(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006543
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用セパレータおよび電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107404
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 康司
(57)【要約】
【課題】高音質かつ静電気に起因する不良を抑えることができる電解コンデンサ用セパレータおよび電解コンデンサを提供する。
【解決手段】電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、外装ケース3と、封口体4とを備えている。コンデンサ素子2は、陽極と、陰極と、電解コンデンサ用セパレータとを有する。電解コンデンサ用セパレータは、陽極と陰極との間に配置される。電解コンデンサ用セパレータにセラミック粉末と動物繊維粉末とが含有されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に配置される電解コンデンサ用セパレータであり、
電解コンデンサ用電解紙にセラミック粉末と動物繊維粉末とが含有されていることを特徴とする電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項2】
前記セラミック粉末はガラス粉末であり、
前記動物繊維粉末はシルク粉末である
ことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項3】
前記セラミック粉末の含有量は、前記電解コンデンサ用電解紙に対し0.01重量%以上30.0重量%以下であり、
前記動物繊維粉末の含有量は、前記電解コンデンサ用電解紙に対し0.05重量%以上6.0重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項4】
前記セラミック粉末および前記動物繊維粉末は、前記電解コンデンサ用電解紙の表面部に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項5】
陽極および陰極が請求項1または2に記載の電解コンデンサ用セパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子が収納される外装ケースと、
前記外装ケースの開口部を封口する封口体と
を備えていることを特徴とする電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサに用いられるセパレータおよび電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器などに使用する電解コンデンサとして、高音質が得られる音響用電解コンデンサが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の電解コンデンサには、セパレータとしてガラス粉末が塗布された電解紙が用いられている。これにより高音質が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解コンデンサは、外装ケースと、外装ケースに収納されたコンデンサ素子とを有する。コンデンサ素子は、陽極と陰極がセパレータを介して巻回されることにより作製される。本願発明者らの研究から、特許文献1に記載の電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子は、巻き取り時にセパレータに静電気が発生することにより異物が付着する可能性があることが分かった。セパレータに異物が付着した場合、電解コンデンサの品質不良を引き起こす可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることのできる電解コンデンサ用セパレータおよび電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らが研究した結果、以下の構成とすることにより、音響用電解コンデンサの品質不良を抑制することができることが分かった。
【0007】
本明細書で開示される電解コンデンサ用セパレータは、陽極と陰極との間に配置される電解コンデンサ用セパレータであり、電解コンデンサ用電解紙にセラミック粉末と動物繊維粉末とが含有されている。
【0008】
上記構成により、コンデンサ素子の巻き取り時にセパレータに静電気が発生しにくくなることが分かった。静電気が発生しにくいため、セパレータに異物が付着しにくい。そのためオーディオ機器用の電解コンデンサとして、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えられることが分かった。
