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特開2025-6539シミュレーションシステム及びシミュレーションプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006539
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム及びシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0639 20230101AFI20250109BHJP
【FI】
G06Q10/0639
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107400
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】徳田 茂史
(72)【発明者】
【氏名】松本 健介
(72)【発明者】
【氏名】門井 優文
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 吉雄
(72)【発明者】
【氏名】伴 拓実
(72)【発明者】
【氏名】ショウ アンビ
(72)【発明者】
【氏名】加賀 智之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
(72)【発明者】
【氏名】宮原 謙太
(72)【発明者】
【氏名】山内 慎祐
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】複数の作業が協調して実施される作業ラインにおいて、複数の作業員がそれぞれ着用する装着具によるこれらの作業員の作業効率の変化を考慮して、作業ライン全体での作業効率を高める。
【解決手段】デジタルツインシミュレーションが行われる。このシミュレーションでは、現実空間の作業ラインで実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、当該作業ラインに配置される複数の作業員に関するデータと、当該複数の作業員がそれぞれ着用する装着具に関するデータと、に基づいて、デジタル空間の作業ラインで実施される複数の作業のそれぞれに対し、作業員と、当該作業員が着用する装着具との組み合わせが振り分けられる。そして、振り分けられた組み合わせに基づいて、基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループが探索される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間の作業ラインに配置される複数の作業員に関するデータと、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具に関するデータと、当該複数の作業員のそれぞれの作業効率に関する指標のデータとが、前記現実空間の作業ラインで実施される複数の作業の作業内容に関連付けられて格納されたデータベースと、
前記現実空間の作業ラインでの作業計画のデータと、前記データベースに格納されたデータと、に基づいて、前記現実空間の作業ラインに対応するデジタル空間の作業ラインに関するシミュレーションを行うプロセッサと、
を備え、
前記現実空間の作業ラインでの作業計画のデータは、前記現実空間の作業ラインで実施予定の複数の作業の作業内容のデータを含み、
前記プロセッサは、前記シミュレーションにおいて、
前記実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、前記データベースに格納された前記複数の作業員に関するデータ及び前記装着具のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ラインで実施される複数の作業の作業内容のそれぞれに対し、作業員と、当該作業員が着用する装着具との組み合わせを振り分け、
前記振り分けられた組み合わせと、前記データベースに格納された前記指標のデータであって、前記振り分けられた組み合わせを構成する作業員の作業効率に関する指標のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ライン全体での作業効率が目標値以上となる基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループを探索する
ことを特徴とするシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、更に、前記現実空間の作業ラインに作業員を配置する人員配置処理を更に行い、
前記プロセッサは、前記人員配置処理において、
前記実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、これらの作業内容のそれぞれに応じて使用される装着具に関するデータとに基づいて、前記実施予定の複数の作業の作業内容と、これらの作業内容のそれぞれに応じて使用される装着具の組み合わせのグループを特定し、
前記シミュレーションによる探索結果を用いた前記現実空間の作業ラインに配置予定の作業員のスケジュールのデータの参照により、前記特定された組み合わせのグループに振り分けられる作業員の候補と、当該作業員の候補が着用する装着具の組み合わせのグループを示す候補グループを選出する
