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特開2025-6626作業車両に接続された作業機を推定する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006626
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業車両に接続された作業機を推定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20250109BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20250109BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107532
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】長田 匡広
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 隆史
(72)【発明者】
【氏名】古川 大二郎
【テーマコード(参考)】
2B043
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA07
2B043BB01
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA11
2B043EA40
2B043EC12
2B043EE01
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】作業車両に接続された作業機の種類を、より正確に推定する。
【解決手段】接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する1台以上のコンピュータによって実行される方法が開示される。前記方法は、前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し取得するステップと、前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する1台以上のコンピュータによって実行される方法であって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し取得するステップと、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、
前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、
推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記入力データを生成するステップは、前記10以上の信号にそれぞれ対応する10以上の時系列データを生成し、前記時系列データに基づいて前記入力データを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力データは、第1入力データおよび第2入力データを含み、
前記1つ以上の学習済みモデルは、前記第1入力データに基づいて前記作業車両が作業中であるか他の状態にあるかを判定するための第1モデルと、前記第2入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための第2モデルとを含み、
前記推定するステップは、
前記第1モデルに前記第1入力データを入力して前記作業車両が作業中であるか他の状態にあるかを判定する第1ステップと、
前記作業車両が作業中であると判定された場合に、前記第2モデルに前記第2入力データを入力して前記作業機の種類を推定する第2ステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1モデルは、前記第1入力データに基づいて、前記作業車両が作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定するためのモデルであり、
前記第1ステップは、前記第1モデルに前記第1入力データを入力して、前記作業車両が、作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1モデルおよび前記第2モデルの各々は、決定木に基づくモデルである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記10以上の信号は、20以上の信号である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記10以上の信号は、50以上の信号である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記10以上の信号は、前記作業機の牽引に伴う負荷を計測するドラフトセンサの計測値を示す信号を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記10以上の信号は、前記作業車両の走行速度を示す信号、前記作業機を駆動するパワーテイクオフ(PTO)軸の回転速度を示す信号、前記作業機を連結する連結装置の高さ位置を示す信号、および原動機の回転速度を示す信号を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記10以上の信号のそれぞれは、前記作業車両におけるCAN(Control Area Network)バスを流れる信号に基づいて生成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記出力するステップは、前記出力データを、他のコンピュータに送信することを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記他のコンピュータは、前記作業車両の状態監視、メンテナンス、または故障診断を行う監視者が使用する端末装置であり、
前記出力データは、前記端末装置のディスプレイに、前記作業車両の時系列の稼働状態を表示させるために用いられる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記作業車両は農業用トラクタであり、前記作業機を駆動して農作業を実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する処理装置であって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し受信する通信回路と、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成し、前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定し、推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力する処理回路と、
を備える処理装置。
【請求項15】
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信するコンピュータによって実行させるコンピュータプログラムであって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し受信するステップと、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、
前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、
推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項16】
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両に搭載され、請求項14に記載の処理装置と通信する通信装置であって、
それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を含むデータを生成する処理回路と、
前記データを前記処理装置に送信する通信回路と、
を備える通信装置。
【請求項17】
請求項16に記載の通信装置を備える作業車両。
【請求項18】
請求項14に記載の処理装置と通信する端末装置であって、
前記処理装置から前記出力データを受信する通信回路と、
前記出力データに基づいて、前記作業車両の時系列の稼働状態を示す画像をディスプレイに表示させる処理回路と、
を備える端末装置。
【請求項19】
請求項14に記載の処理装置と、
請求項16に記載の通信装置と、
を備えるシステム。
【請求項20】
請求項14に記載の処理装置と、
請求項15に記載の作業車両と、
を備えるシステム。
【請求項21】
請求項18に記載の端末装置をさらに備える、請求項19に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に接続された作業機を推定する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の状態を遠隔で監視し、故障または不具合を把握または予知して、部品の交換または修理などのメンテナンスを行う予知保全のニーズが高まっている。予知保全を行うためには、車両の内部状態を示す種々のデータを取得し、それらのデータに基づいて車両の稼働状態を推定することが求められる。
