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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006545
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】測定ヘッドおよび共焦点変位計
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107407
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】武井 英人
(72)【発明者】
【氏名】南川 義久
(72)【発明者】
【氏名】古閑 拓海
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA06
2F065FF10
2F065GG24
2F065LL02
2F065LL04
(57)【要約】
【課題】共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能な測定ヘッドおよび共焦点変位計を提供する。
【解決手段】測定ヘッド1Aは、白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドである。測定ヘッド1Aは、金属製のヘッド筐体10内にガラス製の複数のレンズ221~224が収容された構成を有する。ヘッド筐体10の内部には、前端部FEの近傍に雌ねじ部分12jが形成されている。その雌ねじ部分12jにリングねじ46が取り付けられている。この状態で、レンズ224はリングねじ46に当接するように設けられている。リングねじ24はレンズ224が+x方向に移動することを規制する。ヘッド筐体10内には、レンズ224がリングねじ46に当接する状態で、レンズ224を含む複数のレンズを+x方向に向かって付勢する金属製のばね部材43が設けられている。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、
筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、
前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、
第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、
前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、
前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズを前記一の方向に向かって弾性力により付勢する金属製の付勢部材とを備える、測定ヘッド。
【請求項2】
前記筐体の前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容される金属製の1または複数のスペーサをさらに備え、
前記1または複数のスペーサの各々は、前記複数のレンズのうち前記軸心方向に隣り合う2つのレンズの間に設けられる、請求項1記載の測定ヘッド。
【請求項3】
前記第1の移動規制部は、前記第1のレンズに当接することにより前記第1のレンズが前記第1の方向に移動することを規制し、
前記複数のレンズは、前記筐体内で前記第1のレンズと前記第2の端部との間に配置される第2のレンズを含み、
前記測定ヘッドは、
前記筐体の内部における前記第1の部分と前記第2の端部との間に位置する第2の部分に設けられ、前記複数のレンズのうち前記第2のレンズに当接することにより前記第2のレンズが前記第2の方向に移動することを規制する第2の移動規制部をさらに備え、
前記付勢部材は、
前記筐体内で前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に設けられ、
前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接しかつ前記第2のレンズが前記第2の移動規制部に当接する状態で、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部のレンズを前記第1の方向に向かって弾性力により付勢するとともに前記複数のレンズのうち前記第2のレンズを含む残りのレンズを前記第2の方向に向かって弾性力により付勢する、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項4】
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、前記筐体内で前記第1の方向に光が進行するときに前記複数のレンズが合成された光学系に定義される主点よりも前記第1の端部に近い位置に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過する、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項5】
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、
前記複数のレンズの一部は、前記付勢部材の内径よりも大きい有効径を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の内部で前記複数のレンズの一部よりも前記第1の端部に近い位置に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過する、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項6】
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記複数のレンズは、前記筐体の内部の一部領域で前記第1の端部に導かれた光を当該光の断面積を拡大させつつ前記第1の方向に進行させるように配置され、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、前記筐体内の前記一部領域に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過する、請求項3記載の測定ヘッド。
【請求項7】
前記筐体の少なくとも一部は、前記軸心方向に延びかつ矩形断面を有する角筒状の外面を有する、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項8】
前記筐体は、
前記第1の方向に順に並ぶ第1の筐体部および第2の筐体部を含み、
前記第1の筐体部から前記第2の筐体部にかけて前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記第1の筐体部における前記内周面の内径は、前記第2の筐体部における前記内周面の内径よりも小さく、
前記複数のレンズは、前記第2の筐体部内に収容され、
前記第1の筐体部の外面に、前記測定ヘッドを他の部材に取り付けるための取付部が形成された、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項9】
前記第2の端部に着脱可能に構成され、前記第2の端部から出射される光を、前記軸心方向に対して交差する予め定められた方向に折り曲げる光屈曲ユニットをさらに備える、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項10】
前記第2の端部と前記光屈曲ユニットとの間に着脱可能に構成され、前記測定ヘッドと前記光屈曲ユニットとの間の距離を調整するための1または複数の距離調整部材をさらに備える、請求項9記載の測定ヘッド。
【請求項11】
前記筐体および前記付勢部材を構成する金属は、ステンレスである、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項12】
前記第1の移動規制部は、前記筐体とは別体の規制部材が前記筐体の内部における前記第1の部分に接続されることにより構成され、
前記筐体と前記規制部材との接続部には、無機材料からなる接着剤が用いられた、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項13】
前記光ファイバを前記筐体の前記第1の端部に接続するためのファイバ接続部材をさらに備え、
前記ファイバ接続部材は、前記筐体の前記第1の端部に、1または複数のねじを用いて接続され、
前記1または複数のねじの各々の締結部には、無機材料からなる接着剤が用いられた、請求項1または2記載の測定ヘッド。
【請求項14】
白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、
筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、
前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、
第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、
前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、
前記筐体の内部で前記第1の移動規制部から前記軸心方向に離間した位置に設けられるポリイミド製の熱膨張部材とを備え、
前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズは、前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記第1の移動規制部と前記熱膨張部材との間に保持される、測定ヘッド。
【請求項15】
請求項1、2および14のいずれか一項に記載の測定ヘッドと、
前記測定ヘッドに導かれる光を発生する白色光源と、
前記測定ヘッドから測定対象物に照射され、前記測定対象物で反射された光に基づいて前記測定対象物の変位を算出する変位測定部とを備える、共焦点変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点変位計用の測定ヘッドおよび共焦点変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面の変位を非接触方式により測定する装置として、例えば白色光源、光ファイバおよび測定ヘッドを備える共焦点変位計がある。その共焦点変位計においては、白色光源により発生される広い波長帯域の光(白色光)が光ファイバを通して測定ヘッドに導かれる。測定ヘッドは、主として複数のレンズとそれらを収容するヘッド筐体とを含み、光ファイバを通して導かれる光を複数のレンズを通して測定対象物に照射する。このとき、複数のレンズにより測定対象物に照射される光に色収差が発生する。また、測定ヘッドは、測定対象物の表面で合焦しつつ反射された光を受ける。測定ヘッドが受けた光に基づいて測定対象物の表面の変位が測定される。上記の共焦点変位計によれば、測定ヘッドを所望の位置に配置することで、測定対象物の測定可能な範囲が拡大される。
【0003】
