(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025065718
(43)【公開日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ワーク自動交換装置およびワークの加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20250415BHJP
B23Q 7/10 20060101ALI20250415BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B23Q7/00 C
B23Q7/10
B23Q7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175110
(22)【出願日】2023-10-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.YouTube(JIMTOF 2022) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月2日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=1bGdPmseJo8&t=142s&ab_channel=MST_TOOLING 2.JIMTOF 2022 開催日 令和4年11月8日(火)~13日(日) 展示会名 JIMTOF 2022(第31回日本国際工作機械見本市) 3.YouTube(JIMTOF 2022のハイライト) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=_Zoc7-_ew5w&ab_channel=MST_TOOLING 4.YouTube(JIMTOF 2022のライブ配信動画) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月9日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=fRShNKik1oQ 5.自社ホームページでのJIMTOF 2022への出展紹介 ウェブサイトの掲載日 令和4年11月21日 ウェブサイトのアドレス https://www.mst-corp.co.jp/01tenji/11394/
(71)【出願人】
【識別番号】591286982
【氏名又は名称】株式会社MSTコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 春機
【テーマコード(参考)】
3C033
【Fターム(参考)】
3C033DD04
3C033HH05
3C033HH21
3C033MM01
(57)【要約】
【課題】コンパクトなスペースに設置可能なワーク自動交換装置を提供する。
【解決手段】複数のワークW
1,W
3が載置されるワークストッカ6と、ワークストッカ6と工作機械2との間でワークW
1,W
3の受け渡しを行なう多関節ロボットアーム7とを有するワーク自動交換装置1において、ワークストッカ6は、上下方向に延びる中空の囲い枠部8と、囲い枠部8の上端に設けられた天井部9とを有し、多関節ロボットアーム7は、天井部9から下方に延びるように天井部9に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(2)に隣接して配置され、複数のワーク(W1,W3)が載置されるワークストッカ(6)と、前記ワークストッカ(6)と前記工作機械(2)との間で前記ワーク(W1,W3)の受け渡しを行なう多関節ロボットアーム(7)とを有するワーク自動交換装置において、
前記ワークストッカ(6)は、上下方向に延びる中空の囲い枠部(8)と、前記囲い枠部(8)の上端に設けられた天井部(9)とを有し、
前記多関節ロボットアーム(7)は、前記天井部(9)から下方に延びるように前記天井部(9)に取り付けられていることを特徴とするワーク自動交換装置。
【請求項2】
前記多関節ロボットアーム(7)は、前記天井部(9)に固定された基部(40)と、前記基部(40)の下側に鉛直方向の軸回りに旋回可能に連結された旋回台(41)と、前記旋回台(41)の下側に水平方向の軸回りに回動可能に連結された第1アーム(42)とを有し、
前記ワークストッカ(6)は、上方から見て前記多関節ロボットアーム(7)の前記旋回台(41)の旋回中心(O)を中心とする環状または部分環状に並んで前記複数のワーク(W1,W3)が載置されるように構成されている請求項1に記載のワーク自動交換装置。
【請求項3】
前記囲い枠部(8)は、上方から見て正多角形状または円形状に形成され、
上方から見て前記多関節ロボットアーム(7)の前記旋回台(41)の旋回中心(O)が前記囲い枠部(8)の中心に配置されている請求項2に記載のワーク自動交換装置。
【請求項4】
前記ワークストッカ(6)は、作業者が前記囲い枠部(8)の外側から前記ワークストッカ(6)に前記ワーク(W1)を載置し、かつ前記ワークストッカ(6)に載置された前記ワーク(W3)を前記囲い枠部(8)の外側から作業者が取り出すことができるように、前記囲い枠部(8)の外側の空間と前記囲い枠部(8)の内側の空間とを連通させた構造を有する請求項1から3のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【請求項5】
