(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025065810
(43)【公開日】2025-04-22
(54)【発明の名称】水素製造装置、水素製造装置の制御装置、及び、水素製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/042 20210101AFI20250415BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250415BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20250415BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/02
C25B15/08 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175262
(22)【出願日】2023-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊
(72)【発明者】
【氏名】桝本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 義夫
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC03
4K021CA08
4K021CA10
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】 燃料極に供給するガスの加熱に要する熱エネルギーを低減することができる水素製造装置を提供すること。
【解決手段】 水素製造装置(1)は、Niを含む燃料極(51)と、固体電解質層(53)と、空気極(52)とを備え、燃料極に水素及び水蒸気が供給され、燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより燃料極にて水素を生成するとともに空気極にて酸素を生成し、燃料極から水素を含む燃料極排出ガスを排出し、空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セル(50)と、燃料極排出ガスに含まれる水素の一部を前記燃料極に還流する還流部(60)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極に水素及び水蒸気が供給され、前記燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより前記燃料極にて水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルと、
前記燃料極排出ガスに含まれる水素の一部を前記燃料極に還流する還流部と、
を備える、水素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素製造装置であって、
前記燃料極排出ガスは水蒸気を含み、
前記還流部は、水素及び水蒸気を含む前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する、水素製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水素製造装置であって、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給することができるように構成された水素供給部と、
水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成し、生成した水蒸気を前記燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部と、
前記水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御する制御部と、
を備える、水素製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水素製造装置であって、
前記制御部は、前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御する、水素製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水素製造装置であって、
前記制御部は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、比率Routを推定する、水素製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水素製造装置であって、
前記還流部から前記燃料極に還流される前記燃料極排出ガスの温度が100℃以上である、水素製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水素製造装置であって、
前記電気化学セルが収容される断熱容器を備える、水素製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の水素製造装置であって、
前記断熱容器に、複数の前記電気化学セルが積層されたセルスタックが収容される、水素製造装置。
【請求項9】
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極に水素及び水蒸気が供給され、前記燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより前記燃料極にて水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルと、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給することができるように構成された水素供給部と、
水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成するとともに、生成した水蒸気を前記燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部と、
前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する還流部と、
を備える水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御するように構成される、水素製造装置の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給される水の流量を制御する、水素製造装置の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、前記比率Routを推定する、水素製造装置の制御装置。
【請求項12】
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極にて水蒸気を電気分解することにより水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルを用いた水素製造方法であって、
水を気化して水蒸気を生成するとともに生成した水蒸気を前記燃料極に供給する水蒸気供給工程と、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給する水素供給工程と、
前記燃料極に供給した水蒸気を電気分解することにより水素と酸素を生成する電気分解工程と、
前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する還流工程と、
を含む、水素製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の水素製造方法であって、
前記水蒸気供給工程にて前記燃料極に供給される水蒸気の流量と前記還流工程にて前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給工程にて前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流工程にて前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給工程にて前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する流量制御工程を含む、水素製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の水素製造方法であって、
