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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025066019
(43)【公開日】2025-04-22
(54)【発明の名称】接地抵抗低減材及び接地装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/66 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
H01R4/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175608
(22)【出願日】2023-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000130835
【氏名又は名称】株式会社サンコーシヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】寺島 幸二
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太
(72)【発明者】
【氏名】倉野 秀二
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出の削減に寄与し得ると共に、化石燃料のコークスを用いた接地抵抗低減材と同等に使用できる接地抵抗低減材と、その接地抵抗低減材を用いた接地装置とを提供し、さらに軽量化を図れる接地抵抗低減材を提供する。
【解決手段】土壌12中に埋設する接地電極11と土壌12との間に配置するための接地抵抗低減材14であり、バイオマスの不完全燃焼により得られる炭化物粉粒体が含有されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中に埋設する接地電極と該土壌との間に配置するための接地抵抗低減材であって、
バイオマスの不完全燃焼により得られる炭化物粉粒体を含有させたことを特徴とする、接地抵抗低減材。
【請求項2】
前記炭化物粉粒体の比抵抗が430Ω・cm以下である、請求項1に記載の接地抵抗低減材。
【請求項3】
前記炭化物粉粒体の嵩比重が0.40g/cm以下である、請求項2に記載の接地抵抗低減材。
【請求項4】
前記炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率が7.5wt%以下である、請求項3に記載の接地抵抗低減材。
【請求項5】
前記炭化物粉粒体と水硬性粉体とが混合状態で含有され、硬化することで前記接地電極を一体化可能である、請求項1に記載の接地抵抗低減材。
【請求項6】
前記炭化物粉粒体と前記水硬性粉体とが、重量比で10:90~50:50の割合で混合されている、請求項5に記載の接地抵抗低減材。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載された接地抵抗低減材が、硬化して土壌に埋設されると共に、該接地抵抗低減材に接地電極が一体化されたことを特徴とする、接地装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地抵抗低減材及び接地抵抗低減材を用いた接地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
裸銅線等の接地電極を土壌に埋設する際、接地電極と土壌との間に接地抵抗低減材を配置して接地抵抗を低減する技術が知られている。例えば特許文献1には、電気伝導性物質として、石炭又は石油から生成したコークス等の炭素粒粉と、アルカリ性固結材としてセメントの粉体と、が混合された接地抵抗低減材を、大地の溝穴に散布して接地電極を埋め込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-165975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接地抵抗低減材に使用されていたコークス等の粉末は、化石燃料から精製されるため、製造過程で二酸化炭素が大量に発生してカーボンニュートラルの実現に貢献できず、しかも近年コークス粉末などの価格が高騰していることもあって、代替品が望まれている。また従来の接地抵抗低減材は重量が嵩むため、輸送車両を使用できない山間部などでの接地電極の埋設作業において、接地抵抗低減材の人手による運搬負担の低減化に資する軽量化が望まれている。