前記ワークストッカ(6)は、前記囲い枠部(8)の下部から前記工作機械(2)に向けて水平に延び出すブラケット(30)と、前記ブラケット(30)の先端に固定して設けたストッカ側ロケートブロック(31)とを有し、前記ストッカ側ロケートブロック(31)を前記工作機械(2)の下部に固定した機械側ロケートブロック(32)に連結することで、前記工作機械(2)に対する前記ワークストッカ(6)の位置決めが可能となっている請求項1から3のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【請求項6】
前記ワークストッカ(6)は、前記複数のワーク(W1,W3)を個別に保持する複数のワークホルダ(14)を有し、その各ワークホルダ(14)を介して前記各ワーク(W1,W3)が載置されるように構成され、
前記ワークホルダ(14)が、前記多関節ロボットアーム(7)で把持するための周方向溝(16)が外周に形成されたフランジ部(17)と、前記フランジ部(17)に対して軸方向の一方側に設けられ、前記ワーク(W1,W3)をクランプして固定するクランプ部(18)と、前記フランジ部(17)に対して軸方向の他方側に設けられたテーパシャンク部(19)とを有する請求項1から3のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【請求項7】
前記テーパシャンク部(19)は、1/10の勾配の円すい状の外周面をもつ中空筒状のHSKシャンクである請求項6に記載のワーク自動交換装置。
【請求項8】
請求項6に記載のワーク自動交換装置を使用したワークの加工方法であって、
前記工作機械(2)は、鉛直方向の軸線まわりに回転する主軸(64)と、前記主軸(64)に対して相対移動可能な水平テーブル(62)とを有する3軸マシニングセンタであり、
前記水平テーブル(62)には、前記テーパシャンク部(19)の軸線が水平となる姿勢で前記ワークホルダ(14)が着脱可能に取り付けられる第1グリップ装置(61)と、前記第1グリップ装置(61)を水平方向の軸線まわりに回動させて任意の角度に位置決めするロータリーテーブル(60)と、前記テーパシャンク部(19)の軸線が鉛直となる姿勢で前記ワークホルダ(14)が着脱可能に取り付けられる第2グリップ装置(63)とが設置され、
前記ワーク(W1)を保持した状態の前記ワークホルダ(14)を、前記第1グリップ装置(61)と前記第2グリップ装置(63)のうちの一方のグリップ装置(61)に取り付けて前記ワーク(W1)の加工を行ない、その後、前記ワーク(W2)を保持した状態の前記ワークホルダ(14)を、前記多関節ロボットアーム(7)で前記第1グリップ装置(61)と前記第2グリップ装置(63)のうちの前記一方のグリップ装置(61)から他方のグリップ装置(63)に自動で付け替えてさらに前記ワーク(W2)の加工を行なうワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワーク自動交換装置、およびそのワーク交換装置を用いたワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械でワークの加工を行なう加工現場においては、同一のワークを多数加工する場合(つまり1ロットで加工するワークの個数が多い場合)と、多品種で少数ずつのワークを加工する場合(つまりワークの種類が多く、1ロットあたりに加工するワークの個数が少ない場合)とが混在した状態で、工作機械の運転をすることが多い。
【0003】
ここで、同一のワークを多数加工する場合は、工作機械で加工するワークの形状が常に同じなので、工作機械でワークを加工した後、次のワークを加工するために工作機械のワークを交換する作業が、基本的に同じ動作の繰り返しとなる。そのため、工作機械にワークストッカとロボット(多関節ロボットアーム)を併設し、工作機械とワークストッカの間でのワークの交換作業をロボットにティーチングすることで、工作機械を無人で自動運転することが可能である。
【0004】
一方、多品種で少数ずつのワークを加工する場合は、少数のワークを加工するごとに、次に加工するワークの形状が変わる。この場合、ロボットでワークの交換作業をしようとすると、ワークの形状に応じてロボットのハンドを交換したり、ワークの形状に応じてロボットにティーチングし直したりする必要があり、煩雑である。そのため、多品種で少数ずつのワークを加工する場合、ワークの交換作業は、都度、人の手で行なわれる。
【0005】
こうした技術的背景の下、近年、マシニングセンタ等の工作機械の作業効率を向上させるため、工作機械に隣接してワークストッカを配置し、そのワークストッカと工作機械との間でワークの受け渡しを行なう多関節ロボットアームを設けたワーク自動交換装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
特許文献1のワーク自動交換装置において、ワークストッカは、複数のワークが載置される台座を有する。多関節ロボットアームは、ワークストッカを構成する台座から上方に延びるように台座の上面に取り付けられている。
【0007】
この特許文献1のワーク自動交換装置は、台座の上に載置された加工前のワークを多関節ロボットアームで把持して工作機械に自動でセットしたり、その工作機械で加工を終えた加工後のワークを多関節ロボットアームで把持して台座に運んだりし、これにより、同一のワークを多数加工する場合に、工作機械の無人化を図ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-150894号公報(
