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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006588
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】産業機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G05B19/4155 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107481
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀貢
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB05
3C269EF02
3C269EF39
3C269MN07
3C269MN08
3C269MN16
3C269MN32
3C269QC02
(57)【要約】
【課題】既知のスキップ機能を利用した制御は、スキップ座標を決定するまでに時間がかかる。
【解決手段】制御装置は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有する。制御装置は、第1ブロックの実行中に被検出体に前記タッチスイッチが接触してタッチスイッチから出力される信号が変化すると、第1ブロックを中断して第2ブロックを実行する。制御装置は、第2ブロックの実行中にタッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、第2ブロックを中断する。制御装置は、タッチスイッチから出力される信号が元に戻ったときの、タッチスイッチと被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートメーション化された工程を受け持つ産業機械であって、
複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な制御装置を備え、
前記マシンプログラムは、
被検出体に向かう第1方向に、前記被検出体の位置を検出するためのタッチスイッチを移動させる命令を含む第1ブロックと、
前記タッチスイッチの移動を停止させて、前記第1方向とは反対方向の第2方向に前記タッチスイッチを移動させる命令を含む第2ブロックと、を含み、
前記制御装置は、
外部からの信号によって、前記マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有し、
前記第1ブロックの実行中に前記被検出体に前記タッチスイッチが接触して前記タッチスイッチから出力される信号が変化すると、前記第1ブロックを中断して前記第2ブロックを実行し、
前記第2ブロックの実行中に前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、前記第2ブロックを中断し、
前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ったときの、前記タッチスイッチと前記被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する、産業機械。
【請求項2】
オートメーション化された工程を受け持つ産業機械であって、
複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な制御装置を備え、
前記マシンプログラムは、
被検出体の位置を検出するためのタッチスイッチに向かう第1方向に、前記被検出体を移動させる命令を含む第1ブロックと、
前記被検出体の移動を停止させて、前記第1方向とは反対方向の第2方向に前記被検出体を移動させる命令を含む第2ブロックと、を含み、
前記制御装置は、
外部からの信号によって、前記マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有し、
前記第1ブロックの実行中に前記タッチスイッチに前記被検出体が接触して前記タッチスイッチから出力される信号が変化すると、前記第1ブロックを中断して前記第2ブロックを実行し、
前記第2ブロックの実行中に前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、前記第2ブロックを中断し、
前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ったときの、前記タッチスイッチと前記被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する、産業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能であり、
前記第1モードで動作するときには、前記タッチスイッチから出力される信号が第1状態から第2状態に変化したときに前記スキップ機能を実行し、
前記第2モードで動作するときには、前記タッチスイッチから出力される信号が前記第2状態から前記第1状態に戻ったときに前記スキップ機能を実行し、
前記第1モードで動作しているときに前記スキップ機能を実行すると、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替える、請求項1又は請求項2に記載の産業機械。
【請求項4】
前記第1ブロックは、第1速度で前記タッチスイッチを移動させる命令を含み、
前記第2ブロックは、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記タッチスイッチを移動させる命令を含む、請求項1に記載の産業機械。
【請求項5】
前記マシンプログラムは、前記第2速度よりも速い第3速度で前記第2方向に前記タッチスイッチを移動させる命令を含む第3ブロックを含み、
前記制御装置は、前記第2ブロックの実行中に前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、前記第2ブロックを中断して前記第3ブロックを実行する、請求項4に記載の産業機械。
【請求項6】
前記第1ブロックは、第1速度で前記被検出体を移動させる命令を含み、
前記第2ブロックは、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記被検出体を移動させる命令を含む、請求項2に記載の産業機械。
【請求項7】
前記マシンプログラムは、前記第2速度よりも速い第3速度で前記第2方向に前記被検出体を移動させる命令を含む第3ブロックを含み、
前記制御装置は、前記第2ブロックの実行中に前記タッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、前記第2ブロックを中断して前記第3ブロックを実行する、請求項6に記載の産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、タッチスイッチを用いて、ツールやワークの位置を正確に把握することがある(例えば、特許文献1参照)。ツールやワーク等の被検出体の位置決めは、タッチスイッチ又は被検出体を移動させ、タッチスイッチに被検出体が接触することによりタッチスイッチから出力される信号を利用して行われる。タッチスイッチ又は被検出体を移動させる制御は、例えば、数値制御装置が有するスキップ機能を利用して実行される。