【0005】
そこで本発明では、二酸化炭素の排出の削減に寄与し得ると共に、化石燃料のコークスを用いた接地抵抗低減材と同等に使用できる接地抵抗低減材を提供することを目的とし、またそのような接地抵抗低減材の軽量化を図ることを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、土壌中に埋設する接地電極と土壌との間に配置するための接地抵抗低減材であって、この接地抵抗低減材は、バイオマスの不完全燃焼により得られる炭化物粉粒体を含有させたことを特徴としている。
このような本発明によれば、炭化物粉粒体がバイオマスの不完全燃焼により得られることで、化石燃料のコークスに比べて製造過程で発生する二酸化炭素の排出を少なくすることができる。またバイオマスを炭化して土壌中に配置するので、腐敗や分解等を防止して土壌中に長期間安定して留められる。そのため二酸化炭素の排出の削減に長期間寄与できる。しかも、バイオマス由来の炭化物粉粒体を用いても接地抵抗低減材としての比抵抗を化石燃料のコークスを用いたものと同等に低く抑えることができるので、十分な接地抵抗の低減効果を得ることができる。
よって本発明によれば、CO削減に長期間寄与できると共に、コークスを用いた接地抵抗低減材と同等に使用可能な接地抵抗低減材を提供することができる。
【0007】
本発明の接地抵抗低減材は、炭化物粉粒体の比抵抗が430Ω・cm以下であるのがよく、比抵抗を低く抑えて接地抵抗の低減効果を確保し易い。
また本発明の接地抵抗低減材では、炭化物粉粒体の嵩比重が0.40g/cm以下であるのがよい。
バイオマスの不完全燃焼により得られる炭化物粉粒体は化石燃料のコークスに比べて嵩比重が小さいため、接地抵抗低減材の軽量化を図ることができ、施工前には接地抵抗低減材の運搬が容易で取り扱いが有利であり、施工時には作業の手間を軽減でき容易に接地電極を埋設及び固定でき、施工の手間を簡略化することができる。
【0008】
本発明の接地抵抗低減材では、炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率が7.5wt%以下であるのが好ましい。
このようにすれば、接地抵抗低減材の使用前に水硬性成分の硬化が進行することを抑制できる。また水分の質量分率が高い炭化物粉粒体では、接地抵抗低減材を水と混錬する際、ダマが形成され易い。ところが、水分の質量分率を上記の範囲とすることで混錬作業を行い易くすることもできる。
【0009】
本発明の接地抵抗低減材は、以上のような炭化物粉粒体と水硬性粉体とが混合状態で含有されていて、硬化することで接地電極を一体化可能とするのが好ましい。
このようにすれば、硬化することで炭化物粉粒体を一定位置に保持できると共に、接地電極を接地抵抗低減材と一体化して土壌と接触する接地電極の面積を拡大でき、接地抵抗の低減効果を向上することが可能である。
【0010】
その場合、炭化物粉粒体と水硬性粉体とが、重量比で10:90~50:50の割合で混合されているのが好適である。
炭化物粉粒体と水硬性粉体とをこのような混合比で混合して接地抵抗低減材とすれば、土壌中で硬化させたときに接地抵抗低減材の強度を確保できると共に、十分な接地抵抗の低減効果を確保できる。また接地電極が接地抵抗低減材中に埋設されて一体に固定した状態が維持され易いため、比抵抗を低く抑えて接地抵抗の低減効果を向上させることができる。
【0011】
本発明の接地装置は、以上のような接地抵抗低減材が硬化して土壌に埋設されると共に、接地抵抗低減材に接地電極が一体化された装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化炭素の排出の削減に大きく寄与し得ると共に、化石燃料のコークスを用いた接地抵抗低減材と同等の性能で使用できる接地抵抗低減材と、その接地抵抗低減材を用いた接地装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る接地抵抗低減材を用いて形成した接地装置を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る接地装置の接地電極を説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る接地装置の製造方法を説明する図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る接地装置を示す縦断面図である。