共焦点変位計による変位の測定精度は、種々の要因で低下する。そこで、測定精度の低下を抑制するための構成が提案されている。例えば、特許文献1には、光学部品(測定ヘッドのレンズ)の球面収差に起因して発生する測定精度の低下を抑制するために、球面収差の極性が異なる回折レンズおよび屈折レンズを備える共焦点変位計が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-02722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、測定対象物が高温環境下に配置される場合には、測定ヘッドを高温環境下に配置することが考えられる。しかしながら、測定ヘッドが配置される環境の温度および測定ヘッドの各構成要素の線膨張係数等によっては、測定ヘッドが高温環境下に配置されるごとに、複数のレンズの位置関係がランダムに変化する可能性がある。また、複数のレンズのいずれかが樹脂材料を含む場合、当該樹脂材料は高温環境下で変形する可能性が高い。これらの場合、共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性が低下する。
【0006】
本発明の目的は、共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能な測定ヘッドおよび共焦点変位計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う測定ヘッドは、白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズを前記一の方向に向かって弾性力により付勢する金属製の付勢部材とを備える。
【0008】
本発明の他の局面に従う測定ヘッドは、白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、前記筐体の内部で前記移動規制部から前記軸心方向に離間した位置に設けられるポリイミド製の熱膨張部材とを備え、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズは、前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記第1の移動規制部と前記固定部材との間に保持される。
【0009】
本発明のさらに他の局面に従う共焦点変位計は、上記の測定ヘッドと、前記測定ヘッドに導かれる光を発生する白色光源と、前記測定ヘッドから測定対象物に照射され、前記測定対象物で反射された光に基づいて前記測定対象物の変位を算出する変位測定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る共焦点変位計の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る測定ヘッドの一例を示す外観斜視図である。
図3図2の測定ヘッドを+Z方向に見た一側面図である。
図4】測定ヘッドを図2および図3の点線で示される仮想面により切断した断面図である。
図5図1の測定ヘッドの分解斜視図である。
図6】ヘッド筐体内に収容されるばね部材の構成および機能の詳細を説明するための図である。
図7】ばね部材の機能を説明するための参考例を示す図である。
図8】ヘッド筐体内におけるばね部材の第1の配置条件を説明するための図である。
図9】測定ヘッドを図2および図3の二点鎖線で示される仮想面により切断した断面図である。
図10】光屈曲ユニットおよび複数の距離調整部材の外観斜視図である。
図11図10の光屈曲ユニットおよび複数の距離調整部材による測定ヘッドの測定方向および測定可能範囲の変化を示す図である。
図12】他の実施の形態に係る測定ヘッドの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る測定ヘッドおよびそれを備える共焦点変位計について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
1.共焦点変位計の基本構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る共焦点変位計の構成を示す模式図である。図1に示すように、共焦点変位計9は、測定ヘッド1A,1B、測定ユニット100A,100B、導光部300A,300B、制御ユニット2およびPC(パーソナルコンピュータ)3を備える。導光部300Aは、複数の光ファイバを含み、測定ヘッド1Aと測定ユニット100A内部の一部の構成要素(後述する投光部120および分光部130)とを光学的に接続する。
【0014】
測定ユニット100Aは、ユニット筐体110、投光部120、分光部130、受光部140、測定制御部150および副表示部190を含む。ユニット筐体110は、投光部120、分光部130、受光部140および測定制御部150を収容する。副表示部190は、7セグメント表示器またはドットマトリクス表示器等の表示器を含み、ユニット筐体110に取り付けられる。投光部120は、広く連続する波長帯域(例えば500nm~700nm)の光すなわち連続する複数の波長を有する光(白色光)を発生する白色光源を有し、当該白色光源から発生される光を出射可能に構成される。投光部120により出射された光は、導光部300Aの後述する光ファイバ311に入力される。
【0015】
分光部130は、回折格子131および複数(本例では2つ)のレンズ132,133を含む。後述するように、投光部120により出射されて測定対象物Sの表面で反射された光の一部が、導光部300Aの後述する光ファイバ312から出力される。光ファイバ312から出力された光は、レンズ132を通過することにより略平行化され、回折格子131に入射される。本実施の形態においては、回折格子131は反射型の回折格子である。回折格子131に入射された光は、波長ごとに異なる角度で反射するように分光され、レンズ133を通過することにより波長ごとに異なる一次元上の位置に合焦される。
【0016】
受光部140は、複数の画素が一次元状に配列された撮像素子(一次元ラインセンサ)を含む。撮像素子は、多分割PD(フォトダイオード)、CCD(電荷結合素子)カメラまたはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサであってもよいし、他の素子であってもよい。受光部140は、分光部130のレンズ133により形成された波長ごとに異なる複数の合焦位置で撮像素子の複数の画素がそれぞれ光を受光するように配置される。受光部140の各画素からは、受光量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ。)が出力される。受光信号は、各画素で受光される光の強度を示す。
【0017】
測定制御部150は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含む。測定制御部150には、制御プログラムが記憶されるとともに、変位測定に用いられる測定条件等の種々のデータが記憶される。これらのデータは、後述する制御ユニット2から与えられる。測定制御部150は、記憶された制御プログラムおよびデータに基づいて投光部120および受光部140を制御し、受光部140により出力される受光信号に基づいて測定対象物Sの表面の変位を算出する。測定制御部150は、変位の算出結果を副表示部190に表示させる。
【0018】
測定制御部150は制御ユニット2に接続され、制御ユニット2はさらにPC3に接続される。測定制御部150は、変位の算出結果および受光部140から出力される受光信号を制御ユニット2に与える。制御ユニット2およびPC3の構成および動作については後述する。
【0019】
測定ヘッド1Aは、ヘッド筐体10、ファイバレセプタクル30および複数(本例では4つ)のレンズ221,222,223,224を含む。ヘッド筐体10は、複数のレンズ221,222,223,224を収容する。
【0020】
ヘッド筐体10にファイバレセプタクル30が取り付けられている。ファイバレセプタクル30には、導光部300Aの後述するファイバコネクタ330が接続されている。ファイバコネクタ330は、導光部300Aの後述する光ファイバ319の一端部を保持する。
【0021】
測定ユニット100Aから光ファイバ319に光が導かれる。光ファイバ319に導かれた光は、測定ヘッド1Aのヘッド筐体10内で光ファイバ319から出力され、複数のレンズ221,222,223,224をこの順に通過する。本実施の形態においては、複数のレンズ221,222,223,224の各々は、当該レンズの光軸方向に見て円形状を有し、ガラス製の単一部材で構成される。また、レンズ221は、光ファイバ319から導かれる光を拡大する拡大レンズである。レンズ222,223は、レンズ221により拡大された光に所定の機能を付加しつつ収束させる屈曲レンズである。さらに、レンズ224は、レンズ223から導かれる光に色収差を発生させる色収差レンズである。複数のレンズ221,222,223,224を通過することにより色収差が発生した光は、測定対象物Sの表面近傍の位置で合焦する。
【0022】
導光部300Aは、光ファイバ311,312,319、ファイバカプラ320およびファイバコネクタ330を含む。図1の例では、ファイバカプラ320は測定ユニット100Aのユニット筐体110内に設けられる。ファイバコネクタ330は、上記のように測定ヘッド1Aに接続される。
【0023】
ファイバカプラ320は、いわゆる2×2型の構成を有し、4つのポート321~323および本体部324を含む。図1では、4つのポートのうち1つのポートの図示を省略している。ポート321,322とポート323とは、本体部324を挟んで対向するように本体部324に接続される。ポート321,322の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート323から出力される。ポート323に入力された光は、ポート321,322の各々から出力される。
【0024】
ファイバカプラ320のポート321,322には、光ファイバ311,312がそれぞれ接続される。ファイバカプラ320のポート323には、光ファイバ319の他端部が接続される。
【0025】
この構成によれば、測定ユニット100Aの投光部120により出射された光は、光ファイバ311を通してファイバカプラ320のポート321に入力される。ポート321に入力された光は、ポート323から出力され、光ファイバ319を通して測定ヘッド1Aに導かれる。測定ヘッド1Aに導かれた光は、複数のレンズ221,222,223,224を通して測定対象物Sに照射される。
【0026】
測定対象物Sの表面で反射された光の一部は、複数のレンズ224,223,222,221を通して光ファイバ319の一端部に入力される。光ファイバ319の一端部に入力された光は、ファイバカプラ320のポート323に入力される。ポート323に入力された光は、ポート321,322から出力される。ポート322から出力された光は、光ファイバ312を通して分光部130に導かれる。これにより、測定ユニット100Aから測定対象物Sに照射される光に基づいて測定対象物Sの変位が算出される。
【0027】
測定ユニット100Aおよび測定ユニット100Bは同じ構成を有し、測定ヘッド1Aおよび測定ヘッド1Bは同じ構成を有し、導光部300Aおよび導光部300Bは同じ構成を有する。測定ヘッド1Bと測定ユニット100B内部の一部の構成要素とは、上記の測定ヘッド1Aおよび測定ユニット100A間の接続の例と同様に、導光部300Bにより光学的に接続される。また、測定ユニット100Bの測定制御部150(図示せず)は、制御ユニット2に接続される。
【0028】