【0003】
例えば、タッチスイッチは、被検出体に対向して配置される。そして、例えば、数値制御装置は、被検出体に向かう第1方向にタッチスイッチを第1速度で移動させる。被検出体にタッチスイッチが接触すると、タッチスイッチから出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。数値制御装置は、タッチスイッチから出力される信号がオフ状態からオン状態に変化すると、スキップ信号が出力されたとみなし実行中の制御を中断し、タッチスイッチの移動を停止させる制御を実行する。数値制御装置は、スキップ信号が出力されたときの、タッチスイッチと被検出体との接触位置をスキップ座標として記憶する。タッチスイッチは、むだ時間に起因して停止するまでに距離を要するため、コンタクトが押し込まれた状態で停止する。
【0004】
そして、数値制御装置は、第1方向とは反対方向の第2方向におけるスキップ座標よりも先の特定位置までタッチスイッチを第1速度で移動させる。第2方向に移動する過程でタッチスイッチから出力される信号は、例えば、オン状態からオフ状態に戻る。しかし、数値制御装置は、タッチスイッチから出力される信号が戻っても、スキップ信号が出力されたとはみなさない。特定位置までタッチスイッチが移動すると、数値制御装置は、第1速度よりも遅い第2速度で第1方向にタッチスイッチを移動させる。被検出体にタッチスイッチが接触すると、タッチスイッチから出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。数値制御装置は、タッチスイッチから出力される信号がオフ状態からオン状態に変化すると、スキップ信号が出力されたとみなし実行中の制御を中断する。数値制御装置は、スキップ信号が出力されたときの、タッチスイッチと被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3577887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のスキップ機能を利用した制御は、スキップ座標を決定するまでに時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、オートメーション化された工程を受け持つ産業機械である。産業機械は、複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な制御装置を備える。マシンプログラムは、被検出体に向かう第1方向に、被検出体の位置を検出するためのタッチスイッチを移動させる命令を含む第1ブロックを含む。マシンプログラムは、タッチスイッチの移動を停止させて、第1方向とは反対方向の第2方向にタッチスイッチを移動させる命令を含む第2ブロックを含む。制御装置は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有する。制御装置は、第1ブロックの実行中に被検出体に前記タッチスイッチが接触してタッチスイッチから出力される信号が変化すると、第1ブロックを中断して第2ブロックを実行する。制御装置は、第2ブロックの実行中にタッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、第2ブロックを中断する。制御装置は、タッチスイッチから出力される信号が元に戻ったときの、タッチスイッチと被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する。
【0008】
本発明の第2態様は、オートメーション化された工程を受け持つ産業機械である。産業機械は、複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な制御装置を備える。マシンプログラムは、被検出体の位置を検出するためのタッチスイッチに向かう第1方向に、被検出体を移動させる命令を含む第1ブロックを含む。マシンプログラムは、被検出体の移動を停止させて、第1方向とは反対方向の第2方向に被検出体を移動させる命令を含む第2ブロックを含む。制御装置は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有する。制御装置は、第1ブロックの実行中にタッチスイッチに被検出体が接触してタッチスイッチから出力される信号が変化すると、第1ブロックを中断して第2ブロックを実行する。制御装置は、第2ブロックの実行中にタッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、第2ブロックを中断する。制御装置は、タッチスイッチから出力される信号が元に戻ったときの、タッチスイッチと被検出体との接触位置をスキップ座標として決定する。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、産業機械は、スキップ座標を決定するための時間を短縮できる。
【0010】
上記の第1態様及び第2態様において、制御装置は、第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能であってよい。制御装置は、第1モードで動作するときには、タッチスイッチから出力される信号が第1状態から第2状態に変化したときにスキップ機能を実行してよい。制御装置は、第2モードで動作するときには、タッチスイッチから出力される信号が第2状態から第1状態に戻ったときにスキップ機能を実行してよい。制御装置は、第1モードで動作しているときにスキップ機能を実行すると、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えてよい。この態様によれば、産業機械は、第1ブロックの実行中に、信号が第2状態から第1状態に戻る誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。また、産業機械は、第2ブロックの実行中に、信号が第1状態から第2状態に変化する誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。
【0011】
上記の第1態様において、第1ブロックは、第1速度でタッチスイッチを移動させる命令を含んでよい。第2ブロックは、第1速度よりも遅い第2速度でタッチスイッチを移動させる命令を含んでよい。この態様によれば、産業機械は、第2ブロックの実行中にスキップ座標を正確に決定できる。
【0012】
マシンプログラムは、第2速度よりも速い第3速度で第2方向にタッチスイッチを移動させる命令を含む第3ブロックを含んでよい。制御装置は、第2ブロックの実行中にタッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、第2ブロックを中断して第3ブロックを実行してよい。この態様によれば、産業機械は、スキップ座標を決定した後に、タッチスイッチを速やかに退避させることができる。
【0013】