前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定する燃料極排出ガス流量比率推定工程を含み、
前記流量制御工程は、前記燃料極排出ガス流量比率推定工程にて推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給工程にて前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する工程である、水素製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の水素製造方法であって、
前記燃料極排出ガス流量比率推定工程は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、前記比率Routを推定する工程である、水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造装置、水素製造装置の制御装置、及び、水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温水蒸気電解により製造された水素を利活用することで、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に貢献することができる。
【0003】
高温水蒸気電解により水素を製造するために、電気化学セルが用いられることがある。特許文献1は、電気化学セルの一つである固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)を用いた水素製造装置を開示する。
【0004】
特許文献1に開示の水素製造装置によれば、水素と水蒸気がSOECの燃料極に供給される。燃料極に供給された水蒸気が燃料極にて電気分解されることにより、水素と酸素が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
電気化学セルにて高温水蒸気電解を効率的に発生させるため、高温の水蒸気が燃料極に供給される。また、燃料極の劣化(酸化)を抑制するために、還元剤として水素が燃料極に供給される。燃料極に供給される水素は燃料極での高温水蒸気電解反応に寄与しないが、高温水蒸気電解反応を阻害しないように、燃料極に供給される際には高温である必要がある。よって、高温の水素及び水蒸気を燃料極に供給するために、これらを燃料極に供給する前に加熱する必要があるが、加熱に要する熱エネルギーが大きい場合、エネルギー効率が低下するという問題が発生する。そこで、本開示は、燃料極に供給するガスの加熱に要する熱エネルギーを低減することができる水素製造装置、その制御装置、及び水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る水素製造装置(1)は、Niを含む燃料極(51)と、固体電解質層(53)と、空気極(52)とを備え、燃料極に水素及び水蒸気が供給され、燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより燃料極にて水素を生成するとともに空気極にて酸素を生成し、燃料極から水素を含む燃料極排出ガスを排出し、空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セル(50)と、燃料極排出ガスに含まれる水素の一部を前記燃料極に還流する還流部(60)と、を備える。
【0008】
本開示に係る水素製造装置によれば、燃料極にて水蒸気の電気分解(高温水蒸気電解)により生成された高温の水素の一部が還流部を経由して燃料極に還流される。燃料極に還流された水素は高温であるので、これを加熱するための熱エネルギーは不要であるか、もしくはこれを加熱するための熱エネルギーは少量で足りる。よって、燃料極に供給されるガスの加熱に要する熱エネルギーを低減することができる。さらに、燃料極排出ガスに含まれる水素の一部を燃料極の劣化を防止するための水素として利用することにより、燃料極の劣化の防止のために別途必要となる水素の量を低減することができる。
【0009】
本開示に係る水素製造装置の一態様において、燃料極排出ガスは水蒸気を含み、還流部は、水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスの一部を燃料極に還流する。これによれば、高温の水素に加えて燃料極にて反応しなかった水蒸気も還流部を経由して燃料極に供給されるため、未反応の水蒸気を有効利用することができるとともに、水蒸気を生成するための熱エネルギー及び水蒸気を加熱するための熱エネルギーをも低減することができる。よって、燃料極に供給されるガスの加熱に要する熱エネルギーをより一層低減することができる。
【0010】
本開示に係る水素製造装置は、水素供給源から水素を燃料極に供給することができるように構成された水素供給部(10)と、水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成し、生成した水蒸気を燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部(40)と、水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と還流部から燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する水素供給部から燃料極に供給される水素の流量と還流部から燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部から燃料極に供給する水素の流量及び水蒸気供給部に供給する水の流量を制御する制御部(70)と、を備えるように構成することができる。これによれば、燃料極排出ガスに含まれる水素及び水蒸気の一部を燃料極に還流させながら、燃料極に供給する水蒸気に対する水素の流量の比率Rinを目標流量比率Rin
*に保つことができる。
【0011】
本開示に係る水素製造装置の制御部は、燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部から燃料極に供給する水素の流量及び水蒸気供給部に供給する水の流量を制御するように構成することができる。
【0012】
本開示に係る水素製造装置の制御部は、空気極排出ガスの流量、空気極排出ガスの酸素濃度、電気化学セルの電解電流、電気化学セルへの印加電圧、燃料極排出ガスの露点、燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、比率Routを推定するように構成することができる。
【0013】
本開示に係る水素製造装置の還流部から燃料極に還流される燃料極排出ガスの温度は、100℃以上であるのが良い。これによれば、燃料極にて反応しなかった水蒸気を凝縮させることなく水蒸気のまま燃料極に供給することができる。
【0014】
また、本開示に係る水素製造装置は、電気化学セルが収容される断熱容器を備えるように構成することができる。これによれば、断熱容器内に電気化学セルを収容することにより、ホットモジュールを構成することができる。この場合、断熱容器に、複数の電気化学セルが積層されたセルスタックが収容されるように構成することができる。
【0015】