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のワーク自動交換装置は、ワークストッカを構成する台座の上に複数のワークが載置され、その同じ台座の上面に多関節ロボットアームが取り付けられている。そのため、ワーク自動交換装置の設置スペースが大きくなっている点に本願の発明者は着目した。
【0010】
そして、本願の発明者は、上下方向に延びる中空の囲い枠部の上端に天井部を設け、その天井部から下方に延びるように多関節ロボットアームを天井部に取り付けるようにすれば、上下方向に延びる空間を効率的に利用して多関節ロボットアームとワークストッカとを配置することができるので、ワーク自動交換装置をコンパクトなスペースに設置することができるという着想を得た。
【0011】
また、特許文献1のワーク自動交換装置は、工作機械とワークストッカの間でのワークの交換作業を行なうときに、多関節ロボットアームでワークを直接把持するので、ワークの形状に応じて多関節ロボットアームの先端のハンドを交換したり、ワークの形状に応じて多関節ロボットアームによるワークの交換動作のティーチングプログラムを作成し直したりする必要があり、煩雑であるという問題もある。
【0012】
また、ワーク自動交換装置で工作機械のワークの交換作業を行なう無人運転から、人の手で工作機械のワークの交換作業を行なう有人運転に切り替えたときに、ワーク自動交換装置(ワークストッカと多関節ロボットアーム)を工作機械の前に設置したままだと、作業者が工作機械に近づきにくく、ワークの交換作業の邪魔となる。そこで、ワーク自動交換装置を、工作機械の前から他の場所に移動させると、作業者が工作機械に近づきやすくなるが、その後、有人運転から無人運転に切り替えるために、再び、ワーク自動交換装置を工作機械の前に設置したときに、工作機械に対するワーク自動交換装置の位置関係が一定せず、多関節ロボットアームによるワークの交換動作をティーチングし直す必要が生じる。しかしながら、多関節ロボットアームのティーチングは簡単ではなく、多関節ロボットアームのティーチングに熟練した技術者を育てるには一定の手間と人件費を要する。また、多関節ロボットアームのティーチングに熟練した技術者がいるとしても、都度ティーチングをするのは手間であり、また、技術者によってティーチングの精度にばらつきが生じるという問題もある。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、コンパクトなスペースに設置可能なワーク自動交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明では、上記の課題を解決するため、以下の構成のワーク自動交換装置を提供する。
[構成1]
工作機械に隣接して配置され、複数のワークが載置されるワークストッカと、前記ワークストッカと前記工作機械との間で前記ワークの受け渡しを行なう多関節ロボットアームとを有するワーク自動交換装置において、
前記ワークストッカは、上下方向に延びる中空の囲い枠部と、前記囲い枠部の上端に設けられた天井部とを有し、
前記多関節ロボットアームは、前記天井部から下方に延びるように前記天井部に取り付けられていることを特徴とするワーク自動交換装置。
【0015】
この構成を採用すると、ワークストッカの上下方向に延びる中空の囲い枠部の上端に設けられた天井部から下方に延びるように多関節ロボットアームが天井部に取り付けられているので、上下方向に延びる空間を効率的に利用して多関節ロボットアームとワークストッカとを配置することができる。そのため、ワーク自動交換装置をコンパクトなスペースに設置することが可能である。
【0016】
[構成2]
前記多関節ロボットアームは、前記天井部に固定された基部と、前記基部の下側に鉛直方向の軸回りに旋回可能に連結された旋回台と、前記旋回台の下側に水平方向の軸回りに回動可能に連結された第1アームとを有し、
前記ワークストッカは、上方から見て前記多関節ロボットアームの前記旋回台の旋回中心を中心とする環状または部分環状に並んで前記複数のワークが載置されるように構成されている構成1に記載のワーク自動交換装置。
【0017】
この構成を採用すると、複数のワークが多関節ロボットアームの旋回台の旋回中心を中心とする環状または部分環状に並んで載置されているので、多関節ロボットアームがそれらのワークを保持するときの多関節ロボットアームの動作を容易に管理することが可能となる。
【0018】
[構成3]
前記囲い枠部は、上方から見て正多角形状または円形状に形成され、
上方から見て前記多関節ロボットアームの前記旋回台の旋回中心が前記囲い枠部の中心に配置されている構成2に記載のワーク自動交換装置。
【0019】
この構成を採用すると、囲い枠部の中心を旋回中心として多関節ロボットアームが旋回するので、囲い枠部の内側の空間を特に効率的に利用することが可能となり、ワーク自動交換装置を特にコンパクトなものとすることが可能となる。
【0020】
[構成4]
前記ワークストッカは、作業者が前記囲い枠部の外側から前記ワークストッカに前記ワークを載置し、かつ前記ワークストッカに載置された前記ワークを前記囲い枠部の外側から作業者が取り出すことができるように、前記囲い枠部の外側の空間と前記囲い枠部の内側の空間とを連通させた構造を有する構成1から3のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【0021】