また、異物が付着しにくいセパレータを用いた電解コンデンサにより、以下の効果が得られる。
電解コンデンサに過電圧が印加された際、故障しにくい。また、電解コンデンサ内部でのショートの発生が抑制される。
【0009】
上記構成において、セラミック粉末はガラス粉末であり、動物繊維粉末はシルク粉末が好ましい。
【0010】
上記構成において、前記セラミック粉末の含有量は、前記コンデンサ用電解紙に対し0.01重量%以上30.0重量%以下であり、前記動物繊維粉末の含有量は、前記コンデンサ用電解紙に対し0.05重量%以上6.0重量%以下であることが好ましい。この含有量である場合、電解紙に一種類の粉末(例えば、従来のガラス粉末)が塗工されている場合に比べ、セパレータに静電気が発生しにくい。そのため高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることができる。
【0011】
上記構成において、前記セラミック粉末および前記動物繊維粉末は、前記電解コンデンサ用セパレータの表面部に存在していてもよい。
例えば、電解紙にセラミック粉末および動物繊維粉末を含む液を塗布し乾燥させるという簡易な工程でセラミック粉末および動物繊維粉末が電解コンデンサ用セパレータの表面部に存在するようになる。また、例えば、電解紙をセラミック粉末および動物繊維粉末を含む液に浸し、乾燥させるという簡易な工程でセラミック粉末および動物繊維粉末が電解コンデンサ用セパレータの表面部に存在するようになる。このような簡易な工程で、上述した効果が得られる電解コンデンサ用セパレータを提供することができる。
【0012】
本明細書で開示される電解コンデンサは、陽極および陰極が上記電解コンデンサ用セパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が収納される外装ケースと、前記外装ケースの開口部を封口する封口体とを備えている。
【0013】
上記の電解コンデンサは、異物が付着しにくいセパレータが用いられている。そのため、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることができる。
また、異物が付着しにくいセパレータを用いた電解コンデンサは、以下の効果が得られる。
電解コンデンサに過電圧が印加された際、故障しにくい。また、電解コンデンサ内部でのショートの発生が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
上記電解コンデンサ用セパレータを電解コンデンサに用いることにより、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る電解コンデンサの一例の模式図である。
【
図2】
図1に示すコンデンサ素子の分解斜視図である。
【
図3】セパレータの表面部の電子顕微鏡画像の一例の模式図である。
【
図4】実験の静電電位とシルク含有量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
電解コンデンサ1は、
図1に示すように、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2が収納された外装ケース3と、外装ケース3の開口部を封口する封口体4とを備えている。
【0018】
外装ケース3は、有底筒状のケースである。外装ケース3は、例えば、金属製のケースである。封口体4は、例えば、ゴム等の弾性部材からなる。
【0019】
コンデンサ素子2は、
図2に示すように、陽極11と、陰極12と、セパレータ13とを有する。陽極11と陰極12は、セパレータ13を介して円筒形などに巻回される。セパレータ13に、電解液、または、電解液および導電性高分子が保持される。
図2では陽極11と陰極12にハッチングを付している。
【0020】
陽極11および陰極12にはそれぞれ図示しないリードタブが接続されている。陽極11は、リードタブを介して、リード端子21に接続されている。陰極12は、リードタブを介して、リード端子22に接続されている。リード端子21およびリード端子22は、それぞれ、
図1に示すように、封口体4に形成された孔31および孔32を通って外部に引き出されている。
【0021】
陽極11は(
図2参照)、例えば、表面に誘電体である酸化皮膜が形成された弁作用金属である。弁作用金属として、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブおよびチタンから構成される群より選択される少なくとも1つが挙げられる。酸化皮膜は、例えば、弁作用金属の箔の表面をエッチング処理により粗面化した後、陽極酸化(化成)処理を施すことによって形成される。
【0022】