また、本開示に係る水素製造装置の制御装置は、Niを含む燃料極(51)と、固体電解質層(53)と、空気極(52)とを備え、燃料極に水素及び水蒸気が供給され、燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより燃料極にて水素を生成するとともに空気極にて酸素を生成し、燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セル(50)と、水素供給源から水素を燃料極に供給することができるように構成された水素供給部(10)と、水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成するとともに、生成した水蒸気を燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部(40)と、燃料極排出ガスの一部を燃料極に還流する還流部(60)と、を備える水素製造装置(1)の制御装置であって、制御装置(70)は、水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と還流部から燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する水素供給部から燃料極に供給される水素の流量と還流部から燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部から燃料極に供給する水素の流量及び水蒸気供給部に供給する水の流量を制御するように構成される。
【0016】
本開示に係る水素製造装置の制御装置によれば、燃料極排出ガスに含まれる水素及び水蒸気の一部を燃料極に還流させながら、燃料極に供給する水蒸気に対する水素の流量の比率Rinを目標流量比率Rin
*に保つことができる。
【0017】
本開示に係る制御装置は、燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部から燃料極に供給される水素の流量及び水蒸気供給部に供給される水の流量を制御するように構成することができる。
【0018】
本開示に係る制御装置は、空気極排出ガスの流量、空気極排出ガスの酸素濃度、電気化学セルの電解電流、電気化学セルへの印加電圧、燃料極排出ガスの露点、燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、比率Routを推定するように構成することができる。
【0019】
また、本開示に係る水素製造方法は、Niを含む燃料極(51)と、固体電解質層(53)と、空気極(52)とを備え、燃料極にて水蒸気を電気分解することにより水素を生成するとともに空気極にて酸素を生成し、燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セル(50)を用いた水素製造方法であって、水を気化して水蒸気を生成するとともに生成した水蒸気を燃料極に供給する水蒸気供給工程と、水素供給源から水素を燃料極に供給する水素供給工程と、燃料極に供給した水蒸気を電気分解することにより水素と酸素を生成する電気分解工程と、燃料極排出ガスの一部を燃料極に還流する還流工程と、を含む。
【0020】
本開示に係る水素製造方法によれば、燃料極にて水蒸気の電気分解(高温水蒸気電解)により生成された高温の水素及び燃料極にて反応しなかった水蒸気の一部が還流部を経由して燃料極に還流される。燃料極に還流された水素は高温であるので、これを加熱するための熱エネルギーは不要であるか、もしくはこれを加熱するための熱エネルギーは少量で足りる。さらに、未反応の水蒸気を燃料極に還流することによって水蒸気を有効利用することができるとともに、水蒸気を生成するための熱エネルギー及び水蒸気を加熱するための熱エネルギーをも低減することができる。よって、燃料極に供給するガスの加熱に要する熱エネルギーを低減することができる。
【0021】
本開示に係る水素製造方法の一態様において、水素製造方法は、水蒸気供給工程にて燃料極に供給される水蒸気の流量と還流工程にて燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する水素供給工程にて燃料極に供給される水素の流量と還流工程にて燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、水素供給工程にて燃料極に供給する水素の流量及び水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する流量制御工程を含む。
【0022】
これによれば、燃料極排出ガスに含まれる水素及び水蒸気の一部を燃料極に還流させながら、燃料極に供給する水蒸気に対する水素の流量の比率Rinを目標流量比率Rin
*に保つことができる。
【0023】
本開示に係る水素製造方法の他の一態様において、水素製造方法は、燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定する燃料極排出ガス流量比率推定工程を含み、流量制御工程は、燃料極排出ガス流量比率推定工程にて推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給工程にて燃料極に供給する水素の流量及び水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する工程である。
【0024】
本開示に係る水素製造方法の他の一態様において、燃料極排出ガス流量比率推定工程は、空気極排出ガスの流量、空気極排出ガスの酸素濃度、電気化学セルの電解電流、電気化学セルへの印加電圧、燃料極排出ガスの露点、燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、比率Routを推定する工程である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る水素製造装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】燃料極及び空気極に供給されるガスの種類と、燃料極及び空気極から排出されるガスの種類を示す模式図である。
【
図3】制御部のCPUが実行する水素・水流量制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る水素製造装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る水素製造装置1は、水素供給部10と、水供給部20と、空気供給部30と、水蒸気供給部40と、電気化学セルとしての固体酸化物形電解セル(以下、SOEC)50と、還流部60と、制御部70(制御装置)と、流量センサ93とを備える。
【0028】
水素供給部10は、水素供給源から水素を後述する燃料極51に供給することができるように構成される。水素供給部10は、水素流量調整装置11と、水素供給経路12とを備える。水素供給経路12の一方端に水素供給源が接続される。水素供給源として水素ボンベを例示できる。水素供給源から供給される水素は水素供給経路12を流れる。水素流量調整装置11は水素供給経路12の途中に介装される。水素流量調整装置11は、水素供給経路12を流れる水素の流量を調整することができるように構成される。水素流量調整装置11として、水素の送出流量を変更可能な水素ポンプを例示することができる。水素流量調整装置11は、水素供給経路12を流れる水素の流量を調整可能な流量調整弁であっても良い。
【0029】
水供給部20は、水流量調整装置21と、水供給経路22とを備える。水供給経路22の一方端には水供給源が接続される。水供給源として、純水が貯留された貯水タンクを例示できる。水供給源から供給される水は水供給経路22を流れる。水流量調整装置21は水供給経路22の途中に介装される。水流量調整装置21は、水供給経路22を流れる水の流量を調整することができるように構成される。水流量調整装置21として、水の送出流量を変更可能な水ポンプを例示することができる。
【0030】
水素供給経路12の他方端及び水供給経路22の他方端は水蒸気供給部40に接続される。このため水素供給経路12を流れる水素及び水供給経路22を流れる水は水蒸気供給部40に供給される。水蒸気供給部40は、供給された水を気化して水蒸気を生成し、生成した水蒸気を後述する燃料極51に供給することができるように構成される。具体的には、水蒸気供給部40は、加熱器41と、混合ガス排出経路42とを備える。加熱器41に水及び水素が供給される。加熱器41にて供給された水が加熱されることにより気化して水蒸気が生成される。また、加熱器41では、供給された水素及び生成された水蒸気が所定の反応温度範囲内の温度に加熱される。ここで、反応温度範囲とは、水蒸気が燃料極51にて高温水蒸気電解を起こすために必要な温度の範囲であり、約600℃以上800℃以下の温度範囲である。なお、加熱器41は、水を気化して水蒸気を生成するための蒸発器と、供給された水素及び蒸発器にて生成された水蒸気を所定の反応温度範囲内の温度に加熱するための昇温器とに分かれて構成されていても良い。加熱器41にて加熱された水素及び水蒸気は、混合ガス排出経路42に導入され、さらに混合ガス排出経路42からSOEC50に導入される。