図5】本発明の実施形態の他の変形例に係る接地電極の配置を説明する図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る接地装置の接地電極を説明する図である。
図7】実施例1における炭化物粉粒体とセメントとの混合比に対する比抵抗の変化を示すグラフである。
図8】実施例1及び比較例1における接地抵抗の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
図9】実施例2、3及び比較例2における接地抵抗の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態の接地抵抗低減材は、各種の電気設備や避雷設備等の接地電極を土壌に埋設する際、接地電極と土壌との間に配置して接地抵抗を低減するための材料であり、本実施形態では、接地電極を接地抵抗低減材の内部に埋設した状態で固定して一体化するものである。
【0015】
この接地抵抗低減材は、バイオマスの不完全燃焼により得られる炭化物粉粒体と、水硬性粉体と、を混合状態で含有している。
土壌に配置する時点では、粉粒体の状態であってもよく、水性液と混合したスラリー状の状態であってもよいが、土壌に配置後には経時的に硬化するものであることが必要である。
【0016】
炭化物粉粒体は、予めバイオマスの不完全燃焼により作製された粉粒体である。しかしながら、原料のバイオマスにより各種の性質が変動することがわかった。そこで本発明者らは種々のバイオマスを用いて、電気伝導度や粒径などを探究したところ、本実施形態に記載のように、炭化物粉粒体として、例えばスギ、ヒノキなどの木質バイオマスの炭化物粉粒体を用いるのがよいことが確認できた。
【0017】
炭化物粉粒体の作製時の不完全燃焼は、バイオマスの少なくとも一部が炭化可能な熱処理であればよく、例えば酸素量供給量を適宜規制しつつ加熱して不完全燃焼させる処理であってもよい。
【0018】
このような炭化物粉粒体としては、比抵抗が430Ω・cm以下であるものを使用することが好ましい。炭化物粉粒体の比抵抗が過剰に高いと、十分な接地抵抗の低減効果を得難くなるためである。炭化物粉粒体の比抵抗は、炭化物粉粒体に吸水させた状態で、例えば4電極法などにより測定することができる。
【0019】
この炭化物粉粒体は、水硬性粉体と混合した状態で、比抵抗が100Ω・cm以下となるものであるのが好適である。水硬性粉体と混合した状態で比抵抗が100Ω・cm以下であれば、木炭、竹炭、籾殻由来、家畜排泄物由来などのバイオ炭粉末の材料であってもよい。
【0020】
また炭化物粉粒体は、粒径が998μm~0.291μm(16メッシュパス以下)のような範囲の粉粒体を用いることができる。粒径の測定は例えば篩を用いた分級やレーザー回折などにより行うことができる(例えば、レーザー回折測定装置「SALD-3100」、株式会社島津製作所製)。
このような炭化物粉粒体であれば、水との親和性が良く、水硬性粉体と混合した際、加水時の攪拌性にムラが生じ難い。
【0021】
また炭化物粉粒体は、嵩比重が0.40g/cm以下であるのが好適である。
このように炭化物粉粒体の比重が小さければ、接地抵抗低減材を化石燃料のコークスに比べて格段に軽量化でき、取り扱いや施工を容易にできる。しかも接地抵抗低減材の体積を確保できれば、土壌中で硬化させた状態で土壌との接触面積が確保でき、これにより十分な接地抵抗の低減効果を得ることが可能である。
【0022】
さらに炭化物粉粒体は、含有されている水分の質量分率が7.5wt%以下であるのが好適である。炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率は、例えばJIS M 8812:2004に準拠した測定方法で測定することができる。
水分の質量分率がこの範囲であれば、接地抵抗低減材の使用前に、炭化物粉粒体に含まれる水分により水硬性成分の硬化が進行することを抑制できる。
また水分の質量分率が高い炭化物粉粒体では、接地抵抗低減材を水と混錬してからスラリーの状態で土壌に配置する際、混錬作業においてダマが形成され易い傾向があるため、水分の質量分率を7.5wt%以下とすることでダマの発生を抑えて混錬作業を行い易くすることができる。
【0023】