測定ユニット100Bの投光部120(図示せず)から出射される光は、測定ヘッド1Bを通して測定対象物Sに照射される。測定対象物Sの表面で反射された光の一部が、測定ヘッド1Bを通して測定ユニット100Bに戻される。それにより、測定ヘッド1Bから測定対象物Sに照射される光に基づいて測定対象物Sの変位が算出される。この場合、測定ユニット100Bに設けられる測定制御部150(図示せず)は、変位の算出結果および受光部140から出力される受光信号を制御ユニット2に与える。
【0029】
制御ユニット2は、CPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含む。制御ユニット2には、例えば測定ユニット100A,100Bにおける変位の測定条件がPC3から入力される。測定条件には、例えば投光部120における光の出射量、投光部120における光の出射タイミング、および受光部140における露光量等が含まれる。制御ユニット2は、入力された測定条件を各測定ユニット100A,100Bの測定制御部150に与える。それにより、各測定ユニット100A,100Bにおいて、与えられた測定条件に基づく測定動作が行われる。
【0030】
PC3は、CPU3aおよびメモリ3bを含む。メモリ3bには、測定対象物Sの厚み測定に関する各種プログラムが記憶されるとともに、厚み測定に用いられる種々のデータが記憶される。CPU3aはメモリ3bに記憶されたプログラムを実行する。各測定ユニット100A,100Bから制御ユニット2に与えられる変位の算出結果および受光信号は、制御ユニット2からPC3に与えられる。
【0031】
PC3には、主表示部4aおよび操作部4bが接続されている。主表示部4aは、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルまたは液晶ディスプレイパネル等の表示装置を含む。操作部4bは、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスは、マウスまたはジョイスティック等を含む。使用者は、操作部4bを操作することにより、厚み測定に関する各種指示をPC3に与えることができる。
【0032】
上記の共焦点変位計9においては、測定ヘッド1A,1Bの各々を1または複数の測定対象物Sが配置された空間に配置することができるので、1または複数の測定対象物Sについて変位測定の自由度が高い。例えば、測定対象物Sが回路形成中の基板(ウェハ)等である場合、測定対象物Sは、高温環境下および真空環境下に配置される可能性が高い。このような場合でも、測定ヘッド1A,1Bの各々を測定対象物Sとともに高温環境下に配置することで、高温環境下で測定対象物Sの表面の変位(基板表面の高さ)を測定することができる。また、測定ヘッド1A,1Bの各々を測定対象物Sとともに真空環境下に配置することで、真空環境下で測定対象物Sの表面の変位(基板表面の高さ)を測定することができる。ここで、本実施の形態においては、高温環境下とは、例えば100℃~300℃程度の温度環境下にあることを言う。また、真空環境下とは、例えば10^(-7)Pa~10^(-5)Pa程度の真空度の環境下にあることを言う。
【0033】
なお、測定ヘッド1A,1Bによれば、互いに逆方向を向く一面および他面を有する測定対象物Sの厚みを測定することもできる。例えば測定対象物Sを挟んで対向するように測定ヘッド1A,1Bを配置する。また、測定ヘッド1A,1Bにより測定対象物Sの一面および他面の変位を測定する。この場合、測定対象物Sの一面および他面の変位の測定結果と、測定ヘッド1A,1B間の距離(ヘッド間距離)とに基づいて測定対象物Sの厚み測定を行うことができる。
【0034】
2.測定ヘッド1A,1B
以下、図1の測定ヘッド1A,1Bを代表して測定ヘッド1Aの構成について詳細を説明する。
【0035】
<1>測定ヘッド1Aのヘッド筐体10の外観形状
図2は、本発明の一実施の形態に係る測定ヘッド1Aの一例を示す外観斜視図である。図2および後述する所定の図では、測定ヘッド1Aの各部および当該測定ヘッド1Aとその内部に収容される複数の構成要素との間の位置関係が理解しやすいように、互いに直交するx方向、y方向およびz方向を示す矢印を付している。
【0036】
以下の説明では、x方向のうち、図面上で矢印xが向く方向を適宜+x方向と呼び、その反対方向を適宜-x方向と呼ぶ。また、y方向のうち、図面上で矢印yが向く方向を適宜+y方向と呼び、その反対方向を適宜-y方向と呼ぶ。さらに、z方向のうち、図面上で矢印zが向く方向を適宜+z方向と呼び、その反対方向を適宜-z方向と呼ぶ。
【0037】
測定ヘッド1Aのヘッド筐体10は、金属製の単一部材からなり、図2に示すように、x方向に延びる略角筒形状を有する。以下の説明では、ヘッド筐体10のうち+x方向を向く一方の端部をヘッド筐体10の前端部FEと呼び、ヘッド筐体10のうち-x方向を向く他方の端部をヘッド筐体10の後端部REと呼ぶ。ヘッド筐体10の長手方向に延びるヘッド筐体10の中心軸をヘッド軸心10aと呼ぶ。ヘッド筐体10を構成する金属は、例えばステンレス鋼である。本実施の形態では、ヘッド筐体10のステンレス鋼として、日本産業規格(JIS)に規定されるSUS304、SUS316、SUS316LまたはSUS303が用いられる。
【0038】
ヘッド筐体10は、x方向に並ぶ第1の筐体部11および第2の筐体部12を含む。第1の筐体部11は、ヘッド筐体10の後端部REを有し、-z方向を向く外面11a、+z方向を向く外面11b、-y方向を向く外面11cおよび+y方向を向く外面11dを含む。第2の筐体部12は、ヘッド筐体10の前端部FEを有し、-z方向を向く外面12a、+z方向を向く外面12b、-y方向を向く外面12cおよび+y方向を向く外面12dを含む。第1の筐体部11と第2の筐体部12との間の境界部分で、共通の方向を向くとともにx方向で互いに隣り合う各2つの外面(第1の筐体部11の外面および第2の筐体部12の外面)は面一となっている。
【0039】
このような構成により、測定ヘッド1Aは、ヘッド筐体10の外面の一部を平坦な設置面上に容易に取り付けることが可能である。また、上記の構成によれば、2つの測定ヘッド1Aを互いに隣り合うように配置する場合に、2つの測定ヘッド1Aのうち一方の測定ヘッド1Aのヘッド筐体10と他方の測定ヘッド1Aのヘッド筐体10とを面接触させることができる。それにより、ヘッド筐体10が円筒状の外周面を有する場合に比べて、複数の測定ヘッド1Aを所定の設置面上に安定して設置することが可能になる。
【0040】
ここで、第1の筐体部11には、2つの切り欠き11x,11yが形成されている。2つの切り欠き11x,11yは、ヘッド軸心10aを基準とする周方向に並んでいる。具体的には、一方の切り欠き11xは外面11b,11cの一部を切り欠くように形成され、他方の切り欠き11yは外面11b,11dの一部を切り欠くように形成されている。外面11aに切り欠きは形成されていない。これにより、後述する図3の左から3番目の吹き出し内に示すように、第1の筐体部11のうち2つの切り欠き11x,11yが形成されている部分のx方向に直交する断面はT字形状(図3では逆T字形状)を有する。
【0041】
第1の筐体部11のうち、切り欠き11xが形成された空間と第1の筐体部11よりも-z方向の空間との間に位置する部分には、z方向に延びる2つの貫通孔h1(後述する図3参照)が形成されている。また、第1の筐体部11のうち、切り欠き11yが形成された空間と第1の筐体部11よりも-z方向の空間との間に位置する部分にも、z方向に延びる2つの貫通孔h1が形成されている。これらの複数の貫通孔h1は、例えば測定ヘッド1Aを所望の部材に取り付けるために用いられる。この場合、複数の貫通孔h1のいずれかに、ねじ部材または結束部材等が挿入される。
【0042】
ヘッド筐体10の前端部FEには、測定ヘッド1Aから測定対象物Sに向けて光を出射するとともに測定対象物Sで反射された光を通過させる円形の開口部が形成されている。図2の例では、前端部FEの開口部からヘッド筐体10内に収容されるレンズ224の一部が露出している状態が示される。また、ヘッド筐体10の前端部FEの四隅には、x方向に見て開口部を90°間隔で取り囲むように、4つのねじ孔h2がそれぞれ形成されている。前端部FEの4つのねじ孔h2は、測定ヘッド1Aの使用時に、後述する光屈曲ユニット50(図10)または距離調整部材60(図10)を必要に応じて取り付けるために用いられる。
【0043】
ヘッド筐体10の後端部REには、x方向に延びる複数(本例では4つ)のねじ孔h3が形成されている。本例の4つのねじ孔h3は、ヘッド筐体10の後端部REの四隅に形成されている。後端部REの4つのねじ孔h3は、4つのねじSC1を用いてヘッド筐体10にファイバレセプタクル30を接続するために用いられる。本実施の形態においては、ヘッド筐体10に接続されるファイバレセプタクル30およびファイバコネクタ330は、ヘッド筐体10と同じ材料で形成されている。
【0044】
ヘッド筐体10の複数の外面(11a~11d,12a~12d)の一部には、ヘッド筐体10の内部空間を外部空間とを連通させる複数の貫通孔h4が形成されている。図2では、第2の筐体部12の一の外面12dに複数の貫通孔h4が形成されている状態が示される。これらの貫通孔h4は、例えば測定ヘッド1Aが真空環境下に配置された場合に、ヘッド筐体10の内部空間と外部空間との間で大きな圧力差が生じることを抑制する。
【0045】
<2>ヘッド筐体10の内部形状
図3は、図2の測定ヘッド1Aを+Z方向に見た一側面図である。ヘッド筐体10は、ヘッド軸心10aに沿って後端部REから前端部FEに延びる内部空間を有する。図3では、ヘッド筐体10の内部空間の形状が一点鎖線で示される。また、図3では、x方向に間隔をおいて並ぶA1-A1線、A2-A2線およびA3-A3線におけるヘッド筐体10の模式的断面図(端面図)が3つの吹き出し内にそれぞれ示される。
【0046】
図3の側面図において、A1-A1線およびA2-A2線は第1の筐体部11の2つの部分に重なる線であり、A3-A3線は第2の筐体部12の一部分に重なる線である。ヘッド筐体10の第1の筐体部11および第2の筐体部12の各々は、ヘッド軸心10aに直交する断面が円形の内周面を有する。
【0047】
図3に示すように、第1の筐体部11は第1の内周面11iおよび第2の内周面11jを含む。第1の内周面11iは、一定の直径で、ヘッド筐体10の後端部REから第1の筐体部11と第2の筐体部12との境界部分の近傍の位置まで延びる円筒形状を有する。第1の内周面11iの軸心は、ヘッド軸心10aに一致する。また、第1の内周面11iは、例えば光ファイバ319の外径と同じ程度の内径を有する。
【0048】
第2の内周面11jは、一定の直径で、第1の内周面11iの+x方向の端部から第1の筐体部11と第2の筐体部12との境界部分まで延びる円筒形状を有する。第2の内周面11jの軸心は、ヘッド軸心10aに一致する。また、第2の内周面11jは、第1の内周面11iの内径よりも大きい内径を有する。これにより、第1の筐体部11の内部には、-x方向に見て円環状の段差部(後述する図4の第1の段差部st1)が形成されている。
【0049】
第2の筐体部12は第3の内周面12iを含む。第3の内周面12iは、略一定の直径で、第1の筐体部11と第2の筐体部12との境界部分からヘッド筐体10の前端部FEまで延びる円筒形状を有する。第3の内周面12iの軸心は、ヘッド軸心10aに一致する。また、第3の内周面12iは、第1の筐体部11の第1の内周面11iおよび第2の内周面11jの内径よりも大きい内径を有する。これにより、ヘッド筐体10の内部でかつ第1の筐体部11と第2の筐体部12との間の境界部分には、-x方向に見て円環状の段差部(後述する図4の第2の段差部st2)が形成されている。