【0003】
特許文献1、2は、農業用トラクタに装着された作業機によって行われた作業の種別を自動的に推定する技術を開示している。特許文献1、2に開示された技術では、管理サーバが、トラクタから送信された時刻毎の位置情報および時刻毎の稼働情報と、予め訓練された機械学習モデルとに基づいて、作業機によって実行された作業の種別を推定する。稼働情報の例として、車速、エンジンのオンオフ情報、エンジン回転数、PTOクラッチのオンオフ情報、PTOクラッチの回転数、およびエンジン負荷率が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-089477号公報
【特許文献2】特開2021-087361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農業用トラクタなどの作業車両のメンテナンスまたは故障修理などのサービスを提供する販売店などの業者、または作業車両のメーカにとって、作業車両が普段どのように使用されているのかを把握することは重要である。特に、作業車両には多種多様な作業機(インプルメント)が接続され得るため、どのような作業機を用いてどのような作業が行われているのかを把握することが、サービスまたは製品の品質改善のために重要である。
【0006】
上記の従来の技術では、実行された作業の種別を判別することが可能であるが、多種多様な作業機を正確に判別することはできない。
【0007】
本開示は、作業車両に接続された作業機の種類を、より正確に推定するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様による方法は、接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する1台以上のコンピュータによって実行される。前記方法は、前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し取得するステップと、前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、を含む。
【0009】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、もしくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体を含んでいてもよいし、不揮発性の記憶媒体を含んでいてもよい。装置は、複数の装置で構成されていてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよいし、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、作業車両に接続された作業機の種類を、より正確に推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態によるシステムの構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、作業車両、および作業車両に連結された作業機の例を示す側面図である。
図3図3は、作業車両およびサーバの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、キャビンの内部に設けられる操作スイッチ群の例を示す図である。
図5図5は、ディーラ端末およびメーカコンピュータのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図6図6は、作業車両の通信装置によるデータ送信の動作の例を示すフローチャートである。
図7図7は、サーバの動作の例を示すフローチャートである。
図8図8は、時系列データの例を模式的に示す図である。
図9図9は、図7におけるステップS230の処理のより具体的な例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1ステップ(ステップS231)の判定処理に用いられる学習済みモデルの一例である決定木を例示する図である。
図11図11は、第2ステップ(ステップS233)の判定処理に用いられる学習済みモデルの一例である決定木を示す図である。
図12図12は、作業機がプラウである場合における信号波形の例を示す図である。
図13図13は、作業機がスラリータンカーである場合における信号波形の例を示す図である。
図14図14は、作業機がシードドリルである場合における信号波形の例を示す図である。
図15図15は、ディーラ端末の処理回路によって実行される動作の例を示すフローチャートである。
図16図16は、ディスプレイに表示される画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に関する重複する説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似の機能を有する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0013】
以下の実施形態は例示であり、本開示の技術は、以下の実施形態に限定されない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、ステップ、そのステップの順序、表示画面のレイアウトなどは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
【0014】
<システム構成例>
図1は、本開示の例示的な実施形態によるシステムの構成例を模式的に示す図である。このシステムは、1台以上の作業車両100の稼働状態を遠隔でモニタリングするためのシステムである。
【0015】
図1に示すシステムは、複数の作業車両100と、サーバコンピュータ600(以下、「サーバ600」と称する。)と、作業車両100の販売店(ディーラ)に設けられたディーラ端末400と、作業車両100のメーカが管理するメーカコンピュータ500とを含む。サーバ600は、例えばデータセンタに設置されたクラウドサーバであり得る。作業車両100、ディーラ端末400、およびメーカコンピュータ500の各々は、ネットワーク80を介してサーバ600と通信できるように構成されている。図1の例では、複数の作業車両100がシステムに含まれるが、作業車両100は1台であってもよい。
【0016】
作業車両100およびディーラ端末400は、例えば同一の地域または国で使用され得る。メーカコンピュータ500およびサーバ600の各々は、作業車両100およびディーラ端末400とは異なる地域または国に設けられてもよい。メーカコンピュータ500およびサーバ600の各々は、複数のコンピュータの集合体であってもよい。サーバ600は、機械学習サービスを提供する業者が管理するクラウドサーバであってもよい。その場合、サーバ600は、作業車両100、ディーラ端末400、メーカコンピュータ500のいずれとも異なる国に設置され得る。サーバ600は、異なる地域または国に分散して配置された複数のコンピュータの集合体であってもよい。
【0017】
本実施形態における作業車両100は、圃場で走行しながら農作業を実行することが可能なトラクタである。作業車両100は、トラクタに限らず、例えば移植機または収穫機などの、他の種類の農業用作業車両であってもよい。あるいは、作業車両100は、建設作業車などの、農業とは異なる用途で使用される車両であってもよい。
【0018】
作業車両100は、その前部または後部に作業機を接続することが可能である。作業車両100は、作業機を駆動してその作業機に応じた農作業を実行することができる。作業機の種類は多様であり、作業機を交換することで、異なる種類の農作業を実行することができる。
【0019】
本実施形態における作業車両100は、サーバ600と通信を行うための通信装置(「直接通信ユニット」とも呼ばれる。)を備える。通信装置は、それぞれが作業車両100の異なる内部状態を示す複数の信号をサーバ600に繰り返し送信するように構成されている。信号の種類は多様であり、例えば10以上、20以上、50以上、100以上、または200以上の信号が作業車両100の通信装置からサーバ600に送信される。それらの信号は、作業車両100内の複数のセンサおよび複数の電子制御ユニット(ECU)の間で伝送される信号に基づいて生成され得る。例えば、各信号は、作業車両100におけるCAN(Control Area Network)などのバスを流れる信号、またはバスを流れる信号に基づいて加工された信号であり得る。本実施形態において作業車両100からサーバ600に送信される複数の信号は、例えば特許文献1、2に開示されている車速、エンジンのオンオフ情報、エンジン回転数、PTOクラッチのオンオフ情報、PTOクラッチの回転数、およびエンジン負荷率を示す信号だけでなく、さらに多くの信号を含み得る。送信される信号は、例えば以下に挙げる信号のうちの1つ以上を含み得る。
・作業機の牽引に伴う負荷を計測するドラフトセンサの計測値を示す信号
・作業車両の走行速度(車速)を示す信号