上記の第2態様において、第1ブロックは、第1速度で被検出体を移動させる命令を含んでよい。第2ブロックは、第1速度よりも遅い第2速度で被検出体を移動させる命令を含んでよい。この態様によれば、制御装置は、第2ブロックの実行中にスキップ座標を正確に決定できる。
【0014】
マシンプログラムは、第2速度よりも速い第3速度で第2方向に被検出体を移動させる命令を含む第3ブロックを含んでよい。制御装置は、第2ブロックの実行中にタッチスイッチから出力される信号が元に戻ると、第2ブロックを中断して第3ブロックを実行してよい。この態様によれば、産業機械は、スキップ座標を決定した後に、被検出体を速やかに退避させることができる。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションは、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】工作機械100の構成の一例を示す図である。
図2】マシンプログラムに含まれる命令の一例を示す図である。
図3】タッチスイッチ130を移動させる制御の一例を示すフローチャートである。
図4】タッチスイッチ130が移動する一例を示す図である。
図5】タッチスイッチ130を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。
図6】タッチスイッチ130を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。
図7】マシンプログラムに含まれる命令の他の一例を示す図である。
図8】刃物120を移動させる制御の一例を示すフローチャートである。
図9】刃物120が移動する一例を示す図である。
図10】刃物120を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。
図11】刃物120を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全ては、発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、同一又は類似の部分については、図面において同一の参照番号が付されており、重複する説明を省く場合がある。
【0018】
図1は、工作機械100の構成の一例を示す図である。工作機械100は、切削、研削等によって、又は電気、その他のエネルギーを利用して、主として金属のワークにおける不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械である。工作機械100は、数値制御装置110、刃物120及びタッチスイッチ130を備える。工作機械100は、産業機械の一例である。ワークにおける不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げることは、オートメーション化された工程の一例である。
【0019】
数値制御装置110は、数値制御プログラムを解析して、工作機械100を操作するために、工作物に対する工具経路、加工に必要な作業の工程等を、数値と符号で構成した数値情報で指令する装置である。数値制御装置110は、マシンプログラムを実行可能である。マシンプログラムは、数値制御システムを直接操作できるようにした言語及びフォーマットで順序づけられた命令の列である。数値制御装置110は、制御装置の一例である。
【0020】
数値制御装置110は、スキップ機能を有する。スキップ機能は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行する機能である。
【0021】
本実施形態の数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときに、スキップ機能を実行する。換言すれば、数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したことを以て、スキップ信号を受信したとみなしスキップ機能を実行する。
【0022】
また、本実施形態の数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったときに、スキップ機能を実行する。換言すれば、数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったことを以て、スキップ信号を受信したとみなしスキップ機能を実行する。
【0023】
刃物120は、ツールホルダTHに支えられている。ツールホルダTHは、刃物台TRに取り付けられている。刃物台TRは、数値制御装置110と電気的に接続されている。刃物台TRは、数値制御装置110に制御されることにより、Y方向に沿って移動可能である。刃物120は、被検出体の一例である。
【0024】
タッチスイッチ130は、刃物120の位置を検出するためのセンサとして用いられる。タッチスイッチ130は、スイッチ本体部131及び測定子132を備える。タッチスイッチ130は、刃物120の刃先に対して測定子132が対向するように、支持部SDに取り付けられている。支持部SDは、数値制御装置110と電気的に接続されている。支持部SDは、数値制御装置110に制御されることにより、Y方向に沿って移動可能である。タッチスイッチ130は、数値制御装置110と電気的に接続されている。タッチスイッチ130は、オフ状態又はオン状態の信号を数値制御装置110に出力する。オフ状態は、第1状態の一例である。オン状態は、第2状態の一例である。
【0025】
本実施形態のタッチスイッチ130は、A接点のスイッチである。タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触すると、オフ状態からオン状態に変化する。より具体的に説明すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触して測定子132が自由位置から動作位置に押し込まれたときに変化する。自由位置は、測定子132に何の力も加わっていないときの測定子132の位置である。動作位置は、測定子132が押し込まれたときに、信号が変化する位置である。
【0026】
また、タッチスイッチ130から出力される信号は、押し込まれた測定子132が戻ると、オン状態からオフ状態に戻る。より具体的に説明すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、押し込まれた測定子132がもどりの位置まで戻ると、オン状態からオフ状態に戻る。もどりの位置は、自由位置と動作位置との間の位置であり、変化した信号が元に戻る位置である。
【0027】
図2は、マシンプログラムに含まれる命令の一例を示す図である。マシンプログラムは、複数のブロックを含む。ブロックは、一つの作業に対する全ての命令を含むワードのグループである。図2に示すマシンプログラムは、第1ブロックB1、第2ブロックB2及び第3ブロックB3を含む。
【0028】
第1ブロックB1は、刃物120に向かう+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させる命令を含む。第1ブロックB1は、+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第1座標を指定する命令であってよい。例えば、第1座標は、刃物120の刃先の位置として推し量られた座標であってよい。+Y方向は、第1方向の一例である。