この構成を採用すると、作業者が囲い枠部の外側から加工前のワークをワークストッカに載置し、また、ワークストッカに載置された加工後のワークを囲い枠部の外側から作業者が取り出すことができるので、作業者が多関節ロボットアームの作業空間(ワークストッカの囲い枠部の内側の空間)に入らずに、ワークストッカのワークの交換作業などを安全かつ簡単に行なうことが可能となる。
【0022】
[構成5]
前記ワークストッカは、前記囲い枠部の下部から前記工作機械に向けて水平に延び出すブラケットと、前記ブラケットの先端に固定して設けたストッカ側ロケートブロックとを有し、前記ストッカ側ロケートブロックを前記工作機械の下部に固定した機械側ロケートブロックに連結することで、前記工作機械に対する前記ワークストッカの位置決めが可能となっている構成1から4のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【0023】
この構成を採用すると、ワークストッカの囲い枠部の下部から水平に延び出すブラケットの先端のストッカ側ロケートブロックを、工作機械の下部に固定した機械側ロケートブロックに連結することで、工作機械に対するワークストッカの位置決めを行なうことができる。そのため、工作機械に対するワークストッカの位置関係を固定化することができ、その位置関係においていったん多関節ロボットアームのティーチングを行えば、ワークストッカをいったん工作機械から離れた場所に移動させ、その後、再びワークストッカを工作機械に隣接して設置したときにも、多関節ロボットアームのティーチングをし直す必要がない。
【0024】
[構成6]
前記ワークストッカは、前記複数のワークが個別に保持する複数のワークホルダを有し、その各ワークホルダを介して前記各ワークが載置されるように構成され、
前記ワークホルダが、前記多関節ロボットアームで把持するための周方向溝が外周に形成されたフランジ部と、前記フランジ部に対して軸方向の一方側に設けられ、前記ワークをクランプして固定するクランプ部と、前記フランジ部に対して軸方向の他方側に設けられたテーパシャンク部とを有する構成1から5のいずれかに記載のワーク自動交換装置。
【0025】
この構成を採用すると、工作機械とワークストッカの間でのワークの交換作業を行なうときに、多関節ロボットアームがワークを直接把持するのではなく、ワークを保持するワークホルダを把持するので、多品種のワークを加工する場合にも、各ワークの形状に応じて多関節ロボットアームの先端のハンドを交換したり、各ワークの形状に応じて多関節ロボットアームによるワークの交換動作のティーチングプログラムを作成し直したりする必要がなく、効率的である。
【0026】
[構成7]
前記テーパシャンク部は、1/10の勾配の円すい状の外周面をもつ中空筒状のHSKシャンクである構成6に記載のワーク自動交換装置。
【0027】
この構成を採用すると、HSKシャンクは、工具ホルダのシャンクとして規格化されているので、工作機械へのワークホルダの取り付け動作を自動化するのが容易であり、また、工具ホルダのシャンクとして規格化された他の形式のシャンク(7/24テーパシャンク等)に比べて軽量でコンパクトなので、ワークストッカに載置するワークの個数を多く設定することが可能である。
【0028】
また、この発明では、上述のワーク自動交換装置を使用したワークの加工方法として、以下の構成のものを併せて提供する。
[構成8]
構成6または7に記載のワーク自動交換装置を使用したワークの加工方法であって、
前記工作機械は、鉛直方向の軸線まわりに回転する主軸と、前記主軸に対して相対移動可能な水平テーブルとを有する3軸マシニングセンタであり、
前記水平テーブルには、前記テーパシャンク部の軸線が水平となる姿勢で前記ワークホルダが着脱可能に取り付けられる第1グリップ装置と、前記第1グリップ装置を水平方向の軸線まわりに回動させて任意の角度位置に位置決めするロータリーテーブルと、前記テーパシャンク部の軸線が鉛直となる姿勢で前記ワークホルダが着脱可能に取り付けられる第2グリップ装置とが設置され、
前記ワークを保持した状態の前記ワークホルダを、前記第1グリップ装置と前記第2グリップ装置のうちの一方のグリップ装置に保持して前記ワークの加工を行ない、その後、前記ワークを保持した状態の前記ワークホルダを、前記多関節ロボットアームで前記第1グリップ装置と前記第2グリップ装置のうちの前記一方のグリップ装置から他方のグリップ装置に自動で付け替えてさらに前記ワークの加工を行なうワークの加工方法。
【0029】
この構成を採用すると、多関節ロボットアームが、3軸マシニングセンタに設置した第1グリップ装置と第2グリップ装置との間でワークホルダを自動で付け替えるので、テーパシャンク部の軸線が水平となる姿勢と、テーパシャンク部の軸線が鉛直となる姿勢の両方の姿勢でワークの加工を行なうことができ、しかも前者の姿勢のときはロータリーテーブルで任意の角度にワークを位置決め可能なので、3軸マシニングセンタを使用しながら、5軸マシニングセンタや複合加工機と同等の加工を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