・作業機を駆動するパワーテイクオフ(PTO)軸の回転速度を示す信号
・作業機を連結する連結装置(例えば3点ヒッチ)の高さ位置を示す信号
・原動機(エンジン)の回転速度を示す信号
・ハンドアクセルの位置を示す信号
・エンジンに作用するトルクを示す信号
・作業車両の進行方向を示す信号
・作業車両の位置を示す信号
・変速状態を示す信号
【0020】
このような信号の所定時間(例えば10秒、30秒、60秒など)にわたる平均値、標準偏差、または分散などの基本統計量を示す信号が、送信される信号に含まれてもよい。各信号は、作業車両100の識別子である車両ID、およびその信号の生成時刻を示す時刻情報(タイムスタンプ)と関連付けて送信され得る。作業車両100の通信装置は、例えば、所定の時間間隔(0.5秒、1秒、または2秒間隔など)で、複数の信号を繰り返しサーバ600に送信するように構成され得る。この時間間隔は、例えば5秒以下、より好ましくは2秒以下の値に設定され得る。なお、信号によって送信の頻度が異なっていてもよい。例えば、3点ヒッチの高さ位置を示す信号のように、頻繁に値が変化しない信号については、値が変化したときにだけ送信されてもよい。
【0021】
サーバ600は、作業車両100から複数の信号を取得し、それらの信号に基づいて作業車両100に接続された作業機の種類を推定する処理装置として機能する。サーバ600は、取得した複数の信号に対して前処理を行うことにより、当該複数の信号にそれぞれ対応する複数の時系列データを生成する。サーバ600は、例えば一定時間(例えば0.5秒、1秒、2秒など)ごとの各信号の値を有する時系列データを生成し、当該時系列データに基づいて入力データを生成する。前処理は、例えば、送信された信号の値を一定時間(例えば1秒)の間隔にリサンプリングしたり、データの欠損を補完したり、外れ値を補正したりする処理を含み得る。サーバ600は、前処理を行った後の時刻ごとの各信号の値を含む時系列データに基づき、複数の特徴量の経時変化を示す入力データを生成する。特徴量は、例えば信号値の移動平均、変化率、または移動標準偏差などの計算によって得られ得る。特徴量として、例えば、車速の移動平均、加速度の移動標準偏差、ドラフトセンサ値の移動平均、エンジン回転数の変化率、ヒッチ位置の移動標準偏差などが生成され得る。以下の説明において、入力データに含まれる特徴量も「信号」と称することがある。
【0022】
サーバ600の記憶装置には、予め訓練された1つ以上の機械学習モデル(学習済みモデル)が格納される。当該モデルは、入力データに基づいて作業機の種類を推定するためのモデルである。当該モデルは、メーカコンピュータ500からの指令によって生成され、メーカコンピュータ500から随時送信される学習用データを用いて訓練される。サーバ600は、学習済みモデルに入力データを入力することによって作業機300の種類を推定する。
【0023】
利用される機械学習アルゴリズムとして、例えば決定木に基づくアルゴリズムが用いられ得る。決定木を利用することにより、どのような判断基準で作業機の種類を推定したのかがわかるため、判断基準がわからないブラックボックス的な他のモデルと比較してモデルの改善がし易くなる。決定木に基づくアルゴリズムとして、例えばID3、C4.5、CART、CHAID、またはランダムフォレストなどが用いられ得る。決定木を利用するアルゴリズムに限らず、例えばニューラルネットワークまたはサポートベクターマシンなどの他の機械学習アルゴリズムを用いてもよい。
【0024】
後に詳しく説明するように、学習済みモデルは、作業車両100が作業中か他の状態にあるかを判別するための第1モデルと、作業車両100に接続されている作業機の種類を特定するための第2モデルとを含んでいてもよい。その場合、サーバ600は、第1モデルを用いた推定によって作業車両100が作業中であると判別された場合にのみ、第2モデルを用いた作業機の推定を行うように構成され得る。そのような2ステップの推定を行うことにより、1ステップで作業機を推定する場合と比較して、作業機300の種類をより正確に推定することができる。
【0025】
サーバ600は、作業機の種類を推定すると、推定された作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成する。出力データの生成は、例えば作業車両100の稼働中、常時(例えば0.5秒、1秒、または2秒ごとに)行われ得る。出力データは、推定された作業機の種類だけでなく、作業車両100の稼働状態を示す情報を含んでいてもよい。稼働状態を示す情報は、例えば、作業車両が作業中であるか、作業を伴わずに走行している状態(「非作業走行中」と称する。)であるか、枕地で旋回している状態(「枕地旋回中」と称する。)であるか、アイドリング中であるか、といった情報を含み得る。稼働状態を示す情報は、他にも、車速、燃費、またはある時点からの総稼働時間などの情報を含んでいてもよい。サーバ600は、出力データをディーラ端末400などの他のコンピュータに送信する。
【0026】
ディーラ端末400は、作業車両100の状態監視、メンテナンス、または故障診断を行う監視者(例えばディーラの担当者)が使用する端末装置である。図1に示すディーラ端末400は、ラップトップPC(Personal Computer)であり、ディスプレイを内蔵している。ディーラ端末400は、ディスプレイが外付けされたデスクトップPCであってもよい。あるいは、ディーラ端末400は、タブレットコンピュータまたはスマートフォンなどの他の種類のコンピュータであってもよい。ディーラ端末400は、サーバ600から送信された出力データに基づいて、作業車両100の時系列の稼働状態を示す情報をディスプレイに表示させる。時系列の稼働状態を示す情報は、例えば日および時間帯ごとの作業の有無、作業の種類、または使用された作業機の種類を示す情報を含み得る。監視者は、表示された情報に基づいて、作業車両100がどのように使用されているかをリアルタイムで把握することができる。
【0027】
作業車両100のディーラは、作業車両100をユーザまたは農業経営者に販売または貸し出す業務を行うとともに、作業車両100のメンテナンスや故障修理などの業務も行う。故障修理やメンテナンスなどの業務を行うためには、その作業車両100が普段どのように使用されているのかを把握することが重要である。特に、ユーザが作業車両100にどのような作業機を接続して作業を行っているのかを把握することが重要である。しかし、従来の技術では、作業車両100がどのような作業機を装着して使用されているのかを正確に把握することができず、メンテナンスなどの業務を効率的に行うことができなかった。特にディーラの担当エリアが広い場合、広いエリアに点在する複数のユーザを訪問してヒアリングを行うなどして、作業車両ごとに状態を確認する必要があった。本実施形態によれば、ディーラはディーラ端末400を用いて遠隔で、各作業車両100に接続されている作業機の種類や作業車両100の稼働状態を把握することができる。このため、訪問頻度を減らし、メンテナンス等の業務効率を大きく向上させることができる。
【0028】
メーカコンピュータ500は、サーバ600に機械学習モデルの生成および訓練を指示するためのコンピュータである。メーカコンピュータ500は、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、またはスマートフォンなどの、任意のコンピュータであり得る。メーカコンピュータ500は、例えばメーカの担当者によって使用され得る。メーカコンピュータ500は、担当者の操作に応答して、または設定されたスケジュールに従って、学習用データをサーバ600に送信する。サーバ600は、送信された学習用データに基づいて、機械学習モデルの訓練(学習)を行う。学習用データに基づくモデルの訓練は、例えば日々行われ得る。これにより、学習済みモデルの改善が繰り返され、推定の精度を向上させることができる。
【0029】
サーバ600は、各作業車両100に接続された作業機の種類などの情報を含む出力データをメーカコンピュータ500に送信してもよい。その場合、メーカは、各作業車両100がどのように使用されているのかを把握することができる。このため、例えば作業車両100に不具合や故障が生じた場合に、その原因を特定することが容易になる。メーカは、サーバ600から得た各作業車両100の稼働状態を示す情報を、今後の製品開発に役立てることができる。
【0030】
以下、各構成要素の構成および動作をより詳細に説明する。
【0031】
<作業車両の概略構成>
図2は、作業車両100、および作業車両100に連結された作業機300の例を示す側面図である。作業車両100は、車両本体101と、原動機102と、変速装置(トランスミッション)103とを備える。車両本体101には、タイヤ付き車輪104と、キャビン105とが設けられている。車輪104は、一対の前輪104Fと一対の後輪104Rとを含む。キャビン105の内部に運転席107、操舵装置106、および操作のためのスイッチ群が設けられている。前輪104Fおよび後輪104Rの一方または両方は、タイヤ付き車輪ではなく無限軌道(track)を装着した複数の車輪(クローラ)に置き換えられてもよい。
【0032】