【0029】
第2ブロックB2は、タッチスイッチ130の移動を停止させて、第1速度よりも遅い第2速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させる命令を含む。第2ブロックB2は、-Y方向に第2速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第2座標を指定する命令であってよい。例えば、第2座標は、第1ブロックB1の実行中に信号がオフ状態からオン状態に変化したときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置+αの座標であってよい。また、例えば、第2座標は、測定子132のもどりの位置の座標であってよい。-Y方向は、第1方向とは反対方向の第2方向の一例である。
【0030】
第3ブロックB3は、第2速度よりも速い第3速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させる命令を含む。第3ブロックB3は、-Y方向に第3速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第3座標を指定する命令であってよい。例えば、第3座標は、第1ブロックB1の命令を開始するときのタッチスイッチ130の初期位置の座標であってよい。
【0031】
数値制御装置110は、マシンプログラムを実行することにより、刃物120に対してタッチスイッチ130を移動させる。
【0032】
図3は、タッチスイッチ130を移動させる制御の一例を示すフローチャートである。図4は、タッチスイッチ130が移動する一例を示す図である。図3及び図4に関する説明は、図2に示す命令を含むマシンプログラムを実行したときの制御に関する。
【0033】
まず、数値制御装置110は、マシンプログラムの第1ブロックB1を実行し、+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させる(S101)。S101において、数値制御装置110は、+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。前述のとおり、第1ブロックB1は、+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第1座標を指定する命令であってよい。第1座標が指定されている場合、S101において、数値制御装置110は、第1座標までタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。S101の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(A)に示すように+Y方向に第1速度で移動する。
【0034】
数値制御装置110は、信号がオフ状態からオン状態に変化するまでマシンプログラムの第1ブロックB1を実行する(S102;NO→S101)。
【0035】
図4(B)に示すように刃物120にタッチスイッチ130が接触すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。より具体的に説明すると、前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触して測定子132が自由位置から動作位置に押し込まれたときに変化する。
【0036】
信号がオフ状態からオン状態に変化すると(S102;YES)、数値制御装置110は、スキップ信号を受信したとみなし第1ブロックB1を中断する(S103)。
【0037】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、タッチスイッチ130の移動を停止させる(S104)。S104において、数値制御装置110は、タッチスイッチ130の移動を停止させるべく、支持部SDを制御する。
【0038】
タッチスイッチ130の移動を停止させるプロセスにおいては、むだ時間が発生する。むだ時間に起因して、タッチスイッチ130は、図4(C)に示すように、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときの位置よりも進んで停止する。前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触して測定子132が自由位置から動作位置に押し込まれたときに変化する。したがって、タッチスイッチ130は、測定子132が動作位置よりも更に押し込まれた状態で停止する。
【0039】
タッチスイッチ130が停止すると、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、第1速度よりも遅い第2速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させる(S105)。S105において、数値制御装置110は、-Y方向に第2速度でタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。前述のとおり、第2ブロックB2は、-Y方向に第2速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第2座標を指定する命令であってよい。第2座標が指定されている場合、S105において、数値制御装置110は、第2座標までタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。S105の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(D)に示すように-Y方向に第2速度で移動する。
【0040】
数値制御装置110は、信号がオン状態からオフ状態に戻るまでマシンプログラムの第2ブロックB2を実行する(S106;NO→S105)。
【0041】
押し込まれた測定子132が戻ると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オン状態からオフ状態に戻る。より具体的に説明すると、前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、押し込まれた測定子132がもどりの位置まで戻ると、オン状態からオフ状態に戻る。
【0042】
信号がオン状態からオフ状態に戻ると(S106:YES)、数値制御装置110は、スキップ信号を受信したとみなし第2ブロックB2を中断する(S107)。
【0043】
また、数値制御装置110は、スキップ座標を決定する(S108)。S108において、数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置をスキップ座標として決定する。