【0031】
SOEC50は、燃料極51、空気極52、及び固体電解質層53を備える。加熱器41にて加熱された水素及び水蒸気は混合ガス排出経路42を経由して燃料極51に供給される。燃料極51は、供給された水蒸気が以下の(1)式により表される電気分解反応(高温水蒸気電解反応)を起こすための反応場である。
(1)H2O+2e-→H2+O2-
【0032】
燃料極51にて(1)式のように水蒸気が電気分解されることにより、燃料極51にて水素及び酸素イオンが生成される。燃料極51は、多孔性、電子伝導性、上記(1)式の反応に対する触媒性、を有する材料により構成される。本実施形態では、燃料極51は、ニッケル(Ni)を含む材料により構成される。例えば、Ni-YSZサーメット電極、Ni-GDCサーメット電極等を燃料極51に用いることができる。
【0033】
固体電解質層53は、(1)式の反応により燃料極51に生じた酸素イオンを空気極52に移動させる役割を果たす。固体電解質層53は、緻密であり、電子伝導性が無く、高イオン電導性である材料により構成される。例えば、固体電解質層53の材質として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)を例示することができる。
【0034】
空気極52は、酸素イオンが以下の(2)式の反応を起こすための反応場である。
(2)O2-→(1/2)O2+2e-
【0035】
空気極52にて(2)式の反応が起きることにより、空気極52にて酸素が生成される。空気極52は、多孔性、電子伝導性を有し、酸素に対して安定な材料により構成される。例えば、La1-xSrxMnO3-δ、La1-xSrxCoO3-δ、La1-xSrxCo1-YFeYO3-δ、Pr1-xSrxMnO3-δにより表されるペロブスカイト型酸化物を空気極52の材質として例示することができる。この空気極52には空気供給部30が接続される。空気供給部30は、空気流量調整装置31と空気供給経路32を備える。空気供給経路32の一方端が空気供給源に接続され、空気供給経路32の他方端が空気極52に接続される。従って、空気供給源からの空気が空気供給経路32を経由して空気極52に供給される。空気供給経路32の途中に空気流量調整装置31が介装される。空気流量調整装置31によって空気供給経路32を流れて空気極52に供給される空気の流量が調整される。
【0036】
SOEC50は、燃料極51、固体電解質層53、空気極52が、所定の方向にこの順に積層されることにより構成される。そして、複数のSOEC50(単セル)が上記所定の方向に積層されてセルスタックを構成している。セルスタック及び水蒸気供給部40は、断熱容器80に収容される。これにより、高温に晒される部材が外部と断熱される。断熱容器80及びその内部に収容される部材(水蒸気供給部40及び複数のSOEC50からなるセルスタック)によりホットモジュールが構成される。
【0037】
また、水素製造装置1は電圧印加装置55を備える。電圧印加装置55は、SOEC50の燃料極51と空気極52との間に所定の電圧を印加することができるように、SOEC50に電気的に接続される。
【0038】
燃料極51に燃料極排出ガス経路91が接続され、空気極52に空気極排出ガス経路92が接続される。燃料極排出ガス経路91には、燃料極51から排出される燃料極排出ガスが流れる。空気極排出ガス経路92には、空気極52から排出される空気極排出ガスが流れる。
【0039】
還流部60は、ブロワ61及び還流経路62を備える。還流経路62の一方端は燃料極排出ガス経路91の途中に接続され、還流経路62の他方端は水蒸気供給部40の加熱器41に接続される。ブロワ61は還流経路62の途中に介装されており、還流経路62の一方端側から他方端側に向けて内部の流体を移動させることができるように構成される。ブロワ61は、還流経路62を流れる流体の流量を調整することができるように、例えば回転数が可変であるように構成されていてもよい。
【0040】
空気極排出ガス経路92に流量センサ93が取り付けられる。流量センサ93は、空気極排出ガス経路92を流れる空気極排出ガスの流量を検出する。流量センサ93が検出した流量情報は、制御部70に受け渡される。
【0041】
制御部70は、CPU、ROM、RAM、インターフェースを備えるマイクロコンピュータを含む。制御部70は、水素流量調整装置11及び水流量調整装置21に電気的に接続されている。制御部70は、水素流量調整装置11及び水流量調整装置21を制御することができるように構成される。
【0042】
上記構成を有する水素製造装置1が作動すると、水供給源から水供給経路22に水が供給されて、水供給経路22に水が流れる。このとき水流量調整装置21により水供給経路22を流れる水の流量が調整される。水供給経路22を流れる水は水蒸気供給部40の加熱器41に供給される。加熱器41に供給された水が加熱により気化して水蒸気が生成する。
【0043】
また、水素供給源から水素供給経路12に水素が供給されて、水素供給経路12に水素が流れる。このとき水素流量調整装置11により水素供給経路12を流れる水素の流量が調整される。水素供給経路12を流れる水素は加熱器41に導入されて、水蒸気と混合される。そして、水素と水蒸気との混合ガスは、加熱器41にて700℃程度の温度に加熱される。加熱された水素及び水蒸気は混合ガス排出経路42を経由してSOEC50の燃料極51に供給される(水蒸気供給工程、水素供給工程)。
【0044】
また、空気供給源から空気供給経路32に空気が供給されて、空気供給経路32に空気が流れる。このとき空気流量調整装置31により空気供給経路32を流れる空気の流量が所定の流量に調整される。空気供給経路32を流れる空気はSOEC50の空気極52に供給される。
【0045】
また、電圧印加装置55が作動して、SOEC50の燃料極51と空気極52との間に所定の電圧が印加される。このとき燃料極51がカソード(陽極)となり、空気極52がアノード(陰極)となるように、電圧が印加される。これにより上記(1)式に示す高温水蒸気電解反応が起こり、燃料極51に供給された水蒸気が電気分解されて、燃料極51にて水素及び酸素イオンが生成される(電気分解工程)。
【0046】
燃料極51にて生成された水素は、燃料極51にて上記(1)式の反応に供さなかった水蒸気(以下、未反応水蒸気)とともに、燃料極排出ガスとして燃料極51から排出される。燃料極51から排出された燃料極排出ガスは燃料極排出ガス経路91を流れて外部に排出される。また、燃料極51にて生成された酸素イオンは、固体電解質層53を通過して空気極52に供給される。そして、空気極52にて上記(2)式に示す反応が起こり、空気極52にて酸素が生成される(電気分解工程)。空気極52にて生成された酸素は、空気極52に供給された空気とともに、空気極排出ガスとして空気極52から排出される。空気極52から排出された空気極排出ガスは空気極排出ガス経路92を流れて外部に排出される。空気極52から排出される空気極排出ガスの流量は、空気極排出ガス経路92に設けられた流量センサ93により測定される。
【0047】
水素製造装置1が上記のように作動することにより、SOEC50にて水素が製造される。製造された水素は未反応水蒸気とともに燃料極排出ガスとして燃料極排出ガス経路91から外部に排出される。外部に排出された燃料極排出ガスは、例えば凝縮等の操作によって水と水素とに分離される。そして、分離された水素は所定の容器に保管される。
【0048】
ところで、水素供給部10から燃料極51に供給される水素は、水素供給経路12を流れているときには常温であるが、燃料極51に供給される際には700℃程度の高温でなければならない。従って、水素供給部10から供給される常温の水素は水蒸気供給部40に供給され、水蒸気供給部40の加熱器41にて水蒸気とともに700℃程度に加熱される。しかしながら、常温の水素を水蒸気とともに700℃程度に加熱するためには大きな熱エネルギーが必要である。この点に関し、本実施形態に係る水素製造装置1においては、作動中に還流部60のブロワ61が駆動する。このため燃料極51から燃料極排出ガス経路91に排出された水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスの一部が、燃料極排出ガス経路91から分岐した還流経路62を流れる。還流経路62を流れる燃料極排出ガスはブロワ61により圧送されて、水蒸気供給部40の加熱器41に導入される。加熱器41に導入された燃料極排出ガスの一部は、加熱器41にて生成された水蒸気及び水素供給部10から供給された水素と混合され、これらとともに加熱器41にて加熱された後に加熱器41からSOEC50の燃料極51に還流される(還流工程)。