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記人員配置処理において、
前記シミュレーションによる探索結果に前記基準条件が満たされる前記組み合わせのグループが2グループ以上含まれる場合、前記作業ライン全体での作業効率が高い前記組み合わせのグループから順番に、前記配置予定の作業員のスケジュールのデータを用いた参照を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記データベースにおいて、前記現実空間の作業ラインで実施される複数の作業の作業内容には、前記複数の作業員のそれぞれの属性に関するデータが更に関連付けられ、
前記プロセッサは、前記人員配置処理において、
前記シミュレーションによる探索結果に基づいて、前記基準条件が満たされる前記組み合わせのグループを構成する複数の作業員の属性を特定し、
前記実施予定の複数の作業に対してそれぞれ割り当てられる作業員の候補と、当該作業員の候補が着用する装着具との組み合わせの提案において、前記特定された複数の作業員の属性が更に参照され、
前記実施予定の複数の作業に対してそれぞれ割り当てられる作業員の候補と、当該作業員の候補が着用する装着具との組み合わせが、前記特定された複数の作業員の属性と同一の属性を有する別の作業員を当該作業員の候補として含む
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシミュレーションシステム。
【請求項5】
現実空間の作業ラインに対応するデジタル空間の作業ラインにおけるシミュレーションをコンピュータに行わせるシミュレーションプログラムであって、
前記シミュレーションでは、
前記現実空間の作業ラインで実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、前記現実空間の作業ラインに配置される複数の作業員に関するデータと、前記複数の作業員がそれぞれ着用する装着具に関するデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ラインで実施される複数の作業のそれぞれに対し、作業員と、当該作業員が着用する装着具との組み合わせが振り分けられ、
前記振り分けられた組み合わせと、前記振り分けられた組み合わせを構成する作業員の作業効率に関する指標のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ライン全体での作業効率が目標値以上となる基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループが探索される
ことを特徴とするシミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業ラインに関するシミュレーションを行うシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-089598号公報は、作業者による作業をアシストする装置を装着した作業者の作業負荷を管理する装置を開示する。この従来の装置は、アシスト装置を装着した作業者の挙動情報を取得する。従来の装置は、また、この挙動情報に基づいて、アシスト装置を装着した作業者の疲労度に関する評価値を計算する。疲労度に関する評価値は、同一のアシスト装置を装着した作業者ごとに計算される。従来の装置は、更に、疲労度の低い作業者に対し、疲労度の高い作業者の作業を振り分ける。
【0003】
本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特開2021-89598号公報の他に、特開2022-069956号公報及び特開2021-177412号公報を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-89598号公報
【特許文献2】特開2022-069956号公報
【特許文献3】特開2021-177412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アシスト装置は、作業員が着用する器具(装着具)に分類される。このような装着具には、作業をアシストする補助具の他、作業環境から作業員を保護する保護具も含まれる。
【0006】
作業員の作業効率は、装着具の着用の有無、装着具の着用時間(使用時間)によって上昇又は低下することが予想される。このような変化を事前に予測できれば、必要な対策を講じることが可能となる。必要な対策としては、作業員の作業効率が上昇する装着具の着用が求められる作業に当該作業員を割り当てることが考えられる。必要な対策としては、また、装着具の着用時間が長くなって作業員の作業効率が低下する前に、当該装着具の着用が求められる作業から当該作業員を外すことも考えられる。
【0007】
特に、複数の作業員による複数の作業が協調して実施される作業ラインでは、装着具による作業員の作業効率の上昇又は低下が、作業ライン全体での作業効率に影響する。従って、この観点からの開発の余地がある。
【0008】
本開示の1つの目的は、複数の作業が協調して実施される作業ラインにおいて、複数の作業員がそれぞれ着用する装着具によるこれらの作業員の作業効率の変化を考慮して、作業ライン全体での作業効率を高めることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点は、シミュレーションシステムであり、次の特徴を有する。