【0044】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第3ブロックB3を実行し、第2速度よりも速い第3速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させ(S109)、図3に示す制御を終了する。S109において、数値制御装置110は、-Y方向に第3速度でタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。前述のとおり、第3ブロックB3は、-Y方向に第3速度でタッチスイッチ130を移動させるときの目標となる第3座標を指定する命令であってよい。第3座標が指定されている場合、S109において、数値制御装置110は、第3座標までタッチスイッチ130を移動させるべく、支持部SDを制御する。S109の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(E)に示すように-Y方向に第3速度で移動する。
【0045】
以上、本実施形態の工作機械100は、ワークにおける不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械である。工作機械100は、複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な数値制御装置110を備える。マシンプログラムは、刃物120に向かう+Y方向に、刃物120を検出するためのタッチスイッチ130を移動させる命令を含む第1ブロックB1を含む。マシンプログラムは、タッチスイッチ130の移動を停止させて、-Y方向に前記タッチスイッチ130を移動させる命令を含む第2ブロックB2を含む。数値制御装置110は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有する。数値制御装置110は、第1ブロックB1の実行中に刃物120にタッチスイッチ130が接触してタッチスイッチ130から出力される信号が変化すると、第1ブロックB1を中断して第2ブロックB2を実行する。数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にタッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ると、第2ブロックB2を中断する。数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ったときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置をスキップ座標として決定する。この実施形態によれば、工作機械100は、スキップ座標を決定するための時間を短縮できる。
【0046】
また、本実施形態の第1ブロックB1は、第1速度でタッチスイッチ130を移動させる命令を含む。第2ブロックB2は、第1速度よりも遅い第2速度でタッチスイッチ130を移動させる命令を含む。この実施形態によれば、数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にスキップ座標を正確に決定できる。
【0047】
また、本実施形態のマシンプログラムは、第2速度よりも速い第3速度で-方向にタッチスイッチ130を移動させる命令を含む第3ブロックB3を含む。数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にタッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ると、第2ブロックB2を中断して第3ブロックB3を実行する。この実施形態によれば、数値制御装置110は、スキップ座標を決定した後にタッチスイッチ130を速やかに退避させることができる。
【0048】
図5及び図6は、タッチスイッチ130を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。図5及び図6に関する説明は、図2に示す命令を含むマシンプログラムを実行したときの制御に関する。図5及び図6に示すフローチャートにおけるS101からS103、及びS104からS109の制御は、図3に示すS101からS103、及びS104からS109の制御と同様の制御である。
【0049】
本実施形態の数値制御装置110は、第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能である。数値制御装置110は、第1モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときにスキップ機能を実行する。また、数値制御装置110は、第2モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に戻ったときにスキップ機能を実行する。
【0050】
まず、数値制御装置110は、動作モードを第1モードに設定する(S201)。
【0051】
次に、数値制御装置110は、マシンプログラムの第1ブロックB1を実行し、+Y方向に第1速度でタッチスイッチ130を移動させる(S101)。S101の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(A)に示すように+Y方向に第1速度で移動する。
【0052】
数値制御装置110は、信号がオフ状態からオン状態に変化するまでマシンプログラムの第1ブロックB1を実行する(S102;NO→S101)。
【0053】
図4(B)に示すように刃物120にタッチスイッチ130が接触すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。
【0054】
信号がオフ状態からオン状態に変化すると(S102;YES)、数値制御装置110は、第1モードで動作していることから、スキップ信号を受信したとみなし第1ブロックB1を中断する(S103)。
【0055】
数値制御装置110は、スキップ機能により第1ブロックB1を中断すると、動作モードを第1モードから第2モードに切り替える(S202)。
【0056】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、タッチスイッチ130の移動を停止させる(S104)。
【0057】
タッチスイッチ130の移動を停止させるプロセスにおいては、むだ時間が発生する。むだ時間に起因して、タッチスイッチ130は、図4(C)に示すように、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときの位置よりも進んで停止する。
【0058】
タッチスイッチ130が停止すると、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、第1速度よりも遅い第2速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させる(S105)。S105の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(D)に示すように-Y方向に第2速度で移動する。
【0059】
数値制御装置110は、信号がオン状態からオフ状態に戻るまでマシンプログラムの第2ブロックB2を実行する(S106;NO→S105)。