【0049】
上記還流工程が実施されることにより、燃料極排出ガスに含まれる水素の一部が還流部60により加熱器41を経由して燃料極51に還流される。燃料極51に還流される燃料極排出ガスは加熱器41に導入される前に既に高温であり、少なくとも100℃以上である。従って、燃料極51に還流される燃料極排出ガスに含まれる水素も高温であり、これを加熱器41にて再加熱するための熱エネルギーはさほど必要ない。そのため、燃料極排出ガスに含まれる水素を燃料極51に還流させない場合と比較して、熱エネルギーを低減することができる。
【0050】
また、上記還流工程が実施されることにより、燃料極排出ガスに含まれる未反応水蒸気の一部も還流部60により加熱器41を経由して燃料極51に還流される。燃料極51に還流される未反応水蒸気も加熱器41に導入される前に既に高温であり、少なくとも100℃以上である。従って、還流される未反応水蒸気は凝縮することなく水蒸気のまま燃料極51に供給されるので、これを加熱器41にて気化させるための熱エネルギーは不要であり、且つ、再加熱するための熱エネルギーもさほど必要ない。そのため、水蒸気を生成するための熱エネルギー及び水蒸気を加熱するための熱エネルギーを低減することができる。
【0051】
燃料極51に供給される水素と水蒸気との比率は、燃料極51の劣化(酸化)の抑制及び燃料極51における水素の生成効率を考慮して適切な比率に決定される。一般的には、燃料極51に供給される水蒸気の流量FH2O_inに対する水素の流量FH2_inの比率Rin(=FH2_in/FH2O_in)は0.1~1.0程度である。本実施形態に係る水素製造装置1のように燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流する場合には、還流される水素及び水蒸気の流量に応じて、比率Rinが目標流量比率Rin
*(例えば0.1~0.2)となるように、水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量及び水供給部20から水蒸気供給部40に供給する水の流量を制御しなければならない。
【0052】
ここで、水素供給部10から水蒸気供給部40を経由して燃料極51に供給される水素のモル流量(以下、単に流量という)をXH2、水供給部20から水蒸気供給部40に供給される水が水蒸気供給部40にて気化することにより生成されて燃料極51に供給される水蒸気の流量をXH2O、還流部60から水蒸気供給部40を経由して燃料極51に還流される水素(還流水素)の流量をYH2、還流部60から水蒸気供給部40を経由して燃料極51に還流される水蒸気(還流水蒸気)の流量をYH2Oとする。また、燃料極51に供給される水素の流量FH2_inと水蒸気の流量FH2O_inの総和を総流量Finとする。この場合、以下の式が成立する。
(3)Fin=(XH2+XH2O)+(YH2+YH2O)
(4)Rin=(XH2+YH2)/(XH2O+YH2O)
【0053】
(4)式より、XH2は、以下の(5)式により表される。
(5)XH2=RinXH2O+RinYH2O-YH2
(5)式を(3)式に代入すると、(6)式が得られる。
(6)Fin=(RinXH2O+RinYH2O-YH2)+XH2O+YH2+YH2O
=RinXH2O+RinYH2O+XH2O+YH2O
=(Rin+1)XH2O+(Rin+1)YH2O
【0054】
(6)式を変形すると、XH2Oが(7)式のように得られる。
(7)XH2O=(Fin-(Rin+1)YH2O)/(Rin+1)
=Fin/(Rin+1)-YH2O
【0055】
(7)式を(5)式に代入し、変形すると、XH2が(8)式のように表される。
(8)XH2=Rin(Fin/(Rin+1)-YH2O)+RinYH2O-YH2
=RinFin/(Rin+1)-YH2
【0056】
(7)式及び(8)式に示すように、流量XH2及び流量XH2Oは、総流量Fin、比率Rin、還流水素の流量YH2、還流水蒸気の流量YH2Oから一義的に決定される。従って、総流量Finを予め目標総流量Fin
*に設定し、比率Rinを予め目標流量比率Rin
*に設定しておけば、還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oに応じて、流量XH2及び流量XH2Oが一義的に決定される。制御部70は、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量が一義的に決定された流量XH2となるように水素流量調整装置11を制御し、水蒸気供給部40にて生成される水蒸気の流量が一義的に決定された流量XH2Oとなるように水流量調整装置21を制御する(流量制御工程)。これにより、還流部60から燃料極51に燃料極排出ガスの一部を還流させた場合であっても、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量及び水蒸気供給部40に供給する水の流量を制御することができる。なお、本明細書において、水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量を追加水素の流量と呼ぶこともあり、水蒸気供給部40にて生成された水蒸気の流量を生成水蒸気の流量と呼ぶこともある。
【0057】
ただし、燃料極排出ガスの温度は非常に高温であるので、還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oを直接測定することは困難である。そこで、本実施形態に係る水素製造装置1の制御部70は、空気極排出ガスの流量に基づいて還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oを推定し、推定した還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oに基づいて流量XH2及び流量XH2Oを推定する。そして、制御部70は、追加水素の流量が推定した流量XH2に一致するように水素流量調整装置11を制御し、生成水蒸気の流量が推定した流量XH2Oに一致するように水流量調整装置21を制御する。
【0058】
具体的には、本実施形態に係る水素製造装置1の制御部70は、空気極排出ガス経路92に取り付けられた流量センサ93の検出情報に基づいて、燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定する(燃料極排出ガス流量比率推定工程)。制御部70は、推定した比率Routに基づいて流量YH2及びYH2Oを推定する。さらに制御部70は、推定した流量YH2及びYH2Oに基づいて、流量XH2及びXH2Oを推定する。そして、制御部70は、追加水素の流量が推定した流量XH2に一致するように水素流量調整装置11を制御し、生成水蒸気の流量が推定した流量XH2Oに一致するように水流量調整装置21を制御する。
【0059】
図2は、燃料極51及び空気極52に供給されるガスの種類と、燃料極51及び空気極52から排出されるガスの種類を示す模式図である。
図2において、燃料極51に供給される水素(還元用水素)の流量がF
H2_inにより表され、燃料極51に供給される水蒸気(電解用水蒸気)の流量がF
H2O_inにより表される。
【0060】
また、燃料極排出ガスのうち、燃料極51にて生成される水素(生成水素)の流量がFH2_out2により表され、燃料極51にて反応しなかった水蒸気(未反応水蒸気)の流量がFH2O_outにより表される。また、還元用水素は燃料極51での反応に寄与しないため、燃料極51に供給された水素がそのまま燃料極51から排出される。従って、燃料極51から排出される水素のうち生成水素以外の水素の流量FH2_out1は、FH2_inと等しい(FH2_in=FH2_out1)。
【0061】
また、
図2において、空気極52に供給される空気の流量がF
