側のパイロットポート(制御弁176Rの左側パイロットポート及び制御弁175Lの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、ブーム4の上げ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるブーム下げ操作が行われているときにブーム4の下げ動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0083】
また、詳細な説明を省略するが、操作者によるアーム開き操作又はアーム閉じ操作が行われている場合にアーム5の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0084】
ショベル100は、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、及び、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0085】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーのレバー操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、レバー操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0086】
次に、図5を参照し、メインポンプ14の吐出量制御について説明する。図5は、ポンプ圧とポンプ流量及びトルクの関係を示すグラフである。図5において、横軸は、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1(吐出圧センサ28Lで検出される吐出圧)と右メインポンプ14Rのポンプ圧P2(吐出圧センサ28Rで検出される吐出圧)との合計のポンプ圧(P1+P2)を示す。一方(左側)の縦軸は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rの吐出量(ポンプ流量)を示す。他方(右側)の縦軸は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのトルクを示す。図5のグラフにおいて、メインポンプ14のポンプ流量を太い実線で示し、メインポンプ14のトルクを太い破線で示す。
【0087】
第1の制御領域S1は、ポンプ圧が圧力P0未満の領域である。第1の制御領域S1において、レギュレータ制御部30Zは、メインポンプ14のポンプ流量を最大流量Q1で一定として制御する。また、メインポンプ14のトルクは、メインポンプ14の吐出圧(ポンプ圧)とメインポンプ14の吐出量(ポンプ流量)との積で表される。第1の制御領域S1において、ポンプ圧の増加に伴ってメインポンプ14のトルクも増加する。
【0088】
ここでは、コントローラ30(レギュレータ制御部30Z)は、傾転制御比例弁37(図3参照)を閉じるように制御する。換言すれば、コントローラ30は、傾転制御比例弁37に制御指令(電気信号)を出力しない。これにより、傾転制御比例弁37のスプールは、ばね37Bによって開度を小さくする方向に付勢され、傾転制御比例弁37が閉弁する。また、スプール33Aはばね33Cによって付勢され、サーボ切換弁33は切換位置(c)側に切り換わる。また、サーボシリンダ35のサーボピストン35Aが左側に移動する。これにより、斜板14Aは最大傾転となり、メインポンプ14の吐出量は最大流量Q1で一定となる。
【0089】
第2の制御領域S2は、ポンプ圧が圧力P0以上の領域である。第2の制御領域S2において、レギュレータ制御部30Zは、メインポンプ14のトルクを最大トルクT1で一定として制御する。ここで、図5のグラフにおいて、エンジン11の出力可能トルクT0を太い二点鎖線で示す。最大トルクT1は、エンジン11の出力可能トルクT0よりも小さく設定される。即ち、レギュレータ制御部30Zは、メインポンプ14の最大トルクT1がエンジン11の出力可能トルクT0を超えないように制御することにより、エンジンストールを防止する。
【0090】
ここでは、コントローラ30(レギュレータ制御部30Z)は、傾転制御比例弁37(図3参照)に制御指令(電気信号)を出力する。これにより、制御指令に応じて、傾転制御比例弁37の開度が制御され、レギュレータ13のパイロット圧が制御され、斜板14Aの傾転角が制御されることにより、メインポンプ14の吐出量が制御される。即ち、第2の制御領域S2において、ポンプ圧の増加に伴ってメインポンプ14の吐出量が減少するように制御され、メインポンプ14のトルクが最大トルクT1で一定に制御される。
【0091】
ところで、図3に示すポンプ吐出量制御回路300の電気系に不具合が生じて、コントローラ30(レギュレータ制御部30Z)からソレノイド部37Aへ制御指令(電気信号)が到達しない場合を例に説明する。この場合、傾転制御比例弁37は、ばね37Bの付勢力により閉弁する。このため、傾転制御比例弁37の下流側へはパイロット圧が供給されず、サーボ切換弁33は切換位置(c)側に切り換わる。また、サーボシリンダ35のサーボピストン35Aが左側に移動する。これにより、斜板14Aは最大傾転となり、メインポンプ14の吐出量は最大流量Q1で固定される。
【0092】
このため、図5に示すように、ポンプ圧(P1+P2)が上昇した場合において、ポンプ流量は、矢印501及び一点鎖線で示すように、最大流量Q1で固定される。また、矢印502及び一点鎖線で示すように、ポンプ圧(P1+P2)が上昇に伴ってトルクも上昇し続ける。このため、メインポンプ14のトルクがエンジン11の出力可能トルクT0を超え、駆動源であるエンジン11に意図しない停止(エンジンストール、駆動源ストール)が発生するおそれがある。
【0093】
次に、図6から図8を参照し、エンジンストール(駆動源ストール)を防止しつつ、ショベル100を操作可能とする制御方法の一例について説明する。
【0094】
<第1のエンジンストール防止制御>
図6は、ショベル100の第1のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