【0060】
押し込まれた測定子132が戻ると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オン状態からオフ状態に戻る。
【0061】
信号がオン状態からオフ状態に戻ると(S106:YES)、数値制御装置110は、第2モードで動作していることから、スキップ信号を受信したとみなし第2ブロックB2を中断する(S107)。
【0062】
また、数値制御装置110は、スキップ座標を決定する(S109)。
【0063】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第3ブロックB3を実行し、第2速度よりも速い第3速度で-Y方向にタッチスイッチ130を移動させ(S108)、図5及び図6に示す制御を終了する。S108の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図4(E)に示すように-Y方向に第3速度で移動する。
【0064】
以上、本実施形態の数値制御装置110は、第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能である。数値制御装置110は、第1モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときにスキップ機能を実行する。数値制御装置110は、第2モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったときにスキップ機能を実行する。数値制御装置110は、第1モードで動作しているときにスキップ機能を実行すると、動作モードを第1モードから第2モードに切り替える。この実施形態によれば、数値制御装置110は、第1ブロックB1の実行中に、信号が第2状態から第1状態に戻る誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。また、数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中に、信号が第1状態から第2状態に変化する誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。
【0065】
図7は、マシンプログラムに含まれる命令の他の一例を示す図である。図7に示すマシンプログラムは、第1ブロックB1、第2ブロックB2及び第3ブロックB3を含む。
【0066】
第1ブロックB1は、タッチスイッチ130に向かう-Y方向に第1速度で刃物120を移動させる命令を含む。第1ブロックB1は、-Y方向に第1速度で刃物120を移動させるときの目標となる第1座標を指定する命令であってよい。例えば、第1座標は、測定子132の先端の位置として推し量られた座標であってよい。-Y方向は、第1方向の一例である。
【0067】
第2ブロックB2は、刃物120の移動を停止させて、第1速度よりも遅い第2速度で+Y方向に刃物120を移動させる命令を含む。第2ブロックB2は、+Y方向に第2速度で刃物120を移動させるときの目標となる第2座標を指定する命令であってよい。例えば、第2座標は、第1ブロックB1の実行中に信号がオフ状態からオン状態に変化したときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置+αの座標であってよい。また、例えば、第2座標は、測定子132のもどりの位置の座標であってよい。+Y方向は、第1方向とは反対方向の第2方向の一例である。
【0068】
第3ブロックB3は、第2速度よりも速い第3速度で+Y方向に刃物120を移動させる命令を含む。第3ブロックB3は、+Y方向に第3速度で刃物120を移動させるときの目標となる第3座標を指定する命令であってよい。例えば、第3座標は、第1ブロックB1の命令を開始するときの刃物120の初期位置の座標であってよい。
【0069】
数値制御装置110は、マシンプログラムを実行することにより、タッチスイッチ130に対して刃物120を移動させる。
【0070】
図8は、刃物120を移動させる制御の一例を示すフローチャートである。図9は、刃物120が移動する一例を示す図である。図8及び図9に関する説明は、図7に示す命令を含むマシンプログラムを実行したときの制御に関する。
【0071】
まず、数値制御装置110は、マシンプログラムの第1ブロックB1を実行し、-Y方向に第1速度で刃物120を移動させる(S301)。S301において、数値制御装置110は、-Y方向に第1速度で刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。前述のとおり、第1ブロックB1は、-Y方向に第1速度で刃物120を移動させるときの目標となる第1座標を指定する命令であってよい。第1座標が指定されている場合、S301において、数値制御装置110は、第1座標まで刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。S301の制御が実行されることにより、刃物120は、図9(A)に示すように-Y方向に第1速度で移動する。
【0072】
数値制御装置110は、信号がオフ状態からオン状態に変化するまでマシンプログラムの第1ブロックB1を実行する(S302;NO→S301)。
【0073】
図9(B)に示すようにタッチスイッチ130に刃物120が接触すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。より具体的に説明すると、前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触して測定子132が自由位置から動作位置に押し込まれたときに変化する。
【0074】
信号がオフ状態からオン状態に変化すると(S302;YES)、数値制御装置110は、スキップ信号を受信したとみなし第1ブロックB1を中断する(S303)。
【0075】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、刃物120の移動を停止させる(S304)。S304において、数値制御装置110は、刃物120の移動を停止させるべく、刃物台TRを制御する。
【0076】
刃物120の移動を停止させるプロセスにおいては、むだ時間が発生する。むだ時間に起因して、刃物120は、図9(C)に示すように、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときの位置よりも進んで停止する。前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、刃物120にタッチスイッチ130が接触して測定子132が自由位置から動作位置に押し込まれたときに変化する。したがって、刃物120は、測定子132が動作位置よりも更に押し込まれた状態で停止する。
【0077】