【0050】
<3>光ファイバ319の構成
図3では、ファイバコネクタ330により保持される光ファイバ319の構成が、光ファイバ319から引き出された吹き出し内にさらに示される。光ファイバ319は、クラッド319bにより被覆されたコア319aを含む。ファイバレセプタクル30においては、ファイバコネクタ330が接続されることにより、光ファイバ319の一端部先端のコア319aが複数のレンズ221~224(図1)の光軸上に位置するように保持される。なお、本実施の形態においては、ヘッド筐体10のヘッド軸心10aと、ヘッド筐体10内に設けられる複数のレンズ221~224(図1)の光軸とが一致する。また、本実施の形態においては、光ファイバ319の一端部先端は、微小なピンホールを有する空間フィルタとして機能する。
【0051】
光ファイバ319のうち測定ヘッド1Aと測定ユニット100Aとの間に位置する部分には、クラッド319bを被覆するようにポリイミドからなる樹脂製の被覆層319cが設けられている。さらに、被覆層319cを覆うようにステンレス製のスパイラルチューブ319dが設けられる。コア319aおよびクラッド319bは、石英からなり、高い耐熱性を有する。また、ポリイミド製の被覆層319cおよびステンレス製のスパイラルチューブ319dは、ポリイミド以外の樹脂に比べると比較的高い耐熱性を有する。このように、本実施の形態に係る光ファイバ319においては、コア319a、クラッド319b、被覆層319cおよびスパイラルチューブ319dの各々が比較的高い耐熱性を有する。したがって、高温環境下で使用される場合でも、光の伝送について高い信頼性を有する。
【0052】
なお、上記のように、本実施の形態に係る光ファイバ319は、1つのコア319aのみを含む構成を有する。この例に限らず、光ファイバ319は、複数のコア319aを含む構成を有してもよい。この場合、例えば束ねられた複数のコア319aがクラッド319bにより被覆され、そのクラッド319bを被覆するようにさらに被覆層319cおよびスパイラルチューブ319dが設けられる。あるいは、クラッド319bおよび被覆層319cによりそれぞれ被覆された複数のコア319aが束ねられる。その集合体を保護するように、スパイラルチューブ319dが設けられる。
【0053】
<4>ヘッド筐体10の内部に設けられる各種構成要素
図4は、測定ヘッド1Aを図2および図3の点線で示される仮想面VS1により切断した断面図である。図5は、図1の測定ヘッド1Aの分解斜視図である。
【0054】
上記のように、第1の筐体部11の内部には円環状の段差部が形成されている。また、ヘッド筐体10の内部でかつ第1の筐体部11と第2の筐体部12との間の境界部分にも段差部が形成されている。以下の説明では、第1の筐体部11の内部に形成されている段差部を第1の段差部st1と呼ぶ。また、ヘッド筐体10の内部でかつ第1の筐体部11と第2の筐体部12との間の境界部分に形成されている段差部を第2の段差部st2と呼ぶ。図4では、第1の段差部st1および第2の段差部st2が、それぞれ白抜きの矢印で示される。
【0055】
図4に示すように、ヘッド筐体10の内部には、第1の段差部st1から前端部FEまでの間に、レンズ221、スペーサ41,42、ばね部材43、レンズ222、スペーサ44、レンズ223、スペーサ45、レンズ224およびリングねじ46がこの順で+x方向に並ぶように収容されている。スペーサ41,42,44,45、ばね部材43およびリングねじ46は、ヘッド筐体10と同じ材料で形成されている。
【0056】
レンズ221の外径は、第1の筐体部11の第1の内周面11iの内径よりも大きく、第1の筐体部11の第2の内周面11jの内径よりもわずかに小さい。これにより、レンズ221は、第1の筐体部11の第2の内周面11j内に嵌め込まれる。この状態で、レンズ221の-x方向の端面の一部(周縁部)は第1の段差部st1に当接する。そのため、レンズ221は、第1の段差部st1よりも-x方向に移動することが規制される。
【0057】
また、レンズ221の厚み(当該レンズ221の光軸方向の寸法)は、x方向における第1の段差部st1と第2の段差部st2との間の距離よりも大きい。これにより、レンズ221の一部分(+x方向の端面を含む部分)は、第2の筐体部12の内部に突出している。
【0058】
スペーサ41は、第3の内周面12iの内径よりもわずかに小さい直径を有する略円板状部材である。図5に示すように、スペーサ41の中央部には、レンズ221の外径よりも小さい内径を有する円形の開口部41aが形成されている。また、スペーサ41には、当該開口部41aを挟み込むように、2つの貫通孔41bが形成されている。
【0059】
図4に示すように、スペーサ41は、レンズ221の+x方向の端面の一部(周縁部)に当接するように第2の筐体部12内に設けられている。スペーサ42は、スペーサ41と同じ外径を有する円環状部材であり、スペーサ41に当接するように、第2の筐体部12内に設けられている。スペーサ42の内径は、スペーサ42がスペーサ41に当接する状態で、スペーサ41の2つの貫通孔41b(図5)を塞がないように定められている。この場合、スペーサ41の2つの貫通孔41b(図5)は、スペーサ41と第2の段差部st2との間に密閉空間を形成させないための気体流路として機能する。
【0060】
スペーサ41と第2の段差部st2との間に密閉空間が形成されないことにより、測定ヘッド1Aが真空環境下に配置された場合に、ヘッド筐体10内の圧力分布に大きなばらつきが発生しない。それにより、圧力分布の大きなばらつきに起因して測定ヘッド1A内に意図しない変形が生じることが防止される。
【0061】
スペーサ41,42は、ヘッド筐体10の内部でばね部材43をx方向の予め定められた位置に位置決めするために用いられる。例えば、測定ヘッド1Aの組み立て時には、予め複数の厚みを有する複数のスペーサ41,42が用意される。その上で、予め定められたばね部材43のx方向の位置と、ヘッド筐体10内の各部の寸法およびレンズ221の寸法に応じて、適切なスペーサ41,42が選択され、使用される。
【0062】
図5に示すように、ばね部材43は、扁平な略円筒形状を有する。図4に示すように、ばね部材43は、当該ばね部材43の軸心がヘッド軸心10aに沿うようにかつスペーサ42に当接するように、第2の筐体部12内に設けられている。また、ばね部材43は、スペーサ41,42と同じかまたはほぼ同じ外径を有する。さらに、ばね部材43は、弾性力により当該ばね部材43の軸心方向に伸縮可能に構成されている。ばね部材43の詳細は後述する。
【0063】
レンズ222は、ばね部材43に当接するように、第2の筐体部12内に設けられている。また、レンズ222の+x方向には、スペーサ44を挟んでレンズ223が設けられている。さらに、レンズ223の+x方向には、スペーサ45を挟んでレンズ224が設けられている。
【0064】
3つのレンズ222,223,224の各々は、スペーサ41,42およびばね部材43と同じかまたはほぼ同じ外径を有する。スペーサ44,45の各々は、一定の厚みを有する円環状部材であり、スペーサ41,42およびばね部材43と同じかまたはほぼ同じ外径を有する。
【0065】
第2の筐体部12の第3の内周面12iのうち、前端部FEから-x方向に一定幅の範囲には、ねじ切り加工が施されている。すなわち、第2の筐体部12は、第3の内周面12iの一部が雌ねじ部分12jを構成する。雌ねじ部分12jは、ヘッド筐体10内に複数の構成要素(41~45,221~224)が互いに接するように収容された状態で、レンズ224の近傍に位置するように形成されている。
【0066】
リングねじ46は、第2の筐体部12の雌ねじ部分12jに対応する雄ねじである。ヘッド筐体10内に複数の構成要素(41~45,221~224)が互いに接するように収容された状態で、リングねじ46が第2の筐体部12の雌ねじ部分12jに取り付けられる。リングねじ46の内径は、レンズ224の外径よりも小さい。そのため、リングねじ46を雌ねじ部分12jに取り付ける際には、リングねじ46の一部がレンズ224の+x方向を向く端面の一部(周縁部)に当接する。また、リングねじ46は、レンズ224に当接した状態で、ばね部材43にx方向の負荷が所定量作用するように締め込まれる。
【0067】
ここで、ばね部材43の構成および機能について詳細を説明する。図6は、ヘッド筐体10内に収容されるばね部材43の構成および機能の詳細を説明するための図である。上記のように、ばね部材43は、扁平な略円柱形状を有する。図6(a)に、ばね部材43の外観斜視図が示される。ばね部材43は、その軸心caの方向に並ぶベース部43a、径小部43bおよびフランジ部43cから構成される。
【0068】
ベース部43aおよびフランジ部43cは、第2の筐体部12の第3の内周面12iよりもわずかに小さい共通の外径を有する。一方、径小部43bは、ベース部43aおよびフランジ部43cの外径に比べて小さい外径(2/3程度の外径)を有する。また、ベース部43a、径小部43bおよびフランジ部43cは、略一定の内径を有する。さらに、フランジ部43cの周縁部は、ベース部43aと反対の方向に突出するように形成されている。
【0069】
このような構成により、フランジ部43cおよびベース部43a間に軸心caの方向の負荷が作用する場合には、径小部43bおよびフランジ部43cが弾性変形し、ばね部材43の軸心caの方向の長さが変化する。以下の説明では、ばね部材43に軸心ca方向の負荷が作用しないかまたはほぼ作用しないときのばね部材43の状態を基準状態と呼ぶ。
【0070】
測定ヘッド1Aが高温環境下に配置されることによりヘッド筐体10に熱膨張が生じると、ヘッド筐体10内に収容される複数のレンズ221~224が意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれる可能性がある。そこで、本実施の形態では、測定ヘッド1Aが常温(例えば、25℃)にある状態で、ばね部材43にx方向の負荷が所定量作用するように、リングねじ46が締め込まれる。すなわち、ばね部材43は、常温環境下で、当該ばね部材43の弾性力により複数のレンズ221~224をx方向に付勢するように設けられる。
【0071】
図6(b),(c)に、ばね部材43の機能を説明するための一構成例が示される。図6(b)に示すように、例えば常温環境下にあるヘッド筐体10の第3の内周面12iにおいて、x方向で互いに異なる第1の部分p1および第2の部分p2にそれぞれ第1のリング部材r1および第2のリング部材r2が固定される場合を想定する。さらに、第1のリング部材r1および第2のリング部材r2の間で、ばね部材43およびレンズ222がこの順で+x方向に並ぶように配置される場合を想定する。
【0072】
ここで、x方向における第1の部分p1および第2の部分p2間の距離D11は、ばね部材43にx方向の負荷が所定量作用するように設定されている。換言すれば、距離D11は、ばね部材43が、第1の部分p1および第2の部分p2間でレンズ222を第2のリング部材r2に向かって付勢するように設定されている。これにより、図6(b)に示されるばね部材43は、径小部43bおよびフランジ部43cが変形することにより、基準状態に対してx方向に縮んでいる。
【0073】