作業車両100は、さらにGNSSユニット120を備える。GNSS(Global Navigation Satellite System)は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位装置の総称である。GNSSユニット120は、GNSS衛星からの信号を受信するアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて作業車両100の位置を決定するプロセッサとを備える。GNSSユニット120は、複数のGNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信し、GNSS信号に基づいて測位を行う。本実施形態におけるGNSSユニット120は、キャビン105の上部に設けられているが、他の位置に設けられていてもよい。
【0033】
原動機102は、例えばディーゼルエンジンであり得る。ディーゼルエンジンに代えて電動モータが使用されてもよい。変速装置103は、変速によって作業車両100の推進力および移動速度を変化させることができる。変速装置103は、作業車両100の前進と後進とを切り換えることもできる。
【0034】
操舵装置106は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールに接続されたステアリングシャフトと、ステアリングホイールによる操舵を補助するパワーステアリング装置とを含む。前輪104Fは操舵輪であり、その切れ角(「操舵角」とも称する。)を変化させることにより、作業車両100の走行方向を変化させることができる。前輪104Fの操舵角は、ステアリングホイールを操作することによって変化させることができる。パワーステアリング装置は、前輪104Fの操舵角を変化させるための補助力を供給する油圧装置または電動モータを含む。自動操舵が行われるときには、作業車両100内に配置された制御装置からの制御により、油圧装置または電動モータの力によって操舵角が自動で調整される。
【0035】
車両本体101の後部には、連結装置108が設けられている。連結装置108は、例えば3点支持装置(「3点ヒッチ」とも称する。)、PTO(Power Take Off)軸、ユニバーサルジョイント、および通信ケーブルを含む。連結装置108によって作業機300を作業車両100に着脱することができる。連結装置108は、例えば油圧装置によって3点ヒッチを昇降させ、作業機300の位置または姿勢を制御することができる。また、ユニバーサルジョイントを介して作業車両100から作業機300に動力を送ることができる。作業車両100は、作業機300を引きながら、作業機300に所定の作業を実行させることができる。連結装置は、車両本体101の前方に設けられていてもよい。その場合、作業車両100の前方に作業機を接続することができる。
【0036】
図2に示す作業機300は、ロータリ耕耘機であるが、作業機300はロータリ耕耘機に限定されない。例えば、モーア(草刈機)、シーダ(播種機)、スプレッダ(施肥機)、レーキ、ベーラ(集草機)、ハーベスタ(収穫機)、スプレイヤ、またはハローなどの、任意の作業機を作業車両100に接続して使用することができる。
【0037】
<作業車両およびサーバの構成例>
図3は、作業車両100およびサーバ600の構成例を示すブロック図である。図3の例における作業車両100は、GNSSユニット120、操作スイッチ群130、駆動装置140、センサ群150、記憶装置170、制御装置180、通信装置190、および操作スイッチ群130を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続され得る。
【0038】
駆動装置140は、例えば前述の原動機102、変速装置103、操舵装置106、および連結装置108などの、作業車両100の走行および作業機300の駆動に必要な各種の装置を含む。原動機102は、例えばディーゼル機関などの内燃機関を備え得る。駆動装置140は、内燃機関に代えて、あるいは内燃機関とともに、トラクション用の電動モータを備えていてもよい。
【0039】
センサ群150は、例えば、エンジン回転センサ151、車軸回転センサ152、PTO回転センサ153、ヒッチ位置センサ154、ドラフトセンサ155などの種々のセンサを含む。エンジン回転センサ151は、エンジンの回転速度、すなわち単位時間(例えば1分)あたりの回転数を計測する。車軸回転センサ152は、車輪104に接続された車軸の回転速度を計測する。PTO回転センサ153は、PTO軸の回転速度を計測する。ヒッチ位置センサ154は、3点ヒッチの高さ位置を計測する。ドラフトセンサ155は、作業機300の牽引に伴う負荷を計測する。センサ群150は、他にも、温度センサ、燃料センサ、水温センサ、オイル残量計、シャトルセンサ、ハンドアクセルセンサ、アクセルペダルセンサ、主変速レバーセンサ、副変速レバーセンサ、加速度センサ、および角速度センサなどの、種々のセンサを含み得る。それらのセンサから出力された信号は、バスを介して制御装置180に送られ、通信装置190によってサーバ600に送信され得る。
【0040】
制御装置180は、複数のECUの集合体である。制御装置180は、例えば、通信制御用のECU181、エンジン制御用のECU182、および変速制御用のECU183を含む。制御装置180は、他にも、ステアリング制御用のECU、PTO制御用のECU、油圧制御用のECUなどの、種々のECUを含み得る。通信制御用のECU181は、通信装置190による信号の送信を制御する。制御装置180に含まれる複数のECUの働きにより、作業車両100の走行、作業機300による作業、およびサーバ600との通信が実現される。それらのECUは、CANなどのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。各ECUは、1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のメモリを含み得る。
【0041】
通信装置190は、例えばTCU(Telematics Control Unit)などの、無線通信を行う装置である。通信装置190は、ネットワーク80を介してサーバ600と通信を行う。ネットワーク80は、例えば、3G、4Gもしくは5Gなどのセルラー移動体通信網、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、もしくはLPWA(Low Power Wide Area)などの無線通信網、およびインターネットを含み得る。通信装置190は、ネットワーク80に含まれる複数のルータおよびスイッチ等のネットワーク機器を介してサーバ600と通信を行う。
【0042】
通信装置190は、制御装置180における通信制御用のECU181からの指示に従い、作業車両100の異なる内部状態を示す複数の信号を含むデータをサーバ600に送信する。通信装置190は、複数の信号を含むデータを生成する処理回路192と、当該データを無線で送信する通信回路194とを含む。通信装置190は、CANバスを流れる種々の信号を、信号ごとに定められた所定の時間間隔でサーバ600に送信する。通信装置190は、バスに接続される代わりに、制御装置180における通信制御用のECU181に直接接続されていてもよい。通信装置190によって送信される信号の種類は、通信制御用のECU181によって設定され得る。処理回路192による送信データを生成する機能は、制御装置180における通信制御用のECU181に実装されていてもよい。その場合、通信制御用のECU181と通信装置190との組み合わせを、「通信装置」と呼ぶことができる。
【0043】
通信装置190は、作業車両100とは独立して製造および販売され得る。例えば、通信装置190を備えていない作業車両100に、後から通信装置190を取り付けて本実施形態における通信機能を実現してもよい。
【0044】
記憶装置170は、フラッシュメモリまたは磁気ディスクなどの1つ以上の記憶媒体を含む。記憶装置170は、各センサから出力される信号、および制御装置180が生成する各種のデータを記憶する。記憶装置170は、制御装置180における各ECUに各種の動作を実行させるコンピュータプログラムも記憶するように構成され得る。そのようなコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して作業車両100に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0045】
図4は、キャビン105の内部に設けられる操作スイッチ群130の例を示す図である。キャビン105の内部には、ユーザが操作可能な複数のスイッチ(ボタン、レバー、ペダルを含む)を含む操作スイッチ群130が配置されている。操作スイッチ群130は、例えば主変速段を切り替えるためのスイッチ(例えばボタン)、副変速段を切り替えるためのスイッチ(例えばシフトレバー)、前進と後進とを切り替えるためのスイッチ(例えばシャトルレバー)、作業機300を昇降するためのスイッチ等を含み得る。クラッチペダル、アクセルペダル、およびブレーキペダル等のペダル類も操作スイッチ群130に含まれる。それぞれのスイッチには、スイッチの状態を検知するセンサが設けられる。それらのセンサもセンサ群150に含まれる。
【0046】
次に、サーバ600のハードウェア構成を説明する。