刃物120が停止すると、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、第1速度よりも遅い第2速度で+Y方向に刃物120を移動させる(S305)。S305において、数値制御装置110は、+Y方向に第2速度で刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。前述のとおり、第2ブロックB2は、+Y方向に第2速度で刃物120を移動させるときの目標となる第2座標を指定する命令であってよい。第2座標が指定されている場合、S305において、数値制御装置110は、第2座標まで刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。S305の制御が実行されることにより、刃物120は、図9(D)に示すように+Y方向に第2速度で移動する。
【0078】
数値制御装置110は、信号がオン状態からオフ状態に戻るまでマシンプログラムの第2ブロックB2を実行する(S306;NO→S305)。
【0079】
押し込まれた測定子132が戻ると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オン状態からオフ状態に戻る。より具体的に説明すると、前述のとおり、タッチスイッチ130から出力される信号は、押し込まれた測定子132がもどりの位置まで戻ると、オン状態からオフ状態に戻る。
【0080】
信号がオン状態からオフ状態に戻ると(S306:YES)、数値制御装置110は、スキップ信号を受信したとみなし第2ブロックB2を中断する(S307)。
【0081】
また、数値制御装置110は、スキップ座標を決定する(S308)。S308において、数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置をスキップ座標として決定する。
【0082】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第3ブロックB3を実行し、第2速度よりも速い第3速度で+Y方向に刃物120を移動させ(S309)、図8に示す制御を終了する。S309において、数値制御装置110は、+Y方向に第3速度で刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。前述のとおり、第3ブロックB3は、+Y方向に第3速度で刃物120を移動させるときの目標となる第3座標を指定する命令であってよい。第3座標が指定されている場合、S309において、数値制御装置110は、第3座標まで刃物120を移動させるべく、刃物台TRを制御する。S309の制御が実行されることにより、刃物120は、図9(E)に示すように+Y方向に第3速度で移動する。
【0083】
以上、本実施形態の工作機械100は、ワークにおける不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械である。工作機械100は、複数のブロックを含むマシンプログラムを実行可能な数値制御装置110を備える。マシンプログラムは、刃物120を検出するためのタッチスイッチ130に向かう-Y方向に、刃物120を移動させる命令を含む第1ブロックB1を含む。マシンプログラムは、刃物120の移動を停止させて、+Y方向に刃物120を移動させる命令を含む第2ブロックB2を含む。数値制御装置110は、外部からの信号によって、マシンプログラムにおける実行中のブロックを中断し、次のブロックを実行するスキップ機能を有する。数値制御装置110は、第1ブロックB1の実行中にタッチスイッチ130に刃物120が接触してタッチスイッチ130から出力される信号が変化すると、第1ブロックB1を中断して第2ブロックB2を実行する。数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にタッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ると、第2ブロックB2を中断する。数値制御装置110は、タッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ったときの、タッチスイッチ130と刃物120との接触位置をスキップ座標として決定する。この実施形態によれば、数値制御装置110は、スキップ座標を決定するための時間を短縮できる。
【0084】
また、本実施形態の第1ブロックB1は、第1速度で刃物120を移動させる命令を含む。第2ブロックB2は、第1速度よりも遅い第2速度で刃物120を移動させる命令を含む。この実施形態によれば、数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にスキップ座標を正確に決定できる。
【0085】
また、本実施形態のマシンプログラムは、第2速度よりも速い第3速度で+方向に刃物120を移動させる命令を含む第3ブロックB3を含む。数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中にタッチスイッチ130から出力される信号が元に戻ると、第2ブロックB2を中断して第3ブロックB3を実行する。この実施形態によれば、数値制御装置110は、スキップ座標を決定した後に刃物120を速やかに退避させることができる。
【0086】
図10及び図11は、刃物120を移動させる制御の他の一例を示すフローチャートである。図10及び図11に関する説明は、図7に示す命令を含むマシンプログラムを実行したときの制御に関する。図10及び図11に示すフローチャートにおけるS301からS303、及びS304からS309の制御は、図8に示すS301からS303、及びS304からS309の制御と同様の制御である。
【0087】
本実施形態の数値制御装置110は、第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能である。数値制御装置110は、第1モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときにスキップ機能を実行する。また、数値制御装置110は、第2モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に戻ったときにスキップ機能を実行する。
【0088】
まず、数値制御装置110は、動作モードを第1モードに設定する(S401)。
【0089】
次に、数値制御装置110は、マシンプログラムの第1ブロックB1を実行し、-Y方向に第1速度で刃物120を移動させる(S301)。S301の制御が実行されることにより、刃物120は、図9(A)に示すように-Y方向に第1速度で移動する。
【0090】
数値制御装置110は、信号がオフ状態からオン状態に変化するまでマシンプログラムの第1ブロックB1を実行する(S302;NO→S301)。
【0091】
図9(B)に示すようにタッチスイッチ130に刃物120が接触すると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オフ状態からオン状態に変化する。
【0092】
信号がオフ状態からオン状態に変化すると(S302;YES)、数値制御装置110は、第1モードで動作していることから、スキップ信号を受信したとみなし第1ブロックB1を中断する(S303)。
【0093】