この発明のワーク自動交換装置は、ワークストッカの上下方向に延びる中空の囲い枠部の上端に設けられた天井部から下方に延びるように多関節ロボットアームが天井部に取り付けられているので、上下方向に延びる空間を効率的に利用して多関節ロボットアームとワークストッカとを配置することができる。そのため、ワーク自動交換装置をコンパクトなスペースに設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】この発明の実施形態にかかるワーク自動交換装置と、そのワーク自動交換装置と組み合わせて使用する工作機械とを示す斜視図
【
図2】
図1のワーク自動交換装置を拡大して示す斜視図
【
図3】
図2のワーク自動交換装置を水平方向から見た断面図
【
図4】
図3のワーク自動交換装置を上方から見た断面図
【
図8】
図7に示すワーク載置具に載置されるワークと、そのワークを保持するワークホルダとを示す部分断面図
【
図9】
図1に示すワーク自動交換装置を工作機械に対して位置決めした状態を示す断面図
【
図10】
図9のストッカ側ロケートブロックと機械側ロケートブロックの連結部分の近傍の拡大図
【
図12】
図2に示すワーク載置具にワーク(ワークホルダで保持した状態のもの)を載置し、そのワークを多関節ロボットアームのハンドで保持した状態を示す図
【
図13】
図12に示すワークを多関節ロボットアームで持ち上げた状態を示す図
【
図14】
図13に示す多関節ロボットアームとワークを上方から見た図
【
図15】
図1に示す工作機械の内部の加工空間を前方から見た図
【
図16】
図15に示す各ワークの加工後、第2グリップ装置に取り付けられたワークを多関節ロボットアームで持ち上げ、工作機械から搬出する前の状態を示す図
【
図17】
図16に示す第2グリップ装置のワークを持ち上げて工作機械から搬出した後、第1グリップ装置のワークを多関節ロボットアームで取り外し、第2グリップ装置にセットする前の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、この発明の実施形態のワーク自動交換装置1を示す。ワーク自動交換装置1は、工作機械の無人化を図るため、工作機械2と組み合わせて使用される装置である。工作機械2は、図では、あらかじめ設定した加工プログラムに基づいてワークW
1(
図8参照)の加工を行なうマシニングセンタであり、より具体的には、
図9に示すように、鉛直方向の軸線まわりに回転する主軸64と、主軸64に対して相対移動可能な水平テーブル62とを有する3軸マシニングセンタである。
【0033】
図1に示すように、工作機械2は、ワークW
1の加工空間を取り囲むスプラッシュガード3と、加工前のワークW
1と加工後のワークW
3(
図12参照)とを加工空間から出し入れするためにスプラッシュガード3に設けられた前面開口4と、前面開口4を開閉するフロントドア5とを有する。ワーク自動交換装置1は、工作機械2に隣接して配置されるワークストッカ6と、ワークストッカ6と工作機械2との間でワークW
1,W
3の受け渡しを行なう多関節ロボットアーム7とを有する。
【0034】
図2に示すように、ワークストッカ6は、上下方向に延びる中空の囲い枠部8と、囲い枠部8の上端に設けられた天井部9とを有する。囲い枠部8は、上方から見て正多角形(図では正六角形)の角柱状に形成されている。囲い枠部8は、上方から見て正八角形状や正方形状や円形状に形成することも可能である。
【0035】
囲い枠部8は、上下方向に延びる複数の縦枠10と、水平方向に延びる複数の横枠11とを有する。複数の縦枠10は、正多角形(図では正六角形)の頂点に対応する位置に配置されている。横枠11は、正多角形の辺に対応するように隣り合う縦枠10の間を架け渡して配置され、その各横枠11の両端が縦枠10に固定されている。複数の縦枠10の下端は、ベースプレート12で互いに連結されている。
【0036】
複数の縦枠10の上端には、複数の傾斜枠13を介して天井部9が固定されている。複数の傾斜枠13は、縦枠10の上端の位置から上方に向かって正多角形(図では正六角形)の中心に向かう側に傾斜して設けられ、その傾斜枠13の上端と下端にそれぞれ天井部9と縦枠10とが固定されている。すなわち、複数の傾斜枠13は、上方に向かって次第に縮小する正多角錐台(図では正六角錐台)の稜線を構成するように配置されている。ここでは、縦枠10の上端に傾斜枠13を介して天井部9を固定したが、縦枠10の上端に天井部9を直接固定することも可能である。天井部9は、水平の金属板で形成されている。
【0037】
図4、
図5に示すように、横枠11には、ワークW
1,W
3(
図12参照)が載置されるワーク載置具15が複数取り付けられている。
図12に示すように、ワークW
1,W
3は、個別に複数のワークホルダ14に保持され、その各ワークホルダ14を介して各ワークW
1,W
3が各ワーク載置具15に載置されている。
【0038】
図8に示すように、ワークホルダ14は、周方向溝16が外周に形成されたフランジ部17と、フランジ部17に対して軸方向の一方側(図では上側)に設けられたクランプ部18と、フランジ部17に対して軸方向の他方側(図では下側)に設けられたテーパシャンク部19とを有する。フランジ部17の外周の周方向溝16は、
図3に示す多関節ロボットアーム7の先端のハンド47で把持するための溝である。
【0039】
図8に示すように、クランプ部18は、ワークW