陰極12は、例えば弁作用金属を用いて形成されている。陰極12として、例えば、弁作用金属箔の表面をエッチング処理により粗面化した箔、または、粗面化後に化成処理を施した箔が使用される。陰極12として、エッチング処理を施さないプレーン箔を使用してもよい。さらに、前記粗面化箔もしくはプレーン箔の表面に、チタン、ニッケル、チタン炭化物、ニッケル炭化物、チタン窒化物、ニッケル窒化物、チタン炭窒化物およびニッケル炭窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属薄膜が形成されたコーティング箔を使用してもよい。また、粗面化箔もしくはプレーン箔の表面にカーボン薄膜が形成されたコーティング箔を使用してもよい。
【0023】
セパレータ13は、電解コンデンサ用電解紙にセラミック粉末と動物繊維粉末とを含有させたものである。セパレータ13は、例えば、セルロース繊維、マニラ系繊維、クラフト系繊維、ヘンプ繊維、コットン繊維、レーヨン繊維またはエスパルト繊維などを主体とする一般電解紙の表面部および/または内部に、セラミック粉末と動物繊維粉末とが存在するものでもよく、セルロース繊維、マニラ系繊維、クラフト系繊維、ヘンプ繊維、コットン繊維、レーヨン繊維およびエスパルト繊維などの2種以上が混抄された一般電解紙の表面部および/または内部に、セラミック粉末と動物繊維粉末とが存在するものでもよい。電解紙の主体となる材質は、セルロース繊維、マニラ系繊維、クラフト系繊維、ヘンプ繊維、コットン繊維、レーヨン繊維およびエスパルト繊維に限定されず、種々のものを用いることができる。セパレータ13の厚さは特に限定されず、例えば、電解コンデンサ用電解紙としての一般的な厚さ(約25~50μm)でもよい。
【0024】
セラミック粉末と動物繊維粉末は、セパレータ13の表面部に存在してもよく、セパレータ13の内部に存在してもよく、セパレータ13の表面部と内部の両方に存在してもよい。セパレータ13の表面部とは、セパレータ13の表面から厚さ方向に数μm程度(例えば、10μm)の深さまでの範囲のことである。セパレータ13の内部とは、セパレータ13の表面部以外の部分である。
【0025】
図3に、セパレータ13を電子顕微鏡で観察したときの電子顕微鏡画像の一例を模式的に示している。
図3には、電子顕微鏡画像から、電解紙の主体となる繊維41と、セラミック粉末42と、動物繊維粉末43とを確認することができる例を示している。セラミック粉末42および動物繊維粉末43は、例えば、
図3に示すように、繊維41上に存在してもよく、繊維41が絡み合った中に存在してもよい。繊維41と、セラミック粉末42と、動物繊維粉末43とは、例えば、顕微鏡により100倍~1,000倍の倍率で観察または撮影された画像によって確認することができる。セパレータ13の観察には、走査型電子顕微鏡(SEM)、マイクロスコープなどを使用することができる。
【0026】
セラミック粉末とは、セラミックが粉状になったものである。セラミック粉末として、例えば、Al2 O3 、BeO、MgO、BaTiO3、SrTiO3、ZrO2、Si3N4 、cBN(立方晶窒化ホウ素)、SiCおよびガラスから選択される少なくとも一種の粉末が挙げられる。このなかでもガラス粉末を用いることが好ましい。ガラス粉末を用いた場合、高音質が確実に得られる電解コンデンサを提供できる。ガラスとは、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分の一つとするものであり、例えば、アルミノケイ酸塩ガラス(Al2O3-SiO2)でもよく、カルシウムアルミノケイ酸塩ガラス(CaO-Al2O3-SiO2)でもよい。また、ガラスは、ケイ酸(SiO2)、ソーダ灰(Na2O)および石灰(CaO)を主成分とするいわゆるソーダ石灰ガラスでもよく、ケイ酸(SiO2)、酸化カリウム(K2O)および酸化鉛(PbO)を主成分とするいわゆる鉛ガラスでもよく、ケイ酸(SiO2)、ソーダ灰(Na2O)、アルミナ(Al2O3)、酸化ホウ素(B2O3)を主成分とするホウケイ酸ガラスでもよい。ガラス粉末として、市販されているガラス薄片(日本板硝子社製のガラスフレーク(登録商標)等)を用いてもよい。
【0027】
セラミック粉末を構成する粒子の形状および大きさは特に限定されない。セラミック粉末を構成する粒子は、例えば、扁平な鱗片状でもよく、略球状でもよい。例えば、ガラス粉末を用いる場合、ガラス粉末を構成する粒子は平均厚さが0.4~5.0μm、平均粒径が1~900μmの鱗片状の薄片でもよい。ここでの平均厚さとは、一つの薄片(粒子)の厚さの平均値であり、平均粒径とは一つの薄片(粒子)の広面の面積を円の面積と考えたときの直径である。
【0028】
動物繊維粉末とは、例えば、動物繊維を粉砕などすることにより粉状になったものである。動物繊維として、例えば、シルク、羊毛、カシミヤ、アルパカ、モヘヤ、ラクダ等が挙げられる。このなかでもシルクは入手しやすく、粉末にしやすい。
【0029】