数値制御装置110は、スキップ機能により第1ブロックB1を中断すると、動作モードを第1モードから第2モードに切り替える(S402)。
【0094】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、刃物120の移動を停止させる(S304)。
【0095】
刃物120の移動を停止させるプロセスにおいては、むだ時間が発生する。むだ時間に起因して、刃物120は、図9(C)に示すように、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときの位置よりも進んで停止する。
【0096】
刃物120が停止すると、数値制御装置110は、マシンプログラムの第2ブロックB2を実行し、第1速度よりも遅い第2速度で+Y方向に刃物120を移動させる(S305)。S305の制御が実行されることにより、刃物120は、図9(D)に示すように+Y方向に第2速度で移動する。
【0097】
数値制御装置110は、信号がオン状態からオフ状態に戻るまでマシンプログラムの第2ブロックB2を実行する(S306;NO→S305)。
【0098】
押し込まれた測定子132が戻ると、タッチスイッチ130から出力される信号は、オン状態からオフ状態に戻る。
【0099】
信号がオン状態からオフ状態に戻ると(S306:YES)、数値制御装置110は、第2モードで動作していることから、スキップ信号を受信したとみなし第2ブロックB2を中断する(S307)。
【0100】
また、数値制御装置110は、スキップ座標を決定する(S309)。
【0101】
そして、数値制御装置110は、マシンプログラムの第3ブロックB3を実行し、第2速度よりも速い第3速度で+Y方向に刃物120を移動させ(S308)、図10及び図11に示す制御を終了する。S308の制御が実行されることにより、タッチスイッチ130は、図9(E)に示すように+Y方向に第3速度で移動する。
【0102】
以上、本実施形態の数値制御装置110は、第1モードと第2モードとのいずれか一方の動作モードで動作可能である。数値制御装置110は、第1モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオフ状態からオン状態に変化したときにスキップ機能を実行する。数値制御装置110は、第2モードで動作するときには、タッチスイッチ130から出力される信号がオン状態からオフ状態に戻ったときにスキップ機能を実行する。数値制御装置110は、第1モードで動作しているときにスキップ機能を実行すると、動作モードを第1モードから第2モードに切り替える。この実施形態によれば、数値制御装置110は、第1ブロックB1の実行中に、信号が第2状態から第1状態に戻る誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。また、数値制御装置110は、第2ブロックB2の実行中に、信号が第1状態から第2状態に変化する誤作動に起因してスキップ機能が実行されることを防止できる。
【0103】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されない。当業者は、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが明らかである。また、特定の実施形態について説明した事項は、技術的に矛盾しない範囲において、他の実施形態に適用できる。本発明の技術的範囲は、そのような変更又は改良を加えた形態も含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0104】
例えば、上記実施形態は、産業機械の一例として、工作機械100を例に挙げて説明した。しかし、産業機械は、工作機械100に限られない。産業機械は、例えば、建設機械、農業機械、木工機械、パルスレーザー研削を用いて刃物120の刃先を精密成形する機械等であってよい。
【0105】
例えば、上記実施形態の被検出体は刃物120である。しかし、被検出体は、刃物120に限られない。被検出体は、例えば、ワークであってよい。
【0106】
例えば、上記実施形態のタッチスイッチ130は、A接点のスイッチである。しかし、タッチスイッチ130は、A接点のスイッチに限られない。タッチスイッチ130は、例えば、B接点のスイッチであってよい。B接点のタッチスイッチ130を用いる場合、数値制御装置110は、信号がオン状態からオフ状態に変化したときに、スキップ機能を実行すればよい。また、数値制御装置110は、信号がオフ状態からオン状態に戻ったときに、スキップ機能を実行すればよい。B接点のタッチスイッチ130を用いる場合、オン状態は、第1状態の一例である。オフ状態は、第2状態の一例である。
【0107】
例えば、上記実施形態のタッチスイッチ130は、オフ状態又はオン状態の信号を出力するスイッチである。しかし、タッチスイッチ130は、オフ状態又はオン状態の信号を出力するスイッチに限られない。タッチスイッチ130は、ロー状態又はハイ状態の信号を出力するスイッチであってよい。ロー状態又はハイ状態の信号を出力するA接点のタッチスイッチ130を用いる場合、数値制御装置110は、信号がロー状態からハイ状態に変化したときに、スキップ機能を実行すればよい。また、数値制御装置110は、信号がハイ状態からロー状態に戻ったときに、スキップ機能を実行すればよい。ロー状態又はハイ状態の信号を出力するA接点のタッチスイッチ130を用いる場合、ロー状態は、第1状態の一例である。ハイ状態は、第2状態の一例である。
【0108】
ロー状態又はハイ状態の信号を出力するB接点のタッチスイッチ130を用いる場合、数値制御装置110は、信号がハイ状態からロー状態に変化したときに、スキップ機能を実行すればよい。また、数値制御装置110は、信号がロー状態からハイ状態に戻ったときに、スキップ機能を実行すればよい。ロー状態又はハイ状態の信号を出力するB接点のタッチスイッチ130を用いる場合、ハイ状態は、第1状態の一例である。ロー状態は、第2状態の一例である。
【0109】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム及び方法における動作、手順、ステップ及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示していない。各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理において用いるのでない限り、任意の順序によって実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関しては、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順位よって実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0110】
110 数値制御装置、120 刃物、130 タッチスイッチ、131 スイッチ本体部、132 測定子B1 第1ブロック、B2 第2ブロック、B3 第3ブロック、SD 支持部、TH ツールホルダ、TR 刃物台、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11