前記シミュレーションシステムは、データベースと、プロセッサとを備える。前記データベースには、現実空間の作業ラインに配置される複数の作業員に関するデータと、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具に関するデータと、当該複数の作業員のそれぞれの作業効率に関する指標のデータとが、前記現実空間の作業ラインで実施される複数の作業の作業内容に関連付けられて格納されている。前記プロセッサは、前記現実空間の作業ラインでの作業計画のデータと、前記データベースに格納されたデータと、に基づいて、前記現実空間の作業ラインに対応するデジタル空間の作業ラインに関するシミュレーションを行うように構成されている。
前記現実空間の作業ラインでの作業計画のデータは、前記現実空間の作業ラインで実施予定の複数の作業の作業内容のデータを含む。
前記プロセッサは、前記シミュレーションにおいて、
前記実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、前記データベースに格納された前記複数の作業員に関するデータ及び前記装着具のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ラインで実施される複数の作業の作業内容のそれぞれに対し、作業員と、当該作業員が着用する装着具との組み合わせを振り分け、
前記振り分けられた組み合わせと、前記データベースに格納された前記指標のデータであって、前記振り分けられた組み合わせを構成する作業員の作業効率に関する指標のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ライン全体での作業効率が目標値以上となる基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループを探索する。
【0010】
本開示の第2の観点は、シミュレーションプログラムであり、次の特徴を有する。
前記シミュレーションプログラムは、現実空間の作業ラインに対応するデジタル空間の作業ラインにおけるシミュレーションをコンピュータに行わせる。
前記シミュレーションでは、
前記現実空間の作業ラインで実施予定の複数の作業の作業内容のデータと、前記現実空間の作業ラインに配置される複数の作業員に関するデータと、前記複数の作業員がそれぞれ着用する装着具に関するデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ラインで実施される複数の作業のそれぞれに対し、作業員と、当該作業員が着用する装着具との組み合わせが振り分けられ、
前記振り分けられた組み合わせと、前記振り分けられた組み合わせを構成する作業員の作業効率に関する指標のデータと、に基づいて、前記デジタル空間の作業ライン全体での作業効率が目標値以上となる基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループが探索される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、現実空間の作業ラインに対応するデジタル空間の作業ラインに関するシミュレーションが行われる。このシミュレーションでは、デジタル空間の作業ライン全体での作業効率が目標値以上となる基準条件が満たされる場合における複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具の組み合わせのグループが探索される。基準条件が満たされる場合の組み合わせのグループによれば、このグループを参照して現実空間の作業ラインを稼働したときに、当該作業ライン全体での作業効率が高まることが期待される。故に、本開示によれば、複数の作業が協調して実施される作業ラインにおいて、複数の作業員がそれぞれ着用する装着具によるこれらの作業員の作業効率の変化を考慮して、作業ライン全体での作業効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態が適用される作業ラインの例を説明する図である。
図2】作業員の作業効率に関する指標の設定例を説明する図である。
図3】実施形態に係るシミュレーションの概要を説明する図である。
図4】実施形態に係るシミュレーションシステムの構成例を説明する図である。
図5】作業員データの構成例を説明する図である。
図6】シミュレーション用の作業員データの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。尚、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0014】
1.作業ライン
図1は、本開示の実施形態が適用される作業ラインの例を説明する図である。図1に描かれる作業ラインWLは、製品の生産、保管、包装といった各種の作業を協調して実施するためにライン化されたものである。作業ラインWLは、製品を大量生産する工場の敷地内、製品やその原材料を保管し又は製品をパッキングして出荷する物流倉庫の敷地内、商品の入荷、検品、保管、ピッキング、パッキング、出荷などを行う物流センタの敷地内に設けられる。
【0015】