【0047】
図3に示すように、サーバ600は、記憶装置650と、処理回路660と、ROM(Read Only Memory)670と、RAM(Random Access Memory)680と、通信回路690とを備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。
【0048】
通信回路690は、ネットワーク80を介して作業車両100などの外部の装置と通信するための通信モジュールである。通信回路690は、例えば、IEEE1394(登録商標)またはイーサネット(登録商標)などの通信規格に準拠した有線通信を行うことができる。通信回路690は、Bluetooth(登録商標)規格もしくはWi-Fi規格に準拠した無線通信、または、3G、4Gもしくは5Gなどのセルラー移動体通信を行ってもよい。
【0049】
記憶装置650は、例えば、磁気記憶装置または半導体記憶装置であり得る。磁気記憶装置の例は、ハードディスクドライブ(HDD)である。半導体記憶装置の例は、ソリッドステートドライブ(SSD)である。記憶装置650は、サーバ600とは独立した装置であってもよい。例えば、記憶装置650は、サーバ600にネットワーク80を介して接続される記憶装置、例えばクラウドストレージであってもよい。記憶装置650には、作業車両100から送信されたデータ、および作業車両100に接続された作業機300の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルが格納され得る。
【0050】
処理回路660は、例えば中央演算処理装置(CPU)を含む半導体集積回路であり得る。処理回路660は、マイクロ処理回路またはマイクロコントローラによって実現され得る。あるいは、処理回路660は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これらの回路の中から選択される二つ以上の回路の組み合わせによっても実現され得る。処理回路660は、ROM670に格納された、少なくとも一つの処理を実行するための命令群を記述したコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。例えば、処理回路660は、作業車両100の通信装置190から送信されたデータと、記憶装置650に格納された学習済みモデルとに基づいて、作業車両100に接続された作業機300を推定する。処理回路660は、推定結果を含む出力データを、通信回路690を介してディーラ端末400に送信する。処理回路660はまた、メーカコンピュータ500からの指令に基づき、機械学習モデルの生成および訓練(学習)も実行する。
【0051】
ROM670は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM670は、処理回路660の動作を制御するプログラムを記憶する。ROM670は、単一の記憶媒体である必要はなく、複数の記憶媒体の集合体であってもよい。複数の記憶媒体の集合体の一部は、取り外し可能なメモリであってもよい。
【0052】
RAM680は、ROM670に格納された制御プログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM680は、単一の記憶媒体である必要はなく、複数の記憶媒体の集合体であってもよい。
【0053】
<ディーラ端末およびメーカコンピュータの構成例>
図5は、ディーラ端末400およびメーカコンピュータ500のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【0054】
ディーラ端末400は、入力装置420と、ディスプレイ430と、記憶装置450と、処理回路460と、ROM470と、RAM480と、通信回路490とを備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。入力装置420は、ユーザからの指示をデータに変換して処理回路460に入力するための装置である。入力装置420は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパネルを含み得る。ディスプレイ430は、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの任意のディスプレイであり得る。処理回路460、ROM470、RAM480、記憶装置450、および通信回路490のそれぞれのハードウェア構成は、サーバ600における対応する装置のハードウェア構成と同様である。ディーラ端末400は、作業車両100の稼働状態を示す出力データをサーバ600に要求し、出力データに基づく画像を表示するために使用される。
【0055】
メーカコンピュータ500は、処理回路560と、ROM570と、RAM580と、記憶装置550と、通信回路590とを備える。処理回路560、ROM570、RAM580、記憶装置550、および通信回路590のそれぞれのハードウェア構成は、サーバ600における対応する装置のハードウェア構成と同様である。メーカコンピュータ500は、キーボードおよびマウスなどの入力装置と、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどのディスプレイとに接続されて使用され得る。あるいは、メーカコンピュータ500が入力装置およびディスプレイを備えていてもよい。メーカコンピュータ500は、サーバ600に機械学習モデルの生成および学習を指示するために使用される。
【0056】
<通信動作の例>
図6は、作業車両100の通信装置190によるデータ送信の動作の例を示すフローチャートである。通信装置190は、ステップS110からS130の動作を繰り返すことにより、作業車両100の内部状態を示す複数の信号をサーバ600に逐次送信する。この動作は、作業車両100の動作中(例えばエンジンオンの間)、常時行われ得る。
【0057】
ステップS110において、通信装置190の処理回路192は、それぞれが作業車両100の内部状態を示す複数の信号を含む送信用データを生成する。複数の信号の種類の数は、10以上であり、典型的には100以上または200以上であり得る。それらの信号は、センサ群150から出力された信号に基づいて生成され得る。センサ群150から出力された信号そのものに限らず、信号の所定時間(例えば10秒)における平均値または標準偏差などの値を示す信号が送信用データに含まれてもよい。処理回路192は、各信号と、車両IDおよびその信号の生成時刻を示すタイムスタンプとを関連付けたデータを生成する。
【0058】
ステップS120において、処理回路192は、通信回路194を介して、生成されたデータをサーバ600に送信する。
【0059】
ステップS130において、処理回路192は、作業車両100の動作が停止したか否かを判定する。処理回路192は、例えばエンジンがオフにされたとき、作業車両100の動作が停止したと判定する。作業車両100の動作が停止している場合、処理は終了する。作業車両100の動作が停止していない場合、ステップS110に戻る。
【0060】
作業車両100の動作中、ステップS110からS130の動作が繰り返される。送信用データの生成および送信は、所定の時間間隔(例えば0.5秒、1秒、2秒など)で繰り返し実行され得る。
【0061】
送信用データに含まれる信号の組み合わせは、毎回同じであってもよいし、送信ごとに異なっていてもよい。例えば、車速およびエンジン回転数のように頻繁に値が変化する信号については毎回送信し、3点ヒッチの高さ位置のように、頻繁に値が変化しない信号については、値が変化したときにだけ送信してもよい。どの信号が送信されるか、および各信号の送信頻度は、例えば通信制御用のECU181によって作成された設定ファイルに規定され得る。通信装置190は、設定ファイルに従って、特定の信号の送信を行うように構成され得る。
【0062】
図7は、サーバ600の動作の例を示すフローチャートである。サーバ600は、ステップS210からS260の処理を繰り返すことにより、作業車両100に接続された作業機300の種類を逐次推定する。この動作は、作業車両100の動作中、常時行われ得る。
【0063】
ステップS210において、サーバ600の処理回路660は、作業車両100からデータを取得したか否かを判定する。作業車両100からは、前述のように、所定の時間間隔で、複数の信号を含むデータが送信され得る。データが通信回路590によって受信されると、ステップS220に進む。
【0064】
ステップS220において、処理回路660は、取得したデータに基づく前処理を行い、学習済みモデルに入力するための入力データを生成する。送信データには、複数の信号の値と、各信号の時刻情報とが含まれている。処理回路660は、連続的に取得した送信データに含まれる各信号の値および時刻情報に基づいて、複数の信号に対応する複数の時系列データを生成する。処理回路660は、時系列データに基づいて、学習済みモデルに入力するための入力データを生成する。
【0065】