動物繊維粉末を構成する粒子の形状および大きさは特に限定されない。動物繊維粉末を構成する粒子は、例えば長尺の動物繊維を粉砕などすることにより形成されるため、繊維方向にやや長い細長状であることが多い。例えば、シルク粉末を用いる場合、シルクを粉砕などすることにより作製される。シルク粉末を構成する粒子は、繊維方向の最大長さが1~500μmの細長状でもよい。動物繊維粉末には、繊維方向の最大長さが同様な長さの粒子径が含まれていてもよく、繊維方向の最大長さが様々なものが含まれていてもよい。
【0030】
上述したセラミック粉末と動物繊維粉末の含有量は特に限定されない。例えば、セラミック粉末としてガラス粉末を用いる場合、電解コンデンサ用電解紙100重量%に対し、ガラス粉末の含有量を0.01重量%以上30.0重量%以下としてもよい。これにより、確実に高音質化を図ることができ、音響用電解コンデンサとして好ましい。
【0031】
例えば、動物繊維粉末としてシルク粉末を用いる場合、電解コンデンサ用電解紙100重量%に対し、シルク粉末の含有量を0.05重量%以上6.0重量%以下としてもよい。これにより、従来のガラス粉末だけ用いた場合に比べ、セパレータ13の巻取り時に静電気の発生を抑えられると考えられる。
【0032】
セラミック粉末と動物繊維粉末の総含有量は特に限定されない。セラミック粉末と動物繊維粉末の総含有量は、例えば、電解コンデンサ用電解紙100重量%に対し0.06重量%以上36.0重量%以下であることが好ましい。
【0033】
上述したセパレータ13は、例えば以下の方法によって作製される。
【0034】
セラミック粉末と動物繊維粉末が含有されていない一般用電解紙を用意する。セラミック粉末と動物繊維粉末を溶媒(例、純水)と接着剤(例、ポリビニルアルコール)に分散または溶解させた液を用意し、この液を一般用電解紙に塗布し、乾燥させる。
別の方法として、セラミック粉末と動物繊維粉末を溶媒(例、純水)と接着剤(例、ポリビニルアルコール)に分散または溶解させた液に一般用電解紙を浸漬し、引き上げた後、乾燥してもよい。
さらに別の方法として、上記一般用電解紙を使用せず、電解紙を作製する段階で電解紙の主体となる繊維とセラミック粉末と動物繊維粉末とを混ぜてセパレータ13を作製してもよい。
上記によりセラミック粉末と動物繊維粉末がセパレータの表面部および/または内部に存在するようになる。
【0035】
次に、電解コンデンサ1の作製方法の一例を説明する。
所定の幅に切断された陽極11および陰極12に(
図2参照)、外部引き出し電極用のリードタブを接続する。リードタブが接続された陽極11および陰極12を、セパレータ13を介して巻回することにより、コンデンサ素子2を作製する。巻回後、化成処理を行ってもよい。また、陽極11および陰極12とをセパレータ13を介して巻回したものを導電性高分子を含む液に浸した後、乾燥させることにより、導電性高分子層を形成してもよい。
【0036】
コンデンサ素子2に電解液を含浸させた後、コンデンサ素子2を外装ケース3に収容し(
図1参照)、外装ケース3の開口部に封口体4を嵌め、開口部を封止する。外装ケース3の開口部をカーリングする。
なお、電解液の含浸、コンデンサ素子2の収納などの順序は上記に限定されない。
例えば、外装ケース3に電解液を注入後、外装ケース3にコンデンサ素子5を収納してもよい。また、コンデンサ素子5に封口体4を取り付け、コンデンサ素子5を外装ケース3に収納した後、外装ケース3に電解液を注入し、外装ケース3の開口部を封口体4により封止してもよい。
【0037】
上述したセパレータ13を用いた場合、電解コンデンサ1の製造工程において、コンデンサ素子2の巻き取り時にセパレータ13に静電気が発生しにくくなることが分かった。この理由は明らかではないが、セラミック粉末と動物繊維粉末とが含有されている場合、動物繊維粉末の帯電性により電気が分散されることにより静電気が発生しにくくなったと推測される。コンデンサ素子2の巻取り時にセパレータ13に静電気が発生しにくいため、セパレータ13に異物が付着しにくい。このようなセパレータ13を用いることにより、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることができる電解コンデンサ1を提供することができる。このような電解コンデンサ1は音響用電解コンデンサとして好ましい。
【0038】
また、セパレータ13を用いて得られた電解コンデンサにより以下の効果が得られる。
電解コンデンサ1に過電圧が印加された際、故障しにくい。また、電解コンデンサ1の内部でのショートの発生が抑制される。
【0039】
また、セパレータ13に、セラミック粉末としてガラス粉末が含有され、動物繊維粉末としてシルク粉末が含有されている場合、高音質かつ静電気に起因する不良が生じることを確実に抑えることができる。
【0040】
セパレータ13におけるセラミック粉末と動物繊維粉末の総含有量は特に限定されないが、セパレータ13に対しセラミック粉末と動物繊維粉末の総含有量が0.06重量%以上36.0重量%以下である場合、セパレータ13に一種類の粉末(セラミック粉末または動物繊維粉末)が含まれる場合に比べ、セパレータ13に静電気が発生しにくいと推測される。そのため、高音質かつ静電気に起因する不良の発生を抑えることができる。