air_inにより表される。また、空気極排出ガスのうち空気極52にて生成される酸素(生成酸素)の流量がF
O2_outにより表され、空気極52から排出される空気の流量がF
air_outにより表される。ここで、空気極52に供給される空気は空気極52での反応に寄与しないため、空気極52に供給される空気がそのまま空気極52から排出される。このため、F
air_inはF
air_outに等しい(F
air_in=F
air_out)。
【0062】
流量センサ93は、空気極排出ガスの流量、すなわち空気極52から排出される空気の流量Fair_outと空気極52にて生成された酸素の流量FO2_outとの総和により表される流量Z(=Fair_out+FO2_out)を検出する。また、空気極52にて生成した酸素は水の電気分解により生じたのであるから、生成した酸素の流量の倍の流量の水素が燃料極51にて生じたことになる。従って、燃料極51にて生じた水素(生成水素)の流量FH2_out2は、以下の(9)式により表すことができる。
(9)FH2_out2=2FO2_out=2(Z-Fair_out)=2(Z-Fair_in)
上記(9)式において、Fair_inは、予め設定することができる既知量である。よって、(9)式により生成水素の流量FH2_out2を推定することができる。
【0063】
未反応水蒸気の流量FH2O_outは、電解用水蒸気の流量FH2O_inから生成水素の流量FH2_out2を差し引いた流量である。従って、以下の(10)式が成立する。
(10)FH2O_out=FH2O_in-FH2_out2
=FH2O_in-2(Z-Fair_in)
【0064】
また、FH2O_inはXH2O+YH2Oであり、FH2_inはXH2+YH2であるから、以下の(11)式及び(12)式が成立する。
(11)FH2O_in+FH2_in=Fin
(12)FH2_in/FH2O_in=Rin
【0065】
(11)式及び(12)式から、FH2O_inとFH2_inは、(13)式及び(14)式のように表すことができる。
(13)FH2O_in=Fin/(Rin+1)
(14)FH2_in=RinFin/(Rin+1)
【0066】
以上の関係を用いて、燃料極排出ガス中の水素の流量と水蒸気の流量との比率Routは、以下の(15)式のように表すことができる。
(15)Rout=(FH2_out1+FH2_out2)/FH2O_out
=(FH2_in+2(Z-Fair_in))/(FH2O_in-2(Z-Fair_in))
=(RinFin/(Rin+1)+2Δ)/(Fin/(Rin+1)-2Δ)
=(RinFin+2(Rin+1)Δ)/(Fin-2(Rin+1)Δ)
ここで、Δ=Z-Fair_in
【0067】
燃料極排出ガスのうち還流部60に流入するガスの比率を一定の比率αとすると、還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oは、それぞれ以下の(16)式、(17)式のように表される。
(16)YH2=α(FH2_out1+FH2_out2)
=αRoutFH2O_out
=αRout(FH2O_in-2Δ)
=αRout(Fin/(Rin+1)-2Δ)
(17)YH2O=α(FH2_out1+FH2_out2)/Rout
=α(FH2_in+2Δ)/Rout
=α(RinFin/(Rin+1)+2Δ)/Rout
【0068】
(16)式及び(17)式において、総流量Finを目標総流量Fin
*に設定(固定)し、比率Rinを目標流量比率Rin
*に設定(固定)しておくことにより、(16)式及び(17)式を用いてYH2及びYH2Oを推定することができる。よって、推定したYH2及びYH2Oを(7)式及び(8)式に代入することにより、比率Rinを目標流量比率Rin
*に維持するために必要となる追加水素の流量XH2及び生成水蒸気の流量XH2Oを推定することができる。そして、制御部70は、追加水素の流量が推定した流量XH2となるように水素流量調整装置11を制御し、生成水蒸気の流量が推定した流量XH2Oとなるように水流量調整装置21を制御する。これにより、燃料極排出ガスを燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。そのため、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0069】
また、(15)式からわかるように、比率Routは、流量センサ93が検出した流量Zに基づいて推定される。さらに、(16)式及び(17)式からわかるように、還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2Oは、比率Routに基づいて推定される。そして、流量XH2及び流量XH2Oは、流量YH2及び流量YH2Oに基づいて推定される。従って、制御部70は、流量センサ93が検出した空気極排出ガスの流量に基づいて比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量及び水蒸気供給部40に供給する水の流量を制御することができる。
【0070】
図3は、水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量及び水蒸気供給部40に供給する水の流量を制御するために制御部70のCPUが実行する水素・水流量制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
図3に示すルーチンは、水素製造装置1の作動後に動作が安定したと判断される場合に繰り返し実行される。
図3に示すルーチンが起動すると、制御部70のCPU(以下、CPU)は、まず、
図3のステップ(以下、ステップをSと略記する)11にて、流量センサ93から空気極排出ガスの流量Zを取得する。次いで、CPUは、S12にて、上記(9)式を用いて生成水素の流量F
H2_out2を推定(演算)し、S13にて、上記(10)式を用いて未反応水蒸気の流量F
H2O_outを推定(演算)する。次に、CPUは、S14にて、上記(15)式を用いて燃料極排出ガス中の水素の流量と水蒸気の流量との比率R
outを推定(演算)する。
【0071】
続いてCPUは、S15にて、上記(16)式を用いて還流水素の流量YH2を推定(演算)し、S16にて、上記(17)式を用いて還流水蒸気の流量YH2Oを推定(演算)する。次に、CPUは、S17にて、上記(7)式を用いて流量XH2を推定(演算)し、S18にて、上記(8)式を用いて流量XH2Oを推定(演算)する。
【0072】
次に、CPUは、S19にて、水素流量制御を実行する。この水素流量制御では、CPUは、水素供給経路12を流れる水素(すなわち水素供給部10から燃料極51に供給される水素)の流量が、S17にて演算した流量XH2に一致するように、水素流量調整装置11を制御する。これにより、水素供給経路12に流量XH2の水素を流すことができる。
【0073】
また、CPUは、S20にて、水流量制御を実行する。この水流量制御では、CPUは、水蒸気供給部40にて生成される水蒸気の流量が、S18にて演算した流量XH2Oに一致するように、水流量調整装置21を制御する。これにより、水蒸気供給部40にて流量XH2Oの水蒸気を生成することができる。その後、CPUは、このルーチンを一旦終了する。
【0074】
CPUが上記した水素・水流量制御処理を実行することにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量が制御される。これにより、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0075】
(変形例1)
本例では、流量センサ93に代えて、酸素濃度センサが空気極排出ガス経路92に取り付けられる。酸素濃度センサを空気極排出ガス経路92に取り付けた場合、酸素濃度センサにより空気極排出ガスの酸素濃度S(%)が測定される。また、空気極52に供給される空気の流量Fair_in及び、空気極52に供給される空気の酸素濃度S0(%)は、予め所定の値に設定することができる既知量であるから、生成酸素の流量FO2_outは、以下の(18)式により表される。
(18)FO2_out=Fair_in(S-S0)/(100-S)
【0076】