図8は、時系列データの例を模式的に示す図である。図8に示す時系列データは、日時(例えば秒単位)と、複数の信号のそれぞれの値とを関連付けたデータである。図7の例では、1秒ごとに、信号S1、S2、S3、S4、・・・の値が関連付けられている。信号S1、S2、S3、S4、・・・のそれぞれは、例えば車速、エンジンの回転速度、PTO軸の回転速度、3点ヒッチの高さ位置、ドラフトセンサの計測値などの信号を表す。図8には4つの信号が例示されているが、信号の種類の数は10以上であり、ある例では50以上、他の例では100以上、さらに他の例では200以上であり得る。時系列データは、例えば数秒から数十秒、場合によっては数百秒の期間にわたるデータであってもよい。
【0066】
作業車両100から送信される信号の中には、1秒よりも長い時間間隔で送信される信号も含まれ得る。例えば、10秒ごとに送信される信号、または値が変化したときだけ不定期に送信される信号が含まれ得る。そのような信号については、処理回路660は、値を有しない時刻の値を補間して時系列データを生成してもよい。
【0067】
処理回路660は、このような時系列データに基づいて、学習済みモデルに入力するための複数の特徴量を含む入力データを生成する。各特徴量は、信号の値そのものであってもよいし、信号の値を、ある時間(例えば10秒、30秒、60秒など)にわたって平均化したり、標準偏差を計算したりして得た値であってもよい。あるいは、各特徴量は、時系列データにおける2つ以上の信号を組み合わせて計算された値であってもよい。入力データは、例えば10以上、20以上、50以上、100以上、または200以上の特徴量の組み合わせであり得る。
【0068】
図7に示すステップS230において、処理回路660は、生成した入力データを1つ以上の学習済みモデルに入力して、作業車両100に接続されている作業機300の種類を推定する。学習済みモデルは、前述のように、例えば決定木などの機械学習アルゴリズムによって生成および訓練され得る。
【0069】
図9は、ステップS230の処理のより具体的な例を示すフローチャートである。図9の例では、ステップS230は、ステップS231、S232、S233の処理を含む。この例では、入力データは、第1入力データと、第2入力データとを含み、学習済みモデルは、第1モデルと、第2モデルとを含む。第1入力データと、第2入力データは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1モデルは、第1入力データに基づいて作業車両100が作業中であるか他の状態にあるかを判定するためのモデルである。第2モデルは、第2入力データに基づいて作業機300の種類を推定するためのモデルである。第1モデルおよび第2モデルの各々は、例えば決定木などの機械学習アルゴリズムに基づくモデルである。
【0070】
ステップS231において、処理回路660は、第1入力データを第1モデルに入力して作業車両100が作業中であるか他の状態にあるかを判定する。第1モデルは、例えば第1入力データに基づいて作業車両100が作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定するためのモデルであり得る。その場合、処理回路660は、第1入力データを第1モデルに入力することによって作業車両100が作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定することができる。ここで「作業中」は、作業機を駆動している状態を指す。「非作業走行中」は、作業機を駆動せずに枕地以外の場所で走行している状態を指す。「枕地旋回中」は、圃場内で往復するために作業エリアの外側にある枕地で旋回動作を行っている状態を指す。「アイドリング中」はエンジンを回転させながら停車している状態を指す。
【0071】
ステップS232において、処理回路660は、ステップS231の判定結果に基づき、作業車両100が作業中であるか否かを判断する。作業車両100が作業中である場合、ステップS233に進む。作業車両100が作業中とは異なる状態にある場合、ステップS230を終了し、ステップS240に進む。
【0072】
ステップS233において、処理回路660は、第2入力データを第2モデルに入力して作業車両100に接続された作業機300の種類を推定する。ステップS233の後、ステップS240に進む。
【0073】
このように、図9の例では、作業機300の種類を推定するステップS230は、第1モデルに第1入力データを入力して作業車両100が作業中であるか他の状態にあるかを判定する第1ステップ(ステップS231)と、作業車両100が作業中であると判定された場合に、第2モデルに第2入力データを入力して作業機300の種類を推定する第2ステップ(ステップS233)とを含む。より具体的には、第1ステップは、作業車両100が、作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定することを含む。このような2ステップの処理を行うことにより、1ステップで作業機300の種類を推定する場合と比較して、より正確な推定が可能になる。
【0074】
図10は、第1ステップ(ステップS231)の判定処理に用いられる学習済みモデルの一例である決定木を例示する図である。この決定木では、作業車両100が、作業中、非作業走行中、枕地旋回中、その他(例えばアイドリング中)のいずれの状態にあるかが、入力データに含まれる以下の表1に示す信号または特徴量に基づいて判別される。
【0075】
【表1】
【0076】
図10に示す例において、c1、c2、c3、c4、c5は、ある定数を表しており、決定木アルゴリズムに基づいて決定される。決定木アルゴリズムを実装したソフトウェアにより、図10に例示されるような判別結果をディスプレイに表示することも可能である。そのような表示により、例えばメーカコンピュータ500のユーザが、推定の根拠を知ることができる。
【0077】
なお、上記の信号または特徴量は一例であり、これらとは異なる信号または特徴量に基づいて作業車両100の状態が判別されてもよい。図10の例では、表1に示す4種類の特徴量が用いられているが、より多くの特徴量を用いて、さらに深い階層の決定木に基づく推定が行われてもよい。それぞれの特徴量に基づく判断の順序は図示される順序に限定されず、使用されるアルゴリズムまたは学習内容に応じて変更され得る。
【0078】
図11は、第2ステップ(ステップS233)の判定処理に用いられる学習済みモデルの一例である決定木を示す図である。この決定木では、作業車両100に接続された作業機300の種類が、ベーラ、シードドリル、ハロー、シュレッダー、スタブルカウチ、プラウ、テッダー、フロントローダのいずれであるかが判別される。作業機300の種類は、入力データに含まれる以下の表2に示す信号または特徴量に基づいて判別される。
【0079】
【表2】
【0080】
図11に示す例において、d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7は、ある定数を表しており、決定木アルゴリズムに基づいて決定される。決定木アルゴリズムを実装したソフトウェアにより、図11に例示されるような判別結果をディスプレイに表示することも可能である。そのような表示により、例えばメーカコンピュータ500のユーザが、推定の根拠を知ることができる。
【0081】
なお、上記の信号または特徴量は一例であり、これらとは異なる信号または特徴量に基づいて作業機300の種類が判別されてもよい。また、ベーラ、シードドリル、ハロー、シュレッダー、スタブルカウチ、プラウ、テッダー、フロントローダに限らず、他の種類の作業機を判別可能なモデルが用いられてもよい。図11の例では、表2に示す6種類の特徴量が用いられているが、より多くの特徴量を用いて、さらに深い階層の決定木に基づく推定が行われてもよい。それぞれの特徴量に基づく判断の順序は図示される順序に限定されず、使用されるアルゴリズムまたは学習内容に応じて変更され得る。
【0082】
ここで、図12から図14を参照して、作業機300の種類によって異なる信号波形の例を説明する。
【0083】
図12は、ある作業機300(以下、「作業機1」と呼ぶ。)における信号波形の例を示している。図13は、他の作業機300(以下、「作業機2」と呼ぶ。)における信号波形の例を示している。図14は、さらに他の作業機300(以下、「作業機3」と呼ぶ。)における信号波形の例を示している。作業機1、作業機2、作業機3は、異なる種類の作業機であり、それらの作業機の用途は異なっている。図12、13、14には、4つの信号(信号1、信号2、信号3、信号4)の時間変化を示す波形が例示されている。信号1~4は、例えば、3点ヒッチの高さ、ドラフトセンサの計測値、車速、およびPTOインジケータランプの値といった信号を表す。なお、実際にはより多くの信号が用いられ得るが、図12から図14には、例示として、4つの信号の波形が示されている。これらの図からわかるように、作業機300の種類が異なると、各信号の波形は大きく異なる。本実施形態では、これらの信号波形の違いに基づいて作業機300の種類を推定する機械学習モデルを用いることにより、作業車両100に接続されている作業機300の種類を高い精度で推定することができる。
【0084】
再び図7を参照する。ステップS230の処理が終了すると、ステップS240に進む。
【0085】