1の一端に形成したダブテール部20(蟻ほぞ形状の部分)をクランプして固定する対向一対のクランプ爪21,22を有する。一対のクランプ爪21,22のうちの一方は、フランジ部17と一体に形成された固定のクランプ爪21であり、他方は、クランプボルト23の締め込みにより固定のクランプ爪21に向かって移動する可動のクランプ爪22である。テーパシャンク部19は、1/10の勾配の円すい状の外周面をもつ中空筒状の1/10テーパシャンク(いわゆるHSKシャンク)を採用している。テーパシャンク部19の先端には、180°間隔で一対のキー溝24が形成されている。また、フランジ部17の外周には、キー溝24に対応する位置に一対の軸方向溝25が形成されている。ここでは、テーパシャンク部19としてHSKシャンクを採用したが、7/24テーパシャンクを採用することも可能である。
【0040】
図5、
図7に示すように、ワーク載置具15は、囲い枠部8の中心の側(図では右側)に向かって水平に開放するU字部26を有し、
図6に示すように、そのU字部26の内側にワークホルダ14を受け入れ、U字部26の上面でワークホルダ14のフランジ部17の下面を支持することができるようになっている。また、ワーク載置具15は、U字部26の内側にワークホルダ14のテーパシャンク部19の先端のキー溝24に嵌合する回り止め嵌合部27を有し、このキー溝24と回り止め嵌合部27の嵌合によりワークホルダ14の鉛直方向の軸回りの位置決めをすることができるようになっている。
【0041】
図4に示すように、ワークストッカ6は、上方から見て多関節ロボットアーム7の旋回台41(
図3参照)の旋回中心Oを中心とする部分環状に並んで複数のワークW
1,W
3が載置されるように構成されている。図では、複数のワークW
1,W
3が旋回台41の旋回中心Oを中心とする部分環状に並ぶように、旋回台41を環状に取り囲む横枠11のうちの一部の横枠11にのみワーク載置具15を設けたが、複数のワークW
1,W
3が旋回台41の旋回中心Oを中心とする環状に並ぶように、旋回台41を環状に取り囲むすべての横枠11にワーク載置具15を設けることも可能である。
【0042】
図9、
図10に示すように、ワークストッカ6は、囲い枠部8の下部から工作機械2に向けて水平に延び出すブラケット30と、ブラケット30の先端に固定して設けたストッカ側ロケートブロック31とを有する。ブラケット30の基端は、ワークストッカ6のベースプレート12に固定されている。また、工作機械2の下部には、機械側ロケートブロック32が固定されている。
【0043】
図11に示すように、ストッカ側ロケートブロック31は、工作機械2を向いて左右方向に細長く延びる部材であり、上下方向に貫通する左右1対のピン孔33が形成されている。機械側ロケートブロック32も、工作機械2を向いて左右方向に細長く延びる部材であり、上下方向に貫通する左右1対のピン孔34が形成されている。そして、ストッカ側ロケートブロック31と機械側ロケートブロック32とが上下に並ぶようにワークストッカ6(
図1参照)を工作機械2に対して移動させ、その後、ストッカ側ロケートブロック31のピン孔33と機械側ロケートブロック32のピン孔34とにロケートピン35を挿入して両ブロック31,32を連結することで、工作機械2に対するワークストッカ6の位置決めを行なうことが可能となっている。
【0044】
図3に示すように、多関節ロボットアーム7は、天井部9から下方に延びるように天井部9の下面に取り付けられている。多関節ロボットアーム7は、天井部9に固定された基部40と、基部40の下側に鉛直方向の軸回りに旋回可能に連結された旋回台41と、旋回台41の下側に水平方向の軸回りに回動可能に連結された第1アーム42と、第1アーム42の先端に水平方向の軸回りに回動可能に連結された第2アーム43と、第2アーム43の先端に第2アーム43の長手方向の軸回りに回動可能に連結された第3アーム44と、第3アーム44の先端に第3アーム44の長手方向に直角な軸回りに回動可能に連結された第4アーム45と、第4アーム45の先端に第4アーム45の長手方向の軸回りに回動可能に連結された第5アーム46と、第5アーム46の先端に取り付けられたハンド47とを有する。
【0045】
基部40と旋回台41の間の関節軸(鉛直方向の軸)、旋回台41と第1アーム42の間の関節軸(水平方向の軸)、第1アーム42と第2アーム43の間の関節軸(水平方向の軸)、第2アーム43と第3アーム44の間の関節軸(第2アーム43の長手方向の軸)、第3アーム44と第4アーム45の間の関節軸(第3アーム44の長手方向に直角な軸)、第4アーム45と第5アーム46の間の関節軸(第4アーム45の長手方向の軸)には、各関節軸を駆動する図示しない電動モータが組み込まれている。
【0046】
図13、
図14に示すように、ハンド47は、ワークホルダ14を把持することができるように開閉可能に設けられた対向一対のフィンガー48を有する。一対のフィンガー48は、第5アーム46の先端に固定されたハンド本体部49で第5アーム46の長手方向に直角な方向に移動可能に支持されている。また、ハンド本体部49には、一対のフィンガー48を駆動する図示しないアクチュエータが組み込まれている。
【0047】
図14に示すように、各フィンガー48の他方のフィンガー48に対する対向面は、ワークホルダ14のフランジ部17の周方向溝16(
図13参照)に嵌合する円弧縁部50が形成されている。また、円弧縁部50の途中には、フランジ部17の外周の軸方向溝25(
図8参照)に嵌合する位置決め凸部51が設けられている。
【0048】
図2に示すように、ワークストッカ6は、ワーク載置具15が取り付けられた横枠11の上側に、囲い枠部8の内側の空間と囲い枠部8の外側の空間とを連通する開口(横枠11と縦枠10とで囲まれる方形の開口)が形成され、その開口を通じて、作業者が囲い枠部8の外側からワークストッカ6に加工前のワークW