作業ラインWLには複数の作業員が配置されている。これらの作業員は、作業ラインWLで協調して実施される各種作業に携わる。図1に示される作業員WK1、WK2、WK3及びWK4は、作業ラインWLに配置される複数の作業員の一例である。作業員WK1及びWK2は、作業内容WC1の作業に携わる。作業員WK3は作業内容WC2の作業に携わり、作業員WK4は作業内容WC3の作業に携わる。以下、説明の便宜上、複数の作業員のうちの何れか1人について言及する場合は「作業員WKx」とも称す。
【0016】
各種作業の実施に際し、作業員WKxは、各種の装着具MFを着用する。装着具MFとしては、作業環境から作業員WKxを保護する保護具が例示される。装着具MFには、作業員WKxが実施する作業をアシストする補助具や、作業員WKxの身体状況を測定する計測具も含まれる。装着具MFには、作業員WKxによる着用が法令、規則等により義務付けられているものと、この着用が義務付けられていないもの(つまり、着用が任意のもの)とが含まれる。一般的に、保護具の多くは前者に分類される。一方、補助具や計測具の多くは後者に分類される。
【0017】
図1に示される装着具MF1、MF2、MF3、MF4及びMF5は、装着具MFの一例である。作業員WK1は、装着具MF1、MF2及びMF3を着用する。作業員WK2は、装着具MF1及びMF3を着用する。作業員WK3は、装着具MF1及びMF4を着用する。作業員WK4は、装着具MF1、MF3及びMF5を着用する。作業員WK1と作業員WK3の間、及び、作業員WK1と作業員WK4の間で装着具MFの種類が異なるのは、作業内容WCが異なるためである。同じ作業内容WC(つまり、作業内容WC1)の作業に携わる作業員WK1と作業員WK2の間で装着具MFが異なるのは、装着具MF2の着用が少なくとも任意であることを意味している。
【0018】
図1には、更に、作業員MKxの属性ATが示されている。属性ATは、年齢、性別といった基本属性、身長、体重といった身体属性、作業ラインWLでの作業の経験年数といった労働属性などの属性化要素を用いて決定される。図1に示される例では、作業員WK1の属性ATは属性AT1であり、作業員WK2の属性ATは属性AT2であり、作業員WK3の属性ATは属性AT3である。作業員WK4の属性ATは作業員WK2のそれと同じである。
【0019】
2.実施形態の特徴
実施形態では、デジタル空間を用いたシミュレーション(以下、「デジタルツインシミュレーション」又は「DTS」とも称す。)が実施される。このデジタル空間は、図1で説明した作業ラインWLが設けられる現実空間に基づいて再現されたものである。DTSでは、このデジタル空間において、現実空間の作業ラインWLで実施される各種の作業と同じ各種の作業が実施され、作業ラインWLにおける将来の状態が予測される。この将来の状態には、作業ラインWL全体での作業効率WE_WWLが含まれる。
【0020】
作業効率WE_WWLに影響を及ぼす因子としては、作業員WKxの作業効率WE_WKxが想定される。また、この作業効率WE_WKxに影響を及ぼす因子には、作業内容WC、この作業内容WCにおいて着用する装着具MF、この装着具MFの着用時間などが想定される。そこで、実施形態では、作業効率WE_WKxに影響を及ぼすこれらの因子に着目し、作業効率WE_WKxに関する指標IN_WE_WKxが計算される。そして、この指標IN_WE_WKxを用いて作業効率WE_WWLが計算される。
【0021】
図2は、指標IN_WE_WKxの計算例を説明する図である。図2の縦軸には作業員WKxの疲労度FAが示され、図2の横軸には作業時間(作業開始後の経過時間)WTが示されている。疲労度FAは、作業効率WE_WKxと相関を有する変数であり、その程度を数値で表すことができるという点で指標IN_WE_WKxの設定に適している。この相関としては、疲労度FAが高くなると作業効率WE_WKxが低下するという関係が例示される。尚、作業効率WE_WKxと相関を有し、かつ、その程度を数値で表すことができる変数(例えば、集中度、覚醒度)であれば、疲労度FAに代えて、又は、疲労度FAと組み合わせて指標IN_WE_WKxの設定に用いることができる。
【0022】
図2には、作業員WKxについての作業内容WCと装着具MFの組み合わせ(WC,MF)が4組描かれている。実線で描かれる組み合わせ(WC,MF)=(WCi,MFα)及び(WC,MF)=(WCi,MFβ)は、作業内容WCが共通し、装着具MFにおいて異なる。この2組についての疲労度FAの経過を比較すると、作業員WKxが装着具MFαを着用した場合の疲労度FAは、作業員WKxが装着具MFβを着用した場合のそれに比べて疲労度FAの上昇の速度が高くなることが理解される。つまり、作業員WKxが装着具MFαを着用すると、作業員WKxが装着具MFβを着用するときに比べて作業効率WE_WKxが低下することが理解される。
【0023】
破線で描かれる組み合わせ(WC,MF)=(WCj,MFγ)及び(WC,MF)=(WCj,MFβ)は、作業内容WCが作業内容WCjで共通し、装着具MFにおいて異なる。この2組についての疲労度FAの経過を比較すると、作業員WKxが装着具MFγを着用した場合の疲労度FAは、作業員WKxが装着具MFβを着用した場合のそれに比べて疲労度FAの上昇の速度が高くなることが理解される。つまり、作業員WKxが装着具MFγを着用すると、作業員WKxが装着具MFβを着用するときに比べて作業効率WE_WKxが低下することが理解される。
【0024】