ステップS240において、処理回路660は、ステップS230で推定された作業車両100の状態(作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中など)および作業車両100に接続された作業機300の種類の情報を含む出力データを生成する。出力データは、例えば、年月日、時刻(例えば秒単位)、車両ID、推定された作業車両100の状態、および推定された作業機300の種類が相互に関連付けられたデータであり得る。出力データは、他にも、GNSSユニット120によって計測された作業車両100の位置およびセンサ群150に含まれる1つ以上のセンサの計測値(例えば、車速、燃料残量、燃費、総稼働時間など)を含んでいてもよい。
【0086】
ステップS250において、処理回路660は、通信回路690を介して出力データをディーラ端末400に送信する。ディーラ端末400は、送信された出力データを記憶装置450に記録する。ディーラ端末400は、ユーザ(例えばディーラの担当者)の操作に応答して、作業車両100の稼働状態を示す画像を出力データに基づいて生成し、表示することができる。
【0087】
ステップS260において、処理回路660は、動作を終了するか否かを判定する。例えば、メーカコンピュータ500などの外部のコンピュータから動作終了の指示が与えられたとき、動作を終了すると判定する。動作終了の指示は、例えば、新たな学習用データを用いて学習済みモデルをさらに訓練するために推定動作を停止する場合などに与えられ得る。動作終了の指示が与えられるまで、ステップS210からS260の処理が繰り返される。
【0088】
図7の例では、ステップS230の後、ステップS240における出力データの生成と、ステップS250における出力データの送信とが続けて行われる。この場合、作業車両100からデータを受信する頻度と同じ頻度で(例えば1秒ごとに)、出力データの生成および送信が行われる。このような動作に代えて、例えばステップS240およびS250における出力データの生成および送信を、複数回の推定処理が終わった後で行ってもよい。例えば、10秒に1回、または100秒に1回など、所定時間ごとに出力データの生成および送信をまとめて行ってもよい。あるいは、処理回路660は、ディーラ端末400から要求されたときだけ出力データを生成してディーラ端末400に送信してもよい。
【0089】
次に、ディーラ端末400による作業車両100の稼働状態を表示する動作を説明する。
【0090】
図15は、ディーラ端末400の処理回路460によって実行される動作の例を示すフローチャートである。
【0091】
ステップS310において、処理回路460は、作業車両100の稼働情報を表示する操作が入力装置420を介して行われたか否かを判定する。この操作は、例えばディーラにおける作業車両100のメンテナンス担当者によって行われ得る。この操作が行われた場合、ステップS320に進む。
【0092】
ステップS320において、処理回路460は、サーバ600から送信された出力データを、記憶装置450から読み出すことによって取得する。なお、サーバ600が、ディーラ端末400からの要求に応じて出力データをディーラ端末400に送信するように構成されていてもよい。その場合、処理回路460は、通信回路490を介してサーバ600に出力データを要求することによって出力データを取得する。
【0093】
ステップS340において、処理回路460は、出力データに基づいて、作業車両100の時系列の稼働状態を示す情報を含む表示画像を生成してディスプレイ430に表示させる。
【0094】
図16は、ディスプレイ430に表示される画像の例を示す図である。この例における表示画像は、複数の表示エリア431、432、433、434を含む。表示エリア431は、どの日時に作業車両100が作業を行ったかを示す。表示エリア432は、ある期間における作業機ごとの使用率を示す。表示エリア433は、その期間における1時間あたりの燃料消費量(平均燃費)、稼働率、稼働時間、アイドリング時間、および燃料消費量を示す。表示エリア434は、その期間における作業車両100の詳細な稼働情報を示す。表示エリア434には、作業車両100が停車している状態(アイドリング状態)、作業を行っている状態、枕地で旋回している状態、および作業を伴わずに走行している状態のそれぞれについて、時間、燃料消費量、平均燃費、平均エンジン回転数(RPM)、平均PTO回転数(RPM)の情報が表示される。作業を行っている状態については、使用された作業機の種類ごとにそれらの情報が表示される。
【0095】
このような情報を表示することにより、作業車両100がどのように使用されているかをディーラの担当者が把握することができる。このため、例えば作業車両100の故障や不具合、またはその兆候を早期に発見して、部品の交換や修理などのメンテナンスを効率的に行うことができる。
【0096】
図16に示す表示画面は例示にすぎず、表示画面のレイアウトは図示されるものに限定されない。サーバ600から送信されるデータに基づいてどのような表示を行うかは、目的に応じて適宜決定される。
【0097】
本実施形態では、ディーラ端末400が、サーバ600から送信された出力データに基づいて表示画像を生成して表示するが、同様の動作をメーカコンピュータ500が行ってもよい。例えば、サーバ600は、メーカコンピュータ500からの要求に応じて作業機の推定結果を含む出力データをメーカコンピュータ500に送信してもよい。メーカコンピュータ500は、当該出力データに基づいて、図16に示すような表示画像をディスプレイに表示してもよい。そのような表示により、メーカの担当者は、作業車両100の実際の使用のされ方についての知見を得ることができるため、その知見を今後の製品開発またはサービスに役立てることができる。
【0098】
ディーラ端末400と同様の動作を、作業車両100のユーザまたは所有者(例えば農業経営者)が使用する端末装置が行ってもよい。例えば、サーバ600は、端末装置からの要求に応じて作業機の推定結果を含む出力データを端末装置に送信してもよい。端末装置は、当該出力データに基づいて、図16に示すような表示画像をディスプレイに表示してもよい。そのような表示により、例えば農業経営者は、作業車両100がどのように使用されているのかを確認し、今後の農業経営の改善につなげることができる。例えば、雇用者が使用する作業車両100のアイドリングが多すぎることがわかった場合は、雇用者にアイドリングを減らすように指導することで、燃料消費量を抑えることができる。また、枕地旋回が多すぎることがわかった場合は、より幅の広い作業機を導入して旋回回数を減らしたり、より大型の作業車両を導入したりする判断を行うことができる。
【0099】
同様の判断は、ディーラの担当者が行うことも可能である。ディーラの担当者は、図16に示すような表示画面を見て、例えば枕地旋回が多すぎることがわかった場合は、より幅の広い作業機や、より大型の作業車両の導入を提案することができる。これにより、メンテナンス業務の効率化だけでなく、営業活動の改善にもつなげることができる。
【0100】
上記の実施形態では、システムは、1台以上の作業車両100と、サーバ600と、ディーラ端末400と、メーカコンピュータ500とを含むが、これは一例にすぎない。例えば、システムは、これらの装置のうちの一部のみを含んでいてもよい。また、サーバ600、ディーラ端末400、およびメーカコンピュータ500の各々は、他の種類のコンピュータであってもよい。例えば、サーバ600とメーカコンピュータ500は、ともに作業車両100のメーカが管理するコンピュータであってもよい。また、作業車両100のメーカとは異なる企業が、作業車両100に搭載される通信装置や、通信装置から信号を収集して本実施形態による推定処理を実行するコンピュータを販売または運営してもよい。そのような企業は、さらに、ディーラ端末400と同様の端末装置を用いて、作業車両100の稼働状態をモニタリングし、保守などのサービスを提供してもよい。
【0101】
上記の実施形態における各装置が実行する方法を規定したコンピュータプログラムは、当該装置とは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
【0102】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の方法、処理装置、プログラム、通信装置、作業車両、端末装置、およびシステムを含む。
【0103】
[項目1]
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する1台以上のコンピュータによって実行される方法であって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し取得するステップと、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、
前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、
推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、
を含む方法。
【0104】
[項目2]
前記入力データを生成するステップは、前記10以上の信号にそれぞれ対応する10以上の時系列データを生成し、前記時系列データに基づいて前記入力データを生成することを含む、項目1に記載の方法。