1を載置したり、また、ワークストッカ6に載置された加工後のワークW
3を囲い枠部8の外側から作業者が取り出したりすることができるようになっている。多関節ロボットアーム7は、日本産業規格JISB8433-1:2015「ロボット及びロボティックデバイス-産業用ロボットのための安全要求事項-第1部:ロボット」に規定される協働運転要求事項に適合するもの(いわゆる協働ロボット)を採用すると、作業者の安全を担保することができるので好ましい。
【0049】
上述のワーク自動交換装置1の使用例を説明する。
【0050】
まず、
図1に示すワーク自動交換装置1を工作機械2のフロントドア5の前に設置する。そして、
図9に示すように、ワークストッカ6の下部から工作機械2に向けて延び出すブラケット30の先端のストッカ側ロケートブロック31を、工作機械2の下部に固定された機械側ロケートブロック32に連結することで、工作機械2に対するワークストッカ6の位置決めをする。その後、
図8に示すように加工前のワークW
1(ワークホルダ14に保持した状態のもの)を、
図2に示すワークストッカ6の各ワーク載置具15に載置する。
【0051】
その後、ワーク自動交換装置1と工作機械2は、協働してワーク加工の自動運転を行なう。すなわち、
図12~
図14に示すように、多関節ロボットアーム7が先端のハンド47で、ワークストッカ6のワーク載置具15に載置された加工前のワークW
1(ここではワークW
1を保持した状態のワークホルダ14のフランジ部17)を保持して持ち上げ、工作機械2(
図1参照)にセットして加工を行ない、また、工作機械2(
図1参照)で加工を終えた加工後のワークW
3を多関節ロボットアーム7の先端のハンド47で保持し、工作機械2からワークストッカ6に運んでワーク載置具15に載置する。具体例を説明する。
【0052】
図15に示すように、工作機械2の加工空間(
図1のスプラッシュガード3で囲まれる空間)には、水平方向の任意の位置に位置決め可能な水平テーブル62と、上下方向の任意の位置に位置決め可能な主軸64(
図9参照)とが設けられている。水平テーブル62には、テーパシャンク部19の軸線が水平となる姿勢でワークホルダ14が着脱可能に取り付けられる第1グリップ装置61と、第1グリップ装置61を水平方向の軸線まわりに回動させて任意の角度に位置決めするロータリーテーブル60と、テーパシャンク部19の軸線が鉛直となる姿勢でワークホルダ14が着脱可能に取り付けられる第2グリップ装置63とが設置されている。第1グリップ装置61は、ロータリーテーブル60を介して水平テーブル62に取り付けられ、第2グリップ装置63は、水平テーブル62に直接取り付けられている。
【0053】
ここで、第1グリップ装置61には、加工前のワークW1を保持した状態のワークホルダ14が取り付けられ、第2グリップ装置63には、第1グリップ装置61でワークW1の側面を加工して得られるワークW2(加工の途中段階のワーク)を保持した状態のワークホルダ14が取り付けられている。第1グリップ装置61にワークホルダ14を介して取り付けられたワークW1は、ロータリーテーブル60を回動させてワークW1の角度を変化させることで、ワークW1の側面の任意の位置を加工することが可能となっている。この状態で、工作機械2は、第1グリップ装置61に取り付けられたワークW1の側面の加工と、第2グリップ装置63に取り付けられたワークW2の端面(図では上面)の加工とを順に行なう。
【0054】
その後、
図16に示すように、多関節ロボットアーム7は、第2グリップ装置63から加工後のワークW
3(第2グリップ装置63でワークW
2の端面を加工して得られるもの。つまり工作機械2での加工を終えたワーク)を保持した状態のワークホルダ14を把持して持ち上げ、そのワークW
3(ワークホルダ14で保持した状態のもの)を工作機械2から取り出し、
図12に示すワーク載置具15に載置する。続いて、
図17に示すように、多関節ロボットアーム7は、ワークW
2を保持した状態のワークホルダ14を、第1グリップ装置61から第2グリップ装置63に自動で付け替える。その後、多関節ロボットアーム7は、
図12に示すワーク載置具15に載置された加工前のワークW
1を保持して持ち上げ、そのワークW
1を工作機械2に挿入し、
図17に示す第1グリップ装置61に取り付ける。
【0055】
これにより、
図15に示すように、第1グリップ装置61には、加工前のワークW
1を保持した状態のワークホルダ14が取り付けられ、第2グリップ装置63には、加工の途中段階のワークW
2を保持した状態のワークホルダ14が取り付けられた状態となる。その後、再び、工作機械2は、第1グリップ装置61に取り付けられたワークW
1の側面の加工と、第2グリップ装置63に取り付けられたワークW
2の端面の加工とを順に行なう。以上の動作を繰り返すことで、ワークストッカ6に載置された複数のワークW
1を順に自動的に加工することができる。
【0056】
このワーク自動交換装置1は、
図3に示すように、ワークストッカ6の囲い枠部8の上端に設けられた天井部9から下方に延びるように多関節ロボットアーム7が天井部9に取り付けられているので、上下方向に延びる空間を効率的に利用して多関節ロボットアーム7とワークストッカ6とを配置することができる。そのため、ワーク自動交換装置1をコンパクトなスペースに設置することが可能である。