一方、水硬性粉体は、加水して混合することで、あるいは土壌中で周囲から水分が供給されることで、経時的に硬化可能な材料である。水硬性粉体は、炭化物粉粒体を混合した状態で硬化することで土壌中において炭化物粉粒体を一定位置に固定すると共に、埋設した接地電極を一定位置に固定することができる。
この水硬性粉体としては、水により硬化可能な材料であれば適宜使用可能であり、例えばポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメント、エコセメントなどの各種セメントなどであってもよい。
【0024】
接地抵抗低減材は、これらの炭化物粉粒体と水硬性粉体とが混合状態で含有された粉粒体である。他の材料が含有されていてもよく、例えばベントナイトや無機塩などが含有されていてもよい。
【0025】
炭化物粉粒体と水硬性粉体との混合割合は、炭化物粉粒体:水硬性粉体の比を、重量比で10:90~50:50としてもよい。
炭化物粉粒体の比率を大きくした場合、接地抵抗の低減効果は上がるものの炭化物粉粒体に対して水硬性粉体が少なくなり、土壌に配置して硬化させたときに硬化した接地抵抗低減材の強度が不足することがある。また接地電極を接地抵抗低減材に埋設固定して一体に保持するための強度が不足することがあり、例えば硬化後に割れや破損が生じたり、接地電極との間に間隙が形成されて土壌の水分や湿気が侵入することで接地電極に腐食が生じたりすることがある。一方、水硬性粉体の比率を大きくした場合、強度は上がるが、炭化物粉粒体に対して水硬性粉体が多くなり比抵抗が高くなり易く、接地抵抗の低減効果が得られ難くなることがある。
【0026】
次に、このような接地抵抗低減材を用いた本実施形態の接地装置について図1乃至3を用いて説明する。
接地装置10は、被アース体に接続された接地電極11を土壌12に埋設する装置である。この接地装置10は、図1に示すように、土壌12に設けられた溝状の凹部13に沿って接地電極11が配置されると共に、凹部13内に接地抵抗低減材14が敷設されて接地電極11が埋設され、この接地抵抗低減材14が土壌12’中に埋設されている。
【0027】
この接地装置10では、図示しない電気設備や避雷設備等に接続された被覆線15が延長して配置され、被覆線15の先端側に接地電極11が接続されている。接地電極11は、図2に示すように、被覆線15に接続金具16により端部で接続された裸銅撚線などからなり、裸銅撚線の全長が土壌中で接地抵抗低減材14に埋設されている。
接地抵抗低減材14は、混合された水硬性粉末により土壌12中で経時的に硬化していく。完全に硬化した状態では帯状に連続した硬化物となり、接地電極11を一体に土壌12に固定している。
【0028】
このような接地装置10を作製するには、図3に示すように、土壌12に溝状の凹部13を掘削し、被覆線15に接続された接地電極11を凹部13に沿って配置し、接地電極11を埋設するよう凹部13内に接地抵抗低減材14を敷設する。このとき接地抵抗低減材14を、粉粒体のまま凹部13に敷設してもよく、予め水に混錬したスラリーの状態で凹部13に敷設してもよい。
その後、土壌12’を埋め戻して踏み固め、さらに土壌12’を追加して溝状の凹部13を完全に埋め戻すことで作製することができる。そして、接地抵抗低減材14が経時的に完全に硬化することで接地装置10が完成する。
【0029】
本発明の接地装置10によれば、接地電極11からの電気が接地抵抗低減材14を通して土壌12に流れる。その際、比抵抗が小さい接地抵抗低減材14が接地電極11を取り囲んで硬化した状態で配置されており、この接地抵抗低減材14の広い表面が土壌と接触しているので、十分な接地抵抗の低減効果を得ることができる。
【0030】
以上のような本実施形態の接地抵抗低減材14及び接地装置10によれば、炭化物粉粒体がバイオマスの不完全燃焼により得られるので、化石燃料のコークスに比べて製造過程で発生する二酸化炭素の排出を少なくできる。またバイオマスを炭化して土壌12中に配置するので、腐敗や分解等を防止して土壌12中に長期間安定して留められる。そのため、二酸化炭素の排出の削減に長期間寄与でき、カーボンニュートラルの実現に貢献する。しかもバイオマス由来の炭化物粉粒体を用いても接地抵抗低減材14としての比抵抗を化石燃料のコークスを用いたものと同等に低く抑えることができるので、十分な接地抵抗の低減効果が得られる。
【0031】