【0095】
ステップS101において、コントローラ30の故障判定部30Xは、レギュレータ13の故障判定を行う。
【0096】
ここで、レギュレータ13の故障とは、コントローラ30のレギュレータ制御部30Zによって、レギュレータ13の斜板14Aの傾転角が制御できない状態をいう。具体的には、ポンプ吐出量制御回路300の電気系に不具合が生じること等により、傾転制御比例弁37が閉弁した状態で固定され、斜板14Aが最大傾転で固定された状態である。
【0097】
故障判定部30Xは、以下の第1から第3の故障判定方法に基づいて、レギュレータ13の故障を判定する。
【0098】
第1の故障判定方法において、故障判定部30Xは、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から傾転制御比例弁37への制御指令値に基づく推定パイロット圧と、レギュレータパイロット圧センサ38で検出した実パイロット圧と、の差が閾値以上の場合、レギュレータ13の故障と判定する。
【0099】
第2の故障判定方法において、故障判定部30Xは、エンジン11の回転数指令値と、エンジン11の実回転数と、の差が閾値以上の場合、レギュレータ13の故障と判定する。
【0100】
ここで、エンジン11には、エンジン11の実回転数を検出するエンジン回転数センサ(駆動源回転数センサ)(図示せず)が設けられている。また、コントローラ30は、エンジン11の回転数指令値を有している。コントローラ30の回転数指令値をECU(Engine Control Unit)(図示せず)が受ける。ECUは、エンジン11に負荷がかかることでエンジン11の実回転数がエンジン11の回転数指令値よりも低下すると、エンジン11の燃料噴射量を増加させ、エンジン11の実回転数をエンジン11の回転数指令値に戻すように制御する。この際、レギュレータ13の故障しており、かつ、メインポンプ14のトルクが大きいと、エンジン11の実回転数がエンジン11の回転数指令値まで到達せず、エンジン11の回転数指令値とエンジン11の実回転数との差が生じる。故障判定部30Xは、この差が閾値以上であるか否かに基づいて、レギュレータ13の故障を判定する。
【0101】
第3の故障判定方法において、故障判定部30Xは、エンジン11の回転数指令値と、エンジン11の実回転数と、の差が閾値以上、かつ、エンジン11への燃料供給量が閾値以上の場合、レギュレータ13の故障と判定する。
【0102】
前述した様に、エンジン11には、エンジン11の実回転数を検出するセンサ(図示せず)が設けられている。また、コントローラ30は、エンジン11の回転数指令値を有している。コントローラ30の回転数指令値をECUが受ける。ECUは、エンジン11に負荷がかかることでエンジン11の実回転数がエンジン11の回転数指令値よりも低下すると、エンジン11の燃料噴射量を増加させ、エンジン11の実回転数をエンジン11の回転数指令値に戻すように制御する。この際、レギュレータ13の故障しており、かつ、メインポンプ14のトルクが大きいと、エンジン11の実回転数がエンジン11の回転数指令値まで到達せず、エンジン11の回転数指令値とエンジン11の実回転数との差が生じる。故障判定部30Xは、この差が閾値以上であり、かつ、エンジン11への燃料供給量が閾値以上の場合、レギュレータ13の故障と判定する。なお、エンジン11への燃料供給量は、流量センサで実燃料供給量を検出したものであってもよく、ECUから燃料供給装置(図示せず)への燃料供給量指令値を用いてもよい。
【0103】
レギュレータ13は故障していると判定した場合(S101・YES)、コントローラ30の処理はステップS102に進む。一方、レギュレータ13は故障していないと判定した場合(S101・NO)、コントローラ30の処理はステップS104に進む。
【0104】
ステップS102において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、ポンプ圧が閾値以上か否かを判定する。
【0105】
ここでは、吐出圧センサ28Lで検出される左メインポンプ14Lのポンプ圧P1(吐出圧)と、吐出圧センサ28Rで検出される右メインポンプ14Rのポンプ圧P2(吐出圧)との合計のポンプ圧(P1+P2)が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値は、第1の制御領域S1と第2の制御領域S2とを分ける圧力P0(図5参照)である。なお、所定の閾値は、圧力P0よりも小さな値で設定されていてもよい。
【0106】
換言すれば、ポンプ圧が閾値以上の領域は、図5の矢印502に示すように、エンジンストールが発生するおそれのある領域である。
【0107】
ポンプ圧が閾値以上であると判定した場合(S102・YES)、コントローラ30の処理はステップS103に進む。一方、ポンプ圧が閾値以上でないと判定した場合(S102・NO)、コントローラ30の処理はステップS104に進む。
【0108】
ステップS103において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、上限付きで操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。ここでは、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1がP0/2(閾値、ポンプ圧の制限値)以下となり、かつ、右メインポンプ14Rのポンプ圧P2がP0/2(閾値、ポンプ圧の制限値)以下となるように、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から比例弁31への制御指令を制限する。
【0109】