この変形例において、制御部70は、(18)式により生成酸素の流量FO2_outを推定(演算)する。制御部70は、推定(演算)した生成酸素の流量FO2_outを用いて上記(9)式より生成水素の流量FH2_out2を推定(演算)し、さらに上記(10)式及び(13)式より未反応水蒸気の流量FH2O_outを推定(演算)する。さらに、制御部70は、還元用水素の流量FH2_out1を推定する。なお、還元用水素の流量FH2_out1は、上記(14)式により推定される流量FH2_inと等しい。
【0077】
このようにして、燃料極排出ガス中の生成水素の流量FO2_out、未反応水蒸気の流量FH2O_out、及び還元用水素の流量FH2_out1を求めることができる。制御部70は、求めたこれらの流量を用いて(15)式により比率Routを推定(演算)する。また、制御部70は、推定した比率Rout及び未反応水蒸気の流量FH2O_outを用いて(16)式により還流水素の流量YH2を推定し、比率Rout、生成水素の流量H2_out2及び還元用水素の流量FH2_out1を用いて(17)式により還流水蒸気の流量YH2Oを推定する。さらに、制御部70は、還流水素の流量YH2及び還流水蒸気の流量YH2を用いて、(7)式及び(8)式により、流量XH2及び流量XH2Oを推定(演算)する。そして、制御部70は、推定した流量XH2及びXH2Oに基づいて、上記水素流量制御及び上記水流量制御を実行する。これにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。よって、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0078】
(変形例2)
本例では、空気極排出ガス経路92にセンサは設けられておらず、代わりにSOEC50に電解電流測定装置が取り付けられる。この電解電流測定装置により、SOEC50に電圧が印加されているときにSOEC50を流れる電流が測定される。
【0079】
SOEC50の燃料極51では、H2O+2e-→H2+O2-という電気分解反応が生じており、この電気分解反応が生じているときにSOEC50に流れる電流(電解電流)の大きさが大きいほど水素の発生量が多い。従って、予め電解電流と生成水素の流量FH2_out2との関係を調査し、調査した電解電流と生成水素の流量FH2_out2との関係を制御部70に記憶させる。そして、制御部70は、電解電流測定装置が検出した電解電流を取得し、取得した電解電流と記憶した電解電流と生成水素の流量FH2_out2との関係から、生成水素の流量FH2_out2を推定することができる。制御部70は、推定した流量FH2_out2を用いて上記(10)式及び(13)式より未反応水蒸気の流量FH2O_outを推定(演算)し、さらに上記(14)式により流量FH2_inを推定(演算)し、推定した流量FH2_inから流量FH2_out1(=流量FH2_in)を推定(演算)する。以降、変形例1と同様にして、上記(15)式より比率Routを推定(演算)し、推定した比率Routに基づいて、水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量XH2及び水蒸気供給部40にて生成する水蒸気の流量XH2Oを推定(演算)する。そして、制御部70は、推定した流量XH2及び流量XH2Oに基づいて、上記水素流量制御及び上記水流量制御を実行する。これにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。よって、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0080】
(変形例3)
本例では、流量センサ93に代えて、SOEC50の温度を測定するための温度センサと、SOEC50の燃料極51と空気極52との間に印加される電圧を測定するための電圧センサが用いられる。
【0081】
SOEC50のI-V特性は、SOEC50の温度及び、燃料極51に供給される水素と水蒸気との混合比率(=比率Rin)に依存する。従って、比率Rinを目標流量比率Rin
*に設定しておき、SOEC50の温度をパラメータとして、SOEC50のI-V特性を予め調査することにより、印加電圧と電解電流との関係を得ることができる。この印加電圧と電解電流との関係は、制御部70に記憶される。そして、制御部70は、水素製造装置1の作動中に温度センサからSOEC50の温度を取得し、電圧センサからSOEC50への印加電圧を取得する。制御部70は、取得したSOEC50の温度、SOEC50への印加電圧、及び、記憶された印加電圧と電解電流との関係から、電解電流を推定することができる。それ以降、上記変形例2と同様にして、比率Routを推定(演算)し、推定した比率Routに基づいて水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量XH2及び水蒸気供給部40にて生成される水蒸気の流量XH2Oを推定(演算)する。そして、制御部70は、演算した流量XH2及びXH2Oに基づいて、上記水素流量制御及び上記水流量制御を実行する。これにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。よって、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0082】
(変形例4)
本例では、流量センサ93に代えて、露点計(例えば静電容量式露点計)が用いられる。また、本例では、燃料極排出ガスの一部をサンプリングし、サンプリングした燃料極排出ガスの露点温度を露点計により測定する。
【0083】
燃料極排出ガスの露点温度は、燃料極排出ガス中の水素と水蒸気の流量の比率Routに影響する。従って、燃料極排出ガスの露点温度と比率Routとの関係を予め調査し、調査した燃料極排出ガスの露点温度と比率Routとの関係を制御部70に記憶させる。そして、制御部70は、露点計により測定された露点温度及び記憶された露点温度と比率Routとの関係から、比率Routを推定(算出)する。
【0084】
また、制御部70は、推定した比率Routから、(15)式を用いてΔ(=Z-Fair_in)を演算する。制御部70は、求めた比率Rout及びΔを用いて、(16)式により還流水素の流量YH2を、(17)式により還流水蒸気の流量YH2を推定(演算)し、さらに、(7)式及び(8)式を用いて流量XH2及び流量XH2Oを推定(演算)する。そして、制御部70は、演算した流量XH2及びXH2Oに基づいて、上記水素流量制御及び上記水流量制御を実行する。これにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。よって、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0085】
(変形例5)
本例は、燃料極排出ガスの凝縮水分量に基づいて比率Routを推定する例である。本例では、流量センサ93に代えて、気液分離器が用いられる。また、本例では、燃料極排出ガスの一部をサンプリングし、サンプリングした燃料極排出ガスを気液分離器により気液分離する。その後、分離された水の重量(凝縮水分量)を実測し、分離されたガス(水素)の流量をマスフローメーター等により実測する。制御部70は、実測された水の重量及びガス(水素)の流量から、比率Routを推定(演算)する。以降、変形例4と同様の手順により水素供給部10から燃料極51に供給する水素の流量XH2及び水蒸気供給部40にて生成される水蒸気の流量XH2Oを推定(演算)する。そして、制御部70は、演算した流量XH2及びXH2Oに基づいて、上記水素流量制御及び上記水流量制御を実行する。これにより、還流部60から燃料極排出ガスの一部を燃料極51に還流させながら、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、水素供給部10から燃料極51に供給される水素の流量及び水蒸気供給部40に供給される水の流量を制御することができる。よって、熱エネルギーを低減しつつ、燃料極51の劣化の防止及び水素の生成効率の向上を図ることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されることはない。例えば、上記実施形態では、還流部60からの燃料極排出ガスが水蒸気供給部40の加熱器41に導入される例について説明したが、加熱器41が気化器と昇温器とに分かれて構成される場合、燃料極排出ガスは、気化器に導入されても良いし昇温器に導入されても良い。また、還流部60からの燃料極排出ガスが水蒸気供給部40を経由せずに直接燃料極51に供給されても良い。また、還流部60内の燃料極排出ガス中の水素のみを取り出すことができれば、その水素のみを燃料極51に還流するように構成しても良い。また、本発明は、SOECを用いて水蒸気とCO2を共電解することにより水素とCOを生成し、さらにCH4を合成するSOEC共電解装置の水素製造部分にも適用することができる。さらに、本発明は、r-SOCシステムのSOECモードにも適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【0087】