組み合わせ(WC,MF)=(WCi,MFβ)及び(WC,MF)=(WCj,MFβ)に着目する。この2組の組み合わせは、装着具MFが共通し、作業内容WCにおいて異なる。これらの組み合わせについて疲労度FAの経過を比較すると、作業員WKxが作業内容WCiの作業を実施した場合の疲労度FAと、作業員WKxが作業内容WCjの作業を実施した場合のそれとの大小関係が、時点Tを境に逆転することが理解される。つまり、作業員WKxが作業内容WCiの作業を長時間に亘って実施すると、時点Tを境に作業効率WE_WKxが低下することが理解される。
【0025】
上述した組み合わせ(WC,MF)と疲労度FAの推移の関係に基づき、実施形態では、単位時間UT当たりの疲労度FAの変化量ΔFAを用いて指標IN_WE_WKxが計算される。単位時間UTは30分、1時間、4時間といった時間幅である。単位時間UTは、2種類以上設定されてもよい。この場合の単位時間UTとしては、第1時間UT1及び第2時間UT2が例示される(UT1<UT2)。これらの単位時間UTには、任意の時間を設定できる。例えば、第1時間UT1は短期的な変化量ΔFAを想定したものであり、第2時間UT2は長期的な変化量ΔFAを想定したものである。
【0026】
単位時間UTが2種類以上設定された場合は、1種類の組み合わせ(WC,MF)に対して複数の指標IN_WE_WKxを計算できる。この場合は、例えば、作業内容WCの作業時間に見合った変化量ΔFAを用いて指標IN_WE_WKxを計算することが可能となる。このことは、DTSで行われる作業効率WE_WWLの予測精度の向上に繋がることが期待される。
【0027】
図3は、実施形態に係るDTSの概要を説明する図である。図3に示されるように、実施形態に係るDTSでは、作業ラインWLで協調して実施される複数の作業の作業内容WCのそれぞれに対し、1人の作業員WKxと、この作業員WKxが着用する装着具MFの組み合わせ(WKx,MF)が振り分けられる。ある単一の作業内容WCに振り分けられる組み合わせ(WKx,MF)が特定されると、この組み合わせ(WKx,MF)を構成する作業員WKxが当該組み合わせ(WKx,MF)を構成する装着具MFを着用したときの指標IN_WE_WKxが特定される。そうすると、特定された指標IN_WE_WKxに基づいて、作業効率WE_WWLが計算できる。作業効率WE_WWLの計算は、例えば、特定された指標IN_WE_WKxを変数とする計算式を用いて行われる。
【0028】
実施形態に係るDTSでは、更に、複数の作業の作業内容WCに対する組み合わせ(WKx,MF)の振り分けが、振り分けが可能な組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPの全てに対して行われる(CP1-CPn)。そうすると、組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPごとに作業効率WE_WWLが計算される。組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPごとに作業効率WE_WWLが計算されたら、下記の基準条件を用いてこれらの作業効率WE_WWLを選別する。
基準条件:作業効率WE_WWLが目標値TG以上である
これにより、基準条件が満たされるときの組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPが特定される。尚、目標値TGには、作業ラインWLでの作業計画WPに基づいて別途設定されたものが適用される。
【0029】
基準条件が満たされるときの組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPは、複数の作業員と、当該複数の作業員のそれぞれが着用する装着具MFの組み合わせ(WK,MF)のグループと考えることもできる。実施形態に係るDTSでは、このような組み合わせ(WK,MF)のグループCGを特定するための探索が行われる。探索の結果、組み合わせ(WK,MF)のグループCGが特定できた場合、このグループCGを参照して現実空間の作業ラインWLを稼働すれば、この作業ラインWL全体での作業効率WE_WWLが高まることが期待される。
【0030】
特定された組み合わせ(WK,MF)のグループCGを参照して現実空間の作業ラインWLを稼働するためには、この作業ラインWLで実施される複数の作業に対する作業員WKxの割り当て(複数の作業の作業内容WCに対する組み合わせ(WKx,MF)の振り分け)を行うことが必要となる。そこで、実施形態では、DTSによる探索の結果を用いて、現実空間の作業ラインWLに作業員WKxを配置する「人員配置処理」が行われる。人員配置処理の詳細については後述される。
【0031】
3.構成例
3-1.システム構成例
図4は、実施形態に係るシステムの構成例を説明する図である。図4に示されるシミュレーションシステム1は、作業ラインWLが設けられる実工場2内の現実空間を再現したデジタル空間を用いたシミュレーション(つまり、デジタルツインシミュレーション)を行うための構成として、データベース11と、データ処理装置12と、を備えている。
【0032】
データベース11は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリの内部に形成される。図4に示される例では、データベース11は、3種類のデータベース11a、11b及び11cを含んでいる。データベース11aには、装着具データDMFが格納されている。データベース11bには、作業員データDWKが格納されている。データベース11cには、DTS用の作業員データDWK_DTSが格納されている。