本実施形態では、接地抵抗低減材14が炭化物粉粒体と水硬性粉体とを混合状態で含有していて、これを硬化することで接地電極11を接地抵抗低減材11に一体化可能であるので、硬化することで炭化物粉粒体を一定位置に保持し得ると共に、接地電極11を接地抵抗低減材14と一体化することで土壌12との接触面積を拡大して接地抵抗の低減効果を向上することができる。
【0032】
また、バイオマスの不完全燃焼により得られた炭化物粉粒体が化石燃料のコークスに比べて比重が格段に小さいため、接地抵抗低減材14の軽量化を図ることができる。よって、施工前には接地抵抗低減材を容易に運搬することができ取り扱いも容易であり、施工時には作業の手間が軽減でき容易に接地電極を埋設及び固定できるので、施工の手間が大幅に簡略化する。
【0033】
なお上記実施形態は本発明の範囲において適宜変更可能である。
上記実施形態では、土壌12に水平方向に溝状の凹部13を設け、接地抵抗低減材14を溝状の凹部13に沿って配置して接地電極11を埋設した例について説明したが、例えば図4に示すように、凹部13を縦方向に設けた縦穴状としてもよい。その場合、縦穴状の凹部13内に予め水と混錬してスラリー状にした接地抵抗低減材14を充填し、その内部に接地電極11を埋設して硬化することで一体化することも可能である。
【0034】
また上記の接地装置10では、1本の接地電極11を土壌12中に埋設した例について説明したが、接地電極11の本数は何ら限定されることはない。例えば接地抵抗を低減するため図5に示すように、複数に分岐した接地電極11を埋設することも可能である。
その場合、図6に示すように、接続金具16を用いて接地電極11としての裸銅撚線の中間位置で被覆線15と接続することで、接地電極11を分岐して多数を並列に接続し、それぞれを接地抵抗低減材14中に埋設して土壌12に配置してもよい。
さらに上記では接地電極11として裸銅撚線を用いた例について説明したが、土壌12や接地抵抗低減材14中に埋設しても腐食しにくい導電性の材料であれば、接地電極11の材質や形状等は特に限定されない。
【0035】
上記実施形態では接地抵抗低減材として、炭化物粉粒体と水硬性粉体とが所定の混合状態で含有された例について説明したが、この実施形態に特に限定されるものではない。
【実施例0036】
以下、実施例によりさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(接地抵抗低減材の作製)
バイオ炭A(スギ、ヒノキなどのウッドチップ由来)からなる炭化物粉粒体とセメントとを混合して接地抵抗低減材14を作製した。
炭化物粉粒体とセメントとの混合比に対する比抵抗の変化を測定したところ、図7に示すように、バイオ炭Aの配合割合が10%以上、即ち、バイオ炭A:セメントの混合比が10:90~100:0までの範囲であれば、比抵抗を100Ω・cm未満にすることができた。
そこで実施例1では、接地抵抗低減材として、前述した強度の関係も考慮して、炭化物粉粒体:セメントの混合比を45:55の割合にて均一に混合することで接地抵抗低減材14を作製した。
【0037】
バイオ炭Aは、ウッドチップを熱分解して合成ガスを生成した後の残渣から得られた炭化物の粉粒体であり、嵩比重が0.15g/cm、炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率が5.20~7.47wt%であった。
また炭化物粉粒体の比抵抗は12Ω・cmであった。比抵抗は、炭化物粉粒体に加水して水練りすることで吸水させた状態で測定したもので、炭化物粉粒体30gを試験容器に入れ、加水して均一に混錬し、撹拌しても水が浮いてこない水の量を吸水させ、4電極法により測定した。
【0038】
一方、セメントは高炉セメントB種(ポルトランドセメント40%を超え70%以下、高炉スラグ30%を超え40%以下)というものであった。
【0039】
バイオ炭Aとセメントとを均一に混合した接地抵抗低減材14を袋詰めにして複数準備した。1袋の収容量は容積24000cm、重量13kgであった。
【0040】
(接地装置の作製)
図1及び図2に示すように、土壌12に幅0.5m、深さ0.7m、長さ2.6mの溝状の凹部13を掘削して設け、被覆線15に接続された接地電極11として、長さ2.6mの裸銅撚線を溝状の凹部13に沿って敷設した。接地電極11の裸銅撚線の上に1袋の接地抵抗低減材14を粉粒体のまま敷設した。