【0057】
また、多関節ロボットアーム7がワークストッカ6の天井部9に取り付けられているので、多関節ロボットアーム7を駆動するための電気配線を、ワークストッカ6の天井部9から上方に延びるように配置することができる。そのため、多関節ロボットアーム7の電気配線が作業者の足元で邪魔になるのを防止することができ、作業者が工作機械2に近づいて作業をしやすい。
【0058】
また、このワーク自動交換装置1は、
図4に示すように、複数のワーク載置具15が、多関節ロボットアーム7の旋回台41の旋回中心Oを中心とする部分環状に並んで載置されているので、各ワーク載置具15に載置された加工前のワークW
1を保持するときの多関節ロボットアーム7の動作、および、加工後のワークW
3を各ワーク載置具15に載置するときの多関節ロボットアーム7の動作を容易に管理することが可能である。
【0059】
また、このワーク自動交換装置1は、
図4に示すように、上方から見て多関節ロボットアーム7の旋回台41の旋回中心Oが囲い枠部8の中心に配置されているので、囲い枠部8の内側の空間を特に効率的に利用することが可能であり、ワーク自動交換装置1を特にコンパクトなものとすることが可能となっている。
【0060】
また、このワーク自動交換装置1は、
図2に示すように、作業者が囲い枠部8の外側から加工前のワークW
1をワークストッカ6に載置し、また、ワークストッカ6に載置された加工後のワークW
3を囲い枠部8の外側から作業者が取り出すことができるように構成されているので、作業者が多関節ロボットアーム7の作業空間(ワークストッカ6の囲い枠部8の内側の空間)に入らずに、ワークストッカ6のワークW
3の交換作業などを安全かつ簡単に行なうことが可能である。
【0061】
また、このワーク自動交換装置1は、
図9に示すように、ワークストッカ6の囲い枠部8の下部から水平に延び出すブラケット30の先端のストッカ側ロケートブロック31を、工作機械2の下部に固定した機械側ロケートブロック32に連結することで、工作機械2に対するワークストッカ6の位置決めを行なうことが可能である。そのため、工作機械2に対するワークストッカ6の位置関係を固定化することができ、その位置関係においていったん多関節ロボットアーム7のティーチングを行えば、例えば、人の手で工作機械2のワークW
1,W
3の交換作業を行なう有人運転をするために、ワークストッカ6をいったん工作機械2から離れた場所に移動させ、その後、多関節ロボットアーム7で工作機械2のワークW
1,W
3の交換作業を行なう無人運転をするために、再びワークストッカ6を工作機械2に隣接して設置したときにも、多関節ロボットアーム7のティーチングをし直す必要がない。
【0062】
また、このワーク自動交換装置1は、
図9に示す工作機械2とワークストッカ6の間でのワークW
1,W
3の交換作業を行なうときに、多関節ロボットアーム7がワークW
1,W
3を直接把持するのではなく、
図13、
図16に示すように、多関節ロボットアーム7が、ワークW
1,W
3を保持するワークホルダ14を把持するので、多品種のワークW
1を加工する場合にも、各ワークW
1,W
3の形状に応じて多関節ロボットアーム7の先端のハンド47を交換したり、各ワークW
1,W
3の形状に応じて多関節ロボットアーム7によるワークW
1,W
3の交換動作のティーチングプログラムを作成し直したりする必要がなく、効率的である。
【0063】
また、このワーク自動交換装置1は、
図8に示すように、ワークホルダ14のテーパシャンク部19として、1/10の勾配の円すい状の外周面をもつ中空筒状のHSKシャンクを採用しており、HSKシャンクは、工具ホルダのシャンクとして規格化されているので、
図15に示す工作機械2へのワークホルダ14の取り付け動作を自動化するのが容易である。また、HSKシャンクは、工具ホルダのシャンクとして規格化された他の形式のシャンク(7/24テーパシャンク等)に比べて軽量でコンパクトなので、
図2に示すワークストッカ6に載置するワークW
1,W
3の個数を多く設定することが可能である。
【0064】
また、上述の方法でワークW
1を加工すると、
図15に示す工作機械2として3軸マシニングセンタを使用しながら、5軸マシニングセンタや複合加工機と同等の加工を行なうことが可能である。すなわち、
図9に示す多関節ロボットアーム7が、
図15に示す第1グリップ装置61と第2グリップ装置63との間でワークホルダ14を自動で付け替えるので、テーパシャンク部19の軸線が水平となる姿勢と、テーパシャンク部19の軸線が鉛直となる姿勢の両方の姿勢でワークW
1,W
2の加工を行なうことができ、しかも前者の姿勢のときはロータリーテーブル60で任意の角度にワークW
1を位置決め可能なので、3軸マシニングセンタを使用しながら、5軸マシニングセンタや複合加工機と同等の加工を行なうことが可能であり、経済的である。
【符号の説明】
【0065】
1 ワーク自動交換装置
2 工作機械
6 ワークストッカ
7 多関節ロボットアーム
8 囲い枠部
9 天井部
14 ワークホルダ
16 周方向溝
17 フランジ部
18 クランプ部
19 テーパシャンク部
30 ブラケット
31 ストッカ側ロケートブロック
32 機械側ロケートブロック
40 基部
41 旋回台
42 第1アーム
60 ロータリーテーブル
61 第1グリップ装置
62 水平テーブル
63 第2グリップ装置
64 主軸
O 旋回台の旋回中心
W1,W2,W3 ワーク