本発明は、以下の構成を含み得る。
[1]
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極に水素及び水蒸気が供給され、前記燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより前記燃料極にて水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルと、
前記燃料極排出ガスに含まれる水素の一部を前記燃料極に還流する還流部と、
を備える、水素製造装置。
【0088】
[2]
[1]に記載の水素製造装置であって、
前記燃料極排出ガスは水蒸気を含み、
前記還流部は、水素及び水蒸気を含む前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する、水素製造装置。
【0089】
[3]
[2]に記載の水素製造装置であって、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給することができるように構成された水素供給部と、
水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成し、生成した水蒸気を前記燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部と、
前記水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御する制御部と、
を備える、水素製造装置。
【0090】
[4]
[3]に記載の水素製造装置であって、
前記制御部は、前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御する、水素製造装置。
【0091】
[5]
[4]に記載の水素製造装置であって、
前記制御部は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、比率Routを推定する、水素製造装置。
【0092】
[6]
[1]乃至[5]のいずれかに記載の水素製造装置であって、
前記還流部から前記燃料極に還流される前記燃料極排出ガスの温度が100℃以上である、水素製造装置。
【0093】
[7]
[1]乃至[6]のいずれかに記載の水素製造装置であって、
前記電気化学セルが収容される断熱容器を備える、水素製造装置。
【0094】
[8]
[7]に記載の水素製造装置であって、
前記断熱容器に、複数の前記電気化学セルが積層されたセルスタックが収容される、水素製造装置。
【0095】
[9]
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極に水素及び水蒸気が供給され、前記燃料極に供給された水蒸気を電気分解することにより前記燃料極にて水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルと、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給することができるように構成された水素供給部と、
水が供給され、供給された水を気化して水蒸気を生成するとともに、生成した水蒸気を前記燃料極に供給することができるように構成された水蒸気供給部と、
前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する還流部と、
を備える水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記水蒸気供給部にて生成される水蒸気の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流部から前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給する水の流量を制御するように構成される、水素製造装置の制御装置。
【0096】
[10]
[9]に記載の水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定し、推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給部から前記燃料極に供給される水素の流量及び前記水蒸気供給部に供給される水の流量を制御する、水素製造装置の制御装置。
【0097】
[11]
[10]に記載の水素製造装置の制御装置であって、
前記制御装置は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、前記比率Routを推定する、水素製造装置の制御装置。
【0098】
[12]
Niを含む燃料極と、固体電解質層と、空気極とを備え、前記燃料極にて水蒸気を電気分解することにより水素を生成するとともに前記空気極にて酸素を生成し、前記燃料極から水素及び水蒸気を含む燃料極排出ガスを排出し、前記空気極から酸素を含む空気極排出ガスを排出する電気化学セルを用いた水素製造方法であって、
水を気化して水蒸気を生成するとともに生成した水蒸気を前記燃料極に供給する水蒸気供給工程と、
水素供給源から水素を前記燃料極に供給する水素供給工程と、
前記燃料極に供給した水蒸気を電気分解することにより水素と酸素を生成する電気分解工程と、
前記燃料極排出ガスの一部を前記燃料極に還流する還流工程と、
を含む、水素製造方法。
【0099】
[13]
[12]に記載の水素製造方法であって、
前記水蒸気供給工程にて前記燃料極に供給される水蒸気の流量と前記還流工程にて前記燃料極に還流される水蒸気の流量との総和の流量に対する前記水素供給工程にて前記燃料極に供給される水素の流量と前記還流工程にて前記燃料極に還流される水素の流量との総和の流量の比率Rinが、予め決められた目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給工程にて前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する流量制御工程を含む、水素製造方法。
【0100】
[14]
[13]に記載の水素製造方法であって、
前記燃料極排出ガスに含まれる水蒸気の流量に対する水素の流量の比率Routを推定する燃料極排出ガス流量比率推定工程を含み、
前記流量制御工程は、前記燃料極排出ガス流量比率推定工程にて推定した比率Routに基づいて、比率Rinが目標流量比率Rin
*となるように、前記水素供給工程にて前記燃料極に供給する水素の流量及び前記水蒸気供給工程にて気化する水の流量を制御する工程である、水素製造方法。
【0101】
[15]
[14]に記載の水素製造方法であって、
前記燃料極排出ガス流量比率推定工程は、前記空気極排出ガスの流量、前記空気極排出ガスの酸素濃度、前記電気化学セルの電解電流、前記電気化学セルへの印加電圧、前記燃料極排出ガスの露点、前記燃料極排出ガスの凝縮水分量、のいずれかに基づいて、前記比率Routを推定する工程である、水素製造方法。
【符号の説明】
【0102】
1…水素製造装置、10…水素供給部、11…水素流量調整装置、12…水素供給経路、20…水供給部、21…水流量調整装置、22…水供給経路、30…空気供給部、31…空気流量調整装置、32…空気供給経路、40…水蒸気供給部、41…加熱器、42…混合ガス排出経路、50…SOEC(電気化学セル)、51…燃料極、52…空気極、53…固体電解質層、55…電圧印加装置、60…還流部、61…ブロワ、62…還流経路、70…制御部(制御装置)、80…断熱容器、91…燃料極排出ガス経路、92…空気極排出ガス経路、93…流量センサ