即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。ここで、ポンプ圧の制限値に対応する制御指令値を制御指令制限値とする。操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値未満の場合、コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。一方、操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値以上の場合、コントローラ30は、制御指令制限値を比例弁31に指令する。
【0110】
これにより、比例弁31の開口面積の最大値を制限する。また、制御弁171~176に作用するパイロット圧の最大値を制限する。また、制御弁171~176のスプールストロークの最大値を制限する。また、制御弁171~176のPT開口(メインポンプ14から作動油タンクへと連通するセンターバイパス管路40と接続される制御弁の開口)の開口面積の最小値を制限する。これにより、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値以下の範囲内とすることができる。
【0111】
ステップS104において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。
【0112】
このように、ショベル100の第1のエンジンストール防止制御によれば、エンジンストールを防止しつつ、ショベル100を操作することができる。即ち、ショベル100の第1のエンジンストール防止制御によれば、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値を超えないように制御する。例えば、閾値を圧力P0(図5参照)として、ポンプ圧(P1+P2)が圧力P0を超えないように制御する(S103)。これにより、メインポンプ14のトルクは、トルクT1を超えない範囲で制御される。換言すれば、エンジン11の出力可能トルクT0を超えないように、メインポンプ14のトルクが制御されることで、エンジンストールを防止する。
【0113】
また、ショベル100によれば、ポンプ吐出量制御回路300に冗長用装置を用いることなくエンジンストールを防止することができる。これにより、冗長用装置のコストを削減することができる。
【0114】
<第2のエンジンストール防止制御>
図7は、ショベル100の第2のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
【0115】
ステップS201において、コントローラ30の故障判定部30Xは、レギュレータ13の故障判定を行う。
【0116】
ここで、レギュレータ13の故障とは、コントローラ30のレギュレータ制御部30Zによって、レギュレータ13の斜板14Aの傾転角が制御できない状態をいう。具体的には、ポンプ吐出量制御回路300の電気系に不具合が生じること等により、傾転制御比例弁37が閉弁した状態で固定され、斜板14Aが最大傾転で固定された状態である。
【0117】
また、故障判定部30Xは、ステップS101と同様に、前述した第1から第3の故障判定方法に基づいて、レギュレータ13の故障を判定する。
【0118】
レギュレータ13は故障していると判定した場合(S201・YES)、コントローラ30の処理はステップS202に進む。一方、レギュレータ13は故障していないと判定した場合(S201・NO)、コントローラ30の処理はステップS203に進む。
【0119】
ステップS202において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、上限付きで操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。ここでは、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1がP0/2(閾値、ポンプ圧の制限値)以下となり、かつ、右メインポンプ14Rのポンプ圧P2がP0/2(閾値、ポンプ圧の制限値)以下となるように、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から比例弁31への制御指令を制限する。
【0120】
即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。ここで、ポンプ圧の制限値に対応する制御指令値を制御指令制限値とする。操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値未満の場合、コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。一方、操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値以上の場合、コントローラ30は、制御指令制限値を比例弁31に指令する。
【0121】
これにより、比例弁31の開口面積の最大値を制限する。また、制御弁171~176に作用するパイロット圧の最大値を制限する。また、制御弁171~176のスプールストロークの最大値を制限する。また、制御弁171~176のPT開口(メインポンプ14から作動油タンクへと連通するセンターバイパス管路40と接続される制御弁の開口)の開口面積の最小値を制限する。これにより、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値以下の範囲内とすることができる。
【0122】
ステップS203において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。
【0123】
このように、ショベル100の第2のエンジンストール防止制御によれば、エンジンストールを防止しつつ、ショベル100を操作することができる。即ち、ショベル100の第2のエンジンストール防止制御によれば、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値を超えないように制御する。例えば、閾値を圧力P0(図5参照)として、ポンプ圧(P1+P2)が圧力P0を超えないように制御する(S202)。これにより、メインポンプ14のトルクは、トルクT1を超えない範囲で制御される。換言すれば、エンジン11の出力可能トルクT0を超えないように、メインポンプ14のトルクが制御されることで、エンジンストールを防止する。