図6(b)のヘッド筐体10を含む構成が、常温環境下から高温環境下に配置される場合を想定する。この場合、図6(c)に示すように、第1の部分p1および第2の部分p2間の距離D12は、ヘッド筐体10の熱膨張により、常温環境に対応する距離D11に比べて大きくなる。このとき、常温環境下で基準状態よりも縮んだ状態にあるばね部材43は、レンズ222を第2のリング部材r2に向かって継続して付勢し、レンズ222を第2のリング部材r2に押し当てる。これにより、ヘッド筐体10内に設けられるレンズ222が、意図しない姿勢で意図しない位置にずれることが防止される。
【0074】
図7は、ばね部材43の機能を説明するための参考例を示す図である。図7(a)に示すように、常温環境下にあるヘッド筐体10内で、ばね部材43を用いることなく、レンズ222が第1のリング部材r1および第2のリング部材r2により挟み込まれた状態で固定される場合を想定する。
【0075】
このような構成が常温環境下から高温環境下に配置される場合には、図7(b)に示すように、ヘッド筐体10の熱膨張により第1のリング部材r1および第2のリング部材r2間の距離が大きくなる。そのため、レンズ222の線膨張係数がヘッド筐体10の線膨張係数よりも小さい場合、レンズ222と第1のリング部材r1および第2のリング部材r2の少なくとも一方との間に隙間が生じる。それにより、レンズ222が意図しない姿勢で意図しない位置にずれる可能性がある。
【0076】
以上の点を考慮して、ばね部材43は、リングねじ46の締め込み量に応じて、常温環境下で基準状態よりもx方向に縮んだ状態でヘッド筐体10内に保持される。この場合、ばね部材43は、レンズ222~224をリングねじ46に向けて+x方向に付勢する。また、ばね部材43は、レンズ221を第1の段差部st1に向けて-x方向に付勢する。このように、ばね部材43は、測定ヘッド1Aが配置される温度環境の変化に伴ってヘッド筐体10内で複数のレンズ221~224が遊動状態になることを防止する部材として機能する。
【0077】
<5>ヘッド筐体10内におけるばね部材43の好ましい配置条件
(a)ヘッド筐体10内におけるばね部材43の好ましい配置条件として、第1の配置条件を説明する。図8は、ヘッド筐体10内におけるばね部材43の第1の配置条件を説明するための図である。図8では、図4に対応する測定ヘッド1Aの断面図とともに、ヘッド筐体10を通る光の経路の外縁が点線により示される。図8によれば、ばね部材43は、光ファイバ319からヘッド筐体10内に導かれる光が当該ばね部材43の内側を通過するように設けられていることがわかる。
【0078】
上記の測定ヘッド1Aにおいては、ヘッド筐体10内に収容される複数のレンズ221~224は、合成された一の光学系(以下、合成光学系と呼ぶ。)とみなすことができる。ばね部材43の第1の配置条件は、図8に示すように、ヘッド筐体10内で+x方向に光が進行するときに合成光学系に定義される主点ppよりも後端部REに近い位置に、ばね部材43が配置されることである。
【0079】
ヘッド筐体10の内部空間における主点ppよりも後端部REに近い領域では、当該ヘッド筐体10内を進行する光の断面積が光ファイバ319のコア319aのサイズから+x方向に漸次拡大される。したがって、ばね部材43が第1の配置条件に従って設けられる場合、ヘッド筐体10のサイズが制限される場合でも、ヘッド筐体10の内部で光の経路に干渉しないようにばね部材43を配置することが容易である。また、ばね部材43を後端部REに近づけることができるので、ヘッド筐体10のx方向の大型化が低減される。
【0080】
(b)ヘッド筐体10内におけるばね部材43の好ましい配置条件として、第2の配置条件を説明する。測定ヘッド1Aが備える複数のレンズ221~224の一部は、ばね部材43の内径よりも大きい有効径を有する。具体的には、複数のレンズ221~224のうちレンズ222~224は、ばね部材43の内径よりも大きい有効径を有する。一方、レンズ221はばね部材43の内径よりも小さい有効径を有する。
【0081】
このような構成において、ばね部材43の第2の配置条件は、ばね部材43の内径よりも大きい有効径を有するレンズ222~224よりも後端部REに近い位置に、ばね部材43が配置されることである。ばね部材43が第2の配置条件に従って設けられる場合、ヘッド筐体10のサイズが制限される場合でも、ヘッド筐体10の内部で光の経路に干渉しないようにばね部材43を配置することが容易である。また、ばね部材43を後端部REに近づけることができるので、ヘッド筐体10のx方向の大型化が低減される。
【0082】
(c)ヘッド筐体10内におけるばね部材43の好ましい配置条件として、第3の配置条件を説明する。測定ヘッド1Aが備える複数のレンズ221~224のうちレンズ221は、拡大レンズであり、光ファイバ319から導かれた光を当該光の断面積を拡大させつつ+x方向に進行させる。このように、ヘッド筐体10内で、複数のレンズ221~224のうち少なくとも一のレンズにより+x方向に進行する光の断面積が漸次拡大する領域を光拡大領域と呼ぶ。この場合、ばね部材43の第3の配置条件は、ばね部材43が光拡大領域に配置されることである。
【0083】
上記の構成によれば、ヘッド筐体10のサイズが制限される場合でも、ヘッド筐体10の内部で光の経路に干渉しないようにばね部材43を配置することが容易である。また、ヘッド筐体10の内部の光拡大領域を後端部REに近づけることによりヘッド筐体10のx方向の大型化が低減される。
【0084】
<6>接着剤
図5に示すように、測定ヘッド1Aの組み立て時には、基本的に、ヘッド筐体10の内部に複数の構成要素(41~45,221~224)が収容された状態で前端部FEからリングねじ46が取り付けられる。またヘッド筐体10の後端部REにファイバレセプタクル30が複数のねじSC1を用いて接続される。
【0085】
ここで、本実施の形態に係る測定ヘッド1Aにおいては、ねじの締結部分の固定状態をより強固にするために、無機材料からなる接着剤が用いられる。接着剤の無機材料は、例えばセラミック粉体である。
【0086】
具体的には、本実施の形態では、図4に一点鎖線の矩形枠ad1で示すように、第2の筐体部12の雌ねじ部分12jにリングねじ46を取り付ける際に、リングねじ46と雌ねじ部分12jとの間に無機材料からなる接着剤が塗布される。この場合、接着剤に有機材料が含まれないので、測定ヘッド1Aが真空環境下に配置されても、接着剤からアウトガスが発生することが抑制される。それにより、接着剤に起因する真空度の低下が抑制される。
【0087】
図9は、測定ヘッド1Aを図2および図3の二点鎖線で示される仮想面VS2により切断した断面図である。図9の断面図では、ヘッド筐体10の後端部REに、複数のねじSC1を用いてファイバレセプタクル30が取り付けられる状態が示される。
【0088】
本実施の形態では、図9に一点鎖線の矩形枠ad2で示すように、ヘッド筐体10にファイバレセプタクル30をねじ止めする際に、ねじSC1とねじ孔h3との間に無機材料からなる接着剤が塗布される。この場合、接着剤に有機材料が含まれないので、測定ヘッド1Aが真空環境下に配置されても、接着剤からアウトガスが発生することが抑制される。それにより、接着剤に起因する真空度の低下が抑制される。
【0089】
上記のように、測定ヘッド1Aの組み立てに無機材料からなる接着剤を用いる場合、接着剤は、露出しないように塗布されることが好ましい。これにより、セラミック等の無機材料の粉末が測定ヘッド1Aの周りに飛散することが抑制される。
【0090】
3.光屈曲ユニットおよび距離調整部材
測定ヘッド1A,1Bの各々は、ヘッド筐体10に着脱可能に構成されかつヘッド筐体10から出射される光の進行方向を所定角度(本例では90°)変更する光屈曲ユニットをさらに備えてもよい。また、測定ヘッド1A,1Bの各々は、光屈曲ユニットが取り付けられた場合の測定ヘッド1A,1Bによる変位の測定可能な範囲を調整する複数の距離調整部材をさらに備えてもよい。
【0091】
図10は、光屈曲ユニットおよび複数の距離調整部材の外観斜視図である。図10では、光屈曲ユニット50の分解斜視図および複数(本例では2つ)の距離調整部材60の外観斜視図とともに、図2の測定ヘッド1Aの外観斜視図が示される。さらに、図10では、光屈曲ユニット50の模式的縦断面図および模式的端面図が吹き出し内に示される。
【0092】
図10に示すように、光屈曲ユニット50は、本体部MB、ミラー54、板ばね55および固定板56を含む。ミラー54は板ばね55に貼り付けられている。それにより、ミラー54および板ばね55は、光屈曲ユニット50の組み立て時に一体的に取り扱うことができる。なお、図10の外観斜視図では、ミラー54および板ばね55の形状および位置関係が理解しやすいように、ミラー54および板ばね55が互いに分離した状態で示される。本体部MBは、後端面51、前端傾斜面52および出射面53を有する。後端面51は、ヘッド筐体10の前端部FEに接触可能に形成されている。前端傾斜面52は、後端面51の+x方向の位置で後端面51に対向するとともに、後端面51に対して45°傾斜している。出射面53は、後端面51に対して直交する。
【0093】
図10の吹き出し内に示すように、光屈曲ユニット50においては、後端面51、前端傾斜面52および出射面53により、略三角形の縦断面が形成される。後端面51、前端傾斜面52および出射面53には、それぞれ開口部51a,52a,53aが形成されている。
【0094】
前端傾斜面52には、開口部52aを覆うようにミラー54が設けられる。固定板56は、金属製の板状部材であり、その一面には、2つの突起56aが形成されている。ミラー54の+x方向に板ばね55が位置し、2つの突起56aが-x方向を向くように、固定板56が図示しないねじを用いて前端傾斜面52に取り付けられる。ここで、板ばね55には、-z方向および+z方向に延びる2つの被押圧部が形成されている。また、固定板56の2つの突起56aは、板ばね55の2つの被押圧部に対応するように形成されている。そのため、固定板56が前端傾斜面52に取り付けられた状態で、板ばね55の2つの被押圧部は、固定板56の2つの突起56aによりミラー54に近づくように押圧される。それにより、ミラー54は、板ばね55により前端傾斜面52に向けて付勢された状態で保持される。
【0095】
光屈曲ユニット50の本体部MBには、ヘッド筐体10の前端部FEの4つのねじ孔h2(図2)にそれぞれ対応する4つの貫通孔57が形成されている。それにより、光屈曲ユニット50は、本体部MBの4つの貫通孔57を通してヘッド筐体10の4つのねじ孔h2に、4つのねじSC2をそれぞれ挿入し、各ねじSC2を締め込むことにより、ヘッド筐体10に容易に取り付けることができる。
【0096】
なお、ヘッド筐体10への光屈曲ユニット50の取り付けは、3つまたは2つのねじSC2を用いて行われてもよい。例えば、ヘッド軸心10aを挟んで対角に配置されたヘッド筐体10の2つのねじ孔h2に、光屈曲ユニット50の2つの貫通孔57を通して2つのねじSC2を挿入する。これにより、光屈曲ユニット50がヘッド筐体10に取り付けられてもよい。
【0097】
光屈曲ユニット50がヘッド筐体10に取り付けられた状態で、ヘッド筐体10の内部から前端部FEの開口部を通して出射される光は、本体部MBの開口部51a,52aを通してミラー54に入射する。そこで、ミラー54に入射する光は、ミラー54で反射されることにより90°折り曲げられ、本体部MBの開口部53aを通して測定ヘッド1Aの側方(ヘッド軸心10aに直交する方向)に向かって進行する。これにより、図10の光屈曲ユニット50によれば、ヘッド筐体10の姿勢に対する測定対象物Sの測定方向を90°変更することができる。