【実施例0041】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本明細書の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
マニラ麻繊維およびエスパルト繊維を主体とする一般電解紙を準備し、一般電解紙単体のセパレータ(No.1)と、一般電解紙に一種類の粉末(ガラス粉末またはシルク粉末)が塗工されたセパレータ(No.2、No.3)と、一般電解紙に二種類の粉末(ガラス粉末およびシルク粉末)が塗工されたセパレータ(No.4~No.7)とを準備した。後述する表1および表2に、セパレータの作製条件を示している。No.2~7では、一般電解紙単体に、ポリビニルアルコールを溶解した溶媒(純水)にガラス粉末および/またはシルク粉末を分散させた塗工液を塗布した後、乾燥させることにより、セパレータを作製した。
【0043】
下記に、表1および表2に示すガラス粉末およびシルク粉末A~Cの詳細を説明する。
ガラス粉末:カルシウムアルミノケイ酸塩ガラス
シルク粉末A:繊維方向の最大長さ8±1μmのシルク粉末
シルク粉末B:繊維方向の最大長さ20~25μmのシルク粉末
シルク粉末C:繊維方向の最大長さ8±1μmのシルク粉末と繊維方向の最大長さ20~25μmのシルク粉末との混合
【0044】
【0045】
【0046】
<静電電位の測定>
セパレータを2枚のポリプロピレンシートで挟み込み、10秒間摩擦した後、セパレータの場所を変えながら合計5ヶ所で静電電位を測定した。静電電位の測定には、シシド静電気株式会社製の静電電位測定器「STATIRON(登録商標) DZ4」を用いて、電位測定器の検出部と静電電位の測定箇所との距離を30mmとして測定した。表1および表2に、静電電位を測定した5ヶ所(1~5)の静電電位とこれらの平均値(Ave.)を示している。
【0047】
表1から、一般電解紙に一種類の粉末(ガラス粉末またはシルク粉末)が塗工されたセパレータ(No.2、No.3)では、一般電解紙単体のセパレータ(No.1)に比べ、静電電位が高かった。このことから、一種類の粉末(ガラス粉末またはシルク粉末)が塗工されたセパレータを用いた場合、一般電解紙単体のセパレータを用いた場合に比べ、コンデンサ素子の巻取り時に静電気が発生しやすいことが分かる。
【0048】
一方、表1および表2から、二種類の粉末(ガラス粉末およびシルク粉末)が塗工されたセパレータ(No.4~No.7)では、一般電解紙単体のセパレータ(No.1)、および、一種類の粉末(ガラス粉末またはシルク粉末)が塗工されたセパレータ(No.2、No.3)に比べ、静電電位が低かった。このことから、二種類の粉末(ガラス粉末およびシルク粉末)が塗工されたセパレータを用いた場合、一般電解紙単体のセパレータを用いた場合、および、一種類の粉末(ガラス粉末またはシルク粉末)が塗工されたセパレータを用いた場合に比べ、巻取り時に静電気が発生しにくいことが分かる。
【0049】
図4に、表1の一種類の粉末(ガラス粉末)を用いたNo.2、表2のガラス粉末とシルク粉末Aを用いたNo.4およびNo.5をプロットした。なお、表1および表2では静電電位の単位が「kV」であるが、
図4では静電電位の単位を「V」としている。
【0050】
図4において、Xは一種類の粉末(ガラス粉末)を用いたNo.2、Yは二種類の粉末(ガラス粉末およびシルク粉末A)を用いたNo.4とNo.5を通る線である。シルク粉末含有量が1.0重量%であるNo.5は、シルク粉末含有量が0.1重量%であるNo.4より静電電位がわずかに高い。一般的にシルクは一般電解紙より帯電しやすいため、シルク粉末含有量が多くなるにつれて静電電位が高くなると予想される。これらを基に静電電位の推移が指数関数的に変化すると仮定し、シルク粉末含有量が1.0重量%以上のときの静電電位の推移Zを得た。Zからシルク粉末含有量が6.0重量%以下のとき、一種類の粉末(ガラス粉末)を用いた場合(X)より静電電位が小さいと予想される。
【0051】
なお、
図4に示すZは、シルク粉末Aを用いた場合の静電電位の推移であるが、表2のNo.4、No.6およびNo.7から、シルク粉末A~Cの含有量が同じである場合、シルク粉末Bまたはシルク粉末Cを用いる方がシルク粉末Aを用いるより静電電位が小さい。このことからシルク粉末Bまたはシルク粉末Cを用いた場合、一種類の粉末(ガラス粉末)を用いた場合(X)より静電電位が小さくなるシルク粉末含有量は、6.0重量%より多いと推測される。
【0052】
上記実験ではシルク粉末A~Cを用いたが、シルク粉末の粒径はシルク粉末A~Cの粒径に限定されない。
【0053】
また、上記実験では、ガラス粉末の含有量を0.05重量%としたが、ガラス粉末の含有量はこの含有量に限定されない。シルク粉末の含有量についても、上記実験の0.1重量%と1.0重量%に限定されない。