【0124】
また、ショベル100によれば、ポンプ吐出量制御回路300に冗長用装置を用いることなくエンジンストールを防止することができる。これにより、冗長用装置のコストを削減することができる。
【0125】
<第3のエンジンストール防止制御>
図8は、ショベル100の第3のエンジンストール防止制御を示すフローチャートである。
【0126】
ステップS301において、コントローラ30の故障判定部30Xは、レギュレータ13の故障判定を行う。
【0127】
ここで、レギュレータ13の故障とは、コントローラ30のレギュレータ制御部30Zによって、レギュレータ13の斜板14Aの傾転角が制御できない状態をいう。具体的には、ポンプ吐出量制御回路300の電気系に不具合が生じること等により、傾転制御比例弁37が閉弁した状態で固定され、斜板14Aが最大傾転で固定された状態である。
【0128】
また、故障判定部30Xは、ステップS101と同様に、前述した第1から第3の故障判定方法に基づいて、レギュレータ13の故障を判定する。
【0129】
レギュレータ13は故障していると判定した場合(S301・YES)、コントローラ30の処理はステップS302に進む。一方、レギュレータ13は故障していないと判定した場合(S301・NO)、コントローラ30の処理はステップS305に進む。
【0130】
ステップS302において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、両系統操作か否かを判定する。ここで、図2に示すように、油圧システムにおいて、左メインポンプ(第1油圧ポンプ)14Lから作動油が供給される制御弁171,173,175L,176L(第1系統の方向制御弁)が設けられ、右メインポンプ(第2油圧ポンプ)14Rから作動油が供給される制御弁172,174,175R,176R(第2系統の方向制御弁)が設けられている。
【0131】
第1系統(左側系統)の制御弁171,173,175L,176Lのうち少なくともいずれか1つ以上の制御弁が操作され、かつ、第2系統(右側系統)の制御弁172,174,175R,176Rの全てが操作されていない場合、左系統のみが操作されていると判定する(S302・NO)。
【0132】
第2系統(右側系統)の制御弁172,174,175R,176Rのうち少なくともいずれか1つ以上の制御弁が操作され、かつ、第1系統(左側系統)の制御弁171,173,175L,176Lの全てが操作されていない場合、右系統のみが操作されていると判定する(S302・NO)。
【0133】
第1系統(左側系統)の制御弁171,173,175L,176Lのうち少なくともいずれか1つ以上の制御弁が操作され、かつ、第2系統(右側系統)の制御弁172,174,175R,176Rのうち少なくともいずれか1つ以上の制御弁が操作されている場合、両系統操作されていると判定する(S302・YES)。
【0134】
ステップS303において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、第1上限で操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。ここでは、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1がP0/2(第1上限、ポンプ圧の制限値)以下となり、かつ、右メインポンプ14Rのポンプ圧P2がP0/2(第1上限、ポンプ圧の制限値)以下となるように、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から比例弁31への制御指令を制限する。
【0135】
即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。ここで、ポンプ圧の制限値(第1上限)に対応する制御指令値を制御指令制限値とする。操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値未満の場合、コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。一方、操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値以上の場合、コントローラ30は、制御指令制限値を比例弁31に指令する。
【0136】
これにより、比例弁31の開口面積の最大値を制限する。また、制御弁171~176に作用するパイロット圧の最大値を制限する。また、制御弁171~176のスプールストロークの最大値を制限する。また、制御弁171~176のPT開口(メインポンプ14から作動油タンクへと連通するセンターバイパス管路40と接続される制御弁の開口)の開口面積の最小値を制限する。これにより、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値以下の範囲内とすることができる。
【0137】
ステップS304において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、第1上限よりも高い第2上限で操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。ここでは、ステップS302において左系統のみが操作されていると判定された場合、右メインポンプ14Rのポンプ圧P2をスタンバイ流量に対応するスタンバイポンプ圧PSTとし、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1が(P0-PST)(第2上限、ポンプ圧の制限値)以下となるように、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から比例弁31への制御指令に最大値を制限する。また、ステップS302において右系統のみが操作されていると判定された場合、左メインポンプ14Lのポンプ圧P1をスタンバイ流量に対応するスタンバイポンプ圧PSTとし、右メインポンプ14Rのポンプ圧P2が(P0-PST)(第2上限、ポンプ圧の制限値)以下となるように、コントローラ30(制御弁制御部30Y)から比例弁31への制御指令に最大値を制限する。