【0098】
測定ヘッド1Aにおけるヘッド筐体10の前端部FEから測定対象物Sの変位を測定可能な範囲(以下、測定範囲と呼ぶ。)は、ヘッド筐体10内に収容されるレンズ221~224によって定まる。そのため、ヘッド筐体10に光屈曲ユニット50が取り付けられたときの光屈曲ユニット50の出射面53からの測定範囲は、ヘッド筐体10と光屈曲ユニット50との間の距離を調整することにより適宜変更することができる。そこで、複数の距離調整部材60を用いる。
【0099】
複数の距離調整部材60の各々は、後端面および前端面を有する。後端面および前端面は、ヘッド筐体10の前端部FEに対応する略矩形状(本例では略正方形状)を有する。距離調整部材60の後端面は、ヘッド筐体10の前端部FEに接触可能に形成されている。距離調整部材60の前端面は、光屈曲ユニット50の後端面51に接触可能に形成されている。
【0100】
距離調整部材60の中央部には、前端面から後端面にかけて、ヘッド筐体10から出射される光を通過させる開口が形成されている。また、x方向に見た距離調整部材60の前端面の四隅には、中央部の開口を取り囲むように、2つの貫通孔61および2つのねじ孔62が形成されている。2つの貫通孔61は中央部の開口を挟んだ一方の対角位置にあり、2つのねじ孔62は中央部の開口を挟んだ他方の対角位置にある。
【0101】
一の距離調整部材60の2つの貫通孔61は、当該2つの貫通孔61を通してヘッド筐体10の2つのねじ孔h2に2つのねじSC3を挿入し、一の距離調整部材60をヘッド筐体10にねじ止めするために用いられる。あるいは、一の距離調整部材60の2つの貫通孔61は、当該2つの貫通孔61を通して他の距離調整部材60の2つのねじ孔62に2つのねじSC3を挿入し、一の距離調整部材60を他の距離調整部材60にねじ止めするために用いられる。
【0102】
一の距離調整部材60の2つのねじ孔62は、上記のように、当該一の距離調整部材60の前端面上に他の距離調整部材60を2つのねじSC3でねじ止めするために用いられる。あるいは、一の距離調整部材60の2つのねじ孔62は、光屈曲ユニット50の2つの貫通孔57を通して2つのねじSC2が挿入されることにより、光屈曲ユニット50を当該一の距離調整部材60にねじ止めするために用いられる。
【0103】
上記のように、距離調整部材60は、ヘッド筐体10に対する光屈曲ユニット50の取り付け時に、ヘッド筐体10と光屈曲ユニット50との間に挿入可能となっている。
【0104】
図11は、図10の光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60による測定ヘッド1Aの測定方向および測定可能範囲の変化を示す図である。図11(a)には、光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60が取り付けられない状態で、ヘッド筐体10から出射される一の波長の光(以下、特定波長光と呼ぶ。)の経路が点線で示される。図11(a)の例によれば、ヘッド筐体10から出射される特定波長光は、ヘッド軸心10aに沿って進行する。したがって、変位の測定方向は、ヘッド軸心10aの方向に一致する。
【0105】
図11(b)には、光屈曲ユニット50が取り付けられた状態で、ヘッド筐体10から出射される特定波長光の経路が点線で示される。図11(b)の例によれば、ヘッド筐体10から出射される特定波長光は、光屈曲ユニット50によりヘッド軸心10aから90°屈曲した方向に進行する。したがって、変位の測定方向は、ヘッド軸心10aに直交する。また、図11(b)の例では、光屈曲ユニット50の出射面53から出射される特定波長光は、距離D1離間した位置で合焦している。
【0106】
図11(c)には、光屈曲ユニット50および1つの距離調整部材60が取り付けられた状態で、ヘッド筐体10から出射される特定波長光の経路が点線で示される。図11(c)の例によれば、光屈曲ユニット50の出射面53から出射される特定波長光は、図11(b)の距離D1よりも短い距離D2離間した位置で合焦している。
【0107】
図11(d)には、光屈曲ユニット50および2つの距離調整部材60が取り付けられた状態で、ヘッド筐体10から出射される特定波長光の経路が点線で示される。図11(d)の例によれば、光屈曲ユニット50の出射面53から出射される特定波長光は、図11(c)の距離D2よりもさらに短い距離D3離間した位置で合焦している。
【0108】
このように、光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60によれば、測定対象物Sの変位を測定する際の測定ヘッド1Aの位置および姿勢の自由度が拡大される。
【0109】
なお、上記の光屈曲ユニット50においては、ミラー54として、ガラスの一面にアルミが蒸着されたミラーが用いられる。それにより、光屈曲ユニット50の全ての構成要素が金属またはガラスで形成される。また、距離調整部材60は、ヘッド筐体10と同じ金属製の単一部材で構成される。これらの場合、光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60は有機物を含まない。したがって、ヘッド筐体10に光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60のいずれかが取り付けられた状態で測定ヘッド1Aが真空環境下に配置された場合でも、測定ヘッド1Aからのアウトガスの発生が防止される。また、光屈曲ユニット50および複数の距離調整部材60に起因する真空度の低下が抑制される。
【0110】
4.効果
(a)測定ヘッド1A,1Bのヘッド筐体10内では、第1の段差部st1とリングねじ46との間に、複数のレンズ221,222,223,224が並ぶように収容されている。2つのレンズ221,222の間にばね部材43が設けられている。
【0111】
レンズ224は、リングねじ46に当接することにより+x方向への移動が規制されている。この状態で、レンズ222,223,224がばね部材43により+x方向に付勢されている。一方、レンズ221は、第1の段差部st1に当接することにより-x方向への移動が規制されている。この状態で、レンズ221がばね部材43により-x方向に付勢されている。
【0112】
この構成によれば、測定ヘッド1Aが高温環境下に配置されることにより測定ヘッド1A,1Bの各構成要素の寸法が熱膨張により変化する場合でも、複数のレンズ221~224の各々は移動が規制された方向に向かって付勢される。それにより、各レンズ221~224は、ヘッド筐体10の内部における予め定められた部分に固定され、遊動状態にならない。したがって、測定ヘッド1A,1Bが高温環境下に配置されるごとに、各レンズが意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれることが防止される。
【0113】
また、上記の測定ヘッド1A,1Bにおいては、ヘッド筐体10、スペーサ41,42,44,45、ばね部材43、リングねじ46およびファイバレセプタクル30が同じ金属材料で形成されている。さらに、複数のレンズ221~224がガラスで形成されている。これにより、ヘッド筐体10、スペーサ41,42,44,45、ばね部材43、リングねじ46、ファイバレセプタクル30および複数のレンズ221~224のいずれかが樹脂等の有機材料で形成される場合に比べて、測定ヘッド1A,1Bの耐熱性が向上する。また、金属およびガラスで形成された部材の温度変化に伴う変形の程度は、樹脂に比べて把握しやすい。したがって、温度変化を考慮した測定値の補正等も容易である。
【0114】
これらの結果、本実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bによれば、共焦点変位計9の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0115】
(b)また、上記のように、本実施の形態では、一のばね部材43が4つのレンズ221~224を付勢するための共通の部材として用いられている。これにより、4つのレンズ221~224をそれぞれ付勢するために4つの付勢部材が個別に設けられる場合に比べて、測定ヘッド1A,1Bの部品点数の増加および大型化が抑制されている。
【0116】
(c)さらに、上記の構成によれば、測定ヘッド1A,1Bの各構成要素の材料が、基本的に有機材料を含まない。それにより、測定ヘッド1A,1Bが真空環境下に配置される場合でも、当該測定ヘッド1A,1Bからアウトガスが発生しにくい。そのため、測定ヘッド1A,1Bが真空環境下に配置される場合に、測定ヘッド1A,1Bからのアウトガスに起因して当該真空環境の真空度が低下することが抑制される。したがって、共焦点変位計9の真空環境下における測定の信頼性の低下も抑制される。
【0117】
(d)ヘッド筐体10においては、第1の筐体部11に切り欠き11x,11yが形成されるとともに、測定ヘッド1A,1Bを所望の部分に取り付けるための複数の貫通孔h1が形成されている。
【0118】
上記の測定ヘッド1A,1Bにおいては、第1の筐体部11の内部を進行する光の断面は、第2の筐体部12の内部を進行する光の断面に比べて小さい。それにより、測定ヘッド1A,1Bを所望の部分に取り付けるための構造を第2の筐体部12に設ける場合に比べて、測定ヘッド1A,1Bの大型化が抑制される。
【0119】
(e)測定ヘッド1A,1Bにおいては、ヘッド筐体10、スペーサ41,42,44,45、ばね部材43、リングねじ46およびファイバレセプタクル30がステンレス鋼(SUS304、SUS316、SUS316LまたはSUS303)で形成されている。ステンレス鋼は、真空環境下でアウトガスが極めて発生しにくい。これにより、測定ヘッド1A,1Bが真空環境下に配置される場合でも、測定ヘッド1Aからアウトガスがより発生しにくい。したがって、測定ヘッド1A,1Bが真空環境下に配置される場合に、測定ヘッド1A,1Bの構成部材に起因する真空度の低下が抑制される。
【0120】
5.他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bの各々においては、複数のレンズ221~224の各々をx方向に付勢するために、ヘッド筐体10内にばね部材43が収容されるが、本発明はこれに限定されない。
【0121】
図12は、他の実施の形態に係る測定ヘッド1Aの一例を示す断面図である。図12の断面図は、上記実施の形態の図4の断面図に対応する。以下、図12の測定ヘッド1Aについて、上記実施の形態に係る測定ヘッド1Aと異なる点を説明する。
【0122】
図12の測定ヘッド1Aにおいては、ヘッド筐体10内に上記実施の形態に係るばね部材43に代えて、略円筒形状を有する熱膨張部材49が設けられている。熱膨張部材49は、比較的高い耐熱性を有するポリイミド樹脂からなる。
【0123】
熱膨張部材49は、その熱膨張部材49の軸心がx方向に延びるように設けられている。常温環境下で、熱膨張部材49のx方向の両端部は、スペーサ42の一部およびレンズ222の一部にそれぞれ接触している。
【0124】