【0033】
装着具データDMFは、装着具MFに関するデータを表す。装着具MFは、作業ラインWLにおいて実施される複数の作業の作業内容WCに応じて設定される。既述したように、装着具MFには、作業員WKxによる着用が法令、規則等により義務付けられているものと、この着用が義務付けられていないものとが含まれる。そのため、装着具データDMFは、その着用が義務の装着具MFのデータと、その着用が任意の装着具MFのデータとを含んでいる。
【0034】
作業員データDWKは、作業ラインWLに配置される複数の作業員に関するデータを表す。作業員データDWKは、作業員WKxに関するデータの集合でもある。図5は、作業員データDWKの構成例を説明する図である。図5に示される例では、作業員データDWKが、識別データDIDと、属性データDATと、作業履歴データDWHと、スケジュールデータDSCと、を含んでいる。
【0035】
識別データDIDは、作業員WKxを識別するためのデータを表す。属性データDATは、作業員WKxの属性ATに関するデータを表す。既述したように、属性ATは、年齢、性別といった基本属性、身長、体重といった身体属性、作業ラインWLでの作業の経験年数といった労働属性などの属性化要素によって決定される。
【0036】
作業履歴データDWHは、作業員WKxの作業履歴に関するデータを表す。図5に示される例では、作業履歴データDWHが、作業内容データWC_Hと、作業時間データWT_Hと、装着具データMF_Hと、バイタルデータVT_Hと、を含んでいる。
【0037】
作業内容データWC_Hは、作業員WKxが従事した作業内容WCの作業の履歴データを表す。作業時間データWT_Hは、作業員WKxが作業内容WCの作業に従事した時間の履歴データを表す。作業時間データWT_Hは、作業内容WCごとに生成される。装着具データMF_Hは、作業員WKxが作業内容WCの作業に従事したときに着用した装着具MFの履歴データを表す。作業時間データWT_Hと同じく、装着具データMF_Hは、作業内容WCごとに生成される。バイタルデータVT_Hは、作業員WKxの脈拍、血圧、体温といった身体状況に関するデータを表す。バイタルデータVT_Hは、例えば、作業員WKxが着用する計測具から取得される。作業時間データWT_Hと同じく、バイタルデータVT_Hは、作業内容WCごとに生成される。
【0038】
スケジュールデータDSCは、作業員WKxのスケジュールSCに関するデータを表す。作業員WKxのスケジュールSCは、例えば、作業員WKxの一定期間(例えば、1日、1週間、1ヶ月)の勤務スケジュールである。勤務スケジュールには、作業ラインWLへの配置予定の時間帯、作業ラインWLでの作業内容WC以外の業務に従事する予定の時間帯、休憩予定の時間帯などの情報が含まれている。
【0039】
作業員データDWK_DTSは、DTSに用いられる作業員WKxに関するデータの集合である。図6は、作業員データDWK_DTSの構成例を説明する図である。図6に示される例では、作業員データDWKが、識別データDIDと、属性データDATと、組み合わせデータD(WC,MF)と、指標データDINと、を含んでいる。作業員データDWK_DTSを構成するデータのうちの一部のデータ(具体的には、識別データDID及び属性データDAT)は、作業員データDWK_DTSを構成するデータと共通する。
【0040】
組み合わせデータD(WC,MF)と指標データDINは、作業員データDWK_DTSに特有なデータである。組み合わせデータD(WC,MF)は、作業員WKxについての作業内容WCと装着具MFの組み合わせ(WC,MF)のデータを表す。組み合わせデータD(WC,MF)は、例えば、作業員WKxについての作業履歴データDWH(具体的には、作業内容データWC_H及び装着具データMF_H)に基づいて生成される。指標データDINは、指標IN_WE_WKxに関するデータを表す。指標データDINは、例えば、作業員WKxについての作業履歴データDWH(具体的には、バイタルデータVT_H)に基づいて、作業員WKxについての組み合わせ(WC,MF)ごとに生成される。
【0041】
図6に示される例では、指標データDINが、第1指標データDIN_UT1と第2指標データDIN_UT2を含んでいる。第1指標データDIN_UT1は第1指標IN_UT1のデータを表し、第2指標データDIN_UT2は第2指標IN_UTのデータを表す。第1指標IN_UT1は、バイタルデータVT_Hに含まれる身体状況に関するデータの、第1時間UT1当たりの変化量を用いて計算される。第2指標IN_UT2は、この身体状況に関するデータの、第2時間UT2当たりの変化量を用いて計算される。第1時間UT1及び第2時間UT2は、図2に示した2種類の単位時間UTである。身体状況に関するデータの変化量としては、図2の説明で言及された疲労度FAの変化量ΔFAが例示される。
【0042】
データ処理装置12は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの記憶装置とを含むコンピュータである。少なくとも1つのプロセッサは、CPU(Central Processing Unit)を含む。少なくとも1つの記憶装置には、指標計算処理、DTS、人員配置処理、及びその他のデータ処理を実行するためのプログラムが格納されている。これらのプログラムは、データ処理装置12が読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【0043】