【0138】
即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。ここで、ポンプ圧の制限値(第2上限)に対応する制御指令値を制御指令制限値とする。操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値未満の場合、コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。一方、操作量に基づく制御指令値が制御指令制限値以上の場合、コントローラ30は、制御指令制限値を比例弁31に指令する。
【0139】
一方の系統のみ操作する場合(S304)、両系統を操作する場合(S303)と比較して、油圧アクチュエータに供給する作動油の圧力及び/又は供給量を増加させることができる。例えば、左走行レバー26DLのみを操作することで、故障発生時においてもエンジンストールを抑制しつつ、左走行油圧モータ2MLに供給する作動油の圧力及び/又は供給量を増加させることができる。また、例えば、右走行レバー26DRのみを操作することで、故障発生時においてもエンジンストールを抑制しつつ、右走行油圧モータ2MRに供給する作動油の圧力及び/又は供給量を増加させることができる。これにより、不整地において故障が発生した場合であっても、ショベル100のクローラを交互に操作することで、エンジンストールを防止しつつ、ショベル100を不整地から移動させる等の操作を行うことができる。
【0140】
ステップS305において、コントローラ30の制御弁制御部30Yは、操作装置26の操作量に基づいて比例弁31を制御する。即ち、コントローラ30(制御弁制御部30Y)は、操作センサ29で検出した操作量に基づいて、比例弁31への制御指令値を決定する。コントローラ30は、操作量に基づく制御指令値を比例弁31に指令する。
【0141】
このように、ショベル100の第3のエンジンストール防止制御によれば、エンジンストールを防止しつつ、ショベル100を操作することができる。即ち、ショベル100の第3のエンジンストール防止制御によれば、ポンプ圧(P1+P2)が所定の閾値を超えないように制御する。例えば、閾値を圧力P0(図5参照)として、ポンプ圧(P1+P2)が圧力P0を超えないように制御する(S303,304)。これにより、メインポンプ14のトルクは、トルクT1を超えない範囲で制御される。換言すれば、エンジン11の出力可能トルクT0を超えないように、メインポンプ14のトルクが制御されることで、エンジンストールを防止する。
【0142】
また、一方の系統のみが操作されている場合(S302・NO、S304)、操作される系統のポンプ圧が第1上限よりも高い第2上限を超えないように制御する(304)。これにより、油圧アクチュエータに供給する作動油の圧力及び/又は供給量を増加させることができる。
【0143】
また、ショベル100によれば、ポンプ吐出量制御回路300に冗長用装置を用いることなくエンジンストールを防止することができる。これにより、冗長用装置のコストを削減することができる。
【0144】
なお、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動させる駆動源としてエンジン11を備えるショベル100を例に、エンジンストール防止制御の一例について説明したが、これに限られるものではない。即ち、エンジン以外の駆動源を備えるショベルにおいて、駆動源ストール防止制御に適用してもよい。例えば、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動させる駆動源として駆動モータを備えるショベルにおいて、モータストール防止制御(駆動源ストール防止制御)に適用してもよい。この構成においても、ポンプ吐出量制御回路300に冗長用装置を用いることなくモータストール(駆動源ストール)を防止することができる。即ち、メインポンプ14のトルクが駆動モータの出力可能トルクを超え、駆動源である駆動モータに意図しない停止(モータストール、駆動源ストール)が発生することを防止することができる。これにより、冗長用装置のコストを削減することができる。
【0145】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 下部走行体
2 旋回機構
2A 旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2M 走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2MR 右走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2ML 左走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
8 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
11 エンジン(駆動源)
13 レギュレータ
13L 左レギュレータ
13R 右レギュレータ
14 メインポンプ(油圧ポンプ)
14A 斜板
14L 左メインポンプ(第1油圧ポンプ)
14R 右メインポンプ(第2油圧ポンプ)
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブユニット
171~176 制御弁(方向制御弁)
26 操作装置
29 操作センサ
30 コントローラ(制御装置)
30X 故障判定部
30Y 制御弁制御部
30Z レギュレータ制御部
31 比例弁(電磁比例弁)
37 傾転制御比例弁
38 レギュレータパイロット圧センサ
100 ショベル
S1 第1の制御領域
S2 第2の制御領域
P0 圧力(第1の制御領域と第2の制御領域とを分ける圧力)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8