ポリイミドの線膨張係数は、金属の線膨張係数よりも大きい。そのため、上記の測定ヘッド1Aにおいては、当該測定ヘッド1Aの各構成要素の寸法が熱膨張により変化する場合、熱膨張部材49は複数のレンズ221~224およびヘッド筐体10に比べてより大きく膨張する。これにより、測定ヘッド1Aが高温環境下に配置されると、複数のレンズ221~224の各々は、膨張する熱膨張部材49により、移動が規制された方向に向かって付勢される。それにより、上記実施の形態の例と同様に、各レンズ221~224は、ヘッド筐体10の内部における予め定められた部分に固定され、遊動状態にならない。したがって、測定ヘッド1A,1Bが高温環境下に配置されるごとに、各レンズが意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれることが防止される。
【0125】
これらの結果、熱膨張部材に用いるポリイミドとして耐熱性の高いポリイミドを用いることにより、共焦点変位計9の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0126】
(b)上記実施の形態に係るヘッド筐体10内には4つのレンズ221~224が設けられるが、本発明はこれに限定されない。測定対象物Sの変位測定が可能であれば、ヘッド筐体10内には、2つのレンズのみが設けられてもよいし、3つのレンズのみが設けられてもよいし、5以上のレンズが設けられてもよい。
【0127】
(c)上記実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bにおいては、複数のレンズ221~224をx方向に付勢する部材として一のばね部材43が用いられるが、本発明はこれに限定されない。ヘッド筐体10内には、複数のレンズ221~224にそれぞれ対応するように複数のばね部材が設けられ、各レンズが対応するばね部材によりx方向に付勢されてもよい。
【0128】
(d)上記実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bにおいては、ヘッド筐体10内の第1の段差部st1がレンズ221の-x方向への移動を規制するが、本発明はこれに限定されない。レンズ221の-x方向への移動を規制する構成として、リングねじを用いた構成が採用されてもよい。この場合、ヘッド筐体10の内部に第1の段差部st1および第2の段差部st2は形成されなくてもよい。また、レンズ221は、リングねじに当接して当該リングねじの内部を通過しないように形成されていればよい。そのため、レンズ221は、リングねじの内径よりも大きい外形を有すればよく、他のレンズ222,223,224と同じ外径を有してもよい。
【0129】
(e)上記実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bにおいては、ヘッド筐体10内に収容される複数のレンズ221~224の各2つのレンズ間にスペーサ41,42,44,45が設けられているが、本発明はこれに限定されない。複数のレンズ221~224のいずれか2つのレンズの間にスペーサが設けられなくてもよい。
【0130】
(f)上記実施の形態に係る測定ヘッド1A,1Bにおいては、ばね部材43は、ヘッド筐体10内で複数のレンズ(221~224)よりも+x方向の位置に設けられてもよいし、複数のレンズ(221~224)よりも-x方向の位置に設けられてもよい。
【0131】
6.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0132】
上記実施の形態においては、投光部120が有する白色光源が白色光源の例であり、共焦点変位計9が共焦点変位計の例であり、測定ヘッド1A,1Bが測定ヘッドの例であり、ヘッド筐体10の後端部REが第1の端部の例であり、ヘッド筐体10の前端部FEが第2の端部の例であり、ヘッド筐体10が筐体の例であり、導光部300A,300Bの光ファイバ319が光ファイバの例である。
【0133】
また、レンズ224が第1のレンズの例であり、ヘッド軸心10aが筐体の軸心の例であり、レンズ221~224が複数のレンズの例であり、第3の内周面12iの雌ねじ部分12jが第1の部分の例であり、+x方向が第1の方向の例であり、-x方向が第2の方向の例であり、リングねじ46が第1の移動規制部および規制部材の例であり、ばね部材43が付勢部材の例である。
【0134】
また、スペーサ41,42,44,45が1または複数のスペーサの例であり、レンズ221が第2のレンズの例であり、ヘッド筐体10における第1の段差部st1が第2の部分および第2の移動規制部の例であり、第2の筐体部12の第3の内周面12iが筐体の内周面の例であり、合成光学系の主点ppが主点の例であり、外面11a,11b,11c,11d,12a,12b,12c,12dが外面の例である。
【0135】
また、第1の筐体部11が第1の筐体部の例であり、第2の筐体部12が第2の筐体部の例であり、第1の内周面11i、第2の内周面11jおよび第3の内周面12iが筐体の内周面の例であり、第1の筐体部11における複数の貫通孔h1の形成部分が取付部の例であり、光屈曲ユニット50が光屈曲ユニットの例であり、距離調整部材60が距離調整部材の例である。
【0136】
また、ファイバレセプタクル30がファイバ接続部材の例であり、ねじSC1がねじの例であり、熱膨張部材49が熱膨張部材の例であり、測定ユニット100A,100Bが変位測定部の例である。
【0137】
7.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る測定ヘッドは、
白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、
筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、
前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、
第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、
前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、
前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズを前記一の方向に向かって弾性力により付勢する金属製の付勢部材とを備える。
【0138】
その測定ヘッドにおいては、筒状の筐体の内部に第1のレンズを含む複数のレンズが並ぶように収容される。第1のレンズは、第1の移動規制部に当接することにより第1の方向および第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することが規制される。第1のレンズが第1の移動規制部に当接する状態で、複数のレンズのうち第1のレンズを含む一部または全てのレンズが、付勢部材により一の方向に付勢される。
【0139】
この場合、測定ヘッドが高温環境下に配置されることにより測定ヘッドを構成する各構成要素の寸法が熱膨張により変化する場合でも、複数のレンズのうち第1のレンズを含む一部または全てのレンズは、一の方向への移動が規制される。すなわち、付勢部材により付勢される各レンズは、筐体の内部における予め定められた部分に固定され、遊動状態にならない。したがって、測定ヘッドが高温環境下に配置されるごとに、各レンズが意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれることが防止される。
【0140】
また、その測定ヘッドにおいては、筐体および付勢部材が金属で形成され、複数のレンズがガラスで形成されている。これにより、筐体、付勢部材および複数のレンズのいずれかが有機材料で形成される場合に比べて、測定ヘッドの耐熱性が向上する。また、金属およびガラスで形成された部材の温度変化に伴う変形の程度は、樹脂に比べて把握しやすい。したがって、温度変化を考慮した測定値の補正等も容易である。
【0141】
これらの結果、共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0142】
さらに、上記の構成によれば、筐体および付勢部材が金属で形成され、複数のレンズがガラスで形成されているので、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合でも、筐体、付勢部材およびレンズからアウトガスが発生しにくい。そのため、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合に、筐体、付勢部材およびレンズに起因して当該真空環境の真空度が低下することが抑制される。したがって、共焦点変位計の真空環境下における測定の信頼性の低下も抑制することが可能になる。
【0143】
(第2項)第1項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記測定ヘッドは、
前記筐体の前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容される金属製の1または複数のスペーサをさらに備え、
前記1または複数のスペーサの各々は、前記複数のレンズのうち前記軸心方向に隣り合う2つのレンズの間に設けられてもよい。
【0144】
この場合、スペーサが有機材料で形成される場合に比べて、測定ヘッドの耐熱性が向上する。また、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合でも、スペーサからのアウトガスの発生が防止され、スペーサに起因する真空度の低下が抑制される。
【0145】
(第3項)第1項または第2項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記第1の移動規制部は、前記第1のレンズに当接することにより前記第1のレンズが前記第1の方向に移動することを規制し、
前記複数のレンズは、前記筐体内で前記第1のレンズと前記第2の端部との間に配置される第2のレンズを含み、
前記測定ヘッドは、
前記筐体の内部における前記第1の部分と前記第2の端部との間に位置する第2の部分に設けられ、前記複数のレンズのうち前記第2のレンズに当接することにより前記第2のレンズが前記第2の方向に移動することを規制する第2の移動規制部をさらに備え、
前記付勢部材は、
前記筐体内で前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に設けられ、
前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接しかつ前記第2のレンズが前記第2の移動規制部に当接する状態で、前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部のレンズを前記第1の方向に向かって弾性力により付勢するとともに前記複数のレンズのうち前記第2のレンズを含む残りのレンズを前記第2の方向に向かって弾性力により付勢してもよい。
【0146】
この場合、測定ヘッドが高温環境下に配置されることにより測定ヘッドを構成する各構成要素の寸法が熱膨張により変化する場合でも、複数のレンズのうち第1のレンズを含む一部のレンズは、第1の方向への移動が規制される。また、複数のレンズのうち第2のレンズを含む残りのレンズは、第2の方向への移動が規制される。そのため、複数のレンズの全てが、筐体の内部における予め定められた部分に固定され、遊動状態にならない。したがって、測定ヘッドが高温環境下に配置されるごとに、全てのレンズの各々が意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれることが防止される。