3-2.データ処理装置の機能構成例
図4には、データ処理装置12が有する機能として、指標計算部12aと、シミュレーション部12bと、人員配置処理部12cとが描かれている。これらの機能は、データ処理装置12のプロセッサが、データ処理装置12の記憶装置に格納された各種プログラムを実行することにより実現される。
【0044】
指標計算部12aは、指標IN_WE_WKxの計算処理を行う。この計算処理では、データベース11bに格納された作業員データDWK(具体的には、作業履歴データDWH)に基づいて、作業員WKxが作業内容WCの作業に従事している間の指標IN_WE_WKxが計算される。指標IN_WE_WKxは、単一の単位時間UTに着目して計算されてもよいし、複数の単位時間UTに着目して計算されてもよい。計算処理により得られた指標IN_WE_WKxのデータは、作業員WKxについての組み合わせデータD(WC,MF)と関連付けられてデータベース11cに格納される。この指標IN_WE_WKxのデータが、作業員WKxについての指標データDINとなる。
【0045】
シミュレーション部12bは、DTSを行う。このDTSでは、まず、作業ラインWLで実施中の複数の作業の作業内容WCのそれぞれに対し、1人の作業員WKxと、この作業員WKxが着用する装着具MFの組み合わせ(WKx,MF)が振り分けられる。作業ラインWLで実施予定の複数の作業の作業内容WCのそれぞれに対し、1人の作業員WKxと、この作業員WKxが着用する装着具MFの組み合わせ(WKx,MF)が振り分けられてもよい。
【0046】
作業ラインWLで実施中の複数の作業の作業内容WC、及び、作業ラインWLで実施予定の複数の作業の作業内容WCは、作業ラインWLの作業計画データDWPから特定される。ここで、作業計画データDWPは、例えば、実工場2が備えるコンピュータにより別途設定される。作業計画データDWPは、例えば、作業ラインWLで実施中の(又は実施が予定されている)作業内容WC_Pのデータと、この作業内容WC_Pの作業を実施する(又は実施が予定されている)時間WT_Pのデータと、を含んでいる。そのため、作業内容WC_Pのデータを参照することで、複数の作業の作業内容WCが特定される。
【0047】
組み合わせ(WKx,MF)が振り分けられたら、この組み合わせ(WKx,MF)を構成する作業員WKxについての指標IN_WE_WKxが特定される。この指標IN_WE_WKxの特定は、振り分けられた組み合わせ(WKx,MF)を用いたデータベース11cの参照により行われる。尚、組み合わせ(WKx,MF)の振り分けは、複数の作業の作業内容WCのそれぞれに対して行われる。そのため、指標IN_WE_WKxの特定も、複数の作業の作業内容WCのそれぞれに対して行われる。つまり、特定される指標IN_WE_WKxの数は、複数の作業の作業内容WCの数と等しくなる。
【0048】
指標IN_WE_WKxが特定されたら、これらの指標IN_WE_WKxに基づいて、作業効率WE_WWLが計算される。作業効率WE_WWLの計算は、例えば、特定された指標IN_WE_WKxを変数とする計算式を用いて行われる。
【0049】
図3を参照して説明したように、複数の作業の作業内容WCに対する組み合わせ(WKx,MF)の振り分けは、振り分けが可能な組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPの全てに対して行われる(CP1-CPn)。そのため、作業効率WE_WWLは、組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPごとに計算される。
【0050】
組み合わせ(WKx,MF)のパターンCPごとに作業効率WE_WWLが計算されたら、上記の基準条件を用いてこれらの作業効率WE_WWLを選別する。このように、DTSでは、上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のパターンCP(つまり、組み合わせ(WK,MF)のグループCG)が探索される。尚、上記の基準条件を用いた選別の結果、上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のグループCGが2グループ以上残ることもある。この場合は、これらのグループCGを選別し、かつ、作業効率WE_WWLのスコアが高い順にこれらのグループCGを並べておくことが本開示の目的に沿うため望ましい。
【0051】
人員配置処理部12cは、現実空間の作業ラインWLに作業員を配置する人員配置処理を行う。人員配置処理では、DTSによる探索結果を参照して、作業ラインWLで実施予定の複数の作業のそれぞれに対して割り当てられる作業員WKxの候補WKx_Cと、この候補WKx_Cが着用する装着具MFとの組み合わせ(WKx_C,MF)が選出される。選出された組み合わせ(WKx_C,MF)は、データ処理装置12から出力される。これにより、選出された組み合わせ(WKx_C,MF)の提案が行われる。この提案の採用の判断は、例えば、現実空間の作業ラインWLの責任者によって行われる。
【0052】
作業ラインWLで実施予定の複数の作業は、作業ラインWLの作業計画データDWPから特定される。既述したように、作業計画データDWPは、作業ラインWLで実施が予定されている作業内容WC_Pのデータと、この作業内容WC_Pの作業の実施が予定されている時間WT_Pのデータとを含んでいる。そのため、作業内容WC_Pのデータを参照することで、実施予定の複数の作業と、これらの作業の作業内容WCとが特定される。