【0105】
[項目3]
前記入力データは、第1入力データおよび第2入力データを含み、
前記1つ以上の学習済みモデルは、前記第1入力データに基づいて前記作業車両が作業中であるか他の状態にあるかを判定するための第1モデルと、前記第2入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための第2モデルとを含み、
前記推定するステップは、
前記第1モデルに前記第1入力データを入力して前記作業車両が作業中であるか他の状態にあるかを判定する第1ステップと、
前記作業車両が作業中であると判定された場合に、前記第2モデルに前記第2入力データを入力して前記作業機の種類を推定する第2ステップと、
を含む、項目1または2に記載の方法。
【0106】
[項目4]
前記第1モデルは、前記第1入力データに基づいて、前記作業車両が作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定するためのモデルであり、
前記第1ステップは、前記第1モデルに前記第1入力データを入力して、前記作業車両が、作業中、非作業走行中、枕地旋回中、アイドリング中のいずれの状態にあるかを判定することを含む、
項目3に記載の方法。
【0107】
[項目5]
前記第1モデルおよび前記第2モデルの各々は、決定木に基づくモデルである、項目3または4に記載の方法。
【0108】
[項目6]
前記10以上の信号は、20以上の信号である、項目1から5のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
[項目7]
前記10以上の信号は、50以上の信号である、項目1から6のいずれか1項に記載の方法。
【0110】
[項目8]
前記10以上の信号は、前記作業機の牽引に伴う負荷を計測するドラフトセンサの計測値を示す信号を含む、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
【0111】
[項目9]
前記10以上の信号は、前記作業車両の走行速度を示す信号、前記作業機を駆動するパワーテイクオフ(PTO)軸の回転速度を示す信号、前記作業機を連結する連結装置の高さ位置を示す信号、および原動機の回転速度を示す信号を含む、項目1から8のいずれか1項に記載の方法。
【0112】
[項目10]
前記10以上の信号のそれぞれは、前記作業車両におけるCAN(Control Area Network)バスを流れる信号に基づいて生成される、項目1から9のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
[項目11]
前記出力するステップは、前記出力データを、他のコンピュータに送信することを含む、項目1から10のいずれか1項に記載の方法。
【0114】
[項目12]
前記他のコンピュータは、前記作業車両の状態監視、メンテナンス、または故障診断を行う監視者が使用する端末装置であり、
前記出力データは、前記端末装置のディスプレイに、前記作業車両の時系列の稼働状態を表示させるために用いられる、
項目11に記載の方法。
【0115】
[項目13]
前記作業車両は農業用トラクタであり、前記作業機を駆動して農作業を実行する、項目1から12のいずれか1項に記載の方法。
【0116】
[項目14]
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信する処理装置であって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し受信する通信回路と、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成し、前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定し、推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力する処理回路と、
を備える処理装置。
【0117】
[項目15]
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両と通信するコンピュータによって実行させるコンピュータプログラムであって、
前記作業車両から、それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を繰り返し受信するステップと、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成するステップと、
前記入力データに基づいて前記作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定するステップと、
推定された前記作業機の種類を示す情報を含む出力データを生成して出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【0118】
[項目16]
接続された作業機を駆動して作業を実行する作業車両に搭載され、項目14に記載の処理装置と通信する通信装置であって、
それぞれが前記作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を含むデータを生成する処理回路と、
前記データを前記処理装置に送信する通信回路と、
を備える通信装置。
【0119】
[項目17]
項目16に記載の通信装置を備える作業車両。
【0120】
[項目18]
項目14に記載の処理装置と通信する端末装置であって、
前記処理装置から前記出力データを受信する通信回路と、
前記出力データに基づいて、前記作業車両の時系列の稼働状態を示す画像をディスプレイに表示させる処理回路と、
を備える端末装置。
【0121】
[項目19]
項目14に記載の処理装置と、
項目16に記載の通信装置と、
を備えるシステム。
【0122】
[項目20]
項目14に記載の処理装置と、
項目15に記載の作業車両と、
を備えるシステム。
【0123】
[項目21]
項目18に記載の端末装置をさらに備える、項目19に記載のシステム。
【0124】
[項目22]
それぞれが作業車両の異なる内部状態を示す10以上の信号を、1台以上のコンピュータに与えるステップと、
前記1台以上のコンピュータに、
前記10以上の信号に基づいて入力データを生成することと、
前記入力データに基づいて前記作業車両に接続された作業機の種類を推定するための1つ以上の学習済みモデルに前記入力データを入力して前記作業機の種類を推定することと、
前記作業機の種類の推定結果を出力することと、
を実行させるステップと、
を含む方法。
【0125】
[項目23]
項目1に記載の方法を実行する前記コンピュータと通信する前記作業車両に搭載される通信装置によって実行される方法であって、
前記作業車両に搭載された複数の機器から出力された信号に基づいて、前記10以上の信号を生成するステップと、
前記10以上の信号を前記コンピュータに送信するステップと、
を含む方法。
【0126】
[項目24]
項目1に記載の方法を実行するコンピュータにネットワークを介して接続された他のコンピュータによって実行される方法であって、
前記学習済みモデルを生成するための学習用データを前記コンピュータに送信するステップと、
前記コンピュータに、前記学習済みモデルに基づいて前記学習済みモデルを生成させるステップと、
を含む方法。
【0127】
[項目25]
項目1に記載の方法を実行するコンピュータにネットワークを介して接続された端末装置によって実行される方法であって、
前記コンピュータに、前記出力データの送信を要求するステップと、
前記コンピュータから送信された前記出力データを受信するステップと、
前記出力データに基づいて、推定された前記作業機の種類を示す画像をディスプレイに表示させるステップと、
を含む方法。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示の技術は、例えばトラクタ、移植機、収穫機、建設作業車、または除雪車などの作業車両、当該作業車両に搭載される通信装置、および当該作業車両と通信する処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
80・・・ネットワーク、100・・・作業車両、101・・・車両本体、102・・・原動機、103・・・変速装置、104・・・車輪、105・・・キャビン、106・・・操舵装置、107・・・運転席、108・・・連結装置、120・・・GNSSユニット、140・・・駆動装置、150・・・センサ群、170・・・記憶装置、180・・・制御装置、190・・・通信装置、300・・・作業機、400・・・ディーラ端末、420・・・入力装置、430・・・ディスプレイ、450・・・記憶装置、460・・・処理回路、470・・・ROM、480・・・RAM、490・・・通信回路、500・・・メーカコンピュータ、550・・・記憶装置、560・・・処理回路、570・・・ROM、580・・・RAM、590・・・通信回路、600・・・サーバコンピュータ、650・・・記憶装置、660・・・処理回路、670・・・ROM、680・・・RAM、690・・・通信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16