【0147】
また、上記の構成では、第1のレンズを含む一部のレンズと第2のレンズを含む残りのレンズとの間に付勢部材が配置されるので、複数のレンズを付勢するために複数の付勢部材を個別に用意する必要がない。したがって、測定ヘッドの部品点数の増加および大型化が抑制される。
【0148】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、前記筐体内で前記第1の方向に光が進行するときに前記複数のレンズが合成された光学系に定義される主点よりも前記第1の端部に近い位置に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過してもよい。
【0149】
筐体内部における主点よりも第1の端部に近い領域の少なくとも一部では、第1の端部から筐体の内部を進行する光の断面積が光ファイバのサイズから第1の方向に漸次拡大される。したがって、上記の構成によれば、筐体のサイズが制限される場合でも、筐体の内部で光の経路に干渉しないように付勢部材を配置することが容易である。また、付勢部材を第1の端部に近づけることができるので、筐体の軸心方向の大型化が低減される。
【0150】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、
前記複数のレンズの一部は、前記付勢部材の内径よりも大きい有効径を有し、
前記付勢部材は、前記筐体の内部で前記複数のレンズの一部よりも前記第1の端部に近い位置に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過してもよい。
【0151】
上記の構成によれば、筐体のサイズが制限される場合でも、筐体の内部で光の経路に干渉しないように付勢部材を配置することが容易である。また、付勢部材を第1の端部に近づけることができるので、筐体の軸心方向の大型化が低減される。
【0152】
(第6項)第3項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体は、前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記複数のレンズは、前記筐体の内部の一部領域で前記第1の端部に導かれた光を当該光の断面積を拡大させつつ前記第1の方向に進行させるように配置され、
前記付勢部材は、前記筐体の前記軸心方向に一定距離延びる筒状に形成され、前記筐体内の前記一部領域に配置され、
前記筐体内を進行する光は、前記付勢部材の内側を通過してもよい。
【0153】
上記の構成によれば、筐体のサイズが制限される場合でも、筐体の内部で光の経路に干渉しないように付勢部材を配置することが容易である。また、筐体の内部の一部領域を第1の端部に近づけることにより筐体の軸心方向の大型化が低減される。
【0154】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体の少なくとも一部は、前記軸心方向に延びかつ矩形断面を有する角筒状の外面を有してもよい。
【0155】
この場合、筐体が円筒状の外周面を有する場合に比べて、測定ヘッドを所定の設置面上に設置しやすい。
【0156】
(第8項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体は、
前記第1の方向に順に並ぶ第1の筐体部および第2の筐体部を含み、
前記第1の筐体部から前記第2の筐体部にかけて前記軸心方向に延びる円筒状の内周面を有し、
前記第1の筐体部における前記内周面の内径は、前記第2の筐体部における前記内周面の内径よりも小さく、
前記複数のレンズは、前記第2の筐体部内に収容され、
前記第1の筐体部の外面に、前記測定ヘッドを他の部材に取り付けるための取付部が形成されてもよい。
【0157】
この場合、第2の筐体部に取付部を設ける場合に比べて、測定ヘッドの大型化を抑制することができる。
【0158】
(第9項)第1項~第8項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記測定ヘッドは、
前記第2の端部に着脱可能に構成され、前記第2の端部から出射される光を、前記軸心方向に対して交差する予め定められた方向に折り曲げる光屈曲ユニットをさらに備えてもよい。
【0159】
この場合、測定対象物の変位を測定する際の測定ヘッドの位置および姿勢の自由度が拡大される。
【0160】
(第10項)第9項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記測定ヘッドは、
前記第2の端部と前記光屈曲ユニットとの間に着脱可能に構成され、前記測定ヘッドと前記光屈曲ユニットとの間の距離を調整するための1または複数の距離調整部材をさらに備えてもよい。
【0161】
この場合、測定対象物の変位を測定する際の測定ヘッドの位置および姿勢の自由度が拡大される。
【0162】
(第11項)第1項~第10項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記筐体および前記付勢部材を構成する金属は、ステンレスであってもよい。
【0163】
この場合、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合でも、筐体および付勢部材からアウトガスがより発生しにくい。したがって、筐体および付勢部材に起因する真空度の低下が抑制される。
【0164】
(第12項)第1項~第11項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記第1の移動規制部は、前記筐体とは別体の規制部材が前記筐体の内部における前記第1の部分に接続されることにより構成され、
前記筐体と前記規制部材との接続部には、無機材料からなる接着剤が用いられてもよい。
【0165】
この場合、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合でも、接着剤に起因する真空度の低下が抑制される。
【0166】
(第13項)第1項~第12項のいずれか一項に記載の測定ヘッドにおいて、
前記測定ヘッドは、
前記光ファイバを前記筐体の前記第1の端部に接続するためのファイバ接続部材をさらに備え、
前記ファイバ接続部材は、前記筐体の前記第1の端部に、1または複数のねじを用いて接続され、
前記1または複数のねじの各々の締結部には、無機材料からなる接着剤が用いられてもよい。
【0167】
この場合、測定ヘッドが真空環境下に配置される場合でも、接着剤に起因する真空度の低下が抑制される。
【0168】
(第14項)第14項に係る測定ヘッドは、
白色光源を有する共焦点変位計用の測定ヘッドであって、
筒状に形成され、第1の端部および第2の端部を有する金属製の筐体と、
前記筐体の前記第1の端部に接続され、前記白色光源から発生される光を前記筐体の前記第1の端部に導く光ファイバと、
第1のレンズを含み、前記筐体の軸心方向に並ぶようにかつ前記軸心方向に移動可能に前記筐体の内部に収容され、前記光ファイバにより前記第1の端部に導かれた光に光軸に沿った色収差を発生させつつ前記第2の端部を通して測定対象物に収束させるガラス製の複数のレンズと、
前記筐体の内部における予め定められた第1の部分に設けられ、前記第1のレンズが当接することにより前記第1のレンズが前記軸心方向のうち前記第1の端部から前記第2の端部に向く第1の方向およびその反対の第2の方向のうちいずれか一の方向に移動することを規制する第1の移動規制部と、
前記筐体の内部で前記第1の移動規制部から前記軸心方向に離間した位置に設けられるポリイミド製の熱膨張部材とを備え、
前記複数のレンズのうち前記第1のレンズを含む一部または全てのレンズは、前記第1のレンズが前記第1の移動規制部に当接する状態で、前記第1の移動規制部と前記熱膨張部材との間に保持される。
【0169】
ポリイミドの線膨張係数は、金属の線膨張係数よりも大きい。そのため、上記の測定ヘッドにおいては、測定ヘッドを構成する各構成要素の寸法が熱膨張により変化する場合、熱膨張部材は複数のレンズおよび筐体に比べてより大きく膨張する。これにより、測定ヘッドが常温環境下から高温環境下に配置されると、複数のレンズのうち第1のレンズを含む一部または全てのレンズは、熱膨張部材により一の方向へ付勢されつつ一の方向への移動が規制される。したがって、測定ヘッドが高温環境下に配置されるごとに、各レンズが意図しない姿勢で意図しない位置に大きくずれることが防止される。
【0170】
また、その測定ヘッドにおいては、筐体が金属で形成され、複数のレンズがガラスで形成されている。したがって、熱膨張部材に用いるポリイミドとして耐熱性の高いポリイミドを用いることにより、測定ヘッドの耐熱性が向上する。
【0171】
これらの結果、共焦点変位計の高温環境下における測定の信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0172】
(第15項)第15項に係る共焦点変位計は、
第1項~第14項のいずれか一項に記載の測定ヘッドと、
前記測定ヘッドに導かれる光を発生する白色光源と、
前記測定ヘッドから測定対象物に照射され、前記測定対象物で反射された光に基づいて前記測定対象物の変位を算出する変位測定部とを備える。
【0173】
その共焦点変位計は、上記の測定ヘッドを備える。それにより、高温環境下における測定の信頼性の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0174】
1A,1B…測定ヘッド,2…制御ユニット,3a…CPU,3b…メモリ,4a…主表示部,4b…操作部,9…共焦点変位計,10…ヘッド筐体,10a…ヘッド軸心,11…第1の筐体部,11a,11b,11c,11d,12a,12b,12c,12d…外面,11i…第1の内周面,11j…第2の内周面,11x,11y…切り欠き,12…第2の筐体部,12i…第3の内周面,12j…雌ねじ部分,30…ファイバレセプタクル,41,42,44,45…スペーサ,41a…開口部,41b…貫通孔,43…ばね部材,43a…ベース部,43b…径小部,43c…フランジ部,46…リングねじ,49…熱膨張部材,50…光屈曲ユニット,51…後端面,51a,52a,53a…開口部,52…前端傾斜面,53…出射面,54…ミラー,55…板ばね,56…固定板,56a…突起,57,61,h1,h4…貫通孔,60…距離調整部材,62,h2,h3…ねじ孔,100A,100B…測定ユニット,110…ユニット筐体,120…投光部,130…分光部,131…回折格子,132,133,221,222,223,224…レンズ,140…受光部,150…測定制御部,190…副表示部,300A,300B…導光部,311,312,319…光ファイバ,319a…コア,319b…クラッド,319c…被覆層,319d…スパイラルチューブ,320…ファイバカプラ,321,322,323…ポート,324,MB…本体部,330…ファイバコネクタ,FE…前端部,RE…後端部,S…測定対象物,SC1,SC2,SC3…ねじ,VS1,VS2…仮想面,ad1,ad2…矩形枠,ca…軸心,p1…第1の部分,p2…第2の部分,pp…主点,r1…第1のリング部材,r2…第2のリング部材,st1…第1の段差部,st2…第2の段差部
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