その後、土壌を10cm厚となるように埋め戻して踏み固めた後、溝状の凹部13を完全に埋め戻した。
【0041】
(接地抵抗値の測定)
接地装置を作製した後、接地抵抗値を経時的に測定した。測定結果を表1及び図8に示す。接地抵抗値は直読式接地抵抗計(日置電機株式会社製、型番FT6031)にて測定した。
【0042】
[比較例1]
石炭コークスの粉末を用いた接地抵抗低減材(「サンアースM5C」、株式会社サンコーシヤ製、商標)を用いる他は、全て実施例1と同様にして接地装置10を作製し、接地抗値を経時的に測定した。測定結果を表1及び図8に示す。
【0043】
接地抵抗低減材「サンアースM5C」を構成する石炭コークスの粉末は、嵩比重が0.72g/cm、炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率は0.5wt%であった。また水練りされた状態の炭化物粉粒体の比抵抗は430Ω・cmであった。セメントは実施例1と同一のものを使用した。
接地抵抗低減材「サンアースM5C」は石炭コークスの粉末とセメントとを45:55の割合で混合したものである。
【0044】
この接地抵抗低減材「サンアースM5C」は袋詰めにした形態であり、1袋の収容量は実施例1と同一の容積で、重量が25kgである。
【0045】
【表1】
【0046】
[実施例2]
予め水と混錬してスラリー状にした接地抵抗低減材14を用いると共に、図4に示すような接地装置10を作製する他は、全て実施例1と同様にして、接地抵抗値の測定を行った。
接地装置10は、直径100mm、深さ3mの縦穴状の凹部13を掘削して設け、接地電極11として2.6mの裸銅撚線を縦穴状の凹部13に挿入し、1袋の接地抵抗低減材14を25kgの水でスラリー状にして縦穴状の凹部13に充填し、土壌により完全に埋め戻すことで作製した。
【0047】
このような接地装置10を作製後、接地抵抗値を経時的に測定した。測定結果を表2及び図9に示す。接地抵抗値は上記の直読式接地抵抗計にて測定した。
【0048】
[実施例3]
バイオ炭B(スギ、ヒノキなどのウッドチップ由来)からなる炭化物粉粒体を用いる他は、実施形態2と同様にして接地抵抗低減材14を作製すると共に、接地装置10を作製し、接地抵抗値を経時的に測定した。結果を表2及び図9に示す。
【0049】
炭化物粉粒体を構成するバイオ炭Bは、ウッドチップを熱分解して合成ガスを生成した後の残渣から得られた炭化物の粉粒体であり、嵩比重が0.17g/cm、炭化物粉粒体に含有される水分の質量分率が13.08%であった。また水練りされた状態の炭化物粉粒体の比抵抗は99Ω・cmであった。セメントは実施例2と同様であった。
【0050】
バイオ炭Bとセメントとを均一に混合した接地抵抗低減材14を袋詰めにして複数準備した。1袋の収容量は実施例1と同一の容積で、重量が10kgであった。
この接地抵抗低減材14を使用に適したスラリーにするには、1袋の10kgの接地抵抗低減材14に対して20kgの水を使用することが必要であった。
【0051】
[比較例2]
石炭コークスの粉末を用いた比較例1と同じ接地抵抗低減材(「サンアースM5C」、株式会社サンコーシヤ製、商標)を用いる他は、全て実施例2と同様にして、接地装置10を作製し、接地抵抗値を経時的に測定した。測定結果を表2及び図9に示す。
なお、この接地抵抗低減材を使用に適したスラリーにするには、1袋の25kgの接地抵抗低減材14に対して20kgの水を使用することが必要であった。
【0052】
【表2】
【0053】
以上の結果から明らかなように、バイオ炭A又はバイオ炭Bを用いた接地抵抗低減材14は、石炭コークスを用いた接地抵抗低減材と同じ体積で軽量化することができた。
そしてバイオ炭A又はバイオ炭Bを用いた接地抵抗低減材は、石炭コークスを用いた接地抵抗低減材と同等の体積を使用して接地電極11を土壌12中に埋設したとき、石炭コークスを用いた接地抵抗低減材と同程度の接地抵抗値を実現することができた。
その結果、実施例の接地抵抗低減材14は、比較例の化石燃料のコークスを用いた接地抵抗低減材と同等に使用できることが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
10 接地装置
11 接地電極
12,12’ 土壌
13 凹部
14 接地抵抗低減材
15 被覆線
16 接続金具

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9