【0053】
作業ラインWLで実施予定の複数の作業と、これらの作業の作業内容WCとが特定されたら、この作業内容WCを用いたデータベース11aの参照により、装着具MFが特定される。既述したように、データベース11aには装着具データDMFが格納されており、この装着具データDMFは、作業内容WCに応じて設定される装着具MFに関するデータである。そのため、装着具データDMFを参照することで、作業ラインWLで実施予定の複数の作業の作業内容WCに応じた装着具MFが特定される。
【0054】
作業ラインWLで実施予定の複数の作業と、これらの作業の作業内容WCと、これらの作業内容WCに応じた装着具MFとが特定されたら、候補WKx_Cが特定される。例えば、作業計画データDWPに含まれる時間WT_Pのデータと、スケジュールデータDSCとが参照されて、作業ラインWLへの配置予定の時間帯が時間WT_Pの時間帯と重複する候補WKx_Cが特定される。この段階で特定される候補WKx_Cの人数は、通常2人以上である。
【0055】
候補WKx_Cが特定されたら、この候補WKx_Cと、DTSによる探索結果とが参照される。DTSによる探索によれば、上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のグループCGが選別されている。そのため、この組み合わせ(WKx,MF)のグループCGを構成する作業員WKxがスケジュールデータDSCを参照して特定された候補WKx_Cに含まれていれば、当該作業員WKxが候補WKx_Cとして特定される。作業員WKxが候補WKx_Cとして特定されれば、当該作業員WKxを含む組み合わせ(WKx,MF)が、組み合わせ(WKx_C,MF)として選出される。
【0056】
上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のグループCGが2グループ以上ある場合は、作業効率WE_WWLの高い組み合わせ(WKx,MF)のグループCGから順番に、スケジュールデータDSCの参照が行われる。そのため、例えば、作業効率WE_WWLが最も高い組み合わせ(WKx,MF)のグループCGを構成する一部又は全部の作業員WKxの勤務スケジュールが作業ラインWLの作業計画と合わない場合に、作業効率WE_WWLが2番目に高い組み合わせ(WKx,MF)の検討を行うことが可能となる。このような順番で参照が行われることで、組み合わせ(WKx_C,MF)の選出ができない状況となるのを抑えることが可能となる。同時に、作業効率WE_WWLのより高い組み合わせ(WKx,MF)のグループCGに基づいて、組み合わせ(WKx_C,MF)を選出することが可能となる。
【0057】
上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のグループCGが1グループしか無い場合において、このグループCGを構成する一部の作業員WKxの勤務スケジュールが作業ラインWLの作業計画と合わないときは、グループCGを構成する複数の作業員の属性ATに関するデータ(つまり、属性データDAT)を参照してもよい。属性データDATを参照することで、作業ラインWLの作業計画と合わない作業員WKxの属性ATと同じ属性ATを有し、かつ、作業ラインWLの作業計画と合う勤務スケジュールを有する別の作業員WKxを候補WKx_Cとして特定することが可能となる。尚、属性データDATは、データベース11bに格納されている。
【0058】
上記の基準条件が満たされる作業効率WE_WWLに対応する組み合わせ(WKx,MF)のグループCGが2グループ以上ある場合にも、上述した属性データDATの参照を行ってもよい。例えば、作業効率WE_WWLが最も高い組み合わせ(WKx,MF)のグループCGを構成する一部又は全部の作業員WKxの勤務スケジュールが作業ラインWLの作業計画と合わない場合に、この作業計画と合わない作業員WKxの属性ATと同じ属性ATを有し、かつ、作業ラインWLの作業計画と合う勤務スケジュールを有する別の作業員WKxを候補WKx_Cとして特定することが可能となる。
【0059】
4.効果
以上説明した実施形態によれば、DTSにおいて基準条件が満たされるときの組み合わせ(WK,MF)のグループCGを特定することが可能となる。そして、この特定された組み合わせ(WK,MF)のグループCGを参照して現実空間の作業ラインWLを稼働すれば、この作業ラインWL全体での作業効率WE_WWLが高まることが期待される。
【符号の説明】
【0060】
1…シミュレーションシステム、2…実工場、11…データベース、12…データ処理装置、AT,AT1-AT3…属性、CP,CP1-CPn…組み合わせ(WKx,MF)のパターン、MF,MF1-MF5…装着具、UT,UT1-UT2…単位時間、WC,WC1-WC3…作業内容、WK1-WK4,WMx…作業員、WL…作業ライン、WT…作業時間、WE_WKx…作業員WKxの作業効率、WE_WWL…作業ラインWL全体での作業効率、IN_WE_WKx…指標、DAT…属性データ、DIN…指標データ、DWH…作業履歴データ、DSC…スケジュールデータ、DWK…作業員データ、DWK_DTS…DTS用の作業員データ、D(WC,MF)…組み合わせデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6